【実施例】
【0021】
まず、本実施例に係る顔照合装置10の顔照合処理の概念について説明する。
図1は、顔照合装置10による顔照合処理の概念を説明するための説明図である。同図に示す顔照合装置10は、従来の顔照合装置のように「特定方向の照明」の影響を除去するだけではなく、照明方向及び照度が変動したとしても動的かつ適応的に照明変動の影響を除去しつつ顔照合処理を行う。
【0022】
具体的には、かかる顔照合装置10は、登録データの登録処理及び入力データを用いた照合処理に先だって、学習データを用いた学習処理を行う。この学習データには、照明変動ありの学習データと、照明変動なしの学習データとが含まれる。照明変動ありの学習データは、照明方向及び照度の異なる照明環境下で撮像された複数人の顔画像データである。照明変動なしの学習データは、照明変動ありの学習データを生成したのと同一の人物の顔画像データで均一な照明環境下で撮像したものを複数人分集めたものである。
【0023】
顔照合装置10は、照明変動ありの学習データと照明変動なしの学習データとを用いて、後述する照明影響基準データ13aを生成する。この照明影響基準データ13aは、顔画像における照明の影響度を算出する際の基準となるデータである。
【0024】
照明影響基準データ13aは、顔のパーツのうち、どこが照明の影響を受けやすく、どこが照明の影響を受けにくいかを示すものである。例えば、あごのライン等のパーツであれば、照明の影響があってもエッジ強度が変動するのみであり、エッジ自体は残るために個人の特徴を示すことができる。このため、あごのライン等のパーツは、照明の影響を比較的受けにくいパーツである。これに対し、鼻や口のように周囲のパーツとの画素値の差が小さいパーツは、照明によっては形状が不明瞭となり、個人の特徴を示すことが難しくなる場合がある。このため、鼻や口等は、照明の影響を比較的受けやすいパーツとなる。
【0025】
このようにして、学習段階において照明影響基準データ13aを生成したならば、顔照合装置10は、事前に登録された人物の顔画像そのもの又は顔画像の特徴量からなる登録データの入力を受け付け、登録データの複数の局所領域(区分した領域)における特徴量を算出する。また、学習データから生成した照明影響基準データ13aを用いて、各局所領域における特徴量が照明の影響によりどれだけ変動しているかを示す特徴変動率を算出する。
【0026】
次に、顔照合装置10は、被照合対象者の顔画像データからなる入力データを受け付けたならば、この入力データの複数の局所領域における特徴量を算出する。また、学習データから生成した照明影響基準データ13aを用いて、各局所領域の特徴量が照明の影響によりどれだけ変動しているかを示す特徴変動率を算出する。
【0027】
そして、この顔照合装置10は、登録データの特徴変動率と入力データの特徴変動率とを用いて各局所領域における領域重みを算出する。この領域重みは、特徴変動率が大きいほど(照明の影響が大きいほど)小さな値とする。
【0028】
このようにして領域重みを算出したならば、顔照合装置10は、登録データと入力データの対応する局所領域における特徴量の類似度を求め、求めた類似度に当該局所領域における領域重みを適用して重み付き類似度を算出し、この重み付き類似度を用いて登録データと入力データの照合処理を行う。例えば、かかる重み付き類似度の総和が所定のしきい値以上であれば同一人物であると判定し、しきい値未満であれば異なる人物であると判定することになる。
【0029】
このように、顔照合装置10は、顔画像における照明の影響度を算出する際の基準となる照明影響基準データ13aを学習データから生成し、登録データ及び入力データの各局所領域における特徴変動率を照明影響基準データ13aから算出し、特徴変動率に応じた重み付き類似度を用いた照合処理を行う。
【0030】
顔照合装置10は、照明方向及び照度の異なる種々の照明環境の下で撮像された複数人の顔画像データを学習データに用いることで、特定方向のみならず、多様な照明環境下において、顔の各パーツに対応する各局所領域が、どの程度照明の影響を受けやすいかを示す照明影響基準データ13aを生成するのである。
【0031】
この照明影響基準データ13aを用いて登録データ及び入力データの各局所領域における特徴変動率、すなわち、照明による影響の大きさを評価し、照明の影響の大きいパーツに対応する局所領域の重みを下げて照合を行うことにより、登録データ及び入力データにおける照明環境が不明であったとしても、動的かつ適応的に照明影響を低減することができる。
【0032】
次に、
図1に示した顔照合装置10の構成を
図2のブロック図を用いて説明する。
図2に示すように、この顔照合装置10は、画像入力受付部11、表示操作部12、記憶部13及び制御部14を有する。
【0033】
画像入力受付部11は、学習データとしての顔画像、登録データとしての登録人の顔画像及び入力データとしての被顔照合人の顔画像をそれぞれカメラやスキャナ等から受け付けるインタフェースである。表示操作部12は、タッチパネルディスプレイ、キーボードやマウス等のインタフェースである。
【0034】
記憶部13は、フラッシュメモリやハードディスク装置等からなる記憶デバイスであり、照明影響基準データ13a及び登録特徴データ13bを記憶する。
【0035】
照明影響基準データ13aは、学習データが入力された場合に生成されて記憶部13に格納される。登録特徴データ13bは、登録データの各局所領域の特徴量13c及び特徴変動率13dを含むデータであり、登録データが入力された場合に生成されて記憶部13に格納される。
【0036】
制御部14は、顔照合装置10を全体制御する制御部である。制御部14は、照明影響基準データ生成部14a、特徴量算出部14b、特徴変動率算出部14c、類似度算出部14d、領域重み算出部14e及び照合処理部14fを有する。
【0037】
照明影響基準データ生成部14aは、画像入力受付部11が学習データを受け付けた場合に、学習データから照明影響基準データ13aを生成し、記憶部13に格納する処理部である。
【0038】
特徴量算出部14bは、画像入力受付部11が登録データ又は入力データを受け付けた場合に、受け付けたデータの複数の局所領域について特徴量を算出する処理部である。
【0039】
特徴変動率算出部14cは、画像入力受付部11が登録データ又は入力データを受け付けた場合に、照明影響基準データ13aを用い、各局所領域の特徴量が照明の影響によりどれだけ変動しているかを示す特徴変動率を算出する処理部である。
【0040】
類似度算出部14dは、登録データと入力データとの対応する局所領域について特徴量の類似度を算出する処理部である。領域重み算出部14eは、登録データの各局所領域の特徴変動率と入力データの局所領域の特徴変動率とを用い、各局所領域について領域重みを算出する。領域重みは、特徴変動率が大きいほど、すなわち、照明の影響が大きいほど小さな値とする。
【0041】
照合処理部14fは、特徴変動率算出部14cにより算出された各局所領域の類似度に対し、領域重み算出部14eにより算出された各局所領域の領域重みをかけて各局所領域毎の重み付き類似度を算出し、この各局所領域毎の重み付き類似度を用いて登録データと入力データとの照合処理を行う処理部である。
【0042】
次に、照明影響基準データ13aの生成についてさらに説明する。
図3は、照明影響基準データ13aの生成について説明するための説明図である。照明影響基準データ13aには、照明変動ベクトル33、特徴変動係数行列32及び特徴量分布31が含まれる。照明影響基準データ生成部14aは、照明変動ありの学習データと、特徴変動なしの学習データとから、照明変動ベクトル33、特徴変動係数行列32及び特徴量分布31を生成するのである。
【0043】
照明影響基準データ生成部14aは、まず、照明変動ありの学習データを低解像度化する。例えば、縦80画素かつ横80画素の学習データでは、画素数「Q」の値は「80×80=6400」である。この学習データを縦10画素かつ横10画素の縮小データに低解像度化した場合には、縮小データの画素数「q」の値は「10×10=100」となる。低解像度化の具体的な手法としては、平滑化、画素値の平均、間引き等、任意の方法を用いることができる。
【0044】
このように、画素数「Q」の学習データを画素数「q」に低解像度化することにより、個人の特徴に対応する成分が減少し、照明の影響に対応する成分が残ることになる。従って、照明環境の異なるr枚の学習データについて、それぞれ縮小データを生成すると、それぞれの照明環境に対応するr枚の縮小データが得られる。
【0045】
照明影響基準データ生成部14aは、画素数qの縮小データr枚を用い、r行q列の画素値行列を生成する。この画素値行列では、1つの行におけるq個の要素は、1つの縮小データにおけるq個の画素の画素値である。
【0046】
照明影響基準データ生成部14aは、r行q列の画素値行列の共分散行列を求める。そして、この共分散行列の固有値を算出し、大きい順にk個の固有値を選択する。照明影響基準データ生成部14aは、選択した固有値に対応するk個の固有ベクトルを照明変動ベクトル33とする。なお、kの値としては任意の数を用いることができる。この照明変動ベクトル33は、照明環境の異なる複数の顔画像データから、照明環境に対応する照明パラメータを求める際の基準となる照明環境基準データとして使用される。ここで、照明パラメータは撮像画像から得られた照明の方向を示す。
【0047】
この照明変動ベクトル33により、縮小データの照明環境に対応する照明パラメータを得ることができる。具体的には、照明影響基準データ生成部14aは、縮小データのq個の画素値を1行q列の行列とし、照明変動ベクトル33との積を求めることで、当該縮小データの照明パラメータXを算出する。この照明パラメータXの算出をr枚の縮小データについて行うことにより、r個の照明パラメータXが得られる。
【0048】
また、照明影響基準データ生成部14aは、学習時には低解像度化を行う前の照明変動ありの学習データにおけるn個の局所領域P1〜Pnの特徴量を算出する。特徴量は、m次元であるものとする。例えば、1つの局所領域について、その周囲に5×5のサンプル点を設定し、各サンプル点のx方向微分値とy方向微分値をとる場合には、m=5×5×2=50次元となる。
【0049】
照明影響基準データ生成部14aは、学習時には、r枚の学習データのそれぞれに対し、局所領域P1〜Pnの特徴量の算出を行う。そして、局所領域P1〜Pnのそれぞれについて個人別の平均特徴量を算出する。そして、r枚の学習データのそれぞれについて、局所領域P1〜Pnの特徴量と、対応する個人の当該局所領域の平均特徴量とのずれを特徴変動量Y1〜Ynとして算出する。この結果、局所領域P1〜Pnの特徴変動量Y1〜Ynが、r枚分得られる。なお、特徴量がm次元であるので、特徴変動量Y1〜Ynもm次元となる。
【0050】
照明影響基準データ生成部14aは、同一の学習データから得られた特徴変動量Y1〜Ynと、照明パラメータXとを用い、
Y1=A1X,・・・Yn=AnX
により、係数行列A1,・・・Anを算出する。係数行列A1,・・・Anは、m行k列の行列であり、局所領域P1〜Pnに対応して係数行列A1〜Anが得られる。この係数行列A1〜Anが特徴変動係数行列32であり、照明パラメータに対応する照明環境下において局所領域の特徴変動量を求める際の基準となる特徴変動基準データとして使用される。
【0051】
さらに、照明影響基準データ生成部14aは、照明変動なしの学習データから特徴量分布を算出する。具体的には、照明影響基準データ生成部14aは、均一な照明環境下で撮像された照明変動なしの複数人の学習データから、各局所領域の特徴量を求め、局所領域ごとに特徴量の分布を求める。そして、特徴量の各次元の分布幅を合計し、その局所領域の特徴量分布31とする。
【0052】
顔照合装置10は、特徴量分布31を登録データ及び入力データの特徴変動率の算出に用いる。
図4は、特徴量分布31と特徴変動量について説明するための説明図である。
図4(a)は、特徴量分布のうち、1次元目と2次元目の分布を示している。
図4(a)では、照明変動がない場合の特徴量は、1次元目の分布の幅(変動量)がL1であり、2次元目の分布の幅がL2である。
図4(a)では2次元分を図示したが、特徴量の次元数mだけの分布の幅が存在する。照明変動がある場合の特徴量は、
図4(b)に示す様に、1次元目の分布の幅(変動量)がl1であり、2次元目の分布の幅がl2である。但し、l1、l2は照明条件により異なる。この特徴変動量の算出は、後述する特徴変動率算出部14c内部の特徴変動量算出部53により行う。
【0053】
次に、
図2に示した照明影響基準データ生成部14aの詳細について説明する。
図5は、
図2に示した照明影響基準データ生成部14aの詳細について説明するための説明図である。
図5に示すように照明影響基準データ生成部14aは、その内部に特徴量算出部41、特徴量分布算出部42、特徴変動量算出部43、低解像度化処理部44、照明変動ベクトル算出部45、照明パラメータ算出部46及び特徴変動係数行列算出部47を有する。
【0054】
特徴量算出部41は、学習データの複数の局所領域について特徴量を算出する処理部である。特徴量算出部41は、照明変動なしの学習データの各局所領域について特徴量を算出した場合には、算出した特徴量を特徴量分布算出部42に出力する。また、特徴量算出部41は、照明変動ありの学習データの各局所領域について特徴量を算出した場合には、算出した特徴量を特徴変動量算出部43に出力する。
【0055】
特徴量分布算出部42は、特徴量算出部41が照明変動なしの複数人の学習データから算出した特徴量の分布を局所領域ごとに求める。そして、特徴量の各次元の分布幅を合計し、その局所領域の特徴量分布31とする。
【0056】
特徴変動量算出部43は、特徴量算出部41が照明変動ありの複数の学習データから算出した特徴量を用い、各局所領域の個人別の平均特徴量を算出する。そして、特徴変動量算出部43は、照明変動ありの複数の画像データについて、各局所領域の特徴量の個人別の平均特徴量からのずれを特徴変動量Yとして算出し、特徴変動係数行列算出部47に出力する。
【0057】
低解像度化処理部44は、照明変動ありの学習データを低解像度化する処理部である。低解像度化処理部44は、照明変動ありの学習データを低解像度化した縮小データを照明変動ベクトル算出部45及び照明パラメータ算出部46に出力する。
【0058】
照明変動ベクトル算出部45は、画素数qの縮小データr枚を用い、r行q列の画素値行列を生成し、画素値行列の共分散行列を求める。そして、この共分散行列の固有値を大きい順にk個選択し、選択した固有値に対応するk個の固有ベクトルを照明変動ベクトル33とする。照明変動ベクトル算出部45は、照明変動ベクトル33を照明パラメータ算出部46に出力する。
【0059】
照明パラメータ算出部46は、縮小データのq個の画素値を1行q列の行列とし、照明変動ベクトル33との積を求めることで、当該縮小データの照明パラメータXを算出する。この照明パラメータXの算出をr枚の縮小データについて行うことにより、r個の照明パラメータXが得られる。照明パラメータ算出部46は、r個の照明パラメータXを特徴変動係数行列算出部47に出力する。
【0060】
特徴変動係数行列算出部47は、特徴変動量算出部43により算出された特徴変動量Yと、照明パラメータ算出部46により算出された照明パラメータXとを用い、
Y1=A1X,・・・Yn=AnX
により、係数行列A1,・・・Anを算出する。係数行列A1,・・・Anは、m行k列の行列であり、局所領域P1〜Pnに対応して係数行列A1〜Anが得られる。特徴変動係数行列算出部47は、この係数行列A1〜Anを特徴変動係数行列32とする。
【0061】
照明影響基準データ生成部14aは、特徴量分布算出部42が算出した特徴量分布31、特徴変動係数行列算出部47が算出した特徴変動係数行列32、並びに照明変動ベクトル算出部45が算出した照明変動ベクトル33を照明影響基準データ13aとして記憶部13に格納する。
【0062】
次に、登録特徴データ13bに含まれる特徴量13c及び特徴変動率13dの生成についてさらに説明する。
図6は、特徴量13c及び特徴変動率13dの生成について説明するための説明図である。
【0063】
特徴量算出部14bは、登録データから局所領域P1〜Pnの特徴量13cを算出する。特徴変動率算出部14cは、登録データから局所領域P1〜Pnの特徴変動率13dを算出する。
【0064】
特徴変動率算出部14cは、まず、登録データを低解像度化する。例えば、縦80画素かつ横80画素の登録データでは、画素数「Q」の値は「80×80=6400」である。この登録データを縦10画素かつ横10画素の縮小データに低解像度化した場合には、縮小データの画素数「q」の値は「10×10=100」となる。低解像度化の具体的な手法としては、平滑化、画素値の平均、間引き等、任意の方法を用いることができる。
【0065】
このように、画素数「Q」の登録データを画素数「q」に低解像度化することにより、個人の特徴に対応する成分が減少し、照明の影響に対応する成分が残ることになる。
【0066】
特徴変動率算出部14cは、縮小データのq個の画素値を1行q列の行列とし、照明変動ベクトル33との積を求めることで、当該縮小データの照明パラメータXを算出する。
【0067】
特徴変動率算出部14cは、照明パラメータXと特徴変動係数行列32による線形変換、すなわち、
Y=AX
により、特徴変動量Yを算出する。特徴変動係数行列32は、局所領域P1〜Pnに対応して係数行列A1〜Anを有する。係数行列A1〜Anは、それぞれm行k列の行列である。照明パラメータXと係数行列A1〜Anとの積を求めることで、局所領域P1〜Pnに対応する特徴変動量Y1〜Ynを得ることができる。
【0068】
特徴変動率算出部14cは、特徴変動量Yの各次元の値の合計を特徴量分布31で除算することにより、特徴変動率rYを算出する。特徴変動率rYは、局所領域ごとに求められる。特徴変動率算出部14cは、局所領域P1〜Pnに対応する特徴変動率rY1〜rYnを特徴変動率13dとする。
【0069】
次に、登録及び照合の詳細について説明する。
図7は、登録及び照合の詳細について説明するための説明図である。
図7に示すように、特徴量算出部14bは、登録データから局所領域の特徴量を算出した場合には、算出した特徴量を登録特徴データ13bの特徴量13cとする。また、特徴量算出部14bは、入力データから局所領域の特徴量を算出した場合には、算出した特徴量を類似度算出部14dに出力する。
【0070】
特徴変動率算出部14cは、登録データから局所領域の特徴変動率を算出した場合には、算出した局所領域の特徴変動率を登録特徴データ13bの特徴変動率13dとする。また、特徴変動率算出部14cは、入力データから局所領域の特徴変動率を算出した場合には、算出した局所領域の特徴変動率を領域重み算出部14eに出力する。
【0071】
ここで、特徴変動率は、照明変動が存在する場合に、特徴変動量の各次元の値の合計を特徴量分布で除算することにより得られる。
図4(a)では特徴量の分布は1次元目がL1で2次元目がL2であり、
図4(b)では特徴変動量の1次元目がl1、2次元目がl2である。この場合、特徴変動率rYは、
rY=(l1+l2+・・・+ln)/(L1+L2+・・・+L50)
により求められる。
【0072】
類似度算出部14dは、特徴量算出部14bにより入力データの特徴量が出力された場合に、登録特徴データ13bの特徴量13cとの類似度を局所領域ごとに算出する。類似度算出部14dは、算出した局所領域ごとの類似度を照合処理部14fに出力する。
【0073】
領域重み算出部14eは、特徴変動率算出部14cにより入力データの特徴変動率が出力された場合に、登録特徴データ13bの特徴変動率13dと入力データの特徴変動率とを用いて領域重みを算出し、照合処理部14fに出力する。
【0074】
照合処理部14fは、類似度算出部14dにより算出された局所領域毎の類似度に対し、領域重み算出部14eにより算出された局所領域毎の重みをかけて重み付き類似度を算出し、この重み付き類似度を用いて登録データと入力データと照合処理を行う。具体的には、照合処理部14fは、重み付き類似度の総和を算出し、重み付き類似度の総和が閾値以上である場合に、登録データと入力データとが同一人物であると判定する。
【0075】
特徴変動率算出部14cは、その内部に低解像度化処理部51、照明パラメータ算出部52、特徴変動量算出部53及び変動率算出処理部54を有する。低解像度化処理部51は、登録データ及び入力データを低解像度化する処理部である。低解像度化処理部51は、低解像度化して得た縮小データを照明パラメータ算出部52に出力する。
【0076】
照明パラメータ算出部52は、縮小データのq個の画素値を1行q列の行列とし、記憶部13から読み出した照明変動ベクトル33との積を求めることで、当該縮小データの照明パラメータXを算出する。照明パラメータ算出部52は、算出した照明パラメータXを特徴変動量算出部53に出力する。
【0077】
特徴変動量算出部53は、照明パラメータXと記憶部13から読み出した特徴変動係数行列32による線形変換により、特徴変動量Yを算出する処理部である。特徴変動量算出部53は、算出した特徴変動量Yを変動率算出処理部54に出力する。変動率算出処理部54は、特徴変動量Yの各次元の値の合計を特徴量分布31で除算することにより、特徴変動率rYを算出する。
【0078】
次に、領域重みの算出について説明する。領域重みは、特徴変動率の値によって単調減少する関数であれば、ロジスティックシグモイド関数、2次関数又は3次関数等、任意の関数を用いることができる。
【0079】
図8は、ロジスティックシグモイド関数を領域重みの算出に用いる場合について説明するための説明図である。ロジスティックシグモイド関数は、(x,y)=(0,0.5)の点で点対称な関数であり、特徴変動率をx軸、領域重みをy軸とすれば、特徴変動率が大きくなるほど領域重みは小さくなる。
【0080】
次に、顔照合装置10の学習及び登録に係る処理手順について説明する。
図9は、顔照合装置10の学習及び登録に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0081】
まず、画像入力受付部11は、学習データを受け付ける(ステップS101)。照明影響基準データ生成部14aは、学習データを用いて照明影響基準データ生成処理を行い(ステップS102)、生成した照明影響基準データ13aを記憶部13に格納する(ステップS103)。
【0082】
そして、画像入力受付部11が登録データの入力を受け付けると(ステップS104)、特徴量算出部14bは、登録データの複数の局所領域について特徴量を算出する(ステップS105)。
【0083】
また、特徴変動率算出部14cは、画像入力受付部11が受け付けた登録データと、照明影響基準データ13aとを用い、特徴変動率を算出する処理を行う(ステップS106)。その後、顔照合装置10は、ステップS105で算出した特徴量と、ステップS106で算出した特徴変動率とを登録特徴データ13bとして記憶部13に格納し(ステップS107)、処理を終了する。
【0084】
次に、
図9にステップS102として示した照明影響基準データ生成処理について説明する。
図10は、照明影響基準データ生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0085】
照明影響基準データ生成部14aの特徴量算出部41は、まず照明変動なしの学習データの複数の局所領域について特徴量を算出する(ステップS201)。
【0086】
特徴量分布算出部42は、特徴量算出部41が照明変動なしの複数人の学習データから算出した特徴量の分布を局所領域ごとに求め、特徴量の各次元の分布幅を合計し、特徴量分布31とする(ステップS202)。
【0087】
特徴量算出部41は、照明変動ありの学習データの複数の局所領域について特徴量を算出する(ステップS203)。特徴変動量算出部43は、特徴量算出部41が照明変動ありの複数の学習データから算出した特徴量を用い、各局所領域の個人別の平均特徴量を算出し、各局所領域の特徴量の個人別の平均特徴量からのずれを特徴変動量Yとして算出する(ステップS204)。
【0088】
低解像度化処理部44は、照明変動ありの学習データを低解像度化する(ステップS205)。照明変動ベクトル算出部45は、画素数qの縮小データr枚を用い、r行q列の画素値行列を生成し、画素値行列の共分散行列を求める。そして、この共分散行列の固有値を大きい順にk個選択し、選択した固有値に対応するk個の固有ベクトルを照明変動ベクトル33として算出する(ステップS206)。
【0089】
照明パラメータ算出部46は、縮小データのq個の画素値を1行q列の行列とし、照明変動ベクトル33との積を求めることで、当該縮小データの照明パラメータXを算出する(ステップS207)。
【0090】
特徴変動係数行列算出部47は、ステップS204で算出された特徴変動量Yと、ステップS207で算出された照明パラメータXとを用い、
Y=AX
により、特徴変動係数行列32を求める。
【0091】
照明影響基準データ生成部14aは、ステップS202で算出された特徴量分布31、ステップS208で算出された特徴変動係数行列32、並びにステップS206で算出された照明変動ベクトル33を照明影響基準データ13aとして(ステップS209)、処理を終了する。
【0092】
次に、
図9にステップS106として示した特徴変動率算出処理について説明する。
図11は、特徴変動率算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0093】
特徴変動率算出部14cの低解像度化処理部51は、登録データ又は入力データを低解像度化し、縮小データを生成する処理を行う(ステップS301)。照明パラメータ算出部52は、縮小データのq個の画素値を1行q列の行列とし、記憶部13から読み出した照明変動ベクトル33との積を求めることで、当該縮小データの照明パラメータXを算出する(ステップS302)。
【0094】
特徴変動量算出部53は、照明パラメータXと記憶部13から読み出した特徴変動係数行列32による線形変換により、特徴変動量Yを算出する(ステップS303)。変動率算出処理部54は、特徴変動量Yの各次元の値の合計を特徴量分布31で除算することにより、特徴変動率rYを算出し(ステップS304)、処理を終了する。
【0095】
次に、顔照合装置10の照合に係る処理手順について説明する。
図12は、顔照合装置10の照合に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0096】
まず、画像入力受付部11は、入力データを受け付ける(ステップS401)。特徴量算出部14bは、入力データから複数の局所領域について特徴量を算出する(ステップS402)。
【0097】
また、特徴変動率算出部14cは、画像入力受付部11が受け付けた入力データと、照明影響基準データ13aとを用い、特徴変動率を算出する特徴変動率算出処理を行う(ステップS403)。この特徴変動率算出処理としては、
図11に示した処理を用いればよい。
【0098】
その後、顔照合装置10は、入力データと照合処理する登録特徴データ13bを選択する(ステップS404)。領域重み算出部14eは、各局所領域について、選択した登録特徴データ13bの特徴変動率と、入力データの特徴変動率とを比較し、特徴変動率の大きい方を選択する(ステップS405)。領域重み算出部14eは、選択した特徴変動率により各局所領域の領域重みを算出する(ステップS406)。
【0099】
類似度算出部14dは、各局所領域について、選択した登録特徴データ13bの特徴量と、入力データの特徴量との類似度を算出する(ステップS407)。照合処理部14fは、ステップS407で算出された類似度に対し、ステップS406で算出された領域重みをかけて重み付き類似度を算出し、重み付き類似度を合計する(ステップS408)。
【0100】
照合処理部14fは、合計した重み付き類似度(総和類似度)が閾値以上であるならば(ステップS409;Yes)、選択した登録特徴データ13bと入力データとが同一人物のものであると判定し、選択した登録特徴データ13bに関する情報(氏名等)を照合結果として出力して(ステップS412)、処理を終了する。
【0101】
総和類似度が閾値未満であるならば(ステップS409;No)、照合処理部14fは、全ての登録特徴データ13bを選択済であるか否かを判定する(ステップS410)。
【0102】
未選択の登録特徴データ13bが残っているならば(ステップS410;No)、照合処理部14fは、未選択の登録特徴データ13bから入力データと照合処理する登録特徴データ13bを選択する(ステップS404)。全ての登録特徴データ13bを選択済であるならば(ステップS410;Yes)、照合処理部14fは、「該当者無し」を照合結果として出力して、処理を終了する。
【0103】
次に、学習データの撮像について説明する。照明変動ありの学習データを撮像する場合には、照明方向及び照度の異なる照明環境下で人物の顔を撮像する。
図13は、学習データの撮像について説明するための説明図である。
【0104】
図13に示すように、被写体となる人物の周囲に複数のLED(Light Emitting Diode)照明71を設置し、被写体となる人物の正面に撮像装置61を設ける。撮像装置61は、撮像制御装置60により撮像タイミングを制御され、撮像結果を撮像制御装置60に送信する。
【0105】
撮像制御装置60は、照明制御装置70と接続され、照明制御装置70に対して照明制御指示を送信可能である。照明制御装置70は、LED照明71の点灯状態を個別に制御可能することで、照明制御指示に応じた照明環境を実現する。
【0106】
このため、撮像制御装置60は、LED照明71の点灯状態の違いにより、照明方向及び照度の異なる多様な照明環境を仮想的に実現し、各照明環境下で学習データの撮像を行うことできる。
【0107】
次に、
図2に示した顔照合装置10の各機能部をプログラムにより実現する場合について説明する。
図14は、
図2に示した顔照合装置の各機能部をプログラムにより実現する場合の説明図である。同図に示すように、
図2に示した顔照合装置10は、CPU111(メインメモリを含む)、フラッシュメモリ112、ディスプレイユニット113、操作受付ユニット114をバス119で接続した構成となる。
【0108】
ここで、このフラッシュメモリ112に顔照合プログラム130を記憶しておき、CPU111は、この顔照合プログラム130をフラッシュメモリ112から読み出して図示しないメインメモリに展開し、顔照合プログラム130が有するプロセスを実行する。
【0109】
具体的には、かかる顔照合プログラム130により、照明影響基準データ生成プロセス120a、特徴量算出プロセス120b、特徴変動率算出プロセス120c、類似度算出プロセス120d、領域重み算出プロセス120e及び照合処理プロセス120fが生成される。
【0110】
この照明影響基準データ生成プロセス120aが
図2に示した照明影響基準データ生成部14aに対応し、特徴量算出プロセス120bが
図2に示した特徴量算出部14bに対応し、特徴変動率算出プロセス120cが
図2に示した特徴変動率算出部14cに対応し、類似度算出プロセス120dが
図2に示した類似度算出部14dに対応し、領域重み算出プロセス120eが
図2に示した領域重み算出部14eに対応し、照合処理プロセス120fが
図2に示した及び照合処理部14fに対応する。
【0111】
上述してきたように、本実施例に係る顔照合装置10は、顔画像における照明の影響度を算出する際の基準となる照明影響基準データ13aを学習データから生成し、登録データ及び入力データの各局所領域における特徴変動率を照明影響基準データ13aから算出し、特徴変動率に応じた重み付き類似度により照合処理を行う。このため、登録データ及び入力データにおける照明環境が不明であったとしても、動的かつ適応的に照明影響を低減することができる。
【0112】
なお、上記実施例では、いずれかの登録特徴データと入力データとの総和類似度が閾値以上となった場合には報知を行なって処理を終了し、いずれの登録特徴データとの総和類似度も閾値未満であった場合にも報知を行なうこととしたが、照合結果をどのように出力するかは適宜設定可能である。
【0113】
例えば、全ての登録特徴データについて総和類似度を算出し、総和類似度が最大となる登録特徴データに関する情報を照合結果として出力することとしてもよい。また、総和類似度が閾値を超えた登録特徴データを全て照合結果として出力してもよい。また、いずれの登録特徴データとの総和類似度も閾値未満であった場合には、報知を行なわなくともよい。
【0114】
また、上記実施例では、特徴変動率によって重み付けを行った重み付き類似度を全て合計した総和類似度に基づいて照合を行う場合について説明を行ったが、特徴変動率の小さい局所領域の類似度を選択的に用いて照合処理を行ってもよい。
【0115】
また、上記実施例では、入力データと登録データの双方について特徴変動率を求め、その一方を類似度に対する重みの算出に使用する場合について説明を行ったが、入力データの特徴変動率と入力データの特徴変動率の双方を用いて類似度に対する重みを算出してもよい。また、入力データ又は登録データの一方についてのみ特徴変動率を算出し、類似度に対する重みを算出してもよい。例えば、登録データについては均一な照明環境下で撮像できるならば、入力データについてのみ特徴変動率を算出し、類似度に対する重みを算出すればよい。