(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355201
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】表皮固定構造及びアームレスト
(51)【国際特許分類】
B68G 7/05 20060101AFI20180702BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20180702BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20180702BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20180702BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
B68G7/05 A
A47C31/02 A
B60N2/75
B60N2/90
A47C7/54 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-233330(P2014-233330)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-96832(P2016-96832A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】菊池 大助
【審査官】
小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−100924(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0140569(US,A1)
【文献】
特開2013−233869(JP,A)
【文献】
特開2001−300161(JP,A)
【文献】
実開昭59−097660(JP,U)
【文献】
米国特許第05401075(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/05
A47C 7/54
A47C 31/02
B60N 2/75
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮を被着体に固定して成る表皮固定構造において、
前記表皮の端末に接合した硬質部材と、
前記表皮の端末において前記硬質部材よりも前記表皮の引張り方向の後方側に設けられた貫通孔と、
前記被着体に設けた突出部と、
前記被着体に設けられており前記突出部よりも前記表皮の引張り方向の先方側に在る表皮外れ防止部材と、を有しており、
前記表皮が引っ張られた状態で前記貫通孔が前記突出部にはめ込まれており、
前記硬質部材は、前記表皮外れ防止部材と前記被着体との間に配置されることにより、前記被着体から外れることを前記表皮外れ防止部材によって防がれており、
前記突出部と前記表皮外れ防止部材は、前記表皮の縁端に沿った方向において互いに間隔をおいて別々の位置に設けられている
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項2】
前記硬質部材は板形状であり、当該硬質部材は前記突出部が設けられている前記被着体の面に対して縦方向に立った状態で前記表皮外れ防止部材と前記被着体との間に配置されることを特徴とする請求項1記載の表皮固定構造。
【請求項3】
前記表皮外れ防止部材が設けられた前記被着体の面は、前記突出部が設けられた前記被着体の面に対して交わる縦方向に延在していることを特徴とする請求項2記載の表皮固定構造。
【請求項4】
前記表皮外れ防止部材が設けられた前記被着体の面は、前記突出部の延在方向と同じ方向に延在していることを特徴とする請求項3記載の表皮固定構造。
【請求項5】
前記突出部は先端に向かって窄まる形状を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の表皮固定構造。
【請求項6】
前記表皮外れ防止部材は、前記硬質部材が接合された前記表皮の端末部の縁端を回り込んで当該表皮の端末部の表面に張り出していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の表皮固定構造。
【請求項7】
表皮と、当該表皮が固定される被着体と、前記表皮を前記被着体に固定する表皮固定構造と、前記被着体に取付けられる加飾部品とを有するアームレストにおいて、前記表皮固定構造は請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の表皮の固定構造であることを特徴とするアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮を被着体に固定して成る表皮の固定構造に関する。また、本発明は、シートに座った人が腕の肘を載せるアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)
従来、表皮固定構造として特許文献1に開示されたものが知られている。この表皮固定構造においては、本願の
図10(a)に示すように、被着体であるフレーム101の先端に突起である係止片102が形成されている。フレーム101の周囲にパッド103が設けられている。パッド103は表皮104で覆われている。表皮104の端末に硬質部材である係止プレート105が縫い付けNによって接合されている。係止プレート105が接合された表皮104の端末は係止片102に引っ掛かっている。カップホルダ106がネジ107によってフレーム101に取り付けられている。係止片102に引っ掛けられた表皮104はフレーム101に取り付けられたカップホルダ106の周端部によって押し付けられて外部へ外れないようになっている。
【0003】
この従来の表皮固定構造においては、表皮104が押付け用の部品であるカップホルダ106によって押え付けられることによって固定されるため、カップホルダ106が組付けられるまでは表皮104が被着体であるフレーム101から外れ易い、という問題がある。
【0004】
(特許文献2)
また、表皮固定構造として、従来、特許文献2に開示されたものが知られている。この表皮固定構造においては、本願の
図10(b)に示すように、被着体である表皮材張設部108に突起である係合ボス部109が設けられている。この係合ボス部109に表皮104の端末部が引っ掛けられている。そして、車両のドアに設けられるプルハンドルの一部110が係合ボス部109に組付けられている。係合ボス部109に組付けられたプルハンドル110が表皮104の端末部を押し付けることにより、表皮104が被着体である表皮材張設部108から外れないように固定されている。
【0005】
この従来の表皮固定構造においては、表皮104が押付け用の部品であるプルハンドル110によって押え付けられることによって固定されるため、プルハンドル110が組付けられるまでは表皮104が被着体である表皮材張設部108から外れ易い、という問題がある。
【0006】
(特許文献3)
次に、表皮固定構造として、従来、特許文献3に開示されたものが知られている。この表皮固定構造においては、本願の
図11に示すように、被着体である芯材111を表皮104によって覆うことによって、車両用ドアに装備されるアームレストパッド112が形成されている。
【0007】
アームレストパッド112は、車両用ドアの内装ボードに装備されている膨出棚部113に取り付けられる。膨出棚部113の表面には係止片部114と引張り係合片115とが設けられている。引張り係合片115は係止片部114の手前側と係止片部114の奥側とに1つずつ設けられている。これらの引張り係合片115が係止片部114を挟んでいる。
【0008】
表皮104の端末部に係合孔116が設けられている。一方、芯材111に挟着片部117及び係合突起118が設けられている。係合突起118は、基部118b、薄肉部118a、傾斜面部118c及び鈎状片部118dを有している。係合突起118が表皮104の係合孔116に挿入されている。
【0009】
アームレストパッド112を車両用ドアの内装ボードに取付けると、引張り係合片115によって係合突起118が押し広げられ、そして係合突起118の鈎状片部118dがドア側の係止片部114に引っ掛かる。係合突起118に設けられた基部118b、薄肉部118a、傾斜面部118c及び鈎状片部118dの各部分は、表皮104が被着部材である芯材111から外れることを防止する。
【0010】
特許文献3に開示された表皮固定構造は構造が複雑であり、コストが高くなり、大きな設置空間を必要とする等といった問題がある。
【0011】
(特許文献4)
次に、表皮固定構造として、従来、特許文献4に開示されたものがある。この表皮固定構造においては、本願の
図12に示すように、被着体であるバックボード119に表皮104が固定されている。バックボード119は車両用シートを構成するシートバックの背面に取付けられる車両用品である。バックボード119の表面にはカーペット125が装着されている。
【0012】
表皮104の端末部には、固定具120が縫い付けNによって取付けられている。バックボード119には溝部121が設けられている。バックボード119は溝部121の内部へ突出する突起である係止爪122を有している。また、バックボード119の周辺部に回転防止壁123が設けられている。
【0013】
表皮104をバックボード119に装着する際には、表皮104の端末に取付けた固定具120の先端部をバックボード119の溝部121に差し込む。差し込まれた固定具120の先端の係止部124が係止爪122の底面に引っ掛かって止められる。また、固定具120の頭部の左側の先端が回転防止壁123に当接することにより、固定具120の回転が防止される。
【0014】
特許文献4に開示された従来の表皮固定構造においては、表皮104の端末部に取付けた固定具120が、被着体であるバックボード119の溝部121の内部において係止爪122及び回転防止壁123と係合することにより、表皮104がバックボード119から外れることが防止される。
【0015】
この従来の表皮固定構造においては、表皮104の端末部に取付けられる固定具120に複雑な形状を付けなければならず、固定具120を固定するために被着体であるバックボード119の溝部121の内部にも複雑な形状を設けなければならず、部品コストが非常に高くなる、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−300161号公報
【特許文献2】特開2009−214702号公報
【特許文献3】特開平11−034713号公報
【特許文献4】特開2013−102855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、構造が簡単であり、表皮を固定するための作業を簡単に行うことができ、コストが安くて済む表皮固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る表皮固定構造は、表皮を被着体に固定して成る表皮固定構造において、前記表皮の端末に接合した硬質部材と、前記表皮の端末において前記硬質部材よりも前記表皮の引張り方向の後方側に設けられた貫通孔と、前記被着体に設けた突出部と、前記被着体に設けられており前記突出部よりも前記表皮の引張り方向の先方側に在る表皮外れ防止部材とを有しており、前記表皮が引っ張られた状態で前記貫通孔が前記突出部にはめ込まれており、前記硬質部材は、前記表皮外れ防止部材と前記被着体との間に配置されることにより、前記被着体から外れることを前記表皮外れ防止部材によって防がれており、前記突出部と前記表皮外れ防止部材は、前記表皮の縁端に沿った方向において互いに間隔をおいて別々の位置に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の表皮固定構造においては、簡単な構造の突出部及び表皮外れ防止部材によって表皮の外れを有効に防止できるので、表皮固定構造の全体を簡単に形成できる。
また、突出部と表皮外れ防止部材が表皮の縁端に沿った方向において互いに間隔をおいて別々の位置に設けられているので、表皮を突出部にはめ込む作業及び表皮を表皮外れ防止部材に差し込む作業を、それぞれ、簡単に行うことができる。
また、別々の位置に設けられた突出部と表皮外れ防止部材とがそれぞれに表皮を支持するので、多数の位置で表皮の端末部を比較的小さくて均等な力によって無理なく支持することができ、従って表皮を長期間にわたって損傷させること無く安定して保持できる。
また、突出部及び表皮外れ防止部材はどちらも単純な構造とすることができるので、部品コストを安く抑えることができる。
【0020】
本発明に係る表皮固定構造において、前記硬質部材は板形状とすることができ、当該硬質部材は前記突出部が設けられている前記被着体の面に対して縦方向に立った状態で前記表皮外れ防止部材と前記被着体との間に配置されることができる。
硬質部材を縦方向に配置すれば、硬質部材が接合された表皮の端末部分の設置スペースを小さくすることができる。この結果、表皮固定構造の幅方向の大きさを小さくできる。
【0021】
本発明に係る表皮固定構造において、前記表皮外れ防止部材が設けられた前記被着体の面(例えば、表皮外れ防止部材支持部15b)は、前記突出部が設けられた前記被着体の面(例えばベースの周辺部15a)に対して交わる縦方向に延在させることが望ましい。「交わる縦方向」とは、90°の直角方向や角度45°〜90°の交差方向である。
この発明態様によれば、硬質部材が接合された表皮の端末部分を縦方向に立てた状態で被着体の所定位置に配置できる。
【0022】
本発明に係る表皮固定構造において、前記表皮外れ防止部材が設けられた前記被着体の面は、前記突出部の延在方向と同じ方向に延在していることが望ましい。こうすれば、作業者は表皮の端末部分の組付け状態を目視によって確認しながら作業を行うことができる。また、作業の完了後に組付け状態の良否を目視によって簡単に確認することができる。
【0023】
本発明に係る表皮固定構造において、前記突出部の先端部は先端に向かって窄まる形状を有することができる。こうすれば、表皮の端末部の孔を突出部へはめ込む作業が楽になる。
【0024】
本発明に係る表皮固定構造において、前記表皮外れ防止部材は、前記硬質部材が接合された前記表皮の端末部の縁端を回り込んで当該表皮の端末部の表面に張り出している構成とすることができる。こうすれば、表皮の外れを有効に防止できる。
【0025】
次に、本発明に係るアームレストは、表皮と、当該表皮が固定される被着体と、前記表皮を前記被着体に固定する表皮固定構造と、前記被着体に取付けられる加飾部品とを有するアームレストにおいて、前記表皮固定構造は以上に記載した構成の表皮固定構造であることを特徴とする。このアームレストは、本発明に係る表皮固定構造が有する効果をそのまま有することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の表皮固定構造においては、簡単な構造の突出部及び表皮外れ防止部材によって表皮の外れを有効に防止できるので、表皮固定構造の全体を簡単に形成できる。
また、突出部と表皮外れ防止部材が表皮の縁端に沿った方向において互いに間隔をおいて別々の位置に設けられているので、表皮を突出部にはめ込む作業及び表皮を表皮外れ防止部材に差し込む作業を、それぞれ、簡単に行うことができる。
また、別々の位置に設けられた突出部と表皮外れ防止部材とがそれぞれに表皮を支持するので、多数の位置で表皮の端末部を比較的小さくて均等な力によって無理なく支持することができ、従って表皮を長期間にわたって損傷させること無く安定して保持できる。
また、突出部及び表皮外れ防止部材はどちらも単純な構造とすることができるので、部品コストを安く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る表皮固定構造及びアームレストのそれぞれの一実施形態を用いた車両用シートを示す図である。
【
図2】本発明に係るアームレストの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図2のアームレストの構成要素であるアームレスト本体の分解斜視図である。
【
図4】
図3のアームレストの一部を組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図2のアームレストの構成要素であるリッドの分解斜視図である。
【
図6】
図4の矢印Gで示す部分を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図6のH−H線に従って本発明に係る表皮固定構造の一実施形態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る表皮固定構造の他の実施形態を示す断面図である。
【
図9】本発明に係る表皮固定構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図10】従来の表皮固定構造の例を示す断面図である。
【
図11】従来の表皮固定構造の他の例を示す断面図である。
【
図12】従来の表皮固定構造のさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る表皮固定構造を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0029】
図1は、本発明に係る表皮固定構造を備えたアームレストが取付けられた車両用シートを示している。車両用シート1は、着座者の臀部を受けるシートクッション2と、着座者の背部を受けるシートバック3と、着座者の腕の肘を受けるアームレスト4とを有している。着座者は車両用シート1の左右いずれかの部分に座った状態で、アームレスト4のリッド(すなわち蓋)8の上に腕を置くことができる。
【0030】
アームレスト4は収納ボックスとしても機能する。アームレスト4のリッド8は、
図2に示すリッドの開閉構造9によってアームレストの本体10に回転移動可能、すなわち開閉移動可能に取付けられている。リッドの開閉構造9は従来から公知の任意の開閉機構を用いて形成することができる。
図1はリッド8が本体10を閉じた状態であり、
図2はリッド8が本体10から開かれた状態である。本体10は収納用凹部11を有しており、着座者はこの収納用凹部11の内部に物を収容できる。
【0031】
図1において、シートバック3の横方向のほぼ中央部に凹部7が設けられている。アームレスト4は、矢印Aのように回動して持ち上げられることにより、凹部7の内部に収納することができる。この収納状態において、シートクッション2の上表面が広く開放される。
【0032】
(アームレスト本体)
図3は、
図2のアームレスト4の本体10の分解斜視図である。アームレスト本体10は、加飾部品である樹脂製の本体化粧板14と、被着体としての樹脂製のベース15と、金属製(例えば、鋼材製)のフレーム16と、弾性部材(例えばウレタンの発泡材)によって形成されたパッド17と、表皮18とを有している。表皮18は、通気性を有する材料、例えばファブリック、皮、合成皮革等によって形成されている。
【0033】
アームレスト本体10を作成する際には、まず、フレーム16の上面にベース15を取付ける。次に、フレーム16の下面にパッド17を装着する。次に、パッド17の下面から表皮18を覆い被せ、表皮18の環状の上端をベース15の上面に固着する。以上により、
図4に示すように、本体化粧板14を装着する前のアームレスト本体10a(以下の説明で「加飾前のアームレスト本体10a」ということがある)が作成される。
【0034】
次に、本体化粧板14をベース15の表面に固着することにより、
図2のアームレスト本体10が作成される。
図2における収納用凹部11は
図3のベース15に形成された凹部11である。符号19は、飲料用のカップを挿入して保持するためのカップホルダである。
【0035】
(リッド)
図5は、
図2のアームレスト4のリッド8の分解斜視図である。リッド8は、加飾部品である樹脂製のリッド化粧板22と、樹脂製のベース23と、弾性部材(例えばウレタンの発泡材)によって形成されたパッド24と、表皮25とを有している。表皮25は、通気性を有する材料、例えばファブリック、皮、合成皮革等によって形成されている。
【0036】
リッド8を作成する際には、まず、ベース23の下面にパッド24を装着する。次に、パッド24の下面から表皮25を覆い被せ、表皮25の上端をベース23の上面に固着する。この固着方法は任意の方法で良い。
【0037】
次に、ベース23の上面にリッド化粧板22を固着する。この固着方法は任意の方法で良いが、例えばベース23又はリッド化粧板22の一方に複数のオス型の係合片を設け、オス型に対応する数のメス型の係合片をベース23又はリッド化粧板22の他方に設け、それらの係合片を互いに係合させることにより、リッド化粧板22をベース23に固着できる。こうして、表皮25の上端の端末部がベース23の上面に組付けられた部分がリッド化粧板22によって隠されて、
図2に示すリッド8が組み立てられる。
【0038】
(リッドの開閉構造)
図2のリッドの開閉構造9は任意の開閉機構によって形成することができる。例えば本実施形態では、リッドの開閉構造9は、
図5のリッド8のリッド化粧板22の先端に設けられた一対の突起部材としての左右のピン28a,28bを有している。ピン28a,28bはリッド化粧板22の先端部に固定されたピン軸29の左右両端から外側へ突出している。
【0039】
図2のリッドの開閉構造9は、さらに、
図3のアームレスト本体10のベース15の先端に設けられた一対の穴部材30a,30bを有している。これらの穴部材30a,30bは、それぞれ、穴31a,31bを有している。リッド8側のピン28a,28bをアームレスト本体10側の穴部材30a,30bの穴31a,31bへ挿入することにより、リッド8を本体10に開閉移動可能に取付けることができる。もちろん、その他の任意の手法を採用することも可能である。
【0040】
(表皮固定構造)
次に、
図3のアームレスト本体10の表皮18を被着体であるベース15に固定するための表皮固定構造について説明する。
図3において、表皮18の環状の上端が表皮18の端末となっている。この表皮18の端末に硬質部材としての樹脂プレート41が縫い付けNによって接合されている。樹脂プレート41は、
図2のリッドの開閉構造9に対応した部分を除いて、表皮18の端末の縁端に沿った方向E−Eの全域に設けられている。なお、必要に応じて縫い付け以外の他の任意の手法、例えば接着によって樹脂プレート41を表皮18の端末に接合しても良い。樹脂プレート41は適宜の合成樹脂によって形成されている。
【0041】
表皮18の上面部を構成している端末部には複数の貫通孔42が設けられている。これらの貫通孔42は、表皮18の端末の縁端に沿った方向E−Eに沿って適宜の間隔で並んでいる。
図3において、表皮18はその端末部が矢印Fで示す方向、すなわち内部へ向かう方向へ引っ張られながらベース15の上面の環状の周辺部分に取付けられる。そして、貫通孔42は、樹脂プレート41よりも表皮の引張り方向Fの後方側に設けられている。すなわち、貫通孔42は樹脂プレート41よりも外側に設けられている。
【0042】
被着体であるベース15は、上方から見て平面的にほぼ長方形状に形成されている。ベース15の周囲領域には、突出部としての複数の突起43と、複数の表皮外れ防止部材44とが設けられている。
図4に示すように、複数の突起43は表皮18の縁端に沿った方向E−Eに沿って適宜の間隔で並んでいる。また、複数の表皮外れ防止部材44も表皮18の縁端に沿った方向E−Eに沿って適宜の間隔で並んでいる。
【0043】
図6は、
図4の矢印Gで示す領域を拡大して示している。図示の通り、側面を構成している表皮18の上面を形成している表皮18の環状の端末部分に設けた複数の貫通孔42は、それぞれ、被着体であるベース15の周囲に設けた複数の突起43にはめ込まれている。貫通孔42を突起43にはめ込む作業は、表皮18の端末部を矢印Fで示すように内側方向へ引っ張り込みながら行われる。複数の突起43と複数の表皮外れ防止部材44は互いに隣接して設けられているのではなく、それらは表皮18の縁端に沿った方向E−Eに沿って適宜の間隔をおいて別々の位置に設けられている。
【0044】
図7は、
図6のH−H線に従って表皮固定構造45の断面構造を示している。図示の通り、被着体であるベース15の周辺部15aに設けられた突起43が表皮18の上面の端末部に設けた貫通孔42にはめ込まれている。そしてさらに、樹脂プレート41が接合された表皮18の端末部が縦方向に立った状態で表皮外れ防止部材44とベース15の周辺部15aとの間に差し込まれている。
【0045】
表皮外れ防止部材44は支柱部44aと鈎状の張出し部44bとを有している。支柱部44aは、ベース15の一部分である表皮外れ防止部材支持部15bに設けられている。表皮外れ防止部材支持部15bは、突起43を支持しているベース15の周辺部15aと交差する方向、すなわち縦方向、本実施形態では周辺部15aに対して角度90°又は90°に近い角度の方向、に延在している。従って、表皮外れ防止部材支持部15bによって受けられている樹脂プレート41は縦方向に立った状態となっている。表皮外れ防止部材44は図示の通り、樹脂プレート41が接合された表皮18の端末部の縁端を回りこんで、張出し部44bが表皮端末部の表面に張り出している。
【0046】
表皮外れ防止部材44は、突起43よりも表皮18の引張り方向Fの先方側(
図7の右側)に位置している。このため、
図6において、矢印F方向へ引っ張った表皮18の端末部の貫通孔42を突起43にはめ込んだ後に、樹脂プレート41を接合した表皮18の端末部を表皮外れ防止部材44の内部へ容易に差し込むことができる。突起43と表皮外れ防止部材44は表皮18の縁端に沿った方向(E−E方向)に関して同じ位置に設けられているのではなく、E−E方向に関して適宜の間隔でずらせて別々の位置に設けられているので、表皮18の貫通孔42を突起43にはめ込む作業及び樹脂プレート41が接合されている表皮18の端末部を表皮外れ防止部材44の内部へ差し込む作業は、それぞれ、容易に行うことができる。
【0047】
また、別々の位置に設けられた突起43と表皮外れ防止部材44とがそれぞれ独自に個々の位置において表皮18の端末を支持するので、表皮18がベース15から外れることが確実に防止される。また、表皮18はその縁端に沿ったE−E方向の全域において無理なく均等な力で支持される。この結果、表皮18は長期間にわたって損傷することなく安定して表皮固定構造45によって固定される。
【0048】
また、
図6及び
図7において、樹脂プレート41が接合された部分の表皮18の端末部は立った状態で固定されている。これに対し、樹脂プレート41が接合された部分の表皮18は、例えば
図8に示すように横方向へ寝かせて固定することもできる。しかしながら、表皮18の端末部を横方向に寝かせた場合には、表皮固定構造45の幅方向の大きさが大きくなるおそれがある。これに対し、本実施形態のように樹脂プレート41が接合された部分の表皮18の端末部を立った状態で固定すれば、表皮固定構造45の幅方向の大きさを著しく小さくすることができる。このため、
図1のアームレスト4を小型に形成することができたり、あるいはアームレスト4の内部空間を有効に活用できたりする。
【0049】
図7において、表皮外れ防止部材44が設けられているベース15の表皮外れ防止部材支持部15bは、突起43の延在方向と同じ方向(図の上方向)に延在している。これに対し、表皮外れ防止部材支持部15bを
図9に示すように突起43の延在方向と逆方向(下方向)に延在させると、ベース15には凹部51が形成されることになり、樹脂プレート41を接合した表皮18の端末部はその凹部51の中に収容されることになる。この場合には、表皮の組付け部分を目視によって確認することができないので不便である。これに対し、
図7のように表皮外れ防止部材支持部15bを突起43と同じ方向へ延在させれば、表皮の組付け部分を目視によって確認できるので、非常に便利である。
【0050】
本実施形態において突起43の先端部には先端に向かって窄まる形状Jが形成されている。これにより、表皮18の貫通孔42を突起43にはめ込む作業及び表皮18の端末部を表皮外れ防止部材44の内部へ差し込む作業が行い易くなる。
【0051】
また、窄まり形状Jは単なる正円錐形状ではなく、その頂点が長さδだけベース15の外側へ向けてずらせてある。このため、突起43の先端の外側の傾斜領域が小さく、内側の傾斜領域が大きくなっている。これにより、表皮18の貫通孔42を突起43にはめ込む作業及び表皮18の端末部を表皮外れ防止部材44の内部へ差し込む作業が、さらに一層行い易くなっている。
【0052】
また、本実施形態によれば、
図3において、付加的な他部品である本体化粧板14をベース15に装着しなくても、表皮18をベース15に適正に固定できる。このため、アームレスト本体10の組立て作業が非常に楽になった。
【0053】
(他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0054】
例えば、上記実施形態では
図7に示したように、硬質部材である樹脂プレート41が接合された表皮18の端末部分を縦方向に立てた状態で表皮18の端末を固定した。しかしながらこれに代えて、
図8に示すように、表皮外れ防止部材44を支持する表皮外れ防止部材支持部15bを、突起43を支持するベース15の周辺部15aと平行にすることにより、表皮18の端末部を横に寝かせた状態で表皮外れ防止部材44によって固定することも可能である。なお、
図8おいて、突起43と表皮外れ防止部材44は、表皮18の縁端に沿った方向(
図4のE−E方向すなわち
図8の紙面を貫通する方向)に関して互いに別々の位置に設けられている。
【0055】
また、上記実施形態では
図7に示したように、表皮外れ防止部材支持部15bを突起43と同じ方向(上方向)へ延在させた。しかしながらこれに代えて、
図9に示すように表皮外れ防止部材支持部15bを突起43と反対方向(下方向)へ延在させることも可能である。なお、
図9において、突起43と表皮外れ防止部材44は、表皮18の縁端に沿った方向(
図4のE−E方向すなわち
図9の紙面を貫通する方向)に関して互いに別々の位置に設けられている。
【0056】
以上の説明では、
図1の車両用シート1に設けられるアームレスト4に本発明に係る表皮固定構造45(
図7)を適用した。しかしながら、本発明に係る表皮固定構造はアームレスト以外の車両用品にも適用できる。このような車両用品としては、例えば、外部を表皮で覆って成る収納ボックスや、表皮に重ねて又は隣接してガーニッシュ(加飾部品)を装着して成る加飾部分品や、車両用シートのシートバックの背面に設けられるバックボードを取付けるためのバックボード周辺構造、等が考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1.車両用シート、 2.シートクッション、 3.シートバック、 4.アームレスト、 7.凹部、 8.リッド、 9.リッドの開閉構造、 10.アームレスト本体、 10a.加飾前のアームレスト本体、 11.収納用凹部、 14.本体化粧板(加飾部品)、 15.ベース(被着体)、 15a.ベースの周辺部、 15b.表皮外れ防止部材支持部、 16.フレーム、 17.パッド、 18.表皮、 19.カップホルダ、 22.リッド化粧板(加飾部品)、 23.ベース、 24.パッド、 25.表皮、 28a,28b.ピン、 29.ピン軸、 30a,30b.穴部材、 31a,31b.穴、 41.樹脂プレート(硬質部材)、 42.貫通孔、 43.突起、 44.表皮外れ防止部材、 44a.支柱部、 44b.張出し部、 45.表皮固定構造、 51.凹部 A.アームレストの収納方向、 E−E.表皮の縁端に沿った方向、 F.表皮の引張り方向、 J.窄まる形状、 N.縫い付け、 δ.突起頂点のズレ