【0008】
はじめに、本発明の半導体装置について詳細に説明する。
本発明の半導体装置は、金メッキされたリードまたは基板と半導体素子をシリコーン硬化物で封止した半導体装置である。この半導体素子としては、発光ダイオード(LED)素子、半導体レーザ素子、フォトダイオード素子、フォトトランジスタ素子、固体撮像素子、フォトカプラー用の発光素子または受光素子が例示され、特に、発光ダイオード(LED)素子であることが好ましい。
本発明の半導体装置を
図1により詳細に説明する。
図1は半導体装置の一例である光半導体装置(LED)の断面図である。この光半導体装置(LED)では、ポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体1内のダイパッド3上に発光ダイオード(LED)素子5が接着材4によりダイボンディングされ、発光ダイオード(LED)素子5と金メッキされたリード2とが金製ボンディングワイヤ6によりワイヤボンディングされ、発光ダイオード(LED)素子5と金メッキされたリード2と金製ボンディングワイヤ6とが、シリコーン硬化物からなる封止材7により封止されている。
本発明の半導体装置では、金メッキされたリードまたは基板と半導体素子を封止したシリコーン硬化物が、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量}、(C)硫黄原子を結合し、ケイ素原子結合加水分解性基を有する有機ケイ素化合物(本組成物に対して0.0001〜2質量%)、および(D)ヒドロシリル化反応用白金系触媒(本組成物に対して、白金原子が0.01〜500質量ppmとなる量)から少なくともなるヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とする。
(A)成分は上記組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2〜12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7〜20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
(A)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が挙げられる。(A)成分は、これらの分子構造を有する単独のオルガノポリシロキサン、あるいはこれらの分子構造を有する二種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
このような(A)成分は、ケイ素原子結合全有機基に対して、アルケニル基が0.01〜50モル%、0.05〜40モル%、あるいは、0.09〜32モル%であることが好ましい。これは、(A)成分中のアルケニル基が少なすぎると硬化物が得られないおそれがあり、また、(A)成分中のアルケニル基が多すぎると得られる硬化物の機械的特性が悪くなるおそれがあるからである。また、(A)成分中のアルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖両末端にあることが好ましい。なお、(A)成分中のアルケニル基のモル%は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析によって求めることができる。
(A)成分は、25℃で液状又は固体状のオルガノポリシロキサンである。(A)成分が25℃で液状である場合、その25℃での粘度は、1〜1,000,000mPa・sの範囲内、または10〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いた測定により求めることができる。
(B)成分は上記組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7〜20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
(B)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が挙げられ、好ましくは、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、および三次元網状構造が挙げられる。
(B)成分は、25℃で固体状又は液状である。(B)成分が25℃で液状である場合は、その25℃での粘度は、10,000mPa・s以下、0.1〜5,000mPa・sの範囲内、あるいは、0.5〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いた測定により求めることができる。
(B)成分は、本発明の目的を達成できる限り、特に特定のオルガノポリシロキサンに限定されないが、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジグリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、および(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体等からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量であり、好ましくは、0.5〜5モルとなる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性の低下を抑えることができるからであり、一方、上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからである。なお、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析によって求めることができる。
(C)成分の有機ケイ素化合物は、硫黄原子を結合し、ケイ素原子結合加水分解性基を有するものであり、上記組成物に金メッキされたリードフレームへの良好な接着性を付与する成分である。このような(C)成分としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトアルキルアルコキシシラン;ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のビス(アルコキシシリルアルキル)スルフィドが例示される。
(C)成分の含有量は、上記組成物に対して、0.0001〜2質量%であり、好ましくは、0.001〜1質量%、あるいは、0.01〜0.2質量%となる量である。これは上記範囲の下限以上であると、金メッキされたリードや基板に対する接着性が向上し、一方、上記範囲の上限以下であると、上記組成物の硬化阻害を生じにくいからである。
(D)成分は、上記組成物のヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応用白金系触媒である。このような(D)成分としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とジオレフィンの錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビス(アセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)等の白金−カルボニル錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の塩化白金酸−アルケニルシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の白金−アルケニルシロキサン錯体、および塩化白金酸とアセチレンアルコール類との錯体が例示され、特に、ヒドロシリル化反応の促進効果が高いことから、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。これらのヒドロシリル化反応用白金系触媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
白金−アルケニルシロキサン錯体に用いられるアルケニルシロキサンは、特に限定されないが、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー、およびこれらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー等が挙げられる。特に、生成する白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
また、白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させるため、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体を、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンオリゴマーやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましく、特にアルケニルシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましい。
(D)成分の含有量は、上記組成物に対して、(D)成分中の白金原子が0.01〜500質量ppmとなる量であり、好ましくは、0.01〜100質量ppmの範囲内、あるいは、0.1〜50質量ppmの範囲内となる量である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の着色が抑えられるからである。
上記組成物には、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上させるための任意の成分として、(E)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。このような(E)成分としては、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、およびメチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン、並びにトリアリルイソシアヌレート系化合物が例示される。
(E)成分の含有量は特に限定されないが、上記、(A)成分〜(D)成分の混合時にゲル化を抑制し、または硬化を抑制するのに十分な量であり、さらには長期間保存可能とするために十分な量である。(E)成分の含有量としては、具体的には、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.0001〜5質量部の範囲内、あるいは、0.01〜3質量部の範囲内であることが好ましい。
また、上記組成物には、硬化中に接触している基材への接着性を更に向上させるために、接着促進剤を含有してもよい。この接着促進剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に1個または2個以上有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびメトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、およびハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、および4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、および3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、および8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;イソシアネート基;イソシアヌレート基;並びに水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。
接着促進剤の含有量は限定されないが、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内、あるいは、0.1〜3質量部の範囲内であることが好ましい。
また、上記組成物には、その他任意の成分として、蛍光体を含有することができる。この蛍光体としては、例えば、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体が挙げられる。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色〜黄色発光蛍光体;セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体;および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色〜黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色〜緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するY
2O
2S系赤色発光蛍光体が例示される。これらの蛍光体は、1種もしくは2種以上の混合物を用いてもよい。
この蛍光体の含有量は特に限定されないが、上記組成物中、0.1〜70質量%の範囲内、あるいは、1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
また、上記組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他の任意の成分として、シリカ、ガラス、およびアルミナ等から選択される1種又は2種以上の無機質充填剤;シリコーンゴム粉末;シリコーン樹脂、およびポリメタクリレート樹脂等の樹脂粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、界面活性剤、溶剤等から選択される1種又は2種以上の成分を含有してもよい。
本発明の半導体装置の製造方法は特に限定されず、例えば、
図1で示される光半導体装置(LED)は次のようにして製造することができる。
ポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体1内のダイパッド3上に発光ダイオード(LED)素子5を接着材4によりダイボンディングする。次に、発光ダイオード(LED)素子5と金メッキされたリード2とを金製ボンディングワイヤ6によりワイヤボンディングする。次いで、ポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体1内に上記組成物を注入し、硬化させることにより、発光ダイオード(LED)素子5と金メッキされたリード2と金製ボンディングワイヤ6とをシリコーン硬化物からなる封止材で封止する。この製造方法において、上記組成物を硬化する方法としては、室温放置、あるいは加熱により硬化することができ、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。加熱温度としては、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
このようにして得られる半導体装置において、シリコーン硬化物のJIS K6253に規定されるタイプAデュロメータ硬さは10〜99であることが好ましく、特に、15〜95であることが好ましい。これは、シリコーン硬化物の硬さが上記範囲の下限以上であると、硬化物の強度が大きくなり、外部からの応力に対して半導体素子を十分に保護することができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物が柔軟となり、熱衝撃に対して半導体素子を十分に保護することができるからである。
次に、本発明の半導体素子封止用硬化性シリコーン組成物を詳細に説明する。
本発明の半導体素子封止用硬化性シリコーン組成物は、半導体装置中の金メッキされたリードまたは基板と半導体素子を封止するためのヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物であって、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量}、(C)硫黄原子を結合し、ケイ素原子結合加水分解性基を有する有機ケイ素化合物(本組成物に対して0.0001〜2質量%)、および(D)ヒドロシリル化反応用白金系触媒(本組成物に対して、白金原子が0.01〜500質量ppmとなる量)から少なくともなることを特徴とする。
上記(A)成分〜(D)成分については、前述のとおりである。また、本組成物には、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上させるための(E)ヒドロシリル化反応抑制剤の他;接着促進剤;蛍光体;シリカ、ガラス、およびアルミナ等から選択される1種又は2種以上の無機質充填剤;シリコーンゴム粉末;シリコーン樹脂、およびポリメタクリレート樹脂等の樹脂粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、界面活性剤、溶剤等から選択される1種又は2種以上の成分を含有してもよい。これらの成分およびその含有量については前述のとおりである。
このような本発明の硬化性シリコーン組成物は、上記(A)成分〜(D)成分、さらには、上記の任意成分からなるものであり、一液型、あるいは任意の成分に分けられた二液型とすることができる。
【実施例】
【0009】
本発明の半導体装置および半導体素子封止用硬化性シリコーン組成物を実施例および比較例を用いて詳細に説明する。なお、化学式中、Me、Vi、およびPhは、それぞれ、メチル基、ビニル基、およびフェニル基を示す。
[実施例1〜5、比較例1〜7]
次の成分を表1に示す組成(質量部)で均一に混合して実施例1〜5及び比較例1〜7の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、表1中、SiH/Viは、硬化性シリコーン組成物において、(A)成分中のビニル基の合計1モルに対する、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計モル数を示す。
(A)成分として、次の成分を用いた。なお、オルガノポリシロキサンは、公知の製法によって得ることができる。また、粘度は25℃における値であり、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定した。また、ビニル基の含有量は、FT−IR、NMR、GPC等の分析によって測定した。
(a−1)成分:粘度300mPa・sであり、平均式:
Me
2ViSiO(Me
2SiO)
150SiMe
2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.48質量%)
(a−2)成分:粘度10,000mPa・sであり、平均式:
Me
2ViSiO(Me
2SiO)
500SiMe
2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.15質量%)
(a−3)成分:粘度1,000mPa・sであり、平均式:
Me
2ViSiO(MePhSiO)
30SiMe
2Vi
で表されるメチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=1.27質量%)
(a−4)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(Me
2ViSiO
1/2)
0.13(Me
3SiO
1/2)
0.45(SiO
4/2)
0.42(HO
1/2)
0.01
で表される一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン(ビニル基の含有量=3.4質量%)
(a−5)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(Me
2ViSiO
1/2)
0.15(Me
3SiO
1/2)
0.38(SiO
4/2)
0.47(HO
1/2)
0.01
で表される一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=4.2質量%)
(a−6)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(PhSiO
3/2)
0.75(Me
2ViSiO
1/2)
0.25
で表される一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%)
(B)成分として、次の成分を用いた。なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の製法によって得ることができる。また、粘度は、25℃における値であり、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定した。また、ケイ素原子結合水素原子の含有量と一分子当たりのケイ素原子結合水素原子の個数は、FT−IR、NMR、GPC等の分析によって測定した。
(b−1)成分:平均式:
Me
3SiO(MeHSiO)
15SiMe
3
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.42質量%)
(b−2)成分:平均式:
Me
3SiO(MeHSiO)
55SiMe
3
で表される、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.6質量%)
(b−3)成分:平均式:
HMe
2SiO(Ph
2SiO)SiMe
2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%)
(b−4)成分:平均単位式:
(PhSiO
3/2)
0.4(HMe
2SiO
1/2)
0.6
で表される、粘度25mPa・sの一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%)
(C)成分として、次の成分を用いた。
(c−1)成分:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
(c−2)成分:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
(c−3)成分:1,3,5−トリグリシジルイソシアヌル酸
(c−4)成分:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(c−5)成分:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(c−6)成分:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(c−7)成分:2−メルカプトベンゾチアゾール
(D)成分として、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約5000質量ppm)を用いた。
(E)成分として、1−エチニルシクロヘキサン−1−オールを用いた。
[評価と結果]
実施例1〜5および比較例1〜7で得られた硬化性シリコーン組成物について、「150℃のゲル化時間」、「シリコーン硬化物の硬さ」、「封止材の初期剥離率」、および「封止材の吸湿リフロー後の剥離率」を次のようにして測定し、その結果を表1に示した。
[150℃のゲル化時間]
150℃のゲル化時間(秒)は、Alpha Technologies Rheometer MDR 2000Pを用いて測定した。
[シリコーン硬化物の硬さ]
シリコーン硬化物の硬さは、実施例1〜5及び比較例1〜7で得られた硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間、5MPaの圧力でプレス成形することによりシート状のシリコーン硬化物を作製し、この硬さをJIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定した。
[光半導体装置(LED)の作製]
底部が塞がった円筒状のポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース(内径2.0mm、深さ1.0mm)の内底部の中心部に向かって、金メッキされたリードが側壁から延出しており、金メッキされたリードの中央部上にLEDチップが載置されており、LEDチップと金メッキされたリードは金製ボンディングワイヤにより電気的に接続している前駆体の、ポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース内に、各実施例または各比較例の硬化性シリコーン組成物を脱泡してディスペンサーを用いて注入し、加熱オーブン中、100℃で30分、続いて150℃で1時間加熱して、硬化させることにより、各々20個の
図1に示す光半導体装置(LED)を作製した。
[封止材の初期剥離率]
上記光半導体装置(LED)20個について、金メッキされたリード2と封止材7間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/20個を剥離率とした。
[吸湿リフロー後の剥離率]
上記光半導体装置(LED)20個を、85℃/85%RHの高温高湿条件下で168時間保持した後、280℃のオーブン内に30秒間静置した。その後、室温(25℃)にして、金メッキされたリード2と封止材7間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/20個を剥離率とした。
【表1】
表1の結果から、実施例1〜5の硬化性シリコーン組成物の硬化物で封止されている半導体装置は、高い耐剥離性を有することが示された。