(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355266
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ルチル型二酸化チタンナノ粒子およびその秩序化された針状凝集体
(51)【国際特許分類】
C01G 23/053 20060101AFI20180702BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
C01G23/053
B01J35/02 J
B01J35/02 H
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-562402(P2015-562402)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-509988(P2016-509988A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2014001173
(87)【国際公開番号】WO2014140910
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】13/841,666
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515242630
【氏名又は名称】クリスタル インオーガニック ケミカルズ スウィツァランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フ、グオイ
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン、マーク、ビー.
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−173863(JP,A)
【文献】
特表2010−537809(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/022130(WO,A1)
【文献】
特開2011−032146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00 − 23/08
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伸長されたTiO2結晶子の複数の凝集体である複数のルチル型TiO2ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)0.5から1.0モル/リットルのチタン濃度で溶解性チタン化合物の水性の溶液を形成する段階と、
(b)常に撹拌しながら、前記溶液を60℃から80℃の範囲内の温度に同時に加熱する間に、(i)式R−CH(OH)COOHのα−ヒドロキシカルボン酸、(ii)式R−CH(OH)CONH2のα−ヒドロキシカルボキサミド、または(iii)式R−CH(NH2)COOHのα−アミノ酸から選択され、式中Rは、6個またはそれ以上の炭素原子を有するアルカン、アルケン、アルキン、アレーン、またはシクロアルカン基であるモフォロジー制御剤またはその混合物を、酸またはカルボキサミド−対−チタンのモル比0.02から0.2で前記溶液中に導入する段階と、
(d)種−対−TiO2のモル比0.0005から0.0015で、複数のTiO2種を前記撹拌されている溶液に導入し、1から3時間の期間にわたって60℃から80℃の範囲内の温度に前記撹拌されている溶液を維持する段階と、
(e)反応生成物を形成するために、前記撹拌されている溶液の前記温度を100℃から還流温度の値まで上昇させ、2時間から4時間の期間にわたって前記温度を維持する段階と、
(f)段階(e)によって生じた反応混合物を室温または大気温度まで冷却する段階と、
(g)前記反応生成物を分離および乾燥する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
溶解性チタン化合物の水性の溶液を形成する前記段階は、
鉱酸の存在下において実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(f)と前記段階(g)の間に、前記反応混合物を中和する段階を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の伸長されたTiO2結晶子は、
3nmから5nmの厚さおよび20nmから50nmの長さを有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のルチル型TiO2ナノ粒子は複数の凝集体であり、
50nmの範囲内の直径および50nmから100nmの範囲内の高さを有する漏斗状の全体的形状において、
それぞれの凝集体の前記複数の伸長されたTiO2結晶子の一組の端部はクラスタ状に結合され、
前記複数の伸長されたTiO2結晶子の反対側の端部は外側に扇形に広がる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記モフォロジー制御剤は、
マンデル酸(C6H5CH(OH)COOH);4−ヒドロキシマンデル酸(C6H4(OH)CH(OH)COOH);ベンジル酸((C6H5)2C(OH)COOH);2−ヒドロキシ−4−フェニルブタン酸(C6H5CH2CH2CH(OH)COOH);2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸((C6H5)(CH3)C(OH)COOH);2−ヒドロキシオクタン酸(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH(OH)COOH);マンデルアミド(C6H5CH(OH)CONH2);フェニルアラニン(C6H5CH2CH(NH2)COOH);チロシン(C6H4(OH)CH2CH(NH2)COOH);および、これらのアンモニウム(NH4+)塩、ナトリウム(Na+)塩、およびカリウム(K+)塩、並びにこれらの複数の混合物から選択される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶解性チタン化合物は、
オキシ塩化チタン(TiOCl2)、オキシ臭化チタン(TiOBr2)、オキシヨウ化チタン(TiOI2)、オキシ硝酸チタン(TiO(NO3)2)、三塩化チタン(TiCl3)、三臭化チタン(TiBr3)、シュウ酸チタン(Ti2(C2O4)3)、ヘキサフルオロチタン酸カリウム(K2TiF6)、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NH4)2TiF6)、シュウ酸チタンカリウム(K2TiO(C2O4)2)、シュウ酸チタンアンモニウム((NH4)2TiO(C2O4)2)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン([CH3CH(O)COONH4]2Ti(OH)2)、およびこれらの複数の混合物から選択される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記モフォロジー制御剤はマンデル酸(C6H5CH(OH)COOH)であり、
前記溶解性チタン化合物はオキシ塩化チタン(TiOCl2)であり、
前記複数のTiO2種は、アナターゼ相中にTiO2を0.2g含有するスラリーを含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記モフォロジー制御剤はフェニルアラニン(C6H5CH2CH(NH2)COOH)である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
複数の伸長されたTiO2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体であり、
3nmから5nmの範囲内の厚さを有し、
50nmの範囲内の直径および50nmから100nmの範囲内の高さを有するナノサイズの漏斗構造の形状において、
前記複数の伸長されたTiO2結晶子のそれぞれの一端がクラスタ状に結合されて、
前記複数の伸長されたTiO2結晶子のそれぞれの反対側の端部が外側に延伸する、
複数のルチル型TiO2ナノ粒子。
【請求項11】
20nmから50nmの長さを有する、
請求項10に記載の複数のルチル型TiO2ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2013年3月15日に出願された米国特許出願第13/841,666号からの恩恵を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、複数のルチル型二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む新規な化学構造に関し、より具体的には、ナノサイズの複数の花束および/または三角形の漏斗に似た複数の伸長されたTiO
2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体に関する。
【背景技術】
【0003】
二酸化チタン(TiO
2)は、光触媒活性を有し、電子用途、光起電力用途およびフォトニック用途における有用性を有する典型的な固体の化合物として知られている。ルチル型およびアナターゼ型結晶形がTiO
2の主要な複数の結晶形として知られており、これらは、アモルファスTiO
2のものより高い化学的安定性およびより大きな屈折率を示す。高い結晶化度を有する複数のTiO
2粒子が、所望のレベルの光触媒活性を示すことができることもまた認識されてきた。
【0004】
例えば米国特許出願公開第2012/0132515号明細書は、それぞれが露出された結晶面を有する複数のルチル型TiO
2ナノ粒子を記載しており、これにより、複数のナノ粒子を光触媒および酸化触媒として有用なものにしている。複数のTiO
2ナノ粒子は、ポリビニルピロリドンである親水性ポリマーが存在する水性媒体中で、チタン化合物に熱水処理を行うことによって生成される。水性媒体中にて熱水処理された場合、チタン化合物は、(110)面および(111)面を有するルチル型二酸化チタンの棒状結晶を一般的に生じさせる。しかしながら、ポリビニルピロリドンの存在下で水性媒体中にて熱水処理された場合、生じる棒状結晶は、新規な露出された結晶面(001)を示す。親水性ポリマーが立体安定剤またはキャッピング剤として作用し、これによってルチル型二酸化チタンの複数の棒状結晶の凝集を妨げることが注目される。
【0005】
例えば120m
2/gから160m
2/gの範囲内の高い表面積と、改良されたUV遮断能力のための高い屈折率とを有し、例えばバイオマス転換といった触媒反応において、およびリチウムイオン電池および燃料電池のような電子用途において高い性能レベルを示す、新規な複数のタイプの複数のルチル型二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を生成するための改良された複数の方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
記載され請求される発明の概念は、一実施形態において、複数の伸長されたTiO
2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体である複数のルチル型TiO
2ナノ粒子の新規な形態を調製するための方法を含む。複数の伸長されたTiO
2結晶子は、例えば細長い、および/または針のような棒状であり、3nmから5nmの厚さおよび20nmから50nmまで変動することのできる長さを有する。但し、これより長い、およびこれより短い長さもまた存在することもある。しかしながら、複数の伸長されたTiO
2結晶子は、ナノサイズの複数の花束または三角形の漏斗に似た、秩序化された複数の針状凝集体を生じるような態様で、プロセスの間に一緒に集まる。漏斗状の複数のナノ粒子の最大寸法は、およそ100nmである。
【0007】
本方法は以下を含む。
(a)任意に鉱酸の存在下において、0.1から1.5モル/リットルのチタン濃度、好ましくは0.5から1.0モル/リットルの範囲の濃度で、溶解性チタン化合物の水溶液を形成する段階。
(b)常に撹拌しながら、上記溶液を60℃から80℃の範囲内の温度に同時に加熱する間に、式R−CH(OH)COOHのα−ヒドロキシカルボン酸、式R−CH(OH)CONH
2のα−ヒドロキシカルボキサミド、または式R−CH(NH
2)COOHのα−アミノ酸から選択されるモフォロジー制御剤またはその混合物を、酸またはカルボキサミド−対−チタンのモル比0.02から0.2で上記溶液中に導入する段階。式中Rは、6個またはそれ以上の炭素原子を有するアルカン、アルケン、アルキン、アレーン、またはシクロアルカン基である。
(d)上記撹拌されている溶液に、種−対−TiO
2のモル比0.0005から0.0015で複数のTiO
2種を導入し、1から3時間の期間にわたって60℃から80℃の範囲内の温度に上記撹拌されている溶液を維持する段階。
(e)反応生成物を形成するために、上記撹拌されている溶液の温度を100℃から還流温度の値まで上昇させ、2時間から4時間の期間にわたって上記温度を維持する段階。
(f)段階(e)からの反応混合物を室温または大気温度まで冷却する段階。
(g)任意に上記反応混合物を中和する段階。
および(h)上記反応生成物を分離および乾燥する段階である。
【0008】
反応生成物は次に焼成されることができる。焼成は、広い範囲の時間および温度にわたって調整されることができ、細孔構造を拡大することまたは広げることによって、および/または、屈折率を増大させることによって、生じた複数のナノ粒子の特性を高めるために行う。
【0009】
記載される方法に従った有用な複数の溶解性チタン化合物は、これらに限定されるものではないが、オキシ塩化チタン(TiOCl
2)、オキシ臭化チタン(TiOBr
2)、オキシヨウ化チタン(TiOI
2)、オキシ硝酸チタン(TiO(NO
3)
2)、三塩化チタン(TiCl
3)、三臭化チタン(TiBr
3)、シュウ酸チタン(Ti
2(C
2O
4)
3)、ヘキサフルオロチタン酸カリウム(K
2TiF
6)、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NH
4)
2TiF
6)、シュウ酸チタンカリウム(K
2TiO(C
2O
4)
2)、シュウ酸チタンアンモニウム((NH
4)
2TiO(C
2O
4)
2)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン([CH
3CH(O)COONH
4]
2Ti(OH)
2)、およびこれらの複数の混合物を含む。
【0010】
6個またはそれ以上の炭素原子を有するR基を持った上記のような複数のモフォロジー制御剤は、これらに限定されるものではないが、マンデル酸(C
6H
5CH(OH)COOH)、4−ヒドロキシマンデル酸(C
6H
4(OH)CH(OH)COOH)、ベンジル酸((C
6H
5)
2C(OH)COOH)、2−ヒドロキシ−4−フェニルブタン酸(C
6H
5CH
2CH
2CH(OH)COOH)、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸((C
6H
5)(CH
3)C(OH)COOH)、2−ヒドロキシオクタン酸(CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH(OH)COOH)、マンデルアミド(C
6H
5CH(OH)CONH
2)、フェニルアラニン(C
6H
5CH
2CH(NH
2)COOH)、チロシン(C
6H
4(OH)CH
2CH(NH
2)COOH)、および、これらの複数の組み合わせ、並びにこれらの複数の混合物を含む。さらに、上記のように挙げられたα−ヒドロキシカルボン酸(R−CH(OH)COOH)類のアンモニウム(NH
4+)塩、ナトリウム(Na+)塩、およびカリウム(K+)塩もまた、満足な結果を得るべく使用されてよい。
【0011】
記載され請求される発明の概念は、第2の実施形態において、記載される方法によって生成された新規な複数のルチル型TiO
2ナノ粒子を包含する。複数のルチル型TiO
2ナノ粒子、すなわち反応生成物は、伸長された、すなわち棒状の複数のTiO
2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体である。個々の結晶子は3nmから5nmの範囲内の厚さを有し、複数の棒状結晶子のそれぞれの一端がクラスタ状に結合される、すなわち集められる。これによって、ナノサイズの花束または漏斗状の全体的形状になるように、複数の結晶子のそれぞれの反対側の端部が外側に延伸する、または扇形に広がる。複数の漏斗形状の構造は、50nmの範囲内の直径、および50nmから100nmの範囲内の高さを有する。
【0012】
本明細書に記載され請求される本発明の概念に従って得られる新規な複数のルチル型TiO
2ナノ粒子は、これらに限定されるものではないが、UV遮断、触媒反応、光触媒反応を含むさまざまな広い用途において、および、電子用途、光起電力用途およびフォトニック用途において展開されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従った複数の漏斗状ルチル型TiO
2ナノ粒子のSEM(走査電子顕微鏡)画像である。
【0014】
【
図2】本発明に従った複数の伸長されたTiO
2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体をより詳細に示す拡大SEM画像である。
【0015】
【
図3】本発明に従った複数の漏斗状ルチル型TiO
2ナノ粒子のTEM(透過電子顕微鏡)画像である。
【0016】
【
図4】本発明に従った複数の漏斗状ルチル型TiO
2ナノ粒子の拡大TEM画像である。
【0017】
【
図5】例1に従って生成され、
図1に示された複数の漏斗状ルチル型TiO
2ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンである。
【0018】
【
図6】550℃において6時間焼成した後の、
図1に示される成形された複数のルチル型TiO
2ナノ粒子のSEM画像である。
【0019】
【
図7】
図6に示される成形された複数のルチル型TiO
2ナノ粒子の拡大SEM画像である。
【0020】
【
図8】
図6に示される焼成された複数のルチル型TiO
2ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンであり、ルチル相が存在することが確認される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
秩序化された複数の針状凝集体を意味する新規な複数のルチル型TiO
2ナノ粒子は、特定の複数の条件下で、モフォロジー制御剤または複数のモフォロジー制御剤の混合物が存在する水溶液中にて、溶解性TiO
2前駆体化合物またはそのような複数の化合物の混合物を熱的に加水分解することにより調製される。本明細書で使用される"針状"という用語は、細長く針のような複数の結晶が放射状に広がる塊から構成される晶癖のことを指す。また、本明細書で使用される"新規な複数のルチル型TiO
2ナノ粒子"という用語は、針のような複数のTiO
2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体を意味することが意図されている。
【0022】
そのプロセスは湿式化学加水分解法であり、ここでは、(i)式R−CH(OH)COOHであるα−ヒドロキシカルボン酸、(ii)式R−CH(OH)CONH
2であるα−ヒドロキシカルボキサミド、または(iii)式R−CH(NH
2)COOHであるα−アミノ酸から選択されるモフォロジー制御剤を使用して、秩序化された複数の針状凝集体の構造が制御される。式中Rは、6個またはそれ以上の炭素原子を有するアルカン、アルケン、アルキン、アレーン、または、シクロアルカン基である。
【0023】
そのプロセスは、任意に鉱酸の存在下において、0.1から1.5モル/リットル、好ましくは0.5から1.0モル/リットルのチタン濃度で、溶解性チタン化合物の水溶液を形成することによって始まる。水溶液を形成するために、蒸留水または脱イオン水が使用され得る。鉱酸、例えば塩酸(HCl)が、加水分解の速度を制御するために、必要に応じて導入されることができる。
【0024】
モフォロジー制御剤またはその混合物が、酸またはカルボキサミド−対−チタンのモル比0.02から0.4で溶液に導入されるが、最良の結果が観察されたのは、比が0.02から0.2の場合である。常に撹拌しながら、60℃から80℃の範囲内の温度まで、溶液は同時に加熱される。その後、複数のTiO
2種が、種−対−TiO
2のモル比0.0005から0.0015で、撹拌されている溶液に導入される。撹拌されている溶液は、1から3時間の期間にわたり、60℃から80℃の範囲内の温度に維持される。複数のTiO
2種は、アナターゼ相のTiO
2のスラリー(Millennium Inorganic Chemicalsから入手可能)を簡便に含むことができるが、その他の複数のTiO
2核形成剤もまた、満足な結果を持って使用されることができる。
【0025】
撹拌されている溶液の温度は、次に、100℃から還流温度の値まで高められ、2時間から4時間の期間にわたってこのレベルに維持される。この時間に反応生成物が形成される。溶液、すなわち生じた反応混合物は、次に室温または大気温度まで冷却され、任意に、アンモニア溶液または水酸化ナトリウム溶液のような塩基の導入によって、例えばpHが5から8へと中和され得る。次に反応生成物はろ過によって分離され、加水分解の間に生成された複数の塩を除去するために、脱イオン水で洗浄される。生じたろ過ケーキは、オーブン中で乾燥されることができる。あるいは、水によって再スラリー化され、噴霧乾燥されることができる。
【0026】
上述のように、要望に応じて反応生成物は、次に、例えば細孔構造を拡大することまたは広げることによって、および/または、屈折率を増大させることによって、生じた複数のナノ粒子の特性を高めるために、広い範囲の時間および温度にわたって焼成されることができる。
【0027】
最良の結果のためには、溶解性チタン前駆体化合物は、オキシ塩化チタン(TiOCl
2)、オキシ臭化チタン(TiOBr
2)、オキシヨウ化チタン(TiOI
2)、オキシ硝酸チタン(TiO(NO
3)
2)、三塩化チタン(TiCl
3)、三臭化チタン(TiBr
3)、シュウ酸チタン(Ti
2(C
2O
4)
3)、ヘキサフルオロチタン酸カリウム(K
2TiF
6)、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NH
4)
2TiF
6)、シュウ酸チタンカリウム(K
2TiO(C
2O
4)
2)、シュウ酸チタンアンモニウム((NH
4)
2TiO(C
2O
4)
2)、および、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン([CH
3CH(O)COONH
4]
2Ti(OH)
2)から選択される。他の複数の市販の溶解性チタン前駆体化合物がプロセス中で展開されることができ、満足な結果を生じさせる。また、本明細書では具体的に名前を挙げられてはいないが、記載され請求される発明の概念内にそれらは包含される。
【0028】
上述のように、発明の概念を実行するための複数のモフォロジー制御剤またはこれらの複数の混合物は、(i)式R−CH(OH)COOHのα−ヒドロキシカルボン酸類、(ii)式R−CH(OH)CONH
2のα−ヒドロキシカルボキサミド類、および、(iii)式R−CH(NH
2)COOHのα−アミノ酸類を含む。式中Rは、6個またはそれ以上の炭素原子を有するアルカン、アルケン、アルキン、アレーン、または、シクロアルカン基である。そのような複数のモフォロジー制御剤の複数の例は、これらに限定されるものではないが、マンデル酸(C
6H
5CH(OH)COOH);4−ヒドロキシマンデル酸(C
6H
4(OH)CH(OH)COOH);ベンジル酸((C
6H
5)
2C(OH)COOH);2−ヒドロキシ−4−フェニルブタン酸(C
6H
5CH
2CH
2CH(OH)COOH);2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸((C
6H
5)(CH
3)C(OH)COOH);2−ヒドロキシオクタン酸(CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH(OH)COOH);マンデルアミド(C
6H
5CH(OH)CONH
2);フェニルアラニン(C
6H
5CH
2CH(NH
2)COOH);およびチロシン(C
6H
4(OH)CH
2CH(NH
2)COOH)を含む。さらに、そのような酸類およびカルボキサミド類のアンモニウム(NH
4+)塩、ナトリウム(Na+)塩、およびカリウム(K+)塩もまた使用されることができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、モフォロジー制御剤はマンデル酸(C
6H
5CH(OH)COOH)であり、溶解性チタン化合物はオキシ塩化チタン(TiOCl
2)である。
【0030】
本発明のプロセスは、新規な複数のルチル型TiO
2ナノ粒子を生じさせる。すなわち、反応生成物は、伸長された、すなわち棒状の複数のTiO
2結晶子の秩序化された複数の針状凝集体を含む。個々の結晶子は3nmから5nmの範囲内の厚さを有し、複数の棒状結晶子のそれぞれの一端がクラスタ状に結合される、すなわち集められる。これによって、ナノサイズの花束または漏斗状の全体的形状において、複数の結晶子のそれぞれの反対側の端部が外側に延伸する、または扇形に広がる。複数の漏斗形状の構造は、50nmの範囲内の直径、および50nmから100nmの範囲内の高さを有する。粉末形態の複数のルチル型TiO
2ナノ粒子は、所望の高い比表面積および細孔容積を示す。比表面積は120m
2/gから160m
2/gの範囲内、細孔容積は0.3cm
3/gから0.5cm
3/gまたはそれより高い範囲内であることが好ましい。
例
【0031】
本発明は、この後に続く複数の実施例および
図1−
図8を参照して、さらに詳細に説明されるであろう。しかしながら、これら複数の例は、記載され請求される発明の概念の範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意されるべきである。
例1−カルボン酸類を使用した複数の漏斗状ナノ粒子の調製
【0032】
1,255gの脱イオン水、9.5gのマンデル酸(Alfa Aesarより)、97gのHCl溶液(37%、Fisher Scientificより)、および、397gのオキシ塩化チタン溶液(TiO
2中25.2%、Millennium Inorganic Chemicalsより)が、ガラスコンデンサおよびオーバーヘッドスターラーを備えた加熱された反応容器中で一緒に混合された。常に撹拌されている間に、混合物は65℃まで加熱された。アナターゼ相のTiO
2を0.2g含有するTiO
2種スラリー(Millennium Inorganic Chemicalsより)が追加され、65℃で2時間にわたって加水分解反応が維持された。この期間に、オキシ塩化チタン前駆体化合物の加水分解を通じて、複数のTiO
2粒子が形成され、結晶化された。次に反応温度は103℃まで上げられ、その温度が4時間にわたって維持された。加水分解は、この段階で本質的に完了した。
【0033】
生じた反応混合物は、次に室温まで冷却され、別の容器へと移され、そこで、形成された複数の粒子が、数時間にわたって沈降された。本質的に全ての粒子が容器の底に沈降したことが観察された後、母液、すなわち液体反応媒体が除去され、およそ同じ体積の新たな脱イオン水が容器に追加された。次に反応混合物は、複数の粒子を再スラリー化するために撹拌され、次に、アンモニア溶液(〜29%、Fisher Scientific)をゆっくりと添加することによって、スラリーのpHがおよそ7の値まで増加された。次に、反応生成物を含む複数の粒子が、ブフナーフィルタを使用して液体反応混合物から分離され、ろ液の導電性がおよそ500μS/cmへと下がるまで、脱イオン水で洗浄された。湿式ろ過ケーキサンプルは、次に、少量の脱イオン水を用いてろ過ケーキを再スラリー化することにより、スラリーとして保管された。サンプルの粉末形態は、オーブン中にて90℃でスラリーサンプルを一晩乾燥することによって得られた。
図5に示される、粉末サンプルに対するX線回折(XRD)測定は、サンプルが、およそ8nmの結晶子のサイズを持ったルチル型を100%含むことを示す。粉末サンプルに対するBET測定は、粉末が140m
2/gの比表面積および0.34cm
3/gの細孔容積を有することを示す。
【0034】
スラリーサンプルの複数のSEM画像が、拡大率10,000倍で
図1中に示されている。拡大率50,000倍の
図2中においては、複数の漏斗状ナノ粒子がより明確に見られる。
図3に示されるスラリーサンプルのTEM画像は、50nmの範囲内の直径を有する漏斗状の粒子を示している。
図4のTEM画像は、個々のナノサイズのルチル型TiO
2結晶子の一般的な配置を示している。
【0035】
図2に示される複数の漏斗状ナノ粒子が、550℃で6時間焼成された。焼成された複数のナノ粒子の複数のSEM画像が、
図6(拡大率50,000倍)および
図7(拡大率100,000倍)中に見られる。焼成は、時間および温度が調整されることができ、細孔構造を拡大することまたは広げることによって、および/または、屈折率を増大させることによって、生じた複数のナノ粒子の特性を高めるために行う。
例2−アミノ酸類を使用した複数の漏斗状ナノ粒子の調製
【0036】
モフォロジー制御剤として、マンデル酸の代わりに20.7gのフェニルアラニン(Alfa Aesar)が使用されたことを除くと、例1と同じ手順に従った。反応生成物のSEM/TEM画像は、
図1−4に示されるものと同様であった。粉末サンプルに対するXRD測定は、サンプルが、およそ9nmの結晶子のサイズを持ったルチル型を100%含むことを示す。粉末サンプルに対するBET測定は、粉末が124m
2/gの比表面積および0.37cm
3/gの細孔容積を有することを示す。
例3−カルボン酸類を使用した複数の漏斗状ナノ粒子の調製
【0037】
モフォロジー制御剤として、マンデル酸の代わりに14.3gのベンジル酸(Alfa Aesar)が使用されたことを除くと、例1と同じ手順に従った。反応生成物のSEM/TEM画像は、
図1−4に示されるものと同様である。粉末サンプルのXRD測定は、マンデル酸を使用して生成された複数の漏斗状ナノ粒子に対する
図5に示された測定と同様であった。そして、サンプルが、およそ8nmの結晶子のサイズを持ったルチル型を100%含むことを確認する。粉末サンプルに対するBET測定は、粉末が121m
2/gの比表面積および0.53cm
3/gの細孔容積を有することを示す。