特許第6355193号(P6355193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355193
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】車両用内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20180702BHJP
   F16H 7/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F02B67/06 A
   F16H7/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-111497(P2014-111497)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-224614(P2015-224614A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雅行
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−218839(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0070986(US,A1)
【文献】 実開昭55−022561(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0032838(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0148417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/06
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸に設けたクランクプーリとモータジェネレータに設けたモータジェネレータプーリ、これらプーリに巻き掛けたベルト、並びに、前記ベルトのうちモータジェネレータプーリの両側に位置した部分を一対のテンションプーリで挟み込むオートテンショナを備えており、
前記オートテンショナを構成する一対のテンションプーリは、互いの間隔が広狭自在であって移動式の間隔保持ばねによって所定間隔に戻るように付勢されており、前記モータジェネレータプーリがモータとして駆動されると、前記ベルトの張り側で一方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた一方方向に一緒に回動し、前記モータジェネレータプーリが発電機として働くと、前記ベルトの張り側で他方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた他方方向に一緒に回動するようになっている構成であって、
回転停止状態で前記両テンションプーリが前記間隔保持ばねによって静止する状態を中立位置として、前記ベルトの張りの変化によって一緒に回動した前記両テンションプーリを前記中立位置と同じ基準位置に戻る方向に付勢する復帰用ばね手段が備えられている、
車両用内燃機関。
【請求項2】
クランク軸に設けたクランクプーリとモータジェネレータに設けたモータジェネレータプーリ、これらプーリに巻き掛けたベルト、並びに、前記ベルトのうちモータジェネレータプーリの両側に位置した部分を一対のテンションプーリで挟み込むオートテンショナを備えており、
前記オートテンショナを構成する一対のテンションプーリは、互いの間隔が広狭自在であって移動式の間隔保持ばねによって所定間隔に戻るように付勢されており、前記モータジェネレータプーリがモータとして駆動されると、前記ベルトの張り側で一方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた一方方向に一緒に回動し、前記モータジェネレータプーリが発電機として働くと、前記ベルトの張り側で他方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた他方方向に一緒に回動するようになっている構成であって、
回転停止状態で前記両テンションプーリが前記間隔保持ばねによって静止する状態を中立位置として、前記両テンションプーリを前記中立位置よりも他方方向に回動した基準位置に戻るように付勢する復帰用ばね手段を設けることにより、前記モータジェネレータがモータとして駆動されたときに、前記一方のテンションプーリが一方方向に移動することに対する抵抗が、前記両テンションプーリが中立位置に戻される場合よりも大きくなるように設定している、
車両用内燃機関。
【請求項3】
クランク軸に設けたクランクプーリとモータジェネレータに設けたモータジェネレータプーリ、これらプーリに巻き掛けたベルト、並びに、前記ベルトのうちモータジェネレータプーリの両側に位置した部分を一対のテンションプーリで挟み込むオートテンショナを備えており、
前記オートテンショナを構成する一対のテンションプーリは、互いの間隔が広狭自在であって移動式の間隔保持ばねによって所定間隔に戻るように付勢されており、前記モータジェネレータプーリがモータとして駆動されると、前記ベルトの張り側で一方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた一方方向に一緒に回動し、前記モータジェネレータプーリが発電機として働くと、前記ベルトの張り側で他方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた他方方向に一緒に回動するようになっている構成であって、
回転停止状態で前記両テンションプーリが前記間隔保持ばねによって静止する状態を中立位置として、前記両テンションプーリを前記中立位置よりも一方方向に回動した基準位置に戻るように付勢する復帰用ばね手段を設けることにより、前記モータジェネレータが発電機として駆動されたときに、前記他方のテンションプーリが他方方向に移動することに対する抵抗が、前記両テンションプーリが中立状態に戻される場合よりも大きくなるように設定している、
車両用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、モータジェネレータを備えた車両用内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の内燃機関において、モータ兼用発電機(モータジェネレータ)を搭載して、これにスタータを兼用させたり、クランク軸の回転をアシストしたりすることが知られている。モータジェネレータとクランク軸との間の動力伝達はベルトで行われており、このため、クランク軸にはクランクプーリを設けて、モータジェネレータにはモータジェネレータプーリを設けている。
【0003】
クランクプーリとモータジェネレータプーリとに巻き掛けられたベルトの特徴は、モータジェネレータが発電機として機能するときとモータとして機能するときとで、張り側と弛み側とが入れ替わることである。
【0004】
そこで、いずれの使用態様でもベルトとモータジェネレータプーリとの間に必要なフリクションが得られるようにするため、例えば特許文献1に開示されているような一対のテンションプーリを有する振り子式オートテンショナをモータジェネレータの近くに配置して、ベルトを、モータジェネレータプーリを挟んだ両側からテンションプーリで挟み込むことが行われている。
【0005】
この振り子式のオートテンショナにおいて、一対のテンションプーリはそれぞれアームに取付けられており、両アームは、共通の回動軸心回りに回動するようにベース(本体)に取付けられている。また、両テンションプーリはばね体で連結されており、モータジェネレータプーリの外周方向に一緒に回動しつつ、互いの間隔がばね体に抗して多少は変化し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−521639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、上記のように、オートテンショナのテンションプーリはモータジェネレータプーリの外周方向に自由に回動するが、モータジェネレータをモータとして使用して機関を始動させたり、モータジェネレータを発電機として使用することでモータジェネレータが負荷なったりすると、ベルトの片側が瞬間的に張ることでテンションプーリとベルトとがバタ付いて(暴れて)、異音(叩き音)が発生する現象が見られた。
【0008】
すなわち、ベルトの片側が瞬間的に張ることで、片方のテンションプーリがベルトで突き出されて両者の間に隙間ができ、次いで、テンションプーリが戻ってベルトの背面に当たり、するとベルトが変形してから戻ることで再びテンションプーリが突き出される、といった動きが発生するのであり、その結果、テンションプーリ及びベルトにバタ付きが発生するのであった。そして、ベルトがバタ付くと、異音(叩き音)が発生するのみならず、ベルト及びオートテンショナの耐久性の低下を招来したり、モータジェネレータプーリとの摩擦低下によって伝達効率を低下させたりするおそれもある。
【0009】
この点については、モータジェネレータをモータとして働かせる場合は、加速の程度を
小さくしてベルトが瞬間的に張ることを防止する一方、モータジェネレータを発電機として働かせる場合は、負荷を徐々に大きくしてベルトが瞬間的に張ることを防止すれば良いと云えるが、いずれにしても、モータジェネレータの立ち上がりが遅くなるため、始動時間が長くなったり、発電時間が長くなったりする問題がある。すなわち、モータジェネレータの応答性が悪くなる問題がある。
【0010】
本願発明は、このような現状を改善することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、互いに独立した3つの構成を有している。これら各請求項1の発明は、基本要素として、クランク軸に設けたクランクプーリとモータジェネレータに設けたモータジェネレータプーリ、これらプーリに巻き掛けたベルト、並びに、前記ベルトのうちモータジェネレータプーリの両側に位置した部分を一対のテンションプーリで挟み込むオートテンショナを備えている。
【0012】
そして、前記オートテンショナを構成する一対のテンションプーリは、互いの間隔が広狭自在であって移動式の間隔保持ばねによって所定間隔に戻るように付勢されており、前記モータジェネレータプーリがモータとして駆動されると、前記ベルトの張り側で一方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた一方方向に一緒に回動し、前記モータジェネレータプーリが発電機として働くと、前記ベルトの張り側で他方のテンションプーリが押されることにより、前記モータジェネレータプーリの外周方向に向いた他方方向に一緒に回動するようになっている。以上が基本構成である。
【0013】
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、 回転停止状態で前記両テンションプーリが前記間隔保持ばねによって静止する状態を中立位置として、前記ベルトの張りの変化によって一緒に回動した前記両テンションプーリを前記中立位置と同じ基準位置に戻る方向に付勢する復帰用ばね手段が備えられている
という構成になっている。
【0014】
請求項2の発明は、上記基本構成において、
回転停止状態で前記両テンションプーリが前記間隔保持ばねによって静止する状態を中立位置として、前記両テンションプーリを前記中立位置よりも他方方向に回動した基準位置に戻るように付勢する復帰用ばね手段を設けることにより、前記モータジェネレータがモータとして駆動されたときに、前記一方のテンションプーリが一方方向に移動することに対する抵抗が、前記両テンションプーリが中立位置に戻される場合よりも大きくなるように設定している
という構成になっている。
【0015】
請求項3の発明は、上記基本構成において、
回転停止状態で前記両テンションプーリが前記間隔保持ばねによって静止する状態を中立位置として、前記両テンションプーリを前記中立位置よりも一方方向に回動した基準位置に戻るように付勢する復帰用ばね手段を設けることにより、前記モータジェネレータが発電機として駆動されたときに、前記他方のテンションプーリが他方方向に移動することに対する抵抗が、前記両テンションプーリが中立状態に戻される場合よりも大きくなるように設定している
という構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
いずれの請求項の発明においても、テンションプーリは基準位置に戻るように復帰用ばね手段で付勢されているため、モータジェネレータがモータとして働いたり発電機として働いたりすることでベルトが急激に張っても、テンションプーリが急激に回動することを抑制できる。従って、モータジェネレータを応答性良く作動させても、テンションプーリがベルトで跳ね飛ばされるような現象を防止して、テンションプーリ及びベルトのバタ付きを防止又は抑制できる。その結果、異音の発生の防止又は抑制や、ベルト及びオートテンショナの耐久性向上、伝動効率の向上に貢献できる。
【0017】
そして、モータジェネレータとベルトとの関係を見ると、内燃機関の特性等により、モータジェネレータをモータとして使用する場合のベルトのテンションと発電機として使用する場合のベルトのテンションとが同じ程度である場合や、モータとして使用する場合のテンションが発電機として使用する場合のテンションよりも強い場合、或いは、発電機として使用する場合のテンションの方がモータとして使用する場合のテンションよりも強い場合があり得る。
【0018】
この点、本願発明では、モータジェネレータをモータとして使用する場合のベルトのテンションと発電機として使用する場合のベルトのテンションとが同じ程度である場合は、請求項1の発明を採用することでテンションプーリに適切な抵抗を付与することができ、モータとして使用する場合のテンションが発電機として使用する場合のテンションよりも強い場合は、請求項2の構成を採用することでテンションプーリに適切な抵抗を付与することができ、更に、発電機として使用する場合のテンションの方がモータとして使用する場合のテンションよりも強い場合は、請求項3の構成を採用することでテンションプーリに適切な抵抗を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の全体的な概略正面図である。
図2】フロントカバーの斜視図である。
図3】オートテンショナの正面図である。
図4図3を IV-IV視方向から見たおおまかな側面図である。
図5】オートテンショナの分離正面図である。
図6】(A)は図3のVI-VI 視断面図、(B)は(A)の部分拡大図である。
図7】(A)は図6(B)の VII-VII視断面図、(B)は復帰用ばね手段の別例図である。
図8】他の復帰用ばね手段を装着した状態での正面図である。
図9】基準位置を中立位置に揃えた例の模式図である。
図10】基準位置を中立位置から他方方向にずらした例の模式図である。
図11】基準位置を中立位置から一方方向にずらした例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1).概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1,2に基づいて概要を説明する。以下の説明では方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はクランク軸線O1の方向であり、左右方向は、気筒軸線及びクランク軸線O1と直交した方向である。
【0021】
内燃機関の基本的な構成は従来と同様であり、機関本体1は、主要要素として、シリンダブロック2とその上面に固定されたシリンダヘッド3、並びにこれらの一端面に多数のボルト4で固定されたフロントカバー(チェーンカバー、チェーンケース)5を備えている。シリンダヘッド3の上面にはヘッドカバー6が固定されて、シリンダブロック2の下面にはオイルパン7が固定されている。
【0022】
既述のとおり、クランク軸線O1の方向を前後方向としているが、フロントカバー5を設けている側を前としており、クランク軸8の前端部がフロントカバー5の外側に突出している一方、正面視で機関本体1を挟んだ左側には、モータジェネレータ(ISG)9を配置し、右側にはエアコン用コンプレッサ10を配置している。また、フロントカバー5のうち、概ね上下中間部でかつ左寄りの部位にはウォータポンプ11を配置している。
【0023】
モータジェネレータ9は複数のブラケット(後述する)を介してシリンダブロック2及
びフロントカバー5に固定されており、エアコン用コンプレッサ10は、図示しないブラケットを介してシリンダブロック2(又は/及びフロントカバー5)に固定されている。ウォータポンプ11はポンプハウジングをフロントカバー5で兼用しており、フロントカバー5にポンプカバー12(図1参照)を固定することでウォータポンプ11が構成されている。
【0024】
モータジェネレータ9、エアコン用コンプレッサ10、ウォータポンプ11は、それぞれ回転軸に固定されたプーリ15,16,17を備えており、モータジェネレータプーリ15と第1クランクプーリ18とに第1ベルト19が巻き掛けられて、エアコン用コンプレッサ10のプーリ16と第2クランクプーリ20とに第2ベルト21が巻き掛けられて、ウォータポンプ11のプーリ17と第3クランクプーリ22とに第3ベルト23が巻き掛けられている
【0025】
第1クランクプーリ18と第2クランクプーリ20とは略同径であり、モータジェネレータプーリ15は第1クランクプーリ18の略半分の外径になっている。従って、発電機として機能するときは、モータジェネレータ9はクランク軸8の回転数の数倍の回転数で駆動され、モータジェネレータ9がモータとして機能するときは、クランク軸8はモータジェネレータ9の数分の1の回転数で駆動される。
【0026】
第1ベルト19のうちモータジェネレータプーリ15の近くの部位は、振り子式のオートテンショナ28における2個のテンションプーリ29で背面側から挟み込まれている。この場合、オートテンショナ28が機能するには、第1ベルト19がモータジェネレータプーリ15から遠ざかるに従って広がることが必要であり、そこで、第1ベルト19の広がり角度を確保するため、フロントカバー5のうちウォータポンプ11の上側にアイドルプーリ30を取り付けている。従って、ウォータポンプ11は、第1ベルト19で囲われたエリアに配置されている。
【0027】
モータジェネレータ9は機関本体1の左横に配置しているが、モータジェネレータプーリ15を機関本体1の手前に配置することで、第1ベルト19との間の動力伝達が許容されている。また、オートテンショナ29のテンションプーリ29も、機関本体1の手前に配置されている。更に、第1クランクプーリ18は機関本体1に近い位置に配置しているため、モータジェネレータプーリ15及びテンションプーリ29は、機関本体1の手前に位置しているものの、機関本体1の手前への張り出し寸法はできるだけ小さくなっている。従って、モータジェネレータ9の全体を機関本体1の横に配置できる。
【0028】
モータジェネレータ9はクランク軸8よりも上に位置しており、ウォータポンプ11及びアイドルプーリ30は、モータジェネレータ9及び第1クランクプーリ18よりも上に位置している。また、アイドルプーリ30及びウォータポンプ11は、正面視で気筒軸心O2を挟んでモータジェネレータ9に寄ったエリアに配置されている。
【0029】
明示していないが、第1クランクプーリ18と第2クランクプーリ20と第3クランクプーリ22とは一体に形成されており、図2のとおり、ボルト32でクランク軸9に固定されている。そして、第1クランクプーリ18が最もフロントカバー5に近くて第3クランクプーリ22がフロントカバー5から最も遠く、第2クランクプーリ20は両者の間に位置している。
【0030】
各ベルト19,21,23は、複数の山形リブを有するマルチタイプのVベルトを使用しており、各ベルト19,21,23の溝幅は、第1ベルト19は第2ベルト21よりも幅広で、第2ベルト21は第3ベルト23より幅広になっている。
【0031】
モータジェネレータ9は、上部と下部との2か所において機関本体1の側面部に取付けられている。上部においては、図2に示すように、モータジェネレータ9のケーシングに設けた左右のリブ33にブラケット34の下部をボルト25で固定し、ブラケット34の上部を、シリンダヘッド3の一側面に突設したボス36にボルト37で固定すると共に、フロントカバー5に設けた横向き張り出し部38にボルト39で固定している。
【0032】
(2).オートテンショナの構成
図3〜6に示すように、オートテンショナ28は、モータジェネレータプーリ15が遊嵌するリング状のベース(本体)41と、テンションプーリ29が回転自在に保持された2つのアーム42とを有しており、2つのアーム42,43を、それらに設けたテンションプーリ29の間隔が広狭変化し得るように重ねた状態でベース41に装着し、かつ、略U型の間隔保持ばね44で2つのアーム42,43の間隔を保持している。ベース41は円板部と筒部とを有しており、筒部には、円板部と平行な蓋板45を装着している。
【0033】
第1アーム42は1枚板のドーナツ状になっているが、第2アーム43は第1アーム42を上下から挟む2枚の板を有しており、上下の板の内周は筒部43aで繋がっている。
【0034】
2つのテンションプーリ29は、間隔保持ばね44と一緒にベース41の軸心回りに回動し得ると共に、間隔保持ばね44を変形させることで互いに独立して動くことが可能である。すなわち、相対間隔が一定になるように間隔保持ばね44で付勢されつつ、一緒に回動し得る。ベース41のうちテンションプーリ29と反対側の部位には、複数個(3個)の円筒状足部46を設けており、足部46がモータジェネレータ9の外面にボルト(図示せず)で固定されている。足部46は、図2及び図4に一点鎖線で示すトップブラケット板47に固定されている。なお、図2に示すように、トップブラケット板47とリアブラケット板48とが補強ロッド49によって連結されている。
【0035】
オートテンショナ28におけるベース41の軸心(アーム42,43の回動中心)50は、正面視において、モータジェネレータプーリ15の軸心51を挟んで、両テンションプーリ19と反対側に若干の寸法Eだけずれている。換言すると、アーム42,43の回動中心50は、正面視において、フロントカバー5及びクランク軸8から遠ざかる方向に、モータジェネレータプーリ15の軸心51よりも寸法Eだけずれている。
【0036】
そして、第1アーム42の上面に、内周側にも開口した環状凹所53を形成し、この環状凹所53に、図7(A)に示すように、復帰用ばね手段の一例として、線材又は弾性金属帯板よりなるC形ばね54を配置している。C形ばね54は、その左右中間部54aをベース41の筒部に溶接で固定している(溶接に代えてビス止め等で固定してもよい。ビス止めする場合は、ビスの挿通穴を第1アーム42に空けておいたらよい。)。このため、第2アーム43の筒部43aには、C形ばね54の嵌め込みと移動とを許容するための切欠き溝55を形成している。
【0037】
C形ばね54の一端部54bは、第1アーム42にピン等のファスナ56で固定されており、C形ばね54の他端部54cは、第2アーム43の上板にピン等のファスナ57で固定されている。そして、中間部54aを挟んだ両側に、ジグザグ状の変形部54dを形成している。従って、両変形部54dが伸縮することにより、両アーム42,43が回動することが許容されており、かつ、両アーム42,43は、C形ばね54により、基準位置に戻る方向に付勢されている。
【0038】
図7(A)の例では、両アーム42,43は、機関が回転停止状態で両テンションプーリ29が静止した状態を中立位置として、C形ばね54によって中立位置に戻るように設定されている。すなわち、C形ばね54によって戻る基準位置と中立位置とが一致してい
る。更に換言すると、両アーム42,43が中立位置にあると、C形ばね54の両変形部54dは、弾性変形しておらずに自由長になっている。
【0039】
なお、2つの変形部54dを同じ強さで予備圧縮変形させておくことも可能であり、この場合も、中立位置で2つの変形部の弾性力が均衡して、2つのアーム42,43は中立位置に付勢される。アーム42,43の動きに対する抵抗(制動力)を高めて復帰機能を確実化するという点では、アーム42,43が基準位置にある状態で予備変形させておく(プリテンションを付与しておく)のが好ましいと云える。
【0040】
敢えて述べる必要はないが、C形ばね54は、一方の変形部54dが縮むときは、他方の変形部54aは伸びることになる。なお、2本のC形ばね54を環状凹所53に配置して、両アーム42,43を別々のC形ばね54で付勢することも可能である。
【0041】
図7(A)では、復帰用ばね手段としてC形ばね54を使用しているが、復帰用ばね手段としては、図7(B)に示すねじりトーションばね58を使用することも可能である。この場合、1つのねじりトーションばね58を使用して、長さ方向の中間部をベース41に固定して、一端部は第1アーム42に固定し他端部は第2アーム43に固定してもよいし、2個のねじりトーションばね58を使用して、それぞれ、一端部はベース41に固定して他端部はアーム42,43に固定してもよい。
【0042】
図示のねじりトーションばね58は渦巻き形になっているが、コイルばねのように同径に巻いたタイプを使用することも可能である。ベース41の筒部の外周部に配置する場合は、同径のタイプが好ましいと云える。
【0043】
図8に示す実施形態では、復帰用ばね手段として引っ張りコイルばねを使用しており、一対の引っ張りコイルばね59,60を、間隔保持ばね44の外周の外側に直列状に配置している。両引っ張りコイルばね59,60の互いに接近した一端部59a,60aは、間隔保持ばね44の中間部に設けた突起61に固定又は係止されており、両引っ張りコイルばね59,60の互いに離れた他端部59a,60aはベース(図示せず)に固定又は係止されている。引っ張りコイルばね59,60に代えて、湾曲した板ばねを使用することも可能である。
【0044】
この実施形態では、間隔保持ばね44が基準位置に戻るように付勢されているため、結果として、両アーム42,43も基準位置に戻る方向に付勢されている。るた、基準位置と中立位置とは一致している。引っ張りばねに代えて圧縮ばねを使用してもよい。また、2つのばねは互いに離れた位置に配置してもよい。
【0045】
(3).まとめ
図9において、実線は、機関の運転停止状態及びモータジェネレータ9に負荷が掛かっていない基準状態を示しており、この状態では、2つのテンションプーリ29に作用する第1ベルト19の張力は釣り合っている。すなわち、中立位置62と基準位置63とが一致している。
【0046】
粗い目の点線は、モータジェネレータ9がモータとして働く場合の状態を示しており、この状態では、第1ベルト19がモータジェネレータ9で駆動されるため、第1ベルト19は、モータジェネレータプーリ15と第1クランクプーリ20との間での張力が大きくなって、下方(一方の)のテンションプーリ29が下方に強く押されて、2つのテンションプーリ29は基準位置よりも下方に(一方方向に)移動する。
【0047】
他方、細かい目の点線は、モータジェネレータ9が発電機として働く場合の状態を示し
ており、この状態では、第1ベルト19の周回に対してモータジェネレータ9が負荷になるため、第1ベルト19は、モータジェネレータプーリ15とアイドルプーリ30との間での張力が大きくなるため、上側(他方の)テンションプーリ29が強く押されて両テンションプーリ29は基準位置よりも上側に(他方方向)移動する。
【0048】
そして、モータジェネレータ9がモータとして働くときも発電機として働くときも、第1ベルト19のうちモータジェネレータプーリ15を挟んだ片側が急激に引っ張られることになり、このため、モータ又は発電機として働くときの最初に、いずれか一方のテンションプーリ29が第1ベルト19で瞬間的に押し出される現象が生じるが、C形ばね54等の復帰用ばね手段によってテンションプーリ29の移動に抵抗が作用しているため(テンションプーリ29の動きが制動されているため)、テンションプーリ29の跳ね動きが防止又は著しく抑制される。その結果、第1ベルト19及びテンションプーリ29のバタ付きを防止することができる。
【0049】
図10では、基準位置63が中立位置62よりも上にずれている。従って、モータジェネレータ9をモータとして駆動するに際して、第1ベルト19で下側のテンションプーリ29が押し移動することに対して、基準位置63と中立位置62とが一致している場合よりも大きな抵抗が作用する。
【0050】
このため、モータジェネレータ9をモータとして駆動するに際して、駆動直後にテンションプーリ29が跳ねることをより確実に防止できる。従って、モータジェネレータ9をモータとして駆動する際に、テンションプーリ29のバタ付きが顕著に現れる傾向のある内燃機関では、この図10の態様すると好適である。
【0051】
他方、図11では、基準位置63が中立位置62よりも下にずれている。従って、モータジェネレータ9を発電機として駆動するに際して、第1ベルト19で上側のテンションプーリ29が押し移動することに対して、基準位置63が中立位置62と一致している場合よりも大きな抵抗が作用する。
【0052】
このため、モータジェネレータ9を発電機として駆動するに際して、励磁直後にテンションプーリ29が跳ねることをより確実に防止できる。従って、モータジェネレータ9を発電機として駆動する際に、テンションプーリ29のバタ付きが顕著に現れる傾向のある内燃機関では、この図11の態様すると好適である。
【0053】
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、復帰用ばね手段として2つのばね体を使用して、それぞれ、テンションプーリが外側に動くことに対してのみ抵抗として作用するように配置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明は、車両用内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 機関本体
9 モータジェネレータ
10 エアコン用コンプレッサ
11 ウォータポンプ
15 モータジェネレータプーリ
17 ウォータポンプのプーリ
18 第1クランクプーリ
19 第1ベルト(請求項のベルト)
28 オートテンショナ
29 テンションプーリ
30 アイドルプーリ
41 ベース
42,43 アーム
44 間隔保持ばね
53 環状凹所
54 復帰用ばね手段の一例としてのC形ばね
58 復帰用ばね手段の一例としてのねじりトーションばね
59,60 復帰用ばね手段の一例としてのコイルばね
62 中立位置
63 基準位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11