特許第6355355号(P6355355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355355
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】吸着式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/00 20060101AFI20180702BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F25B39/00 K
   F25B17/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-26119(P2014-26119)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-152224(P2015-152224A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−281281(JP,A)
【文献】 特開2012−122711(JP,A)
【文献】 特開2004−321885(JP,A)
【文献】 特開平10−089805(JP,A)
【文献】 国際公開第90/010491(WO,A1)
【文献】 特開平07−251067(JP,A)
【文献】 特表2002−543366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 17/00 − 17/12
F25B 35/00 − 37/00
F25B 39/00 − 39/04
F28D 1/053
F28F 1/30
F28F 21/02
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管の加熱/冷却により吸着材を加熱/冷却して、前記吸着材への吸着質の脱離/吸着を行うように構成した吸着式熱交換器において、
前記伝熱管を、間隙を空けて複数設けると共に、前記間隙に前記吸着材を充填させ、
前記吸着材を、粒子状の吸着材と、繊維状の吸着材との混合材とし、
前記間隙に充填された混合材における前記繊維状の吸着材の密度を、前記伝熱管の近傍ほど高くしたことを特徴とする吸着式熱交換器。
【請求項2】
記繊維状の吸着材は、平均長さが、前記伝熱管の間隙の1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸着式熱交換器。
【請求項3】
前記粒子状の吸着材と前記繊維状の吸着材の混合材は、前記繊維状の吸着材で形成した収容部材内に収容された状態で、前記間隙に充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸着式熱交換器。
【請求項4】
前記繊維状の吸着材は、少なくとも活性炭繊維を含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の吸着式熱交換器。
【請求項5】
前記粒子状の吸着材は、少なくとも活性炭を含む炭素系材料で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の吸着式熱交換器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸着材を用いて空気の湿度調節を行う調湿装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−111425号公報
【0004】
特許文献1に示す調湿装置は、並列に配置された複数の伝熱管が、間隔を開けて配置された複数枚のフィンを貫通して設けられた構成の吸着式熱交換器を有している。
この吸着式熱交換器では、伝熱管内を通流する熱交換媒体により、伝熱管とフィンの表面に担持された吸着材(ゼオライト粒子)を加熱/冷却することで、水などの吸着質を、吸着材に対して脱離/吸着させるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、吸着材の量を増やして、調湿装置の吸着性能を向上させようとした場合、フィンの表面積は限られているので、フィンの枚数を増やすことで吸着材の量を増やすことが考えられるが、フィンの枚数を増やした場合には、熱交換器が大型化してしまう。
【0006】
そのため、熱交換器を大型化させることなく吸着材の量を増やせるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、伝熱管の加熱/冷却により吸着材を加熱/冷却して、前記吸着材への吸着質の脱離/吸着を行うように構成した吸着式熱交換器において、
前記伝熱管を、間隙を空けて複数設けると共に、前記間隙に前記吸着材を充填させ、
前記吸着材を、粒子状の吸着材と、繊維状の吸着材との混合材とし、
前記間隙に充填された混合材における前記繊維状の吸着材の密度を、前記伝熱管の近傍ほど高くした構成の吸着式熱交換器とした。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸着材が、伝熱管と伝熱管との間隙に直接充填されているので、フィンを設ける場合よりも吸着材の量を増やすことができる。
よって、フィンを増やすことなく吸着材の量を増やすことができるので、熱交換器を大型化させることなく吸着材の量を増やして、調湿装置の吸着性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる圧縮機を説明する図である。
図2】実施の形態にかかる吸着式熱交換器を説明する図である。
図3】実施の形態にかかる吸着材を説明する図である。
図4】他の実施の形態に係る吸着材および収容部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、車両用エアコンを作動させる際に使用する圧縮機に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、実施の形態にかかる吸着式熱交換器100を採用した圧縮機1を説明する図である。なお、図1では、圧縮機1の形状を、説明の便宜上、模式的に示している。
【0011】
圧縮機1は、吸着式熱交換器100の吸着材が、空気中の水分(吸着質)を吸着する力(吸着力)を利用して、吸着式熱交換器100を収容した容器10内の圧力を変化させる装置であり、例えば車両用の空調装置に採用されている。
【0012】
この圧縮機1では、円筒形状の容器10の一端側に、図示しないエバポレータ(蒸発器)に接続された供給管12が接続されており、他端側に、図示しないコンデンサ(凝縮器)に接続された排出管14が接続されている。
圧縮機1では、エバポレータ側から供給管12を介して供給された流体が、容器10内を通過したのち、排出管14を介してコンデンサ側に供給されるようになっている。
そして、流体が容器10内を通過する際に、容器10内に配置された吸着式熱交換器100で、流体に含まれる吸着質の吸着、または吸着式熱交換器100の吸着材に吸着されている吸着質の放出を行うことで、容器10内の圧力が減圧、または加圧されるようになっている。
【0013】
以下、吸着式熱交換器100の具体的な構成を説明する。
図2は、実施の形態にかかる吸着式熱交換器100を説明する図であり、(a)は、吸着式熱交換器100の平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面の拡大図である。図3は、図2の(a)における領域Pの拡大図である。
なお、図2および図3では、吸着式熱交換器100および吸着材200の形状を、説明の便宜上、模式的に示している。
【0014】
吸着式熱交換器100は、分岐用タンク120と合流用タンク140との間で互いに並列に配置した伝熱管130と伝熱管130の間隙L1に、吸着材200を充填した基本構成を有している。
【0015】
吸着式熱交換器100では、熱交換媒体B(温水または冷水)が供給される供給管110と、複数の伝熱管130の一端とが、分岐用タンク120を介して接続されており、供給管110を介して供給された熱交換媒体Bが、分岐用タンク120で分岐されて、各伝熱管130に供給されるようになっている。
さらに、複数の伝熱管130の一端と、排出管150とが、合流用タンク140を介して接続されており、各伝熱管130を通流した熱交換媒体Bが、合流用タンク140を通って、排出管150から排出されるようになっている。
【0016】
伝熱管130は、熱伝導率の高いアルミニウムまたは銅で形成された筒状の部材であり、内部を流れる熱交換媒体Bの高温/低温の熱を、隣接する伝熱管130との間隙L1に充填された吸着材200に伝達するために複数設けられている。
【0017】
吸着式熱交換器100は、複数の伝熱管130を容器10の長手方向に対してほぼ直交させた向きで容器10内に配置されており、複数の伝熱管130は、容器10内を通過する流体の移動方向を横切る向きで配置されている(図1参照)。
【0018】
この吸着式熱交換器100では、伝熱管130内を通流する高温/低温の熱交換媒体Bにより伝熱管130を加熱/冷却することで、伝熱管130と伝熱管130との間隙L1に充填された吸着材200が加熱/冷却されて、容器10内を通過する流体に含まれる吸着質の吸着、または吸着式熱交換器100の吸着材200に吸着されている吸着質の流体への放出を行うようになっている。
【0019】
ここで、例えば、圧縮機1の容器10内を通過する流体が水分(吸着質)を含む気体である場合には、吸着材200を冷却すると、気体中の水分が吸着材200に吸着されて、容器10内の圧力が低下し、吸着材200を加熱すると、吸着材200に吸着されていた水分が放出されて、容器10内の圧力が上昇することになる。
【0020】
以下、吸着材200について説明する。
図2の(b)および図3に示すように、吸着材200は、各々の伝熱管130と伝熱管130の間隙L1を含む想像線Sで示す範囲に設けられている。
【0021】
実施の形態では、粒子状吸着材210と、繊維状吸着材220とを混合した混合材を、吸着材200として採用している。
【0022】
粒子状吸着材210は、表面に多くの微細孔が形成された活性炭の粒子である。
実施の形態では、比表面積が、1000〜3200m2/gの範囲であり、熱伝導率は、0.1〜1.2W/m・Kの範囲である粒子状の活性炭を、粒子状吸着材210として採用している。
【0023】
繊維状吸着材220は、活性炭からなる繊維状の吸着材であり、実施の形態では、平均粒径が約2〜50μmで、平均長さが伝熱管130と伝熱管130の間隙L1の1/2以上の長さであるものを繊維状吸着材220として採用している。
なお、繊維状吸着材220の熱伝導率は、粒子状吸着材210とほぼ同じである。
【0024】
ここで、粒子状吸着材210は、隣接する他の粒子状吸着材210との接触面積が小さいので、伝熱管130、130の間隙L1に充填した吸着材200を粒子状吸着材210のみにすると、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210への熱の伝わりが悪くなる。
実施の形態では、粒子状吸着材210に、伝熱材としての役割を果たす繊維状吸着材220を混ぜて吸着材200としており、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210であっても、繊維状吸着材220を介して、熱を伝えることができるようにしている。
これにより、伝熱管130を加熱/冷却した際に、伝熱管130から離れた位置にある吸着材200であっても応答性良く加熱/冷却できるので、粒子状吸着材210を含む吸着材200への吸着質の脱離/吸着を適切に制御できるようにしている。
【0025】
図3に示すように、繊維状吸着材220は、伝熱管130の近傍領域(第1領域Q1)での密度のほうが、隣接する伝熱管130と伝熱管130の中間領域(第2領域Q2)での密度よりも高くなるように設けられており、伝熱管130に近づくにつれて、繊維状吸着材220の密度が高くなっている。これは、伝熱材としての役割を果たす繊維状吸着材220と伝熱管130との接触機会を増やすためである。
【0026】
ここで、繊維状吸着材220は、長手方向における一端側が、伝熱管130の表面と接触し、他端側が、隣接する伝熱管130、130の間の領域(第2領域Q2)内に位置するように設けられていることが好ましい。
そして、繊維状吸着材220は、伝熱管130の径方向に延びるように配置されており、伝熱管130周りの周方向で、放射状に配置されることが好ましい。
【0027】
このように繊維状吸着材220を設けると、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210に、伝熱管130の高温/低温の熱を確実に伝達できるようになるからである。つまり、伝熱管130が加熱/冷却されると、伝熱管130の表面と接触している繊維状吸着材220が始めに加熱/冷却されたのち、この加熱/冷却された繊維状吸着材220に接触している粒子状吸着材210が加熱/冷却されるので、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210であっても、繊維状吸着材220に接触している限り、繊維状吸着材220を介して熱が伝達されて加熱/冷却されることになる。よって、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210であっても、応答性良く加熱/冷却できることになる。
【0028】
前記したように、繊維状吸着材220は、隣接する伝熱管130、130の間の間隙L1の1/2以上の長さのものが用いられているので、繊維状吸着材220が、複雑に屈曲した状態で間隙L1内に配置された場合であっても、繊維状吸着材220の他端側が、隣接する伝熱管130、130の間の中間領域(第2領域Q2)まで到達できるようになっている。そのため、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210に、伝熱管130の高温/低温の熱をより確実に伝達できるようになっている。
【0029】
また、繊維状吸着材220の長さを、隣接する伝熱管130、130の間の間隙L1の1/2以上の長さにすることで、隣接する伝熱管130、130のうちの一方から延びる繊維状吸着材220と、他方から延びる繊維状吸着材220とが、伝熱管130、130の間の中間領域(第2領域Q2)で絡み合うように設けられるようになっている。
そのため、伝熱材としての役目を果たす繊維状吸着材220により、伝熱管130、130の間の中間領域(第2領域Q2)の略全域に亘って、伝熱管130の高温/低温の熱を伝達できるようになる。
【0030】
次に、粒子状吸着材210と繊維状吸着材220の混合および間隙L1への充填方法の一例について説明する。
【0031】
初めに、隣接する伝熱管130、130の間の間隙L1に、繊維状吸着材220を充填する。
ここで、伝熱管130、130の間での繊維状吸着材220の保持は、(a)繊維状吸着材220を伝熱管130の外周に絡めるように設ける、(b)伝熱管130の外周に塗布した接着剤に接着させる、などの伝熱管130、130の間に繊維状吸着材220を保持させることのできる任意の方法にて行うことができる。
【0032】
続いて、繊維状吸着材220が配置された伝熱管130、130の間の間隙L1に、粒子状吸着材210を充填する。
ここで、粒子状吸着材210は、比表面積が大きいので、繊維状吸着材220の上に粒子状吸着材210を単純に散布しただけでは、伝熱管130、130の間の間隙L1に、十分な量の粒子状吸着材210を充填することはできない。
よって、繊維状吸着材220の上に粒子状吸着材210を散布したのち、いわゆるタッピングにより振動を加えて、絡み合った繊維状吸着材220の間に粒子状吸着材210が入り込むようにすることが好ましい。
【0033】
さらに、比表面積の大きい粒子状吸着材210は、かさ密度も大きいので、タッピングを行って、粒子状吸着材210に振動を加えることで、粒子状吸着材210の粒子と粒子の隙間が詰まって、より多くの粒子状吸着材210を繊維状吸着材220の間に密に充填することが可能となる。
【0034】
なお、粒子状吸着材210の脱落を防止するために、気体透過性の材料から成るシートであって、粒子状吸着材210の粒子径よりも小さい開口を有するものを、吸着式熱交換器100で並列に配置された伝熱管130を囲むように設けて、このシートの内側に、粒子状吸着材210と繊維状吸着材220との混合材である吸着材200を収容して、吸着材200を、伝熱管130、130の間隙L1と、伝熱管130の周囲に配置するようにしても良い。
【0035】
このようにして、粒子状吸着材210と繊維状吸着材220との混合材である吸着材200を、伝熱管130の間隙L1に充填すると、伝熱管130、130の間隙L1と、伝熱管130の周囲に吸着材200が配置された吸着式熱交換器100を得ることができる。
【0036】
さらに、粒子状吸着材210と繊維状吸着材220の混合材に、粒子状吸着材210の比表面積が大きく損なわれない程度の圧力をかけることで、混合材を所定の形状に成型し、成型した混合材を伝熱管130の間隙L1に充填するようにしても良い。
【0037】
以上の通り、実施の形態では、
伝熱管130の加熱/冷却により吸着材200を加熱/冷却して、吸着材200への水分(吸着質)の脱離/吸着を行うように構成した吸着式熱交換器において、伝熱管130を、間隙L1を空けて複数設けると共に、間隙L1に吸着材200を充填させた構成とした。
【0038】
このように構成すると、吸着材200が、伝熱管130と伝熱管130との間の間隙L1に直接充填されているので、フィンを設ける場合よりも吸着材200の量を増やすことができる。
よって、フィンを増やすことなく吸着材200の量を増やすことができるので、吸着式熱交換器100を大型化させることなく吸着材200の量を増やすことができる。
【0039】
さらに、吸着材200を、粒子状吸着材210(粒子状の吸着材)と、繊維状吸着材220(繊維状の吸着材)との混合材にする構成とした。
【0040】
粒子状吸着材210は、隣接する他の粒子状吸着材210との接触面積が小さいので、伝熱管130の間隙L1に充填した吸着材200を粒子状吸着材210のみにすると、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210への熱の伝わりが悪くなる。そうすると、伝熱管130を加熱/冷却した際に、吸着材200を応答性良く加熱/冷却することが難しくなるので、吸着材200への水分(吸着質)の脱離/吸着の制御が難しくなる。
上記のように構成すると、繊維状吸着材220が伝熱材の役割も果たすことで、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210に熱を伝えることができる。よって、伝熱管130を加熱/冷却した際に、伝熱管130から離れた位置にある吸着材200であっても応答性良く加熱/冷却できるので、吸着材200への水分(吸着質)の脱離/吸着を適切に制御できるようになる。
【0041】
間隙L1に充填された混合材における繊維状吸着材220の密度を、伝熱管130の第1領域Q1(伝熱管130の近傍)ほど高くした構成とした。
【0042】
このように構成すると、伝熱管130(伝熱材)としての役割も果たす繊維状吸着材220と伝熱管130との接触機会が増えるので、伝熱管130の熱を、伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210により確実に伝えることができる。
【0043】
繊維状吸着材220は、少なくとも活性炭繊維を含む構成とした。
【0044】
このような構成にすると、活性炭繊維が熱媒体(伝熱管)としての役目を果たすので、伝熱管130の熱を伝熱管130から離れた位置にある粒子状吸着材210に確実に伝達できる。また、活性炭繊維は、高分子系材料やゼオライトと比べて熱伝導率が高いので、伝熱管130からの熱を吸着材200の隅々まで応答性良く伝達することができる。
【0045】
粒子状吸着材210は、少なくとも活性炭を含む炭素系材料で構成されている構成とした。
【0046】
このような構成にすると、活性炭は高分子系の吸着材や鉱物系のゼオライトと比べて熱伝導率が高いので、伝熱管130からの熱を吸着材200の隅々まで素早く伝達することができる。
よって、吸着材200への水分(吸着質)の脱離/吸着をより確実に行うことができる。
【0047】
以下、伝熱管130、130の間に充填される吸着材200の充填方法の変形例を説明する。
図4は、伝熱管130、130の間に充填される吸着材200の充填方法の変形例を説明する図である。図4の(a)は、繊維状吸着材220で形成した収容部材240の斜視図であり、(b)は、収容部材240を伝熱管130の間隙L1に充填した状態を示す図であり、(c)は、(b)における領域Rを拡大して示す図である。
なお、図4では、吸着材200、収容部材240、吸着式熱交換器100の形状を、説明の便宜上、模式的に示している。また、前記した実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
伝熱管130、130の間に充填される吸着材200の充填方法の変形例では、粒子状吸着材210および繊維状吸着材220を混合した吸着材200は、繊維状吸着材220で形成した収容部材240内に収容された状態で、伝熱管130と伝熱管130の間隙L1に充填されている。
【0049】
変形例にかかる充填方法で用いる収容部材240は、繊維状の活性炭を織り込んで作製した袋状の部材であり、その内部には、吸着材200である粒子状吸着材210と繊維状吸着材220とが、混合された状態で収容されている。
この収容部材240は、有底袋状の収容部242内に吸着材200を充填したのち、収容部242の開口246を紐などで封止することで、袋状に形成されるようになっている。
【0050】
ここで、収容部材240では、繊維状吸着材220の長手方向の一端が、収容部242の内壁面242Aに編み込みなどの手段で固定され、他端が、内壁面242Aから収容部242の内側に向かって延びるように配置されていることが好ましい。
このように構成すると、伝熱管130から収容部材240の収容部242に伝わった熱を、収容部242に一端が固定された繊維状吸着材220に伝えることができるので、収容部242内に充填された粒子状吸着材210のうち、収容部242の内壁面242Aから離れた位置にある粒子状吸着材210に、繊維状吸着材220を介して、より確実に熱を伝えることができるようになるからである。
【0051】
ここで、吸着材200を収容した収容部材240を、伝熱管130、130の間に充填する方法の一例を説明する。
【0052】
始めに、図4の(b)に示すように、吸着材200(粒子状吸着材210と繊維状吸着材220との混合材)を収容した収容部材240を複数作成したのち、収容部材240を、吸着式熱交換器100の伝熱管130と伝熱管130との間隙L1に、隙間無く順番に充填する。
【0053】
ここで、収容部材240は、吸着材200が収容された状態で任意の形状に変形可能となっている。そのため、収容部材240を隣接する伝熱管130、130の間に充填する際には、収容部材240を伝熱管130の外周に沿う形状に変形させつつ、伝熱管130、130の間に押し込むことで、収容部材240を伝熱管130の外周に接触させた状態で設けることができるようになっている。
これにより、伝熱管130の熱を、収容部材240に確実に伝えることができるようになっている。
【0054】
このように、変形例では、粒子状吸着材210と繊維状吸着材220との混合材を、繊維状の吸着材で形成した収容部材240内に収容した状態で、伝熱管130、130の間に充填する構成とした。
【0055】
このようにすると、伝熱管130と伝熱管130の間隙L1に粒子状吸着材210と繊維状吸着材220を簡単に充填することができるので、吸着式熱交換器100の組み立てが容易になる。
また、吸着材200を収容部材240に収容することで、伝熱管130から収容部材240に伝わった熱を、収容部材240内の粒子状吸着材210と繊維状吸着材220の全体に伝えることができる。
よって、伝熱管130を加熱/冷却した際に、吸着材200を確実に加熱/冷却できるので、吸着材200への水(吸着質)の脱離/吸着を適切に制御できるようになる。
【0056】
また、収容部材240は、繊維状吸着材220を編み込んで形成されているため、伝熱管130との接触面である収容部材240の表面の繊維密度は、収容部材240内の密度よりも高くなっている。
このため、収容部材240を伝熱管130の間隙L1に充填すると、収容部材240の表面は伝熱管130と密に接触するので、伝熱管130の熱を収容部材240内の粒子状吸着材210および繊維状吸着材220に確実に伝達することができる。
【0057】
なお、図4の(c)に示すように、伝熱管130の径方向外側に突出する突起132を伝熱管130の長手方向に沿って複数設けて、収容部材240を充填する際の位置決めができるようにしても良い。
このようにすると、収容部材240を伝熱管130の間隙L1の所定の位置に容易に充填できる。
【0058】
上記したように、粒子状吸着材210と繊維状吸着材220の混合材は、繊維状吸着材220で形成した収容部材240内に収容された状態で、間隙L1に充填される構成とした。
【0059】
なお、上記した変形例では、収容部材240を、繊維状の活性炭を織り込んで作製した場合を例示したが、活性炭からなる繊維状の材料を不織布のように絡み合わせることで、収容部材240を形成するようにしても良い。
このようにすることによっても、上記した場合と同様の効果が奏されることになる。
【0060】
前記した実施の形態では、吸着材200(粒子状吸着材210および繊維状吸着材220の混合材)が、活性炭である場合を例示したが、活性炭と同等の熱伝導性と吸着性能を発揮できる材料であれば、活性炭の代わりに採用することが可能である。
このような材料として、例えば、炭、グラファイト、シリカゲル、活性アルミナ、活性ボーキサイト、合成シリカゲルなどの合成吸着材(高分子系吸着剤)、そして高分子系の吸着材料などやこれらの吸着材を組み合わせた材料も好適に使用可能である。
【0061】
このように構成することによっても、前記した実施の形態の場合と同様の効果が奏されることになる。
【0062】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 圧縮機
100 吸着式熱交換器
110 供給管
120 分岐用タンク
130 伝熱管
132 突起
140 合流用タンク
150 排出管
200 吸着材
210 粒子状吸着材
220 繊維状吸着材
240 収容部材
B 熱交換媒体
L1 間隙
図1
図2
図3
図4