(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢部材(122)と前記ピストン(110A、110B)の前記接合面(110C)との間でカバースリーブ(140)を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動機構(100)。
前記テザー(512)は、前記送達制御機構(500)のウインチドラム(520)から緩められて、前記付勢部材(122)の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、前記付勢部材(122)が当たる前記ピストン(110A、110B)の自由軸方向平行移動と、を計量調節するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動機構(100)。
複数のギヤ(528)を有するギヤアセンブリを備え、前記ギヤ(528)の少なくとも1つがエンコーダーとして動作する、請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動機構(100)。
前記テザー(512)が弛緩可能に巻き付けられてよいウインチドラム(520)に接続されたドラムギヤ(522)を有するギヤアセンブリと、前記ドラムギヤ(522)と係合可能に接続されたウォームギヤ(524)と、前記ウォームギヤ(524)と係合可能に接続された複合ギヤ(526)と、前記複合ギヤ(526)と係合可能に接続されたピニオン(530A)を有するモータ(530)であって、前記テザー(512)を前記ウインチドラム(520)から緩めて、前記付勢部材(122)の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、前記付勢部材(122)が当たる前記ピストン(110A、110B)の自由軸方向平行移動と、を計量調節するように、前記ギヤアセンブリを駆動するように構成された前記モータ(530)と、を更に備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動機構(100)。
前記ピストン(110A、110B)は、1つ以上の部品から構成され、前記テザー(512)の遠位端に接続される、請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動機構(100)。
【背景技術】
【0003】
様々な薬剤の非経口送達、即ち、消化路を通す以外の手段での送達は、幾つかの理由により、望ましい薬剤送達方法になっている。この、注射による薬剤送達の形式は、送達物質の効果を高めることが可能であり、薬剤を、変質させずに有効な濃度でその目標部位に到達させることを確実に行うことが可能である。同様に、非経口送達によれば、他の送達経路に伴う、全身毒性のような望ましからぬ副作用を潜在的に回避することが可能である。哺乳類の患者の消化系を迂回することにより、消化管及び肝臓にある触媒酵素に起因する活性成分の分解を回避することが可能であり、必要な量の薬剤を所望の濃度で目標部位に到達させることを確実に行うことが可能である。
【0004】
従来は、非経口薬剤を患者に送達する為に、手動操作式のシリンジや注射ペンが用いられてきた。より最近では、液状薬剤の、体内への非経口送達は、針及びリザーバを使用するボーラス注入を重力駆動式定量供給器によって連続的に行うか、経皮パッチ技術を用いることにより、行われてきた。ボーラス注入は、患者の臨床的需要と完全には合致しない場合が多く、通常は、1回分の用量を、個々の投与時刻に必要な量より多くしなければならない。重力送りシステムによる薬剤の連続送達の場合は、患者の移動性及び生活様式が損なわれ、治療が、過度に単純な流量及び特性に限定される。別の形式の薬剤送達である経皮パッチにも、同様にそれなりの制限がある。経皮パッチは、有効性の為に特定の薬剤分子構造を必要とする場合が多く、経皮パッチによる薬剤投与の制御には厳格な制限がある。
【0005】
液状薬剤を患者に送達する為に、歩行型輸液ポンプが開発されてきた。こうした輸液装置は、ボーラス要件、連続輸液、及び可変流量送達を達成する先進的な流体送達特性を提供することが可能である。通常は、こうした輸液機能により、薬剤及び治療の有効性が高められ、患者の身体に対する毒性が抑えられる。現時点で利用可能な歩行型輸液装置は、高価であり、輸液の為のプログラム及び準備が面倒であり、傾向として、かさばり、重く、非常に壊れやすい。これらの装置の充填は、面倒な場合があり、患者は、装置の充填の為に、本来の薬剤と充填用アクセサリの両方を持ち歩かなければならない場合がある。これらの装置は、意図された長期使用における適正な機能性及び安全性を保証する為に特殊なケア、メンテナンス、及びクリーニングを必要とする場合が多く、患者又は医療機関にとっては費用対効果が高くない。
【0006】
シリンジ及び注射ペンと比べると、ポンプ式の送達装置は、患者にとって非常に便利である可能性があり、これは、日中又は夜間にいつでも自動的に薬剤の用量が計算されて薬剤が患者に送達されることが可能である、という点においてである。更に、代謝センサ又は代謝モニタと併用されると、ポンプは、自動制御されて、検知又は監視された代謝レベルに基づいて、必要とされる適切なタイミングで適切な用量の流体薬剤を供給することが可能である。その結果、ポンプ式送達装置は、糖尿病などのような様々なタイプの疾患に対する現代的な医療処置の重要な側面になっている。
【0007】
ポンプ式送達システムは、様々な患者ニーズを解決する為に利用されてきたが、手動操作式のシリンジ及び注射ペンも、薬剤送達の為の好ましい選択肢として存続している場合が多く、これは、それらのシリンジ及び注射ペンが、現在では、統合的な安全機能を提供しており、且つ、薬剤送達の状態、及び用量の定量供給の終了を識別する為の読み取りが容易に可能である為である。しかしながら、手動操作式のシリンジ及び注射ペンは、あらゆる用途に適用可能というわけではなく、あらゆる薬剤の送達に好ましいわけではない。そこで、精度及び信頼性が高く、液状薬剤の非経口送達の為の小型で低コストで軽量で使いやすい選択肢を医療従事者及び患者に提供しうる、調節可能(且つ/又はプログラム可能)な輸液システムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、背景技術の課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、薬剤物質の制御送達の為の駆動機構、制御送達駆動機構を有する薬剤送達ポンプ、そのような装置の動作方法、及びそのような装置の組み立て方法を提供する。特に、本発明の駆動機構は、薬剤物質を薬剤容器から押し出す為に利用されるプランジャ封止材の自由軸方向平行移動を、計量調節、抵抗付与、又は他の方法で妨げることによって、薬剤送達の流量を制御するものである。従って、本発明の新規な実施形態は、薬剤物質を可変の流量で送達することが可能である。本発明の制御送達駆動機構は、所望の送達流量又は送達特性を満たすように、(例えば、電源/制御系による制御によって)事前構成可能又は動的構成可能であってよく、これについては後で詳述される。更に、本発明の駆動機構には、薬剤送達の前、途中、及び後にユーザにフィードバックを与える状態表示機能が組み込まれている。例えば、ユーザは、本システムが動作していて薬剤送達の準備ができていることを識別する為の初期フィードバックを与えられてよい。その後、本システムは、起動後ただちに、ユーザに対して1つ以上の薬剤送達状態表示を行ってよい。薬剤送達の完了時には、駆動機構及び薬剤ポンプは、用量終了表示を行ってよい。用量終了表示は、駆動機構の1つ以上の構成要素の軸方向平行移動の物理的終了に関連付けられている為、駆動機構及び薬剤ポンプは、真の用量終了表示をユーザに与える。これらの機構を通じて、薬剤用量送達の確認がユーザ又は投与者に正確に与えられることが可能である。従って、本発明の新規な装置は、上記で言及されたものなど、先行技術の装置に伴う問題のうちの1つ以上を軽減する。
【0010】
第1の実施形態では、本発明は、制御送達駆動機構を提供し、この制御送達駆動機構は、駆動ハウジングと、ピストンと、最初はエネルギ蓄積状態で保持され、ピストンの接合面に当たるように構成された付勢部材と、を含む。ピストンは、プランジャ封止材及びバレルを有する薬剤容器の中を略軸方向に平行移動するように構成されている。テザーが、一端においてピストンと接続されており、他端において送達制御機構のウインチドラムと接続されており、テザーは、付勢部材の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動と、を抑制する。薬剤容器は、ユーザに送達される薬剤流体を薬剤チャンバ内に収容してよい。任意選択で、付勢部材とピストンの接合面との間で、カバースリーブが利用されてよく、これは、駆動機構の動作中に、バレルの内部構成要素(即ち、ピストン及び付勢部材)を見えなくする為である。テザーは、送達制御機構のウインチドラムから緩められて、付勢部材の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動と、を計量調節するように構成されている。
【0011】
別の実施形態では、駆動機構は更に、ギヤアセンブリを含む。ギヤアセンブリは、テザーが弛緩可能に巻き付けられてよいウインチドラムに接続されたウインチギヤと、ウインチギヤと係合可能に接続されたウォームギヤと、ウォームギヤと係合可能に接続された複合ギヤと、複合ギヤと係合可能に接続されたピニオンを有するモータであって、テザーをウインチドラムから緩めて、付勢部材の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動と、を計量調節するように、ギヤアセンブリを駆動するように構成されたモータと、を含んでよい。モータによるテザーの計量調節によって、ユーザへの薬剤送達の流量又は特性が制御される。ピストンは、1つ以上の部品から構成され、テザーの遠位端に接続される。
【0012】
更に別の実施形態では、駆動機構は、対応する1つ以上の状態トリガを読み取るか認識するように構成された状態読み取り器を含んでよい。状態トリガは、テザー上にインクリメンタルに間隔を置いて配置されてよく、駆動機構の動作中に、状態読み取り器と状態トリガとの間の相互作用によって、ユーザにフィードバックを与える為の信号が電源/制御系に送信される。状態読み取り器は光学式状態読み取り器であってよく、対応する状態トリガは光学式状態トリガであり、或いは、状態読み取り器は電気機械式状態読み取り器であってよく、対応する状態トリガは電気機械式状態トリガであり、或いは、状態読み取り器は機械式状態読み取り器であってよく、対応する状態トリガは機械式状態トリガである。
【0013】
更なる実施形態では、本発明は、薬剤送達が制御される薬剤送達ポンプを提供する。薬剤
送達ポンプは、ハウジング及びアセンブリプラットフォームを有し、アセンブリプラットフォーム上には、駆動機構、挿入機構、流体経路接続部、電源/制御系、及び制御送達駆動機構が取り付けられてよく、前記駆動機構は、駆動ハウジングと、ピストンと、付勢部材であって、最初はエネルギ蓄積状態で保持され、ピストンの接合面に当たるように構成された付勢部材と、を有する。ピストンは、プランジャ封止材及びバレルを有する薬剤容器の中を略軸方向に平行移動するように構成されている。テザーが、一端においてピストンと接続されており、他端において送達制御機構のウインチドラムと接続されており、テザーは、付勢部材の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動と、を抑制する。薬剤容器は、ユーザに送達される薬剤流体を薬剤チャンバ内に収容してよい。任意選択で、付勢部材とピストンの接合面との間で、カバースリーブが利用されてよく、これは、駆動機構の動作中に、バレルの内部構成要素(即ち、ピストン及び付勢部材)を見えなくする為である。テザーは、送達制御機構のウインチドラムから緩められて、付勢部材の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動と、を計量調節するように構成されている。
【0014】
別の実施形態では、薬剤ポンプは更に、ギヤアセンブリを含む。ギヤアセンブリは、テザーが弛緩可能に巻き付けられてよいウインチドラムに接続されたウインチギヤと、ウインチギヤと係合可能に接続されたウォームギヤと、ウォームギヤと係合可能に接続された複合ギヤと、複合ギヤと係合可能に接続されたピニオンを有するモータであって、テザーをウインチドラムから緩めて、付勢部材の、最初のエネルギ蓄積状態からの自由伸張と、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動と、を計量調節するように、ギヤアセンブリを駆動するように構成されたモータと、を含んでよい。モータによるテザーの計量調節によって、ユーザへの薬剤送達の流量又は特性が制御される。ピストンは、1つ以上の部品から構成され、テザーの遠位端に接続される。
【0015】
更に別の実施形態では、薬剤ポンプは、対応する1つ以上の状態トリガを読み取るか認識するように構成された状態読み取り器を含んでよい。状態トリガは、テザー上にインクリメンタルに間隔を置いて配置されてよく、駆動機構の動作中に、状態読み取り器と状態トリガとの間の相互作用によって、ユーザにフィードバックを与える為の信号が電源/制御系に送信される。状態読み取り器は光学式状態読み取り器であってよく、対応する状態トリガは光学式状態トリガであり、或いは、状態読み取り器は電気機械式状態読み取り器であってよく、対応する状態トリガは電気機械式状態トリガであり、或いは、状態読み取り器は機械式状態読み取り器であってよく、対応する状態トリガは機械式状態トリガである。
【0016】
別の実施形態では、薬剤ポンプの電源/制御系は、1つ以上の入力を受け取って、ウインチドラムがテザーを緩める度合いを計量調節することにより、付勢部材がピストンを軸方向平行移動させてプランジャ封止材をバレル内で平行移動させることを可能にするように構成されている。この1つ以上の入力は、起動機構、制御インタフェース、及び/又は遠隔制御機構を操作することによって与えられてよい。電源/制御系は、ユーザに送達される用量の体積を変更すること、及び/又は、他の方法で駆動機構の動作を開始、停止、又は一時停止することの為に、1つ以上の入力を受け取って、付勢部材が当たるピストンの自由軸方向平行移動に対してテザー及びウインチドラムによって与えられる抑制の度合いを、薬剤送達の所望の流量又は特性を満たすべく調節するように構成されてよい。
【0017】
本発明の新規な実施形態が提供する駆動機構は、薬剤物質を薬剤容器から押し出す為に利用されるプランジャ封止材の自由軸方向平行移動を、計量調節、抵抗付与、又は他の方法で妨げることによって、薬剤物質の送達の流量を制御するものである。新規な制御送達駆動機構は更に、本装置の動作前、動作中、及び動作後の薬剤送達のインクリメンタルな状態を提供することが可能である。本明細書全体において、特に断らない限り、「備える(comprise、comprises、及びcomprising)」、或いは、「含む(includes)」又は「からなる(consists of)」などの関連表現は、排他的ではなく包括的に使用されており、従って、記述された整数又は整数群は、1つ以上の他の記述されていない整数又は整数群を含んでよい。後で詳述されるように、本発明の実施形態は、医療機器業界において標準的な構成要素と見なされうる1つ以上の追加構成要素を含んでよい。例えば、実施形態は、本発明のモータ、駆動機構、及び薬剤ポンプへの給電に利用される1つ以上のバッテリを含んでよい。それらの構成要素、及びそのような構成要素を含む実施形態は、本発明の企図の範囲内にあり、本発明の広さ及び範囲に収まるものとして理解されたい。
【0018】
本明細書では、以下の図面を参照しながら、本発明の以下の非限定的な実施形態を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、薬剤物質の制御送達の為の駆動機構、並びに、そのような制御送達駆動機構が組み込まれた薬剤送達ポンプを提供する。本発明の駆動機構は、薬剤物質を薬剤容器から押し出す為に利用されるプランジャ封止材の自由軸方向平行移動を、計量調節、抵抗付与、又は他の方法で妨げることによって、薬剤送達の流量を制御するものであり、従って、薬剤物質を可変の流量及び/又は送達特性で送達することが可能である。更に、本発明の駆動機構には、薬剤送達の前、途中、及び後にユーザにフィードバックを与える状態表示機能が組み込まれている。例えば、ユーザは、本システムが動作していて薬剤送達の準備ができていることを識別する為の初期フィードバックを与えられてよい。その後、本システムは、起動後ただちに、ユーザに対して1つ以上の薬剤送達状態表示を行ってよい。薬剤送達の完了時には、駆動機構及び薬剤ポンプは、用量終了表示を行ってよい。
【0021】
駆動機構、薬剤送達ポンプ、又は、本発明の構成要素の任意の相対位置を説明する為に本明細書で使用されている、「軸方向の」又は「軸方向に」という用語は、駆動機構が好ましくはその周りに位置する長手軸「A」を大まかに指すが、その駆動機構は、必ずしもその周りに対称に位置するわけではない。「半径方向の」という用語は、軸Aに垂直な方向を大まかに指す。「近位の」、「後方の」、「後方へ」、「後ろの」、又は「後ろへ」という用語は、方向「P」の軸方向を大まかに指す。「遠位の」、「前方の」、「前方へ」、「押下された」、又は「前へ」という用語は、方向「D」の軸方向を大まかに指す。本明細書で使用されている、「ガラス」という用語は、通常であればガラスを必要とするであろう医薬品グレードの用途での使用に好適な、他の同様に非反応性である材料を含むものと理解されたい。このような材料として、環状オレフィンコポリマー(COC)及び環状オレフィンポリマー(COP)などの特定の非反応性ポリマーがあり、これらに限定されない。「プラスチック」という用語は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの両方を包含してよい。熱可塑性ポリマーは、加熱により再軟化させて元の状態に戻すことができるが、熱硬化性ポリマーは、元の状態に戻すことができない。本明細書で使用されている、「プラスチック」という用語は、主に、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、又はアクリル樹脂などの成形用熱可塑性ポリマーを指し、これらは、典型的には、硬化剤、充填剤、補強剤、着色剤、及び/又は可塑剤等のような他の成分も含み、加熱及び加圧による形成又は成形が可能である。本明細書で使用されている、「プラスチック」という用語は、プラスチックと相互作用する可能性がある治療液、或いは、相互作用以外でプラスチックから入り込む可能性がある置換基によって劣化する可能性がある治療液と直接接触する用途での使用が是認されているガラスも非反応性ポリマーもエラストマも含まないものとする。「エラストマ」、「エラストマの」、又は「エラストマ材料」という用語は、主に、プラスチックより容易に変形可能でありながら、医薬品グレードの流体との使用が是認されていて、周囲温度及び圧力下では浸出又はガス移行の影響を受けにくい架橋熱硬化性ゴム状ポリマーを指す。「流体」は、主に液体を指すが、液体内に固体が分散している懸濁液、及び、薬剤ポンプの流体収容部分内で、液体に溶けているか、それ以外の形態で液体内に一緒に存在するガスも包含してよい。本明細書に記載の様々な態様及び実施形態によれば、「付勢部材」への参照が、例えば、プランジャ封止材に対する力の行使の為の1つ以上の付勢部材という文脈において行われる。付勢部材は、エネルギの蓄積及び放出が可能な任意の部材であってよいことを理解されたい。非限定的な例として、ばねがあり、例えば、コイルばね、圧縮又は伸張ばね、トーションばね、或いは板ばねなどがあり、或いは、弾性圧縮可能な、又は伸縮性のバンドがあり、或いは、他の任意の、同様の機能を有する部材がある。本発明の少なくとも1つの実施形態では、付勢部材はばねであり、好ましくは圧縮ばねである。
【0022】
本発明の新規な装置は、状態表示が組み込まれた駆動機構、並びに、そのような駆動機構が組み込まれた薬剤送達ポンプを提供する。そのような装置は、安全で使いやすく、見た目や使い勝手の点でも自己投与患者に対する訴求力がある。本明細書に記載の装置には、訓練を積んでいないユーザであっても本装置の起動、操作、及びロックアウトを簡単に行えるようにする機能が組み込まれている。本発明の新規な装置は、これらの望ましい機能を、従来技術による既知の装置に付随していた問題が全くない状態で提供する。以下では、これらの新規な薬剤送達ポンプ、駆動機構、及びそれらのそれぞれの構成要素の特定の非限定的な実施形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0023】
本明細書では、「ポンプ」という用語は、起動直後からユーザに流体を定量供給することが可能なあらゆる薬剤送達システムを包含するものとする。そのような薬剤送達システムとしては、例えば、注射システム、輸液ポンプ、ボーラス注入装置などがある。
図1A乃至
図1Cは、本発明の少なくとも1つの実施形態による一例示的薬剤送達装置を示す。本薬剤送達装置は、ユーザの体内への治療用薬剤の送達を管理することに利用されてよい。
図1A乃至
図1Cに示されるように、薬剤ポンプ10は、ポンプハウジング12を含む。ポンプハウジング12は、薬剤ポンプの製造、組み立て、及び操作をより容易にする為に固定的に係合可能なハウジング副構成要素を1つ以上含んでよい。例えば、薬剤ポンプ10に含まれるポンプハウジング12は、上部ハウジング12A及び下部ハウジング12Bを含む。薬剤ポンプは更に、起動機構14、状態表示器16、及び窓18を含んでよい。窓18は、薬剤ポンプの動作を目視できる、何らかの半透明又は透光性の面を有してよい。
図1Bに示されるように、薬剤ポンプは更に、アセンブリプラットフォーム20、無菌流体導管30、薬剤容器50を有する駆動機構100、挿入機構200、流体経路接続部300、及び電源/制御系400を含む。そのような薬剤ポンプの構成要素の1つ以上が、モジュール式であってよく、例えば、個別構成要素として事前に組み立てられていて、製造時に薬剤ポンプ10のアセンブリプラットフォーム20上の所定位置に配置されるモジュール式であってよい。
【0024】
ポンプハウジング12は、本装置の全ての構成要素を収容し、装置10をユーザの皮膚に取り外し可能に装着する手段を備える。ポンプハウジング12は又、装置10の内部構成要素を環境の影響から保護する。ポンプハウジング12は、訓練を積んでいないユーザ、及び/又は、身体に障害があるユーザでも梱包、保管、運搬、及び使用が容易であるように、サイズ、形状、及び関連機能の点で使い勝手や見た目がよい設計がなされている。更に、ポンプハウジング12の外側表面は、製品ラベル、安全上の注意書きなどの為に利用されてよい。更に、上述のように、ハウジング12は、動作のフィードバックをユーザに与えることが可能な、状態表示器16や窓18などの特定の構成要素を含んでよい。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、薬剤ポンプ10は、起動機構14を備え、ユーザは、起動機構14の位置を動かすことにより、電源/制御系400に対する開始コマンドをトリガする。好ましい一実施形態では、起動機構は開始ボタン14であり、開始ボタン14は、ポンプハウジング12を貫通して配置されており、例えば、上部ハウジング12Aと下部ハウジング12Bとの間の開口を貫通して配置されており、開始ボタン14は、電源/制御系400の制御アーム40と接している。少なくとも1つの実施形態では、開始ボタン14は、押しボタンであってよく、別の実施形態では、オン/オフスイッチ、トグル、又は任意の同様の、当該技術分野において既知である起動機能であってよい。ポンプハウジング12は又、状態表示器16及び窓18を備える。別の実施形態では、起動機構14、状態表示器16、窓18、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上が、上部ハウジング12A上又は下部ハウジング12B上に設けられてよく、例えば、薬剤ポンプ10がユーザの身体に装着されたときにユーザが目視できる側面に設けられてよい。以下では、本発明の他の構成要素及び実施形態を参照して、ハウジング12をより詳細に説明する。
【0026】
薬剤ポンプは、次のように構成される。即ち、ユーザが起動機構を押下することによって起動されると、薬剤ポンプは、ただちに始動して、流体経路をユーザに挿入し、薬剤容器、流体経路、及び無菌流体導管の間の必要な接続を有効化するか、つなぐか、開き、薬剤容器に貯蔵されている薬剤流体を、流体経路及び流体導管に押し出してユーザ内に送達する。1つ以上の任意選択の安全機構が利用されてよく、例えば、薬剤ポンプの起動が早すぎないようにする為に利用されてよい。例えば、一実施形態では、薬剤ポンプ10がユーザの身体と接触しない限り、電源/制御系400、又は起動機構が関与できないようにする安全機能として、任意選択の(
図1Cに示された)体表センサ24が設けられてよい。そのような一実施形態では、体表センサ24は、下部ハウジング12Bの底部に配置され、ここで、ユーザの身体と接触することが可能である。体表センサ24が変位すると、ただちに、起動機構の押下が可能になる。従って、少なくとも1つの実施形態では、体表センサ24は、起動機構14によって薬剤ポンプ10がトリガされないようにする、例えば機械式ロックアウトなどの機械式安全機構である。別の実施形態では、体表センサは、電気機械式センサであってよく、例えば、起動を可能にする信号を電源/制御系400に送信する機械式ロックアウトであってよい。更に別の実施形態では、体表センサは、電気式であってよく、例えば、組織を検出しないと、電源/制御系400の起動を可能にしない、容量式又はインピーダンス式のセンサなどであってよい。これらの概念は、相互に排他的ではなく、1つ以上の組み合わせが本発明の広さの範囲内で利用されてよく、例えば、薬剤ポンプの起動が早すぎないようにする為に利用されてよい。好ましい一実施形態では、薬剤ポンプ10は、1つ以上の機械式体表センサを利用する。本明細書では、更なる統合的な安全機構が、新規な薬剤ポンプの他の構成要素に関して説明されている。
電源/制御系
【0027】
電源/制御系400は、薬剤ポンプ内の様々な電気的構成要素にエネルギを供給する電源と、1つ以上のフィードバック機構と、マイクロコントローラと、回路基板と、1つ以上の導電パッドと、1つ以上の相互接続と、を含む。そのような複数の電気的システムにおいて共通に使用される他の構成要素も含まれてよく、これについては、当業者であれば理解されるであろう。1つ以上のフィードバック機構は、例えば、圧電アラームなどの可聴アラーム、及び/又は、発光ダイオード(LED)などの光表示器を含んでよい。マイクロコントローラは、例えば、マイクロプロセッサであってよい。電源/制御系400は、装置とユーザとの幾つかの相互作用を制御し、駆動機構100とインタフェースする。一実施形態では、電源/制御系400は、制御アーム40とインタフェースして、体表センサ24及び/又は起動機構14がいつ活性化されたかを識別する。電源/制御系400は又、ポンプハウジング12の状態表示器16とインタフェースしてよく、状態表示器16は、可視フィードバックをユーザに与える為に、光の伝達を可能にする透光性又は半透明の材料であってよい。電源/制御系400は、1つ以上の相互接続を通して駆動機構100とインタフェースすることにより、起動、薬剤送達、用量終了などの状態表示をユーザに中継する。そのような状態表示は、可聴アラームによるなどして可聴音でユーザに提示されてよく、且つ/又は、LEDによるなどして可視表示器でユーザに提示されてよい。好ましい一実施形態では、電源/制御系と、薬剤ポンプの他の構成要素との間の制御インタフェースは、ユーザによって起動されない限り、係合又は接続されない。これは、薬剤ポンプの偶発的動作を防ぐ、望ましい安全機能であり、更に、貯蔵、輸送などが行われている間、電源に含まれるエネルギを温存することも可能である。
【0028】
電源/制御系400は、幾つかの異なる状態表示器をユーザに提供するように構成されてよい。例えば、電源/制御系400は、体表センサ及び/又はトリガ機構が押された後に、装置のスタートアップチェックにおいてエラーがなかった場合には、電源/制御系400が状態表示器16を介して開始準備完了状態信号を出力するように構成されてよい。開始準備完了状態信号が出力され、且つ、任意選択の体表センサを有する一実施形態において体表センサがユーザの身体に接触したままであれば、電源/制御系400は、駆動機構100に給電して、流体経路接続部300及び無菌流体導管30経由での治療用薬剤の送達を開始させる。本発明の好ましい一実施形態では、挿入機構200及び流体経路接続部300は、ユーザによる起動機構14の操作によって直接起動されてよい。電源/制御系400は、薬剤送達過程の間、状態表示器16から定量供給状態信号を出力するように構成されている。薬剤がユーザの体内に投与された後、いくらかの追加ドウェル時間を経て、ほぼ全用量がユーザに送達されたことが確認されたら、電源/制御系400は、状態表示器16から取り外しOK状態信号を出力してよい。これは、ユーザがポンプハウジング12の窓18を通して駆動機構及び薬剤用量送達を目視することによって、単独で確認されてよい。更に、電源/制御系400は、状態表示器16から1つ以上のアラート信号を出力するように構成されてよく、例えば、故障状態や動作不良状態を表すアラートを出力するように構成されてよい。
【0029】
更に、電源/制御系400は、薬剤送達の所望の流量又は特性を満たすべく駆動機構100を動的に制御する為に、ユーザからの様々な入力を受け入れるように構成されてよい。例えば、電源/制御系400は、薬剤送達の所望の流量又は特性を満たすべく、起動機構14の一部起動又は完全起動、押下、及び/又は解放などによる入力を受け取って、電源/制御系400を介した設定、始動、停止、又は他の方法で駆動機構100の制御を調節することが可能である。同様に、電源/制御系400は、そのような入力を受けて、薬剤用量体積の調節、駆動機構、流体経路接続部、及び流体導管の呼び水、及び/又は、駆動機構100の動作を開始、停止、又は一時停止を行うように構成されてよい。そのような入力は、起動機構14又は別の制御インタフェースを使用するなど、ユーザが薬剤ポンプ10を直接操作することによって受け取られてよく、或いは、システム400は、そのような入力を遠隔制御装置から受けるように構成されてよい。追加又は代替として、そのような入力は、あらかじめプログラムされていてよい。
【0030】
他の構成の電源/制御系も、本発明の新規な薬剤ポンプとともに利用されてよい。例えば、薬剤送達中に、何らかの起動遅延が利用されてよい。上述のように、システム構成に任意選択で含まれるそのような遅延の1つが、ほぼ全薬剤用量が送達されたことを確認してから、薬剤用量の終了を信号でユーザに通知するドウェル時間である。同様に、本装置の起動は、薬剤ポンプの起動の前に薬剤ポンプ10の起動機構14の遅延押下(即ち、長押し)を行うことを必要とする場合がある。更に、本システムは、ユーザが用量終了信号に応答したり、薬剤ポンプを非アクティブ又は電源オフにしたりすることを可能にする機能を含んでよい。そのような機能は、本装置が偶発的に非アクティブになることを防ぐ為に、同様に起動機構の遅延押下を必要としてよい。そのような機能は、望ましい安全統合及び使いやすさのパラメータを薬剤ポンプに与える。不完全な押下、従って、薬剤ポンプの不完全な起動を防ぐ為に、更なる安全機能が起動機構に組み込まれてよい。例えば、起動機構及び/又は電源/制御系は、本装置が完全にオフになるか、完全にオンになることによって不完全な起動を防ぐように構成されてよい。そのような機能については、後で、新規な薬剤ポンプの他の態様に関して詳述される。
【0031】
流体経路接続部
本発明の実施形態においては、幾つかの流体経路接続部が利用されてよい。一般に、適切な流体経路接続部は、無菌流体導管と、穴あけ部材と、薬剤容器又は薬剤容器に組み込まれた穴あけ可能な摺動封止材に取り付けられた無菌スリーブと、を含む。流体経路接続部は更に、1つ以上の流量制限器を含んでよい。本装置10が適正に起動されると、ただちに、流体経路接続部300は、無菌流体導管30を駆動機構100の薬剤容器に接続することが可能になる。そのような接続は、駆動機構100の薬剤容器の穴あけ可能な封止材に穴をあける、針などの穴あけ部材によって促進されてよい。この接続の無菌状態は、フレキシブル無菌スリーブ内で接続を行うことによって維持可能である。挿入機構が実質的に同時に起動されると、薬剤容器と挿入機構との間の流体経路が完結して、ユーザの体内への薬剤送達が可能になる。
【0032】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、流体経路接続部の穴あけ部材は、ユーザが起動機構を押下するなどの、ユーザの直接操作によって、駆動機構の薬剤容器の穴あけ可能封止材を貫通する。例えば、起動機構自体は、起動機構が最初の位置から変位すると流体経路接続部も変位するように、流体経路接続部に当たっていてよい。そのような一実施形態では、流体経路接続部は、あらゆる目的のために参照により全体が本明細書に含まれている、国際特許出願第PCT/US2012/054861号に記載されているものと実質的に同様であってよい。そのような実施形態によれば、接続は、ユーザが起動機構を押下することにより、穴あけ部材が穴あけ可能封止材を貫通するように駆動されて有効になる。これは、ユーザが望むまで、穴あけ可能封止材が薬剤容器からの流体流を阻止している為である。そのような実施形態では、薬剤容器のキャップと流体経路接続部の接続ハブとの間に、圧縮可能な無菌スリーブを固定的に取り付けてよい。穴あけ部材は、流体経路接続部と薬剤容器との間の接続が必要になるまで、無菌スリーブ内にあってよい。無菌スリーブは、起動前の穴あけ部材及び流体経路の無菌状態を確保する為に滅菌されてよい。
【0033】
或いは、流体経路接続部は、例えば、あらゆる目的のために参照により全体が本明細書に含まれている、国際特許出願第PCT/US2013/030478号に記載されているように、薬剤容器と一体化されてよい。そのような実施形態によれば、薬剤容器は、穴あけ可能な封止材とプランジャ封止材との間のバレル内に薬剤チャンバを有してよい。薬剤チャンバには、薬剤流体が収容される。本装置がユーザによって起動されると、ただちに、駆動機構が、薬剤容器に収容されているプランジャ封止材に力をかける。プランジャ封止材が薬剤流体及び空気/ガスギャップ又は泡(あれば)に力をかけていくと、空気/ガス及び薬剤流体の圧縮によって空気圧及び液圧を合わせた圧力が高まり、この力が、穴あけ可能な摺動封止材に伝わる。それによって、穴あけ可能な摺動封止材は、キャップに向かって摺動して、一体化された無菌流体経路接続部の中に保持されている穴あけ部材によって、穴をあけられる。従って、一体化された無菌流体経路接続部は、駆動機構の起動によって生成された、薬剤チャンバ内の空気/ガス及び薬剤流体の気圧/液圧を合わせた圧力によって接続される(即ち、流体経路が開かれる)。一体化された無菌流体経路接続部が接続されると、即ち、流体経路が開くと、薬剤流体が、薬剤容器から流れ出て、一体化された無菌流体経路接続部、無菌流体導管、及び挿入機構を通って、薬剤送達の為にユーザの体内に入ることが可能になる。少なくとも1つの実施形態では、流体は、挿入機構のマニホールド並びにカニューレ及び/又は針のみを通って流れ、これによって、薬剤送達前及び薬剤送達中の流体経路の無菌状態が維持される。
【0034】
薬剤ポンプによって利用される注射器経路接続部がどのようなものであれ、薬剤ポンプは、粘度及び量が様々な、ある範囲の薬剤を送達することが可能である。薬剤ポンプは、制御された流量(流速)での薬剤送達、及び/又は指定された量の薬剤送達を行うことが可能である。一実施形態では、薬剤送達プロセスは、流体経路接続部内で、且つ/又は無菌流体導管内で、1つ以上の流量制限器によって制御される。別の実施形態では、流体流路又は送達導管の形状を変更すること、又は、薬剤容器内の薬剤を定量供給する為に駆動機構の構成要素が薬剤容器内に進む際の速度を変更すること、或いは、これらの組み合わせによって、別の流量が与えられてよい。流体経路接続部300及び無菌流体導管30については、後のセクションで、別の実施形態を参照して更なる詳細が説明される。
【0035】
挿入機構
本発明の薬剤ポンプ内で、幾つかの挿入機構が利用されてよい。本発明のポンプ式送達装置は、流体流連通によって患者又はユーザとつながってよく、これは、例えば、任意の好適な中空チューブを介して行われてよい。患者の皮膚に穴をあけ、しかるべき送達位置に中空カニューレを配置する為に、非中空ボア針が使用されてよく、この非中空ボア針は、患者への薬剤送達の前に取り外されるか引き込まれる。上述のように、流体を体内に投入することは、様々な手段によって可能であり、そのような手段として、例えば、自動的に挿入される針、カニューレ、顕微針アレイ、又は輸液セットのチューブなどがあり、これらに限定されない。患者への針装入を起動する為に、幾つかの機構が使用されてもよい。例えば、患者の皮膚に穴をあけるのに十分な力を針及びカニューレに与える為に、ばねなどの付勢部材が使用されてよい。針を患者から引き込む為には、同じばね、又は追加のばね、又は別の同様な機構が利用されてよい。好ましい一実施形態では、挿入機構は、おおむね、あらゆる目的のために参照により全体が本明細書に含まれている、国際特許出願第PCT/US2012/53174号に記載されているとおりであってよい。そのような構成は、患者の痛みを最小限に抑えるように、薬剤送達経路を患者の皮膚(又は筋肉)の中又は下に挿入する為に利用されてよい。流体経路を挿入する為の、他の知られた方法も利用されてよく、それらも本発明の範囲内で考えられる。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、挿入機構200は、1つ以上のロックアウト窓を有する挿入機構ハウジングと、(
図1B及び
図1Cに示されるように)アセンブリプラットフォーム及び/又はポンプハウジングとつながる為の基部と、を含む。基部をアセンブリプラットフォーム20に接続することは、例えば、基部の底部がアセンブリプラットフォーム内の穴を貫通することを可能にして、基部がユーザの身体に直接接触することを可能にするように、行われてよい。そのような構成では、基部の底部は、薬剤ポンプ10を使用する前に取り外すことが可能な封止メンブレンを含んでよい。挿入機構は更に、1つ以上の挿入付勢部材、針、引き込み付勢部材、カニューレ、及びマニホールドを含んでよい。マニホールドは、薬剤送達時に流体がマニホールド、カニューレを通ってユーザの体内へ流れることを可能にするように、無菌流体導管30に接続されてよい。
【0037】
本明細書で使用されている「針」は、様々な針を意味するものとし、そのような針として、従来の中空針、例えば、剛直な中空鋼針や、「トロカール」という呼称がより一般的な非中空コア針があり、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、針は、27ゲージの非中空コアトロカールであり、別の実施形態では、針は、意図されたタイプの薬剤及び薬剤投与(例えば、皮下、筋肉内、皮内など)の為のカニューレを挿入することに好適な任意のサイズの針であってよい。針挿入機構内では、無菌ブーツが利用されてよい。無菌ブーツは、折りたたみ式無菌メンブレンであって、これは、近位端においてマニホールドと固定係合し、遠位端において基部と固定係合する。少なくとも1つの実施形態では、無菌ブーツは、基部と挿入機構ハウジングとの間で、遠位端の固定係合が保持される。基部は、挿入機構の動作中に針及びカニューレが貫通できる基部開口を含み、これについては後で詳述される。カニューレ及び針の無菌状態は、それらが最初に挿入機構の無菌部分内で位置決めされることによって保持される。具体的には、上述のように、針及びカニューレは、マニホールド及び無菌ブーツの無菌環境内で保持される。基部の基部開口は、非無菌環境に対しては閉じられていてもよく、これは、例えば、(
図1Cに示されるように)封止メンブレン254などによって行われてよい。
【0038】
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、挿入機構は、最初は、ロックアウトピンによって使用準備完了段階にロックされており、ロックアウトピンは、最初は、挿入機構ハウジングのロックアウト窓内に配置される。この最初の構成では、挿入付勢部材及び引き込み付勢部材は、それぞれが、それぞれの圧縮されてエネルギが蓄積された状態で保持されている。
図1Bに示されるように、
ロックアウトピンは、ユーザが起動機構14を押下することによって直接変位してよい。ユーザがいずれかの安全機構、例えば、(
図1Cに示される)任意選択の体表センサ24の係合を解除すると、起動機構14を押下して薬剤ポンプを始動させることが可能になる。起動機構14の押下により、制御アーム40を直接平行移動又は変位させることが可能であり、且つ、
ロックアウトピンを、挿入機構ハウジング202のロック窓202A内のそれぞれの最初の位置から直接又は間接的に変位させることが可能である。
ロックアウトピンの変位により、挿入付勢部材は、その最初の圧縮されてエネルギが蓄積された状態から減圧されることが可能になる。この、挿入付勢部材の減圧によって、針及びカニューレがユーザの体内に向かって駆動される。挿入段階の最後には、引き込み付勢部材は、その最初のエネルギ蓄積状態から近位方向に伸張することが可能になる。この、引き込み付勢部材の近位方向の軸方向伸張によって、針は引き込まれるが、カニューレは、ユーザの身体と流体連通している状態が維持される。従って、挿入機構は、針及びカニューレをユーザに挿入し、その後、針を引き込み、カニューレを、ユーザの身体に薬剤を送達する為の定位置に保持する為に、使用されてよい。
【0039】
駆動機構
図2及び
図3に示される実施形態を参照すると、駆動機構100は、駆動ハウジング130と、キャップ52、穴あけ可能封止材(見えない)、バレル58、及びプランジャ封止材60を有する薬剤容器50と、を含む。バレル58内の、穴あけ可能封止材とプランジャ封止材60との間に位置する薬剤チャンバ21が、挿入機構及び薬剤ポンプを介してユーザの体内に送達される薬剤流体を収容してよい。本明細書に記載の封止材は、幾つかの材料からなるものであってよいが、好ましい一実施形態では、1つ以上のエラストマ又はゴムからなる。駆動機構は更に、流体経路接続部の穴あけ部材の挿入を薬剤容器50のバレル58内へガイドする接続マウント54を含んでよい。駆動機構100は更に、1つ以上の駆動付勢部材、1つ以上の解放機構、及び1つ以上のガイドを収容してよく、これらについては、本明細書において詳述される。駆動機構の各構成要素は、流体を、流体経路接続部、無菌流体導管、及び挿入機構を介してユーザの体内へ送達すべく、薬剤容器から、穴あけ可能封止材を通して、又は好ましくは流体経路接続部の穴あけ部材を通して押し出すように機能する。
【0040】
一特定実施形態では、駆動機構100は、1つ以上の圧縮ばねを、付勢部材として使用する。薬剤ポンプがユーザによって起動されると、ただちに、電源/制御系は、圧縮ばねを、エネルギ蓄積状態から直接又は間接的に解放するように作動してよい。圧縮ばねは、解放後ただちに、流体薬剤を薬剤容器から押し出すようにプランジャ封止材に当たって作用してよい。圧縮ばねは、ピストンに当たって作用してよく、ピストンは、プランジャ封止材に作用して流体薬剤を薬剤容器から押し出す。薬剤送達の為に流体が薬剤容器から流体経路接続部、無菌流体導管、及び挿入機構を通ってユーザの体内へ流れることを可能にする為に、流体経路接続部は、駆動機構の起動前に、又は起動と同時に、又は起動後に、穴あけ可能封止材を貫通して接続されてよい。少なくとも1つの実施形態では、流体が、挿入機構のマニホールド及びカニューレのみを通って流れることにより、薬剤送達前及び薬剤送達中の流体経路の無菌状態が維持される。そのような構成要素及びそれらの機能については、後で、より詳細に説明する。
【0041】
次に、
図2及び
図3に示された駆動機構の実施形態を参照すると、駆動機構100は、キャップ52、穴あけ可能封止材(見えない)、バレル58、及びプランジャ封止材60を有する薬剤容器50と、任意選択で接続マウント54と、を含む。薬剤容器50は、駆動ハウジング130の遠位端に取り付けられている。駆動ハウジング130内の、薬剤容器50とハウジング130の近位端との間で、駆動付勢部材122及びピストン110が圧縮されており、駆動付勢部材122は、ピストン110の接合面110Cに当たるように構成されており、これについては、本明細書において詳述される。任意選択で、駆動付勢部材122とピストン110の接合面110Cとの間でカバースリーブ140が利用されてよく、これは、例えば、駆動付勢部材122からピストン110にかけての力の分布をより均一にする為であり、且つ/又は、駆動付勢部材122のバックリングを防ぐ為であり、且つ/又は、付勢部材をユーザから見えなくする為である。ピストン110の接合面110Cは、封止材60の近位端と略隣接するか接触して静止するようになっている。
【0042】
図3に示されるように、ピストン110A、110Bは、2つの構成要素からなるものであってよく、プランジャ封止材と接触する接合面110Cを有してよい。ピストン110A、110Bには、テザー、リボン、ひも、又は他の保持ストラップ(本明細書では「テザー」512と称する)の一端が接続されてよい。例えば、テザー512は、組み立て完了時にピストン110A、110Bの2つの構成要素の間に保持されることによって、ピストン110A、110Bに接続されてよい。テザー512の別の端部は、送達制御機構500のウインチドラム520に接続されている。モータ530と、ギヤアセンブリと、テザー512の一端に接続されたウインチドラム520と、別の端部がピストン110A、110Bに接続されたテザー512とを使用して、送達制御機構500は、薬剤物質を薬剤容器50から押し出す為に利用されるピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の自由軸方向平行移動を、制御、計量調節、抵抗付与、又は他の方法で妨げるように機能する。従って、送達制御機構500及び駆動機構100(本明細書では一括して「制御送達駆動機構」と称される)は、連係して、ユーザに対する薬剤送達の流量又は特性を制御するように機能する。
【0043】
注目すべきこととして、本発明の送達制御機構500は、薬剤チャンバ21からの流体物質の送達を駆動しない。薬剤チャンバ21からの流体物質の送達は、付勢部材122がその最初のエネルギ蓄積状態から伸張してピストン110A、110B及びプランジャ封止材60に作用することによって引き起こされる。送達制御機構500は、逆に、付勢部材122がその最初のエネルギ蓄積状態から伸張することによってピストン110A、110B及びプランジャ封止材60が押されたときに、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の自由な動きに抵抗を付与するように機能する。モータ530は、制御、計量調節、抵抗付与、又は他の方法でプランジャ封止材の自由軸方向平行移動を妨げることにのみ使用され、プランジャ封止材の平行移動を駆動することには利用されない為、本発明の新規な実施形態では、より小さく、且つ/又は、よりエネルギ効率のよいモータが利用されてよい。送達制御機構500、具体的にはモータ530は、送達を駆動せず、送達の動きを制御するだけである。テザーは、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の動きを制限するか、他の方法で抑制するものであり、送達の為の力をかけるものではない。好ましい一実施形態によれば、本発明の制御送達駆動機構及び薬剤ポンプは、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の軸方向平行移動を計量調節するテザーに間接的に又は直接接続されたモータ530を含み、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の軸方向平行移動は付勢部材122によって駆動される。従って、モータ530は、インクリメンタルな動きが可能な、様々な電気機械式ソースから選択されてよく、例えば、ブラシ式DCモータ、ECモータ、ステッパモータ、ソレノイド、又は他の、制御された動きを生成できる技術から選択されてよい。少なくとも1つの実施形態では、モータは、ステッパモータであることが最も好ましい。
【0044】
駆動機構100の各構成要素は、起動後ただちに、薬剤容器50のプランジャ封止材60の遠位方向への軸方向平行移動を駆動することに使用されてよい。駆動機構100は、任意選択で、プランジャ封止材60の更なる軸方向平行移動を可能にするコンプライアンス機能を1つ以上含んでよく、これは、例えば、実質的に全薬剤用量がユーザに送達されたことを確認する為である。例えば、プランジャ封止材60自体は、薬剤容器からの薬剤流体のコンプライアンス押しが可能となる、ある程度の圧縮性があってよい。
【0045】
本発明の新規な制御送達駆動機構は、任意選択で、状態表示を薬剤用量送達に組み込んでよい。1つ以上の状態トリガ及び対応する状態読み取り器を使用して、動作前、動作中、及び動作後の駆動機構の状態を、電源/制御系に中継することにより、ユーザにフィードバックを与えることが可能である。そのようなフィードバックは、上述のように触覚的、視覚的、及び/又は聴覚的であってよく、ユーザが本装置を使用している間に複数の信号又は複数のタイプのフィードバックがユーザに与えられるように、冗長であってよい。例えば、ユーザは、初期フィードバックを与えられることにより、システムが動作していて薬剤送達の準備ができていることを確認することが可能である。そして、システムは、起動後ただちに、1つ以上の薬剤送達状態表示をユーザに与えることが可能である。薬剤送達の完了時には、駆動機構及び薬剤ポンプは、用量終了表示を与えることが可能である。用量終了表示は、ピストンがその軸方向平行移動の終点に達することに関連付けられている為、駆動機構及び薬剤ポンプは、真の用量終了表示をユーザに与える。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、
図2及び
図3に示されるように、用量終了状態表示がユーザに与えられるのは、状態読み取り器544が、テザー512上に配置された最終状態トリガ512Aと接触するか、最終状態トリガ512Aを認識した後であってよく、最終状態トリガ512Aは、薬剤容器50のバレル58内でのピストン110A、110B及びプランジャ60の軸方向移動の最後に状態読み取り器544と接触するようになっている。明確にする為に、テザー512は、状態読み取り器544との接触、又は状態読み取り器544による認識が可能な状態トリガ512Aを1つ以上有してよく、例えば、電気的接点、光学式マーキング、又は電気機械式ピン又は凹部を1つ以上有してよい。状態読み取り器544は、例えば、対応する電気的接点と接触する電気的スイッチ読み取り器であってよく、或いは、対応する光学式マーキングを認識する光学式読み取り器であってよく、或いは、対応するピン、穴、又は同様のテザー上の態様と接触するように構成された機械式又は電気機械式の読み取り器であってよい。状態トリガ512Aは、読み取り対象又は認識対象のテザー512に沿って、薬剤送達の開始と終了、並びに、薬剤送達中の所望のインクリメントに対応する場所に配置されてよい。薬剤ポンプが起動され、付勢部材122が緩んで薬剤送達が開始され、その結果として、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60に力がかると、ユーザに対する薬剤送達の流量又は特性の制御は、モータ530、ギヤアセンブリ、及びウインチドラム520が、テザー512を緩め、付勢部材122の伸張とピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の軸方向平行移動とを可能にすることによって行われる。これが行われると、テザー512の状態トリガ512Aが状態読み取り器544によって接触されるか、認識され、動作前、動作中、及び動作後の駆動機構の状態を、電源/制御系に中継することにより、ユーザにフィードバックを与えることが可能である。テザー512上に配置された状態トリガ512Aの数に応じて、インクリメンタル状態表示の頻度を自在に変えることが可能である。上述のように、本システムによって利用される状態トリガ512Aに応じて、ある範囲の状態読み取り器544が利用されてよい。
【0047】
好ましい一実施形態では、本明細書において
図6を参照して説明されるように、状態読み取り器544は、テザー512に張力をかけてよい。本システムが用量終了に達したら、テザー512はたるみ、状態読み取り器544は、(
図6において、状態読み取り器544の側面にある円柱状突起として示されている)支点の周りを回転することが可能になる。この回転によって電気式又は電気機械式のスイッチ、例えば、センサ540内のスイッチが操作され、テザー512におけるたるみが信号として電源/制御系400に伝達される。更に、状態ギヤ528が、センサ540に従うエンコーダとして動作することが可能である。このセンサとエンコーダの組み合わせを使用してモータ回転のフィードバックが与えられ、このフィードバックが、テザー512にたるみがないときのピストン110の位置に対して較正されてよい。同時に、状態読み取り器544及びセンサ/エンコーダ540は、センサ/エンコーダ540によってカウントされるモータの回転回数が予定数に達するまでテザー512のたるみを観察することにより、位置フィードバック、用量終了信号、及び閉塞などのエラーの表示を与える。
【0048】
ここで
図2及び
図3に示された実施形態に戻り、新規な駆動機構の更なる態様を、
図4A乃至
図4C、並びに
図5A乃至
図5Cを参照しながら説明する。
図4Aは、少なくとも第1の実施形態による、駆動機構の等角図を示しており、駆動機構の最初のロックされている段階を示している。バレル58内の、プランジャ封止材60と穴あけ可能封止材(見えない)との間の薬剤チャンバ21に、薬剤流体などの流体が、ユーザへの送達に備えて収容されてよい。穴あけ可能封止材は、キャップ52に隣接するか、少なくとも一部分がキャップ52内に保持される。ユーザによって起動されると、ただちに、流体経路接続部が、穴あけ可能封止材56を貫通して薬剤容器に接続されてよい。上述のように、この流体接続は、流体経路接続部の穴あけ部材によって促進されてよく、この穴あけ部材は、ユーザの身体への薬剤流体の送達の為に、穴あけ可能封止材に穴をあけ、流体経路接続部、流体導管、挿入機構、及びカニューレを通る、薬剤容器からの流体経路を完結させる。最初に、1つ以上のロック機構(図示せず)によって、付勢部材122が、ピストン110A、110B内で、最初のエネルギ蓄積位置に保持されてよい。本装置がユーザによって起動されると、ただちに、直接又は間接的に、それらのロック機構が取り外されて、駆動機構の動作が可能になってよい。
図5Aに示されるように、ピストン110及び付勢部材122は、両方とも、最初は、プランジャ封止材60の背後で圧縮されたエネルギ蓄積状態にある。付勢部材122は、本装置が起動されるまで、駆動ハウジング130の内側形状とピストン110A、110Bの接合面110Cとの間で、この状態を維持されてよい。ロック機構が取り外されるか変位すると、付勢部材122は、遠位方向(即ち、ハッチング矢印の方向)の軸方向に伸張する(即ち、減圧される)ことが可能になる。そのような伸張により、付勢部材122は、接合面110C及びピストン110に作用して、これらを遠位方向に平行移動させ、これによって、プランジャ封止材60が遠位方向に平行移動して、薬剤流体がバレル58の薬剤チャンバ21から押し出される。
【0049】
図4Bに示されるように、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60のそのような遠位方向の平行移動は、穴あけ可能封止材56を通して流体流をバレル58から押し出し続ける。少なくとも1つの実施形態では、用量終了状態表示がユーザに与えられるのは、状態読み取り器544が、テザー512上に配置されている、薬剤容器50のバレル58内でのピストン110A、110B及びプランジャ60の軸方向移動の終了に実質的に対応する状態トリガ512Aと接触するか、その状態トリガ512Aを認識した後であってよい。
図4Bに示されるように、状態トリガ512Aは、ユーザにインクリメンタル状態表示を与える為に、様々なインクリメントでテザー512に沿って配置され、例えば、特定の体積測定値に対応するインクリメントで配置される。少なくとも1つの実施形態では、状態読み取り器は、テザー上の対応する光学式状態トリガを認識するように構成された光学式状態読み取り器である。当業者であれば理解されるように、そのような光学式状態トリガは、光学式状態読み取り器による認識が可能なマーキングであってよい。別の実施形態では、状態読み取り器は、対応するピン、穴、又は同様のテザー上の態様と物理的に接触するように構成された電気式又は電気機械式の読み取り器である。電気的接点は、対応する電気式状態読み取り器と接触するか、他の方法で、対応する電気式状態読み取り器によって認識される状態表示器として、テザー上で同様に利用されてよい。状態トリガ512Aは、読み取り対象又は認識対象のテザー512に沿って、薬剤送達の開始と終了、並びに、薬剤送達中の所望のインクリメントに対応する場所に配置されてよい。
図5Bは、
図4Bに示された図の断面図を示す。図示されるように、テザー512は、駆動機構ハウジング130、付勢部材122を略軸方向に貫通し、ピストン110A、110Bに接続されて、ピストン110A、110Bと、ピストン110A、110Bに隣接して存在するプランジャ封止材60と、の軸方向平行移動を制限する。
【0050】
図4Cに示されるように、本発明の送達制御機構500は、薬剤チャンバ21からの流体物質の送達を駆動しない。薬剤チャンバ21からの流体物質の送達は、付勢部材122がその最初のエネルギ蓄積状態から伸張してピストン110A、110B及びプランジャ封止材60に作用することによって引き起こされる。送達制御機構500は、逆に、付勢部材122がその最初のエネルギ蓄積状態から伸張することによってピストン110A、110B及びプランジャ封止材60が押されたときに、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60の自由な動きに抵抗を付与するように機能する。モータ530及び送達制御機構500がテザー512を緩めると、付勢部材122は、プランジャ封止材60が穴あけ可能封止材56と実質的に接触するまで、そのエネルギ蓄積状態からの伸張を続行し、ピストン110A、110B及びプランジャ封止材60を駆動することが可能になる。これは、
図5Cに与えられた断面図において見ることができる。この時点では、ユーザへの薬剤送達の為に、薬剤物質のほぼ全量が、流体経路接続部300を介して薬剤チャンバ21から押し出されている。この、ピストン110A、110Bの位置に対応するように、状態トリガ512Aがテザー512に沿って構成されてよく、これによって、ピストン110A、110Bがその軸方向移動の終点に達すると、状態トリガ512Aが状態読み取り器544によって読み取られるか認識されて、真の用量終了表示がユーザに与えられる。上述のように、状態トリガ512Aは、読み取り対象又は認識対象のテザー512に沿って、薬剤送達の開始と終了、並びに、薬剤送達中の所望のインクリメントに対応する場所に配置されてよい。本発明の制御送達駆動機構及び/又は薬剤ポンプは更に、薬剤物質のほぼ全量が薬剤チャンバ21から押し出されたことを確実にする為のコンプライアンス押しを可能にしてよい。プランジャ封止材60自体は、薬剤容器からの、薬剤流体のコンプライアンス押しが可能となる、ある程度の圧縮性があってよい。例えば、ポップアウトプランジャ封止材、即ち、最初の状態からの変形が可能なプランジャ封止材が用いられた場合、このプランジャ封止材は、
図5Cに示されるとおり、薬剤容器からの、薬剤流体のコンプライアンス押しが行われるように、変形又は「ポップアウト」を引き起こされてよい。追加又は代替として、電気機械式状態スイッチ及び相互接続アセンブリを利用して、接触、接続、又は他の方法で、用量終了を信号でユーザに伝える為の電源/制御系への伝送を可能にしてよい。例えば、状態スイッチは、穴あけ可能封止材56の遠位側に配置されてよく、相互接続は、プランジャ封止材60の近位側に配置されてよく、これによって、バレル58内でのプランジャ封止材60の軸方向平行移動(及び任意選択でコンプライアンス押し)が実質的に完了すると、ただちに、状態スイッチ及び相互接続は、連係して、用量終了を信号でユーザに伝える為の電源/制御系への伝送を可能にする。この構成は更に、ユーザに対する真の用量終了表示を可能にする。
【0051】
図6は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、制御送達駆動機構の特定の構成要素の斜視図を示す。制御送達駆動機構は、状態読み取り器及び対応する1つ以上の状態トリガを有するインクリメンタル状態表示機構が組み込まれている。少なくとも1つの実施形態では、送達制御機構500のギヤアセンブリは、ピニオン530Aを有するモータ530を利用する。ピニオン530Aは、複合ギヤ526の第1のギヤ526Aと接触し、複合ギヤ526の第2のギヤ526Bは、ウォームギヤ524のギヤ面524Bと接触する。ウォームギヤ524のウォーム面524Aは、ウインチドラム520に接続されたドラムギヤ522と接触する。テザー512は、少なくとも一部分がウインチドラム520に巻き付けられる。モータ530がギヤアセンブリに作用すると、ピニオン530A、複合ギヤ526、ウォームギヤ524、及びドラムギヤ522のギヤ歯を噛み合わせることにより、動きがウインチドラム520に伝達されて、ウインチドラム520からテザー512の巻き付けが解かれる。上記で詳述されているように、テザー512の巻き付けが解かれると、テザー512がピストン110A、110Bに与える抵抗が減少し、付勢部材122がそのエネルギ蓄積状態から伸張することが可能になって、プランジャ封止材60が薬剤送達に向けて駆動される。ウインチドラム520からテザー512の巻き付けが解かれるにつれて、状態読み取り器544が、テザー512上の対応する1つ以上の状態トリガ512Aを読み取るか認識して、制御送達駆動機構の動作前、動作中、及び動作後のインクリメンタル状態表示を与えることが可能である。上述のように、本発明の実施形態においては、幾つかの状態読み取り器が利用されてよい。例えば、
図6に示された駆動機構は、所望の状態表示(例えば、送達された量、残っている量、送達の流量又は特性の変化等)に対応する、テザー512上にインクリメンタルに間隔を置いて配置された隆線、穴、又は他の態様と物理的に接触する機械式状態読み取り器544を利用してよい。状態トリガ512Aが状態読み取り器544に接触すると、状態読み取り器544は、状態ギヤ528の位置を計測することと、ユーザに対して状態表示を行う為の信号を電源/制御系に送信することと、をセンサ540に行わせる。上述のように、本明細書の実施形態では、インクリメンタル状態表示をユーザに与える為に、光学式状態読み取り器及び対応するトリガ、電気機械式状態読み取り器及び対応するトリガ、及び/又は、機械式状態読み取り器及び対応するトリガの全てが利用可能である。
【0052】
制御送達駆動機構100、薬剤送達ポンプ10、又は任意の個別構成要素の組み立て及び/又は製造において、幾つかの、当該技術分野において知られている材料や方法が利用されてよい。例えば、各構成要素及び/又は本装置の洗浄のために、イソプロピルアルコールやヘキサンなど、幾つかの既知の洗浄液が利用されてよい。幾つかの既知の粘着剤又は接着剤も同様に、製造工程で使用されてよい。更に、既知の、シリコン処理及び/又は注油用の液体及び工程も、新規な構成要素及び装置の製造時に使用されてよい。更に、最終製品の無菌状態を確保する為に、製造又は組み立ての1つ以上の段階において、既知の滅菌工程が使用されてよい。
【0053】
駆動機構の組み立て方法は、幾つかあってよい。ある組み立て方法では、まず、薬剤容器50が組み立てられ、これに、ユーザに送達される流体が充填されてよい。薬剤容器50は、キャップ52、穴あけ可能封止材56、バレル58、及びプランジャ封止材60を含む。穴あけ可能封止材56は、キャップ52とバレル58との間の、バレル58の遠位端に固定係合されてよい。バレル58は、開放近位端を通して薬剤流体が充填されてから、バレル58の近位端からプランジャ封止材60が挿入されてよい。穴あけ可能封止材56の遠位端には、任意選択の接続マウント54が取り付けられてよい。接続マウント54は、流体経路接続部の穴あけ部材の、薬剤容器50のバレル58への挿入をガイドすることが可能である。その後、薬剤容器50は、駆動ハウジング130の遠位端に取り付けられてよい。
【0054】
駆動ハウジング130の遠位端に、駆動付勢部材122が挿入されてよい。任意選択で、駆動ハウジング130の遠位端にカバースリーブ140が挿入されることによって、付勢部材122が実質的に覆われてよい。駆動ハウジング130の遠位端にピストンが挿入されてよく、それによって、ピストンは、少なくとも一部分が付勢部材122の軸方向通り抜け開口内にあり、付勢部材122は、付勢部材122の遠位端において、ピストン110A、110Bのピストン接合面110Cに接触することが可能になる。付勢部材122を囲み、ピストン110A、110Bのピストン接合面110Cと接触する為に、任意選択のカバースリーブ140が利用されてよい。ピストン110A、110B及び駆動付勢部材122、並びに、任意選択のカバースリーブ140は、駆動ハウジング130内に押し込められてよい。そのように組み立てられることにより、駆動付勢部材122は、最初の圧縮されたエネルギ蓄積状態で配置され、好ましくは、ピストン接合面110Cが、バレル58の近位端内で、プランジャ封止材60の近位面と接触した状態に置かれる。薬剤容器50が取り付けられるまで、ピストン、ピストン付勢部材、接触スリーブ、及び任意選択の構成要素は、駆動ハウジング130内に押し込められて、作動準備完了状態でロックされてよい。テザー512は、ピストン110A、110Bの近位端にあらかじめ接続されており、付勢部材122及び駆動
ハウジング130の軸方向開口を通り抜けて、薬剤ポンプの内部を曲がりくねって進み、テザー512の他端は、送達制御機構500のウインチドラム520に巻き付けられている。
【0055】
薬剤容器のキャップ及び/又は穴あけ可能封止材には、流体経路接続部、特に流体経路接続部の無菌スリーブが接続されてよい。流体経路接続部の他端には流体導管が接続されてよく、流体導管自体は挿入機構に接続され、流体経路は、開かれるか、接続されるか、他の方法で有効化されるときには、ユーザの体内への薬剤送達の為に、薬剤容器、流体経路接続部、流体導管、挿入機構から直接延びてカニューレを通る。かくして、この流体流経路を構成する各構成要素が組み立てられる。これらの構成要素は、幾つかの既知の方法で滅菌されてよく、その後、
図1Bに示されるように、薬剤ポンプのアセンブリプラットフォーム又はハウジングに、固定的に、又は取り外し可能に取り付けられてよい。
【0056】
駆動機構100又は薬剤ポンプ10の特定の任意選択の標準的な構成要素又は変形形態も、本発明の広さ及び範囲に収まる中で企図されている。例えば、実施形態は、本発明のモータ、駆動機構、及び薬剤ポンプへの給電に利用される1つ以上のバッテリを含んでよい。この用途には、当該技術分野において知られている一連のバッテリが利用されてよい。更に、ユーザが、薬剤ポンプ10の動作を目視したり、或いは、薬剤用量が終了したことを確認したりできるように、
図1Aに示されたように、上部ハウジング又は下部ハウジングが任意選択で透明又は半透明の窓18を1つ以上含んでよい。同様に、薬剤ポンプ10は、ハウジング12の底面上に粘着パッチ26及びパッチライナ28を含んでよい。粘着パッチ26は、薬剤用量の送達の為にユーザの身体に薬剤ポンプ10を粘着させる為に利用されてよい。当業者であれば容易に理解されるように、粘着パッチ26は、薬剤ポンプをユーザの身体に粘着させる為の粘着面を有してよい。粘着パッチ26の粘着面は、最初は非粘着性パッチライナ28で覆われていてよく、パッチライナ28は、薬剤ポンプ10をユーザの身体に接触させて配置する前に、粘着パッチ26から剥がされる。パッチライナ28を剥がすことによって、挿入機構200の封止メンブレン254も剥がれてよく、これによって、(
図1Cに示されるように)挿入機構は、薬剤送達の為にユーザの身体に対して開かれる。
【0057】
同様に、機能性を本発明の広さ及び範囲に収めながら、制御送達駆動機構100及び薬剤ポンプ10の構成要素の1つ以上を修正してよい。例えば、上述のように、薬剤ポンプ10のハウジングは、2つの別々の構成要素である上部ハウジング12A及び下部ハウジング12Bとして示されているが、これらの構成要素は、単一の一体型構成要素であってよい。上述のように、制御送達駆動機構及び/又は薬剤ポンプの1つ以上の構成要素同士を貼り合わせる為に、接着剤、粘着剤、或いは他の既知の材料又は方法が利用されてよい。或いは、制御送達駆動機構及び/又は薬剤ポンプの1つ以上の構成要素が、一体型構成要素であってよい。例えば、上部ハウジング及び下部ハウジングは、接着剤又は粘着剤、ねじ嵌合接続、干渉嵌合、溶融接合、溶着、超音波溶着などによって貼り合わせられる別々の構成要素であってよく、或いは、上部ハウジング及び下部ハウジングは、単一の一体型構成要素であってよい。そのような標準的な構成要素や機能的改変は、当業者であれば明らかであると考えられ、従って、本発明の広さ及び範囲に収まる。
【0058】
上述の説明から明らかなように、本明細書に開示の制御送達駆動機構及び薬剤ポンプは、薬剤容器からの自動化された薬剤送達の為の効率的で操作しやすいシステムを提供する。本明細書に記載の新規な実施形態は、薬剤物質の制御送達の為の駆動機構、並びに、そのような制御送達駆動機構が組み込まれた薬剤送達ポンプを提供する。本発明の駆動機構は、薬剤物質を薬剤容器から押し出す為に利用されるプランジャ封止材の自由軸方向平行移動を、計量調節、抵抗付与、又は他の方法で妨げることによって、薬剤送達の流量を制御するものであり、従って、薬剤物質を可変の流量及び/又は送達特性で送達することが可能である。更に、本発明の駆動機構には、薬剤送達の前、途中、及び後にユーザにフィードバックを与える状態表示機能が組み込まれている。例えば、ユーザは、本システムが動作していて薬剤送達の準備ができていることを識別する為の初期フィードバックを与えられてよい。その後、本システムは、起動後ただちに、ユーザに対して1つ以上の薬剤送達状態表示を行ってよい。薬剤送達の完了時には、駆動機構及び薬剤ポンプは、用量終了表示を行ってよい。本発明の新規な制御送達駆動機構は、ユーザによって直接又は間接的に起動されてよい。更に、本発明の制御送達駆動機構及び薬剤ポンプの新規な構成は、貯蔵時、輸送時、及び本装置の動作中の流体経路の無菌状態を維持する。本装置内の薬剤流体の移動経路は完全に無菌状態に維持される為、製造工程では、これらの構成要素の滅菌のみを行えばよい。そのような構成要素として、駆動機構の薬剤容器と、流体経路接続部と、無菌流体導管と、挿入機構と、がある。本発明の少なくとも1つの実施形態では、電源/制御系、アセンブリプラットフォーム、制御アーム、起動機構、ハウジング、及び他の、薬剤ポンプの構成要素は、滅菌不要である。このことにより、本装置の製造しやすさが大幅に高まり、関連する組み立てコストが下がる。従って、本発明の装置は、組み立て完了時の最終滅菌が不要である。
【0059】
薬剤ポンプの製造方法は、制御送達駆動機構及び薬剤容器の両方を、別々に、又は一体型構成要素として、薬剤ポンプのアセンブリプラットフォーム又はハウジングに取り付ける工程を含む。本製造方法は更に、流体経路接続部、薬剤容器、及び挿入機構をアセンブリプラットフォーム又はハウジングに取り付ける工程を含む。上述のように、電源/制御系、起動機構、及び制御アームを含む、薬剤ポンプの更なる構成要素も、アセンブリプラットフォーム又はハウジングに取り付けられるか、事前形成されているか、事前組み付けされていてよい。本装置の動作時にユーザと接触する薬剤ポンプのハウジング面には、粘着パッチ及びパッチライナが取り付けられてよい。
【0060】
薬剤ポンプを動作させる方法は、ユーザが起動機構を起動するステップと、制御アームを変位させて挿入機構を作動させるステップと、制御された流量又は薬剤送達特性に従って薬剤ポンプ内を流れるように流体薬剤を駆動すべく、制御送達駆動機構を起動するように電源/制御系を作動させるステップと、を含む。本方法は更に、起動機構を起動する前に任意選択の体表センサを作動させるステップを含んでよい。本方法は同様に、流体経路接続部と薬剤容器との間の接続を確立するステップを含んでよい。更に、本動作方法は、制御送達駆動機構内でプランジャ封止材を平行移動させるステップを含んでよく、この平行移動は、ユーザの身体に流体薬剤を送達する為に、付勢部材の伸張が薬剤容器内のピストンに作用して、薬剤容器、流体経路接続部、無菌流体導管、及び挿入機構を通って流れるように流体薬剤を押し出すことによって行われ、ピストンの自由軸方向平行移動を抑制する為にテザーが利用される。挿入機構及び薬剤ポンプを動作させる方法は、上述のように、
図4A乃至
図4C、並びに
図5A乃至
図5Cを参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0061】
本明細書全体での意図は、本発明をいかなる1つの実施形態又は具体的な機能集合体にも限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。本発明から逸脱しない限り、説明及び図解された実施形態に対して、様々な変更及び修正が行われてよい。本明細書中で参照された特許文献、科学文献、コンピュータプログラム、及びアルゴリズムのそれぞれの開示は、参照によってその全体が組み込まれている。