特許第6355181号(P6355181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6355181
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ベルトクリーナ
(51)【国際特許分類】
   B65G 45/16 20060101AFI20180702BHJP
   B65G 45/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B65G45/16 A
   B65G45/12 B
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-164011(P2017-164011)
(22)【出願日】2017年8月29日
【審査請求日】2017年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312010308
【氏名又は名称】マフレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大徳 一美
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−199383(JP,A)
【文献】 特開平10−109731(JP,A)
【文献】 特開2000−007135(JP,A)
【文献】 特開2001−052786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 45/00−45/26
B08B 1/00−1/04,5/00−13/00
F16B 1/00−1/04,2/00−2/26
F16J 1/00−1/24,7/00−10/04
A47B 1/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の四角形棒状ゴム製弾性体が、戻り側ベルトの幅方向に配設された架台の溝に列設されたベルトクリーナにおいて、前記架台は、前側板と後側板と底板から構成されており、該ベルトクリーナは、前記四角形棒状ゴム製弾性体が、前記戻り側ベルトの幅方向へ倒れるのを防止するためのスラスト固定手段と、前記溝からの抜け出しを防止するための抜け止め手段を備えており、前記抜け止め手段は、前記後側板に設けられた雌ネジに螺合された吊り下げボルトに吊り下げられた抜け止め板と、前記四角形棒状ゴム製弾性体の固定側端末に設けられた抜け止め突起からなり、前記四角形棒状ゴム製弾性体は、前記架台の前記底板の長手方向に敷設された、圧縮性のある高さ調整材の上に載置されており、前記四角形棒状ゴム製弾性体の自由側端末が、前記戻り側ベルトに押し付けられることにより、前記高さ調整材が圧縮され、前記自由側端末が前記戻り側ベルトに当接せしめられ、前記高さ調整材の圧縮量に比例する押圧力で当接しているとともに、前記四角形棒状ゴム製弾性体が前記戻り側ベルトの摩擦力により、前記戻り側ベルトの進行方向に弾性的に撓むことにより、前記四角形棒状ゴム製弾性体の前記自由側端末が前記戻り側ベルトの表面に追随しながら当接することを特徴とするベルトクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原材料の輸送に用いるベルトコンベアの戻り側ベルト表面に付着した付着物を掻き取るベルトクリーナであり、ベルトの形状に合わせて掻き取り部の高さ調整を可能にしたベルトクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアは駆動プーリと従動プーリとの間に所定幅のゴム製ベルトをエンドレスに巻き付け、駆動プーリを回転させることによりベルトを両プーリ間で周回運動させるものである。通常搬送物はキャリアベルト(搬送側ベルト)に載せて搬送され、駆動プーリ側で払い出されリターンベルト(戻り側ベルト)となり従動プーリへ戻るが、戻り側ベルト表面に付着した搬送物(ベルトへの付着物)が途中で落下し、戻り側ベルト下に堆積する問題があった。又、付着物はリターンローラやスナッププーリを摩耗させたり、これらのローラに付着し、戻り側ベルトを蛇行させたりする問題があった。
【0003】
通常、戻り側ベルトの付着物を効率的に掻き落として回収するために、戻り側ベルトの最先端にベルトクリーナを設置している。ベルトクリーナには、固定された掻き板を戻り側ベルトに押し付けることにより付着物を掻き板で掻き取るスクレーパ式、ブラシを戻り側ベルトに接触させるブラシ方式、高圧の流体を吹き付ける洗浄方式などがあるが、簡単な構造で取り換えの容易なスクレーパ方式が多用されている。
【0004】
コンベアベルトは使用するにつれ徐々に摩耗し、中央部が選択的に大きく摩耗する。ベルトが古くなるとベルト中央部と端部では数ミリの厚み差が生じる。ベルトは運搬時の形状がトラフ癖となって、戻り側ベルトが凸円弧状となる。機長の長いベルトになると、コストや作業時間の制約からベルトの取り換えを全長に渡り一括してやらない場合もあり、中央部が摩耗している古いベルトと摩耗していない新しいベルトを接合して使用することもある。摩耗状態が不均一なベルトに対して、ベルトクリーナの高さ調整は、摩耗の一番大きな部分に合わせることになるが、押圧力はベルトの幅方向で不均一になってしまう。又、ベルトのエンドレス部(繋ぎ部)は経年的に剥離してエンドレス端部が剥がれてくる。この剥がれ部は戻り側ベルト表面から突き出ているので、ベルトクリーナと衝突し、ベルトやベルトクリーナの破損の危険性がある。又、ベルトクリーナの押圧力が適切でないと、エンドレスの剥がれやベルトの摩耗を助長しベルト劣化を促進する。従って、ベルトクリーナはベルト表面の付着物を掻き取るために不可欠であるが、定期的な調整や手入れが必要であり、適切な取り付けや使用方法を逸脱するとベルトを破損させ生産障害を起こす場合がある。今まで様々な形状、機能のベルトクリーナが提案されているが未だメンテナンスフリーで掻き取り効率に優れたベルトクリーナは具現化されていない。
【0005】
スクレーパ式のベルトクリーナに必要な要件は以下である。(1)ベルトクリーナを戻り側ベルトの表面に取り付ける際に、戻り側ベルトの幅方向の凹凸に対して、クリーナの掻き取り部(チップ)が精密に当接すること。(2)チップが戻り側ベルトに適切な押圧力で当接していること。(3)チップの摩耗による掻き取り性能の低下に合わせて、自動的にチップが上昇し、掻き取り性能を回復できること。(4)戻り側ベルトの強固な付着物やエンドレス部(接続部)の剥離に対して、チップが戻り側ベルトの走行方向に大きく撓んで、障害物を瞬時にやり過ごしてベルトクリーナの破損を回避すると同時に、正常な掻き取り状態に瞬時に復帰できること。(5)チップの寿命が長く、長期間にわたり確実に付着物を掻き取ることができること。(6)ベルトクリーナの調整周期や取り換え周期が長く、調整や取付け取り外しが容易であること。(7)ベルトクリーナ本体に付着物が付着しない、もしくは付着物の量が極めて少ないこと。以上の特性を満足しようとして従来多種多様のベルトクリーナが提案されているが、満足できる方法は具現化されていない。
【0006】
特開平10−109731号広報において、スポンジのようなクッション材をブレード(掻き板)の底に敷設して、掻き板と戻り側ベルトの片当たりが生じないようにしている。この方法においては、ベルトの速度に対してスポンジの復元速度が遅すぎるので、戻り側ベルトの凹凸に瞬時に追随できなかった。又、掻き板は戻り側ベルトから強い水平力を受けるので、クッションの伸縮力で掻き板を上昇させることは不可能であった。
【0007】
登録実用新案第3102461号広報において、複数の幅広の掻き取り板を2本のボルトでガイドしたスプリングで戻り側ベルトに押し付けて、掻き取り部の高さを自動的に高さ調整する方法が提案されている。この方法においては、スプリングを固定せず自由に上下運動させているが、略水平方向に作用する戻り側ベルトの摩擦力に対して、戻り側ベルトの凹凸に柔軟に追随するのは不可能であった。又、掻き板の幅が広く、2本のスプリングが平行に上下運動せず、掻き板が戻り側ベルトに対して斜めに当接するため、掻き取り残しが生じていた。又、掻き板と一体のガイドカバーは慣性モーメントが大きいので、戻り側ベルトの凹凸に瞬時に追随できず掻き取り残しの要因となっていた。
【0008】
特開2016−000645号広報において、四角形棒状ゴム製弾性体の固定部端末に、押え板の受け座を設けたベルトクリーナが示されている。この方法においては、受け座を押え板で、架台の底板に押し付けているので、四角形棒状ゴム製弾性体の高さ調整が不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献01】特開平10−109731号広報
【特許文献02】登録実用新案第3102461号広報
【特許文献03】特開2016−000645号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以下の課題を解決するものである。(1)掻き取り部である四角形棒状ゴム製弾性体を戻り側ベルトに押し付けるだけで自動的に、且つ正確に、四角形棒状ゴム製弾性体と戻り側ベルトの高さ調整を可能にする。その結果として、ベルトクリーナの掻き取り部の高さや押圧力の調整を、戻り側ベルトの下部に人間が入ることなく可能とする。(2)それぞれの四角形棒状ゴム製弾性体の高さを、個別に調整できるようにする。(3)掻き取り部(チップ)の摩耗に合わせて、自動的にチップが起き上がり、チップと戻り側ベルトの表面が常に適切な押圧力で当接できるようにする。(4)四角形棒状ゴム製弾性体が戻り側ベルトの突起物に衝突し、瞬時に大きく撓んだ際にきちんと通常の掻き取り位置に復帰できるようにする。(5)掻き取り部の押圧力を定量的に把握できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、複数の四角形棒状ゴム製弾性体が、戻り側ベルトの幅方向に配設された架台の溝に列設されたベルトクリーナにおいて、前記架台は、前側板と後側板と底板から構成されており、該ベルトクリーナは、前記四角形棒状ゴム製弾性体が、前記戻り側ベルトの幅方向へ倒れるのを防止するためのスラスト固定手段と、前記溝からの抜け出しを防止するための抜け止め手段を備えており、前記抜け止め手段は、前記後側板に設けられた雌ネジに螺合された吊り下げボルトに吊り下げられた抜け止め板と、前記四角形棒状ゴム製弾性体の固定側端末に設けられた抜け止め突起からなり、前記四角形棒状ゴム製弾性体は、前記架台の前記底板の長手方向に敷設された、圧縮性のある高さ調整材の上に載置されており、前記四角形棒状ゴム製弾性体の自由側端末が、前記戻り側ベルトに押し付けられることにより、前記高さ調整材が圧縮され、前記自由側端末が前記戻り側ベルトに当接せしめられ、前記高さ調整材の圧縮量に比例する押圧力で当接しているとともに、前記四角形棒状ゴム製弾性体が前記戻り側ベルトの摩擦力により、前記戻り側ベルトの進行方向に弾性的に撓むことにより、前記四角形棒状ゴム製弾性体の前記自由側端末が前記戻り側ベルトの表面に追随しながら当接することを特徴とするベルトクリーナである。
【発明の効果】
【0012】
第1の解決手段による効果は以下である。(1)架台を上昇させて、四角形棒状ゴム製弾性体を戻り側ベルトに押し付けると、高さ調整材が圧縮され、その圧縮量に応じて、四角形棒状ゴム製弾性体に押圧力が生じるので、高さ調整材の圧縮量を調整することで、四角形棒状ゴム製弾性体の押圧力を設定するとともに、四角形棒状ゴム製弾性体を戻り側ベルトに精密に当接性できる。(2)高さ調整材のバネ定数と、高さ調整材の圧縮量から、四角形棒状ゴム製弾性体の押圧力を定量的に把握できる。(3)高さ調整材は、底板に一体もしくは分割体で敷設できる。又、階段状に敷設できる。(4)スラスト固定手段で四角形棒状ゴム製弾性体が戻り側ベルトの幅方向、即ちスラスト方向に倒れるのを防止できるので、隣り合う四角形棒状ゴム製弾性体の隙間がなくなり、筋状の掻き取り残しが発生しない。(5)抜け止め手段で四角形棒状ゴム製弾性体が架台の溝から抜け出すのを防止できる。(6)四角形棒状ゴム製弾性体の押し付け力設定や戻り側ベルトとの当接性をベルトコンベアの機外から作業できるので、ベルトの下に作業者が入る必要がなくなり、ベルトの下に仮足場を設置する必要性もないので安全な作業ができる。(7)四角形棒状ゴム製弾性体は、溝に挿入されているだけなので、スラスト固定手段や抜け止め手段を解放することにより、簡単に溝から取り出して交換できる。(8)四角形棒状ゴム製弾性体は、高さ調整材の押圧力(反発力)で戻り側ベルトに押し付けられているが、戻り側ベルトが走行し、四角形棒状ゴム製弾性体が戻り側ベルトの摩擦力で、戻り側ベルトの進行方向に倒されると、四角形棒状ゴム製弾性体は弾性力で起き上がろうとすることにより、常に戻り側ベルトの表面に当接した状態を保持することから、掻き取り性能が維持される。(9)四角形棒状ゴム製弾性体の固定側端末に設けた抜け止め突起が、架台の後側板に取付けた抜け止め板に当たることにより、四角形棒状ゴム製弾性体が架台から抜け出ることはない。(10)抜け止め板を取り外すだけで、部分的にもしくは全体的に簡単に四角形棒状ゴム製弾性体を交換できる。(11)吊り下げボルトをスラスト板に押し付けて、スラスト板が溝から抜け出るのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】はベルトクリーナを部分断面した斜視図。
図2】はベルトクリーナの縦断面拡大図。
図3】は抜け止め突起の実施態様図。
図4】は図2のA−A断面で、四角形棒状ゴム製弾性体の高さ調整前後の断面図。
図5】は図2のB−B断面で、四角形棒状ゴム製弾性体の高さ調整手順の説明図。
図6】はスラスト板のあるベルトクリーナ正面断面図。
図7】は戻り側ベルトに当接前のベルトクリーナ部分断面正面図。
図8】は戻り側ベルトに当接したベルトクリーナ部分断面正面図。
図9】は高さ調整材が圧縮されたベルトクリーナの部分断面正面図。
図10】はベルトクリーナの平面図で、図7のC−C断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を請求項1及図1図10に基づいて説明する。
【0015】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、複数の四角形棒状ゴム製弾性体20が、戻り側ベルト30の幅方向に配設された架台40の溝40aに列設されたベルトクリーナ10において、前記架台40は、前側板41と後側板42と底板43から構成されており、該ベルトクリーナ10は、前記四角形棒状ゴム製弾性体20が、前記戻り側ベルト30の幅方向へ倒れるのを防止するためのスラスト固定手段と、前記溝40aからの抜け出しを防止するための抜け止め手段を備えており、前記抜け止め手段は、前記後側板42に設けられた雌ネジ42aに螺合された吊り下げボルト72に吊り下げられた抜け止め板70と、前記四角形棒状ゴム製弾性体20の固定側端末20bに設けられた抜け止め突起71からなり、前記四角形棒状ゴム製弾性体20は、前記架台40の前記底板43の長手方向に敷設された、圧縮性のある高さ調整材50の上に載置されており、前記四角形棒状ゴム製弾性体20の自由側端末20aが、前記戻り側ベルト30に押し付けられることにより、前記高さ調整材50が圧縮され、前記自由側端末20aが前記戻り側ベルト30に当接せしめられ、前記高さ調整材50の圧縮量に比例する押圧力で当接しているとともに、前記四角形棒状ゴム製弾性体20が前記戻り側ベルト30の摩擦力により、前記戻り側ベルト30の進行方向に弾性的に撓むことにより、前記四角形棒状ゴム製弾性体20の前記自由側端末20aが前記戻り側ベルト30の表面に追随しながら当接することを特徴とするベルトクリーナ10である。
【0016】
図1に示すように、複数の四角形棒状ゴム製弾性体20が架台40の溝40aに列設されて固定されている。四角形棒状ゴム製弾性体20の自由側端末20aには、掻き取り性能を長期にわたり良好に維持するために、耐摩耗性材料からなるチップ80を取り付けてもよい。溝40aは前側板41と後側板42と底板43から構成されている。架台40の両側にはフランジ44が取り付けられ、フランジ44に支持パイプ45が取り付けられている。支持パイプ45は取付け基部46に取り付けられ、取り付け基部46はコンベア架台47に固定されている。
【0017】
図6は、ベルトクリーナ10を部分断面した正面図である。四角形棒状ゴム製弾性体20は、高さ調整材50に載置されている。四角形棒状ゴム製弾性体20の両側にはスラスト板61が設けられている。スラスト板61は、スラストボルト60により戻り側ベルト30の幅方向に押し付けられ、スラスト方向の動きを固定されている。さらに、スラスト板61は、四角形棒状ゴム製弾性体20がスラスト方向に動かないようにしている。又、スラスト板61は、四角形棒状ゴム製弾性体20が円滑に上昇下降できるようにガイドするとともに、高さ調整材50がスラスト方向に動かないように固定している。
【0018】
後側板42には吊り下げボルト72にて抜け止め板70が取付けられている。吊り下げボルト72は抜け止め板70に設けられた貫通孔70aを貫通し、スラスト板61を押し付けて、スラスト板61が溝40aから抜け出ないようにしている。四角形棒状ゴム製弾性体20の固定側端末20bには抜け止め突起71が設けられている。抜け止め板70に抜け止め突起71が当たることにより、四角形棒状ゴム製弾性体20が溝40aから抜け出さないようにしている。四角形棒状ゴム製弾性体20は、掻き取り中は、戻り側ベルト30から押し付けられる方向に力を受けるので、溝40aから抜け出ることはないが、ベルトクリーナ10の運搬や取付けの際に、転地される場合があり、抜け出し対策が必要となっている。
【0019】
四角形棒状ゴム製弾性体20は、自由側端末20aを戻り側ベルト30に押圧するための押圧力が必要であるとともに戻り側ベルト30の微妙な凹凸に柔軟に追随する必要がある弾力性が求められる。そのため、四角形棒状ゴム製弾性体20はゴムを使用する。ゴムには例えば天然ゴムや合成天然ゴム、スチレン、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが使用できる。
【0020】
図2に示すように、架台40の溝40aには高さ調整材50が敷設されている。高さ調整材50は、例えばスポンジのような圧縮性のある材料がよい。スポンジは内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の柔らかい物質で、高分子の合成樹脂を発泡成形して作られる。代表的な高分子はポリウレタンであり、軟質ウレタンフォーム又は、軟質発泡ポリウレタンとして製造される。
【0021】
図4は、図2のA−A断面である。図4(a)は、架台40を上昇させてチップ80を戻り側ベルト30に当接した状態を示している。図4(b)は、更に架台40を上昇させて、四角形棒状ゴム製弾性体20に押圧力を付与し、ベルトを稼働させた状態を示している。調整材50は、架台40を上昇させて、四角形棒状ゴム製弾性体20の自由側端末20aもしくは、自由側端末20aに取付けたチップ80を戻り側ベルト30に押し付けた際に、押し付け力に応じて大きく縮むことのできる高圧縮性が必要である。即ち、自由高さH1と圧縮高さH2の差、即ち、圧縮量h2=(H1−H2)を大きく確保できるのが望ましい。1cm2当たりに、10N程度の力を付加した際に、圧縮比α=(H1−H2)/H1<0.2となるような材料が望ましい。圧縮比αが0.2より大きいと、四角形棒状ゴム製弾性体20と戻り側ベルト30の押圧力が大きくなり、戻り側ベルト30の表面を傷めるからである。
【0022】
図5は、図2のB−B断面である。図5に基づいて、ベルトクリーナ10を戻り側ベルト30に当接させる際の高さ調整材50の機能について説明する。
【0023】
図5(1)は、四角形棒状ゴム製弾性体20を戻り側ベルト30に当接させる前の状態を示している。即ち、高さ調整材50は圧縮前の状態である。四角形棒状ゴム製弾性体20に取付けられた抜け止め突起71は、高さ調整材50により抜け止め板70に当たるところまで押し上げられている。
【0024】
図5(2)は、四角形棒状ゴム製弾性体20のチップ80を戻り側ベルト30に当接させた状態を示している。この状態においては、四角形棒状ゴム製弾性体20と戻り側ベルト30の押し付け力はほとんどゼロである。
【0025】
図5(3)は、適正な押圧力を得るために、架台40をh1上昇させて、戻り側ベルト30に押し付けた際の状態を示している。高さ調整材50は自然長H1からH2の高さに圧縮され、圧縮量はh2=H1−H2である。架台40がh1上昇すると、四角形棒状ゴム製弾性体20は戻り側ベルト30に押し付けられ、逆に下降量h3だけ押し下げられる。このとき、四角形棒状ゴム製弾性体20には、高さ調整材50の圧縮量に応じた押圧力Pが付与される。高さ調整材50のバネ定数をk N/mmとすると、P=k×(h3)Nである。あらかじめ、高さ調整材50のバネ定数を把握することにより、四角形棒状ゴム製弾性体20の押し付け力を定量的に求めることができる。
【0026】
図5(4)は、ベルトを稼働させた際の四角形棒状ゴム製弾性体20の変形状態を示している。四角形棒状ゴム製弾性体20には押し付け力Pが作用しているので、戻り側ベルト30が稼働すると、チップ80にはF=fP(f:摩擦係数)の摩擦力が付与されるため、四角形棒状ゴム製弾性体20は戻り側ベルト30の進行方向に倒される。H1、H2、h1、h2、h3の関係は、H1−H2=h1=h2=h3である。
【0027】
押圧力は、P=k×(h3)Nで表されるので、高さ調整材のバネ定数kを定量的に把握しておくことにより、四角形棒状ゴム製弾性体20の下降量h3の実測値から押圧力を正確に設定することができる。
【0028】
四角形棒状ゴム製弾性体20は押圧力Pにより生じる摩擦力Fを受けて、戻り側ベルト30の進行方向に撓むが、四角形棒状ゴム製弾性体20の柔軟な撓み性能により、戻り側ベルト30の強固な付着物やエンドレスなどのめくれ等の突起物を瞬時に回避できる。又、これらの異常負荷が通過した後は、弾性力により瞬時に元の掻き取り位置に復帰できる。
【0029】
図2に示すように、スラスト固定手段は、四角形棒状ゴム製弾性体20がスラスト方向へ倒れるのを防止するための手段である。戻り側ベルト30は、幅方向に蛇行するので、四角形棒状ゴム製弾性体20は、戻り側ベルト30からスラスト方向の力を受ける。スラスト固定手段は、フランジ44の貫通孔44aに設けた雌ネジ62に螺合され、戻り側ベルト30の幅方向に前後進するスラストボルト60と、該スラストボルト60によって、スラスト方向に押し付けられ、四角形棒状ゴム製弾性体20をスラスト方向に押し付けるスラスト板61から構成されている。雌ネジ62は、タップを立てて、フランジ44の貫通孔44aに直接形成してもよいが、ナット62を溶接して雌ネジ62を形成してもよい。
【0030】
スラスト板61は四角形棒状ゴム製弾性体20がスラスト方向に倒れるのを防止するとともに、高さ調整材50がスラスト方向にずれないようにするストッパーとしての機能も有している。
【0031】
図2に示すように、抜け止め板70の上に出ているスラスト板61の高さL1は、四角形棒状ゴム製弾性体20の高さL2よりも低くするのがよい。四角形棒状ゴム製弾性体20より高いとスラスト板61が戻り側ベルト30と当接してしまう。スラスト板61の幅W1は、四角形棒状ゴム製弾性体20のスラスト力に耐えるために、四角形棒状ゴム製弾性体20の幅W2の2〜4倍程度にするのがよい。スラスト板61の材質は、四角形棒状ゴム製弾性体20と同一にするのがよい。戻り側ベルト30が大きく蛇行した際に、戻り側ベルト30がスラスト板61と接触する可能性があり、スラスト板61の剛性が大きい場合は、スラスト板61のエッジで戻り側ベルト30を損傷する恐れがあるためである。
【0032】
抜け止め手段は、図1図4に示すように、後側板42の貫通孔42aに設けられた雌ネジ73に螺合された吊り下げボルト72により、後側板42に吊り下げられた抜け止め板70と、四角形棒状ゴム製弾性体20の固定側端末20bに設けた抜け止め突起71である。抜け止め手段は、四角形棒状ゴム製弾性体が、ベルトクリーナ10を転地した際などに、架台40の溝40aから四角形棒状ゴム製弾性体20や四角形板状ゴム製弾性体21が抜け出すのを防止するための手段である。雌ネジ73はタップなどで後側板42の貫通孔42aに直接形成してもよいし、ナット73を溶接して雌ネジ73を形成してもよい。
【0033】
図4に示すように、抜け止め板70には、貫通孔70aが設けられ、吊り下げボルト72が貫通せしめられ、抜け止め板70を溝40aの中に吊り下げている。吊り下げボルト72は抜け止め板70を貫通し、スラスト板61を押し付けている。スラスト板61は、スラスト方向はスラストボルト60で固定され、戻り側ベルト30の進行方向は吊り下げボルト72で固定される。
【0034】
抜け止め板70と四角形棒状ゴム製弾性体20の間及び、抜け止め突起71と後側板42の間には小さな隙間があり、高さ調整材50の反発力と戻り側ベルト30の押し付け力を受けて、四角形棒状ゴム製弾性体20は溝40aの中を自由に上昇下降できる。
【0035】
抜け止め突起71は四角形棒状ゴム製弾性体20の固定側端末20bに取付けられている。図3(a−1)に示すように、抜け止め突起71は、四角形棒状ゴム製弾性体20に皿ボルト74などで取付けてもよい。図2(a−2)は、皿ボルト74で取付けた際の断面図である。図2(b)に示すように、抜け止め突起71を接着剤で四角形棒状ゴム製弾性体20に取付けてもよい。図2(c)のように、抜け止め突起71を金型による成形や削り出しなどにより、四角形棒状ゴム製弾性体20と一体的に形成してもよい。
【0036】
抜け止め板70や抜け止め突起71は、鉄、ステンレス、チタン、銅などの金属やプラスチックなどの樹脂を使用できる。
【0037】
図1図3に示すように、四角形棒状ゴム製弾性体20の横断面は四角形である。四角形棒状ゴム製弾性体20の戻り側ベルト30の幅方向の幅W2と戻り側ベルト30の進行方向の幅W3は、10〜30mmがよい。幅W2は10mm以下であると剛性が弱く掻き取り能力が小さくなる。30mmより大きくなると剛性が大きくなり、戻り側ベルト30の進行方向に作用する摩擦力F(図4(b))による撓みが小さくなり、小さな凹凸に柔軟に追随しなくなるとともに、戻り側ベルト30の幅方向の小さな凹凸に対して精密に当接性できなくなり掻き取り性能が低下する。従って、四角形棒状ゴム製弾性体20の戻り側ベルト30の進行方向に対する剛性をアップする場合は、幅W3を幅W2よりも大きくするのがよい。
【0038】
図7図8図9図10に基づいて、ベルトクリーナ10を戻り側ベルト30の下部に取り付ける手順を説明する。図7図8図9は、ベルトクリーナ10の部分断面正面図である。図10は、図7のC−C断面図である。四角形棒状ゴム製弾性体20の両側には、四角形板状ゴム製弾性体21を設けている。四角形板状ゴム製弾性体21の幅W4は、スラスト板61の幅W1と同程度がよい。即ち、W4=W1=(3〜4)×W2程度がよい。四角形板状ゴム製弾性体21の幅W4を、四角形棒状ゴム製弾性体20の幅W2よりも3〜4倍広くすることにより、四角形棒状ゴム製弾性体20がスラスト方向に倒れにくくなるからである。四角形板状ゴム製弾性体21の両側には、スラスト板61を設けており、スラスト板61で四角形板状ゴム製弾性体21のスラスト方向の動きを固定している。スラスト板61の両側には、スラストボルト60を設けており、スラスト板61をスラスト方向に押し付けることにより、四角形板状ゴム製弾性体21と四角形棒状ゴム製弾性体20のスラスト方向への倒れを防止している。
【0039】
1)図7の段階では、四角形棒状ゴム製弾性体のチップは戻り側ベルトに当接していない状態である。
【0040】
2)図8に示すように、架台40を押し上げて、チップ80を戻り側ベルト30の表面に部分的に当接させる。戻り側ベルト30の表面は凹凸があり、又凸円弧状のトラフ癖がついているので、戻り側ベルト30の両端が下がっている場合には、まず、ベルトクリーナ10は、戻り側ベルト30の両端A点で当接する。この段階では、チップ80は戻り側ベルト30に接触しているだけの状態であり、高さ調整材50は圧縮されていない。
【0041】
3)図9に示すように、さらに、架台40を押し上げていくと、戻り側ベルト30の両サイドから中央に向けて、チップ80が戻り側ベルト30に徐々に当接していく。
【0042】
4)四角形棒状ゴム製弾性体20が戻り側ベルト30に当接すると、戻り側ベルト30の押圧力により高さ調整材50が圧縮されていくので、四角形棒状ゴム製弾性体20はそれ以上上昇できなくなる。
【0043】
5)さらに架台40を押し上げていくと、最終的に戻り側ベルト30の全幅に渡り、チップ80と戻り側ベルト30が当接する。この後、さらに、搬送材料やベルト速度やベルトの摩耗状態や傷状態などから判断して、架台40を上昇させて、適切な押し付け力に調整する。押し付け力Pは、P=k×(h3)Nで定量的に把握できる。
【0044】
架台40を上昇させると、四角形棒状ゴム製弾性体20は戻り側ベルト30の下面に押し当てられ、戻り側ベルト30に押し付けられる方向に力を受けるが、高さ調整材50が圧縮されることにより、最終的に、戻り側ベルト30の幅方向全体に渡り、四角形棒状ゴム製弾性体20と戻り側ベルト30が当接する状態まで架台40を上昇させることができる。即ち、架台40を上昇させるだけで、自動的に四角形棒状ゴム製弾性体20と戻り側ベルト30を適切な当接状態に設定することができる。
【0045】
圧縮性のある高さ調整材50とスラスト固定手段と抜け止め手段の組み合わせにより、ベルトクリーナ10の取り付け工程は全て、ベルトコンベア47の機外から作業可能である。従来のように、ベルトコンベア機内に作業者が入り、危険な環境で作業する必要はない。又、高所のベルトコンベア47では、場合により作業用足場を作る必要があるが、本ベルトクリーナ10は、通常の作業通路からの作業が可能であり、ベルトクリーナ10の取り付け作業で発生する危険な付帯作業がなくなる。安全作業が実現し作業時間短縮が可能になり、生産ラインの稼働効率を大幅に向上させることができる。又、掻き取り性能の向上により、ベルトコンベア周りの環境が大きく改善される。
【0046】
図6に示すように、四角形棒状ゴム製弾性体20は、高さ調整材50に載置されている。四角形棒状ゴム製弾性体20の両側にはスラスト板61が設けられている。スラスト板61は、スラストボルト60により戻り側ベルト30の幅方向に押し付けられ、スラスト方向の動きを固定されている。そして、スラスト板61は、四角形棒状ゴム製弾性体20がスラスト方向に動かないようにしている。又、スラスト板61は、四角形棒状ゴム製弾性体20もしくは四角形板状ゴム製弾性体が21円滑に上昇下降できるようにガイドするとともに、高さ調整材50がスラスト方向に動かないようにしている。
【0047】
図6に示すように、後側板42には吊り下げボルト72にて抜け止め板70が取付けられている。吊り下げボルト72は抜け止め板70に設けられた貫通孔70aを貫通し、スラスト板61を押し付けて、スラスト板61が溝40aから抜け出ないようにしている。四角形棒状ゴム製弾性体20の固定側端末20bには抜け止め突起71が設けられている。抜け止め板70に抜け止め突起71が当たることにより、四角形棒状ゴム製弾性体20が溝40aから抜け出さないようにしている。
【0048】
10:ベルトクリーナ
20:四角形棒状ゴム製弾性体
20a:(四角形棒状ゴム製弾性体の)自由側端末
20b:(四角形棒状ゴム製弾性体の)固定側端末
21:四角形板状ゴム製弾性体
30:戻り側ベルト
40:架台
40a:溝
41:前側板
42:後側板
42a:貫通孔
43:底板
44:フランジ
44a:貫通孔
45:支持パイプ
46:(ベルトクリーナ)取付け基部
47:コンベア架台
50:高さ調整材
60:スラストボルト
61:スラスト板
62:ナット(雌ネジ)
70:抜け止め板
70a:貫通孔
71:抜け止め突起
72:吊り下げボルト
73:ナット(雌ネジ)
80:チップ
W1:スラスト板の幅
W2:(戻り側ベルトの幅方向の)四角形棒状ゴム製弾性体の幅
W3:(戻り側ベルトの進行方向の)四角形棒状ゴム製弾性体の幅
W4:四角形板状ゴム製弾性体の幅
L1:スラスト板の高さ
L2:四角形棒状ゴム製弾性体の高さ
α:高さ調整材の圧縮比
P:四角形棒状ゴム製弾性体の押圧力
H1:高さ調整材の圧縮前の長さ
H2:高さ調整材圧縮後の長さ
h1:架台の上昇量
h2:高さ調整材の圧縮量
h3:四角形棒状ゴム製弾性体
【要約】
【課題】戻り側ベルトは幅方向に凹凸があるため、幅の広いベルトにベルトクリーナの掻き取り部を正確に当接させるのは困難であった。掻き板の幅を小分割した四角形棒状ゴム製弾性体を、ボルトで押し上げて、高さ調整をする方法があるが、四角形棒状ゴム製弾性体の数が多くなり、時間を要することや、戻り側ベルトの下部での作業となり、安全面や環境面で問題があった。
【解決手段】架台の溝に、高さ方向に圧縮性のある高さ調整材を敷設し、高さ調整材の上に四角形棒状ゴム製弾性体を載置する構造であり、架台を上昇させるにつれて、四角形棒状ゴム製弾性体は、戻り側ベルトの低い部分から順に当接して、戻り側ベルトを押圧していくが、押圧力で高さ調整材が縮んでいくので、架台が上昇していっても、四角形棒状ゴム製弾性体は上昇できなくなり、最終的に全ての四角形棒状ゴム製弾性体が戻り側ベルトに精度よく当接する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10