(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に示された技術では、開口部に設置してしまうと、シャッターの裏面に防水シートを取り付けているために、開口部から出入りすることができない。このように、前述した特許文献1に示された技術では、開口部への設置後に、開口部から出入りすることができない。
【0005】
本発明の目的は、開口部への設置後に、開口部から出入りすることを可能とする開口部の防水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開口部の防水装置は、構造物の屋内側と屋外側とを連通し、かつ開閉体によって開閉される開口部を開口状態で遮るように前記開閉体よりも前記屋外側に設置される補強板と、前記補強板よりも前記屋外側に設置されるシートと、前記シートが前記開閉体の鉛直方向下端側の所定部と、前記構造物のうち前記所定部に隣接する部分とを一体に覆うことで前記開口部の鉛直方向下端側を閉塞し、かつ前記シートの鉛直方向下端部が床面に沿って屋外側に向けて延在するように、前記シートを前記開閉体よりも屋外側に位置付けて、前記シートの幅方向の端を保持する保持部材と、を備え、
前記補強板の水平方向の幅は、前記開口部の水平方向の幅よりも小さく形成されており、前記補強板は、前記開口部の一部を開放した前記開閉体の前記屋外側に立て掛けられて設置されており、前記シートの鉛直方向上端部には、前記シートを前記補強板
および前記開閉体に止着するための止着部が、前記シートの幅方向に沿って間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記開口部の防水装置では、シートと開閉体との間に開口部を遮るように屋外側に補強板を設けているので、開閉体が開口部の少なくとも一部を開放した状態でもシートに開口部からの浸水を抑制することができる。このように、開閉体が開口部の少なくとも一部を開放した状態で補強板を設置することで、少なくとも一部の開放された開口部を通して出入りすることができる。したがって、開口部の防水装置は、開口部への設置後に、開口部から出入りすることを可能とすることができる。また、開口部の防水装置は、シートにより開口部からの浸水を抑制するので、軽量化を図ることができ、開口部に設置されない状態では、シートを折りたたむことができ、コンパクトに収納しておくことができる。
【0008】
上記開口部の防水装置において、前記補強板は、前記開口部の一部を開放した前記開閉体の前記屋外側に立て掛けられて設置されるものとすることができる。
【0009】
上記開口部の防水装置では、補強板が開口部の一部を開放した開閉体に立て掛けられているので、設置後に補強板が倒れることを抑制できるとともに、開放された開口部の一部を通して構造物に出入りすることができる。
【0010】
上記開口部の防水装置において、前記補強板は、前記構造物の前記開口部を囲む壁部の前記屋外側に立て掛けられて設置されるものとすることができる。
【0011】
上記開口部の防水装置では、補強板が開口部を囲む壁部に立て掛けられているので、開口部の少なくとも一部を開放した状態でも確実に設置することができる。また、補強板が開口部を囲む壁部に立て掛けられているので、設置後に補強板が倒れることを抑制できるとともに、開放された開口部の一部を通して構造物に出入りすることができる。
【0012】
上記開口部の防水装置において、前記補強板は、前記開口部を遮るように前記開閉体よりも前記屋外側に設置される補強部と、前記補強部の下端に連なりかつ前記床面に重ねられる床載置部とを備えるものとすることができる。
【0013】
上記開口部の防水装置では、補強板が補強部と床載置部とを備えているので、床載置部を床面上に設置すると、補強部が倒れることを抑制できる。したがって、開口部の少なくとも一部を開放した状態であっても、シートにより開口部からの浸水をより確実に抑制することができる。
【0014】
上記開口部の防水装置において、前記補強板は、内部に多数の空隙が設けられた軽量部材と、前記軽量部材の両表面に取り付けられた板材とを備えるものとすることができる。
【0015】
上記開口部の防水装置では、補強板が板材間に軽量部材を設けているので、板材間の間隔を確保して、補強板自体の強度を確保することができる。また、板材間に設けられた軽量部材は多数の空隙が設けられているので、軽量部材、即ち、補強板の軽量化を図ることができる。したがって、補強板の軽量化と強度の確保との両立を図ることができる。
【0016】
上記開口部の防水装置において、前記補強板の鉛直方向の長さは、16cmから38cmであるものとすることができる。
【0017】
上記開口部の防水装置では、前記補強板の鉛直方向の長さは、16cmから38cmであるので、開口部への設置後に、開口部から出入りすることを確実に可能とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る開口部の防水装置は、開口部への設置後に、開口部から出入りすることを可能とすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係る開口部の防水装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
[実施形態1]
図1から
図4を参照して、実施形態1について説明する。実施形態1は、構造物の開口部を防水する開口部の防水装置に関する。
図1は、本発明の実施形態1に係る開口部の防水装置を示す斜視図、
図2は、実施形態1に係る開口部の防水装置により防水される開口部などを示す斜視図、
図3は、実施形態1に係る開口部の防水装置の補強板を示す斜視図、
図4は、
図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
【0022】
建物等の構造物の外部開口部には、開閉体としてのシャッターや開閉扉が付けられることが多い。例えば、洪水時などに浸水しやすい地下駐車場の入口や、浸水すると商品が毀損されやすい店舗の入口等にもシャッターや開閉扉が付けられていることが多い。シャッターは、隙間が多い構造であるため、ゲリラ豪雨や洪水時にはシャッターの隙間を介した浸水によってこれらの施設が被害に遭う可能性がある。また、開閉扉には、扉間及び各扉と開口部との間に隙間があるために、ゲリラ豪雨や洪水時には隙間を介した浸水によって店舗等の施設が被害に遭う可能性がある。
【0023】
浸水対策として、シャッターや開閉扉の下部を防水板(パネル)に変更する方法も考えられるが、一般的に高額となりやすいため、ユーザーにとって受け入れにくい場合がある。
【0024】
本実施形態の開口部の防水装置1は、開閉体としてのシャッターや開閉扉の前にシートを設置して、簡易的にかつ安価に止水することを可能とする。シートは、開閉体とその周囲の構造物とを一体に覆うことで、開閉体と構造物との隙間を閉塞し、適切に止水することができる。よって、本実施形態の開口部の防水装置1によれば、水害による建物内部の被害を軽減することができる。
【0025】
図1に示す開口部の防水装置1は、構造物Sの開口部O(
図2等に示す)を閉塞し、屋外側から屋内側への水の浸入を抑制するものである。構造物Sは、例えば、工場、倉庫、車庫、店舗、家屋等の建築構造物であり、開口部Oを有している。開口部Oは、構造物Sのガラスなどの透明又は半透明の材料で構成された壁部3等に形成されており、構造物Sの屋外側と屋内側とを連通している。本実施形態では、開口部Oは、アルミニウム合金で構成されかつ壁部3よりも厚い縦方立3a(壁部に相当)などにより囲まれている。また、本実施形態では、壁部3の下端部には、
図1及び
図2に示すように、壁部3よりも厚い幅木6が設けられている。
【0026】
屋内側、屋外側とは説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、屋外側とは、水が浸入する場合の上流側のことであり、屋内側とは、上流側から水が浸入する可能性がある側であり、本発明においては水が浸入してくるのを阻止や抑制したい側のことである。開閉扉や壁等とともに開口部の防水装置1を、例えば単なる道路の防水用仕切りとして使用したり、外部空間における門等の箇所に取り付ける等のように、家屋や部屋等の概念がない箇所に設けても良い。また、開口部Oは、前述の屋外側と屋内側とを連通するものとすることができる。本実施形態の開口部Oは、構造物Sの外殻をなす壁部3に形成されており、壁部3を貫通して構造物Sの屋外と屋内とを連通している。なお、これに限らず、開口部Oは、構造物Sの内部を仕切る壁部に形成されたものであってもよい。また、壁部は、予め十分な止水性を有するものが好ましいが、例えば、嵌め殺しサッシ、塀などの許容できる範囲内で水漏れするもの、又は、別途止水性を付加(例えば、土嚢の設置や公知の水密処理など)して止水性を発揮するものでもよい。
【0027】
前述した開口部Oには、当該開口部Oを開閉する開閉体としての開閉扉4が設けられている。開閉扉4は、
図2等に示すように、開閉方向、本実施形態では左右水平方向に移動する扉5を一対備えている。
【0028】
開閉扉4の一対の扉5は、図示しないガイドレールによって案内される。ガイドレールは、開口部Oの上下両端に設けられ、壁部3の表面と平行である。扉5の上下方向の両端部は、それぞれガイドレールの溝部に挿入されている。溝部は、開閉方向即ち左右水平方向に延在しており、扉5を開閉方向、即ち、左右方向に移動自在に案内する。扉5の幅方向の両端には、扉5よりも厚い扉側縦方立5aが設けられ、扉5の下端部には、扉5よりも厚い扉側幅木5bが設けられている。扉側縦方立5aの厚みと扉側幅木5bの厚みは等しい。なお、本発明でいう床面とは、説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、通常の床面7のみならず、コンクリート面や地面等の開口部Oの下方に位置する面を総称する。
【0029】
開閉扉4は、一対の扉5が互いに近付いて開口部Oを閉塞し、一対の扉5が互いに離間して開口部Oを開放する。扉5の移動は、手動でなされても、モータ等の駆動装置によって自動でなされてもよい。本実施形態の開閉扉4は、一対の扉5、ガイドレールなどを有する。
【0030】
図1に戻り、開口部の防水装置(以下、防水装置と呼ぶ)1は、シート10、一対の保持部材20、押圧部材30と、補強板50などを備える。シート10は、開口部Oを塞ぐように補強板50よりも屋外側に設置されるものであり、開口部Oの鉛直方向下端側の領域を閉塞することが可能な幅および長さを有している。シート10の形状は、例えば、矩形である。シート10は、遮水性を有しており、開口部Oの防水シートとして機能することができる。また、シート10は、可撓性を有しており、伸縮可能であってもよい。シート10の素材は、例えば、樹脂、ゴム、表面を樹脂などでコーティングした布とすることができる。シート10は、水圧によって追従して変形可能な素材で構成されることが好ましい。
【0031】
シート10の幅は、開閉扉4の幅よりも大きい。また、シート10の幅は、開口部Oの幅W(
図1及び
図2参照)よりも大きいことが好ましい。シート10の鉛直方向の長さは、対応すべき水深に基づいて定められている。すなわち、開閉扉4の下端から鉛直方向上側に向けてどの範囲をシート10によって覆い防水するかに基づいてシート10の全長が定められている。以下の説明では、開閉扉4においてシート10によって覆われるべき部分を「所定部」(
図1の符号41参照)と称する。所定部41は、開閉扉4の鉛直方向下端側の部分である。
【0032】
シート10の幅方向の両端には、それぞれ、心材11が配置されている。心材11は、軽量でかつ可撓性を有する素材、例えば樹脂素材で形成されている。心材11は、シート10の幅方向の両端の上端から所定部41の下端に対応する箇所、即ち、シート10の幅方向の両端の後述のシート下部13を除く箇所に配置されている。心材11は、シート10の長さ方向(鉛直方向)に延在している。心材11は、円柱状に形成され、シート10の壁部3及び扉5に対向する面に設けられ、保持部材20のシート保持部22に挿入可能である。
【0033】
保持部材20は、シート10を開閉扉4よりも屋外側に位置付けて構造物Sに対して保持する。より詳しくは、保持部材20は、開閉扉4の所定部41と、構造物Sのうち所定部41に隣接する部分とを一体に覆うことで開口部Oの鉛直方向下端側を閉塞させるようにシート10を保持する。また、保持部材20は、シート10の鉛直方向下端部が床面7に沿って屋外側に向けて延在するようにシート10の幅方向の両端を保持する。これにより、シート10は、開閉扉4が有する隙間や開閉扉4と構造物Sとの隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。なお、本明細書では、シート10の鉛直方向下端部であって、シート10が保持部材20によって保持された状態で床面7に沿って延在する部分を、以下「シート下部13」と記載する。
【0034】
図1に示すように、保持部材20は、一対設けられ、縦方立3aに着脱自在である。保持部材20は、
図1に示すように、縦方立3aに取り付けられる取付部21と、取付部21に設けられたシート保持部22とを備えている。
【0035】
取付部21とシート保持部22とは、アルミニウム合金等で一体に構成されている。取付部21は、平板状に形成されている。取付部21は、縦方立3aの表面に重ねられて、縦方立3aに取り付けられる。シート保持部22は、断面C字形に形成され、かつ取付部21の表面上に設けられている。シート保持部22は、一対の保持部材20同士が対向する面にスリット22aが形成されている。シート保持部22は、スリット22a内にシート10の幅方向の端及び心材11が挿入されることで、シート10の幅方向の端を保持する。保持部材20は、取付部21が縦方立3aに取り付けられると、鉛直方向に延在し、開閉扉4の所定部41に対応する範囲に配置される。すなわち、保持部材20は、開閉扉4の下端から所定部41の上端までの範囲に対応して配される。なお、本発明では、保持部材20は、防水装置1の防水性能等の使用上の問題がないような実質的な意味で開閉扉4の所定部41に対応していればよく、例えば、保持部材20の上端は必ずしも所定部41の上端と一致せず、若干下側に位置していてもよい。保持部材20は、シート10に一体に形成されても良い。保持部材20を構成する材質は、シート10を保持できれば任意であり、アルミニウム合金に替えて、例えば、硬質性の樹脂等でもよい。保持部材20のシート保持部22のスリット22aの幅は、シート10と心材11をあわせた厚みよりも小さいため、心材11がスリット22aを介してシート保持部22から抜け出ることが規制される。なお、心材11は、円柱状のものには限定されず、例えば、断面が矩形などの多角形の平板状であってもよい。
【0036】
押圧部材30は、シート10のシート下部13上に配置されて、シート10を構造物S及び床面7に向けて押圧するものであり、例えばシート10を床面7、構造物Sの壁部3、縦方立3a,5aおよび開閉扉4の各扉5に向けて押圧する。押圧部材30は、
図1に示すように、シート下部13上の開口部Oの幅方向に沿って連続的に配置される。押圧部材30は、隙間無く配置されても、隣接する押圧部材30間に所定の隙間を設けて配置されても良い。押圧部材30は、棒状あるいは板状であることが好ましい。本実施形態に係る押圧部材30は、板状のフラットバーである。押圧部材30は、例えば、金属製であり、浮力に抗してシート10のシート下部13を床面7に向けて押圧することができる質量や密度を有している。押圧部材30は、シート下部13が床面7に沿って配置された後でシート下部13上に設置される。これにより、押圧部材30は、開閉扉4の下端部の近傍においてシート10を床面7に密着させておくことができる。押圧部材30は、一本でもよいし、複数に分割されていても結果として開口部Oの幅方向に沿って連続的に配置されていてもよい。なお、使用上における止水目的を達成できれば、連続的でなく、若干途切れている箇所があってもよい。
【0037】
補強板50は、開口部Oを開口状態で遮るように開閉扉4よりも屋外側でかつシート10よりも屋内側に設置されて、シート10のシート下部13を除く幅方向の中央部を支持するものである。すなわち、シート10は、補強板50よりも屋外側に設置される。なお、開口状態とは、開閉扉4の一対の扉5が開口部Oの少なくとも一部を開放した状態をいう。実施形態1では、補強板50は、平面形状が矩形状の平板状に形成されており、幅W1が開口部Oの幅Wよりも小さく形成されているとともに、設置時の鉛直方向の長さLが所定部41の高さよりも長く形成されている。また、補強板50の長さLは、要求性能によっては開口部Oに設置されたシート10の上端より低い(もしくは所定部41の高さよりも低い)ものであってもよく、この場合、防水装置1は、長さLと同等までの水位に対応できる。補強板50の長さLは、人が跨げる程度であることが望ましく、例えば、16(建築基準法施行令に定められた小学校の児童の階段の蹴上げ寸法の上限)cmから38(JIS(日本工業規格) S 1021における身長150cmの人の教室用椅子4号の座面の高さ)cm程度であるのが望ましい。また、補強板50の長さLは、止水高さの要望次第では椅子などを台にして跨ぐことを前提に1m程度まででもよく、脚立などを使って渡ることを前提に1.5m程度まででもよい。また、補強板50として、余分な押圧部材30を長尺方向を横にした状態で使用してもよく、この場合、例えば、押圧部材30の幅が10cmである場合には、補強板50の長さLは、10cmとなる。
【0038】
補強板50は、開口部Oの一部としての中央部を開放した開閉扉4の一対の扉5の扉側縦方立5aの屋外側に立て掛けられて設置されている。即ち、実施形態1では、補強板50は、開口部Oの中央部を開口した開閉扉4の一対の扉5間を塞ぐように、扉側縦方立5aの屋外側に立て掛けられて、開口部Oを遮るように設置されている。そして、補強板50は、シート10に水圧が作用しても、シート10のシート下部13を除く幅方向の中央部と密着して、シート10が開口部Oの中央部を通して屋内側に倒れることを規制する。
【0039】
補強板50は、
図3に示すように、補強板本体51と、補強板本体51の外縁部に取り付けられた枠部52とを備えている。補強板本体51は、
図4に示すように、内部に多数の空隙としての気泡が設けられかつ平板状に形成された発泡材料51a(軽量部材に相当)と、発泡材料51aの両表面に取り付けられた板材51bとを備える。発泡材料51aは、合成樹脂に周知の発泡材を混入させて分散させた後、発泡成形されて、内部に多数の気泡が形成される。発泡材料51aは、多数の気泡が設けられているので、軽量化されている。また、本発明では、軽量部材として、発泡材料51aの他に、金属や紙などの種々の材料で構成されて多数の空隙が形成されたハニカム材料を用いてもよい。板材51bは、アルミニウム合金などの金属やプラスチックなどの合成樹脂で構成されている。板材51bは、発泡材料51aよりも薄い平板状に形成されている。
【0040】
枠部52は、補強板本体51の外縁部全体に設けられている。枠部52は、アルミニウム合金やステンレス鋼などの金属で構成されて、補強板本体51の外縁に重ねられる外縁重なり部52aと、外縁重なり部52aから内側に屈曲して補強板本体51の両表面に重ねられる表面重なり部52bとを一体に備えている。
【0041】
また、防水装置1は、シート10の上端部に複数の吸盤43を取り付けている。吸盤43は、シート10の上端部にシート10の幅方向に間隔をあけて取り付けられている。吸盤43は、開閉扉4の扉5及び補強板50に吸着する。また、本発明では、吸盤43の全て又は一部をピンチ(クリップ)、粘着材、フック、ファスナー、ひも、鋲などの他の止着手段に置き換えてもよく、また、シート10を止着手段(例えば、吸盤43等)で補強板50に止着することは、シート10の撓み抑制の必要性に応じておこなえばよい。
【0042】
次に、シート10を開口部Oに設置する方法、即ち、実施形態1に係る防水装置1を組み立てる方法を説明する。
【0043】
シート10を開口部Oに設置する即ち防水装置1を組み立てる場合、まず、縦方立3aに保持部材20を取り付けるとともに、開閉扉4の扉5により開口部Oの中央部を開放させる。
【0044】
そして、扉5の扉側縦方立5aに補強板50の幅方向の両端部を立て掛け、シート10の幅方向の両端及び心材11を、保持部材20の上端からシート保持部22内に挿入し、シート10の両端及び心材11を保持部材20の下端に向けてシート保持部22内で移動させる。そして、シート10の両端及び心材11が保持部材20のシート保持部22に挟持され、シート10の心材11が設けられていないシート下部13を、保持部材20の下端に設けられた間隙を通して、床面7上に引き出し、床面7に沿って屋外側に向けて延在させる。さらに、シート10の上端部に取り付けられた吸盤43を開閉扉4の扉5及び補強板50に吸着する。
【0045】
シート10の幅は、開口部Oの幅W(
図2参照)よりも大きく、以下に示すような幅に設定している。すなわち、シート10の両端が保持部材20によって保持された状態で、シート10は、若干のたるみを有している。つまり、保持部材20は、シート10がたるみを有した状態でシート10を保持し、シート10が保持部材20よりも開閉扉4側に向けて撓むことを許容する。また、シート10の幅と、開口部Oの幅Wとの寸法差に応じて、シート10を適宜折りたたんで、開口部Oに設置されたシート10が若干のたるみを有してもよい。
【0046】
また、シート10の鉛直方向の長さは、開閉扉4の所定部41の鉛直方向の長さよりも長く、以下に示すような長さに設定している。すなわち、シート10が保持部材20によって保持された状態で、シート下部13を床面7上に垂らし、床面7に沿わせることが可能である。シート10は、このシート下部13を床面7に沿って屋外側に向けて延在された状態で設置される。言い換えると、シート10は、シート下部13に設けられた床面7と対向し、かつシート下部13が先端側へ向かうに従い開閉扉4から離間するように配置される。
【0047】
そして、押圧部材30をシート下部13上に配置する。こうして、シート10が所定部41と壁部3の所定部41に隣接する部分とを一体に覆いかつシート下部13が床面7に沿って屋外側に向けて延在した状態で、押圧部材30によりシート10を床面7、構造物Sの壁部3、縦方立3aおよび開閉扉4の各扉5に向けて押圧する。こうして、防水装置1が組み立てられる。
【0048】
本実施形態の防水装置1では、洪水やゲリラ豪雨等によって屋外の水嵩が増すと、まずシート下部13が水に接する。水圧によってシート下部13は床面7に向けて押圧されて、シート下部13が床面7に密着する。これにより、シート下部13と床面7との間から水が浸入することが抑制される。また、押圧部材30によってシート下部13が床面7に向けて押圧されていることで、低水位の場合であってもシート下部13と床面7との隙間を介した浸水がより確実に抑制される。また、押圧部材30は、水流等によってシート下部13が浮き上がることを抑制することが可能である。シート10は、水圧によって所定部41と、所定部41に隣接する床面7とを一体に覆うことができる。
【0049】
また、シート10において、縦方立3a,5aおよび開閉扉4の各扉5を覆う部分は、水圧によって壁部3、縦方立3a、開閉扉4の各扉5および補強板50に向けて押圧される。これにより、シート10は、開閉扉4の所定部41と、構造物Sのうち所定部41に隣接する部分とを一体に覆うことができる。シート10は、水圧によって押圧されることにより、壁部3、縦方立3a、補強板50等に密着し、シート10と壁部3、縦方立3aおよび補強板50の間に水が浸入することを抑制することができる。
【0050】
また、シート10は、水圧によって壁部3、縦方立3aおよび補強板50の間の隙間を塞ぐことで、これらの隙間を介した屋内側への浸水を抑制することができる。シート10は、水圧によって開閉扉4の所定部41と、所定部41に隣接する床面7との隙間を塞ぐことで、開口部Oからの屋内側への浸水を抑制することができる。
【0051】
シート10は、水圧によって壁部3、縦方立3a、開閉扉4の各扉5および補強板50に対して押圧されるため、水位が増加するに従い壁部3、縦方立3a等に対する密着性が増し、また各隙間を閉塞する閉塞性が増す。よって、シート10は、水位に応じて遮水性能が増し、適切に屋内側への浸水を抑制することができる。
【0052】
また、シート10は、水圧によって壁部3、縦方立3a、開閉扉4の各扉5および補強板50に対して押圧されても、補強板50が開口部Oの中央部を開口した開閉扉4の扉5の扉側縦方立5aに立て掛けられているので、開口部Oの中央部を通して構造物Sに出入りすることができる。このために、防水装置1を開口部Oに設置した状態であっても、
図1に示すように、開口部Oを通して構造物Sに出入りすることができる。
【0053】
実施形態1に係る防水装置1によれば、シート10と開閉扉4との間に開口部Oを遮るように補強板50を設けているので、開閉扉4が開口部Oの少なくとも一部を開放した状態でもシート10に作用する水圧を補強板50が支えることとなるので、開口部Oからの浸水を抑制することができる。このように、開閉扉4が開口部Oの少なくとも一部を開放した状態で補強板50を設置することで、少なくとも一部の開放された開口部Oを通して出入りすることができる。したがって、防水装置1は、開口部Oへの設置後に、開口部Oから出入りすることを可能とすることができる。
【0054】
また、防水装置1は、補強板50が開口部Oの中央部を開放した開閉扉4の扉側縦方立5aに立て掛けられているので、補強板50の幅W1を開口部Oの幅Wよりも小さく形成されているので、補強板50の薄型化、軽量化を図ることができる。さらに、防水装置1は、シート10により開口部Oからの浸水を抑制するので、軽量化を図ることができ、開口部Oに設置されない状態では、シートを折りたたむことができ、コンパクトに収納しておくことができる。
【0055】
防水装置1は、補強板50が開口部Oの一部を開放した開閉扉4の扉側縦方立5aに立て掛けられているので、設置後に補強板50が倒れることを抑制して開口部Oからの浸水を抑制できるとともに、開放された開口部Oの一部を通して構造物Sに出入りすることができる。防水装置1は、補強板50の鉛直方向の長さLは、16cmから38cmであるので、開口部Oへの設置後に、開口部Oから出入りすることを確実に可能とすることができる。
【0056】
防水装置1では、補強板50が板材51b間に発泡材料51aを設けているので、板材51b間の間隔を確保して、補強板50自体の強度を確保することができる。また、板材51b間に設けられた発泡材料51aは多数の空隙が設けられているので、発泡材料51a、即ち、補強板50の軽量化を図ることができる。したがって、補強板50の軽量化と強度の確保との両立を図ることができる。また、実施形態1では、補強板50がシート10を支えているが、本発明では、前述した構成の補強板50を、開口部Oからの浸水を抑制する所謂止水板として用いてもよい。
【0057】
[実施形態2]
図5を参照して、実施形態2について説明する。実施形態2は、構造物の開口部を防水する開口部の防水装置に関する。
図5は、本発明の実施形態2に係る開口部の防水装置を示す斜視図である。
図5において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
実施形態2に係る防水装置1は、補強板50の幅W1が開口部Oの幅Wよりも大きく形成されて、縦方立3aの屋外側に立て掛けられて設置されている。実施形態2では、補強板50は、開口部Oを囲む縦方立3a間を塞ぐように、縦方立3aの屋外側に立て掛けられて、開口部Oを遮るように設置されている。そして、補強板50は、シート10に水圧が作用しても、シート10のシート下部13を除く幅方向の中央部と密着して、シート10が開口部Oの中央部を通して屋内側に倒れることを規制する。また、実施形態2に係る補強板50は、実施形態1と同様な構造に構成されている。実施形態2に係る防水装置1は、前述した実施形態1と同様に開口部Oに設置される。実施形態2では、すべての吸盤43は、補強板50に吸着している。
【0059】
実施形態2に係る防水装置1によれば、実施形態1と同様に、開口部Oへの設置後に、開口部Oから出入りすることを可能とすることができる。また、実施形態2に係る防水装置1では、補強板50が開口部Oを囲む縦方立3aに立て掛けられているので、開口部Oの中央部や全体を開放した状態、即ち開口部Oの少なくとも一部を開放した状態でも確実に設置することができる。また、補強板50が開口部Oを囲む縦方立3aに立て掛けられているので、設置後に補強板50が倒れることを抑制して浸水することを抑制できるとともに、開放された開口部Oを通して構造物Sに出入りすることができる。
【0060】
[変形例1]
図6を参照して、変形例1について説明する。
図6は、本発明の実施形態1及び2の変形例1に係る開口部の防水装置の補強板等を示す斜視図である。
図6において、実施形態1及び2と同一部分には、同一符号を伏して説明を省略する。
【0061】
変形例1に係る補強板50−1は、
図6に示すように、開口部Oを遮るように開閉扉4よりも屋外側に設置される補強部51−1と、補強部51−1の下端に連なりかつ床面7に重ねられる床載置部52−1とを備えて、側方からみて、くの字型形状に形成されている。補強部51−1と床載置部52−1は、実施形態1及び2の補強板50と同様な構造に構成されている。補強部51−1の両表面と床載置部52−1の両表面とは、互いに直交している。
図6に示された変形例1では、補強板50−1は、幅W1が開口部Oの幅Wよりも小さく形成されているとともに、長さLが所定部41の高さよりも長く形成されている。補強板50−1の補強部51−1は、開口部Oの一部としての中央部を開放した開閉扉4の一対の扉5の扉側縦方立5aの屋外側に立て掛けられて設置されている。即ち、実施形態1では、補強板50−1の補強部51−1は、開口部Oの中央部を開口した開閉扉4の一対の扉5間を塞ぐように、扉側縦方立5a間に立て掛けられて、開口部Oを遮るように設置されている。そして、補強板50−1は、シート10に水圧が作用しても、シート10の幅方向の中央部と密着して、シート10が開口部Oの中央部を通して屋内側に倒れることを規制する。
【0062】
変形例1に係る防水装置1によれば、実施形態1と同様に、開口部Oへの設置後に、開口部Oから出入りすることを可能とすることができる。また、変形例1に係る防水装置1では、補強板50−1が補強部51−1と床載置部52−1とを備えているので、床載置部52−1を床面7上に設置すると、補強部51−1が倒れることを抑制できる。したがって、開口部Oの少なくとも一部を開放した状態であっても、シート10により開口部Oからの浸水をより確実に抑制することができる。なお、
図6に示した例では、補強板50−1の補強部51−1を扉側縦方立5aの屋外側に立て掛けたが、本発明では、補強板50−1の幅W1を開口部Oの幅Wよりも大きくして、補強板50−1の補強部51−1を縦方立3aの屋外側に立て掛けてもよい。
【0063】
[変形例2及び変形例3]
図7及び
図8を参照して、変形例2及び変形例3について説明する。
図7は、本発明の実施形態1及び2の変形例2に係る開口部の防水装置の補強板を示す斜視図であり、
図8は、本発明の実施形態1及び2の変形例3に係る開口部の防水装置の補強板を示す斜視図である。なお、
図7及び
図8において、実施形態1及び2と同一部分には、同一符号を伏して説明を省略する。
【0064】
図7に示された変形例2では、補強板50−2は、金属線などを格子状に結びつけて編み込まれた金網部51−2と、金網部51−2の外縁を覆う枠部52−2とを備えている。
図8に示された変形例3では、補強板50−3は、金属などで構成され、枠部51−3と、枠部51−3の内側を格子状とする複数の骨部材52−3とを備えている。このように、本発明では、シート10に作用する水圧に耐えることが可能な構造であれば、補強板50,50−1,50−2,50−3の構造として種々のものを用いてもよい。
【0065】
また、実施形態1では、開閉扉4の扉側縦方立5aの屋外側に補強板50を立て掛け、実施形態2では、縦方立3aの屋外側に補強板50を立て掛けている。しかしながら、本発明では、特に変形例1のように、シート10に水圧が作用しても補強板50,50−1,50−2,50−3が自立可能であれば、補強板50,50−1,50−2,50−3を開閉扉4や縦方立3aに立て掛けることなく、床面7上に設置してもよい。また、本発明では、補強板50,50−1,50−2,50−3を立て掛けるのは、壁部3では縦方立3a以外の部分でもよく、開閉扉4では扉側縦方立5a以外の部分でもよい。さらに、補強板50,50−1,50−2,50−3の左右一方の端部側を壁部3に、左右他方の端部側を開閉扉4に立て掛けてもよい(このとき、補強板50,50−1,50−2,50−3の幅W1は、開口部Oの幅Wよりも大きくても小さくても同等でもよい)。
【0066】
また、本発明では、開閉体として、片開き引戸、引き違い引戸、屋内側に回動する開き戸、折り畳み戸、引戸と開き戸からなる親子扉、カーテン部に潜り戸を設けたシャッター、袖扉を有しその袖扉と一緒に開口部Oを閉鎖するシャッター、格子状の門扉であってもよい。さらに、本発明では、開閉体は、防水装置1を設置している間常時出入り可能に開けたままとするものでもよいし、状況に応じて開閉するものでもよい。
【0067】
上記の実施形態及び変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実施することができる。