特許第6355197号(P6355197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6355197内容物放出製品用カバー機構ならびにこの内容物放出製品用カバー機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355197
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】内容物放出製品用カバー機構ならびにこの内容物放出製品用カバー機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/38 20060101AFI20180702BHJP
   B65D 83/22 20060101ALI20180702BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20180702BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20180702BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B65D83/38 200
   B65D83/22
   B65D83/00 K
   B05B9/04
   B05B11/00 101E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-134292(P2014-134292)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11139(P2016-11139A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】大島 保夫
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−284925(JP,A)
【文献】 特開2006−176151(JP,A)
【文献】 実開昭52−155217(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/38
B05B 9/04
B05B 11/00
B65D 83/00
B65D 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール式製品またはポンプ式製品の容器本体部およびその上側の操作部の全体を保護し、かつ、この全体を上下方向に移動させて当該操作部の収納・露出状態を選択する内容物放出製品用カバー機構において、
前記操作部を保護する上保護カバーと、
前記上保護カバーとの間の相対的な回動操作が可能な形で設定されて前記容器本体部を保護する下保護カバーと、
前記容器本体部を保持して前記上下方向に移動可能な保持移動部材と、を備え、
前記下保護カバーおよび前記上保護カバーは、
その一方が、前記回動操作にともなって前記保持移動部材を前記上下方向へ移動させるための第一のカム作用部を有し、
その他方が、当該回動操作にともなう当該保持移動部材の回動を阻止して前記上下方向への移動を許容する回動阻止部を有し、
前記保持移動部材は、
前記第一のカム作用部に倣う第二のカム作用部ならびに前記回動阻止部の回動阻止作用および上下動許容作用を受ける被回動阻止部を有し、
前記第一のカム作用部および前記第二のカム作用部の一方は、
溝状部であって、
前記保持移動部材を前記上下方向へ移動させるための斜め部分と、
当該斜め部分の両端からそれぞれの外側周方向に連続形成されて当該保持移動部材の当該上下方向への移動を生じない上側横部分および下側横部分と、を有し、
前記上側横部分および前記下側横部分は、
前記斜め部分との、当該下側横部分の天井面境界部分および当該上側横部分の底面境界部分に形成されて前記第一のカム作用部および前記第二のカム作用部の他方との協働作用により前記回動操作の開始段階および終了段階を利用者に示すための、上下方向に凸状のクリック感生成部を有している、
ことを特徴とする内容物放出製品用カバー機構。
【請求項2】
前記操作部および前記上保護カバーは、
その一方に係合部を、その他方に被係合部をそれぞれ有し、
当該操作部が当該上保護カバーの内部空間域に収納保護された状態において、当該係合部および当該被係合部の係合作用により当該操作部の内容物放出操作方向への移動が阻止される、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出製品用カバー機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の内容物放出製品用カバー機構を備え、
前記容器本体部に放出対象内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【請求項4】
請求項1または2記載の内容物放出製品用カバー機構を備え、
前記容器本体部に噴射用ガスおよび放出対象内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に対応した下保護カバーと操作部に対応した上保護カバーとからなり、エアゾール式製品またはポンプ式製品の全体を保護し、かつ、当該製品の全体をカム作用により上下方向に移動させて当該操作部の収納・露出状態を選択しえる内容物放出製品用カバー機構(以下、必要に応じて単に「カバー機構」という)に関する。
【0002】
本明細書においては、カム作用の駆動側および従動側の双方を含む意で「カム作用部」といい、また、必要に応じて従動側のカム作用部を「カム倣い部」という。
【0003】
ここでエアゾール式製品またはポンプ式製品を保持する保持移動部材が、上保護カバーと下保護カバーとの間の相対的な回動操作にともなう例えば下保護カバーとのカム作用により上下動する。
【0004】
特に、保持移動部材を上下方向に移動させるためのカム作用部(例えば溝状部)を、この上下動用の本来のカム作用域としての斜め部分と、その両端に形成された(保持移動部材の上下動には何ら寄与しない)横部分とで構成したものである。
【0005】
この横部分に相手のカム作用部(例えば凸状カム倣い部)が位置することにより、エアゾール式製品,ポンプ式製品は、その最上で操作部が露出した静止モード・作動モード位置と、その最下で操作部が収納された製品保護モード位置とに、確実にロックされる。
【0006】
また、上保護カバーと下保護カバーとの間の相対的な回動操作により保持移動部材などのカム作用部(カム倣い部)がこの横部分から上下動態様の斜め部分に移行する際にはクリック感を利用者に与え、操作上の利便性を確保している。
【0007】
また、携帯時などで操作部が上保護カバーに収納された製品保護モードのときには当該操作部をロックして不用意な作動モード設定操作(押下げ操作など)が阻止されるようにし、内容物放出の誤動作を防止している。
【背景技術】
【0008】
従来、下保護カバーおよび上保護カバーからなり、その内部にエアゾール式製品を保護し、かつ、上下保護カバー間の回動操作にともなう製品の上下動により操作部の収納・露出状態を選択しえるカバー機構が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
このカバー機構の場合、カム作用溝状部としては、エアゾール式製品を上下動させるための斜め溝状部が形成されているだけである。
【0010】
この斜め溝状部の両端から外側周方向に、エアゾール式製品の上下動には何ら関与しない横溝状部を設けて、当該製品を、その最上位置の静止・作動モードおよび最下位置の製品保護モードにそれぞれロックすることなどは何ら考慮されていない。
【0011】
また、カバー機構のカム作用溝状部(駆動部)に対するカム倣い部として、エアゾール式製品の外周面に設けた係合子を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭52−155217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように従来の上保護カバーおよび下保護カバーからなる内容物放出製品用カバー機構では、その内部に配設した係合子付きのエアゾール式製品を上下方向に移動させるためのカム作用部として、当該上下動にいわば直結する斜め溝状部を用いるだけである。
【0014】
そのため、カバー機構の保持対象であるエアゾール式製品,ポンプ式製品は、その最上位置(静止,作動モード)や最下位置(製品保護モード)にロックされず、これらの位置から不意に移動してしまうという問題点があった。
【0015】
すなわち、カバー機構の内部に操作部までの全体を収納したはずのエアゾール式製品,ポンプ式製品が上保護カバーから飛び出したり、静止・作動モード位置に設定した操作部(の一部)が上保護カバーの方に入り込んだりするなどの問題点があった。
【0016】
そこで、本発明では内容物放出製品用カバー機構の上保護カバーおよび下保護カバー間の回動操作に基づく上下動用の斜めカム作用部の両側に、エアゾール式製品などをその上位置と下位置とに個々にロックするための横部分(横カム作用部)を設けている。
【0017】
これにより、カバー機構に保持されたエアゾール式製品,ポンプ式製品をそれぞれの上位置(静止,作動モード)および下位置(製品保護モード)に確実に設定することを目的とする。
【0018】
また、エアゾール式製品やポンプ式製品を保持する保持移動部材などのカム作用部が、回動操作によりこの横部分から斜め部分に移行する際や、逆に斜め部分から横部分に入り込んだ際にクリック感を利用者に与えて、操作内容の無意識で確実な把握化を図ることを目的とする。
【0019】
また、操作部が上保護カバーに収納された製品保護モードのときには当該操作部をロックして、内容物放出操作の誤動作防止化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール式製品またはポンプ式製品の容器本体部(例えば後述の容器本体1+マウンティングカップ2)およびその上側の操作部(例えば後述の操作部5)の全体を保護し、かつ、この全体を上下方向に移動させて当該操作部の収納・露出状態を選択する内容物放出製品用カバー機構において、
前記操作部を保護する上保護カバー(例えば後述の上保護カバー7)と、
前記上保護カバーとの間の相対的な回動操作が可能な形で設定されて前記容器本体部を保護する下保護カバー(例えば後述の下保護カバー6)と、
前記容器本体部を保持して前記上下方向に移動可能な保持移動部材(例えば後述の保持移動部材8)と、を備え、
前記下保護カバーおよび前記上保護カバーは、
その一方(例えば後述の下保護カバー6)が、前記回動操作にともなって前記保持移動部材を前記上下方向へ移動させるための第一のカム作用部(例えば後述のカム溝状部6a)を有し、
その他方(例えば後述の上保護カバー7)が、当該回動操作にともなう当該保持移動部材の回動を阻止して前記上下方向への移動を許容する回動阻止部(例えば後述の縦溝状部7a)を有し、
前記保持移動部材は、
前記第一のカム作用部に倣う第二のカム作用部(例えば後述の被ガイド凸状部8c)ならびに前記回動阻止部の回動阻止作用および上下動許容作用を受ける被回動阻止部(例えば後述の縦リブ状部8d)を有し、
前記第一のカム作用部および前記第二のカム作用部の一方は、
溝状部(例えば後述のカム溝状部6a)であって、
前記保持移動部材を前記上下方向へ移動させるための斜め部分(例えば後述の斜め溝状部6d)と、
当該斜め部分の両端からそれぞれの外側周方向に連続形成されて当該保持移動部材の当該上下方向への移動を生じない上側横部分(例えば後述の上横溝状部6c)および下側横部分(例えば後述の下横溝状部6b)と、を有し、
前記上側横部分および前記下側横部分は、
前記斜め部分との、当該下側横部分の天井面境界部分および当該上側横部分の底面境界部分に形成されて前記第一のカム作用部および前記第二のカム作用部の他方との協働作用により前記回動操作の開始段階および終了段階を利用者に示すための、上下方向に凸状のクリック感生成部(例えば後述のクリック感生成部6e)を有した、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記操作部および前記上保護カバーは、
その一方(例えば後述の操作部5)に係合部(例えば後述の内側環状逆段部5c)を、その他方(例えば後述の上保護カバー7)に被係合部(例えば後述の外側環状段部7d)をそれぞれ有し、
当該操作部が当該上保護カバーの内部空間域に収納保護された状態において、当該係合部および当該被係合部の係合作用により当該操作部の内容物放出操作方向への移動が阻止される、
構成態様のものを用いる。
【0021】
このような構成からなる内容物放出製品用カバー機構ならびにこの内容物放出製品用カバー機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明はこのように、
(11)カバー機構に保持されたエアゾール式製品,ポンプ式製品をそれぞれの上位置(静止,作動モード)と下位置(製品保護モード)とに確実にロックでき、
(12)このロック状態への設定およびロック状態の解除それぞれの回動操作の無意識で確実な把握化を図ることができ、
(13)製品保護モードにおける内容物放出操作の誤動作防止化を図ることができる、
といった効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】例えばエアゾール式製品の全体がカバー機構(上保護カバー+下保護カバー)に収納された製品保護モードを示す説明図である。
図2】上保護カバーに対する下保護カバーの回動操作により図1の収納状態のエアゾール式製品が上方向に移動していく製品上動モードを示す説明図である。
図3図2の回動操作後にエアゾール式製品の作動モード設定用の操作部が上保護カバーの上方に露出して内容物噴射操作(操作部の押下げ操作)が可能な静止モードを示す説明図である。
図4図3の操作部の押下げ操作により容器本体内容物が外部空間域に噴射される作動モードを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図4を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
なお、本発明の内容物放出製品用カバー機構は上述のように、エアゾール式製品およびポンプ式製品の双方を対象としているが、以下の図示した実施形態においては単なる説明の便宜上、原則的にエアゾール式製品を前提とする。
【0026】
また、同じように単なる説明の便宜上、
(21)上保護カバー7を固定して下保護カバー6を回動操作し、
(22)下保護カバー6のカム溝状部6aを駆動側のカム作用部として用い、保持移動部材8の被ガイド凸状部8cをカム倣い部として用いる、
ことを前提とする。
【0027】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えばカム溝状部6a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば下保護カバー6)の一部であることを示している。
【0028】
図1図4において、
1は放出対象の内容物および噴射用ガスが収容された容器本体,
2は容器本体1の上端開口部に固定された周知のマウンティングカップ,
2aは当該マウンティングカップの外下端側の環状部分に形成された周知のアンダーカット,
3は利用者の内容物噴射操作と連動して、容器本体1に収容済みの内容物を外部空間域に噴射するためのバルブ作用を呈する周知のステム,
をそれぞれ示している。
【0029】
また、
4はマウンティングカップ2に保持されてステム3の下側部分を収容し、かつ、噴射対象内容物が内部空間を通過する周知のハウジング,
5はステム3の上端側に取り付けられて内容物の上流側通路部を有する押下げタイプの操作部,
5aは操作部5の内容物流出側に取り付けられたノズルチップ,
5bはノズルチップ5aの下流側通路部の先端部分に形成された外部空間域への内容物噴射用の放出口,
5cは当該操作部の上面の環状外端側に形成されて、図1の製品保護モードのとき、後述の外側環状段部7dとの係合作用により当該操作部の下動を阻止するための内側環状逆段部,
をそれぞれ示している。
【0030】
また、
6はエアゾール式製品の容器本体側下部を保護する鞘状で底面部付きの下保護カバー,
6aは当該下保護カバーの内周面に形成されて、後述の上保護カバー7に対する下保護カバー回動操作により、後述の保持移動部材8およびこれと一体のエアゾール式製品を上下動させるための計三個のカム溝状部,
6bはカム溝状部6aそれぞれの下端周方向部分を構成する下側開口の下横溝状部,
6cはカム溝状部6aそれぞれの上端周方向部分を構成する上側開口の上横溝状部,
6dは下横溝状部6bと上横溝状部6cとの間に連続形成された斜め溝状部,
6eは斜め溝状部6dとの、下横溝状部6bの天井面境界部分および上横溝状部6cの底面境界部分に形成されて、図1図3との間の回動操作の開始および終了の各段階で後述の被ガイド凸状部8cに当接して乗り越えることにより、利用者に回動操作開始,終了感を与えるための凸状のクリック感生成部,
6fは当該下保護カバーの上端側内周面に形成されて、後述の上保護カバー7に対する周方向への相対的回動が可能な形で後述の内側環凸状部7bと係合する外側環凹状部,
6gは当該下保護カバーの内面周方向に形成されて、図1の製品保護モードにおける後述の保持移動部材8の環状下端面部分を受けることにより、下横溝状部6bに移動した後述の被ガイド凸状部8cの上下方向位置を規制する環状の内側中間段部,
をそれぞれ示している。
【0031】
また、
7は下保護カバー6との間の相対回動が可能な形で当該下保護カバーの上端側に取り付けられて、エアゾール式製品の操作部5を収納保護する筒状の上保護カバー,
7aは当該上保護カバーの内周面上下方向に形成されて、後述の保持移動部材8の回動を阻止するとともにその上下動を案内する計3個の縦溝状部,
7bは当該上保護カバーの下端側外周面に形成されて、下保護カバー6に対する周方向への回動が可能な形で外側環凹状部6fと係合する内側環凸状部,
7cは当該上保護カバーの中央側に形成されて、操作部5の上下動の案内作用を呈する中央筒状部,
7dは中央筒状部7cの上内端環状部分に形成されて、図1の製品保護モードのとき、操作部5の内側環状逆段部5cを受けることにより当該操作部の下方向への移動を阻止する、すなわち内容物噴射状態への移行を阻止するための外側環状段部,
7eは下保護カバー6の上横溝状部6cに移動した後述の被ガイド凸状部8cの上面部分を受ける下端面,
をそれぞれ示している。
【0032】
また、
8はマウンティングカップ2の環状外側の上端部分と下端部分(アンダーカット2a)を保持して上下動しえるカバーであって、利用者が例えば上保護カバー7を固定した状態で下保護カバー6を回動操作するとき、自らの回動が阻止され、かつ、この阻止状態での当該下保護カバーとの間のカム作用により上下動する筒状の保持移動部材,
8aは当該保持移動部材の内周面上側に形成されて、マウンティングカップ2の環状外側上端部分を係合保持する内向きの環平板状部,
8bは当該保持移動部材の内周面下側に形成されて、マウンティングカップ2のアンダーカット2aを係合保持する内向きの環凸状部,
8cは当該保持移動部材の外周面下端部分に三個のカム溝状部6aのそれぞれに対応する周方向等間隔の離間位置態様で外向きに形成されて、下保護カバーの6の上記回動操作のときに当該カム溝状部に倣いながら上下方向に移動する計三個の被ガイド凸状部,
8dは当該保持移動部材の外周面上下方向に形成されて、上保護カバー7の縦溝状部7aとの協働により上下動ガイド作用および回動阻止作用を呈する計3個の縦リブ状部,
をそれぞれ示している。
【0033】
ここで、ハウジング4,操作部5,下保護カバー6,上保護カバー7および保持移動部材8は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0034】
また、マウンティングカップ2は例えば金属製のもので、容器本体1,ステム3は例えばプラスチック製または金属製のものである。
【0035】
図示の内容物放出製品用カバー機構の基本的特徴は、
(31)容器本体1に取り付けられたマウンティングカップ2の上下外端部分を保持移動部材8で保持し、
(32)保持移動部材8は、図1の製品保護モードにおいて、その被ガイド凸状部8cが下保護カバー6の下横溝状部6bに、またその縦リブ状部8dが上保護カバー7の縦溝状部7aにそれぞれ位置する状態で配設され、
(33)図1の上保護カバー7を固定して下保護カバー6を所定方向(例えば時計方向)に回動操作するとき、保持移動部材8が、その被ガイド凸状部8cへの、下横溝状部6bから斜め溝状部6dを経て上横溝状部6cへといたるカム案内作用により上動して図3の静止モードに移行する、
(34)図3の上保護カバー7を固定して下保護カバー6を上記(33)とは逆方向(例えば反時計方向)に回動操作するとき、保持移動部材8が、その被ガイド凸状部8cへの、上横溝状部6cから下横溝状部6bへといたる同様のカム案内作用により下動して図1の製品保護モードに復帰する、
ことである。
【0036】
なお、下側開口の下横溝状部6bおよび上側開口の上横溝状部6cに倣った状態の被ガイド凸状部8cの上下内側中間段部6g位置は、それぞれ下保護カバー6の内側中間段部6gでの受け作用および上保護カバー7の下端面7eでの受け作用により規定される。
【0037】
すなわち被ガイド凸状部8cが下横溝状部6bまたは上横溝状部6cに倣っている状態での保持移動部材8の上下方向への位置ずれは生じない。
【0038】
内容物放出製品用カバー機構のさらなる基本的特徴は、
(41)図1の製品保護モードおよび図3の静止モードのそれぞれにおける相手モードへの回動操作の開始,終了感を利用者に与えるための凸状のクリック感生成部6eを、下横溝状部6bの天井面および上横溝状部6cの底面それぞれの斜め溝状部6dとの境界部分に形成し、
(42)図1の製品保護モードにおいて、操作部5の内側環状逆段部5cと上保護カバー7の外側環状段部7dとの受け作用により当該操作部の下方への移動を阻止する、すなわち当該操作部の誤動作を阻止する、
ことである。
【0039】
上記(33)のように図示のカバー機構は、下保護カバー6の回動操作にともなって保持移動部材8を上下方向に案内するカム溝状部6aの下端・上端の各周方向部分を、当該上下方向の案内には何ら寄与しない下横溝状部6bおよび上横溝状部6cで構成している。
【0040】
そのため、図1の製品保護モードや図3の静止モードの下保護カバー6および上保護カバー7が不用意に相対回動したとしても、この下横溝状部6bおよび上横溝状部6cの長さの範囲内では保持移動部材8の上下動が阻止される。
【0041】
すなわち、エアゾール式製品やポンプ式製品を携帯する時などに設定される製品保護モードのロック作動の確実性が高まる。図1の下保護カバー6および上保護カバー7の全体にいわば収納保護されているエアゾール式製品の操作部5が当該上保護カバーから不意に露出するようなことは生じにくい。
【0042】
また、上記(41)のように図1の製品保護モードと図3の静止モードとの間で下保護カバー6の回動操作をおこなう利用者はクリック感を感じ、それによりモード切換え操作の確実化が図れる。
【0043】
また、上記(42)のように図1の製品保護モードにおいて操作部5が不用意に押下げられることを阻止している。
【0044】
これによりカバー機構(下保護カバー6+上保護カバー7)に全体が収納された状態のエアゾール式製品に対し、その容器本体1の内容物が誤ってノズルチップ5aの放出口5bから外部に噴射されることを防止している。
【0045】
図4は、図3の静止モードに設定されて上保護カバー7から露出状態の操作部5を押下げ操作したときのエアゾール式製品の作動モードを示している。
【0046】
この作動モードでの内容物噴射動作自体は周知である。
すなわち、操作部5の押下げ操作にともない、
(51)当該操作部と一体のステム3も周知のコイルスプリングの上方向への弾性付勢力に抗しながら下動して、その孔部とステムガスケットとからなる周知の弁作用部がそれまでの閉状態から開状態に移行し、
(52)容器本体1の収容内容物が、後述の噴射用ガスの作用により、「ハウジング4−開状態の弁作用部−ステム3の周知の内部通路−操作部5の上流側通路部−ノズルチップ5aの下流側通路部−放出口5b」を経て外部空間域に噴射される。
【0047】
操作部5の押下げ操作解除にともない、ステム3および操作部5が周知のコイルスプリングの弾性力により上動して周知の弁作用部を開状態から閉状態に設定する。操作部5は図3の静止モードの位置に復帰する。
【0048】
ポンプ式製品(の周知のカバーキャップ)を保持移動部材8に取り付けた場合にも、その操作部5の押下げ操作により、下流側の吐出弁が開き、その上流側の吸込弁が確実に閉じた内容物放出状態の作動モードに設定される。
【0049】
この弁設定にともない、ハウジング内部の吐出弁と吸込弁との間の貯留空間域に収容済みの内容物が外部空間域に放出される。
【0050】
操作部5の押下げ操作が解除されると、エアゾール式製品の場合と同じように操作部5が周知のコイルスプリングの弾性作用により上動して静止モードへ復帰する。
【0051】
この復帰の際、貯留空間域の内容物圧力が低下して吸込弁が開き、容器本体1から内容物(=次回の放出対象内容物)がハウジング内部に流入する。このような内容物放出動作自体も周知である。
【0052】
エアゾール式製品を取付けた状態の図示のカバー機構の組立て手順は、例えば、
(61)マウンティングカップ2を保持移動部材8の環平板状部8aと環凸状部8bとの間に挟持して、エアゾール式製品および保持移動部材8を一体化し、
(62)この一体物を、下保護カバー6にその上方から、保持移動部材8の被ガイド凸状部8cが当該下保護カバーの上横溝状部6cの真上に位置する形で挿し込み、
(63)次に、上保護カバー7を、下保護カバー6にその上方から当該上保護カバーの縦溝状部7aが保持移動部材8の縦リブ状部8dに合致するように入れて、当該下保護カバーの外側環凹状部6fと当該上保護カバー7の内側環凸状部7bとを係合させ、
(64)次に、操作部5を上保護カバー7の上開口部に入れてステム3に取り付ける、
となる。
【0053】
使用済みのエアゾール式製品を図示のカバー機構から取り外すには、上記(61)〜(64)とは逆の順番で、操作部5,上保護カバー7,下保護カバー6および保持移動部材8をそれぞれいわば取り除いていけばよい。
【0054】
以上の組立て手順および取外し手順がポンプ式製品の場合にも適用されるのは勿論である。
【0055】
本発明の内容物放出製品用カバー機構が図示の実施形態に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、
(71)下保護カバー6を固定した状態で上保護カバー7を回動操作する、
(72)下保護カバー6にカム作用部としての被ガイド凸状部を形成し、これに対応したカム溝状部を保持移動部材8に形成する、
(73)カム作用部(カム溝状部6a,被ガイド凸状部8c)の一方を上保護カバー7に、他方を保持移動部材8にそれぞれ形成し、かつ、下保護カバー6の内周面に容器本体1の回動防止用の縦溝状部を形成する、
(74)各種の凸状構成要素(凸状部,リブ状部など)とこれに対応する凹状構成要素(凹状部,溝状部など)との凹凸関係を逆にする、
(75)押下げタイプの操作部5に代えてスパウトタイプの回動操作部を用いる、
ようにしてもよい。
【0056】
本発明が適用されるポンプ式製品およびエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,冷却剤,筋肉消炎剤,育毛剤,染毛剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,日焼け止め,化粧水,クレンジング剤,制汗剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,園芸用剤,殺虫剤,害虫忌避剤,動物忌避剤,消臭剤,洗濯のり,消火器,塗料,接着剤,潤滑剤,ウレタンフォームなどの各種用途のものがある。
【0057】
容器本体に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0058】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,塩化マグネシウム,シリカ,酸化亜鉛,酸化チタン,ゼオライト,ナイロンパウダー,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0059】
油成分としては、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油,ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油などの油脂,流動パラフィンなどの炭化水素油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などの脂肪酸などを用いる。
【0060】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールやセタノールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,1,3−ブチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールなどを用いる。
【0061】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤,ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤,ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤,塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0062】
高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース,メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0063】
各用途に応じた有効成分としては、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤,アクリル系樹脂やワックスなどのセット剤,パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤,レチノールやdl−α−トコフェロールなどのビタミン,ヒアルロン酸などの保湿剤,サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤,安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤,ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤,パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤,カンフル,メントールなどの清涼剤,エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬,スクラロース,アスパルテームなどの甘味料,エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料,パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0064】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,乳化剤,酸化防止剤,金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0065】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,亜酸化窒素,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,ハイドロフルオロオレフィンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0066】
1:容器本体
2:マウンティングカップ
2a:アンダーカット
3:ステム
4:ハウジング
5:押下げタイプの操作部
5a:ノズルチップ
5b:放出口
5c:内側環状逆段部
【0067】
6:下保護カバー
6a:計三個のカム溝状部
6b:下横溝状部
6c:上横溝状部
6d:斜め溝状部
6e:凸状のクリック感生成部
6f:外側環凹状部
6g:内側中間段部
【0068】
7:上保護カバー
7a:計3個の縦溝状部
7b:内側環凸状部
7c:中央筒状部
7d:外側環状段部
7e:下端面
【0069】
8:保持移動部材
8a:内向きの環平板状部
8b:内向きの環凸状部
8c:計三個の被ガイド凸状部
8d:計3個の縦リブ状部
図1
図2
図3
図4