(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の合成繊維は、難燃樹脂と赤外線反射樹脂から構成されている。
難燃樹脂は、ポリエステル樹脂のみに限定されず、繊維形成可能な熱可塑性樹脂を選択できる。例えば、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアルキレンテレフタレートを主体とした芳香族ポリエステルや、ポリ乳酸のなどの脂肪族ポリエステルポリ乳酸などが挙げられる。
さらに、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂も使用できる。
【0010】
本発明の合成繊維は、本発明の効果を損なわない範囲であれば一般的に使用される添加剤、滑剤、艶消し剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、制電剤、耐光剤などが含まれていても構わない。
【0011】
本発明において、難燃樹脂は、難燃成分を含めばよく、例えば、リン系難燃成分を共重合させた樹脂、リン系難燃剤と樹脂とのブレンドまたは混練によるコンパウンドが好適に挙げられるが、特定されるものではない。
【0012】
本発明の合成繊維は、難燃成分としてリンを含む場合、良好な難燃性を維持させる点から、樹脂内に含まれるリン濃度は、2500〜20000ppmが好ましく、さらに好ましくは6000〜15000ppmである。2500ppm未満では、難燃性が維持しづらくなる傾向がある上、紡糸操業性が低下する傾向がある。20000ppmを超えると紡糸性が低下する傾向がある。
さらに繊維全体に換算したときのリン濃度は2000〜8000ppmが好ましく、さらに好ましくは4000〜7000ppmである。2000ppm未満では難燃性が維持しづらくなる傾向がある上、紡糸操業性が低下する傾向がある。8000ppmを超える濃度では紡糸操業性が極端に低下する恐れがある。
【0013】
本発明において、赤外線反射樹脂は、ポリエステル樹脂のみに限定されず、繊維形成可能な熱可塑性樹脂が選択できる。例えば、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアルキレンテレフタレートを主体とした芳香族ポリエステルや、ポリ乳酸のなどの脂肪族ポリエステルポリ乳酸などが挙げられる。
さらに、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂も使用できる。
【0014】
赤外線反射樹脂は、赤外線反射成分を含んでいれば良く、赤外線を反射する成分を共重合した樹脂でも良いし、赤外線反射剤をブレンド等により含ませた樹脂でも良い。
赤外線反射剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、アルミニウム、錫鉛、金、銀、錫をドープした酸化インジウム、アゾメチン基を有するアゾ色素、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ポリメチン系化合物、ジインモニウム系化合物、ジシアニン系化合物、金属錯体系化合物などが挙げられる。
特に好適な赤外線反射剤としては、酸化チタンが挙げられる。
【0015】
赤外線反射剤としての酸化チタンの平均粒子径は、0.8〜1.8μmが好ましく、0.8〜1.5μmのものがより好ましく、0.9〜1.2μmがさらに好ましい。
このような酸化チタンの含有量は、3質量%以上が好ましく、より好ましくは、6質量%以上である。上限は、紡糸操業性および繊維品質を考慮すると、20質量%程度が好ましい。
【0016】
また繊維全体に対する上記の平均粒子径の酸化チタンの濃度は18000ppm以上であることが好ましく、20000〜80000ppmがより好ましく、さらに好ましくは35000〜75000ppmである。紡糸操業性、延伸操業性を考慮すると、80000ppm以下にすることが好ましく、良好な遮熱性を得る点からは、18000ppm以上、さらには20000ppm以上とすることが好ましい。
【0017】
なお、通常、合成繊維において、つや消し剤として用いる酸化チタンは、平均粒子径が0.3μm程度であるが、0.8μm〜1.8μmと酸化チタンの平均粒子径を大きくすることによって、熱エネルギーに変換されやすい赤外線の波長(0.8〜3μm)の光を反射するため、遮熱効果を発揮できる。特に好ましくは、0.8〜1.5μmである。
【0018】
また、上記酸化チタンは、一次粒子径が0.5〜2.0μmのものであることが好ましい。
【0019】
上記酸化チタンの結晶構造は、ルチル型が好ましい。なお通常繊維に用いる艶消し剤として用いる酸化チタンは一般的にアナターゼ型が多い。
【0020】
本発明の合成繊維は、上記の難燃樹脂と赤外線反射樹脂を組み合わせることにより得ることができる。
【0021】
難燃樹脂と赤外線反射樹脂とを組合せる方法としては、例えば、難燃樹脂と赤外線反射樹脂をブレンドして単独糸とする、難燃樹脂と赤外線反射樹脂とを別々の口金から押し出して複合紡糸することにより複合繊維とすることが挙げられる。
前者の場合、粒径の大きい酸化チタンを赤外線反射樹脂に含有させた際、繊維表面に露出してしまうおそれがあり、繊維表層部において難燃樹脂の難燃成分の濃度が下がるため、難燃性能が低下する傾向にある。よって、粒径の大きい酸化チタンを用いる場合は、繊維表層部に酸化チタンが露出しないような形態が取り易い後者のものが好ましい。
後者の場合、繊維の複合形態としては、サイドバイサイド型、芯鞘型等、種々の形態を挙げることができる。赤外線反射樹脂に粒径の大きい酸化チタンを含有させた場合、この酸化チタンが繊維表面に露出し、難燃性能を低下することを防ぐ点からは、粒径の大きい酸化チタンが繊維表面にできるだけ露出しない複合形態とすることが好ましい。
特に好ましい複合形態としては、鞘部が難燃樹脂、芯部が赤外線反射樹脂で構成され、芯部が繊維表面に露出しない形態が挙げられる。このような形態であれば、赤外線反射樹脂に粒径の大きい酸化チタン含有させた場合でも、この酸化チタンが繊維表面に露出しないため、難燃性能が特に発揮し易くなり、また紡糸操業性、工程通過性も良好となる。
【0022】
本発明の合成繊維は、難燃樹脂と赤外線反射樹脂において、それぞれの樹脂比率(面積比)が80:20〜
20:80が好ましく、より好ましくは、60:40〜30:70である。この範囲であると、赤外線反射樹脂が一定以上の面積をもつため、遮熱効果を奏し易く、一定以上の濃度の難燃成分を含ませることで難燃性も得られ易い。
【0023】
鞘部に難燃樹脂、芯部に平均粒子径の大きい酸化チタンを含む赤外線反射樹脂を配置した複合繊維とする場合、繊維横断面において、鞘部と芯部の接合比率は、面積比で、80:20〜
20:80が好ましく、より好ましくは60:40〜30:70である。
すなわち、芯部の比率が大きすぎると、平均粒子径の大きい酸化チタンを多く含むことになり、糸質の低下につながる恐れがあり、また難燃成分の割合が低下することにより難燃性を十分に得ることができない恐れがある。
また、鞘部の比率が大きすぎると、平均粒子径の大きい酸化チタンを含有している部分が少なくなり、熱エネルギーとなりやすい3μm以下の波長の赤外線を反射しない部分が多くなるため、遮熱効果を十分に得る点からは、上記の範囲とすることが好ましい。
また繊維横断面において、難燃性、工程通過性、紡糸操業性を良好なものとする点から、芯部は繊維表面に露出していないことが好ましい。
【0024】
本発明の合成繊維は難燃指標であるLOI値が30以上である。
LOI値は、例えば、上述したようなリン濃度にすることや、上述したような芯鞘比率を持つ芯鞘型複合繊維とすることにより、上記のLOI値とすることができる。
尚、LOI値は通常26以上あれば、難燃性を有するとされている。但し、持続的な難燃効果や難燃性能に耐久性を持たせるには、LOI値を30以上がよい。さらに好ましくは31以上である。
【0025】
本発明の合成繊維は、遮熱性が1.5℃以上である。
遮熱性は、難燃成分及び赤外線遮熱成分が入っていない繊維からなる布帛(基準サンプル)と測定対象の繊維からなる布帛(比較サンプル)を用いて、レフランプによる照射により、基準サンプルに対して、比較サンプルの温度が何℃低下するかを、後述のように測定して算出し、「基準サンプル−比較サンプル」を遮熱性の値(℃)とする。
本発明の合成繊維の遮熱性(基準サンプルからの低下温度)は1.5℃以上であり、さらに好ましくは3.0℃以上であり、低下温度が高ければ高いほど、遮熱効果に優れている。遮熱性が1.5℃未満の場合、繊維を構成する赤外線反射樹脂による熱線反射効果は得られず、遮熱効果は得られない。
【0026】
次に、本発明の合成繊維の好適な製造方法について具体的に説明する。
以下は、芯部に赤外線反射樹脂として、上記平均粒子径の酸化チタンを含有したポリエステル、鞘部に難燃樹脂として、リン系の難燃成分を共重合した共重合ポリエステルを用いた合成繊維の例である。
【0027】
まず、赤外線反射樹脂として、上記平均粒子径をもつ酸化チタンを3〜20質量%含有したポリエステル樹脂、難燃樹脂として、上述したリン濃度を有するリン系の難燃成分を共重合した共重合ポリエステルを準備する。
これらの樹脂をそれぞれ溶融して、紡糸口金から吐出する。引き続き糸条を冷却して、油剤を付与した後、未延伸糸を巻糸体に一旦巻き取る。その後、巻糸体に巻き取った未延伸糸を引き出し、延伸した後、熱処理をして巻糸体に捲き取り、本発明の合成繊維を得ることができる。
【0028】
紡糸温度(紡糸口金から吐出する温度)としては、例えば、270〜295℃が好ましく、より好ましくは280〜295℃である。
【0029】
紡糸速度(上記では未延伸糸を巻き取る速度)としては、例えば、800〜1800m/minが好ましく、より好ましくは800〜1500m/minである。
【0030】
延伸速度としては、例えば、500〜1200m/minが好ましく、より好ましくは600〜1000m/minである。
【0031】
延伸工程での熱処理温度としては、例えば、100〜180℃が好ましく、より好ましくは120〜160℃である。
【0032】
上記は、未延伸糸を一旦巻き取った後に、延伸する方法(コンベンショナル法)を例示したが、未延伸糸を一旦巻き取ることなく、延伸し、熱処理した後に巻き取る方法(直接延伸方法)にて、本発明の合成繊維を製造してもよい。
この場合、巻き取り速度は、3000〜4500m/minが好ましく、より好ましくは、3000〜4000m/minである。
【0033】
本発明の合成繊維は、未延伸糸、半延伸糸(高配向き未延伸糸)、延伸糸等のいずれの形態のものでもよい。
【0034】
上述した製造方法においては、延伸糸を得る方法を例示したが、高配向の未延伸糸を得る場合は、上述したコンベンショナル法と同様に、樹脂を溶融した吐出した後、冷却し、油剤を付与した後、第1ゴデッドロールに導き、その後、第1ゴデッドロールと等速の第2ゴデッドローラーを経由して巻糸体に高配向の半延伸糸巻き取ることにより得ることができる。それぞれのゴデッドロールを等速の3000〜4500m/min程度が好ましく、より好ましくは、3000〜4000m/minである。
【0035】
本発明において、上記より得られた合成繊維をそのまま布帛に用いても良いが、仮撚り加工、押し込み加工、ニットデニット加工など繊維が嵩高となるような加工を施してもよい。またこのような加工を施すことにより、より保温性が優れたものが得られ、また製編織した場合、編み目や織り目を、密とすることができるため、より一層遮熱性が向上する。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の測定方法は以下の通りである。
【0037】
A.破断強度、破断伸度
JIS−L−1013に準じ、島津製作所製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/minの条件で測定する。荷重−伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とする。
B.平均粒子径
透過電子顕微鏡(日本電子社製 透過電子顕微鏡 JEM−1230)を用いて写真撮影し、自動画像処理装置(LUZEX AP(ニレコ(株)製)にて体積基準の水平方向等分径を測定し、比重を計算して、重量平均の平均粒子径を求めた。
C.紡糸操業性・延伸操業性
紡糸操業性および延伸操業性は、各工程の通過性良好であれば○、工程通過性が若干悪いものを△、製糸不可であれば×とした。
D.LOI値
JIS L 1091法に準じて実施した。ポリエステル重合体を常法により紡糸延伸して得た合成繊維の脱脂を行い、その繊維1gを長さ10cmのかせ巻きを作製し、検撚器により長さ10cmの測定用サンプルを得た。その試験サンプルの限界酸素指数を試験した。
E.遮熱性
〈測定条件〉
温度:22℃、湿度:60%(室内)
〈測定法〉
合成繊維を2本双糸として、ウェール数が30本/2.54cm、コース数が60本/2.54cmの筒編地を作成し、比較サンプルとする。基準サンプルとして、難燃成分及び赤外線反射成分を含まない以外は比較サンプルと同じものを準備する。温度22℃、湿度60%の室内にて、平坦面に黒画用紙を配置し、黒画用紙の上方0.5cmに、基準サンプルを配置し、基準サンプルの上方50cmにレフランプを配置し、黒画用紙より下方に接触した状態で温度計を設置する。レフランプから500Wの光を照射し、30分経過したときの基準サンプルの温度を測定しA1とする。同様に、比較サンプルのレフランプ30分照射後の温度を測定し、S1とする。
遮熱性は以下の式にて算出する。
遮熱性(℃)=(A1)−(S1)
【0038】
〔実施例1〕
芯部に平均粒子径1.0μmの酸化チタンが含有した酸化チタン濃度40質量%マスターバッチとポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV=0.670dl/g)を酸化チタン粉末濃度として9質量%となるようにチップブレンドした。また鞘部の難燃樹脂はリン濃度10500ppmの樹脂を使用し、繊維全体のリン濃度が2100ppmに調整した。これらの樹脂を用いて、紡糸温度295℃にて丸型の吐出孔を有する紡糸口金から芯鞘比率80:20(面積比)にて吐出した。引き続き糸条を冷却、給油し、1400m/minにて未延伸糸を巻き取った。その後、未延伸糸を延伸倍率3.15倍にて延伸し、135℃で熱処理を施した後、800m/minにて捲き取り、繊度84dtex/24fの芯鞘複合繊維を得た。
【0039】
〔実施例2〕
繊度を22dtex/1fにしたことと、延伸倍率3.59倍とした以外は実施例1と同様に芯鞘複合繊維を得た。
【0040】
〔実施例3、5、7、9、10、比較例4、5〕
芯鞘比率を表1のように変更した以外は実施例1と同様に芯鞘複合繊維を得た。
【0041】
〔実施例4、6、8〕
芯鞘比率を表1のように変更した以外は実施例2と同様に芯鞘複合繊維を得た。
【0042】
〔比較例1〕
酸化チタンなどの無機粒子を添加していないポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV=0.670dl/g)を、紡糸温度295℃にて丸型の吐出孔を有す紡糸口金から吐出した。引き続き糸条を冷却、油剤を付与し、1400m/minにて未延伸糸を得た。その後、未延伸糸を延伸倍率3.63倍にて延伸し、135℃で熱処理を施してから、800m/minにて捲き取り、繊度84T/24fの単独繊維を巻き取った。
【0043】
〔比較例2〕
繊度を22dtex/1fにしたことと、延伸倍率3.80倍とした以外は比較例1と同様に単独繊維を得た。
【0044】
〔比較例3〕
平均粒子径1.0μmの酸化チタンが含有した40重量%マスターバッチとポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV=0.670dl/g)を酸化チタン粉末濃度として9.0質量%となるようにチップブレンドした。このブレンド樹脂を紡糸温度295℃にて丸型の吐出孔を有す紡糸口金から吐出した。引き続き糸条を冷却、油剤を付与し、1400m/minにて未延伸糸を採取した。そして、ボビンを延伸倍率3.0倍にて延伸を実施し135℃で熱処理を施してから800m/minにて捲き取り、繊度84dtex/24fの単独繊維を巻き取った。
【0045】
〔比較例6〕
難燃樹脂のリン濃度6000ppmの樹脂を使用し、繊維全体のリン濃度が6000ppmに調整した。この樹脂を用いて、紡糸温度290℃にて丸型の吐出孔を有す紡糸口金から吐出した。引き続き糸条を冷却、給油し、1400m/minにて未延伸糸を採取する。そして、ボビンを延伸倍率3.63倍にて延伸し135℃で熱処理を施してから800m/minにて捲き取り、繊度84dtex/24fの難燃単独繊維を巻き取った。
【0046】
得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0047】
実施例1〜10から得られた、繊維全体のリン濃度2000〜9000ppmで繊維全体の平均粒径が1μmの酸化チタンの濃度が18000〜80000ppmの合成繊維は、LOI値30以上、遮熱性が2.0〜5.3℃であり、難燃性及び遮熱性に優れたものであった。これらの合成繊維は、いずれも、強度3.7cN/dtex以上、伸度30.0%前後であり、製編織に好適に適用できる。
なお、実施例3〜8のように、赤外線反射樹脂と難燃樹脂との樹脂比率が40:60〜70:30の範囲のものが、LOI値、遮熱性、紡糸操業性、物性など特に優れていた。
比較例1及び2から得られたポリエチレンテレフタレート単独の合成繊維は、難燃性が得られないものであった。
比較例3からなる平均粒径が1μmの酸化チタンを含む赤外線反射樹脂のみからなる合成繊維は、遮熱性能はあるものの難燃性、紡糸・延伸操業性が極端に低く、製編織の工程通過性も不良だった。
比較例4は鞘部の難燃樹脂の比率が小さく、難燃性能が十分でなかった。
比較例5は芯部の赤外線反射樹脂の比率が小さく、熱線や可視光線を反射する面積が極端に小さくなるため、ほとんど遮熱効果が得られなかった。さらに紡糸操業性も悪くなる傾向となった。
比較例6は赤外線反射樹脂を含まないため、遮熱効果が得られなかった。
このように、リン濃度の高い難燃樹脂を鞘部に配置すると難燃成分が少量であっても、高い難燃性能を付与することができ、また鞘部の比率を小さくすることができるため、芯部の比率を大きくし、熱線や可視光線などの波長の光を効率的に反射させることが可能となり、難燃性、遮熱性ともに高い繊維を提供できる。
【0048】
実施例1から得られた繊維を50%の混率で布帛を製造し、ボイルカーテンとした。同様に、実施例5から得られた繊維を用いてボイルカーテンを製造した。また同様に、比較例1の繊維を、100%用いて布帛を製造し、ボイルカーテンとした。これらのボイルカーテンに火を翳したところ、実施例1、5から得られたボイルカーテンは少し焦げたのみであったのみ対し、比較例1から得られたボイルカーテンは燃えた。晴天下、実施例1、5、比較例1から得られたボイルカーテンを、同様の条件で、室内の窓にかけて、2時間経過した後に、室内の温度を測定した。実施例1、5から得られた繊維を用いたボイルカーテンは、比較例1から得られたものと比べて、それぞれ、実施例1で5℃以上、実施例6で3℃室内温度が低下し、いずれも遮熱性に優れたものであった。
【0049】
実施例2、4、6、8から得られた繊維をそれぞれ、50%の混率で布帛を製造し、それぞれをレースカーテンとした。同様に比較例2から得られた繊維を用いてレースカーテンを製造した。これらのレースカーテンに火を翳したところ、実施例2、4、6、8から得られたレースカーテンは少し焦げたのみであったのみ対し、比較例2から得られたレースカーテンは燃えてしまった。晴天下、実施例2、4、6、8、比較例2から得られたボイルカーテンを、同様の条件で、室内の窓にかけて、2時間経過した後に、室内の温度を測定した。実施例2から得られた繊維を用いたレースカーテンは、比較例1から得られたものと比べて、5℃、室内温度が低下し、遮熱性に優れていた。また実施例4、6、8から得られたレースカーテンは、それぞれ、比較例2のものと比べて、2〜4℃室内温度が低下し遮熱性は良好であった。