(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一の実施の形態に係るピンチバルブの閉状態を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施の形態に係るピンチバルブの開状態を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の第一の実施の形態に係るピンチバルブの開状態を示す流路軸線と直行する方向からの縦断面図である。
【
図4】
図1〜3のピストンと復元補助部材の外観斜視図である。
【
図5】(a)は本発明の第一の実施の形態に係るピンチバルブの駆動部の組み立て手順を示す縦断面図である。(b)は本発明の第一の実施の形態に係るピンチバルブの駆動部の組み立て手順を示す他の縦断面図である。
【
図6】本発明の第二の実施の形態に係るピンチバルブの概略構成を示す流路軸線と直行する方向からの縦断面図である。
【
図7】本発明の第三の実施の形態に係るピンチバルブの概略構成を示す縦断面図である。
【
図9】従来の他のピンチバルブを示す縦断面図である。
【0024】
―第一の実施の形態―
以下、
図1〜
図5を参照して、本発明によるピンチバルブの第一の実施の形態について説明する。
図1はピンチバルブの閉状態を示す縦断面図であり、
図2、3はピンチバルブの開状態を示す縦断面図であり、
図4はピンチバルブの構成部品の外観斜視図であり、
図5はピンチバルブの構成部品の組み立て手順を示す縦断面図である。
【0025】
第一の実施の形態に係るピンチバルブ1は、内部に開閉可能な流路2を有する管体3と、管体3を径方向に押圧して流路2を開閉させる挟圧子4と、挟圧子4と一体的に固定され管体3の閉状態から開状態への復元を補助する復元補助部材5と、挟圧子4を駆動する駆動部6とを備える。ここで、押圧手段とは挟圧子4および挟圧子4と一体化している部材を指している。また、復元補助手段とは復元補助部材5を指している。第1の実施の形態では、復元補助部材5が特徴的な構成である。
【0026】
第一の実施の形態において、ピンチバルブ1は、本体7と、管体3の両端部に取り付けられる継手11とを有する。また、駆動部6は、本体7の上部に固定されるシリンダー本体8と、シリンダー本体8の上端部に取り付けられるシリンダー蓋9と、シリンダー蓋9に取り付けられるカバー10と、外部から供給される圧縮空気によってシリンダー本体8内で昇降するピストン12とを有する。
【0027】
第一の実施の形態において、本体7はポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと記す)製である。
図1〜3に示すように、本体7は略四角柱形状に形成されている。本体7の上端面には、シリンダー本体8がボルト・ナット(図示せず)で接合固定される。本体7には、管体3を収容する収容部である管体収容部13と、復元補助部材5を収容する収容部である復元補助部材収容部14とを備える第一収容部15が形成されている。管体収容部13は本体7の上面の流路軸線上に形成され、復元補助部材収容部14は、管体3を隔てて管体収容部13の両側にこれと連通するように形成されている。また、
図3に示すように、復元補助部材収容部14の深さは管体収容部13の深さよりも深く形成されている。
【0028】
第一の実施の形態において、シリンダー本体8はPPS製である。
図1〜3に示すように、シリンダー本体8は略四角柱形状に形成されている。シリンダー本体8の上部には、円筒状空間を形成するシリンダー部16が形成されている。シリンダー部16の上端部には、中央に貫通孔が形成された板状のシリンダー蓋9が固定されている。シリンダー本体8の下部には、ピストン12の軸部26の下部と復元補助部材5とを収容する第二収容部17が形成されている。シリンダー本体8の中間部には、シリンダー部16と第二収容部17とを連通し、ピストン12の軸部26が貫通する貫通孔18が形成されている。貫通孔18の上方には、シリンダー部16の内周面及び底面とシリンダー部16に組み込まれたピストン12の円盤部24下端面とによって第一の空間部19が形成される。さらに、ピストン12の上方には、シリンダー部16の内周面とシリンダー蓋9の下端面とピストン12の円盤部24上端面とによって第二の空間部20が形成されている。第二の空間部20にはピストン12を管体3方向に付勢するバネ22が配置されている。シリンダー本体8の周側面には第一の空間部19に連通する空気孔21が設けられ、空気孔21を介して各空間部19に圧縮空気供給機器など(図示せず)から圧縮空気が供給される。また、シリンダー本体8の流路軸線と直交する方向の両方の側面には、挟圧子4と復元補助部材5とを一体的に固定するための固定ピン37を通過させるための貫通孔23が形成されている。
【0029】
第一の実施の形態において、ピストン12はステンレススチール(以下、SUSと記す)製である。
図1〜3に示すように、円盤部24と開度制御部25と軸部26とを備えている。円盤部24は円盤形状で周側面にOリングが装着され、シリンダー部16の内周面に上下動可能かつ密封状態に嵌合されている。開度制御部25は円盤部24の中央から垂直に突出して設けられ、第一開度制御部27と第二開度制御部28を備えている。第一開度制御部27は円柱形状で円盤部24の上面中央から垂直に突出し、第二開度制御部28は第一開度制御部27より小径の円柱形状で第一開度制御部27の上端中央より垂直に突出している。第二開度制御部28はシリンダー蓋9の中央部に設けられた貫通孔を貫通し、先端部にはナット29が螺合される雄ネジ部が形成されている。軸部26は円盤部24の下面中央から突出して設けられ、シリンダー本体8に設けられた貫通孔18を密封状態で貫通している。軸部26の下部の流路軸線方向の側面にはピストン12の回動を防ぐために面取部(図示せず)が形成され、軸部26の先端部の流路軸線方向の側面には、当該先端部が流路軸線方向に狭くなるようにテーパーが形成されている。また、軸部26の先端部には挟圧子4が設けられている。
【0030】
挟圧子4はピストン12の軸部26の先端部に設けられている。
図1〜4に示すように、挟圧子4の管体3を押圧する部分は、流路軸線方向に直交する方向に長手方向を有する断面略矩形の流路軸線方向の両端角部にRを付した形状、すなわちかまぼこ形状に形成されている。挟圧子4の流路軸線と直交する側面同士間に貫通孔30が形成されている。挟圧子4の流路軸線と直交する側面には、一対の復元補助部材5が挟圧子4を挟持するように固定されている。第一の実施の形態では、挟圧子4はピストン12と一体に形成されているが、挟圧子4がピストン12と別体に形成され、挟圧子4とピストン12とを接着や螺合などの手段で一体的に固定してもよい。
【0031】
第一の実施の形態において、一対の復元補助部材5はPPS製である。
図3、4に示すように、一対の復元補助部材5は略四角柱形状でそれぞれ固定部31、管体受容部32および補助部33を有している。一対の復元補助部材5は、それぞれ管体受容部32が管体3側に向くように、固定ピン37で挟圧子4の流路軸線と直交する両方の側面に一体的に固定されている。
【0032】
復元補助部材5の上部には、復元補助部材5を挟圧子4に固定する固定部31が形成されている。固定部31には復元補助部材5を挟圧子4に一体的に固定するための固定ピン37を嵌挿するための貫通孔38が形成されている。第一の実施の形態では、挟圧子4と復元補助部材5とが固定ピン37によって一体的に固定されているが、挟圧子4と復元補助部材5との固定方法は特に限定されない。固定ピン37による固定方法の他には、接着、溶接、融着、嵌合、ネジによる締結などの固定方法があげられる。
【0033】
復元補助部材5の中間部には
、凹面である切欠部が形成されている。この切欠部
(凹面)が押圧された管体3の押し潰された部分を、つまり管体3の少なくとも一部を受け入れる管体受容部32となる。第一の実施の形態では、一対の復元補助部材5が挟圧子4に固定されたときの管体受容部32同士の間の幅が全閉時の管体3の幅、すなわち管体3が押し潰されたときの幅よりも僅かに広い幅になるように形成されているが、管体受容部32同士の間の幅は特に限定されない。例えば、押し潰された管体3を速やかに復元するために、管体受容部32同士の間の幅が押し潰された管体3の幅よりも少し狭い幅となるように形成されてもよい。また、温度や内圧による管体3の膨張を考慮して、管体受容部32同士の間の幅が押し潰された管体3の幅よりも広い幅となるように形成されてもよい。また、管体受容部32の形状は特に限定されておらず、半円形状、矩形状などがあげられる。
【0034】
復元補助部材5の下部には、管体受容部32の凹面から連続的に隆起する凸面を有する補助部33が形成されている。補助部33は、管体3に加えられた押圧力が解放されるときに挟圧子4の押圧方向
及び流路軸線方向と直交する方向に管体3を押圧することにより、管体3の形状が復元するのを補助する。第一の実施の形態では、補助部33の管体3側の凸面は曲面と平面から形成されている。補助部33の上部には、互いの流路軸線方向に直交する方向の距離が固定部31に近づくにつれて広くなる曲面34が形成され、中間部には挟圧子4の軸線と平行な平面35が形成され、下部には管体3から遠ざかる方向にテーパー面36が形成されている。補助部33の形状は特に限定されず、例えば、補助部33の管体3側の凸面がピストン12の軸線と平行な平面のみで形成されてもよい。また、補助部33の管体3側の凸面が曲率の異なる複数の曲面で形成されてもよい。さらに、補助部33の管体3側の凸面同士の距離が、これら凸面同士の間隔が固定部31に近づくにつれて広くなるような傾斜面で形成されてもよい。第一の実施の形態では、一対の復元補助部材5が挟圧子4に固定されたときの補助部33の平面35間の幅は全開状態における管体3の幅よりも僅かに狭い幅となるように形成されている。一対の復元補助部材5の管体3の(断面形状の)復元を補助する部分間の幅は特に限定されておらず、例えば、管体3が全閉状態から半開状態に復元するまでの間だけ管体3に対する補助が必要な場合は、管体3の復元を補助する部分間の幅が半開状態における管体3の幅と同等の幅に形成されてもよい。なお本発明では、「管体3の幅よりも僅かに狭い幅」とは、管体3の幅の90%〜99%の幅をいうものとする。
【0035】
復元補助部材5の流路軸線方向の長さは特に限定されないが、より安定して管体3の復元を補助するためには、前記補助部33の流路軸線方向の長さが全閉状態の管体3の内周面が互いに接触している部分の流路軸線方向の長さよりも長く形成されていることが望ましい。また、復元補助部材5は必ずしも一対で対向して配置される必要はなく、管体3の復元を補助することができれば、復元補助部材5の数および配置は特に限定されない。例えば、ひとつの復元補助部材5を管体3の流路軸線方向と直交する一方の側面に配置してもよく、四個の復元補助部材5を流路軸線方向と直交する側面にジグザグ形状に配置してもよい。
【0036】
図1〜3に示すように、管体3は内層39と外層40とを有する二重構造となっている。第一の実施の形態において、内層39はパーフロロエラストマーから形成され、外層40はフッ素ゴムから形成されている。管体3は、外層40の100%モジュラス値が内層39の100%モジュラス値よりも大きくなるように、外層40と内層39の材料が選定されている。外層40の100%モジュラス値を内層39の100%モジュラス値よりも大きくすると、管体3が挟圧子4によって押圧された状態から元の状態に復元するときに、外層40が内層39を引っ張るため、復元性に優れた管体3を形成することができる。管体3端部には継手11の端部が水密状態で挿入され、管体3の継手11の端部が挿入された部分は本体7とシリンダー本体8によって水密状態で挟持固定される。また、継手11は本体7とシリンダー本体8によって挟持固定されるとともに、本体7とシリンダー本体8に対して凹凸嵌合されている。
【0037】
ここで、100%モジュラス値とは、ゴム弾性体に一定の引張り変形を与えたときの応力、すなわち、その物体が原型を保つために抵抗し元の形状に復元しようとする力を指し、100%伸び時における引張り応力(MPa)をJIS K 6251に従い、JISダンベル状3号型試験片を用いて、試験温度23℃にて測定した値である。
【0038】
第一の実施の形態では、管体2は二重構造となっているが、一重構造でも多重構造でもよく、特に限定されない。また、管体3の材質は、流路2を開閉するために挟圧子4によって流路断面形状を変形することができ、使用する流体や環境によって侵されない材質であれば特に限定されない。例えば、パーフロロエラストマー、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどのエラストマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチックがあげられる。また、本発明において、管体3の流路断面形状は特に限定されない。例えば、楕円形状、円形状、三日月形状、紡錘形状などが挙げられる。
【0039】
次に、第一の実施の形態に係るピンチバルブの組立方法について
図5を参照して説明する。まず、
図5(a)に示すように、ピストン12がシリンダー部16側からシリンダー本体8に挿入され、ピストン12の軸部26がシリンダー本体8の貫通孔18に挿通される。次に、シリンダー本体8と軸部26の先端の挟圧子4と一対の復元補助部材5とがそれぞれの貫通孔23、30、38の軸線が一致するように配置される。そして、
図5(b)に示すように、固定ピン37がシリンダー本体8の貫通孔18から挿入され、挟圧子4と一対の復元補助部材5とが一体的に固定される。このとき、固定ピン37はシリンダー本体8には嵌挿されていないので、挟圧子4と一対の復元補助部材5はシリンダー本体8の第一収容部15内を上下動自在に移動することができる。最後に、本体7にシリンダー本体8がボルト・ナット(図示せず)で締結され、ピンチバルブが組み立てられる。シリンダー本体8を本体7に組み込むときに、管体3が一対の復元補助部材5の間を通過するが、復元補助部材5の補助部33の下部にテーパー面36が形成されているので、管体3が一対の復元補助部材5の間を円滑に通過することができる。
【0040】
第一の実施の形態では、ピストン12の挟圧子4と復元補助部材5が一体的に固定されているが、挟圧子4と復元補助部材5とが射出成形や切削加工などによって一体に形成されてもよい。この場合は、ピストン12の軸部26がシリンダー本体8の貫通孔18を貫通することができないので、挟圧子4と軸部26とを別個に形成する必要がある。
【0041】
次に、第一の実施の形態に係るピンチバルブの主要な作用について説明する。
図1に示すように、ピンチバルブが全閉状態において、圧縮空気が空気孔22から第一の空間部19に供給されると、ピストン12が円盤部24の側周面をシリンダー部16内周に摺接させながら上昇し始める。ピストン12の軸部26の先端部には挟圧子4が形成されているので、挟圧子4はピストン12と同じように上昇する。
【0042】
全閉状態では、管体3は押し潰されているので、管体3の幅は全開状態のときの幅よりも大きくなっている。このとき、管体3が押し潰されたことによって大きくなった部分は管体受容部32に収容されている。挟圧子4が上昇すると、管体3にかけられていた押圧力が徐々に解放され、管体3は自己の復元力によって管体3の形状を全開状態の形状に復元しようとする。このとき、挟圧子4の上昇に伴って、挟圧子4に一体的に固定された一対の復元補助部材5が挟圧子4と同じように上昇する。ここで、一対の復元補助部材5の補助部33の平面35間の幅は全開状態の管体3の幅よりも少し狭くなるように形成されている。
【0043】
まず、補助部33の上部に形成された曲面34が管体3の外周面に当接する。そして、復元補助部材5の上昇に伴って、補助部33の曲面34の管体3の外周面に接触する部分同士の、流路軸線方向に直交する方向の間隔が、曲面34の形状により徐々に狭くなる。このとき、挟圧子4が上昇しているときの管体3の幅が補助部33同士の間隔よりも大きい、すなわち、管体3自体の復元力による復元が不十分であると、補助部33が流路2の開度を大きくするように管体3の外周面を押圧する。そして、復元補助部材5がさらに上昇すると、補助部33の曲面34の管体3の外周面に接触する部分同士の間隔がさらに狭くなり、補助部33が管体3の外周面をさらに押圧する。このように、補助部33の上部が曲面34で形成されていると、補助部33が管体3を徐々に押圧することができるので、復元補助部材5は管体3を傷めることなく円滑に管体3の復元を補助することができる。そして、復元補助部材5がさらに上昇すると、補助部33の中間部に形成されピストン12の軸線と平行な平面35が管体3の外周面に当接する。平面35同士の間隔は全開状態における管体3の幅よりも僅かに狭くなるように形成されているので、補助部33は管体3が全開状態になるまで管体3の外周面をさらに押圧する。最後に、ピストン12が上昇して、復元補助部材5の上端面およびピストン12の第一開度制御部27の上端面がそれぞれシリンダー本体8の下端面およびシリンダー蓋9の下端面に当接すると、ピストン12の上昇が止まり、ピンチバルブは
図2に示すような全開状態となる。
【0044】
次に、
図2の全開状態において、圧縮空気の供給が停止すると、第二の空間部20に配置されたバネ22によってピストン12が管体3の方向に付勢され、ピストン12が円盤部24の側周面をシリンダー部16内周に摺接させながら下降し始める。すなわち、ピストン12の軸部26の先端部に形成された挟圧子4が下降し始める。挟圧子4が下降すると、一対の復元補助部材5は挟圧子4と同じように下降する。ピストン12が下降すると挟圧子4に押圧された管体3の幅は少しずつ広くなるが、補助部33の管体3に接する部分同士の間隔も少しずつ広くなる。ピストン12がさらに下降すると、管体3は補助部33から離れ管体受容部32に受容される。このように、補助部33の上部が曲面34で形成されているので、復元補助部材5が管体3を傷めることがなく、ピンチバルブを全開状態から全閉状態に円滑に操作することができる。そして、ピストン12がさらに下降すると、ピストン12の円盤部24の下端面および復元補助部材5の下端面がそれぞれシリンダー部16の底面および本体7の復元補助部材受容部14の底面に当接すると、ピストン12の下降が止まり、ピンチバルブは
図1に示すような全閉状態となる。また、第二開度制御部25のナット29を調整することによって、任意の開度で維持することができる。例えば、管体3のつぶし代に余裕はあるが、流路2がちょうど閉状態になる開度でピストン12の下降が止まるようにナット29を調整すると、管体3の内周面の固着を防ぐことや管体3を速やかに復元することができる。
【0045】
第一の実施の形態では、ピンチバルブの開閉操作において、復元補助部材5は開閉操作のたびに管体3の外周面上を摺動する。ここで、復元補助部材5は摺動性に優れた(摩擦抵抗の小さい)PPSで形成されているので、復元補助部材5が管体3外周面上を繰り返し摺動しても、管体3を傷つけることを防ぐことができる。復元補助部材5の材質は特に限定されないが、復元補助部材5の静摩擦係数μが0.01≦μ≦0.60の範囲内であることが望ましい。復元補助部材5が管体3を傷つけないようにするためには管体3の外周面の静摩擦係数は0.60以下であることが望ましい。また、静摩擦係数の下限は低ければ低いほど望ましいが、復元補助部材5の成形性や取り扱いを考慮すると、静摩擦係数は0.01以上が望ましい。静摩擦係数μが0.01≦μ≦0.60の材料としては、PPSの他に、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。また、復元補助部材5の摺動性を向上させる方法としては、補助部33の管体3と接触する部分にピストン12の軸線方向に溝を形成する方法が挙げられる。補助部33に溝が形成されることによって、補助部33と管体3との接触面積が小さくなり、両部材間の摩擦抵抗が減少する。また、復元補助部材5の摺動性を向上させる他の方法としては、補助部33の管体3と接触する部分にグリスなどの潤滑材を塗布することが挙げられる。
【0046】
第一の実施の形態では、復元補助部材5には可動部が存在せず、また、復元補助部材5は可動部を介在することなく挟圧子4に一体的に固定されている。ピンチバルブの開閉操作において、復元補助部材5と挟圧子4との相対的な位置関係は変化しないので、復元補助部材5および挟圧子4の作動不良や位置のずれ、復元補助部材5と挟圧子4との連結部の緩みなどの不具合が生じにくい。従って、復元補助部材5は押圧された管体3の復元を安定して補助することができる。
【0047】
第一の実施の形態では、復元補助部材5の中に可動部が存在せず、復元補助部材5と挟圧子4との間にも可動部が存在しないことから、部品点数を少なくすることができるとともに、簡単な構成にすることができるので、組立作業を簡単にすることができる。また、復元補助部材5が挟圧子4と同一行程かつ同一方向に移動することから、復元補助部材5の動作が簡単であるとともに、動作に必要な空間を小さくすることができ、ピンチバルブの大型化を防ぐことができる。
【0048】
第一の実施の形態では、復元補助部材5が管体3の復元を補助することから、管体3の復元を速やかにすることができるだけでなく、管体3を全閉状態で長期間放置したときに管体3の内周面が固着してピンチバルブが開状態にできなくなることや、ピンチバルブが全開状態にならずに所定の流量を確保できなくなることを防ぐことができる。特に、ピンチバルブが装置に設置されている場合には、工場の点検や生産調整などによって長期間運転を停止することが多いため、管体3の内周面の固着を防止して、運転再開後に確実にピンチバルブが全開状態になり流量が確保されることが重要である。
【0049】
―第二の実施の形態―
以下、
図6を参照して、本発明によるピンチバルブの第二の実施の形態について説明する。
図6は本発明の第二の実施の形態に係るピンチバルブの概略構成を示す流路軸線と直行する方向からの縦断面図である。第二の実施の形態が第一の実施形態と異なる点は、主に、復元補助部材5がピストン12に一体的に固定されていることである。なお、
図6では第一の実施の形態と同様の作用や機能を有する構成要素には
図1〜5と同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0050】
第二の実施の形態では、シリンダー本体8はPPS製である。
図6に示すように、シリンダー本体8の中間部には、ピストン12の円盤部24と復元補助部材5の固定部31とを連結する一対の連結軸部51が貫通する貫通孔52が形成されている。
【0051】
第二の実施の形態では、ピストン12はSUS製である。
図6に示すように、円盤部24の下面には一対の連結軸部51が突出して溶接固定されている。連結軸部51は円柱形状であり、外周面にはOリングが装着されている。連結軸部51の先端部には流路軸線と直行する方向に貫通孔53が形成されている。連結軸部51はピストン12の貫通孔52に上下動可能かつ水密状態で挿入される。
【0052】
第二の実施の形態では、一対の復元補助部材5はPPS製である。
図6に示すように、固定部31は復元補助部材5とピストン12とを固定する部分であり、固定部31の上面には、連結軸部51が連結される断面矩形状の連結孔54が形成されている。連結軸部51の先端部を連結孔54に嵌挿し、固定部31の貫通孔38と連結軸部51の貫通孔53に固定ピン55を嵌挿することによって、ピストン12と復元補助部材5とが一体的に固定される。
【0053】
第二の実施の形態において、ピンチバルブの他の構成は第一の実施の形態と同様なので説明を省略する。第二の実施の形態の復元補助部材5が管体3の復元を補助する作用は第一の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0054】
―第三の実施の形態―
以下、
図7を参照して、本発明によるピンチバルブの第三の実施の形態について説明する。
図7は本発明の第三の実施の形態に係るピンチバルブの概略構成を示す縦断面図である。第三の実施の形態が第一の実施形態と異なる点は、主に、挟圧子4が流路2を全開状態および全閉状態の二段階の状態にするように駆動されるとともに、挟圧子4の上流側に、管体3を押圧して流路2を任意の開度状態に調整する調整用の挟圧子66が配置されていることである。なお、
図7では第一の実施の形態と同様の作用や機能を有する構成要素には
図1〜5と同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0055】
第三の実施の形態に係るピンチバルブは、流路2を任意の開度状態に調整する流量調整用のピンチバルブと流路2を全開状態および全閉状態の二段階の状態にする開閉操作用のピンチバルブとを直列に接続している。また、流量調整用のピンチバルブは上流側に配置され、開閉操作用のピンチバルブは下流側に配置される。また、流量調整用のピンチバルブと開閉操作用のピンチバルブは共通の本体61、シリンダー本体63、管体3、継手11を有している。開閉操作用のピンチバルブは第一の実施の形態と同様な構成である。流量調整用のピンチバルブは、本体61、管体3、継手11、挟圧子66、駆動部77を備える。また、流量調整用ピンチバルブの駆動部77はシリンダー本体63、ステム69、ナット72、操作部材76を備える。
【0056】
第三の実施の形態において、本体61はPPS製である。
図7に示すように、管体3を収容する管体収容部13の上流側の底面には、流路軸線と直行する方向に断面半円形状の突条62が形成されている。
【0057】
第三の実施の形態において、シリンダー本体63はPPS製である。
図7に示すように、シリンダー本体63の上流側の上部には、上流側に向かって管体3方向に傾く座部64が形成されている。座部64の上端面には、座部64の上面と垂直に形成されシリンダー本体63の下面に貫通する貫通孔65が形成されている。すなわち、貫通孔65は流路軸線に対して斜めに形成されている。貫通孔65の上部には雌ネジ部が形成されている。シリンダー本体63の上流側の下部には、断面矩形状の空間であり挟圧子66を収容する第三収容部67が形成されている。第三収容部67の壁面には、挟圧子66の動作を上下動のみに規制するガイド68が形成されている。また、貫通孔65は第二収容部17と第三収容部67と連通している。
【0058】
第三の実施の形態において、ステム69はSUS製である。
図7に示すように、ステム69は第一ステム70と第二ステム71から構成され、差動ネジの機構を有している。第一ステム70は円筒形状であり、外部には貫通孔65の雌ネジ部および第一ステム70の位置を固定するナット72と螺合される雄ネジ部が形成され、内部には第二ステム71の雄ネジ部と螺合される雌ネジ部が形成されている。第一ステム70の管体3側の先端部には貫通孔65と略同径の鍔部が形成され、他方の先端部には操作部材76が装着されている。第二ステム71は円柱形状であり、外部には第一ステム70の内部に形成されている雌ネジ部と螺合される雄ネジ部が形成されている。第二ステム71の管体3側の先端部には断面が管体3側に向かって扇形状である押出部73が形成されている。押出部73の下面には、流路軸線方向に溝(図示せず)が形成され、その溝は挟圧子66の上面に形成された突条74に遊嵌されている。
【0059】
第三の実施の形態において、挟圧子66はPPS製である。
図7に示すように、挟圧子66は断面矩形状に形成され、下面には流路軸線と直行する方向に突出する、断面かまぼこ形状の突条75が形成されている。突条75は突条62と対向して形成されている。挟圧子66には第三収容部67に設けられた、ここでは係止溝であるガイド68に対応するガイド受け(図示せず)が形成されている。挟圧子66に形成されたガイド受けにガイド68が遊嵌されることによって挟圧子66の動作は上下動のみに規制される。挟圧子66の上面には流路軸線方向に平行に延びる突条(図示せず)が形成されており、第二ステム71の下に位置する押出部73の下面に形成されている溝(図示せず)と上記突条が遊嵌状態で接続されることによって、挟圧子66は第二ステム71の斜め方向の進退をうけて上下動することができる。第三の実施の形態において、ピンチバルブの他の構成は第一の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0060】
第三の実施の形態では、挟圧子4が流路2を全開状態および全閉状態の二段階の状態にするように駆動され、挟圧子66が流路2を任意の開度状態に調整するように駆動される。挟圧子4が流路2を全開状態および全閉状態の二段階の状態にする作用は第一の実施の形態と同様なので説明を省略する。
図7に示すように、ピンチバルブが全開状態において、操作部材76を回転させると第一ステム70の軸方向に移動しながら第一ステム70が回転する。第一ステム70と第二ステム71は差動ネジの機構を有しており、第二ステム71は挟圧子66との上記接続によって進退可能かつ回動不能に配置されていることから、第一ステム70が回転することによって、第二ステム71が第二ステム71の軸方向に移動する。第二ステム71が管体3に向かって移動すると、挟圧子66は押出部73に押され管体3に向かって移動し、管体3を押圧する。さらに操作部材76を操作すると挟圧子66によって管体3はさらに押し潰され、流路2が所望の開度状態に調整される。
【0061】
流路2が挟圧子66によって所望の開度状態に調整された状態から、流路2が全閉状態になるように挟圧子4が駆動されると、ピンチバルブ1は全閉状態となる。そして、ふたたび流路2が全開状態になるように挟圧子4が駆動されると、ピンチバルブは所望の開度状態に調整された状態となる。このように、流量調整用のピンチバルブと開閉操作用のピンチバルブとを直列に配置することによって、全閉状態から流量調整状態に速やかに切り換えることができる。このとき、上流側に流量調整用のピンチバルブを配置し、下流側に開閉操作用のピンチバルブを配置することによって、全閉状態から流量調整状態にしたときに短時間で流量を安定させることができる。
【0062】
次に、流路2が所望の開度状態に調整された状態から、操作部材76を反対方向に回転させると第一ステム70が反対方向に回転し、第二ステム71が管体3から遠ざかる方向に移動する。このとき、押出部73も管体3から遠ざかる方向に移動するので、挟圧子66は管体3の復元力を受けて鉛直方向に移動する。挟圧子66による押圧力が取り除かれた管体3は自己の復元力によって全開状態に向かって復元する。このとき、挟圧子66の移動を容易にするとともに、ステム69のバックラッシによる開度の誤差を抑えるために、挟圧子66の下側に付勢体を配置してもよい。
【0063】
また、ピンチバルブは管体3を押圧することで流路2を開閉することができるので、ひとつの本体7にふたつの挟圧子4、66を容易に配置することができるとともに、挟圧子4と挟圧子66の間隔を狭くすることができる。また、挟圧子4、66間の間隔を狭くすることができるので、ひとつの本体61にふたつの挟圧子4、66を配置してもピンチバルブの面間寸法を小さくすることができる。さらに、挟圧子66を駆動するステム69が挟圧子4を駆動するピストン12に対して斜めに配置されることによって、ステム69とピストン12の間隔を狭くすることができるので、ピンチバルブ1の面間寸法をさらに小さくすることができる。
【0064】
第三の実施の形態では、挟圧子66と挟圧子4がともに管体3の上側に配置されているが、挟圧子66が管体3の下側に配置されてもよい。すなわち、流量調整用のピンチバルブと開閉操作用のピンチバルブが管体3を挟んで配置されてもよい。このように配置すると、流量調整用のピンチバルブの駆動部77と開閉操作用のピンチバルブの駆動部6が干渉しないので、ピンチバルブの面間寸法を小さくすることができる。
【0065】
なお、上記の第一の実施の形態〜第三の実施の形態におけるピンチバルブの本体7、61、シリンダー本体8、63、継手11、ピストン12、ステム69、挟圧子4、66、復元補助部材5などの各種構成部品は、各種構成部品に求められる剛性を満たす材料であれば、金属、プラスチック、ガラス、陶器など特に限定されるものではないが、PPS、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニリデンフルオロライド、ポリテトラフルオロエチレン、SUSなどが好ましい。また、上記の第一の実施の形態〜第三の実施の形態では、ピンチバルブの挟圧子4、66がそれぞれ空動式、手動式の駆動部6、77で昇降されているが、挟圧子4、66が電気駆動で昇降されてもよく、挟圧子4、66の駆動方式は特に限定されない。
【0066】
なお、上記の第一の実施の形態〜第三の実施の形態を任意に組み合わせてピンチバルブを構成してもよい。すなわち、本発明の特徴および機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のピンチバルブに限定されない。