(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
〔PVA系樹脂(A)〕
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
PVA系樹脂(A)は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0011】
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)の平均重合度(JIS K6726に準拠)は、その用途によって適宜選択すればよいが、通常、200〜4000であり、特に400〜3500、さらに500〜3000のものが好適に用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に大きすぎると、水溶液として使用した場合に、その粘度が高くなりすぎ、基材への塗工が困難になるなど、各種工程への適用が難しくなる傾向がある。
また、PVA系樹脂(A)の4重量%水溶液粘度は、通常1.5〜100mPa・sであり、好ましくは4〜80mPa・s、更に好ましくは5〜70mPa・sである。かかる粘度が低すぎると耐水性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が上昇し、取り扱いや製造が困難となる傾向がある。
なお、本明細書において、PVA系樹脂(A)の4重量%水溶液粘度は、JIS K6726に準拠して測定した20℃における粘度である。
【0012】
また、本発明に用いられるPVA系樹脂(A)のケン化度は、通常、80〜100モル%であり、さらには85〜99.9モル%、特には90〜99.8モル%ものが好適に用いられる。かかるケン化度が低い場合には、水溶液とすることが困難になったり、水溶液の安定性が低下したり、得られた架橋高分子の耐水性が不充分となる傾向がある。
【0013】
また、通常のPVA系樹脂の場合、主鎖の結合様式は1,3−ジオール結合が主であり、1,2−ジオール結合の含有量は1.5〜1.7モル%程度であるが、ビニルエステル系モノマーを重合する際の重合温度を高温にすることによって、その含有量を1.7〜3.5モル%としたものを使用することも可能である。
【0014】
また、PVA系樹脂には、ケン化時に用いるアルカリ触媒に由来する酢酸のアルカリ金属塩が含まれているが、PVA系樹脂に対して1.0重量%以下が好ましく、更に0.5重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。かかる金属塩の含有量が多すぎると経時着色の原因となる傾向がある。
かかる金属塩の含有量の調整方法としては、例えば、ケン化で用いる時のアルカリ触媒の量を調節したり、エタノールやメタノールなどのアルコールでPVA系樹脂を洗浄する方法が挙げられる。
【0015】
また、本発明では、PVA系樹脂(A)として、ポリビニルエステル系樹脂の製造時に各種単量体を共重合させ、これをケン化して得られたものや、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入した各種変性PVA系樹脂を用いることができる。
【0016】
ビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられる単量体としては、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
【0017】
また、後反応によって官能基が導入されたPVA系樹脂としては、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基を有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVAと反応させて得られたものなどを挙げることができる。
かかる変性PVA系樹脂中の変性種、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きくことなるため一概には言えないが、通常、0.1〜20モル%であり、特に1〜10モル%の範囲が好ましく用いられる。
【0018】
これらの各種変性PVA系樹脂の中でも、本発明においては、架橋剤との反応性に優れるカルボニル基を有するPVA系樹脂が好ましい。かかるカルボニル基含有PVA系樹脂とは、カルボニル基を有するビニル系単量体と脂肪族ビニルエステル単量体とを共重合して得た重合体のケン化物、あるいはPVA系樹脂にカルボニル化合物を付加させた付加物であり、例えばジアセトンアクリルアミド構造単位含有PVA系樹脂、ジアセトン(メタ)アクリレート構造単位含有PVA系樹脂、アセト酢酸アリル構造単位含有PVA系樹脂、アセトアセチル基含有PVA系樹脂などが挙げられる。中でも高い耐水性が得られることからアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びジアセトンアクリルアミド構造単位含有PVA系樹脂が好ましい。さらに、未変性PVAや各種の変性PVA系樹脂を2種以上併用することもできる。
【0019】
まず、アセトアセチル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVAという)(A1)について、詳しく説明する。
本発明で用いるAA化PVA(A1)は、PVA系樹脂の主鎖に直接、あるいは酸素原子や連結基を介してアセトアセチル基(AA基)が結合したもので、例えば一般式(1)で表されるAA基を有する構造単位を含むポリビニルアルコール系樹脂が上げられる。なお、かかるAA化PVA(A1)は、AA基を有する構造単位以外にビニルアルコール構造単位を有し、更に未ケン化部分のビニルエステル構造単位を有する。
【化1】
【0020】
かかるAA化PVA(A1)を得るには、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂(A1)が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましく、かかる方法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
前記のビニルエステル系モノマーの重合体および共重合体をケン化して得られたPVA系樹脂とジケテンとの反応によるアセトアセチル基の導入には、PVA系樹脂とガス状或いは液状のジケテンを直接反応させても良いし、酢酸などの有機酸をPVA系樹脂に予め吸着吸蔵せしめた後、不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを噴霧、反応するか、またはPVA系樹脂に有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応する等の方法が用いられる。
【0022】
上記の反応を実施する際の反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置であれば充分である。例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダーを用いることができる。
【0023】
かくして得られるAA化PVA(A1)の平均重合度(JIS K6726に準拠)は、1000〜4000、さらには2000〜3000が好ましく、かかる平均重合度が小さすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られない場合があり、逆に大きすぎると、水溶液の粘度が高くなりすぎ、基材への塗工や、各種工程への適用が困難になる場合があるため好ましくない。
【0024】
また、AA化PVA(A1)の4重量%水溶液粘度は、通常1〜150mPa・sであり、好ましくは20〜100mPa・s、更に好ましくは30〜80mPa・sである。かかる粘度が低すぎると耐水性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が上昇し、取り扱いや製造が困難となる傾向がある。
【0025】
また、本発明のAA化PVA(A1)のケン化度は、通常、80〜100モル%、さらには、92〜99モル%、特には、95〜99モル%が好ましく、かかるケン化度が低い場合には水溶性が低下する場合があるため好ましくない。
【0026】
また、AA化PVA(A1)中のアセトアセチル基含有量(以下AA化度と略記する。)は、通常、0.1〜20モル%であり、さらには0.2〜15モル%、特には0.3〜10モル%であるものが一般的に広く用いられる。かかる含有量が少なすぎると、十分な耐水性が不充分となったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液の安定性が低下する傾向がある。
【0027】
また、本発明のAA化PVA(A1)には、製造工程で使用あるいは副生した酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩(主として、ケン化触媒として用いたアルカリ金属水酸化物とポリ酢酸ビニルのケン化によって生成した酢酸との反応物等に由来)、酢酸などの有機酸(PVA系樹脂にアセト酢酸エステル基を導入する際の、ジケテンとの反応時にPVAに吸蔵させた有機酸等に由来)、メタノール、酢酸メチルなどの有機溶剤(PVA系樹脂の反応溶剤、AA化PVA製造時の洗浄溶剤等に由来)が一部残存していても差し支えない。
【0028】
次に、DAAA−PVA(A2)について詳しく説明する。
本発明で用いるDAAA−PVA(A2)は、PVA系樹脂にジアセトンアクリルアミド構造単位を導入したもので、例えば一般式(2)で表される構造単位を含むポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。かかるDAAA−PVA(A2)を得るには、ビニルエステル系モノマーとジアセトンアクリルアミドの共重合体をケン化する方法が好ましく用いられる。
【化2】
【0029】
上記の共重合に使用するビニルエステル系モノマーとしては、PVA系樹脂(A)を製造する際に用いられるビニルエステル系モノマーと同様のものが挙げられ、中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0030】
かかるビニルエステル系モノマーとジアセトンアクリルアミドとの共重合に当たっては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられる。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜150℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
【0031】
得られた共重合体は次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては上記で得られた共重合体をアルコール等の溶媒に溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。代表的な溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
【0032】
また、本発明で用いられるDAAA−PVA(A2)は、本発明の効果を阻害しない範囲でビニルエステル系モノマーまたはジアセトンアクリルアミドと共重合可能なモノマーを共重合したものであってもよく、かかる共重合モノマーとしては、PVA系樹脂(A)の原料PVA製造の際に用いた共重合モノマー等を挙げることができる。
【0033】
かくして得られるDAAA−PVA(A2)の平均重合度(JIS K6726に準拠)は、300〜4000、さらには400〜3500、特には1000〜3000が好ましく、かかる平均重合度が小さすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られない場合があり、逆に大きすぎると、水溶液の粘度が高くなりすぎ、基材への塗工や、各種工程への適用が困難になる場合があるため好ましくない。
【0034】
また、DAAA−PVA(A2)の4重量%水溶液粘度は、通常1〜100mPa・sであり、好ましくは10〜80mPa・s、更に好ましくは15〜50mPa・sである。かかる粘度が低すぎると耐水性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が上昇し、取り扱いや製造が困難となる傾向がある。
【0035】
また、本発明のDAAA−PVA(A2)のケン化度は、通常、80〜100モル%、さらには、90〜99モル%、特には、95〜99モル%が好ましく、かかるケン化度が低い場合には水溶性が低下する場合があるため好ましくない。
【0036】
また、本発明のDAAA−PVA(A2)中のジアセトンアクリルアミド構造単位の含有量(以下DAAA化度と略記する。)は0.1〜20モル%、さらには0.2〜15モル%、特には0.3〜10モル%であることが好ましく、かかる含有量が少なすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られない場合があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液の安定性が低下する場合があるため好ましくない。
【0037】
〔架橋剤(B)〕
次に、本発明で用いられる架橋剤(B)について説明する。
本発明に用いられる架橋剤としては、PVA系樹脂の架橋剤として公知であるものを用いることができ、具体的には、該架橋剤としては、有機系架橋剤や無機系架橋剤が挙げられ、かかる有機系架橋剤としてはアルデヒド系化合物[ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルジアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸の金属塩(グリオキシル酸ナトリウム、グリオキシル酸カルシウム等)等]、アミノ樹脂(尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン樹脂等)、エポキシ系化合物、アミン系化合物(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、1,3―ビスアミノシクロヘキサン、ポリオキシアルキレン型ジアミン又はポリアミン等)、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物(アジピン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、ポリヒドラジド等)、多価カルボン酸又は酸無水物、ポリイソシアネート、ブロックイソシアネートなどが挙げられる。
【0038】
また、無機系架橋剤としては、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ砂等)、ジルコニウム化合物(ハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩)、チタニウム化合物(テトラアルコキシチタネート等)、アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等)、リン化合物(亜リン酸エステル、ビスフェノールA変性ポリリン酸等)、アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物などが挙げられる。
なお、本発明においては、各種の架橋剤を併用することも可能である。
【0039】
上記の架橋剤(B)の中でもAA化PVA(A1)に対しては、ヒドラジン化合物やグリオキシル酸の金属塩が好ましく用いられる。またDAAA−PVA(A2)に対しては、ヒドラジン化合物が好適に用いられる。
【0040】
かかる架橋剤(B)の使用量は、得られる反応物に求められる耐水性、架橋速度、などによって適宜選択することが可能であるが、通常は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.5〜30重量部、特に1〜25重量部、さらに2〜20重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる架橋剤(B)の配合量が少なすぎると、架橋構造体の耐水性が低下したり、所望の架橋速度が得られなく傾向があり、また、その配合量が多すぎると、反応速度が速くなりすぎ、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)を混合した水溶液のポットライフが極めて短くなり、これを塗工中に増粘、ゲル化してしまう場合がある。
【0041】
〔キレート化剤(D)〕
次に、本発明で用いられるキレート化剤(D)について説明する。
本発明においては、キレート化剤(D)としては公知のキレート化剤を使用することができ、かかるキレート化剤(D)として代表的なものを例示すると、シュウ酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸(EGTA)、t−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸一水和物(CDTA)、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(EDTA−OH)、ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(DHEG)、2−ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、イミノジ酢酸(IDA)、トリエチレン4アミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)などのアミノカルボン酸系化合物;ヒドロキシエチリデンビスホスホン酸、ニトリトトリス(メチレンホスホン酸)などのホスホン酸系化合物;グルコン酸等を挙げることができる。
中でも、アミノカルボン酸系化合物が好ましく、更にエチレンジアミン4酢酸系化合物、t−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸系化合物、ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸が好ましく用いられる。
【0042】
かかるキレート化剤(D)の使用量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して通常は0.1〜200重量部であり、特に0.5〜100重量部、さらに1〜50重量部の範囲が好ましく用いられる。かかるキレート化剤(D)の配合量が少なすぎると、十分な効果が得られなくなる傾向があり、逆に多すぎると、着色を増大させる場合がある。
【0043】
〔反応生成物(C)および樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)とが反応して得られた反応生成物(C)を主成分としこれに、キレート化剤(D)を含有するものであるが、反応生成物(C)とした後、キレート化剤(D)を均一に混合することは困難である場合もあることから、通常は、反応前のPVA系樹脂(A)あるいは架橋剤(B)の少なくとも一方にキレート化剤(D)を配合し、その後、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)とを混合して反応させることによって反応生成物(C)とキレート化剤(D)とを含有する樹脂組成物が得る方法が採用される。かかる方法によって得られる本発明の樹脂組成物は、反応生成物(C)中にキレート化剤(D)が均一に分散された状態で存在する。
【0044】
また、PVA系樹脂(A)は水溶性樹脂であり、架橋剤(B)として水溶性のものを使用することにより、水性媒体中でこれらを混合する方法を用いることが可能である。
かかる混合方法としては、(i)PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)をともに水に投入して溶解する方法、(ii)PVA系樹脂(A)の水溶液に架橋剤(B)を添加して混合する方法、(iii)予めPVA系樹脂(A)と架橋剤(B)を別々に溶解したものを混合する方法、などが挙げられる。しかしながら、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)との架橋反応は、低温で速やかに進行するため、(i)の方法は、PVA系樹脂が完全に溶解しないうちに架橋ゲル化する可能性があり、(ii)の方法の場合でも、架橋剤(B)が十分に溶液中に溶解、分散されない可能性があるため、(iii)の方法が好ましく、その場合においても、両水溶液を混合した後、速やかにこれを使用するか、一方の水溶液を塗工、注型、浸漬したのちに、他方の水溶液と接触させることが望ましい。
この場合、キレート化剤(D)はPVA系樹脂(A)の水溶液、および架橋剤(B)の水溶液のいずれか、あるいは両方に予め混合しておけばよい。
【0045】
ここで用いられるPVA系樹脂(A)水溶液の濃度は、通常0.05〜40重量%であり、さらには0.1〜30重量%、特には1〜20重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が大きすぎると粘度が高くなりすぎ、基材への塗工や、各種工程への適用が困難になる場合があるため好ましくない。また、濃度が小さすぎると樹脂量が不足したり、乾燥に長時間を要したりするため好ましくない。
また、架橋剤(B)水溶液の濃度は、使用する架橋剤の溶解度によっても異なるため、一概には言えないが、通常は1〜50重量%、特に5〜30重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が小さすぎると、得られた混合水溶液中の水分量が多くなり、乾燥に長時間を要する傾向があり、逆に大きすぎるとPVA系樹脂(A)との反応が速く起こり、十分に混合できなくなる場合がある。
さらにキレート化剤(D)水溶液又は水分散液の固形分濃度は、通常0.1〜50重量%、特に0.5〜15重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が小さすぎると調整が困難になる傾向があり、大きすぎると樹脂組成物中に十分に分散できなくなる傾向がある。
【0046】
かくして得られたPVA系樹脂(A)と架橋剤(B)、およびキレート化剤(D)を含有する混合水溶液は、塗工、注型、浸漬、等の公知の方法によって各種用途に適用され、その後、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)の反応が進行して、反応生成物(C)が得られ、同時に、あるいはその後、乾燥することによって水分を除去される。
もしくは、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)のどちらか一方を含有する水溶液を予め塗工、注型、浸漬しておき、後から残りの他の成分を含有する混合水溶液を、前記の(A)と(B)のどちらか一方を有する水溶液と接触するように塗工、注型、浸漬することもできる。かかる場合には、PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)が接触した際に反応が進行して反応生成物(C)が得られる。また、上記と同様に乾燥することによって水分を除去される。
【0047】
PVA系樹脂(A)と架橋剤(B)による本発明の反応生成物(C)を含有する樹脂組成物は、耐水性が要求される各種用途に対して有用であり、特に、各種接着剤用途、バインダー用途、被覆剤用途等に好適である。特に、本発明の樹脂組成物は、耐水性に優れるとともに経時着色が少ないという特徴を有していることから、各種基材に対するコート層や、感熱記録媒体、インクジェット記録媒体として用いることが好ましい。
【0048】
〔コート層〕
次に、本発明のコート層について説明する。
本発明のコート層は、上述のPVA系樹脂(A)と架橋剤(B)が反応して得られた反応生成物(C)を主要成分とし、これにキレート化剤(D)含有する樹脂組成物からなるものである。
その製造法は、上述の樹脂組成物の製造法において得られた、樹脂組成物水溶液を各種基材に塗工し、これを乾燥することによって得る方法が通常用いられる。
かかるコート層中の樹脂組成物は、反応生成物(C)中にキレート化剤(D)が分子レベルで均一に分散された状態で存在している。
【0049】
基材としては、紙、木質素材、プラスチック材料、金属材料などあらゆる素材を用いることが可能であるが、本発明の特徴を活かす素材として、特にガラスや透明プラスチックなどの透明素材、あるいは白色や淡色の素材が好ましく用いられる。
【0050】
コート層の厚さは、その使用目的によって異なり、所望の厚さを選定できるが、通常は0.1〜1000μm、特に0.5〜500μm、さらに1〜300μmの範囲で用いることが多い。
【0051】
なお、上述の水溶液を塗工した後の乾燥条件としては、使用形態によって適宜選択されるものではあるが、通常は5〜150℃、さらには30〜150℃、特には50〜150℃の温度条件で、0.1〜60分、さらには0.1〜30分、特には0.2〜20分の乾燥時間が好ましく用いられる。
【0052】
〔感熱記録用媒体〕
本発明の感熱記録用媒体は、基材上に本発明の樹脂組成物のコート層を設けたもので、かかる塗工層は感熱発色層であったり、感熱発色層上に設けられて保護層として機能するものであるが、特に保護層として好適に用いられるため、かかる場合について説明する。
【0053】
この場合には基材上に任意の感熱発色層が設けられ、その上に上記の樹脂組成物を含有する保護層が設けられるのである。
該基材としては、紙(マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷用紙、上・中・下級紙、新聞用紙、剥離紙、カーボン紙、ノンカーボン紙、グラシン紙など)やプラスチックフィルム(ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム及びこれらの積層体等)などが挙げられる。
【0054】
かかる保護層を形成させるために用いる塗工液は、本発明の樹脂組成物を含む水溶液として調製される。
かかる水溶液(23℃)のpHとしては11以下が好ましく、さらには3〜10である。pHが11を越えると耐温水性や耐可塑剤性が低下することがあり好ましくない。なお、AA化PVA(A1)を用いる場合には水溶液とすると弱酸性となるので、かかるpH調整は通常必要ないことが多いが、必要に応じて、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、クエン酸、酒石酸、蓚酸、酢酸などの有機酸、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどの塩基性化合物でpH調整すればよい。
【0055】
また、塗工液中の樹脂組成物の含有量は1〜50重量%(更には2〜30重量%)程度とすることが好ましく、かかる含有量が1重量%未満では、耐水性を充分に発揮できないことがあり、逆に50重量%を越えると塗工液の粘度が高くなるため、塗工が困難になることがあり、好ましくない。
【0056】
さらに、本発明の樹脂組成物を用いた感熱記録媒体の保護層用塗工液には、本発明の目的が阻害されない範囲で、無機フィラー、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、還元剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、紙力増強剤などを配合しても良い。
【0057】
本発明において、無機フィラーとしては公知のものを使用することができるが、代表的なものとして、気相法シリカ、湿式法シリカ、コロイダルシリカなどの非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミナ水和物、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ゼオライト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、などが挙げられ、これらを単独で、あるいは複合して使用される。
中でも経済上の観点から天然物由来のものが好ましく、更には水に対する分散性や粒度分布が適切な点からカオリンが好適に用いられる。
【0058】
かかる無機フィラーの粒子径としては、通常3〜1000nm、好ましくは3〜500nm、更に好ましくは10〜200nmである。かかる粒子径が大きすぎると樹脂組成物中の分布が不均一になる傾向がある。かかる無機フィラーの使用量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して通常常は0.1〜500重量部であり、特に0.5〜400重量部、さらに2〜300重量部の範囲が好ましく用いられる。
【0059】
次に感熱発色層について説明する。
感熱発色層は、通常基材の上に設けられるのであるが、かかる感熱発色層は、バインダー(例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類、ラテックス類等)にさらに発色性物質と顕色剤を配合した水溶液(発色液)を得た後、該水溶液を基材に塗工することにより形成させることができる。
【0060】
かかる感熱発色層は、バインダー、発色性物質と顕色剤を配合した水溶液を得た後、該水溶液を基材に塗工すればよい。この時の発色性物質や顕色剤は水溶液中ではブロック化するのでサイドグラインダー、ボールミル、ビスコミル等で0.1〜5μm程度に粉砕される。
【0061】
上記の発色性物質の例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド[クリスタルバイオレットラクトン]、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロロフタリド、3−ジメチルアミノ−6−メトキシフルオラン、7−アセトアミノ−3−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3,6−ビス−β−メトキシエトキシフルオラン、3,6−ビス−β−シアノエトキシフルオラン等のトリフェニルメタン系染料のロイコ体が挙げられる。
【0062】
また、顕色剤は前記発色性物質と加熱時反応して発色せしめるもので常温以上好ましくは70℃以上で液化もしくは気化するものが好ましく、例えばフェノール、p−メチルフェノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール[ビスフェノールA]、4,4’−セカンダリーブチリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−(1−メチル−n−ヘキシリデン)ジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジカテコール、4,4’−ペンジリデンジフェノール、4,4−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、フェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、サリチル酸、3−フェニルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、1−オキシ−2−ナフトエ酸、m−オキシ安息香酸、4−オキシフタル酸、没食子酸などが挙げられる。
【0063】
感熱発色層を設けるに当たっては上記のバインダー、発色性物質と顕色剤を配合した水溶液をロールコーター法、エヤードクター法、ブレードコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、ゲートロール法等任意の塗工手段で基材に塗工すればよく、塗工液の固形分は10〜60重量%程度とすればよく、該水溶液の塗工量は、乾燥重量で0.1〜20g/m
2程度である。
【0064】
ついで、かかる感熱発色層の上に前述の塗工液を塗工して保護層が形成されるのであるが、このときかかる塗工液に必要に応じて顔料、助剤等を配合することもできる。
【0065】
該顔料としては、例えば、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、デンプン粒子等の有機顔料が挙げられ、助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、蛍光染料、剥離剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0066】
塗工手段としては上記の感熱発色層で使用した塗工方法が用いられ、このときの塗工量は、乾燥重量で0.1〜10g/m
2が好ましい。かかる塗工量が0.5g/m
2未満では、耐水性を充分に発揮できないことがあり、10g/m
2を越えると塗工斑を生じるために好ましくない。
塗工後は乾燥処理やカレンダー処理を行うことによって目的とする塗工層が形成される。
【0067】
また、必要に応じて感熱発色層の下にアンダーコート層を設けても良く、アンダーコート層は、公知のPVAの他、澱粉、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カゼイン、アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体系ラテックスなどの水溶性及び水分散性樹脂や上記で述べた顔料を各々単独あるいは2種以上配合して塗工すればよい。アンダーコート層の塗工に際しては、保護層と同様の塗工方法、塗工液の濃度や塗工量が採用される。
得られる感熱記録用媒体は、基材/(アンダーコート層)/感熱発色層/保護層の層構成となる。
【0068】
〔インクジェット記録媒体〕
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に、本発明の樹脂組成物を無機フィラーのバインダー樹脂として適用し、無機フィラーと本発明の樹脂組成物の混合物を塗工、乾燥して、インク受容層を形成することにより製造されるものである。無機フィラーとしては、前述の感熱記録媒体に用いられるものと同様のものが用いられる。
本発明のインクジェット記録媒体に使用できる支持体としては、特に制限されるものではないが、前述の感熱記録媒体と同様の支持体を使用することが出来る。
【0069】
支持体上にかかる塗工液を塗工する方法としては、バーコーター法、エアナイフコーター法、ブレードコーター法、カーテンコーター法などの公知の塗工方法が用いられる。
また、塗工液の塗工量は、得られた光沢層のインク吸収性、層の強度などから、適宜選択することが可能であるが、通常、乾燥後の厚みが0.1〜100μmであり、さらには0.5〜80μm、特には1〜50μmの範囲が好ましく用いられる。
【0070】
塗工後は塗工液を乾燥すればよいが、特に光沢性に優れた層を得るためには、塗工後、湿潤状態で加熱することによって塗工液をゲル化させ、流動性がない状態にした後、乾燥によって水分を除去する方法が好ましく用いられる。かかるゲル化に際しての加熱条件としては、通常、30〜100℃、特に40〜90℃の温度範囲で、乾燥時間は、通常、1秒〜5分、特に5秒〜5分の範囲が好ましく用いられる。また、その後の乾燥条件としては、通常50〜120℃で1〜30分程度乾燥させればよい。また、乾燥前の湿潤状態で、キャストドラムに圧接し、さらにその状態で乾燥させることで、高度な表面光沢性・平滑性を付与する方法も好ましく用いられる。
かかる、塗工・乾燥工程によりPVA系樹脂(A)と架橋剤(B)が反応し反応生成物が形成される。
【0071】
また、本発明のインクジェット記録媒体には、公知の光沢層がインク受容層上に塗工されていても良い。インク受容層にかかる光沢層を塗工する場合、その乾燥後の膜厚は、特に制限されないが、通常2〜10μm、好ましくは3〜5μmである。
【0072】
さらに、本発明の樹脂組成物を用いたインク受容層には、本発明の目的が阻害されない範囲で、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、還元剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、紙力増強剤などを配合しても良い。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0074】
参考例1
〔カオリン分散液の作成〕
カオリン50部と水50部を混合し、ホモジナイザー(TKロボミクス プライミクス)で2000rpmで30分間攪拌し、カオリンの50重量%水分散液を得た。かかるカオリンの平均粒子径は0.2μmであった。
前記のカオリンの水分散液に更に水を加え、カオリンの5重量%水分散液を得た。
【0075】
〔樹脂組成物の作成〕
次に未変性PVA(ケン化度99.5モル%、JIS K 6726に準じた平均重合度2470、4質量%水溶液粘度64mPa・s、酢酸ナトリウム含有量1.5重量%)の5重量%水溶液100部と上記のカオリンの5重量%水分散液5部とキレート化剤(D)としてエチレンジアミン4酢酸(キシダ化学)の1重量%水溶液0.5部を混合した。
【0076】
〔フィルムの作成〕
上記で得られた水溶液に架橋剤(B)としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)の5重量%水溶液5部を添加し、ただちに10cm×10cmの型枠に26部を流し込み、厚さ50μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを23℃、50%RHで3日静置した。
【0077】
〔着色評価〕
その後、40℃×90%RHの恒温恒湿機で4週間着色を促進後、測色計にて測色を行った。測定装置としては、分光測色計CM−3600A(コニカミノルタセンシング製)を用い、透過法 光源D−65 N=3の平均値で評価した。
結果を表1に示す。
【0078】
比較例1
参考例1において、キレート化剤(E)を配合しなかった以外は同様に樹脂組成物を得て、評価した。
【0079】
【表1】
【0080】
キレート化剤としてEDTAを配合した
参考例1のフィルムは、a
*値およびb
*値が小さく、経時着色を抑えることができたが、キレート化剤を配合しなかった比較例1は、a
*値、b
*値ともに
参考例1よりも大きいもので、経時着色が大きかった。
【0081】
参考例2
参考例1において、未変性PVA(A)に代えて、酢酸ビニルとジアセトンアクリルアミドを常法に従って共重合し、その後ケン化して得られたジアセトンアクリルアミド構造単位含有PVA(A2)(ケン化度99モル%、4質量%水溶液粘度23mPa・s、ジアセトンアクリルアミド構造単位含有量5モル%)に替えて用いた以外は
参考例1と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0082】
比較例2
参考例2において、キレート化剤(E)を配合しなかった以外は同様に樹脂組成物を得て、評価した。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
キレート化剤としてEDTAを配合した
参考例2のフィルムは、a
*値およびb
*値の絶対値が小さく、経時着色を抑えることができたが、キレート化剤を配合しなかった比較例2は、a
*値、b
*値ともに
参考例2よりも大きいもので、経時着色が大きかった。
【0085】
実施例3
〔AA化PVA(A1)の製造〕
PVA系樹脂(ケン化度98モル%、JIS K 6726に準じた平均重合度2500、4質量%水溶液粘度56mPa・s、酢酸ナトリウム含有量0.03重量%)を、ニーダーに3600部仕込み、これに酢酸540部を入れ、膨潤させ、回転数20rpmで攪拌しながら、60℃に昇温後、ジケテン420部を3時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、メタノールで洗浄した後、70℃で6時間乾燥してAA化PVA(A1)を得た。かかるAA化PVA(A1)のAA化度4モル%であり、ケン化度および平均重合度は用いたPVA系樹脂の通りである。
【0086】
参考例1において、未変性PVA(A)を上記で得られたAA化PVA(A1)に替えて用いた以外は
参考例1と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0087】
実施例4
実施例3において、キレート化剤(D)として、エチレンジアミン4酢酸トリアンモニウム(キレスト社「キレスト3N−50」)を用いた以外は、実施例3と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0088】
実施例5
実施例3において、キレート化剤(D)として、t−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸酸一水和物(CDTA)(同仁化学社)を用いた以外は、実施例3と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0089】
実施例6
実施例3において、キレート化剤(D)として、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)(同仁化学社)を用いた以外は、実施例3と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0090】
実施例7
実施例3において、キレート化剤(D)として、ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸(EGTA)(同仁化学社)を用い、pHを7.5とした以外は、実施例3と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0091】
比較例3
実施例3において、キレート化剤(D)を配合しなかった以外は同様にフィルムを得て、評価した。結果を表3に示す。
【0092】
比較例4
実施例3において、キレート化剤(D)に代えて、還元剤である亜硫酸水素ナトリウム5重量%水溶液5部を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
各種のキレート化剤を配合した実施例3〜7のフィルムは、a
*値およびb
*値の絶対値が小さく、経時着色を抑えることができたが、キレート化剤を配合しなかった比較例3、還元剤として亜硫酸水素ナトリウムを配合した比較例4は、a
*値、b
*値の絶対値がともに実施例3〜7よりも大きく、経時着色が大きかった。
【0095】
実施例8
〔樹脂組成物の作成〕
実施例3で得られたAA化PVAの10重量%水溶液100部とキレート化剤(D])としてエチレンジアミン4酢酸(EDTA)(キシダ化学)1部を混合した。
【0096】
〔フィルムの作成〕
上記で得られた水溶液に架橋剤(B)としてグリオキシル酸ナトリウムの10重量%水溶液5部を添加し、ただちに10cm×10cmの型枠に6.5部を流し込み、厚さ50μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを23℃、50%RHで3日静置した。
【0097】
〔着色評価〕
ロール状や切断し積層状態など各種の保存状態を想定し、着色を評価した。
金属元素0.16重量%を含む基材と上記で得られたフィルムを重ねて、40℃×90%RHの恒温恒湿機で3週間着色を促進後、測色計にて測色を行った。測定装置としては、分光測色計CM−3600A(コニカミノルタセンシング製)を用い、透過法 光源D−65 N=3の平均値で評価した。
結果を表4に示す。
【0098】
比較例5
実施例8において、キレート化剤(D)を配合しなかった以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に評価した。
【0099】
【表4】
【0100】
キレート化剤を配合した実施例8の樹脂組成物を用いたフィルムは、a
*値及びb
*値が0に近く、経時着色を抑えることができた。一方、キレート化剤を配合しなかった比較例5は経時着色が大きかった。