特許第6355380号(P6355380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355380
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】車両用支持具
(51)【国際特許分類】
   B62K 17/00 20060101AFI20180702BHJP
   B62K 3/00 20060101ALI20180702BHJP
   B62H 1/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B62K17/00
   B62K3/00
   B62H1/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-62227(P2014-62227)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182668(P2015-182668A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】508236240
【氏名又は名称】公立大学法人公立はこだて未来大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】三上 貞芳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭二
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−76774(JP,U)
【文献】 実開昭58−87677(JP,U)
【文献】 特開昭63−279981(JP,A)
【文献】 特開2008−290718(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008039423(DE,A1)
【文献】 米国特許第5118126(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 17/00
B62H 1/02, 1/10
B62K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられる第1軸周りに回動自在に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部に設けられる第2軸周りに回動自在に連結される第2アーム部とを有するアームユニットと、
前記アームユニットに一端側が連結され、前記車体に他端側が連結される付勢部材と、を備え、
前記アームユニットは、車両が走行する走行面に前記第2アーム部が接地され、前記第1アーム部により車体を支持する支持位置と、前記走行面から前記第2アーム部が浮かせられる収納位置との間を、前記第1軸周りに回動することにより移動可能であり、
前記支持位置から前記収納位置側に向けて前記アームユニットが移動するとき、前記支持位置と前記収納位置の間の特定位置を超えると、前記付勢部材の付勢力により前記収納位置まで前記アームユニットが移動し、
前記第2アーム部は長尺体であり、その幅方向の片側面に前記走行面に接地される接地部が設けられることを特徴とする車両用支持具。
【請求項2】
車体に設けられる第1軸周りに回動自在に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部に設けられる第2軸周りに回動自在に連結される第2アーム部とを有するアームユニットと、
前記アームユニットに一端側が連結され、前記車体に他端側が連結される付勢部材と、を備え、
前記アームユニットは、車両が走行する走行面に前記第2アーム部が接地され、前記第1アーム部により車体を支持する支持位置と、前記走行面から前記第2アーム部が浮かせられる収納位置との間を、前記第1軸周りに回動することにより移動可能であり、
前記支持位置から前記収納位置側に向けて前記アームユニットが移動するとき、前記支持位置と前記収納位置の間の特定位置を超えると、前記付勢部材の付勢力により前記収納位置まで前記アームユニットが移動し、
前記第1アーム部は、
前記第1軸周りに回動自在に連結される第1リンク部材と、
前記第1リンク部材に設けられる中間軸周りに回動可能に連結され、前記第2軸が設けられる第2リンク部材と、
前記アームユニットが支持位置にあるときに、前記第1リンク部材に対する前記第2リンク部材の一方向の回動を許容し、他方向の回動を規制する回動ストッパと、を有することを特徴とする車両用支持具。
【請求項3】
前記アームユニットが支持位置にあるときに車両が走行すると、前記第2アーム部の接地箇所周りの回動を伴い前記アームユニットが前記特定位置を超える位置まで移動することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用支持具。
【請求項4】
前記アームユニットが支持位置にあるときに車両が予め定められた走行距離を走行すると、前記アームユニットが前記特定位置を超える位置まで移動することを特徴とする請求項に記載の車両用支持具。
【請求項5】
前記特定位置は、前記第1軸の軸方向から見たときに、前記車体に対する付勢部材の連結箇所と前記アームユニットに対する付勢部材の連結箇所とを結ぶ仮想線が前記第1軸に重なる位置であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用支持具。
【請求項6】
前記第2アーム部には、前記走行面に対する接地箇所に滑り止め部が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用支持具。
【請求項7】
前記アームユニットは、前記車体の車幅方向に間隔を空けて複数接続され、
前記複数のアームユニットは連結部材により連結されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用支持具。
【請求項8】
車体と、前記車体に対して同軸上に回転自在に設けられる一対の車輪と、を有する車両に用いられることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両用支持具。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記第1アーム部に一端側が連結される請求項1から8のいずれかに記載の車両用支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を支持するための車両用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、搭乗者が立位姿勢で搭乗する同軸二輪車が提案されている(特許文献1参照)。同軸二輪車は、同軸上に配置された一対の車輪により車体が支持され、その車体に設けられる操作レバーのハンドル部を握った状態で、その車体に設けられるステップ部に搭乗者が立位姿勢で搭乗する。同軸二輪車では、搭乗者の重心移動により車体を前後に傾斜させると、その車体の姿勢を保持するように一対の車輪の回転量が制御され、その車体の姿勢を保持したまま車両が前進、後退できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−25888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の同軸二輪車では、これに搭乗するとき、バランスを上手くとれないと車体が後方に傾斜してしまい、各車輪の制御により車両が意図せずに後方に走行してしまう場合がある。このような挙動は搭乗者に不安感を与えてしまうため、その改善が求められる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、搭乗時の安全性を確保できる支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための本発明のある態様は、車両用支持具に関する。車両用支持具は、車体に設けられる第1軸周りに回動自在に連結される第1アーム部と、第1アーム部に設けられる第2軸周りに回動自在に連結される第2アーム部とを有するアームユニットと、アームユニットに一端側が連結され、車体に他端側が連結される付勢部材と、を備え、アームユニットは、車両が走行する走行面に第2アーム部が接地され、第1アーム部により車体を支持する支持位置と、走行面から第2アーム部が浮かせられる収納位置との間を、第1軸周りに回動することにより移動可能であり、支持位置から収納位置側に向けてアームユニットが移動するとき、支持位置と収納位置の間の特定位置を超えると、付勢部材の付勢力により収納位置までアームユニットが移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搭乗時の安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る車両用支持具が用いられる車両を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る車両の制御系を示す機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが支持位置にある状態を示す部分省略側面図である。
図4】第1実施形態に係る車両用支持具を示す背面図である。
図5】第1実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが収納位置にある状態を示す部分省略側面図である。
図6】第1実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが支持位置にある状態を模式的に示す図である。
図7】第1実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが特定位置にある状態を模式的に示す図である。
図8】第1実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが収納位置にある状態を模式的に示す図である。
図9】第2実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが支持位置にある状態を示す部分省略側面図である。
図10】第2実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが収納位置にある状態を示す部分省略側面図である。
図11】第2実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが支持位置にある状態を模式的に示す図である。
図12】第2実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが特定位置にある状態を模式的に示す図である。
図13】第2実施形態に係る車両用支持具のアームユニットが収納位置にある状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は第1実施形態に係る車両用支持具10が用いられる車両100を示す斜視図である。以下、互いに直交する二方向を方向X、方向Yという。方向Xは車両100の前後方向に対応し、方向Yは車両100の車幅方向に対応する。
【0010】
車両100は、同軸上に2個の車輪120が配置される同軸二輪車である。車両100は、車体110と、車輪120と、操作レバー130を備える。車体110は、その内部に後述する姿勢センサ141、制御装置149等を格納する。車体110は、車幅方向Yの両側において同軸上に一対の車輪120が回転自在に設けられる。各車輪120を区別するときは車輪120R、120Lという。
【0011】
車体110の上面には、搭乗者が立位姿勢で搭乗する一対のステップ部111が設けられる。車体110の上面には、ステップ部111の前方に操作レバー130が起立した状態で設けられる。操作レバー130はX方向軸周りに傾動可能に設けられる。操作レバー130の上端部には搭乗者が把持する一対のハンドル部131が設けられる。
【0012】
搭乗者は、ハンドル部131を握った状態でステップ部111に立位姿勢で搭乗する。搭乗者は、操作レバー130とともに車体110をY方向軸周りに傾動させるように重心移動したり、操作レバー130をX方向軸周りに傾動させることで、前進、後退、旋回等の車両100の走行操作を行う。
【0013】
図2は車両100の制御系を示す機能ブロック図である。車両100は、姿勢センサ141と、レバーセンサ143と、駆動回路145と、モータ147と、制御装置149を備える。
【0014】
姿勢センサ141は、ジャイロセンサ、加速度センサ等により構成される。姿勢センサ141は、車体110に内蔵され、車体110のピッチ角度、ピッチ角速度等を検出する。姿勢センサ141は、その検出値を制御装置149に出力する。
【0015】
レバーセンサ143は、ポテンショメータ等により構成される。レバーセンサ143は、操作レバー130の下端部に設けられ、X方向軸周りの操作レバー130の回転角度を検出する。レバーセンサ143は、その検出値を制御装置149に出力する。
【0016】
モータ147は、車両100に内蔵され、一対の車輪120R、120Lに個別に接続される。駆動回路145は、車両100に内蔵される。駆動回路145は、制御装置149からの制御信号に基づき駆動信号を生成し、これをモータ147に出力し、モータ147は駆動信号に基づき車輪120を回転させる。
【0017】
制御装置149は、走行制御部151を備える。制御装置149の機能は、ハードウェア的にはコンピュータのCPU、メモリ等により実現され、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムにより実現される。
【0018】
走行制御部151は、姿勢センサ141により検出された車体110のピッチ角度等に基づいて、操作レバー130の前後の傾斜方向を算出する。また、走行制御部151は、姿勢センサ141により検出された車体110のピッチ角度、ピッチ角速度等に基づいて、車体110の姿勢を保ちつつ走行できるような車両100の移動速度を算出する。走行制御部151は、算出した傾斜方向に向けて算出した移動速度で走行するように、駆動回路145を介してモータ147の駆動量を制御して、車輪120の回転量を制御する。また、走行制御部151は、レバーセンサ143からの検出値に応じて、一対のモータ147の駆動を制御し、一対の車輪120に回転差を生じさせる。これにより、車両100は操作レバー130の左右の傾斜方向に向けて旋回する。
【0019】
図3は支持具10の構成を示す部分省略側面図である。支持具10は、車体110の後部に取り付けられる。支持具10は、アームユニット11と、付勢部材13を備える。アームユニット11は支持位置と収納位置の間を移動可能である。図3はアームユニット11が支持位置にある状態を示す。
【0020】
アームユニット11は、第1アーム部15と、第2アーム部17を有する。車体110の後部には上下方向に長い板状の長尺体としてのブラケット113が接続される。ブラケット113の下部には第1軸19が設けられる。第1アーム部15は一方向に長い板状の長尺体として構成され、その一端部15aが第1軸19周りに回動自在に連結される。第1アーム部15の他端部15bには第2軸21が設けられる。
【0021】
第2アーム部17は一方向に長い板状の長尺体として構成され、その中間部17aが第2軸21周りに回動自在に連結される。第2アーム部17は、その幅方向の片側面に車両100が走行する走行面Dsに対して接地される接地部23が設けられる。接地部23には、その長手方向に沿って鋸歯状の凹凸形状により滑り止め部25が設けられる。
【0022】
付勢部材13は、つるまきばねである。付勢部材13は、その一端側がブラケット113に連結され、その他端側が第1アーム部15に連結される。
【0023】
図4は支持具10の構成を示す背面図である。アームユニット11は車体110の車幅方向Yに間隔を空けて複数接続される。複数のアームユニット11の第2アーム部17は棒材等の連結部材27により連結される。なお、連結部材27は、図3に示すように、第2アーム部17の前端部17bと後端部17cのそれぞれに設けられる。
【0024】
アームユニット11が支持位置にあるとき、第2アーム部17の接地部23が走行面Dsに接地され、第2アーム部17及び第1アーム部15により車体110が支持される。このとき、第1アーム部15は第1軸19から下方に延びるように設けられる。また、第2アーム部17は、走行面Dsに対して沿うように設けられ、その前端部17bが第2軸21より前方に設けられる。また、第2アーム部17は、滑り止め部25が走行面Dsに接地され、接地部23が走行面Dsに対して滑り難くなる。
【0025】
図5はアームユニット11が収納位置にある状態を示す。アームユニット11は、支持位置にある状態から、第1軸19周りの一方向P1に第1アーム部15が回動することにより収納位置まで移動する。以下、この一方向P1を正方向P1といい、一方向P1と反対方向を逆方向P2という。
【0026】
アームユニット11が収納位置にあるとき、第1アーム部15は、第1軸19から斜め上方に延びるように設けられ、付勢部材13の付勢力により保持される。第2軸21は、支持位置にあるときより高位置に保持される。また、ブラケット113にはY方向側面に突起等の回転ストッパ115が設けられる。回転ストッパ115と第1アーム部15の係合により、収納位置より大きく正方向P1に第1アーム部15が回動するのを抑えられる。
【0027】
アームユニット11が収納位置にあるとき、第2アーム部17は、第2軸21により吊り支持された状態で保持され、走行面Dsから浮かせられる。このとき、第2アーム部17は、支持位置にあるときより第2軸21周りに回動し、その前端部17bが第2軸21から下方に延びるように設けられる。この状態で第1アーム部15や第2アーム部17は付勢部材13の付勢力により保持される。
【0028】
次に、第1実施形態に係る支持具10の作用効果を説明する。図6はアームユニット11が支持位置にある状態を模式的に示す。本図では、第1軸19と第2軸21を白丸で示す。また、車体110のブラケット113に対する付勢部材13の連結箇所13aと、アームユニット11の第1アーム部15に対する付勢部材13の連結箇所13bとを黒丸で示す。
【0029】
車輪120の車軸121周りの回転モーメントは、車体110の第1軸19から第1アーム部15、第2アーム部17を介して走行面Dsに伝わる。走行面Dsからは第2アーム部17、第1アーム部15を介して第1軸19に反力が伝わり、その走行面Dsからの反力により回転モーメントが相殺され、車体110の後方回転が規制される。また、走行面Dsから第2アーム部17、第1アーム部15を介して第1軸19に伝わる反力により、車体110の後退も規制される。
【0030】
図7はアームユニット11が支持位置にある状態から車両100が予め定められた走行距離Lを走行したときの状態を模式的に示す。車両100の走行により第1軸19から第1アーム部15に前方に向けて力F1が入力され、その力F1により第2軸21から第2アーム部17にも前方に向けて力F2が入力される。このとき、第2アーム部17の接地箇所、特に、その前端部17bに走行面Dsから摩擦力F3が作用するため、その力F2により第2アーム部17の接地箇所周りの回動を伴い、第1アーム部15が正方向P1に回動する。このとき、第2アーム部17が接地箇所周りに回動しても、その一部が接地している限り、その接地箇所に走行面Dsから摩擦力F3が作用し、第1アーム部15は、車両100の前方走行量に応じて、正方向P1の回動量が増加する。
【0031】
なお、第2アーム部17の接地箇所には滑り止め部25が設けられるため、走行面Dsに対して第2アーム部17が滑り難くなり、車両100が走行したときに第2アーム部17の接地箇所周りに確実に回動させ易くなる。
【0032】
ここで、第1軸19の軸方向から見たとき、付勢部材13の両端側の連結箇所13a、bを結ぶ仮想線をLiとする。支持位置から収納位置側に向けてアームユニット11が移動するとき、この仮想線Liが第1軸19に重なる特定位置を通る。この特定位置では、支持位置から収納位置にかけてアームユニット11が移動するときに、その移動範囲内で付勢部材13が最大伸びとなる。
【0033】
この特定位置より収納位置側(方向P2側)に第1アーム部15が回動すると、付勢部材13は、収納位置側に向けて第1アーム部15を付勢する。一方、この特定位置より支持位置側(方向P1側)に第1アーム部15が回動すると、付勢部材13は、支持位置側に向けて第1アーム部15を付勢する。このように、付勢部材13は、支持位置と収納位置の間をアームユニット11が移動するとき、特定位置を境界として、その付勢方向が支持位置側に向けた方向から収納位置側に向けた方向に切り替わる。
【0034】
図8はアームユニット11が収納位置にある状態を模式的に示す。図7に示す状態から、特定位置を超えるまで第1アーム部15が回動すると、それ以降は付勢部材13の付勢力により第1アーム部15が収納位置まで自動的に移動する。
【0035】
ここで、支持具10は、アームユニット11が支持位置にあるとき、車両100が予め定められた走行距離Lを走行すると、この特定位置を超える位置まで第1アーム部15が回動するように調整される。車両100が走行距離Lを超える距離を走行した時点で、アームユニット11が収納位置まで自動的に移動することになる。この調整は、各アーム部15、17の長手方向の長さ調整や、付勢部材13の連結箇所13a、13bの位置調整により行われる。この走行距離Lは、車両100の走行開始後に走行動作が安定しはじめ、搭乗者がバランスを崩すことによる車輪120の制御により、車両100が意図せず後退するような挙動の発生が抑えられる距離に定められる。この走行距離Lは、たとえば、車輪120が一回転したときに車両100が走行する距離に定められる。
【0036】
なお、収納位置にあるアームユニット11を支持位置まで移動させるうえでは、搭乗者がアームユニット11の一部を足等により押し下げて第2アーム部17の接地部23を走行面Dsに接地させればよい。このとき、図4に示すような連結部材27を押し下げれば、複数のアームユニット11を同時に支持位置まで移動させられる。
【0037】
以上の実施形態に係る支持具10によれば、車両100への搭乗時、支持位置にあるアームユニット11により車体110を支持でき、車体110の後方回転や後退を抑えられる。よって、車両100への搭乗時、車体110が後方に傾斜して各車輪120が制御されることにより、搭乗者が意図せず車両100が後方に走行してしまう事態を抑えられる。これにより、後方走行に伴う搭乗者の不安を抑えられ、搭乗時の安全性を確保できる。
【0038】
また、搭乗してから車両100が走行すると、アームユニット11が付勢部材13により収納位置まで自動的に移動する。よって、支持位置から収納位置に切り替えるための特別の操作を搭乗者がする必要がなくなる。
【0039】
また、かりに、二輪自転車のサイドスタンドを用いて本実施形態に係る車両100を支持する場合、車軸121周りの車体110の回動により、スタンドの接地面が走行面Dsから浮き上がってしまう。よって、車体110を走行させてもスタンドの接地面に走行面Dsから摩擦力が作用せず、スタンドを支持位置から収納位置まで自動的に移動できない問題がある。
【0040】
この点、本実施形態によれば、アームユニット11が支持位置にあるとき、車軸121周りに車体110が回動しても、第2軸21周りに第2アーム部17が回動してその一部が接地された状態を保持できる。この状態で車体110を走行させれば、第2アーム部17の接地箇所周りの回動を伴い第1アーム部15を特定位置まで回動でき、付勢部材13によりアームユニット11を収納位置まで自動的に移動させられる。よって、車軸121周りに車体110が回動する同軸二輪車に用いる場合でも、アームユニット11を支持位置から収納位置まで確実に移動させ易くなる。
【0041】
また、かりに、車体110の姿勢を動かしただけでアームユニット11が支持位置から収納位置に移動してしまう構成であると、搭乗者が搭乗した直後の車体110の姿勢の変動によりアームユニット11が収納位置まで移動してしまう。この場合、アームユニット11により車体110が支持されず、搭乗時の安全性を十分に確保できない。この点、本実施形態によれば、車体110がある程度走行しない限りアームユニット11が収納位置に移動しないため、走行するまでの間はアームユニット11により車体110を支持でき、搭乗時の安全性を十分に確保できる。
【0042】
また、かりに、搭乗を開始した直後の車両100の後方回転を制御により抑えようとした場合、車体110の後方回転が搭乗者の意図したものであるか否かを判断する必要がある。しかし、このような判断手法は今のところ明らかとなっていないうえ、既存の車両への実装が困難であるという問題がある。この点、本実施形態によれば、そのような判断が不要なうえ、既存の車両にも簡単に取り付けられる。
【0043】
[第2の実施の形態]
図9は第2実施形態に係る支持具10を示す。図9はアームユニット11が支持位置にある状態を示す。以下の実施形態では、第1実施形態で説明した要素と同じ要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
第1アーム部15は、第1リンク部材29と、第2リンク部材31と、回動ストッパ33を有する。車体110の後部には板状のブラケット113が突き出した状態で接続される。ブラケット113には第1軸19が設けられる。第1リンク部材29は、一方向に長い板状の長尺体として構成され、その一端部29aが第1軸19周りに回動自在に連結される。第1リンク部材29の他端部29bには中間軸35が設けられる。
【0045】
第2リンク部材31は、一方向に長い板状の長尺体として構成され、その一端部31aが中間軸35に回動自在に連結される。第2リンク部材31の他端部31bには第2軸21が設けられる。第2リンク部材31には突起等により構成される回動ストッパ33が設けられる。第2リンク部材31の他端部31bは、アームユニット11が支持位置にあるとき、走行面Dsに接地される。
【0046】
第2アーム部17は第2軸21周りに回動自在に連結される。第2アーム部17は一方向に長い板状の長尺体として構成され、その後端部17cが第2軸21に連結される。第2アーム部17は、その前端部17bに走行面Dsに接地する接地部23が設けられる。接地部23には、ゴム等の摩擦係数の高い材料により構成される滑り止め部25が設けられる。
【0047】
アームユニット11が支持位置にあるとき、第1リンク部材29と第2リンク部材31が直列に並ぶ。このとき、第1リンク部材29に対する第2リンク部材31の正方向P1の回動が回動ストッパ33と第1リンク部材29の係合により規制され、逆方向P2の回動が許容される。
【0048】
図10はアームユニット11が収納位置にあるときの状態を示す。このとき、第1アーム部15の第1リンク部材29は、第1軸19から斜め上方に延びるように設けられ、付勢部材13の付勢力により保持される。中間軸35は、支持位置にあるときより高位置に保持され、第2軸21も、支持位置にあるときより高位置に保持される。第2リンク部材31は、中間軸35により吊り支持された状態で保持される。第2リンク部材31は、支持位置にあるときより中間軸35周りの逆方向P2に回動して、中間軸35から下方に延びるように設けられる。第2アーム部17は、その前端部17bが第2軸21から下方に延びるように設けられる。
【0049】
図11はアームユニット11が支持位置にある状態を模式的に示す。本図では第1軸19、第2軸21、中間軸35を白丸で示す。また、回動ストッパ33を模式的に示す。
【0050】
車輪120の車軸121周りの回転モーメントは、第1実施形態と同様に、走行面Dsから第2アーム部17、第1アーム部15を介して第1軸19に伝わる反力により相殺され、車体110の後方回転が規制される。また、走行面Dsから第1軸19に伝わる反力により、車体110の後退も規制される。このとき、第2リンク部材31に対する第1リンク部材29の正方向P1の回動は回動ストッパ33により規制される。
【0051】
図12はアームユニット11が支持位置にある状態から車両100が走行距離Lを走行したときの状態を模式的に示す。このとき、車両100の走行により第1軸19から第1アーム部15に向けて力F1が入力され、その力F1により第2軸21から第2アーム部17にも前方に向けて力F2が入力される。このとき、第2リンク部材31は、回動ストッパ33により第1リンク部材29に対する正方向P1の回動が規制される。また、このとき、第2アーム部17の接地箇所であるずれ止め部25に摩擦力F3が作用するため、その力F2により第2アーム部17の接地箇所周りの回動を伴い、第1アーム部15全体が正方向P1に回動する。
【0052】
図13はアームユニット11が収納位置にある状態を模式的に示す。図12に示す状態から、特定位置を超えるまで第1アーム部15が回動すると、それ以降は付勢部材13の付勢力により第1アーム部15の第1リンク部材29が収納位置まで自動的に回動する。このとき、第2アーム部17が走行面Dsから離れた段階で、第2リンク部材31は、第1リンク部材29に対して逆方向P2に回動する。これにより、第1軸19からの第1アーム部15の上下方向高さが抑えられ、アームユニット11をコンパクト化できる。
【0053】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0054】
支持具10は、同軸二輪車に適用される場合を説明したが、他の自転車、車椅子等の車両に適用されてもよい。
【0055】
付勢部材13は、一端側を車体110に連結し、他端側をアームユニット11に連結したときに、両者の間に付勢力を作用させることができればよい。付勢部材13は、つるまきばねを例示したが、この他にも皿ばね、板ばね、定荷重ばね等の各種ばねやゴム等の弾性体により構成されてもよいし、これらを組み合わせたものにより構成されてもよい。また、付勢部材13は、その他端側が第1アーム部15に連結される場合を説明したが、第2アーム部17に連結されてもよい。
【0056】
滑り止め部25は、第1実施形態では鋸歯状の凹凸形状により設けられたが、第2アーム部17の接地部23に凹凸形状が設けられていれば、その形状はこれに限られない。この凹凸形状を設ける手段は、第2アーム部17の接地部23に複数の突起を設けてもよいし、粒子状材料を表面に塗布等してもよく、特に限られない。また、滑り止め部25は、第2実施形態ではゴム等の摩擦係数の高い材料により構成されたが、その材質はこれに限られず、公知の滑り止め材が貼り付け、塗布等されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…支持具、10…車両用支持具、11…アームユニット、13…付勢部材、13a,13b…連結箇所、15…アーム部、15…第1アーム部、17…第2アーム部、19…第1軸、21…第2軸、25…滑り止め部、27…連結部材、29…第1リンク部材、31…第2リンク部材、33…回転ストッパ、35…中間軸、100…車両、110…車体、115…回転ストッパ、120…車輪。
図1
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