(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いる一般式(1)の化合物としては、化4に例示するような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化4】
【0020】
本発明に用いるカルバゾール誘導体としては、化5に例示するような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0021】
本発明に用いるフェニルホスフィンオキシド誘導体としては、化6に例示する化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化6】
【0022】
有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極の間に1層以上の有機薄膜層
からなる発光層を有する。
発光層の少なくとも一層が本発明の有機化合物を
青色発光ドーパントあるいはアシストドーパントとして含むことが、本発明の効果を得るために必要である。
【0023】
本発明の有機EL素子は、単独の発光ユニットを有する単ユニット型であっても、複数の発光ユニットを有するタンデム型であってもよい。ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0024】
単ユニット型有機EL素子の代表的な素子構成としては、陽極/発光ユニット/陰極の積層構造であり、上記発光ユニットは、発光層を複数有する積層型発光層であってもよい。なお、各発光層と正孔輸送層との間には、適宜、電子阻止層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔阻止層を設けてもよい。電子阻止層や正孔阻止層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における電荷の再結合確率を高め、発光効率を向上させることができる。
【0025】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極が挙げられる。ここで、上記第一発光ユニット及び第二発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットと同様のものを選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第一発光ユニットに電子を、第二発光ユニットに正孔を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0026】
図3に、本発明の有機EL素子の一例の概略構成を示す。有機EL素子は、基板5、陽極1、陰極3、及び陽極1と陰極3との間に配置された正孔注入層2−1、正孔輸送層2−2、発光層2−3、電子輸送層2−4からなり、有機層2−1〜2−4のいずれかに一般式(1)で表される化合物が含まれている。
【0027】
基板
本発明の有機EL素子は基板上に作製する。基板は有機EL素子を支持する役割をもつ。基板が透明であれば、基板側から発光をとりだすことができる。基板が透明でなければ、基板と逆側から発光を取り出す必要がある。基板の表面は、有機EL素子の膜厚が合計でも100nmのオーダーであるために、平滑であることが好ましい。具体的な材質としては、ガラス板、ポリマー板などを好適に用いることができる。金属板の場合は、表面の凹凸が大きいことが多く、別途平坦化層を設けることで平坦にできる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を原料として用いてなるものを挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を原料として用いてなるものを挙げることができる。金属板としては、銅および銅合金、鉄および鉄合金、アルミおよびアルミ合金を原料として用いてなるものを挙げられる。
【0028】
陽極
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有する電極材料を好適に用いることができる。
陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金、酸化錫、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が挙げられる。陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法などの方法で薄膜を形成することにより作製することができる。発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0029】
陰極
陰極は電子注入層、電子輸送層又は発光層に電子を注入する役割を担うものであり、仕事関数の小さい電極材料を好適に用いることができる。陰極材料の具体例としてはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などが使用できる。陰極も、陽極と同様に、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。また、必要に応じて、陰極側から発光を取り出してもよい。
【0030】
発光層
有機ELの発光層は発光機能を有する有機層であり、特に重要である。ドーピング法を採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、電子と正孔の再結合の主な場としての機能と、再結合によって生じた励起子を発光層の中に閉じ込める機能を担う。ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光に変換する機能を担う。本発明の有機EL素子に用いる一般式(1)で示される有機化合物は、それ自身が優れた発光特性を有しており、また、正孔と電子の再結合により生成する一重項励起子と三重項励起子の両方のエネルギーを発光に変えることができるため、高い発光効率や長い素子寿命を得ることができる。
【0031】
ここで、上記発光層は、例えば、電子輸送性のホストと正孔輸送性のホストを組み合わせるなどして、実質的に2種類以上の材料をホストとしてもよく、これにより、発光層内のキャリアバランスを調整することができる。
また、発光効率が高いドーパント材料を二種類以上入れることによって、それぞれのドーパントが発光するダブルドーパントを採用してもよい。
本発明の有機化合物は発光ドーパントとして好適に用いることができる。
【0032】
また、本発明の有機化合物は発光層内におけるアシストドーパントとしても好適に用いることができる。アシストドーパントは、ホスト材料の機能の一部を担う役割や、ホスト材料から発光材料への励起エネルギー移動の効率を高める役割を担う。
【0033】
本発明の発光層のホスト材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ジフェニルキノン誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、8−キノリノール導体の金属錯体やベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
【0034】
発光層は、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェット法等の公知の方法により形成することができる。
【0035】
また、発光層は、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ポリマーバインダーを含有してもよい。さらに、発光層の膜厚は、好ましくは5〜100nm、より好ましくは7〜60nm、最も好ましくは10〜50nmである。5nm未満では発光層形成が困難となり、色度の調整が困難となる恐れがあり、100nmを超えると駆動電圧が大きく上昇する恐れがある。
【0036】
電子供与性ドーパント
本発明の有機EL素子は、陰極と発光ユニットとの界面領域に電子供与性ドーパントを有することも好ましい。このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。ここで、電子供与性ドーパントとは、仕事関数3.8eV以下の金属を含有するものをいい、その具体例としては、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物などから選ばれる少なくとも一種類が挙げられる。
【0037】
アルカリ金属としては、金属ナトリウム、金属カリウム、金属ルビジウム、金属セシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、金属カルシウム、金属ストロンチウム、金属バリウムなどが挙げられる。
【0038】
アルカリ金属化合物としては、Li2O、Cs2O、K2O等のアルカリ酸化物、LiF、NaF、CsF、KF等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、LiF、Li2O、NaFが好ましい。アルカリ土類金属化合物としては、BaO、SrO、CaOなどが挙げられる。
【0039】
アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体としては、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノールおよびそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
電子輸送層
電子輸送層は、発光層と陰極との間に形成される有機層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有する。電子輸送層が複数層で構成される場合、陰極に近い有機層を電子注入層と称することがある。電子注入層は、陰極から電子を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。本発明の含窒素芳香族複素環誘導体は、電子輸送層に含有される電子輸送材料として用いることもできる。電子輸送層が1層または複数層で構成される場合、発光層に隣接している電子輸送層を正孔阻止層と称することがある。本発明の含窒素芳香族複素環誘導体は、正孔阻止層に含有される正孔阻止材料として用いることもできる。
【0041】
電子輸送層に用いる電子輸送性材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する複素芳香族化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。
【0042】
電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜100nmである。
【0043】
正孔輸送層
発光層と陽極との間に形成される有機層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有する。正孔輸送層が複数層で構成される場合、陽極に近い有機層を正孔注入層と定義することがある。正孔注入層は、陽極から正孔を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。
【0044】
正孔輸送層に用いられる材料は特に限定されないが、例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’−ビス(N,N−ビス(4−ビフェニリル)アミノ)ビフェニル(TBDB),といったベンジジン誘導体、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)などのスターバーストアリールアミンと呼ばれる材料群、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体、チオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートや
スチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾ
ールおよびポリシランなどが用いられる。
【0045】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層は第1正孔輸送層(陽極側)と第2正孔輸送層(陰極側)の2層構造にしてもよい。
正孔輸送層の膜厚は特に限定されないが、10〜200nmであるのが好ましい。
【0046】
本発明の有機EL素子では、正孔輸送層または第1正孔輸送層の陽極側にアクセプター材料を含有する層を接合してもよい。これにより駆動電圧を下げることができ、また駆動電圧の変化を抑えることができる。 前記アクセプター材料としては化7で表される化合物を好ましく用いることができる。
【化7】
【0047】
n/pドーピング
上述の正孔輸送層や電子輸送層においては、ドナー性材料のドーピング(n)やアクセプター性材料のドーピング(p)により、キャリア注入能を調整することができる。
nドーピングの代表例としては、電子輸送材料にLiやCs等の金属をドーピングする
方法が挙げられ、pドーピングの代表例としては、正孔輸送材料にF4TCNQ(2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)等のアクセプター材料をドーピングする方法が挙げられる。
【0048】
阻止層
本発明の有機EL素子は、発光層に隣接する部分に、電子阻止層、正孔阻止層、三重項励起子阻止層といった阻止層を有することが好ましい。ここで、電子阻止層とは、発光層から正孔輸送層へ電子が漏れることを防ぐ層であり、正孔阻止層とは、発光層から電子輸送層へ正孔が漏れることを防ぐ層であり、三重項励起子素子層とは発光層から正孔輸送層あるいは電子輸送層へ三重項励起子がエネルギー移動によって拡散することを防ぐ層である。
【0049】
先行例との差異
特許文献1には、本願発明の一般式(1)に含まれる部分構造と同じ化8で表されるプテリジン環を含む化合物とそれを用いる有機EL素子に関して開示されている。一方、本願発明の無置換アミノ基を持つ化学構造を有する化合物については開示されていない。本願発明の高い蛍光量子収率で色純度が高い青色発光を得るためには、無置換アミノ基の存在が必要である。これは、特許文献1に記載があるような、プテリジン環上の置換基としてカルバゾールなどを導入した場合、分子の共役系の長さが伸びるため、最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)との間のエネルギー差が小さくなるために、得られる発光は長波長にシフトしてしまうため、色純度が高い青色発光は得られず、より緑色になってしまうためである。加えて、無置換アミノ基がない場合は化合物の蛍光量子収率が大幅に低下してしまうために、高い発光効率の有機EL素子を得ることはできない。この原因は十分に解明されていないが、後ほど記載するように、発明者が化1で表される化合物のアミノ基の水素を置換した化合物を検討した際に明らかとなった事実である。したがって、本願発明の効果を得るためには、プテリジン環上の水素の少なくとも一つが無置換アミノ基によって置換されている必要がある。
【化8】
【0050】
本発明に用いる化合物の光吸収と発光スペクトルの一例
化1の化合物トリアムテレンの吸収・発光スペクトル、蛍光量子収率とそれらの溶媒依存性を測定した。
図1にテトラヒドロフラン溶液における吸収・発光スペクトルを示す。発光スペクトルは、極大波長427nmで半値幅は64nmであり、深い青色を示す。吸収極大波長は376nmであった。吸収スペクトルの極大波長と発光スペクトルの極大波長との差は51nmであり、他の有機EL用発光材料と比較しても小さい値である。この値はストークスシフトと呼ばれる。化合物に照射された光子は、化合物に吸収されて化合物を励起状態に導く。化合物は励起状態において、その構造などを変化させることによって、より低いエネルギー状態に緩和する。この緩和された励起状態から発光するため、吸収した光のエネルギーよりも緩和したエネルギー分だけ小さくなるために、発光スペクトルは長波長にシフトする。このエネルギー差の指標となるのがストークスシフトである。ストークスシフトが小さいということは、与えられた光のエネルギーと放出する光のエネルギー差が小さいことを意味し、エネルギー効率の観点から好ましい。
【0051】
本発明に用いる化合物の発光量子収率の一例
次に、トリアムテレンのテトラヒドロフラン溶液における発光量子収率を測定した。測定は、標準物質との比較により行った。測定と算出方法は、非特許文献3を参照した。硫酸キニーネの1規定硫酸水溶液を標準としたとき、トリアムテレンのテトラヒドロフラン溶液における発光量子収率は0.89と測定され、高い発光量子収率を示すことが分かった。発光量子収率は、吸収した光子に対する発光した光子の比率を表しており、この値が1に近いほど、熱として失われるエネルギーが小さく、発光効率が高いことを意味する。
【0052】
本発明に用いる化合物の発光量子収率の他の例
次に、トリアムテレンをテトラヒドロフランとは異なる別の溶媒に溶解させて吸収・発光スペクトルと 蛍光量子収率を測定した。溶媒としては、ジメチルスルホキシド、アセトン、ピリジン、酢酸を用いた。吸収および発光スペクトルは、溶媒によってほとんど変化がなかった。蛍光量子収率は、ジメチルスルホキシドで0.97、アセトンで0.85、ピリジンで0.91、酢酸で0.94であった。トリアムテレンは無置換アミノ基や含窒素複素芳香環を有しているが、溶媒の酸性や塩基性にあまり依存せずに高い蛍光量子収率を示すことが発見された。このことは、有機EL素子において、例えば発光層のホスト材料の中にトリアムテレンが分散された状態でも、ホスト材料の種類に影響なく、高い蛍光量子収率が得られることを示している。また、トリアムテレンのみならず、類似の化学構造を持つ本発明の化合物群についても同じことが言える。
【0053】
本発明に該当しない化合物の合成と発光特性
本発明における一般式(1)における無置換アミノ基(−NH2)の必要性を明確化するために、アミノ基の水素をアルキル基に置換した化合物を合成し、その発光特性を調べた。本比較例では、化9で示す化合物の合成を行った。乾燥した200ml三ツ口フラスコに脱水したジメチルスルホキシド20mlを投入し、アルゴン置換する。次に化1の化合物トリアムテレンとカリウムt−ブトキシド1.2gをこの順に投入して、30分室温で攪拌する。次にヨードシクロヘキサン2.2gをゆっくり滴下する。その後、溶液を70℃で3時間加熱攪拌した。反応後、水を加えて固体を析出させ、濾過により固体を取得し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することによって、化9で示される化合物を0.55g(収率45%)を得た。この化合物は青色発光を示すものの、蛍光量子収率を非特許文献2の手法で測定したところ、0.1以下であり、トリアムテレンよりも大幅に発光効率が低下していることが分かった。
【化9】
【0054】
本発明に該当しない化合物の合成と発光特性
本発明における一般式(1)における無置換アミノ基(−NH2)の必要性を明確化するために、アミノ基の水素をアルキル基に置換した化合物を合成し、その発光特性を調べた。本比較例では、化10で示す化合物の合成を行った。乾燥した200ml三ツ口フラスコにヨードトルエン7.2g、トリアムテレン1.0g、炭酸カリウム7.0g、18-クラウンー6 0.4g、銅 2.1g、メシチレン 6mlを投入し、窒素置換を行った。その後、170℃で8時間加熱攪拌した。反応後、トルエン200mlで抽出し、濾過により無機物を除去した。得られた溶液を蒸留して溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することで化10の化合物を0.74g(収率24%)で得た。この化合物は、アミノ基に連結されたトルイル基のために発光が長波長となり黄色を示し、目的の青色発光を得ることはできなかった。また、蛍光量子収率を非特許文献2の手法で測定したところ、0.1以下であり、トリアムテレンよりも大幅に発光効率が低下していることが分かった。
【化10】
【0055】
以上の本発明に用いる発光材料と比較例の材料の発光特性の評価から、本発明の効果である青色発光を高効率で得るためには、プテリジン環の水素を無置換のアミノ基(−NH2)で置換することが必要であることが分かる。
【0056】
実施例1
(1)有機EL素子の作製
本実施例では、
図2に示す上面図、および
図3に示す断面模式図の有機EL素子を試作した。最初に、
図2の1に示す形状にパターニングされたITO透明電極が表面に形成された厚み0.7mmのホウケイ酸ガラス基板(以下、ITO付ガラス基板と呼ぶことがある)を準備した。ITOガラス付ガラス基板の外形は30x30mmの正方形である。
ITO付ガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間実施し、その後、UVオゾン洗浄を10分間行う。
洗浄後のITO付ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、10
−3〜10
−4Paの真空にした。
次に、化7の化合物HAT-CNを正孔注入層として、膜厚5nmで真空蒸着法にて形成した。メタルマスクを用いて
図2の2に示す領域に形成した。
次に、化11の化合物NPDを正孔輸送層として、膜厚60nmで真空蒸着法にて形成した。メタルマスクを用いて
図2の2に示す領域に形成した。
次に、化12の化合物CBPと化1の化合物トリアムテレンを共蒸着により発光層として、膜厚40nmで真空蒸着法にて形成した。メタルマスクを用いて
図2の2に示す領域に形成した。化1の化合物トリアムテレンの濃度はホスト化合物のCBPと化1の化合物の合計量の3重量%とした。
次に、化13の化合物TPBiを電子輸送層として、膜厚20nmで真空蒸着法にて形成した。メタルマスクを用いて
図2の2に示す領域に形成した。
次に、フッ化リチウムを電子注入層として、膜厚0.8nmで真空蒸着法にて形成した。メタルマスクを用いて
図2の2に示す領域に形成した。
次に、フッ化リチウムを陰極として、膜厚0.8nmで真空蒸着法にて形成した。メタルマスクを用いて
図2の3に示す領域に形成した。陰極3とITO1が重なる箇所が有機EL素子として機能し発光する。発光面積は2x2mm2であった。
最後に、
図2の4の領域に、乾燥剤を基板側に備えたステンレス鋼製の封止キャップで、ガラス基板と接着剤により接合することにより有機EL素子の作製を完了した。
【化11】
【化12】
【化13】
【0057】
(2)駆動電圧および発光輝度と発光スペクトルの測定
作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、電流密度が10mA/cm2となるように陽極と陰極との間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。また、その条件での輝度を輝度計(株式会社トプコン製 型番BM−8)にて計測した。また、ELスペクトルをスペクトロメーターで計測した。
【0058】
(3)素子の寿命の測定
作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、電流密度が10mA/cm2となるように陽極と陰極との間に通電し、24時間後の輝度を測定した。
【0059】
実施例2
本実施例においては、ホスト化合物としてCBPの代わりに化14の化合物m−CPを用いたこと以外は、実施例1と全く同じ方法で有機EL素子を作成し、駆動電圧と発光特性と発光寿命を評価した。
【化14】
【0060】
実施例3
本実施例においては、ホスト化合物としてCBPの代わりに化15の化合物TCTAを用いたこと以外は、実施例1と全く同じ方法で有機EL素子を作成し、駆動電圧と発光特性と発光寿命を評価した。
【化15】
【0061】
実施例4
本実施例においては、ホスト化合物としてCBPの代わりに化6の化合物DPEPOを用いたこと以外は、実施例1と全く同じ方法で有機EL素子を作成し、駆動電圧と発光特性と発光寿命を評価した。
【0062】
実施例5
本実施例においては、正孔輸送材料として化11の化合物NPDの代わりに化16の化合物TPDを用いたこと以外は、実施例1と全く同じ方法で有機EL素子を作成し、駆動電圧と発光特性と発光寿命を評価した。
【化16】
【0063】
図4に実施例1の有機EL素子の発光の写真を示す。実施例1の有機EL素子は、純青色の発光を高い輝度で示した。その色度座標は(0.14、0.08)であった(国際照明委員会CIE が1931年に策定したxy色度図表記による)。実施例2〜5の素子についても同様の明るい青色発光が得られた。
【0064】
図5に実施例1の有機EL素子において得られた発光スペクトルを示す。
図5には、実施例1に用いた発光材料トリアムテレンのテトラヒドロフラン溶液の発光スペクトルを合わせて記載している。実施例1のELスペクトルとトリアムテレンのテトラヒドロフラン溶液の発光スペクトルはよく一致しており、実施例1のEL発光はトリアムテレンからの発光に基づく。また、実施例2〜5の発光スペクトルも
図5の発光スペクトルとよく一致しており、いずれもトリアムテレンからの発光に基づく。
【0065】
表1に本発明の有機EL素子、実施例1〜5の駆動電圧と発光効率をまとめる。いずれも7V程度の駆動電圧で1cd/Aを超える発光効率が得られており、本発明の有機EL素子が高い発光特性で青色発光を示すことが分かった。24時間後の輝度保持率はいずれも80%以上であり、長時間の連続発光ができることが分かった。
【0067】
実施例6
アシストドーパントとして用いても本発明の効果が得られる。ホスト化合物として化12の化合物CBP、アシストドーパントとして本発明の化1の化合物トリアムテレン、発光材料として化17の化合物TBPeを共蒸着して膜厚40nmの発光層を形成し、トリアムテレンとTBPeの濃度は、CBPとトリアムテレンとTBPeの合計量のそれぞれ10質量%、2質量%とする以外は、実施例1と同じようにして有機EL素子を作製した。
【化17】
【0068】
実施例6で作製した有機EL素子は、TBPeに基づく青色の発光を示し、電流密度10mA/cm2時の駆動電圧は6.8V、発光効率は8.0cd/Aであった。実施例1〜5の有機EL素子よりも青色の色純度は低いものの、アシストドーパントであるトリアムテレンからTBPeへのエネルギー移動が効率的に起こっているために高い発光効率が得られていると考えられる。