特許第6355280号(P6355280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355280
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/01 20060101AFI20180702BHJP
   G01G 23/37 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   G01G23/01 A
   G01G23/37 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-508733(P2016-508733)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2015057881
(87)【国際公開番号】WO2015141669
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2017年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-57720(P2014-57720)
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(72)【発明者】
【氏名】須田 昇嗣
(72)【発明者】
【氏名】岩川 健
(72)【発明者】
【氏名】山川 敦史
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/101854(WO,A1)
【文献】 特開2001−305035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 23/01
G01G 23/36 −23/37
G01D 3/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を計量して計量信号を出力する計量部と、
前記計量部が受ける外乱振動を検出して振動信号を出力する外乱振動検出部と、を備える計量装置であって、
前記外乱振動検出部から出力された前記振動信号に基づく第1の波形と前記計量部から出力された前記計量信号に基づく第2の波形とを表示部に表示させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1の波形の増幅率を調整することが可能に構成されている、計量装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記計量信号に基づく前記第2の波形及び前記計量信号を前記振動信号で補正した第3の波形のうち少なくとも一方、又は、両方を、前記表示部において前記第1の波形と重ねて表示させる、請求項1記載の計量装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記計量信号を前記振動信号で補正した前記第3の波形のみを、前記表示部に表示させることが可能に構成されている、請求項2記載の計量装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第3の波形の振幅の指標を、前記表示部に表示させる、請求項2又は3記載の計量装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2の波形と前記第1の波形及び前記第3の波形の少なくとも一方とのそれぞれの振幅の中心を示す指標を、前記表示部に表示させる、請求項2〜4のいずれか一項記載の計量装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の波形と前記第1の波形及び前記第3の波形の少なくとも一方とのそれぞれの振幅のピークを示す指標を、前記表示部に表示させる、請求項2〜5のいずれか一項記載の計量装置。
【請求項7】
前記振動信号の係数調整に係る前記第1の波形の調整を手動で行う手動調整モードと、前記振動信号の係数調整に係る前記第1の波形の調整を自動で行う自動調整モードと、を選択する選択部を備え、
前記制御部は、前記選択部において前記自動調整モードが選択された場合、前記第1の波形の調整を行い、調整後の前記第1の波形を前記表示部に表示させる、請求項1〜6のいずれか一項記載の計量装置。
【請求項8】
前記制御部は、複数の前記係数の候補と、当該係数に基づく複数の波形とを前記表示部に表示させ、前記係数を指定する入力を受け付ける、請求項7記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の計量装置として、物品を計量して、その質量に対応した計量信号を出力する計量セルと、計量セルが設置された床の振動を検出して、振動信号を出力する床振動検出セルと、計量信号から振動信号を減算して、床振動に起因する計量信号の誤差を補償した振動補正済信号を出力する床振動補償手段と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−19009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような計量装置において、振動信号は、計量信号とは特性が異なるため、係数(ゲイン)が加味されている。この係数は、通常、風袋の質量等の要素から理論的に計算されて自動で振動信号に加味されているが、計量装置の使用環境や設置環境によっては、手動で設定されることがある。従来、係数を手動で設定する場合には、係数を適当に変化させた後にサンプル(物品)を計量する作業を複数回繰り返し、計量精度を確認しながら最適な係数を選択していた。このように、係数の設定は、手間が掛かると共に設定を行う作業者の技量に依存するため、慣れない作業者が行うことは容易ではなかった。
【0005】
本発明は、振動信号の係数調整における利便性を向上させた計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る計量装置は、物品を計量して計量信号を出力する計量部と、計量部が受ける外乱振動を検出して振動信号を出力する外乱振動検出部と、を備える計量装置であって、外乱振動検出部から出力された振動信号に基づく第1の波形と計量部から出力された計量信号に基づく第2の波形とを表示部に表示させる制御部を備え、制御部は、第1の波形の増幅率を調整することが可能に構成されている。
【0007】
この計量装置では、制御部は、外乱振動検出部から出力された振動信号に基づく第1の波形を表示部に表示させる。これにより、振動信号の係数を調整する場合には、作業者は、表示部において第1の波形を確認しながら係数を調整できる。したがって、計量装置では、係数の変化による波形の変化を視覚的に捉えることができるため、振動信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0008】
一実施形態においては、制御部は、計量信号に基づく第2の波形及び計量信号を振動信号で補正した第3の波形のうち少なくとも一方、又は、両方を、表示部において第1の波形と重ねて表示させてもよい。これにより、作業者は、表示部において第1の波形と第2の波形及び/又は第3の波形とを確認しながら係数を調整できる。したがって、計量装置では、係数の変化による波形の変化を視覚的に捉えることができるため、振動信号の係数を調整できる。特に、第3の波形を表示させた場合には、係数を変化させたことによる効果を、第3の波形によって確認できる。係数を変化させたことによる効果は、第3の波形の振幅が第2の波形の振幅に対して小さくなることにより現れる。したがって、第2の波形と第3の波形とを比較することにより、係数を変化させたことによる効果を視覚的に確認できる。また、第1の波形、第2の波形及び第3の波形を重ねて表示させることにより、係数を変化させたことによる効果を、第3の波形と第1の波形及び第2の波形とを比較することにより確認できる。
【0009】
一実施形態においては、制御部は、計量信号を振動信号で補正した第3の波形のみを、前記表示部に表示させることが可能に構成されてもよい。これにより、作業者は、第1の波形及び第2の波形を表示せずに、係数の変化による第3の波形の変化を視覚的に捉えることができ、係数の変化による効果を確認できるため、第3の波形の係数の微調整における利便性を向上させることができる。
【0010】
一実施形態においては、制御部は、第3の波形の振幅の指標を、表示部に表示させてもよい。これにより、作業者は、指標に基づいて、第3の波形の振幅が所定の範囲内に収まるように係数を調整すればよい。したがって、係数の目標値を視覚的に捉えることができるため、係数信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0011】
一実施形態においては、制御部は、第2の波形と第1の波形及び第3の波形の少なくとも一方とのそれぞれの振幅の中心を示す指標を、表示部に表示させてもよい。これにより、作業者は、第2の波形と第1の波形及び/又は第3の波形との振幅の中心を指標に基づいて容易に合わせることができる。第2の波形と第1の波形及び/又は第3の波形との振幅の中心を合わせることにより、係数の変化による増幅率の変化を、第2の波形と比較しながら確認することができる。したがって、係数の変化による増幅率の変化を視覚的に捉えることができるため、係数信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0012】
一実施形態においては、制御部は、第2の波形と第1の波形及び第3の波形の少なくとも一方とのそれぞれの振幅のピークを示す指標を、表示部に表示させてもよい。これにより、第2の波形と第2の波形及び/又は第3の波形との振幅のピークの位置を容易に合わせることができる。したがって、第1の波形と第2の波形及び/又は第3の波形との位相(タイミング)の調整を容易に行うことができ、その結果、係数信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0013】
一実施形態においては、振動信号の係数調整に係る第1の波形の調整を手動で行う手動調整モードと、振動信号の係数調整に係る第1の波形の調整を自動で行う自動調整モードと、を選択する選択部を備え、制御部は、選択部において自動調整モードが選択された場合、第1の波形の調整を行い、調整後の第1の波形を表示部に表示させてもよい。これにより、状況(使用環境、設置環境)に応じて、モード(処理方法)を選択できる。また、自動調整モードにおいては、作業者の調整に係る手間を省くことができるため、作業効率の向上が図られる。
【0014】
一実施形態においては、制御部は、複数の係数の候補と、当該係数に基づく複数の波形とを表示部に表示させ、係数を指定する入力を受け付けてもよい。これにより、作業者は、係数の違いによる効果を波形で確認しつつ、複数の波形を比較して、係数を選択して設定できる。したがって、所望する最適な係数を選択できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、振動信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る計量装置を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示す計量装置の構成を示す図である。
図3図3は、タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
図4図4は、タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
図5図5は、タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
図6図6は、タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る計量装置を模式的に示す図である。図2は、図1に示す計量装置の構成を示す図である。図1及び図2に示される計量装置1は、物品Pの質量を図1中の矢印の方向に搬送しながら計量する装置である。計量装置1は、例えば、生産ラインの最終ラインに配置される。
【0019】
図1及び図2に示されるように、計量装置1は、コンベア3と、計量セル(計量部)5と、AFV(Anti Floor Vibration)セル(外乱振動検出部)7と、記憶部9と、コントローラ(制御部)11と、タッチパネル(表示部)13と、を備えている。
【0020】
コンベア3は、第1コンベア部3aと、第2コンベア部3bと、第3コンベア部3cと、を備えている。第1コンベア部3a、第2コンベア部3b及び第3コンベア部3cは、物品Pの搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。すなわち、第1コンベア部3a及び第3コンベア部3cは、第2コンベア部3bを挟む位置に配置されている。物品Pの計量は、物品Pが第2コンベア部3b上に位置しているときに行われる。第1コンベア部3aは、第2コンベア部3bに物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部3aには、例えば、金属検出機(図示しない)が設けられている。第3コンベア部3cは、第2コンベア部3bから物品Pを搬出するコンベアである。第3コンベア部3cには、例えば、質量が適正範囲から逸脱している物品Pを振り分ける振分機(図示しない)が設けられている。
【0021】
計量セル5は、第2コンベア部3bに位置する物品Pを計量する。計量セル5は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体6を備えており、架台8に内装されている。起歪体6は、第2コンベア部3bを支持する可動剛体部6aと、架台8に固定される固定剛体部6bと、を有している。計量セル5では、起歪体6に貼着された複数のストレインゲージ(図示しない)がホイートストンブリッジ回路に接続されている。計量セル5は、負荷に応じた電気的信号を上記回路から取り出し、これを計量信号として出力する。計量セル5から出力される計量信号は、アナログ信号である。そのため、計量信号は、A/D変換部(図示しない)によりデジタル信号に変換される。また、計量信号は、フィルタ部(図示しない)によりフィルタリング処理が行われて、ノイズが減衰(除去)される。所定の処理が行われた計量信号は、記憶部9に出力される。
【0022】
AFVセル7は、計量セル5を含む計量装置1の外乱振動を検出する。AFVセル7は、計量セル5の固定剛体部6bに設けられており、計量装置1が配置された床Fから計量装置1に伝わる振動やコンベア3の振動等を検出する。AFVセル7は、外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する振動信号を出力する。AFVセル7から出力される振動信号は、アナログ信号である。そのため、振動信号は、A/D変換部によりデジタル信号に変換される。また、振動信号は、フィルタ部によりフィルタリング処理が行われて、ノイズが減衰(除去)される。所定の処理が行われた振動信号は、記憶部9に出力される。
【0023】
記憶部9は、各種信号を記憶する。記憶部9は、計量セル5から出力された計量信号、及び、AFVセル7から出力された振動信号を記憶する。また、記憶部9は、後述する振動信号の係数を記憶する。
【0024】
コントローラ11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含んで構成されている。コントローラ11は、計量セル5から出力されて記憶部9に記憶された計量信号と、AFVセル7から出力されて記憶部9に記憶された振動信号とに基づいて、物品Pの質量を求める。具体的には、コントローラ11は、計量信号から振動信号を減算して、外乱振動に起因する計量信号の誤差を補正、すなわち計量信号から振動成分を除去した計量補正信号を生成する。このとき、計量信号と振動信号とは特性が異なっているため、コントローラ11は、振動信号に所定の係数を加味し、計量信号から振動信号を除去している。係数は、初期状態(計量装置1の出荷状態)では、計量装置1の構成に応じて予め設定されている。
【0025】
コントローラ11は、計量補正信号に基づいて物品Pの質量を求め、物品Pの質量を示す質量情報をタッチパネル13に出力する。コントローラ11は、第3コンベア部3cに振分機が設けられている場合、物品Pの質量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断したときには、その物品Pを振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。
【0026】
タッチパネル13は、第2コンベア部3bの背後に立設された操作部15に設けられている。タッチパネル13は、コントローラ11から出力された表示情報を受け取ると、この表示情報に基づく画像を表示する。タッチパネル13は、作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報をコントローラ11に出力する。
【0027】
本実施形態の計量装置1では、振動信号の係数を作業者が手動で設定できる構成とされている。以下、作業者が係数を設定する際の計量装置1の動作について、図3図6を参照しながら説明する。図3図6は、タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
【0028】
最初に、計量装置1の電源が投入されると、コントローラ11は、タッチパネル13にメニュー画面を表示させる。メニュー画面には、振動信号の係数の設定を開始するための「係数設定ボタン」が表示されている。係数の設定を行う作業者は、係数設定ボタンを押下する。
【0029】
コントローラ11は、タッチパネル13において係数設定ボタンが作業者によって押下されたことを確認すると、実際に計量を行う物品Pをコンベア3に流すことを促すテキスト(例えば、「商品をコンベアに載せてください」等)をタッチパネル13に表示させる。これに応じて、作業者が物品Pを第1コンベア部3aに載置すると、第2コンベア部3bにおいて計量セル5により物品Pの計量が行われる。計量セル5は、物品Pの質量に対応する計量信号を記憶部9に出力し、記憶部9は、その計量信号を記憶する。また、AFVセル7は、振動信号を記憶部9に出力し、記憶部9は、その計量信号を記憶する。
【0030】
続いて、コントローラ11は、図3に示されるように、タッチパネル13に、計量セル5から出力された計量信号に基づく計量波形W1(第2の波形)を表示させる。具体的には、コントローラ11は、記憶部9に記憶されている上記計量信号を取得し、計量信号に応じた計量波形の表示を指示する表示情報をタッチパネル13に出力する。タッチパネル13は、受け取った表示情報に基づいて、計量波形W1を表示する。波形を示すグラフの横軸は時間[msec]であり、縦軸は質量[g]である。
【0031】
タッチパネル13に計量波形W1が表示されると、コントローラ11は、タッチパネル13に、計量波形W1において任意の位置を選択させることを促すテキスト(例えば、「計量波形において設定を行う部分を選択してください」等)を表示させる。これに応じて、作業者は、タッチパネル13に表示された十文字状のカーソルCを、例えば操作部15に設けられたジョグダイアルを操作、若しくは、タッチパネル13において計量波形W1の任意の位置をタッチして、カーソルCを任意の位置に移動させる。作業者は、カーソルCの位置が決定した場合、タッチパネル13に表示されている「拡大」のボタンB1を押下する。
【0032】
コントローラ11は、「拡大」のボタンB1が押下されたことを確認すると、図4に示されるように、カーソルCが示す位置の計量波形W1を例えば10倍に拡大した位相調整画面をタッチパネル13に表示させる。具体的には、コントローラ11は、基準線Lの中心から、例えば、時間が±50[msec]の範囲で且つ質量が±2[g]の範囲の計量波形W1を拡大してタッチパネル13に表示させる。位相調整画面には、拡大された計量波形W1と、AFV波形(第1の波形)W2と、が重ねて表示される。具体的には、コントローラ11は、記憶部9に記憶されている上記振動信号を取得し、振動信号に応じたAFV波形の表示を指示する振動波形情報をタッチパネル13に出力する。タッチパネル13は、受け取った振動波形情報に基づいて、AFV波形W2を計量波形W1に重ねて表示する。
【0033】
また、コントローラ11は、タッチパネル13に、位相基準線(指標)L1及び位相基準線L2を、計量波形W1及びAFV波形W2のそれぞれに重ねて表示させる。位相基準線L1は、計量波形W1の振幅のピークP1を示す指標であり、図4においては、時間Tに位置している。位相基準線L2は、AFV波形W2の振幅のピークP2を示す指標であり、図4においては、時間Tに位置している。作業者は、位相基準線L1及び位相基準線L2に基づいて、計量波形W1とAFV波形W2との位相を調整する。
【0034】
具体的には、作業者は、位相基準線L1と位相基準線L2との時間差(|T−T|=ΔT)が0.1msec以下(ΔT≦0.1msec)となるように、ΔTの値をディスプレイDで確認しながら調整ボタンB2,B3を操作して、AFV波形W2を横軸(時間軸)沿って移動させる。なお、位相基準線L1と位相基準線L2との時間差(|T−T|=ΔT)が最初から0.1msec以下である場合には、調整を行わなくてもよい。作業者は、位相の調整が終了すると、「設定」ボタンB4を押下する。
【0035】
コントローラ11は、「設定」ボタンB4が押下されたことを確認すると、図5に示されるように、振幅中心調整画面をタッチパネル13に表示させる。振幅中心調整画面には、振幅中心線(指標)L3及び振幅中心線L4が、計量波形W1及びAFV波形W2のそれぞれに重ねて表示される。振幅中心線L3は、計量波形W1の振幅の中心を示す指標である。振幅中心線L4は、AFV波形W2の振幅の中心を示す指標である。作業者は、振幅中心線L3及び振幅中心線L4に基づいて、計量波形W1とAFV波形W2との振幅の中心を合わせる調整を行う。具体的には、作業者は、振幅中心線L3と振幅中心線L4との差が0.05g以下となるように、ディスプレイDで値を確認しながら調整ボタンB2,B3を操作して、AFV波形W2を縦軸に沿って移動させる。なお、振幅中心線L3と振幅中心線L4との差が最初から0.05g以下である場合には、調整を行わなくてもよい。作業者は、振幅中心の調整が終了すると、「設定」ボタンB4を押下する。
【0036】
また、作業者は、計量波形W1の振幅のピークトゥピークP−Pと、AFV波形W2の振幅のピークトゥピークP−Pとの差が0.05g以下となるように、AFV波形W2のゲイン(増幅率)を調整する。コントローラ11は、振幅中心の調整後に「設定」ボタンB4が押下されたことを確認すると、ディスプレイDに、計量波形W1の振幅のピークトゥピークP−PとAFV波形W2の振幅のピークトゥピークP−Pとの差の値を表示させる。作業者は、ディスプレイDの値を確認しながら、計量波形W1の振幅のピークトゥピークP−PとAFV波形W2の振幅のピークトゥピークP−Pとの差が0.05g以下となるように、調整ボタンB2,B3を操作する。なお、計量波形W1の振幅のピークトゥピークP−PとAFV波形W2の振幅のピークトゥピークP−Pとの差が最初から0.05g以下である場合には、調整を行わなくてもよい。作業者は、増幅率の調整が終了すると、「設定」ボタンB4を押下する。
【0037】
コントローラ11は、「設定」ボタンB4が押下されたことを確認すると、図6に示されるように、係数設定画面をタッチパネル13に表示させる。係数設定画面には、計量波形W1、AFV波形W2及び補正波形W3(第3の波形)が表示される。補正波形W3は、計量信号から係数が加味された振動信号を減算して得られた計量補正信号に基づく波形である。このときの係数は、予め設定されて記憶部9に記憶されている係数が用いられる。
【0038】
AFV波形W2及び補正波形W3は、タッチパネル13の「AFV波形」ボタンB5、「補正波形」ボタンB6により、表示・非表示を切り替え可能とされている。図6では、「AFV波形」ボタンB5及び「補正波形」ボタンB6が押下された状態であり、AFV波形W2及び補正波形W3の両方が表示されている。補正波形W3は、振動信号の係数の変更に伴い、振幅が変化する。補正波形W3の振幅が小さいことは、計量信号において振動成分が減衰していることを示している。すなわち、補正波形W3の振幅を小さくすることにより、高精度の計量が実現できる。
【0039】
コントローラ11は、タッチパネル13に、振幅上限線L5及び振幅下限線L6を、計量波形W1、AFV波形W2及び補正波形W3に重ねて表示させる。振幅上限線L5は、補正波形W3の振幅の理想的な上限を示す指標である。振幅下限線L6は、補正波形W3の振幅の理想的な下限を示す指標である。すなわち、振幅上限線L5及び振幅下限線L6は、補正波形W3の振幅が収まるべき理想的な範囲を示す指標である。補正波形W3の振幅を振幅上限線L5及び振幅下限線L6内に収めることにより、振動の影響の少ない計量結果が得られる。振幅上限線L5及び振幅下限線L6は、所望する計量精度等に応じて適宜設定されればよい。
【0040】
作業者は、補正波形W3を確認しながら調整ボタンB2,B3を操作し、振幅上限線L5及び振幅下限線L6に基づいて係数を調整する。図6に示されるように、補正波形W3は、係数が変更されると、例えば破線で示す波形から実線で示す補正波形W3に振幅が変化する。ディスプレイDには、係数の値が表示される。作業者は、係数の調整が終了すると、「設定」ボタンB4を押下する。コントローラ11は、「設定」ボタンB4が押下されると、設定された係数を記憶部9に記憶させる。以上により、振動信号の係数が設定される。コントローラ11は、物品Pの計量の際には、記憶部9に記憶された係数を用いる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る計量装置1では、コントローラ11は、振動信号の係数の設定において、計量波形W1、AFV波形W2及び補正波形W3をタッチパネル13に表示させる。これにより、作業者は、タッチパネル13において計量波形W1と補正波形W3とを確認しながら係数を調整できる。係数を変化させたことによる効果は、補正波形W3の振幅が計量波形W1の振幅に対して小さくなることにより現れる。したがって、作業者は、第1の波形と第3の波形とを比較することにより、係数を変化させたことによる効果を視覚的に確認することができる。その結果、計量装置1では、振動信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態のコントローラ11は、補正波形W3の振幅が収まるべき上限及び下限を示す振幅上限線L5及び振幅下限線L6を、補正波形W3に重ねてタッチパネル13に表示させる。これにより、作業者は、振幅上限線L5及び振幅下限線L6の範囲内に補正波形W3の振幅が収まるように係数を調整すればよい。したがって、作業者は、係数の目標値を視覚的に捉えることができる。その結果、計量装置1では、振動信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態のコントローラ11は、計量波形W1とAFV波形W2とのそれぞれの振幅の中心を示す振幅中心線L3,L4を、計量波形W1及びAFV波形W2に重ねてタッチパネル13に表示させる。これにより、作業者は、計量波形W1とAFV波形W2との振幅の中心を振幅中心線L3,L4に基づいて容易に合わせることができる。作業者は、計量波形W1とAFV波形W2との振幅の中心を合わせることにより、係数の変化による増幅率の変化を、計量波形W1と補正波形W3とを比較しながら確認することができる。したがって、作業者は、係数の変化による増幅率の変化を視覚的に捉えることができる。その結果、計量装置1では、振動信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0044】
本実施形態のコントローラ11は、計量波形W1とAFV波形W2とのそれぞれの振幅のピークを示す位相基準線L1,L2を、計量波形W1及びAFV波形W2に重ねてタッチパネル13に表示させる。これにより、作業者は、計量波形W1とAFV波形W2との振幅のピークの位置を容易に合わせることができる。したがって、作業者は、計量波形W1とAFV波形W2との位相(タイミング)の調整を容易に行うことができる。その結果、計量装置1では、振動信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、振動信号の係数の設定において、実際に物品Pを計量したときの計量信号に基づく計量波形W1により係数の設定を行っているが、物品Pを流さないときの計量信号に基づく計量波形により係数の設定を行ってもよい。また、係数の設定前に既に計量が行われて記憶部9に記憶されている物品Pの計量信号を用いてもよい。
【0046】
上記実施形態では、係数の設定において、計量波形W1、AFV波形W2及び補正波形W3を重ねてタッチパネル13に表示させる形態を一例に説明したが、係数の設定においては、振動信号に基づく波形のみを表示してもよい。振動信号に基づく波形とは、所定の係数が加味された振動信号に基づいて計量波形W1が補正された補正波形W3である。計量波形W1を表示しない場合であっても、係数の変化による補正波形W3の変化を視覚的に捉えることができ、係数の変化による効果を確認できるため、係数信号の係数調整における利便性を向上させることができる。
【0047】
上記実施形態では、位相の調整、振幅の中心の調整、及び増幅率の調整を計量波形W1とAFV波形W2とにより行う形態を一例に説明したが、各種調整は、計量波形W1と補正波形W3とによって行ってもよい。
【0048】
上記実施形態では、計量波形W1とAFV波形W2との位相の調整、振幅の中心の調整、及び増幅率の調整(振動信号の係数調整に係る第1の波形の調整)を作業者が行う形態を一例に説明したが、位相の調整、振幅の中心の調整、及び増幅率の調整はコントローラ11が行ってもよい。この場合、各種の調整を手動で行う手動調整モードと、各種の調整をコントローラ11が自動で行う自動調整モードとを選択できる形態であってもよい。すなわち、手動調整モードと、自動調整モードとを選択できる選択部を備えていてもよい。選択部は、タッチパネル13の画面に表示されるボタンであってもよいし、機械的に設けられるボタン(スイッチ)等であってもよい。
【0049】
手動調整モード及び自動調整モードを有する場合のコントローラ11の動作について説明する。計量装置1の電源が投入されると、コントローラ11は、タッチパネル13にメニュー画面を表示させる。メニュー画面には、手動調整モードを選択するための「手動調整モードボタン」と、自動調整モードを選択するための「自動調整モードボタン」とが表示されている。コントローラ11は、「手動調整モードボタン」が作業者によって押下されると、振動信号の係数の設定を開始するための「係数設定ボタン」を表示させる。手動調整モードにおける一連の動作は、上述の通りである。
【0050】
一方、コントローラ11は、「自動調整モードボタン」が作業者によって押下されると、計量波形W1とAFV波形W2との位相の調整、振幅の中心の調整、及び増幅率の調整を行う。コントローラ11は、各種調整を行うと、図6に示されるように、係数設定画面をタッチパネル13に表示させる。作業者は、係数設定画面において、計量信号の係数を設定する。以上のように、手動調整モードと自動調整モードとを選択できる構成とすることにより、状況(使用環境、設置環境)に応じて、係数の設定方法を変更できる。自動調整モードでは、計量波形W1とAFV波形W2との位相の調整、振幅の中心の調整、及び増幅率の調整を作業者が行う手間が省かれるため、作業効率の向上が図られる。
【0051】
また、コントローラ11は、自動調整モードにおいて、係数の設定を行ってもよい。具体的には、コントローラ11は、自動調整モードが選択されると、計量波形W1とAFV波形W2との各種調整を行い、更に、複数の係数の値の候補と、その係数に基づく複数の補正波形(波形)W3とをタッチパネル13の係数設定画面(例えば、図6に示す画面)に表示させ、係数を指定する入力を受け付ける。係数の値は、補正波形W3の振幅が理想的な上限及び下限の範囲内(振幅上限線L5及び振幅下限線L6の範囲内)となるように、標準偏差に基づいて、コントローラ11によって自動で複数設定される。自動で設定される係数の数は、任意に設定することができる。
【0052】
コントローラ11は、例えば、複数の係数の値のそれぞれを色分けして表示させ、複数の補正波形W3のそれぞれを、係数の表示の色に合わせて表示させる。例えば、3つの係数の候補を表示する場合、コントローラ11は、係数の値のそれぞれを「赤」、「青」、「緑」によって表示させ、係数に対応する補正波形W3のそれぞれを、「赤」、「青」、「緑」で表示させる。これにより、係数と補正波形W3との対応関係を作業者が一目で認識することが可能となる。なお、係数と補正波形W3との対応関係を認識させるための表示は、他の方法(補正波形W3を線種を区別する等)であってもよい。
【0053】
係数の値のそれぞれは、例えばタッチパネル13においてボタンに表示されており、コントローラ11は、作業者によって任意の係数のボタンが押下されると、押下されたボタンに対応する係数を設定する。コントローラ11は、係数の値が表示されたボタンが押下されると、例えば、最終確認のポップアップ(例えば、「係数を設定してもよろしいですか?」等のテキスト)を表示させる。コントローラ11は、ポップアップに表示された例えば「OK」のボタンが作業者によって押下されると、設定された係数を記憶部9に記憶させる。以上により、振動信号の係数が設定される。このように、コントローラ11により係数の候補が設定され、係数の候補に対応する補正波形W3を表示させることにより、作業者は、係数の違いによる効果を補正波形W3で確認しつつ、係数を選択して設定することができる。したがって、作業者が係数の調整を行う手間を省くことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0054】
なお、コントローラ11により設定された係数の候補を作業者が選択した後に、作業者が、係数の微調整を行える構成であってもよい。具体的には、コントローラ11は、係数の候補が選択されると、選択された候補対応する補正波形W3のみを表示させる。作業者は、補正波形W3を確認しながら調整ボタンを操作し、振幅上限線及び振幅下限線に基づいて係数を微調整する。
【0055】
上記実施形態では、操作表示部としてタッチパネル13を一例に説明したが、操作表示部はこれに限定されない。表示部としてディスプレイを使用し、操作部としてキーボード等を使用してもよい。
【0056】
上記実施形態では、コンベア3を備え、物品Pを搬送しながら計量する計量装置1を一例に説明したが、計量装置の形態はこれに限定されない。本発明は、組み合せ計量装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…計量装置、5…計量セル(計量部)、7…AFVセル(外乱振動検出部)、11…コントローラ(制御部)、W1…計量波形(第2の波形)、W2…AFV波形(第1の波形)、W3…補正波形(第3の波形)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6