特許第6355185号(P6355185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355185
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】高輝度光学シートを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20180702BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20180702BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180702BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
   G02B3/00 A
   G02F1/1335
   B32B7/02 103
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-211207(P2012-211207)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2013-73239(P2013-73239A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2015年7月27日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0097234
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】315006953
【氏名又は名称】エスケイシー ハイテク アンド マーケティング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ス,ミュン・ドク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドゥ・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ,キョン・イル
(72)【発明者】
【氏名】ユン,チョン・スン
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−186189(JP,A)
【文献】 特開2001−074919(JP,A)
【文献】 特開2010−044368(JP,A)
【文献】 特開2011−022265(JP,A)
【文献】 特開2003−248109(JP,A)
【文献】 特表2008−542796(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0037261(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101576625(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
B32B 7/02
G02B 3/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)100重量部のバインダー樹脂および70〜130重量部の球状有機ポリマービーズを含む樹脂組成物で第1の基体の一方の面をコーティングし、次いで乾燥させて、エンボス面を有する転写膜を製造する工程;
(b)紫外線硬化性(UV−硬化性)樹脂で第2の基体の一方の面をコーティングし、前記転写膜の前記エンボス面が前記第2の基体の前記UV−硬化性樹脂被膜と接触している積層物を提供するように前記転写膜と前記第2の基体とを積層させる工程;並びに、
(c)前記第2の基体が、エンボス拡散層を有するように、工程(b)で得られた積層物を硬化させ、前記積層物から前記転写膜を取り外す工程;
を含み、
前記転写膜の前記エンボス面が130〜150°のセグメント角を有し
前記転写膜を取り外す工程後のエンボス拡散層が1.41〜1.59の屈折率を有する、
光学シートを製造する方法。
【請求項2】
前記有機ポリマービーズの平均直径が5〜12μmである、請求項1に記載の光学シートを製造する方法。
【請求項3】
前記UV−硬化性樹脂被膜層のための前記UV−硬化性樹脂が、(メタ)アクリラート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリラート樹脂、シリコーンウレタン(メタ)アクリラート樹脂、シリコーンポリエステル(メタ)アクリラート樹脂、フルオロウレタン(メタ)アクリラート樹脂、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の光学シートを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリマービーズの存在に起因するエンボス面を有する転写膜によって形成されたエンボス拡散層を含む高輝度光学シートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の社会が情報化社会に変化して、技術が開発されるにつれて、液晶ディスプレイ(LCD)はその用途を拡げてきた。近年、軽量で、薄型デザインでかつ低電力消費のLCDについての要求が増大していた。
【0003】
近年、バックライトユニット(BLU)の光源のために発光ダイオード(LED)が、その高輝度および長寿命のせいで主として使用されている。しかし、エッジライトバックライトユニットについては、高コストおよび放熱の問題を解決するためにわずかな数のLEDが使用されているだけである。さらに、二重輝度向上膜(DBEF)シートは製造コストを低減させるために、プリズム上の反射式偏光膜として使用されない傾向にあった。
【0004】
その結果、光学膜としての使用に適する向上した輝度、並びにプリズムシートのパターンを隠すための高い拡散性を有する高性能光学シートについての要求が存在している。
【0005】
韓国特許出願公開第2010−0042310号は、半球状レンズの突出の形状および比率を調節することによって向上した輝度を有する高品質の輝度を有する光拡散膜を開示する。しかし、この光拡散膜は、その突出が偏光板と接触している場合には、その突出の振動摩擦のせいで界面スクラッチ並びに表面汚点(stain)欠陥の起こりうるリスクを有する。
【0006】
さらに、特開2000−193805号は光拡散シートを開示し、これは球状ビーズを使用しないが均一な光の拡散を提供する。しかし、この光拡散シートは輝度、隠蔽力、視野角などの点で満足いかない光学特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2010−0042310号公報
【特許文献2】特開2000−193805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、上記課題を解決することができる光学シートを製造する方法を提供する必要性が存在している。
よって、プリズムシートのパターンを隠すための高い拡散性並びに向上した輝度を有する光学シートであって、ビーズを含まず、かつそれが偏光板と接触する場合であってさえ界面スクラッチおよび表面汚点欠陥のない光学シートを製造する方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)100重量部のバインダー樹脂および70〜130重量部の球状有機ポリマービーズを含む樹脂組成物で第1の基体の一方の面をコーティングし、次いで乾燥させて、エンボス面を有する転写膜を製造する工程;(b)紫外線硬化性(UV−硬化性)樹脂で第2の基体の一方の面をコーティングし、前記転写膜の前記エンボス面が前記第2の基体の前記UV−硬化性樹脂被膜と接触している積層物を提供するように前記転写膜と前記第2の基体とを積層させる工程;並びに、(c)前記第2の基体が1.41〜1.59の屈折率を有するエンボス拡散層を有するように、工程(b)で得られた積層物を硬化させ、前記積層物から前記転写膜を取り外す工程;を含む、光学シートを製造する方法を提供する。
【0010】
前記転写膜のエンボス面は130〜150°のセグメント角を有する。
また、本発明は、本発明の方法に従って製造された、基体と、当該基体上に形成されかつ1.41〜1.59の屈折率を有するエンボス拡散層とを含む光学シートを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法に従って製造された光学シートは、それがプリズムシートのパターンを隠すための高い拡散性並びに向上した輝度を有するので、LCDのBLUのための光学シートとして有用である。さらに、それはビーズを含まず、それが偏光板と接触する場合であってさえ界面スクラッチおよび表面汚点を有しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に従ったセグメント角を示すための概略図である。
図2図2は、本発明に従って製造された光学シートの断面概略図である。
図3図3は、本発明に従って製造された光学シートのエンボス拡散層の断面像(a)および表面像(b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光学シートを製造する方法は、(a)バインダー樹脂および球状有機ポリマービーズを含む樹脂組成物で第1の基体の一方の面をコーティングし、次いで乾燥させて、エンボス面を有する転写膜を製造する工程;(b)UV−硬化性樹脂で第2の基体の一方の面をコーティングし、前記転写膜の前記エンボス面が前記第2の基体の前記UV−硬化性樹脂被膜と接触している積層物を提供するように前記転写膜と前記第2の基体とを積層させる工程;並びに、(c)前記第2の基体がエンボス拡散層を有するように、工程(b)で得られた積層物を硬化させ、前記積層物から前記転写膜を取り外す工程を含む。
【0014】
言い換えれば、本発明の光学シートを製造する方法に従って、エンボス面を有する転写膜が、UV−硬化性樹脂被膜を有する基体と積層され、その基体のUV−硬化性樹脂被膜が硬化され、そしてその転写膜が取り外され、それにより、その転写膜のエンボス面が基体のUV−硬化性樹脂被膜層に転写される。この光学シートは基体上に形成されたエンボス拡散層を含むが、それはビーズおよびフィラーを含まない。
【0015】
工程(a):転写膜の製造
本発明の方法に従って、バインダー樹脂および球状有機ポリマービーズを含む樹脂組成物で第1の基体の一方の面をコーティングし、その後それを乾燥させることによって、エンボス面を有する転写膜が製造される。
【0016】
このビーズを含む樹脂組成物は第1の基体の一方の面上にコーティングされるので、この第1の基体はエンボス面を有するであろうし、このエンボス面は130〜150°のセグメント角を有しうる。
【0017】
エンボス面が離散した半球状突出、例えば、マイクロレンズを含む場合には、それぞれの突出の高さが容易に測定されうるように、この突出の境界は明確である。一方、エンボス面が被膜層の形態である場合には、この突出の境界は明確ではなく、これはそれぞれの突出の高さを測定するのを困難にする。よって、このセグメント角は本明細書においては、2つの隣り合う突出の先端とこれら突出間の底とによって形成される角であって、その底がその角の頂点である角として定義される。
【0018】
本発明の図1は、本発明に従ったセグメント角を示すための概略図を示す。図1を参照して、バインダー樹脂およびビーズを含む被膜層(120)が第1の基体の一方の面上に形成され留場合に、セグメント角(θ)は突出の先端(A、C)と、当該突出間の最も低い境界に位置する底(B)とを繋ぐ2本の線によって形成される角ABC(θ)として定義される。
【0019】
第1の基体は透明プラスチックシートであることができ、好ましくはバインダー樹脂との良好な接着性を有する。
【0020】
第1の基体に使用可能な透明プラスチックの代表例には、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリラート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリラート、ポリイミド、ポリカルボナート(PC)、セルローストリアセタート(TAC)、およびセルロースアセタートプロピオナート(CAP);好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられる。
【0021】
樹脂組成物は有機ポリマービーズを、バインダー樹脂の100重量部を基準にして70〜130重量部の量で含む。有機ポリマービーズおよびバインダー樹脂は溶媒と混合される。
【0022】
ビーズの量が70重量部未満である場合には、本発明の方法によって製造される光学シートの全光線透過率は増加するであろうが;その光学シートのヘイズは、その拡散性を損なう85%未満になる場合がある。このような場合には、光学シートは劣った隠蔽力を有する場合がある。
【0023】
一方、ビーズの量が130重量部を超える場合には、光学シートのヘイズが増大するであろうが;全光線透過率は85%未満になる場合がある。このような場合には、光学シートは低減された輝度だけでなく、その表面上に汚点欠陥を有する場合がある。
【0024】
バインダー樹脂が、良好な光透過率と共に高い透明性を有すること、およびコーティング操作における便利さのためにバインダー樹脂の粘度が容易に制御可能であることが好ましい。バインダー樹脂の代表例には、アクリルベース、ウレタンベース、エポキシベース、ビニルベース、ポリエステルベースおよびポリアミドベース樹脂が挙げられる。アクリルベース樹脂が、その良好な耐摩耗性、並びに適切な光屈折率を伴った光の優れた反射率および透過率のせいで、好ましい。アクリルベース樹脂の具体例には、1種類の繰り返し単位を有するホモポリマー、並びに2種類以上の繰り返し単位を有するコポリマーが挙げられ、この繰り返し単位はメチルメタクリル、メタクリルエチルアクリル、ブチルアクリル、アリールアクリル、ヘキシルアクリル、イソプロピルメタクリル、ベンジルアクリル、ビニルアクリル、2−メトキシアクリル、およびスチレンから選択される。アクリルベース樹脂は熱硬化性またはUV硬化性であり得る。それは溶媒中でのその溶解性に応じて選択されうる。アクリルベース樹脂の分子量、ガラス転移温度(Tg)およびヒドロキシル基の程度を制御することにより、望ましいコーティングの能力、並びに被膜層の機械的特性および耐久性、並びに基体との接着性を達成することも可能である。
【0025】
球状有機ポリマービーズは硬質アクリラート、ポリスチレン、ナイロン、軟質アクリラートもしくはシリコーンのような有機ポリマーから製造されうる。硬質アクリラートはその良好な耐溶解性のせいで容易に分散可能であるから、硬質アクリラートが好ましい。
【0026】
ビーズの平均直径は0.1〜50μm、好ましくは5〜12μmでありうる。平均直径が0.1μ未満である場合には、ビーズは樹脂組成物の被膜層内に埋込まれるであろう。このような場合には、表面上の突出した領域が充分でない場合があり、劣った隠蔽力を有する光学シートを生じさせる場合がある。一方、平均直径が50μmより大きい場合には、その光学シートはその表面上に汚点欠陥を有する場合があり、または光学シートの表面上の過剰な突出が下にその光学シートがある偏光板にスクラッチを引き起こしうる可能性が高い。
【0027】
エンボス面を有する転写膜は、第1の基体の一方の面を6.0〜12.0g/mの量の樹脂組成物でコーティングし、その後それを乾燥させることにより製造されうる。
【0028】
コーティングの量が6.0g/m未満である場合には、被膜層の表面上の突出は充分に突き出ていない場合がある。このような場合には、セグメント角が小さく、より低い輝度の光学シートを生じさせる場合がある。一方、コーティングの量が12.0g/mより多い場合には、光学シートの光透過率が悪化する場合がある。よって、光学シートがLCDのBLUにおいて使用される場合には、高い輝度を提供することができない場合がある。
【0029】
転写膜のエンボス面が剥離剤で処理される場合には、それは後の工程において積層物から容易に取り外されうる。剥離剤は当該技術分野において既知の既存の剥離剤、例えば、シリコーン剥離剤であることができる。
【0030】
工程(b):積層物の形成
次いで、第2の基体の一方の面がUV−硬化性樹脂でコーティングされ、その後、転写膜のエンボス面が第2の基体のUV−硬化性樹脂被膜と接触するように、工程(a)において製造された転写膜とUV−硬化性樹脂被膜層との積層が行われる。
【0031】
第2の基体は透明プラスチックシートであることができ、好ましくはUV−硬化性樹脂との良好な接着性、その裏面に入射した光の90%以上の透過率、および輝度変動を妨げるための滑らかな表面を有しうる。
【0032】
第2の基体のために使用可能な透明プラスチックの代表例は、第1の基体について挙げたものと同じであることができ、好ましくはポリエチレンテレフタラート(PET)でありうる。
【0033】
第2の基体の厚さは10〜300μmであり得る。厚さが10μm未満である場合には、その基体を取り扱うのが不便な場合がありうる。厚さが300μmを超える場合には、それは薄型LCDモジュールを製造する余裕がない。
【0034】
UV−硬化性樹脂の代表例には、ポリエステルベース樹脂、エポキシベース樹脂、および(メタ)アクリラート樹脂、例えば、ポリエステル(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラート、ウレタン(メタ)アクリラートなどが挙げられる。特に、(メタ)アクリラート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリラート樹脂、シリコーンウレタン(メタ)アクリラート樹脂、シリコーンポリエステル(メタ)アクリラート樹脂、およびフルオロウレタン(メタ)アクリラート樹脂が光学シートの良好な光学特性のために好ましい。
【0035】
ポリアクリラートおよび/もしくはポリメタクリラート(以降、ポリ(メタ)アクリラート)、またはモノアクリラートおよび/もしくはモノメタクリラート(以降、モノ(メタ)アクリラート)、並びに光重合開始剤からUV−硬化性樹脂が製造されうる。
【0036】
UV−硬化性樹脂被膜層の厚さは1〜50μm、好ましくは1〜15μmでありうる。その厚さが1μmより薄い場合には、積層物の形状を維持するのが困難になる場合があり、またはモアレパターンおよび劣った外観のような欠陥を生じさせる場合がある。厚さが50μmより厚い場合には、突出と基体との間の辺縁層が厚く、結果的に、その耐熱性および耐湿性のせいで変動するパターンを生じさせる場合がある。
【0037】
0.1〜50μmの直径を有する無機粒子、例えば、シリカまたは有機粒子、例えば、アクリル架橋粒子から選択されるフィラー、並びにバインダー樹脂を含む組成物で第2の基体をコーティングし、次いで被膜層を乾燥させることによって、第2の基体の他方の面上にアンチブロッキング層が形成されうる。
【0038】
アンチブロッキング層は、この基体の静電気によるダストまたは外来物質でのこの層の汚染を防ぐ帯電防止剤をさらに含むことができる。
【0039】
工程(c):拡散層の形成
最後に、工程(b)で得られた積層物が硬化され、次いで転写膜がそこから取り外され、それにより第2の基体の一方の面上にエンボス拡散層を提供する。図3はエンボス拡散層の断面像(a)および表面像(b)を示す写真を表す。
【0040】
エンボス拡散層は1.41〜1.59の屈折率を有することができる。この屈折率が1.41より小さい場合には、拡散層の光拡散率が悪化する場合があり、それにより光学シートの隠蔽力が低下する場合がある。この屈折率が1.59を超える場合には、拡散層の全光線透過率が低下する場合があり、それにより光学シートの輝度が低下する場合がある。
【0041】
転写膜のエンボス面が拡散層に移されるので、この拡散層はビーズもしくはフィラーを含まないにもかかわらず、高い輝度を有する。
【0042】
転写膜のエンボス面が拡散層に転写されるので、転写膜のエンボス面のセグメント角を130〜150°の範囲に制御するのが、光学シートに良好な光学特性を与えるのに重要である。
【0043】
セグメント角が130°未満の場合には、拡散層上に形成される突出が、約50%の突出率の実質的に半球形状を有する場合がある。このような場合には、光がエンボス面を通って直進する能力が低減されうる。さらに、エンボス拡散相と外側との界面での全光反射率が増大する場合があり、それにより(光リサイクルの効率の増大を伴う)光学シートの輝度の望ましくない低下をもたらす場合がある。セグメント角が150°を超える場合には、拡散層上に形成された突出を透過する光の拡散が低下する場合があり、これは光学シートの隠蔽力を望ましくなく悪化させる場合がある。
【0044】
図2は本発明の方法に従って製造された光学シートの概略断面図を示す。図2を参照すると、本発明の方法に従って製造された光学シートは、第2の基体(200)の一方の面上に形成されたエンボス拡散層(210)、および第2の基体(200)の他方の面上のアンチブロッキング層(220)を含むことができる。また、それはアンチブロッキング層(220)においてフィラー(230)を含むことができる。
【0045】
言い換えれば、本発明の方法に従って、第2の基体の一方の面上に形成され、ビーズもしくはフィラーを含まないエンボス拡散層を有する光学シートは、エンボス面を有する転写膜を製造し、この転写膜をUV−硬化性樹脂被膜を有する第2の基体と積層し、UV−硬化性樹脂被膜層を硬化させ、そして転写膜を積層物から取り外し、それにより転写膜のエンボス面が第2の基体のUV−硬化性樹脂被膜層上に転写されることを含む方法によって製造されうる。この製造された光学シートは好ましくは85%以上のヘイズ、および85%以上の全光線透過率を有する。
【0046】
本発明は実施例および比較例においてさらに記載されそして説明されるが、しかし、これらは本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0047】
実施例および比較例に従って製造された光学シートの特性、例えば、UV−硬化性樹脂被膜層の屈折率、並びに光学シートのヘイズ(%)、全光線透過率(Tt)(%)、輝度(%)、隠蔽力、界面スクラッチおよび外観は以下のように評価された。
【0048】
1.UV−硬化性樹脂被膜層(エンボス拡散層)の屈折率
この屈折率は従来の方法によって測定された。
【0049】
2.ヘイズ(%)および全光線透過率(%)
概して、光学シートのヘイズおよび全光線透過率は以下のように測定されうる:
ヘイズ(%)=拡散透過率(DT)/全透過率(TT)
全透過率(TT)=平行透過率(PT)+拡散透過率(DT)
全光線透過率(%)=全透過率(TT)/全入射光
ヘイズおよび全光線透過率はヘイズメータNDH−2000(電子工業株式会社、日本国)によって測定された。
【0050】
3.隠蔽力
光学シートの隠蔽力は、5点等級システムによって評価された。2枚のプリズムシートがクロスするように(V、H)導光板上に積層されて、ドットパターンを有しており、上部シートの様々なHz値でサンプルが準備された。隠蔽力は、明るいラインスポットの可視性に応じて、市販の製品について適用可能な等級2から明るいラインもしくはドットの完全な遮蔽を示す等級5で評価された。
【0051】
4.輝度(brightness)
隠蔽力の評価に使用されたのと同じバックライトユニット構造を用いて、光学シートの視認角が評価された。光受け取る部分が水平方向に−85°から+85°まで5°刻みで回転させられながら、視認角を測定するために輝度(luminance)カロリメーターBM7(トプコン;Topcon)が使用された。0°で、すなわち、光受け取り部分がバックライトユニットに対して垂直である場合に測定された値は、そのサンプルの輝度と称された。プリズム(例えば、比較例9において使用された転写膜)上に一般的に使用される従来の光学シートは輝度の評価のための参照としての役割を果たした。この参照の輝度と同じかまたはそれより良好な輝度が満足できるものと判断された。
【0052】
5.界面スクラッチ
拡散層と偏光板との間の空間が狭められる場合に引き起こされうる界面スクラッチが、透明偏光子と拡散層との間の界面でのスクラッチの程度としてヘイドンサーフェスプロパティテスタータイプ14FW(シント(Shinto)サイエンティフィック)によって評価された。スクラッチの程度は1Hzの速度、40mmの振幅、および200gの負荷の条件下での動きの数の関数として測定された。界面が10回の動きの後でダメージを受けなかった場合には、それは満足できると判断された。
【0053】
6.外観
ウェットアウト(wet−out)、フローステイン(flow stain)、ランピング(lumping)、ストライプ、フローマーク(flow mark)およびステイン(stain)のような欠陥を検査するために、光学シートの外観が肉眼で観察された。
【0054】
一方、光学顕微鏡モデルVK−9700K(キーエンスコーポレーション)によって表面の写真(50150x)が撮られ、並びにこの写真に基づいてVKアナライザーS/W(キーエンスコーポレーション)によってセグメント角が測定された。20個の隣り合う突出の先端の間にラインが引かれ、そして2つの隣り合う突出の先端とその突出の間の底とによって形成される角度が測定された。この角度の平均がセグメント角として採用された。
【0055】
実施例1
100重量部の10μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズと、100重量部のアクリルバインダー樹脂(A811、AeKyung Chemical)とが、メチルエチルケトンおよびトルエン(2:1重量比)の混合溶媒と混合されて、30%固形分濃度を生じさせた。得られた分散物は、高性能モーターを備えたミキサー中で、1,000rpmで1時間にわたって攪拌されて、ビーズが完全に樹脂中に分散された樹脂組成物を得た。この樹脂組成物がワイヤバーNo.12を用いて、厚さ188μmを有するポリエチレンテレフタラート(PET)膜(SH40、SKC)上にコーティングされた。溶媒が120秒間にわたって対流オーブン内で100℃で蒸発させられ、厚さ10μmの樹脂組成物被膜層を有し、かつ133°のセグメント角を有する転写膜を生じさせた。この転写膜は光学シートの製造の最終工程におけるUV−硬化した樹脂層からそれを容易に取り外すために剥離処理にかけられた。
【0056】
次いで、固相において1.49の屈折率を有する未硬化のUV−硬化性樹脂(M110 SKCハースディスプレイフィルムカンパニーリミテッド)が110μmの厚さを有するPET膜上に適用された。転写膜のエンボス面がUV−硬化性樹脂被膜層上に転写されるように、転写膜のエンボス面がUV−硬化性樹脂被膜層と接触するように、得られた膜が転写膜に積層された。次いで、UV−硬化性被膜層が硬化させられるように、積層物がUV放射線に露光された。最終的に、転写膜は積層物から取り外されて、PET膜の一方の面上に形成されたエンボス拡散層を有する光学シートを得た。
【0057】
実施例2
100重量部の前記バインダー樹脂を基準にして110重量部の5.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、135°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0058】
実施例3
100重量部の前記バインダー樹脂を基準にして120重量部の5.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、145°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0059】
実施例4
100重量部の前記バインダー樹脂を基準にして110重量部の11.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、135°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0060】
実施例5
100重量部の前記バインダー樹脂を基準にして115重量部の11.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、145°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0061】
実施例6
8μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、140°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0062】
比較例1
4.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、155°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0063】
比較例2
12.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、125°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0064】
比較例3
4.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、125°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0065】
比較例4
12.5μmの平均直径を有する硬質アクリラートビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返され、その結果、160°のセグメント角を有する転写膜が製造された。
【0066】
比較例5
固相において1.40の屈折率を有する未硬化のUV−硬化性樹脂(M205 SKCハースディスプレイフィルムカンパニーリミテッド)が使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返された。
【0067】
比較例6
固相において1.60の屈折率を有する未硬化のUV−硬化性樹脂(M301 SKCハースディスプレイフィルムカンパニーリミテッド)が使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返された。
【0068】
比較例7
100重量部のバインダー樹脂を基準にして65重量部のビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返された。
【0069】
比較例8
100重量部のバインダー樹脂を基準にして135重量部のビーズが使用されたことを除いて、実施例1の手順が繰り返された。
【0070】
比較例9
実施例1において製造された転写膜が光学シートとして使用された。
【0071】
【表1】
ビーズの重量部(%)
=ビーズの直径(μm)
=セグメント角(°)
屈折率=UV−硬化性樹脂の屈折率
BRT=輝度
【0072】
実施例1〜6に示されるように、本発明に従って製造された光学シートは少なくとも85%のヘイズ、少なくとも85%の全光線透過率、および少なくとも100%の輝度を、良好な外観、隠蔽力と共に示し、かつ界面スクラッチがなかった。
【0073】
比較例1〜4に示されるように、セグメント角が130〜150°の範囲にない場合には、輝度は悪化し、かつ欠陥のある外観が観察された。比較例5および6に示されるように、UV−硬化性樹脂被膜層の屈折率が1.41〜1.59の範囲にない場合には、望ましくない輝度、ヘイズおよび全光線透過率が観察された。
【0074】
さらに、比較例7および8に示されるように、100重量部のバインダー樹脂を基準にして使用されたビーズの量が70〜130重量部の範囲にない場合には、光学シートの隠蔽力が悪化し、かつ界面スクラッチが観察された。
【0075】
従来のコーティング方法(比較例9)によって製造された光学シートと比較して、本発明の方法に従って製造された実施例1〜6の光学シートは界面スクラッチに対する優れた耐性に加えて、向上した輝度を示した。
【符号の説明】
【0076】
A、C 先端
B 底
θ セグメント角
110 第1の基体
120 被膜層
200 第2の基体
210 エンボス拡散相
220 アンチブロッキング層
230 フィラー
図1
図2
図3