(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355192
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】車両用内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 67/06 20060101AFI20180702BHJP
F16H 7/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
F02B67/06 A
F02B67/06 F
F16H7/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-111496(P2014-111496)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-224613(P2015-224613A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雅行
(72)【発明者】
【氏名】谷口 力也
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−218839(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0032838(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0148417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/06
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸のうち機関本体の前面から突出した一端部に固定されたクランクプーリと、前記クランク軸と平行な軸心回りに回転する補機プーリと、これらプーリに巻き掛けられたベルトと、前記ベルトのうち前記補機プーリの近くの部位を当該ベルトの背面側から挟み込む一対のテンションプーリとを備えており、
前記一対のテンションプーリはそれぞれアームに取付けられており、前記両アームは、前記補機プーリの回転軸心と平行な軸心回りに一緒に回動する構成であって、
前記両アームの回動中心を、クランク軸心方向から見て前記補機プーリと重なった状態を保持しつつ、前記補機プーリの軸心を挟んで機関本体と反対側に向いた方向にずらしている、
車両用内燃機関。
【請求項2】
前記補機は、クランク軸線方向から見て前記機関本体の左又は右の外側に配置されている一方、前記一対のテンションプーリは、クランク軸線と直交した方向から見て前記機関本体の前面の手前に配置されている、
請求項1に記載した車両用内燃機関。
【請求項3】
前記クランク軸の一端部には、当該クランク軸の軸線方向にずれた複数のクランクプーリが固定されており、各クランクプーリに巻き掛けたベルトのうち前記機関本体に最も近い第1ベルトが、前記補機プーリに巻き掛けられていると共に前記一対のテンションプーリで挟み込まれている、
請求項2に記載した車両用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、補機駆動ベルトが振り子式のテンションプーリで挟まれている車両用内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の内燃機関において、モータ兼用発電機(モータジェネレータ)を搭載して、これにスタータを兼用させたり、クランク軸の回転をアシストしたりすることが知られている。モータジェネレータとクランク軸との間の動力伝達はベルトで行われており、このため、クランク軸にはクランクプーリを設けて、モータジェネレータには
、補機プーリの一例としてのモータジェネレータプーリを設けている。
【0003】
クランクプーリとモータジェネレータプーリとに巻き掛けられたベルトの特徴は、モータジェネレータが発電機として機能するときとモータとして機能するときとで、張り側と弛み側とが入れ替わることである。
【0004】
そこで、いずれの使用態様でもベルトとモータジェネレータプーリとの間に必要なフリクションが得られるようにするため、例えば特許文献1に開示されているような一対のテンションプーリを有する振り子式オートテンショナをモータジェネレータの近くに配置して、ベルトをその背面側からテンションプーリで挟み込むことが行われている。
【0005】
この振り子式のオートテンショナにおいて、一対のテンションプーリはそれぞれアームに取付けられており、両アームは、共通の回動軸心回りに回動するように本体に取付けられている。そして、モータジェネレータ用のオートテンショナは、アームの回動軸心がモータジェネレータプーリの回転軸心と一致するようにしてセットされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−521639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、モータジェネレータのようなオートテンショナを備えて補機は大型でかつ重量も大きいことが多いため、固定強度や内燃機関の振動抑制等の点からは、できるだけ機関本体に近付けて配置するのが好ましい。他方、オートテンショナを機関本体に近付けると、テンションプーリが他のプーリ等の部材に当たったり接近し過ぎたりすることがある。
【0008】
このため、従来のようにオートテンショナのテンションプーリを補機プーリと同心に回動させる構成では、オートテンショナの配置の制限によってモータジェネレータ等の補機を機関本体に近付けることができず、結果として内燃機関の大型化や補機の固定強度の低下等の問題が生じるおそれがある。
【0009】
他方、オートテンショナを構成する2つのテンションプーリは、回転軸心と直交した方向から見て完全に重複するように(同一平面に位置するように)設計されているが、組立工程での誤差や部材の加工誤差により、設計位置
に対して
クランク軸心方向にずれることがある。すなわち、ミスアライメントが発生することがある。
【0010】
そして、ミスアライメント量が大きいと、ベルトがテンションプーリに片当たり状態に
なってベルトに偏磨耗が発生したり、アームのバタ付きによって振動や異音が発生したりするおそれがある。特に、モータジェネレータで機関を始動したり、モータジェネレータを発電機として駆動したりする場合のようにベルトに強い張力が掛かると、偏磨耗や振動・異音が発生しやすい。さりとて、ミスアライメントが生じないようにオートテンショナを精密に組み立てると、作業に手間がかかってコストアップにつながってしまう。
【0011】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は車両用内燃機関に関し、この内燃機関は、クランク軸のうち機関本体の前面から突出した一端部に固定されたクランクプーリと、前記クランク軸と平行な軸心回りに回転する補機プーリと、これらプーリに巻き掛けられたベルトと、前記ベルトのうち前記補機プーリの近くの部位を当該ベルトの背面側から挟み込む一対のテンションプーリとを備えている。
【0013】
そして、請求項1の発明は、前記一対のテンションプーリはそれぞれアームに取付けられており、前記両アームは、前記補機プーリの回転軸心と平行な軸心回りに一緒に回動する構成において、前記両アームの回動中心を、
クランク軸心方向から見て前記補機プーリと重なった状態を保持しつつ、前記補機プーリの軸心を挟んで機関本体と反対側に向いた方向にずらしている。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1において、前記補機は、クランク軸線方向から見て前記機関本体の左又は右の外側に配置されている一方、前記一対のテンションプーリは、クランク軸線と直交した方向から見て前記機関本体の前面の手前に配置
されている。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2において、前記クランク軸の一端部には、
当該クランク軸の軸線方向にずれた複数のクランクプーリが固定されており、各クランクプーリに巻き掛けたベルトのうち前記機関本体に最も近い第1ベルトが、前記補機
プーリに巻き掛けられていると共に前記一対のテンションプーリで挟み込まれている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、テンションプーリの回動軸心を補機プーリの回転軸心に対して機関本体の外側方向にずらしたことにより、テンションプーリが他の部材に当たることを防止しつつ、補機を機関本体にできるだけ近付けることができる。すなわち、オートテンショナの配置による制約を受けることなく、補機をできるだけ機関本体に近付けることができる。そして、オートテンショナは補機に比べて遥かに小さくかつ軽量であるため、オートテンショナの回動軸心を補機プーリの回転中心に対してずらしても、内燃機関の重心がずれたり、オートテンショナが邪魔になったりすることはない。
【0017】
従って、本願発明によると、内燃機関をコンパクト化できると共に、補機の固定強度を高めて内燃機関の堅牢性を向上できると共に振動の抑制にも貢献できる。特に、請求項2の構成を採用すると、補機は機関本体の横に近付けで配置できるため、コンパクト化や補機の支持強度向上を確実化できる。
【0018】
また、クランク軸が横向き姿勢となるようにして内燃機関を車両に搭載した場合、機関本体の後面に頑丈な構造の補機があると、車両が衝突したときに補機が機関本体で後ろに押されて隔壁を後ろに押しやったり、隔壁を突き破って車内に突出したりすることが懸念され、そのため搭乗者に悪影響を与えることがあるが、請求項2の発明では、補機をできるだけ機関本体に接近させることができるため、補機の後ろには、車両が何かに衝突したときに補機の後退動を許容する空間を空けることができるのであり、その結果、衝突事故時の安全性も向上できる。
【0019】
さて、
図8(A)は、実施形態に準じて、補機プーリとアイドルプーリ30とにベルト19を巻きた状態を表示しており、補機プーリ15が抵抗として作用すると、ベルト19は大きく曲がった状態から一点鎖線で示すように張った状態に移行しようとする(実際には、ピンと張った状態までは移行せず、僅かに屈曲した状態まで移行する。)。
【0020】
従って、テンションプーリ29はベルト19により、白抜き矢印で示す方向に押されるが、テンションプーリ29の回動中心50が補機プーリ15の回転中心51から外側にずれていると、テンションプーリ29は、必然的に、テンションプーリ29の回動中心が補機プーリ15の回転中心と同心である場合に比べて、補機プーリ15に近づく。
【0021】
すると、ベルト19でテンションプーリ29が押される方向Aとテンションプーリ29の可動方
向Bとの乖離角度θ1,θ2は、テンションプーリ29の回動中心50が補機プーリ15の回転中心51からずれている場合の方が大きくなっている。
【0022】
従って、ベルト19でテンションプーリ29が押される力を(B)に示すようにF0とすると、F0のうちテンションプーリ29の回動に寄与する力は、回動中心50が同心である場合におけるF0・cosθ1に比べて、回動中心50がずれている場合におけるF0・cosθ2の方が小さくなっており、このため、テンションプーリ29は、回動中心50が補機プーリ15と同心であるに場合に比べて、ずれている場合の方が回動しにくくなっている。
【0023】
従って、本願発明では、例えばモータジェネレータを発電機として働かせることによってベルトに張力が作用した場合のように、ベルトが瞬間的に張ることでテンションプーリを押し出す現象が生じたとき、テンションプーリに対する押し出し力を抑制することで、テンションプーリが跳ね出される現象を防止又は抑制できる。その結果、ベルト及びテンションプーリのバタ付き現象(踊り現象・暴れ現象)を抑制することができる。
【0024】
さて、組み付け誤差や加工誤差等によってテンションプーリの位置が設計位置から
クランク軸線方向にずれるミスアライメントが発生している場合、ミスアライメントの影響は、補機プーリの回転中心からテンションプーリが離れるほど小さくなる。つまり、補機プーリの軸心からの距離が大きくなると、補機プーリの軸心からテンションプーリまでの距離(スパン)に対するミスアライメント量(テンションプーリとベルトとがベルトの巾方向にずれている量)の比率は小さくなるため、ミスアライメントに起因したベルトのねじれ量は小さくなるのであり、このため、偏磨耗や異音の発生など、ミスアライメントによる悪影響を抑制できる。
【0025】
そして、本願発明では、テンションプーリの位置
が補機プーリの軸心回りに回動する場合と同じ
と過程すると、テンションプーリの回動中心がずれていることにより、ベルトの張りに伴ってテンションプーリが移動するにおいて、
図8の2つの回動軌跡から理解できるように、テンションプーリは補機プーリから遠ざかっていくため、テンションプーリの回動量に比例してベルトのねじれ量が小さくなるのであり、従って、ミスアライメントの影響を抑制することができる。
【0026】
他方、クランク軸に複数のクランクプーリを設けて、複数種類の補機を別々のベルトで
駆動すると、トルクの制御等が容易になると共に、ベルトへの負担も軽減できる利点がある。請求項3の発明は、このように複数のクランクプーリを設けた場合において、機関本体に最も近い第1ベルトにテンションプーリを配置したものであり、テンションプーリも機関本体にできるだけ寄せて配置できるため、内燃機関のコンパクト化に一層貢献できる。
【0027】
また、一対のテンションプーリは、補機
をベルトで駆動
したりベルト
を補機で駆動したりするために必要であり、
この場合の補機はモータジェネレータのような大型であることが多いが、請求項3の構成とすることで、補機が機関本体の手前に出っ張ることも抑制できるため、コンパクト化に一層貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】振り子式オートテンショナを回転軸心方向から見た正面図である。
【
図5】
図4を V-V視方向から見たおおまかな側面図である。
【
図7】テンションプーリの動きを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1).概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1〜3に基づいて概要を説明する。以下の説明では方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はクランク軸線O1の方向であり、左右方向は、気筒軸線O2及びクランク軸線O1と直交した方向である。なお、実施形態の内燃機関は、気筒軸線O2は鉛直線O3に対して若干傾斜している(スラントしている)が、図では、便宜的に気筒軸線O2を鉛直姿勢にして表示している。
【0030】
内燃機関の基本的な構成は従来と同様であり、機関本体1は、主要要素として、シリンダブロック2とその上面に固定されたシリンダヘッド3、並びにこれらの一端面に多数のボルト4で固定されたフロントカバー(チェーンカバー、チェーンケース)5を備えている。シリンダヘッド3の上面にはヘッドカバー6が固定されて、シリンダブロック2の下面にはオイルパン7が固定されている。
【0031】
クランク軸8の一端部はフロントカバー5の外側に突出している一方、正面視で機関本体1を挟んだ左側には、請求項に記載した補機の一例としてのモータジェネレータ(ISG)9を配置し、右側にはエアコン用コンプレッサ10を配置している。また、フロントカバー5のうち、概ね上下中間部でかつ左寄りの部位にはウォータポンプ11を配置している。
【0032】
機関本体1は、
図1に表示しているように、エアコン用コンプレッサ10を設けた側が前を向いて、モータジェネレータ9を設けた側が後ろを向く姿勢で車両のエンジンルームに配置されている。従って、クランク8は、車両の進行方向に向かって左右長手の姿勢になっている(従って、車両の前後方向と機関本体1の前後方向とは、90度相違している。)。
【0033】
モータジェネレータ9は複数のブラケット(後述する)を介してシリンダブロック2及びフロントカバー5に固定されており、エアコン用コンプレッサ10は、図示しないブラケットを介してシリンダブロック2(又は/及びフロントカバー5)に固定されている。ウォータポンプ11はポンプハウジングをフロントカバー5で兼用しており、フロントカバー5にポンプカバー12(
図1参照)を固定することでウォータポンプ11が構成されている。
【0034】
モータジェネレータ9、エアコン用コンプレッサ10、ウォータポンプ11は、それぞれ回転軸に固定されたプーリ15,16,17を備えており、モータジェネレータプーリ15と第1クランクプーリ18とに第1ベルト19が巻き掛けられて、エアコン用コンプレッサ10のプーリ16と第2クランクプーリ20とに第2ベルト21が巻き掛けられて、ウォータポンプ11のプーリ17と第3クランクプーリ22とに第3ベルト23が巻き掛けられている。本実施形態では、モータジェネレータプーリ15が、請求項に記載した補機プーリに相当する。
【0035】
第1クランクプーリ18と第2クランクプーリ20とは略同径であり、モータジェネレータプーリ15は第1クランクプーリ18の略半分の外径になっている。従って、発電機として機能するときは、モータジェネレータ9はクランク軸8の回転数の数倍の回転数で駆動され、モータジェネレータ9がモータとして機能するときは、クランク軸8はモータジェネレータ9の数分の1の回転数で駆動される。
【0036】
第1ベルト19のうちモータジェネレータプーリ15の近くの部位は、振り子式のオートテンショナ28における2個のテンションプーリ29で背面側から挟み込まれている。この場合、オートテンショナ28が機能するには、第1ベルト19がモータジェネレータプーリ15から遠ざかるに従って広がることが必要であり、そこで、第1ベルト19の広がり角度を確保するため、フロントカバー5のうちウォータポンプ11の上側にアイドルプーリ30を取り付けている。従って、ウォータポンプ11は、第1ベルト19で囲われたエリアに配置されている。
【0037】
モータジェネレータ9は機関本体1の左横に配置しているが、モータジェネレータプーリ15を機関本体1の手前に配置することで、第1ベルト19との間の動力伝達が許容されている。また、オートテンショナ29のテンションプーリ29も、機関本体1の手前に配置されている。更に、第1クランクプーリ18は機関本体1に近い位置に配置しているため、モータジェネレータプーリ15及びテンションプーリ29は、機関本体1の手前に位置しているものの、機関本体1の手前への張り出し寸法はできるだけ小さくなっている。従って、モータジェネレータ9の全体を機関本体1の横に配置できる。
【0038】
モータジェネレータ9はクランク軸8よりも上に位置しており、ウォータポンプ11及びアイドルプーリ30は、モータジェネレータ9及び第1クランクプーリ18よりも上に位置している。また、アイドルプーリ30及びウォータポンプ11は、正面視で気筒軸線O2よりもモータジェネレータ9に寄ったエリアに配置されている。
【0039】
図3に示すように、第1クランクプーリ18と第2クランクプーリ20と第3クランクプーリ22とはクランク軸心O1とは一体に形成されており、ボルト32でクランク軸9に固定されている。そして、第1クランクプーリ18が最もフロントカバー5に近くて第3クランクプーリ22がフロントカバー5から最も遠く、第2クランクプーリ20は両者の間に位置している。
【0040】
各ベルト19,21,23は、複数の山形リブを有するマルチタイプのVベルトを使用しており、各ベルト19,21,23の溝幅は、第1ベルト19は第2ベルト21よりも幅広で、第2ベルト21は第3ベルト23より幅広になっている。
【0041】
モータジェネレータ9は、上部と下部との2か所において機関本体1の側面部に取付けられている。上部においては、
図2に示すように、モータジェネレータ9のケーシングに設けた左右のリブ33にブラケット34の下部をボルト25で固定し、ブラケット34の上部を、シリンダヘッド3の一側面に突設したボス36にボルト37で固定すると共に、フロントカバー5に設けた横向き張り出し部38にボルト39で固定している。
【0042】
(2).オートテンショナの構成
図4〜6に示すように、オートテンショナ28は、モータジェネレータプーリ15が遊嵌するリング状のベース(本体)41と、テンションプーリ29が回転自在に保持された2つのアーム42とを有しており、2つのアーム42,43を、テンションプーリ29が遠近動し得るように重ねた状態でベース41に装着し、かつ、略U型のばね44で2つのアーム42,43の間隔を保持している。ベース41には、蓋板45を装着している。
【0043】
2つのテンションプーリ29は、ばね44と一緒にベース41の軸心回りに回動し得ると共に、ばね44を変形させることで互いに独立して動くことが可能である。ベース41のうちテンションプーリ29と反対側の部位には、複数個(3個)の円筒状足部46を設けており、足部46がモータジェネレータ9の外面にボルト(図示せず)で固定されている。足部46は、
図3に一点鎖線で示すトップブラケット板47に固定されている。なお、トップブラケット板47は、リアブラケット板48と補強ロッド49に連結されている。
【0044】
図4に示すように、オートテンショナ28におけるベース41の軸心(アーム42,43の回動中心)50は、
クランク軸心方向から見た正面視において、
モータジェネレータプーリ15と重なった状態を保持しつつ、モータジェネレータプーリ15の軸心51を挟んで、両テンションプーリ19と反対側に若干の寸法Eだけずれている。換言すると、アーム42,43の回動中心50は、フロントカバー5及びクランク軸8から遠ざかる方向に、モータジェネレータ9におけるプーリ15の軸心51よりも寸法Eだけずれている。
【0045】
(3).まとめ
図7において、実線は、機関の運転停止状態及びモータジェネレータ9に負荷が掛かっていない基準状態を示しており、この状態では、2つのテンションプーリ29に作用する第1ベルト19の張力は釣り合っている。
【0046】
他方、細かい目の点線は、モータジェネレータ9が発電機として働く場合の状態を示しており、この状態では、第1ベルト19の周回に対してモータジェネレータ9が負荷になるため、第1ベルト19は、モータジェネレータプーリ15とアイドルプーリ30との間での張力が大きくなるため、テンションプーリ29は基準状態よりも上側に移動する。
【0047】
また、粗い目の点線は、モータジェネレータ9がモータとして働く場合の状態を示しており、この状態では、第1ベルト19がモータジェネレータ9で駆動されるため、第1ベルト19は、モータジェネレータプーリ15と第1クランクプーリ20との間での張力が大きくなって、2つのテンションプーリ29は基準状態よりも下方に移動する。
【0048】
そして、仮にテンションプーリ29の回動中心50がモータジェネレータプーリ15の回転中心51と同心であると、モータジェネレータ9を機関本体1に寄せるとテンションプーリ29がウォータポンプ11のプーリ17に接近し過ぎてしまうおそれがあるが、回動中心50が回転中心51に対して機関本体1の外側にずれているため、オートテンショナ28のテンションプーリ29とウォータポンプ11のプーリ17との間に必要な間隔を空けつつ、モータジェネレータ9をできるだけ機関本体1に寄せることができる。
【0049】
従って、内燃機関をできるだけコンパクト化できると共に、モータジェネレータ9の取付け強度を向上できるのである。第1ベルト19のバタ付きを抑制できることと、ミスアライメントの影響を抑制できることは、既に説明したとおりである。
【0050】
本実施形態では、モータジェネレータ9を機関本体1の横(車両の方向から見ると機関本体1の後ろ)に配置しても、モータジェネレータ9の横(後ろ)に空間を空けることが
できることにより、車両が何かに正面衝突したきに機関本体1が後ろに移動することがあるが、本実施形態では、機関本体1が後ろに移動しても、エンジンルームと車両内部室とを仕切る隔壁とモータジェネレータ9との間の空間をできるだけ大きくできるため、モータジェネレータ9によって隔壁が突き破られたり、後ろに突き出されたりすることを防止又は抑制できる。その結果、衝突時の乗員の安全性を高めることができる。
【0051】
クランク軸8に3つのクランクプーリ18,20,22を設けて、モータジェネレータ9とエアコン10とウォータポンプ11とを別々のベルト19,21,23で駆動等しているため、各ベルト19,21,23の巾やクランクプーリ18,20,22の外径等は必要な条件に応じて任意に設定できる。このため、各補機は、他の補機の影響を受けることなく適切に駆動等することができる。
【0052】
更に、最も大きい負荷が掛かる第1ベルト19は機関本体1に最も寄せて配置していることにより、モータジェネレータプーリ15が機関本体1の手前に突出する寸法を最小限度に
抑えることができるため、クランク軸8に作用する曲げモーメントやモータジェネレータプーリ15に作用するモーメントをできるだけ抑制できる。その結果、クランク軸8やモータジェネレータ9の回転軸の負担を軽減してその耐久性を向上できる。また、テンションプーリ29も機関本体1に寄せて配置できるため、内燃機関のコンパクト化に一層貢献できる
ことになる。
【0053】
なお、本実施形態では、アイドルプーリ30を気筒軸線O2を挟んだ片側に寄せると共に、モータジェネレータ9も機関本体1の片側の横に寄せており、これにより、モータジェネレータ9を有する動力伝達系をコンパクト化できるが、上下のテンションプーリ29を結ぶ線は、アイドルプーリ30とクランク軸8とを結ぶ線と同じ方向に傾斜しているため、第1ベルト19のうちモータジェネレータプーリ15を挟んだ上下の箇所での張力のバランスを均衡させて、第1ベルト19を適度の曲がり状態に保持できる。この点も、本実施形態の利点の一つである。
【0054】
上記の実施形態は、テンションプーリはモータジェネレータ用のベルトに適用されているが、本願発明は、他の補機プーリに
巻き掛けたベルトをテンションプーリで挟み込む場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明は、車両用内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 機関本体
2 機関本体としてのシリンダブロック
3 機関本体としてのシリンダヘッド
9 モータジェネレータ(請求項の補機)
10 エアコン用コンプレッサ
11 ウォータポンプ
15 モータジェネレータプーリ(請求項の補機プーリ)
17 ウォータポンプのプーリ
18 第1クランクプーリ(請求項のクランクプーリ)
19 第1ベルト(請求項のベルト)
28 オートテンショナ
29 テンションプーリ
30 アイドルプーリ
41 ベース
42,43 アーム
44 ばね
50 アームの回動中心
51 補機プーリであるモータジェネレータプーリの軸心