(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分と(C)成分の合計含有量の質量比((A)+(C))/(B)が2〜30の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
前記(C)成分がミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、以上の従来技術において、尿素には刺激性があるため、尿素を配合した皮膚外用剤は顔などの敏感な部位には適用できない場合が多い。又、ワセリンを含有する皮膚外用剤では過度のベタ付きが生じるという問題がある。一方、特許文献1に係る皮膚外用剤は、上記の構成から分かるように低粘度の液状皮膚外用剤であり、クリーム状等の皮膚外用剤のような操作性(塗布の容易さ、塗布時の皮膚外用剤の伸び)は期待できない。
【0006】
又、液晶構造体を含む皮膚外用剤における特に重要な点として、以下の(1)〜(3)を挙げることができる。そして、特許文献1に係る皮膚外用剤も含めて、従来の液晶構造体を含む皮膚外用剤では、これらの(1)〜(3)の点は必ずしも十分には配慮されず、あるいは実現されていなかった。
(1)従来の液晶構造体を含む皮膚外用剤では、一般的に、皮膚に塗布した際に液晶構造体が壊れ易いという持続性(液晶安定性)に関する問題があった。
(2)皮膚外用剤としては、塗布感が良好であることが重要である。「塗布感」とは、塗布時における「ベタ付きのなさ」、「肌への馴染み」等を含めた総合的な感触を言い、ここに「肌への馴染み」とは、皮膚外用剤が塗布し易い柔らかさを備える点や、皮膚上での成膜性がないこと等をいう。
(3)皮膚外用剤組成物はある程度の期間にわたって少しずつ使用されることが多く、皮膚外用剤がクリーム状等のエマルションである場合、その皮膚外用剤における製剤安定性も重要である。この製剤安定性が劣ると、例えばクリームが相分離して使用に耐えなくなる。
【0007】
そこで本発明は、水中油滴型液晶構造体を含む皮膚外用剤組成物において、前記の(1)に関連する液晶安定性を確保し、前記の(2)に関連する良好な塗布感を実現し、更に好ましくは前記の(3)に関連する製剤安定性を向上させることを、解決すべき課題とする。
【0008】
本願発明者は、上記課題の解決手段を追求する過程で、特定の種類の高級アルコール、界面活性剤及びエステル油を必須成分として液晶構造体を構成すると、微小な球状液晶を高い密度で含む水中油滴型液晶構造体が、良好に、かつ優れた液晶安定性を伴って形成されることを見出した。そして、このような水中油滴型液晶構造体を含む皮膚外用剤組成物は、ベタツキがなく肌への馴染みが良いという良好な塗布感をもたらすことを見出した。更に、このような皮膚外用剤組成物に水溶性高分子を含有させると、以上の効果に加えて、製剤安定性も向上することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための第1発明の構成は、下記(A)成分〜(C)成分を必須成分として構成される水中油滴型液晶構造を含む、皮膚外用剤組成物である。
【0010】
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 2〜15質量%
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1〜5質量%
(C)上記(B)成分以外のエステル油の1種以上 0.5〜10質量%
この第1発明において、(C)成分たる「エステル油」とは、(B)成分以外のエステルであって、エステル結合を有する油脂であるものを言う。
【0011】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための第2発明の構成は、前記第1発明に係る皮膚外用剤組成物において、(B)成分の含有量に対する(A)成分と(C)成分の合計含有量の質量比((A)+(C))/(B)が2〜30の範囲内である、皮膚外用剤組成物である。
【0012】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る皮膚外用剤組成物において、(C)成分が直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である、皮膚外用剤組成物である。
【0013】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る皮膚外用剤組成物において、(C)成分がミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上である、皮膚外用剤組成物である。
【0014】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る皮膚外用剤組成物が、更に水溶性高分子の1種以上を含有する、皮膚外用剤組成物である。
【発明の効果】
【0015】
(第1発明の効果)
第1発明によれば、(A)成分:常温で固体の高級アルコールの1種以上(2〜15質量%)、(B)成分:グリセリン脂肪酸エステルの1種以上(0.1〜5質量%)及び(C)成分:(B)成分以外のエステル油の1種以上(0.5〜10質量%)を必須成分として液晶構造体を構成するので、微小な球状液晶を高い密度で含む水中油滴型液晶構造体を、良好に、かつ優れた液晶安定性を伴って形成することができる。このような液晶安定性に優れた水中油滴型液晶構造体を含む皮膚外用剤組成物は、保湿性が良く、保湿力が持続する。更に、第1発明の皮膚外用剤組成物が皮膚に対する刺激性を示さず、ワセリンを保湿成分とする場合のようなベタ付きがないことは、勿論である。
【0016】
より詳細に述べれば、(A)成分と(B)成分を組合わせて用いることにより、良好な水中油滴型液晶構造を形成し易くなる。そして、この液晶構造体は皮膚に塗布した際にも壊れ難い。この効果は、(A)成分と(B)成分の少なくとも一方の配合量が上記の数値範囲の下限側又は上限側に外れると、不十分となる。
【0017】
次に、本発明の皮膚外用剤組成物は水中油滴型のエマルションであるが、(C)成分は液晶構造体の必須成分であると共に、エマルションの乳化状態に大きく影響する。ひいては、皮膚外用剤組成物の塗布感に大きな影響を与える。従って、(A)成分と(B)成分に加えて(C)成分を含有する第1発明の皮膚外用剤組成物は、ベタ付きがなく、肌への馴染みが良いという良好な塗布感をもたらす。(C)成分の配合量が上記の数値範囲の下限側又は上限側に外れると、良好な水中油滴型液晶構造の形成に支障を来たす他、皮膚外用剤組成物の良好な塗布感を確保できない。
【0018】
(第2発明の効果)
第2発明によれば、必須成分の含有量の質量比((A)+(C))/(B)が2〜30の範囲内であるため、第1発明よりも更に良好な塗布感を得られると言う効果がある。この質量比が上記の数値範囲の下限側に外れると(A)成分及び(C)成分の配合量の相対的な不足により、又、質量比が上記の数値範囲の上限側に外れると(B)成分の配合量の相対的な不足により、それぞれ上記の効果が十分に得られない恐れがある。
【0019】
(第3発明の効果)
(C)成分としては、第3発明に規定するように、直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル、及び、バチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上であることが、第1発明よりも更に良好な液晶形成が得られる点で特に好ましい。
【0020】
(第4発明の効果)
なかんずく、(C)成分としては、第4発明に規定するように、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上であると、更に保湿性が優れ、とりわけ好ましい。
【0021】
(第5発明の効果)
前記したように、皮膚外用剤組成物がエマルション製剤、特にクリーム状製剤である場合、その製剤安定性が劣ると、エマルションが劣化し、極端な場合には相分離を起こして使用に耐えなくなる。しかし、本発明の液晶構造体を含む皮膚外用剤組成物に水溶性高分子を含有させると、優れた製剤安定性が付与されることが分かった。
【0022】
なお、第5発明における、エマルション製剤、特にクリーム状製剤に関する上記の効果は、本発明に係る液晶構造体を含む皮膚外用剤組成物に限らず、一般的に水中油滴型液晶構造を含む皮膚外用剤組成物においても、後述の比較例12〜15で示すように、水中油滴型液晶構造が殆んど又は全く形成されていない皮膚外用剤組成物においても、成り立つことが分かっている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0025】
〔皮膚外用剤組成物〕
本発明に係る皮膚外用剤組成物は、後述する(A)成分〜(C)成分を必須成分として構成される水中油滴型液晶構造を含むものである。即ち、少なくとも、2〜15質量%の(A)成分と、0.1〜5質量%の(B)成分と、0.5〜10質量%の(C)成分とを水に加えて撹拌すると、水中油滴型のエマルションであって、その微小な油滴の一部又は全部が球状の液晶となっているものを調製することができる。その際の撹拌条件は特に限定されず、エマルション形成のための一般的な条件下で撹拌すれば良い。機械的な撹拌手段による乳化が特に好ましい。水中油滴型液晶構造の確認は、偏光顕微鏡によって行うことができる。
【0026】
皮膚外用剤組成物における(A)成分〜(C)成分のそれぞれの含有量は、上記の数値範囲内であれば基本的に限定されないが、第2発明の効果に関して前記したように、より良好な塗布感を十分に得るためには、各必須成分の含有量の質量比((A)+(C))/(B)が2〜30の範囲内であることが好ましい。
【0027】
更には、(A)成分と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)が1〜20の範囲内であると、より良好な水中油滴型液晶構造を得やすくなる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤組成物に含まれる液晶構造体における微小な球状の液晶は、特許文献1に言うような層状ラメラ液晶とは異なる。
【0029】
液晶構造を取り込んだ組成物が高い保湿効果を有することは知られているが、本発明の水中油滴型液晶構造における球状液晶は、「第1発明の効果」欄で述べた理由から持続性(液晶安定性)に優れており、皮膚に塗布した際にも液晶構造体が壊れ難い。従って持続性に優れた保湿効果が得られる。
【0030】
本発明の皮膚外用剤組成物は、水中油滴型のエマルションであれば良いが、乳液状、クリーム状、又はゲルクリーム状が好ましく、特に乳液状が好ましい。
【0031】
又、皮膚外用剤組成物は、適用部位や使用目的に応じた各種成分を適宜配合することにより、例えば基礎化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ化粧品、頭髪用化粧品等として利用することができる。
【0032】
基礎化粧品としては、化粧水、乳液、モイスチュアクリーム、フォーム、美容液、パック、アフターシェーブローション等が挙げられる。
【0033】
ボディ化粧品としては、ボディローション、デオドラントクリーム、デオドラントスプレー、サンスクリーン剤等が挙げられ、こうしたボディ化粧品は、胴体、首、腕、足、爪等に対して保湿効果等を発揮する。
【0034】
頭髪用化粧品としては、シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアトニック、ヘアリキッド、育毛剤、染毛剤、脱色剤、脱染剤、パーマネントウエーブ用剤等が挙げられ、こうした頭髪用化粧品は、頭皮に対して保湿効果等を発揮する。
【0035】
本発明の皮膚外用剤組成物は、手、塗布具等によって皮膚や頭髪部に塗布して使用される。これらが塗布されると、頭皮を包含する皮膚に対して低刺激性に、角質層等の水分が持続的に好適に保持され、しかもベタ付きがなく肌に良好に馴染む。
【0036】
〔皮膚外用剤組成物の必須成分〕
((A)成分)
(A)成分は常温で固体の高級アルコールの1種以上である。「常温で固体の高級アルコール」とは、25℃において固体状又は半固体状の(即ち、液体状ではない)高級アルコールをいう。このような(A)成分としては下記のものが例示される。
【0037】
ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキルアルコール、バチルアルコール、キミルアルコール、ミリシルアルコール、セトステアリルアルコール、ラノリンアルコール。
【0038】
以上の内、特に好ましいものはミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールである。
【0039】
皮膚外用剤組成物における(A)成分の含有量は2〜15質量%であり、より好ましくは2〜10質量%である。(A)成分の含有量が2質量%より少ないと水中油滴型液晶構造が得られ難い。(A)成分を15質量%を超えて配合すると、水中油滴型液晶構造が得られない。
【0040】
((B)成分)
(B)成分はグリセリン脂肪酸エステルの1種以上であり、より好ましくはグリセリン又はポリグリセリンのモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である。炭素数12〜18の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとのエステルから選ばれる1種以上も好ましい。
【0041】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、下記のものが例示される。下記の例示において、例えばモノステアリン酸グリセリンについて「親油型」、「自己乳化型」を併記するが、一般的にこれらは同一の化学構造のものであり、但し、自己乳化型は他の界面活性剤を含有する混合物である点が異なる。
【0042】
モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノベヘニン酸グリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル。ミリスチン酸グリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル。
【0043】
以上の内、より好ましいものは、特に高親油性のグリセリン脂肪酸エステルであり、具体的にはモノベヘニン酸グリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸グリセリン及びモノステアリン酸デカグリセリルから選ばれる1種以上である。
【0044】
皮膚外用剤組成物における(B)成分の含有量は0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%である。(B)成分の含有量が、0.1質量%より少ないと水中油滴型液晶構造が得られ難い。(B)成分を5質量%を超えて配合すると水中油滴型液晶構造が得られない。
【0045】
((C)成分)
(C)成分は、上記(B)成分以外のエステル油の1種以上である。エステル油としては下記のものが例示される。
【0046】
アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、モノステアリン酸バチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸バチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体。
【0047】
以上の内、より好ましいものは直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上であり、特に好ましいものはミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、モノステアリン酸バチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、ステアリン酸ステアリル及びオレイン酸デシルから選ばれる1種以上であり、とりわけ好ましいものはミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、モノステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上である。
【0048】
皮膚外用剤組成物における(C)成分の含有量は0.5〜10質量%であり、好ましくは2〜5質量%である。(C)成分の含有量が0.5〜10質量%の範囲を外れると、水中油滴型液晶構造の形成と安定性に支障を来たす他、皮膚外用剤組成物の良好な塗布感を確保できない。
【0049】
(水)
本発明の皮膚外用剤組成物においては、水中油滴型液晶構造を形成するために水が必要である。水の配合量は必要に応じて決定すれば良いが、好ましくは、皮膚外用剤組成物の70〜90質量%程度とすることができる。水の配合量をこの範囲内とすることは、一方で良好な水中油滴型液晶構造を構成し、他方で水中油滴型エマルションの製剤安定性を確保する上で、より好ましい。
【0050】
〔皮膚外用剤組成物における有用成分〕
(水溶性高分子)
本発明の皮膚外用剤組成物は、以上の必須成分の他、水溶性高分子の1種以上を好ましく含有することができる。これにより、本発明の皮膚外用剤組成物の製剤安定性が向上する。水溶性高分子の含有量は限定されないが、好ましくは0.1〜0.5質量%であり、より好ましくは0.2〜0.3質量%である。水溶性高分子の含有量を0.1〜0.5質量%の範囲内とすることは、エマルション製剤、特にクリーム状製剤である皮膚外用剤組成物の製剤安定性を十分に得る上で、より好ましい。
【0051】
水溶性高分子の種類は限定されず、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム等の植物性高分子、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子の他、デキストラン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、ゼラチン等の動物性高分子、カルボキシメチルデンプン等のデンプン系高分子が挙げられる。これらの内、特に好ましいものは、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマーから選ばれる1種以上である。
【0052】
〔皮膚外用剤組成物における任意的含有成分〕
本発明に係る皮膚外用剤組成物は、上記の各成分の他に、この種の皮膚外用剤に配合されることがある各種の成分を任意的に含有することができる。このような任意的含有成分として、(A)成分及び(C)成分以外の油性成分、(B)成分以外の界面活性剤、多価アルコール、アミノ酸類、糖類、糖アルコール類、防腐剤、キレート剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤、美白剤、皮膚用柔軟化剤、殺菌剤、無機粉末、樹脂粉末、無機顔料、有機顔料、染料、抗炎症剤等を例示することができる。これらの任意的含有成分の含有量は必要に応じて適宜に決定すれば良い。これらの内の幾つかの任意的含有成分について、以下に述べる。
【0053】
(油性成分)
上記した油性成分としては、常温で液状の高級アルコール、ロウ類、油脂、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、シリコーン類、炭化水素等が挙げられる。
【0054】
常温で液状の高級アルコールとしては、2−オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等が挙げられる。
【0055】
ロウ類としては、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ミツロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。
【0056】
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0058】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0059】
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、グリセリン変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0060】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0061】
(界面活性剤)
上記した界面活性剤としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0062】
エーテル型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、「POE」という。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0063】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
【0065】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0066】
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。多価アルコールは単独で配合しても良く複数種を組み合わせて配合しても良い。
【0067】
(アミノ酸類)
アミノ酸類としては、アミノ酸及びその塩が挙げられる。アミノ酸としては、グリシン、小麦アミノ酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、メチオニン等が挙げられる。アミノ酸類は単独で配合しても良く、複数種を組み合わせて配合しても良い。
【実施例】
【0068】
次に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0069】
〔皮膚外用剤組成物の調製〕
末尾の表1〜6に示す実施例1〜43に係るクリーム状の皮膚外用剤組成物、及び、末尾の表7〜8に示す比較例1〜15に係るクリーム状の皮膚外用剤組成物を、この種の組成物が通常は水中油滴型液晶構造を含むこととなるような一般的条件下で撹拌して、調製した。
【0070】
表1〜8において、各成分の含有量を示す数値は質量%単位で表記されている。又、表の左側欄外に「A」、「B」、「C」と記載した成分はそれぞれ本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分であることを示し、同様に「A比」、「C比」と記載した成分はそれぞれ「(A)成分に対する比較用の成分」、「(C)成分に対する比較用の成分」であることを示す。
【0071】
更に、「((A)+(C))/B」の欄は、第2発明に規定した、(B)成分の含有量に対する(A)成分と(C)成分の合計含有量の質量比を表す。
【0072】
(液晶形成評価)
10名のパネラーに、各例に係る調製後の皮膚外用剤組成物における液晶構造を偏光顕微鏡(OLYMPUS社製、システム生物顕微鏡BX51,総合倍率:×200(接眼レンズ:×10,対物レンズ:×20))により目視で確認させ、「液晶構造が十分ある」、「液晶構造が不十分、又はない」の二者択一で評価させた。この評価に当たり、予め取得しておいた本発明の実施例に係る「十分な水中油滴型液晶構造を形成した皮膚外用剤組成物」の代表的な偏向顕微鏡写真(
図1)と、予め取得しておいた本発明の比較例に係る「水中油滴型液晶構造の形成が不十分である皮膚外用剤組成物」の代表的な偏向顕微鏡写真(
図2)とを各パネラーに示し、評価の基準とさせた。そして、パネラー10名中、「十分ある」と回答したパネラーが10〜9名である場合が評価点5、8〜7名である場合が評価点4、6〜5名である場合が評価点3、4〜3名である場合が評価点2、2名以下である場合が評価点1とした。これらの評価点を表1〜8の「液晶形成」の欄に示す。
【0073】
(液晶安定性評価)
各例に係る皮膚外用剤組成物の試料0.5gを被験者の前腕内側部の3cm四方の範囲に塗布した後、4時間を経過した時点で前腕内側部から採取し、再度、それらの液晶構造を偏光顕微鏡(OLYMPUS社製、システム生物顕微鏡BX51,総合倍率:×200(接眼レンズ:×10,対物レンズ:×20))により目視で確認した。上記「液晶形成の評価」の場合と同じ
図1、
図2の偏向顕微鏡写真を評価の基準として、液晶構造が「十分ある」場合を「◎」、「ある」場合を「○」、「余りない」場合を「△」、「ない」場合を「×」とした。これらの評価結果を表1〜8の「液晶安定性」の欄に示す。
【0074】
(保湿性評価)
各例に係る皮膚外用剤組成物の試料0.5gを10名のパネラーの前腕内側部の3cm四方の範囲に塗布し、高感度角層膜厚・水分計ASA−MX(有限会社アサイバイオメッド社)装置により保湿性を評価した。各パネラーに保湿性が「ある」、「ない」の二者択一で評価させた。この評価に当たり、各パネラーの前腕内側部について皮膚外用剤組成物を塗布しない通常の状態での同上の装置による計測結果を予め取得させ、その予備計測結果との比較を評価の基準とさせた。そしてパネラー10名中、「ある」と回答したパネラーが10〜8名である場合を「◎」、7〜6名である場合を「○」、5〜4名である場合を「△」、3名以下である場合を「×」とした。これらの評価結果を表1〜8の「保湿性」の欄に示す。
【0075】
(塗布感評価)
各例に係る皮膚外用剤組成物の試料0.5gを10名のパネラーが手に取り、ハンドクリームを使用するように手に揉みこみ、塗布感(ベタつきのなさ及び肌への馴染み)を評価した。各パネラーに「塗布感が良い」、「塗布感が良くない」の二者択一で評価させ、10名中、「塗布感が良い」と回答したパネラーが10〜9名である場合が評価点5、8〜7名である場合が評価点4、6〜5名である場合が評価点3、4〜3名である場合が評価点2、2名以下である場合が評価点1とした。これらの評価結果を表1〜8の「塗布感」の欄に示す。
【0076】
(製剤安定性評価)
各例に係る皮膚外用剤組成物の試料30gをガラス製の容器に入れ、60℃で3日保存した。保存後の試料について10名のパネラーに安定性を評価させた。この評価に当たり、クリームが相分離を起こすと言う最悪の場合は勿論、相分離を起こすには至らないがクリームの外観がボソボソとした細かい凹凸を示している場合は製剤安定性が「悪い」と評価させ、これらの不具合が見られない場合は製剤安定性が「良い」と評価するよう、パネラーに周知させた。そしてパネラー10名中、「良い」と回答したパネラーが10〜8名である場合を「◎」、7〜6名である場合を「○」、5〜4名である場合を「△」、3名以下である場合を「×」とした。これらの評価結果を表1〜8の「製剤安定性」の欄に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
【表8】