(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355239
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20180702BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20180702BHJP
G08B 21/16 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B21/14
G08B21/16
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-102419(P2014-102419)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-219696(P2015-219696A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 三四郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋隆
【審査官】
平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−130540(JP,A)
【文献】
特開2008−292459(JP,A)
【文献】
特開2004−294363(JP,A)
【文献】
特開2010−262329(JP,A)
【文献】
特開2013−050752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 21/14
G08B 21/16
G01N 27/00
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサが収容されるとともに、前面部に前記ガスセンサへ雰囲気を流入させる第1通気口が形成されているケースと、前記第1通気口と前記ガスセンサとの間に配設されて通気性を有する防滴部材と、を有する警報器において、
前記第1通気口から露出する前記防滴部材を隠す保護部が形成された、前記前面部と前記防滴部材との間に前記前面部と所定の間隔を空けて配設されているカバー部材を有することを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記カバー部材には、前記前面部と前記保護部との間に所定の間隔を開けるスペーサ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
前記ケースには、前記第1通気口が形成されている位置の側面部に前記間隔に通じる第2通気口が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の警報器。
【請求項4】
前記カバー部材には、前記防滴部材の縁部と重ねられて接するように位置付けられる枠部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報器に係り、特に厨房等の油分や水分が付着する環境で使用される警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス漏れや一酸化炭素等を検知して警報を発したり、火災の発生を検知して警報を発したりする警報器が知られている。例えば、浴室や厨房における一酸化炭素を検出するガスセンサを備えた警報器などである。
【0003】
この種の警報器を浴室などの環境で使用される場合には、警報器に液水が掛かるため、ケースなどの筐体内部に収容される機器本体に対する防水対策が重要となる。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の警報器は、ガスセンサ20が収容される筐体(センサ室4d)の内外を通気する通気口44を不織布6により覆い、その不織布6の前面に複数のスリット71が形成された表示プレート7が設けられている。このようにすることで、不織布6によって水滴などの液水が通気口44から直接的に浸入することを抑制することできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−50752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の警報器の場合、不織布は、その前面に設けられた表示プレートのスリットを通して露出しているので、浴室などの湯水であれば影響は少ないものの、厨房等に設置された場合、油分などの汚れが不織布に付着してガス等を含む雰囲気を通すことができなくなり、警報器のガス等の検知性能を低下させてしまう可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、油分などの汚れによるガス等の検知性能に与える影響を少なくすることができる警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、ガスセンサが収容されるとともに、前面部に前記ガスセンサへ雰囲気を流入させる第1通気口が形成されているケースと、前記第1通気口と前記ガスセンサとの間に配設されて通気性を有する防滴部材と、を有する警報器において、前記第1通気口から露出する前記防滴部材を隠す保護部が形成された、前記前面部と前記防滴部材との間に前記前面部と所定の間隔を空けて配設されているカバー部材を有することを特徴とする警報器である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記カバー部材には、前記前面部と前記保護部との間に所定の間隔を開けるスペーサ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記ケースには、前記第1通気口が形成されている位置の側面部に前記間隔に通じる第2通気口が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記カバー部材には、前記防滴部材の縁部と重ねられて接するように位置付けられる枠部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、不織布などで構成された防滴部材がケース前面部に配設された第1通気口から露出する位置をカバー部材の保護部によって隠しているので、第1通気口から油分などが浸入しても防滴部材に直接油分などが付着することを防止できる。また、ケース前面部と保護部との間に所定の間隔を空けることで、ケース前面部に形成された第1通気口から雰囲気が流入でき、カバー部材の保護部によって隠されていない防滴部材を通して雰囲気をガスセンサに通すことができる。したがって、警報器において、油分などの汚れによるガス等の検知性能に与える影響を少なくすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、カバー部材には、前面部と保護部との間に所定の間隔を開けるスペーサ部が形成されているので、カバー部材自身で前面部との間に、雰囲気を通すための間隔を確保することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、ケースの第1通気口が形成されている位置の側面部にケース前面部と保護部との間の所定の間隔に通じる第2通気口が形成されているので、ケース表面以外からも雰囲気が流入できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、カバー部材に枠部を設けて防滴部材の縁部と重ねられて接するように位置付けることで、ケースの側面側から防滴部材が露出し難くなるため、第2通気口から油分などが浸入しても防滴部材に付着しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる警報器の斜視図である。
【
図2】
図1に示された警報器の正面、左側面、下面の三面図である。
【
図4】
図1に示された警報器のプレートを外した状態の正面図である、
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態を
図1乃至
図6を参照して説明する。本発明の一実施形態にかかる警報器1は、
図1乃至
図3に示したように、基板2と、下ケース3と、上ケース4と、を有している。本実施形態にかかる警報器1としては、例えばガス漏れ警報器、火災警報器、複合型警報器等が挙げられ、特に、厨房、台所といった、飛散した油分等が警報器1に掛かるような環境において使用される。
【0018】
基板2(
図3参照)は、プリント配線板であり、例えば、ガスセンサ20、警報ブザー、トランス等の複数種類の電子部品が半田付け等によって実装されている。基板2は、実装された電子部品と電気的に接続されて電気回路を構成する配線パターンを有している。
【0019】
ガスセンサ20は、公知である接触燃焼式ガスセンサ、半導体式ガスセンサ、電気化学式ガスセンサ等が任意に用いられる。ガスセンサ20は後述するセンサ室4d内に流入した雰囲気中に含まれる一酸化酸素やメタンガス、プロパンガス、水素ガス等の被検ガスを検知する。
【0020】
下ケース3は、電子部品が実装された基板2を固定するケースであり、合成樹脂などで形成されている。この下ケース3は、略矩形状の外観を呈する板状体であり、上ケース4と嵌め合わされて当該上ケース4とともに筐体を形成する。
【0021】
上ケース4は、下ケース3に嵌め合わされて当該下ケース3とともに基板2等を含む機器本体を収容する筐体を形成するケースであり、合成樹脂などで形成されている。上ケース4は、下ケース3に嵌め合わされる一方が開口された箱体であり、正面視において略矩形状の外観を呈している。
【0022】
上ケース4は、下ケース3に嵌め合わされた際にガスセンサ20が位置付けられる箇所にセンサ室4dが形成されている。そしてセンサ室4dの後述する表示プレート6が配設される側にガスセンサ20に雰囲気を取り込むための開口4aが形成されている(
図3および
図6参照)。
【0023】
上ケース4は、開口4aが形成されている位置に対応する側面部4bに第2通気口としてのスリット4cが形成されている(
図1、
図2等参照)。このスリット4cから流入した雰囲気は後述するカバー部材11および不織布10を介して、開口4aからセンサ室4d流入する。即ち、このスリット4cは、後述する表示プレート6と保護部11aとの間の所定の間隔に通じている。このスリット4cによって、上ケース4の前面だけでなく、側面からも雰囲気を取り込むことができる。
【0024】
また、上ケース4には、開口4aを覆うように略矩形状の表示プレート6が配設されて上ケース4の前面部の一部を構成する。この表示プレート6は、各種の状態を示す表示意匠(シンボル)等が表示されており、例えばその背後に配置されたLEDの点灯などを通じて、電源のON/OFFや正常状態や異常状態等の表示をする。なお、この表示プレート6には、開口4aと位置的に対応してスリット状の通気口6a(第1通気口)が形成されている。この通気口6aと上述した開口4aによって、筐体内外を貫通する開口部が形成されている。
【0025】
上ケース4の開口4aと表示プレート6の間には、防滴部材としての不織布10と、カバー部材11と、が配設されている。
【0026】
不織布10は、開口4aに油分や液水等が浸入することを抑制する。この不織布10は、開口4aを覆うように配設されている。この不織布10は、開口4aの縁部とカバー部材11との間に挟まれることにより保持されている。あるいは、開口4aの縁部やカバー部材11に接着されていてもよい。また、本実施形態では、防滴部材として不織布10を用いているが、油分や液水等が浸入することを抑制するともに、雰囲気(被検ガス)を通すことができる部材(通気性を有する部材)であれば他の部材であってもよい。
【0027】
カバー部材11は、
図5に示したように、円環状に形成された枠部11bと、枠部11bの径方向に直線状に形成された保護部11aと、が合成樹脂等で一体的に形成されている。
【0028】
保護部11aには、保護部11aと表示プレート6との間に間隔を開けるための突起11cが形成されている。枠部11bには、枠部11bと表示プレート6との間に間隔を開けるための突起11dが保護部11aの略中央に形成されている。スペーサ部としての突起11cおよび突起11dは、その先端部が表示プレート6と接することで、保護部11aおよび枠部11bと表示プレート6との間に所定の間隔を空けている。
【0029】
カバー部材11は、
図3および
図6に示したように、不織布10の前面(表示プレート6側)に配設される(
図6は不織布10の記載を省略している)。このとき、保護部11aは、表示プレート6が上ケース4に配設された際に通気口6aの位置と重なるように配置されている。即ち、表示プレート6の正面から見たときに、不織布10が通気口6aから露出せずに保護部11aで隠れるようになっている。また、カバー部材11の枠部11bは、不織布10の縁部に重ねられて接している。
【0030】
上述した構成の警報器1は、下ケース3に基板2を固定し、上ケース4の開口4aに不織布10をカバー部材11で挟むようにして固定し(
図4)、表示プレート6を接着剤等で上ケース4に固定して配設する。そして、下ケース3と上ケース4とを嵌め合わせて例えばネジ等で固定することで警報器1が組み立てられる。
【0031】
組み立てられた警報器1は、下ケース3側が例えば厨房等の壁面に接するようにして設置される。上ケース4(表示プレート6)側は、警報器1の前面部となって通気口6aやスリット4cから雰囲気が取り込まれる。
【0032】
本実施形態によれば、表示プレート6の通気口6aから不織布10が露出する位置をカバー部材11の保護部11aによって隠しているので、通気口6aから油分などが浸入しても不織布10に直接油分などが付着することを防止できる。また、表示プレート6と保護部11aとの間に所定の間隔を空ける突起11cを形成することで、通気口6aから雰囲気が流入でき、保護部11aによって隠されていない不織布10を通して雰囲気をガスセンサ20に通すことができる。したがって、警報器1において、油分などの汚れによるガス等の検知性能に与える影響を少なくすることができる。
【0033】
また、突起11cが、保護部11aの略中央に形成されているので、表示プレート6の略中央部、即ち、通気口6aの近傍を支えることができる。そのため、通気口6a付近で確実に所定の間隔を開けることができ、通気を確保できる。
【0034】
また、上ケース4の側面部4bの開口4aが形成されている位置に表示プレート6と保護部11aとの間の所定の間隔に通じるスリット4cが形成されているので、警報器1の前面部以外からも雰囲気が流入できる。
【0035】
また、カバー部材11に枠部11bを設けて不織布10の縁部に重ねられて接するように位置付けることで、枠部11bの厚みによって上ケース4の側面部4b側から不織布10が露出し難くなるため、スリット4cから油分などが浸入しても不織布10に付着しにくくできる。
【0036】
また、保護部11aによって不織布10を複数の領域に分断しているので、不織布10を複数の領域に分けることができる。したがって、複数の領域を使い分けることができるので、1つの領域に油分が付着した場合でも、他の領域から雰囲気を流入させることができる。
【0037】
なお、通気口6aはスリット状に限らず他の形状でもよい。但し、通気口6aの開口部分は不織布10(開口4a)の面積よりも小さく形成されている必要がある。また、保護部11aは、通気口6aの開口部分よりも大きく形成されていることが好ましい。
【0038】
また、スリット4cもスリット状に限らず、1乃至複数の孔など他の形状であってもよい。要するに、第2通気口は、側面部4b側から表示プレート6とカバー部材11との間に開けられている間隔に雰囲気を通すことができればよい。
【0039】
また、カバー部材11(枠部11b)は、円環状に限らず、開口4aの形状に合わせて適宜他の形状としてもよい。また、保護部11aの位置も通気口6aの位置に合わせて適宜変更してもよい。
【0040】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の警報器の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 警報器
4 上ケース(ケース)
4c スリット(第2通気口)
6 プレート(前面部)
6a 通気口(第1通気口)
10 不織布(防滴部材)
11a 保護部
11b 枠部
11c 突起(スペーサ部)
11d 突起(スペーサ部)
20 ガスセンサ