特許第6355170号(P6355170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6355170-車両制御システム 図000002
  • 特許6355170-車両制御システム 図000003
  • 特許6355170-車両制御システム 図000004
  • 特許6355170-車両制御システム 図000005
  • 特許6355170-車両制御システム 図000006
  • 特許6355170-車両制御システム 図000007
  • 特許6355170-車両制御システム 図000008
  • 特許6355170-車両制御システム 図000009
  • 特許6355170-車両制御システム 図000010
  • 特許6355170-車両制御システム 図000011
  • 特許6355170-車両制御システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355170
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/037 20060101AFI20180702BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180702BHJP
   B60R 25/31 20130101ALI20180702BHJP
   B60R 25/24 20130101ALN20180702BHJP
【FI】
   B60R16/037
   B60R16/02 660B
   B60R25/31
   !B60R25/24
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-33718(P2016-33718)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-149278(P2017-149278A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】西台 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】石原 直幸
(72)【発明者】
【氏名】富田 洋輔
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−187523(JP,A)
【文献】 特開2014−125779(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/174526(WO,A1)
【文献】 特開2013−148435(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0287257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/037
B60R 16/02
B60R 25/31
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両を制御する車両制御装置と、
ユーザにより所持され、前記車両制御装置と通信を行う電子キーと、
ユーザにより所持され、前記電子キーと通信を行う携帯機と、を備え、
前記車両制御装置は、
前記車両においてユーザの乗車に関する第1条件またはユーザの降車に関する第2条件が成立したことを検出した場合に、前記電子キーとの通信に基づいて、当該電子キーの所在位置を判定し、
前記電子キーの所在位置が車内であると判定した場合は、前記電子キーまたは前記車両において所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに降車意思があるか否かをさらに判定し、
ユーザに降車意思がなければ、前記電子キーと前記携帯機との間の通信を接続状態とし、ユーザに降車意思があれば、前記電子キーと前記携帯機との間の通信を切断状態とし、
前記電子キーの所在位置が車外であると判定した場合は、前記電子キーまたは前記車両において所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに乗車意思があるか否かをさらに判定し、
ユーザに乗車意思があれば、前記電子キーと前記携帯機との間の通信を接続状態とし、ユーザに乗車意思がなければ、前記電子キーと前記携帯機との間の通信を切断状態とする、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御装置は、
前記電子キーまたは前記携帯機からの通知に基づいて、前記電子キーと前記携帯機との間の通信を接続状態とすることに成功したか失敗したかを判別し、
失敗の場合は警報信号を出力する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
車両に搭載され、当該車両を制御する車両制御装置と、
ユーザにより所持され、前記車両制御装置と通信を行う電子キーと、
ユーザにより所持され、前記電子キーと通信を行う携帯機と、を備え、
前記車両制御装置は、
前記車両においてユーザの乗車に関する第1条件またはユーザの降車に関する第2条件が成立したことを検出した場合に、前記電子キーとの通信に基づいて、当該電子キーの所在位置を判定し、
前記電子キーの所在位置が車内であると判定した場合は、前記電子キーまたは前記車両において所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに降車意思があるか否かをさらに判定し、
ユーザに降車意思がなければ、前記携帯機と前記車両制御装置との間の通信を接続状態とし、ユーザに降車意思があれば、前記携帯機と前記車両制御装置との間の通信を切断状態とし、
前記電子キーの所在位置が車外であると判定した場合は、前記電子キーまたは前記車両において所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに乗車意思があるか否かをさらに判定し、
ユーザに乗車意思があれば、前記携帯機と前記車両制御装置との間の通信を接続状態とし、ユーザに乗車意思がなければ、前記携帯機と前記車両制御装置との間の通信を切断状態とする、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御装置は、
前記携帯機と前記車両制御装置との間の通信を接続状態とすることに失敗した場合は、警報信号を出力する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項1または請求項に記載の車両制御システムにおいて
記第1条件は、車両のドアが解錠されたこと、車両のエンジンが始動したこと、車両のシフトレバーがパーキング位置から移動したこと、の少なくとも1つを含み、
前記第2条件は、車両のシフトレバーがパーキング位置にあること、車両のエンジンが停止したこと、車両のドアが施錠されたこと、の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項1または請求項に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御装置は、
前記車両において前記第1条件または前記第2条件が成立したことに代えて、前記電子キーにおいて特定の操作が行われたことを検出した場合に、前記電子キーの所在位置を判定し、または、
前記車両において前記第1条件または前記第2条件が成立したことに代えて、前記携帯機において特定の操作が行われたことを検出した場合に、前記電子キーの所在位置を判定する、ことを特徴とする車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備わる制御装置と、ユーザが所持する電子キーおよび携帯機とから構成される車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子キーを用いて車両のドアの施錠・解錠を行うシステムとして、キーレスエントリシステムやパッシブエントリシステムがよく知られている。キーレスエントリシステムでは、電子キーを操作すると、電子キーから車両側に遠隔操作信号が送信され、この信号に基づいてドアの施錠・解錠が行われる。パッシブエントリシステムでは、ユーザがドアのノブに接近または接触したことが検知されると、車両側から応答要求信号が送信され、この信号を受信した電子キーから返信される応答信号に基づいて、ドアの施錠・解錠が行われる。
【0003】
一方、車両には各種の車載装置が搭載されているが、たとえばシートの位置やドアミラーの角度などは、ユーザが自分の好みに応じて設定できるようになっている。また、カーナビゲーション装置やオーディオ装置、空調装置などにおける各種の設定も、ユーザが自由に行うことができる。しかし、これらの設定を乗車のたびに行うのは、ユーザにとってきわめて煩雑である。この対策として、電子キーの所有者ごとに、各車載装置の設定情報をカスタマイズ情報として登録しておき、乗車時に電子キーのIDに基づいてカスタマイズ情報を読み出し、各車載装置の設定を自動的に行う方法がある。しかし、1台の車両に対して供与される電子キーの数には限りがあるから、この方法では不特定多数のユーザが車両を共同利用するカーシェアリングなどへの対応は困難である。
【0004】
そこで、ユーザの所有するスマートフォンなどの携帯機に、カスタマイズ情報を登録しておき、乗車時に携帯機から電子キーへカスタマイズ情報をダウンロードし、この情報を電子キーから車両側に送って車載装置の自動設定を行うことで、多数のユーザに対応できるようにしたシステムが、本出願人によって提案されている(特願2016−27033号)。このシステムでは、ユーザが乗車する際に、電子キーと携帯機との間でペアリング(Pairing)を行って、両者間で通信が確立していることが必須である。このペアリングを忘れて通信が確立していないと、携帯機のカスタマイズ情報に基づく車載装置の自動設定は不可能となる。その一方で、ユーザが降車した後も、電子キーと携帯機との間のペアリングが継続したままになっていると、電子キーと携帯機に搭載されたそれぞれのバッテリが消耗する。
【0005】
なお、特許文献1には、スマートフォンなどの携帯機に、緊急通報用のアプリケーションソフトウェアをインストールしておき、車両側の制御装置で車両事故が検出されたときに、携帯機から緊急通報センタに自動的に緊急通報が送信されるようにした緊急通報システムが開示されている。このシステムにおいては、携帯機と車両側の制御装置との間で通信が確立していることが必須であり、通信が確立していないと、携帯機から緊急通報センタへの緊急通報の送信が不可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−131135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、携帯機と電子キーまたは携帯機と車両との間で、通信が必要な場合は自動的に通信を確立させ、通信が不要な場合は自動的に通信を切断できる車両制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による車両制御システムは、車両に搭載され当該車両を制御する車両制御装置と、ユーザにより所持され車両制御装置と通信を行う電子キーと、ユーザにより所持され電子キーと通信を行う携帯機とを備えている。車両制御装置は、 車両においてユーザの乗車に関する第1条件またはユーザの降車に関する第2条件が成立したことを検出した場合に、電子キーとの通信に基づいて当該電子キーの所在位置を判定する。そして、電子キーの所在位置が車内であると判定した場合は、電子キーまたは車両において所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに降車意思があるか否かをさらに判定し、ユーザに降車意思がなければ、電子キーと携帯機との間の通信を接続状態とし、ユーザに降車意思があれば、電子キーと携帯機との間の通信を切断状態とする。また、電子キーの所在位置が車外であると判定した場合は、電子キーまたは車両において所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに乗車意思があるか否かをさらに判定し、ユーザに乗車意思があれば、電子キーと携帯機との間の通信を接続状態とし、ユーザに乗車意思がなければ、電子キーと携帯機との間の通信を切断状態とする。
【0009】
このような車両制御システムによると、車両制御装置は、電子キーとの通信によって電子キーの所在位置を確認し、その所在位置に応じて電子キーと携帯機とを、接続状態または切断状態に制御する。このため、電子キーが携帯機との通信を必要とする場所にある場合は、確実に両者間の通信を確立することができる。また、電子キーが携帯機との通信を必要としない場所にある場合は、両者間の通信を切断して、バッテリの消耗を抑えることができる。
【0010】
また、車両制御装置と携帯機との間に電子キーが介在するので、電子キーがゲートウェイの役割を果たすこととなる。このため、たとえば携帯機がインターネットに接続されていても、車両制御装置と携帯機との間で直接通信を行う場合に比べて、車両側のセキュリティ性を高めることができる。
【0013】
本発明において、車両制御装置は、電子キーまたは携帯機からの通知に基づいて、電子キーと携帯機との間の通信を接続状態とすることに成功したか失敗したかを判別し、失敗の場合は警報信号を出力するように構成されていてもよい。
【0014】
本発明において、車両制御装置は、電子キーと携帯機との間の通信を接続状態または切断状態にすることに代えて、携帯機と車両制御装置との間の通信を接続状態または切断状態にするように構成されていてもよい。
【0017】
また、車両制御装置は、携帯機と車両制御装置との間の通信を接続状態とすることに失敗した場合は、警報信号を出力してもよい。
【0018】
本発明において、第1条件は、車両のドアが解錠されたこと、車両のエンジンが始動したこと、車両のシフトレバーがパーキング位置から移動したこと、の少なくとも1つを含み、第2条件は、車両のシフトレバーがパーキング位置にあること、車両のエンジンが停止したこと、車両のドアが施錠されたこと、の少なくとも1つを含むものであってもよい
【0019】
本発明において、車両制御装置は、車両において第1条件または第2条件が成立したことに代えて、電子キーにおいて特定の操作が行われたことを検出した場合に、電子キーの所在位置を判定してもよい。または、車両において第1条件または第2条件が成立したことに代えて、携帯機において特定の操作が行われたことを検出した場合に、電子キーの所在位置を判定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両制御システムによれば、携帯機と電子キーまたは携帯機と車両との間で、通信が必要な場合は自動的に通信を確立させ、通信が不要な場合は自動的に通信を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による車両制御システムの概略図である。
図2】第1実施形態の車両制御システムのブロック図である。
図3】第1実施形態の車両制御システムのフローチャートである。
図4】第1実施形態におけるペアリング完了通知画面を示す図である。
図5】第1実施形態におけるペアリング解除通知画面を示す図である。
図6】第1実施形態の他の例によるフローチャートである。
図7】第2実施形態の車両制御システムのブロック図である。
図8】第2実施形態の車両制御システムのフローチャートである。
図9】第2実施形態におけるペアリング完了通知画面を示す図である。
図10】第2実施形態におけるペアリング解除通知画面を示す図である。
図11】携帯機のペアリング開始案内画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0023】
<第1実施形態>
第1実施形態による車両制御システムの構成につき、図1および図2を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、車両制御システム100は、車両Vに搭載された車両制御装置1と、この車両制御装置1と無線通信を行う電子キー2と、この電子キー2と無線通信を行うスマートフォン3とから構成される。電子キー2とスマートフォン3は、ユーザAが所持している。ユーザAは、この電子キー2とスマートフォン3とを用いて、たとえば、前述したような車載装置のカスタマイズ設定などを行う。なお、図1では、1台の車両Vを1人のユーザAが利用する場合を例に挙げているが、1台の車両Vを複数のユーザが共同利用するカーシェアリングなどの場合にも、本システムを適用することができる。
【0025】
ここで、スマートフォン3は、本発明における「携帯機」の一例である。
【0026】
図1の車両制御システム100においては、電子キー2の所在位置に応じて、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が、自動的に接続状態または切断状態に制御される。その詳細については後述するが、概要を述べると以下の通りである。たとえば、図1(a)のように、ユーザAが車両Vに乗車している場合、つまり電子キー2が車内にある場合は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が、接続状態に制御される。一方、図1(b)のように、ユーザAが車両Vから降車している場合、つまり電子キー2が車外にある場合は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が、切断状態に制御される。その他、電子キー2の所在位置と、ユーザAの乗車意思または降車意思の有無とに基づいて、接続・切断の制御を行うこともできる。
【0027】
図2は、車両制御装置1、電子キー2、およびスマートフォン3の具体的構成を示している。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0028】
車両制御装置1は、制御部10、記憶部11、LF(Low Frequency)送信部12、UHF(Ultra High Frequency)受信部13、リクエストスイッチ14、ドアロック装置15、車載装置駆動部16、および警報信号出力部17を備えている。車両制御装置1には、これらの他にも各種のブロックが含まれているが、本発明に直接関係しないため、図示を省略してある。なお、図2の車両制御システム100は、電子キー2の操作によりドアの施錠または解錠を行うキーレスエントリシステムでもあり、また、ユーザがドアのノブに接近または接触した時に、車両制御装置1と電子キー2との間で通信を行って、ドアの施錠または解錠を行うパッシブエントリシステムでもある。
【0029】
制御部10は、CPUを備えており、車両制御装置1の動作を制御する。記憶部11は、ROMやRAMなどのメモリから構成される。LF送信部12は、電子キー2の所在位置を確認するためのLF信号を、所定の周期で間欠的に送信する。UHF受信部13は、電子キー2から送信される後述の応答信号を受信する。リクエストスイッチ14は、電子キー2とともにパッシブエントリシステムを構成するもので、ドアのノブ付近に設けられており、ユーザの接近または接触を検出する。
【0030】
ドアロック装置15は、車両の各ドアの施錠や解錠を行うロック機構と、このロック機構を作動させる駆動回路などから構成される。車載装置駆動部16は、シート、ドアミラー、カーナビゲーション装置、オーディオ装置、空調装置、照明灯などの車載装置(図示省略)を駆動するための駆動回路や制御回路などから構成される。警報信号出力部17は、電子キー2とスマートフォン3との間で、後述する通信異常が発生した場合に、警報信号を出力する。
【0031】
電子キー2は、制御部20、記憶部21、LF受信部22、UHF送信部23、近距離無線部24、操作部25、表示部26、およびバッテリ27を備えている。電子キー2には、これら以外のブロックも含まれているが、本発明に直接関係しないため、図示を省略してある。
【0032】
制御部20は、CPUを備えており、電子キー2の動作を制御する。記憶部21は、ROMやRAMなどのメモリから構成される。LF受信部22は、車両制御装置1のLF送信部12から送信された前述のLF信号を受信する。UHF送信部23は、後述する応答信号をUHF通信により車両制御装置1へ送信する。近距離無線部24は、ワイヤレスLANやBluetooth(登録商標)などの近距離無線用の通信回路から構成される。操作部25は、電子キー2の本体に設けられた複数の操作ボタンから構成される。表示部26は、電子キー2の本体に設けられた複数のLEDランプから構成される。バッテリ27は、リチウム電池(一次電池)などからなり、電子キー2の各部に電源を供給する。
【0033】
スマートフォン3は、制御部30、記憶部31、操作部32、表示部33、近距離無線部34、通話部35、通信部36、およびバッテリ37を備えている。スマートフォン3には、これら以外にも各種のブロックが含まれているが、本発明に直接関係しないため、図示を省略してある。
【0034】
制御部30は、CPUを備えており、スマートフォン3の動作を制御する。記憶部31は、ROMやRAMなどのメモリから構成される。操作部32は、スマートフォン3の本体に設けられた操作ボタンや、表示部33に表示される操作ボタンから構成される。表示部33は、スマートフォン3の本体に設けられた液晶パネルとその駆動回路などから構成される。近距離無線部34は、電子キー2の近距離無線部24と同様の通信回路から構成される。通話部35は、スピーカ、マイクロフォン、および音声回路などから構成される。通信部36は、インターネット回線と接続されてサーバなどと通信を行う通信回路から構成される。バッテリ37は、充電可能なリチウム電池(二次電池)などからなり、スマートフォン3の各部に電源を供給する。
【0035】
次に、上記構成からなる車両制御システム100において、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を制御する手順につき、図3のフローチャートを参照しながら説明する。以下では、ユーザが乗車または降車する際に、電子キー2とスマートフォン3の双方を所持していることが前提となる。
【0036】
車両制御装置1は、ユーザの乗車に関する乗車条件、または、ユーザの降車に関する降車条件が成立したか否かを監視している(ステップS101)。乗車条件とは、ユーザの乗車が予想される場合、またはユーザが実際に乗車した場合に成立する条件であり、車両のドアが解錠されたこと、車両のエンジンが始動したこと、車両のシフトレバーがパーキング位置から移動したこと、の少なくとも1つが含まれる。降車条件とは、ユーザの降車が予想される場合、またはユーザが実際に降車した場合に成立する条件であり、車両のシフトレバーがパーキング位置にあること、車両のエンジンが停止したこと、車両のドアが施錠されたこと、の少なくとも1つが含まれる。
【0037】
ここで、乗車条件は、本発明における「第1条件」の一例であり、降車条件は、本発明における「第2条件」の一例である。
【0038】
乗車条件または降車条件が成立すると(ステップS101;YES)、車両制御装置1のLF送信部12は、電子キー2の所在位置を確認するためのLF信号を、所定の周期で間欠的に送信する動作を開始する(ステップS102)。このLF信号は、電子キー2のLF受信部22で、所定の周期で間欠的に受信される(ステップS201)。
【0039】
電子キー2は、LF受信部22でLF信号が受信されると、制御部20においてLF信号の強度を測定し、その測定値を応答信号と共にUHF送信部23から送信する(ステップS202)。つまり、応答信号には信号強度の情報が含まれている。この応答信号は、車両制御装置1のUHF受信部13で受信される(ステップS103)。
【0040】
車両制御装置1は、UHF受信部13で応答信号が受信されると、制御部10において、応答信号に含まれている信号強度の情報に基づき、車両から電子キー2までの距離を演算し、その演算結果から電子キー2の所在位置を判定する(ステップS104)。電子キー2が車両から離れると信号強度は小さくなり、電子キー2が車両に近づくと信号強度は大きくなるので、当該信号強度の値を所定の閾値と比較することで、電子キー2が車内にあるか車外にあるかを判別することができる。
【0041】
次に、車両制御装置1は、電子キー2の所在位置に応じて、ペアリング制御コマンドを電子キー2へ送信する(ステップS105)。このペアリング制御コマンドは、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を、接続状態または切断状態にするためのコマンドである。詳しくは、電子キー2が車内にあると判定された場合は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を接続状態にするためのペアリング制御コマンドが、LF送信部12から電子キー2へ送信される。一方、電子キー2が車外にあると判定された場合は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を切断状態にするためのペアリング制御コマンドが、LF送信部12から電子キー2へ送信される。送信されたペアリング制御コマンドは、電子キー2のLF受信部22で受信される(ステップS203)。
【0042】
LF受信部22がペアリング制御コマンドを受信すると、電子キー2の制御部20は、当該コマンドに応じて、電子キー2とスマートフォン3との間のペアリングを実行または解除する(ステップS204、S301)。
【0043】
詳しくは、ペアリング制御コマンドが接続を指令するコマンド(以下「接続コマンド」という)である場合、すなわち電子キー2が車内にある場合は、電子キー2の近距離無線部24とスマートフォン3の近距離無線部34との間で通信を行ってペアリングを実行し、電子キー2とスマートフォン3とを接続状態にする。一方、ペアリング制御コマンドが切断を指令するコマンド(以下「切断コマンド」という)である場合、すなわち電子キー2が車外にある場合は、近距離無線部24、34間の通信を停止してペアリングを解除し、電子キー2とスマートフォン3とを切断状態にする。このようにして、電子キー2の所在位置に応じて、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が、接続状態または切断状態に制御される。
【0044】
スマートフォン3では、ステップS301において、ペアリングの実行により電子キー2との通信が確立された場合は、表示部33の画面に、図4に示すようなペアリング完了通知画面33aを表示する(ステップS302)。また、ペアリングの解除により電子キー2との通信が切断された場合は、表示部33の画面に、図5に示すようなペアリング解除通知画面33bを表示する(ステップS302)。
【0045】
電子キー2は、ステップS204でペアリングの実行または解除を行った後、ペアリング制御の結果を、UHF送信部23からUHF信号として車両制御装置1へ送信する(ステップS205)。ペアリング実行による接続が成功した場合、またはペアリング解除による切断が成功した場合は、それぞれ「接続OK」「切断OK」の通知が送信され、それらが失敗した場合は、それぞれ「接続NG」「切断NG」の通知が送信される。
【0046】
車両制御装置1は、電子キー2から送信されたUHF信号、すなわちペアリング制御の結果を、UHF受信部13で受信すると(ステップS106)、当該結果を参照してペアリングの成功・失敗を判別し、さらに警報出力の要否を判定する(ステップS107)。たとえば、ステップS104で電子キー2が車内にあると判定され、ステップS106で受信したペアリング制御の結果が「接続OK」であった場合は、警報出力は不要と判定され(ステップS107;NO)、警報信号は出力されない。しかし、ステップS104で電子キー2が車内にあると判定されたにもかかわらず、ステップS106で受信したペアリング制御の結果が「接続NG」であった場合は、電子キー2とスマートフォン3とがペアリングされていないので、警報出力が必要と判定し(ステップS107;YES)、警報信号出力部17から警報信号を出力する(ステップS108)。この警報信号に基づいて、たとえばカーナビゲーション装置の画面に、警告メッセージなどが表示される(図示省略)。
【0047】
電子キー2とスマートフォン3との間でペアリングが行われて、双方の近距離無線部24、34間の通信が確立した後は、電子キー2とスマートフォン3を用いて、前述した車載装置のカスタマイズ設定などを行うことが可能となる。
【0048】
上述した第1実施形態によれば、車両制御装置1は、電子キー2とのLF通信によって、電子キー2の所在位置を確認し、その所在位置に応じたペアリング制御コマンド(接続コマンドまたは切断コマンド)を電子キー2へ送信する。そして、このコマンドに基づいて、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が、接続状態または切断状態となる。このため、電子キー2が車内にあってスマートフォン3との間で通信が必要な場合は、確実に両者間の通信を確立することができる。一方、電子キー2が車外にあってスマートフォン3との間で通信が不要な場合は、両者間の通信が自動的に切断されるので、電子キー2およびスマートフォン3のそれぞれのバッテリ27、37の消耗を抑えることができる。
【0049】
また、車両制御装置1とスマートフォン3との間に電子キー2が介在するので、電子キー2がゲートウェイの役割を果たすこととなる。このため、たとえばスマートフォン3がインターネットに接続されていても、車両制御装置1とスマートフォン3との間で直接通信を行う場合に比べて、車両側のセキュリティ性を高めることができる。
【0050】
以上の例では、車両制御装置1は、電子キー2の所在位置のみに基づいて、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を接続状態または切断状態に制御したが、電子キー2の所在位置と、ユーザの乗車意思または降車意思とに基づいて、両者間の通信を制御してもよい。この場合の手順は、以下のようになる。
【0051】
車両制御装置1は、電子キー2の所在位置が車内であると判定した場合は、電子キー2または車両Vにおいて所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに降車意思があるか否かをさらに判定する。たとえば、ユーザが車内にいる状態(電子キー2が車内にある状態)で、エンジンが始動したり、シフトレバーがパーキング以外の位置へシフトしたり、ドアが施錠されたりした場合は、ユーザに降車意思がないと判定される。この場合、車両制御装置1は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を接続状態にするための接続コマンドを、電子キー2へ送信する(ステップS105)。一方、ユーザが車内にいる状態で、エンジンが停止したり、シフトレバーがパーキング位置へシフトしたり、ドアが解錠されたりした場合は、ユーザに降車意思があると判定される。この場合、車両制御装置1は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を切断状態にするための切断コマンドを、電子キー2へ送信する(ステップS105)。
【0052】
また、車両制御装置1は、電子キー2の所在位置が車外であると判定した場合は、電子キー2または車両Vにおいて所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに乗車意思があるか否かをさらに判定する。たとえば、ユーザが車外にいる状態(電子キー2が車外にある状態)で、ドアが解錠された場合は、ユーザに乗車意思があると判定される。この場合、車両制御装置1は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を接続状態にするための接続コマンドを、電子キー2へ送信する(ステップS105)。一方、ユーザが車外にいる状態で、ドアが施錠された場合は、ユーザに乗車意思がないと判定される。この場合は車両制御装置1は、電子キー2とスマートフォン3との間の通信を切断状態にするための切断コマンドを、電子キー2へ送信する(ステップS105)。
【0053】
このようにして、電子キー2の所在位置と、ユーザの乗車意思または降車意思とに応じて、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が、接続状態または切断状態に制御される。
【0054】
図6は、第1実施形態の変形例によるフローチャートを示している。図6において、図3と同じ処理を行うステップには、同じ符号を付してある。図6では、ステップS105とステップS106との間に、ステップS105a、S105bが追加されている。ステップS105aでは、ステップS105で送信したペアリング制御コマンドが、接続コマンドであるか否かが判定される。そして、接続コマンドである場合は(ステップS105a;YES)、電子キー2とスマートフォン3との間の通信が接続状態になるまでの間、つまりステップS106で接続OKの結果を受信するまでの間、ステップS105bにおいて、ペアリングが未完了(通信が未接続状態)であることを報知する。この報知は、たとえば、カーナビゲーション装置の画面に表示されるメッセージであってよいし、ランプの点灯や音声の出力などであってもよい。図6のその他のステップについては、図3と同じであるので、重複説明は省略する。
【0055】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態による車両制御システムの全体構成は、図1に示した第1実施形態と基本的に同じである。但し、第1実施形態では、電子キー2とスマートフォン3との間でペアリングが行われたが、第2実施形態では、車両制御装置1とスマートフォン3との間でペアリングが行われる点が異なる。
【0056】
図7は、第2実施形態による車両制御システム200の構成を示している。図7において、図2と相違する点は、車両制御装置1に近距離無線部18が追加されていることである。その他の構成については、図2と変わりがないので、重複説明を省略する。
【0057】
図8は、第2実施形態における通信制御の手順を示している。図8において、図3と同じ処理を行うステップには、同じ符号を付してある。第2実施形態では、車両制御装置1が直接スマートフォン3と通信を行ってペアリングを実行するので、車両制御装置1から電子キー2へペアリング制御コマンドを送る必要がない。また、ペアリングの成功・失敗も車両制御装置1が自ら判別できるので、電子キー2やスマートフォン3からペアリング成否について通知を受ける必要もない。こうしたことから、図8では、ステップS104の次にステップS104aが追加されており、また、図3のS105、S106、S203〜S205が省略されている。
【0058】
前述のように、第2実施形態では、車両制御装置1とスマートフォン3との間でペアリングを行うので、車両制御装置1は、図8のステップS104で電子キー2の位置を判定した後、近距離無線部18によりスマートフォン3の近距離無線部34と通信を行う。そして、電子キー2が車内にある場合は、車両制御装置1とスマートフォン3との間のペアリングを実行し、電子キー2が車外にある場合は、車両制御装置1とスマートフォン3との間のペアリングを解除する(ステップS104a、S301)。スマートフォン3では、ペアリングが実行された場合は、図9のようなペアリング完了通知画面33cが表示部33に表示され、ペアリングが解除された場合は、図10のようなペアリング解除通知画面33dが表示部33に表示される(ステップS302)。その他のステップについては、図3と同じであるので、重複説明を省略する。
【0059】
上述した第2実施形態によれば、車両制御装置1は、電子キー2とのLF通信によって、電子キー2の所在位置を確認し、その所在位置に応じて、車両制御装置1とスマートフォン3との間の通信を接続状態または切断状態に制御する。このため、ユーザが車内にいて、車両制御装置1とスマートフォン3との間で通信が必要な場合は、確実に両者間の通信を確立することができる。一方、ユーザが車外にいて、車両制御装置1とスマートフォン3との間で通信が不要な場合は、両者間の通信が自動的に切断されるので、スマートフォン3のバッテリ37の消耗を抑えることができる。
【0060】
なお、第2実施形態においても、電子キー2の所在位置と、ユーザの乗車意思または降車意思とに基づいて、車両制御装置1とスマートフォン3との間の通信を制御してもよい。この場合の手順は、以下のようになる。
【0061】
車両制御装置1は、電子キー2の所在位置が車内であると判定した場合は、電子キー2または車両Vにおいて所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに降車意思があるか否かをさらに判定する。たとえば、ユーザが車内にいる状態(電子キー2が車内にある状態)で、エンジンが始動したり、シフトレバーがパーキング以外の位置へシフトしたり、ドアが施錠されたりした場合は、ユーザに降車意思がないと判定される。この場合、車両制御装置1は、スマートフォン3と車両制御装置1との間の通信を接続状態にする(ステップS104a、S301)。一方、ユーザが車内にいる状態で、エンジンが停止したり、シフトレバーがパーキング位置へシフトしたり、ドアが解錠されたりした場合は、ユーザに降車意思があると判定される。この場合、車両制御装置1は、スマートフォン3と車両制御装置1との間の通信を切断状態にする(ステップS104a、S301)。
【0062】
また、車両制御装置1は、電子キー2の所在位置が車外であると判定した場合は、電子キー2または車両Vにおいて所定の操作が行われたことに基づいて、ユーザに乗車意思があるか否かをさらに判定する。たとえば、ユーザが車外にいる状態(電子キー2が車外にある状態)で、ドアが解錠された場合は、ユーザに乗車意思があると判定される。この場合、車両制御装置1は、スマートフォン3と車両制御装置1との間の通信を接続状態にする(ステップS104a、S301)。一方、ユーザが車外にいる状態で、ドアが施錠された場合は、ユーザに乗車意思がないと判定される。この場合は車両制御装置1は、スマートフォン3と車両制御装置1との間の通信を切断状態にする(ステップS104a、S301)。
【0063】
本発明は、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0064】
第1実施形態において、電子キー2とスマートフォン3との間でペアリングを行うに先立って、スマートフォン3の表示部33に、図11(a)に示したペアリング開始案内画面33eを表示してもよい。また、第2実施形態において、車両制御装置1とスマートフォン3との間でペアリングを行うに先立って、スマートフォン3の表示部33に、図11(b)に示したペアリング開始案内画面33fを表示してもよい。これらの画面には、ペアリングを行うことを通知するメッセージ50、60と、続行ボタン51、61と、中止ボタン52、62とが表示されている。続行ボタン51、61が押下されるとペアリングが開始され、中止ボタン52、62が押下されると、ペアリングは中止される。
【0065】
上記の実施形態においては、図3および図6のステップS205において、ペアリング制御の結果を、電子キー2から車両制御装置1へ送信したが、ペアリング制御の結果を、スマートフォン3から車両制御装置1へ送信してもよい。この場合は、たとえばスマートフォン3にUHF送信部を設け、このUHF送信部からペアリング制御の結果を送信すればよい。
【0066】
上記の実施形態においては、図3図6図8のステップS101において、車両制御装置1が、乗車条件または降車条件の成立有無を判断し、いずれかの条件が成立したことが検出された場合に、電子キー2の所在位置確認用のLF信号を送信したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、電子キー2またはスマートフォン3において、ユーザによる特定の操作が行われたことが検出された場合に、車両制御装置1は、所定の条件が成立したとしてLF信号を送信してもよい。
【0067】
上記の実施形態においては、図3図6図8のステップS104において、車両制御装置1が電子キー2の所在位置を判定したが、他の方法として、ステップS202において、電子キー2が信号強度に基づいて所在位置を自ら判定してもよい。この場合、電子キー2は、信号強度に代えて所在位置の情報を応答信号に含めて送信し、車両制御装置1は、受信した応答信号に基づいて、電子キー2の所在位置を判定する。
【0068】
上記の実施形態においては、電子キー2とスマートフォン3の使い方の例として、車載装置のカスタマイズ設定を例に挙げたが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、たとえば、特許文献1に示されているような、スマートフォンを経由した緊急通報にも適用することができる。
【0069】
上記の実施形態においては、携帯機としてスマートフォンを例に挙げたが、スマートフォンに代えて、他の携帯電話機や携帯型タブレットなどを携帯機として用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 車両制御装置
2 電子キー
3 スマートフォン(携帯機)
100、200 車両制御システム
A ユーザ
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11