特許第6355253号(P6355253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355253
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ワーククランプ治具及びワーク研磨方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20180702BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20180702BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALN20180702BHJP
【FI】
   G11B5/31 M
   B24B41/06 L
   !B23Q3/06 304H
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-193803(P2014-193803)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-66393(P2016-66393A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100074550
【弁理士】
【氏名又は名称】林 實
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓
(72)【発明者】
【氏名】今井 恭介
(72)【発明者】
【氏名】大渕 一
(72)【発明者】
【氏名】森谷 篤
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−268248(JP,A)
【文献】 特開2002−331452(JP,A)
【文献】 特開2004−136441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31−5/325
G11B 5/56−5/60
B23Q 3/00−3/154
B23Q 3/16−3/18
B24B 41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス層と回路層の熱膨張率差によって湾曲したワークを把持するワーククランプ治具であって、
ネジ孔が開口され前記ワークを下端に保持するワーク固定具と、ネジ孔が開口され平面から突出する一対の弾性材を有する一方のクランプ具と、平面の中央から突出する突起部を有する他方のクランプ具と、該一方及び他方のクランプ具とワーク固定具のネジ孔を貫通して一方及び他方のクランプ具を固定するネジとを備え、
前記他方のクランプ具の突起部によりワークのセラミックス層を点支持し、該点支持されたワークの回路層が前記一方のクランプ具の弾性材に押圧するように構成されていることを特徴とするワーククランプ治具。
【請求項2】
前記他方のクランプ具の複数の突起部が、ワークの湾曲に沿ってワークのセラミックス層を複数点支持することを特徴とする請求項1に記載のワーククランプ治具。
【請求項3】
ネジ孔が開口されセラミックス層と回路層の熱膨張率差によって湾曲したワークを下端に保持するワーク固定具と、ネジ孔が開口され平面から突出する一対の弾性材を有する一方のクランプ具と、平面の中央から突出する突起部を有する他方のクランプ具と、該一方及び他方のクランプ具とワーク固定具のネジ孔を貫通して一方及び他方のクランプ具を固定するネジとを備えたワーククランプ治具を用い、該ワーククランプ治具の下端を回転定盤により研磨するワーク研磨方法であって、
前記他方のクランプ具の突起部によりワークのセラミックス層を点支持し、該点支持されたワークの回路層が前記一方のクランプ具の弾性材に押圧し、定盤を回転させながらワーククランプ治具を定盤半径方向に往復移動させることを特徴とするワーク研磨方法。
【請求項4】
前記他方のクランプ具の複数の突起部が、ワークの湾曲に沿ってワークのセラミックス層を複数点支持することを特徴とする請求項3に記載のワーク研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド素子の研磨加工時に生じる残留応力によるねじれ精度の低下を防止することができるワーククランプ治具及びワーク研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気ディスク装置に使用される磁気ヘッド素子は、図4(a)に示す如く、半導体製造技術により円板状のウェハ2に多数のワーク(ロウバーともいう。)3が配置されるように製造され、図4(b)に示す如く、ウェハ2から切断したワーク3をワーク固定具4と強固に固定し、図4(c)に示す如く、ワーク固定具4に取り付けたワーク3を把持するクランプ治具5によって矢印D方向に回転する定盤6に押しつけると共に矢印E方向に往復移動させることによって、磁気ヘッド浮上面を研磨して製造される。
【0003】
なお、従来技術による磁気ヘッド加工装置に関する技術が記載された文献としては、下記の特許文献1が挙げられ、下記の特許文献1には、ワークの浮上面に一定間隔に複数の切り込みを形成することによって、研磨加工時の内部応力を緩和する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−20643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の図4に示した磁気ヘッド素子用のワーク研磨方法は、加工前のワーク3が僅かに湾曲し、ワーク固定具4が前記湾曲を矯正した状態でワーク3の研磨加工を行うため、加工後のワーク3に残留応力が残り、数ナノ程度のねじれ精度が低下するという課題があった。
【0006】
前記の特許文献1に記載された技術は、ワークの浮上面に設けた複数の切り込みによって研磨加工時の内部応力を緩和することができるものの、高精度に複数の切り込み加工が困難であると共に切り込み加工時の内部応力がワークに残留してしまう可能性があるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、残留応力によるねじれ精度の低下を防止することができるワーククランプ治具及びワーク研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、セラミックス層と回路層の熱膨張率差によって湾曲したワークを把持するワーククランプ治具であって、
ネジ孔が開口され前記ワークを下端に保持するワーク固定具と、ネジ孔が開口され平面から突出する弾性材を有する一方のクランプ具と、平面の中央から突出する突起部を有する他方のクランプ具と、該一方及び他方のクランプ具とワーク固定具のネジ孔を貫通して一方及び他方のクランプ具を固定するネジとを備え、
前記他方のクランプ具の突起部によりワークのセラミックス層を点支持し、該点支持されたワークの回路層が前記一方のクランプ具の弾性材に押圧するように構成されていることを特徴とし、
請求項2に記載の発明は、前記他方のクランプ具の複数の突起部が、ワークの湾曲に沿ってワークのセラミックス層を複数点支持することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、ネジ孔が開口されセラミックス層と回路層の熱膨張率差によって湾曲したワークを下端に保持するワーク固定具と、ネジ孔が開口され平面から突出する弾性材を有する一方のクランプ具と、平面の中央から突出する突起部を有する他方のクランプ具と、該一方及び他方のクランプ具とワーク固定具のネジ孔を貫通して一方及び他方のクランプ具を固定するネジとを備えたワーククランプ治具を用い、該ワーククランプ治具の下端を回転定盤により研磨するワーク研磨方法であって、
前記他方のクランプ具の突起部によりワークのセラミックス層を点支持し、該点支持されたワークの回路層が前記一方のクランプ具の弾性材に押圧し、定盤を回転させながらワーククランプ治具を定盤半径方向に往復移動させることを第3の特徴とし、
請求項4に記載の発明は、前記他方のクランプ具の複数の突起部が、ワークの湾曲に沿ってワークのセラミックス層を複数点支持することを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるワーククランプ治具及びワーク研磨方法は、一方のクランプ具が弾性材によりワークの回路層と接し、他方のクランプ具がワークのセラミックス層の湾曲に接するようにワークを支持し、定盤を回転させながら定盤半径方向に往復移動させることによって、ワークの湾曲を矯正することなく研磨を行うため、矯正による残留応力が発生することがなく、ねじれ精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態によるワーククランプ治具の組み立て状態を示す図。
図2】本実施形態によるワーククランプ治具の下面を示す図。
図3】本実施形態によるワーククランプ治具の原理を示す図。
図4】磁気ヘッド素子用のワーク研磨方法を示す図。
図5】ワークの断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるワーククランプ治具及びワーク研磨方法の一実施形態の図面を参照
して詳細に説明する。
本実施形態によるワーククランプ治具5は、図1(a)に示す如く、ネジ孔が開口され、下面に回路素子(回路層)が形成されたワーク3を保持するワーク固定具4と、ネジ孔が開口され平面から突出する弾性材21(図3)を有するクランプ具5Aと、平面の中央から突出する突起部20(図3)を有するクランプ具5Bと、該クランプ具5A及び5Bとワーク固定具4のネジ孔を貫通してクランプ具5A及び5Bを固定するネジ7とから構成され、図1(b)に示す如く、クランプ具5A及び5Bをワーク3の下端が下から露出するように挟み込んだ状態でネジ7を螺旋止めすることによって組み立てられる。この挟み込んだ状態で突起部20によりワーク3を変形させずに保持することを本発明では把持という。
【0013】
前記ワーククランプ治具5は、組み立て状態の下面を示す図2の如く、クランプ具5Bがワーク3の中央部分をクランプ具5Aに向かって押圧する押圧力を印加するように構成される。この押圧力は、クランプ具5A及び5Bとワーク3のみ抽出拡大した図3に示す如く、平らな平面から突出する弾性材21を有するクランプ具5Aと、平らな平面の中央から突出するセラミックス材の突起部20を有するクランプ具5Bとの間にワーク3を挟み込み、両端及び中央位置の3点ABCによって極力負荷をかけない状態でワーク3を固定することによって付加される。なお、前記弾性材21は、ワーク3に接しない状態では平坦形状で有り、ワーク3に押しつけられたとき、ワーク3の形状に沿って弾性変形するものである。
即ち、本実施形態によるワーククランプ治具5は、ワーク3の湾曲を維持した状態においてワーク3の両端位置及び中央位置を3点支持するように構成されている。
【0014】
なお、図示の例ではクランプ具5Aの弾性材21及び5Bの突起部20がワーク3を3点支持する例を説明したが、本発明は3点支持に限られるものではなく、5点以上の奇数の突起部によってワーク3の湾曲を維持した状態で点支持するように構成しても良い。
【0015】
前記ウェハ2は、セラミック層の上に磁気ヘッド素子を含む回路層を半導体形成技術により薄膜成長させて製造するものであり、このためウェハ2を切断したワーク3の湾曲(反り)は、図5に示す断面の如く、前記薄膜を成長させる際、セラミックス層3Bと回路層3Aの熱膨張率差によって生じるものであり、湾曲方向は回路層が延びセラミックス層が縮むことが知られている。
【0016】
このため、本実施形態によるワーククランプ治具5は、複数の点接触を可能とする突起部20と弾性材21を用い、ワーク3の回路層側をクランプ具5Aと接触させ、セラミックス層側をクランプ具5Bの突起部20により接触させて湾曲したワーク3を支持する。
【0017】
本実施形態によるワーク研磨方法は、前述のワーククランプ治具5が、複数の点接触を可能とする突起部20と弾性材21によって、クランプ具5Aがワーク3の回路層と接し、クランプ具5Bがワーク3のセラミックス層の湾曲と接するようにワーク3を3点支持した状態で、定盤を回転させながら定盤半径方向に往復移動させるように動作する。
【0018】
従って、本実施形態により研磨されたワーク3は、ワーク3に内在する湾曲を矯正することなくワーク湾曲を許容した状態で研磨を行うため、湾曲矯正による残留応力が発生することがなく、ねじれ精度の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0019】
2 ウェハ、3 ワーク、3A 回路層、3B セラミック層、
4 ワーク固定具、5 ワーククランプ治具、5A クランプ具、
5B クランプ具、6 定盤、7 ネジ、20 突起部、21 弾性材
図1
図2
図3
図4
図5