(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355391
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】セグメントの継手構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20180702BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
E21D11/04 A
F16B5/06 S
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-75900(P2014-75900)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-196999(P2015-196999A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100078031
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 皓一
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−062922(JP,U)
【文献】
特開平05−280293(JP,A)
【文献】
特開平10−299394(JP,A)
【文献】
実開平02−116598(JP,U)
【文献】
米国特許第04318636(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
KセグメントおよびBセグメントのトンネル周方向の側面に2つのピース間ワンパス継手部がそれぞれ形成されているセグメントの継手構造であって、
前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの一方に形成された前記2つのピース間ワンパス継手部の間にロック部材が設けられており、
前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの他方に形成された前記2つのピース間ワンパス継手部の間には前記ロック部材と連結する溝が形成されていて、
前記ロック部材は、前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの一方に形成された溝内に収納されたばね部材と、前記ばね部材によって、前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの他方に向けて付勢された楔形部材とによって構成されていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法によって、トンネルを掘削する場合に、1つのセグメントリングに、最後に連結されるKセグメントのための継手構造に関するものであり、さらに詳細には、1つのセグメントリングを構成する継手のうち、Kセグメントの継手のみが補強された継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によって、トンネルを掘削する場合には、シールド機によって地山を掘削しつつ、掘削孔の内壁をセグメントリングで覆工して、掘削孔が掘進される。シールド工法において用いられるセグメントリングは、複数のセグメントに分割されて、トンネルの切羽近くに運ばれ、掘削孔の内径に沿って、組み立てられる。
【0003】
セグメントを連結して、1つのセグメントリングを組み立てる際には、AセグメントおよびBセグメントが連結され、最後にKセグメントがBセグメントに連結される。
【0004】
このように、Kセグメントは、1つのセグメントリングの中で、最後に組み立てるセグメントであるため、構造上、他のセグメント、すなわち、AセグメントおよびBセグメントに比べて、小さなセグメントであり、したがって、Kセグメントを連結させるセグメントとの間に設置できる継手の数が少なくなる。
【0005】
また、Kセグメントは最後に組み立てるので、トンネルの軸方向に挿入角度を有し、半径方向に継手角度を有しており、そのため、Aセグメント、Bセグメントに比して、トンネルの軸方向および半径方向のいずれにおいても、これらの角度によって、軸力によるせん断力が作用して、滑動しやすくなるという問題があった。
【0006】
それにもかかわらず、従来は、セグメント継手はAセグメント、Bセグメント、Kセグメントのリング間継手も、ピース間継手も、同じ規格、仕様のものが用いられていた。
【0007】
そこで、特許文献1は、オス継手にメス継手の嵌合溝への嵌合により継手面どうしを引き寄せる勾配部を設けるとともに、メス継手の嵌合溝内に、オス継手の勾配部に当接する勾配部材を設け、勾配部材をメス継手と当接して第1摺動面を形成する第1勾配部材と、第1勾配部材と当接して第2摺動面を形成する第2勾配部材の2段に設け、第1勾配部材を所定以上の力を受けることで固定機能を失う第1仮留め部材によって、メス継手の嵌合溝内の所定位置に仮固定し、第2勾配部材を第1勾配部材に、第2仮留め部材によって仮固定するように構成された部材間継手を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−56555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された部材間継手においては、Kセグメントの半径方向の両側面とトンネルの軸方向との間の角度が大きくなると、KセグメントとBセグメントとの結合が十分でない場合があるという問題があった。
【0010】
したがって、本発明は、シールド工法によって、トンネルを掘削する場合に、Kセグメントに、軸力によるせん断力が作用しても、Kセグメントが滑動することを確実に防止することができるKセグメントのための継手構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明
は、KセグメントおよびBセグメントのトンネル周方向の側面に2つのピース間ワンパス継手部がそれぞれ形成されているセグメントの継手構造である。
前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの一方に形成された前記2つのピース間ワンパス継手部の間にロック部材が設けられており、前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの他方に形成された前記2つのピース間ワンパス継手部の間には前記ロック部材と連結する溝が形成されていて、前記ロック部材は、前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの一方に形成された溝内に収納されたばね部材と、前記ばね部材によって、前記Kセグメントおよび前記Bセグメントの他方に向けて付勢された楔形部材とによって構成されている。
【0012】
本発明によれば、KセグメントとBセグメントとがロック継手によって結合されるから、KセグメントとBセグメントとを強固に連結することができ、Kセグメントに、軸力によるせん断力が作用しても、Kセグメントが滑動することを確実に防止することが可能になる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様によれば、KセグメントまたはBセグメントに形成された溝内のばね部材によって付勢された楔形部材が、BセグメントまたはKセグメントに形成された溝内に係合することによって、KセグメントがBセグメントに連結されるから、KセグメントとBセグメントとを強固に連結することができ、Kセグメントに、軸力によるせん断力が作用しても、Kセグメントが滑動することを確実に防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、Kセグメントに、軸力によるせん断力が作用しても、Kセグメントが滑動することを確実に防止することができるKセグメントのための継手構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい実施態様にかかるKセグメントのための継手構造の略横断面図で、KセグメントとBセグメントとを連結する前の状態を示している。
【
図2】
図2は、
図1のA−A線に沿って、BセグメントのKセグメントに当接すべき面を見た略正面図である。
【
図3】
図3は、
図3は、
図1のB−B線に沿って、KセグメントのBセグメントに当接すべき面を見た略正面図である。
【
図4】
図4は、Kセグメントの溝と、Kセグメントの溝に連結されるBセグメントのロック部材の略拡大平面図である。
【
図5】
図5は、KセグメントがBセグメントに連結される直前の状態を示す略平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示されたBセグメントの溝部分とKセグメントの溝部分の略拡大横断面図である。
【
図7】
図7は、KセグメントがBセグメントに連結された状態を示す略横断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されたBセグメントの溝部分とKセグメントの溝部分の略拡大横断面図である。
【
図9】
図9は、KセグメントとBセグメントとの連結状態を示す従来の略横断面図である。
【
図10】
図10は、KセグメントとBセグメントとの連結状態を示す従来の略横断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の好ましい実施態様にかかるKセグメントのための継手構造の略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかるKセグメントのための継手構造の略横断面図で、KセグメントとBセグメントとを連結する前の状態を示している。
【0020】
図1に示されるように、Kセグメント1とBセグメント10、10は、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の側面1aのトンネルの軸方向に対する角度が、Kセグメント1が連結されるべきBセグメント10、10の側面10aのトンネルの軸方向に対する角度に等しくなるように形成されている。
【0021】
図1に示されるように、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の側面1aには、それぞれ、2つのピース間ワンパス継手部2、2が設けられ、2つのピース間ワンパス継手部2、2の間には、溝3が形成されている。
図1において、参照番号5はKセグメント1のリング間継手である。
【0022】
図1に示されるように、Kセグメント1が連結されるべきBセグメント10、10のKセグメント1に対向する側面10a、10aにはいずれも、Kセグメント1の2つのピース間ワンパス継手部2、2と連結されるべき2つのピース間ワンパス継手部11、11が設けられ、2つのピース間ワンパス継手部11、11の間には、Kセグメント1の溝3に連結するロック部材12が設けられている。
図1において、参照番号14はBセグメント10のリング間継手である。
【0023】
図2は、
図1のA−A線に沿って、Bセグメント10のKセグメント1に当接すべき面を見た略正面図である。
【0024】
図2に示されるように、Bセグメント10のKセグメント1に対向する面10aには、ピース間ワンパス継手部11、11が設けられ、ピース間ワンパス継手部11、11の間には、Kセグメント1の溝3に連結するロック部材12が設けられている。
【0025】
図3は、
図1のB−B線に沿って、Kセグメント1のBセグメント10に当接すべき面を見た略正面図である。
【0026】
図3に示されるように、Kセグメント1のBセグメント10に当接すべき面1aには、2つのピース間ワンパス継手部2、2が設けられ、2つのピース間ワンパス継手部2、2の間には、溝3が形成されている。
【0027】
図4は、Kセグメント1の溝3と、Kセグメント1の溝3に連結されるBセグメント10のロック部材12の略拡大平面図である。
【0028】
図4に示されるように、Bセグメント10のロック部材12は溝15を備え、ロック材部12の溝15内には、ばね部材17と、ばね部材17によって、Kセグメント1に向けて付勢される楔形部材18とが配置されている。
【0029】
図4に示されるように、楔形部材18のKセグメント1の側面1aに対向する面18aは、Kセグメント1の側面1aの傾斜と同じ傾斜を有している。
【0030】
図5は、Kセグメント1がBセグメント10、10に連結される直前の状態を示す略横断面図であり、
図6は、
図5に示されたBセグメント10、10の溝15とKセグメント1の溝3の略拡大横断面図である。
【0031】
図5に示されるように、Kセグメント1をBセグメント10、10に連結するにあたっては、トンネルの軸方向に沿って、Kセグメント1がBセグメント10、10の間に挿入される。
【0032】
上述のように、Kセグメント1とBセグメント10、10は、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の側面1aのトンネルの軸方向に対する角度が、Kセグメント1が連結されるべきBセグメント10、10の側面10a、10aのトンネルの軸方向に対する角度に等しくなるように形成されており、Bセグメント10、10のロック部材12に形成された溝15内に収容されたばね部材17によって、Kセグメント1の側面1aに向けて付勢された楔形部材18のKセグメント1の側面に対向する面18aは、Kセグメント1の側面1aの傾斜と同じ傾斜を有しているから、
図6に示されるように、Kセグメント1の側面1aと、Bセグメント10、10の側面10a、10aとの距離が小さくなると、Bセグメント10、10のロック部材12に形成された溝15内に収容されたばね部材17によって、Kセグメント1の側面1aに向けて付勢された楔形部材18の表面18aが、Kセグメント1の側面1aに沿うようになる。
【0033】
図7は、Kセグメント1がBセグメント10、10に連結された状態を示す略横断面図であり、
図8は、
図7に示されたBセグメント10、10の溝15とKセグメント1の溝3の略拡大横断面図である。
【0034】
図7に示されるように、Kセグメント1がBセグメント10、10に連結されると、Kセグメント1のピース間ワンパス継手部2、2と、Bセグメント10、10の各々のピース間ワンパス継手部11、11とが結合するとともに、Bセグメント10、10の溝15内に設けられたばね部材17によって、Kセグメント1に向けて付勢された楔形部材18がKセグメント1の溝3内に嵌合して、Kセグメント1がBセグメント10、10に強固に連結される。
【0035】
本実施態様によれば、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の側面1a、1aに溝3、3が形成され、Bセグメント10、10のセグメントリングの周方向の側面10a、10aには、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の側面1aに形成された溝3に対応する位置に、溝15、15と、溝15、15内に配置されたばね部材17、17と、ばね部材17、17によって、Kセグメント1の側面1aに向けて付勢された楔形部材18、18を備えたロック部材12、12が設けられ、Bセグメント10、10に設けられたロック部材12、12の楔形部材18、18がKセグメント1の溝3、3に係合し、ロック部材12、12の溝15、15内に設けられたばね部材17、17によって、楔形部材18、18がKセグメント1の溝3、3に向けて付勢されているから、Kセグメント1をBセグメント10、10に強固に連結することが可能になるから、軸力によるせん断力が作用しても、Kセグメント1が滑動することを確実に防止することが可能になる。
【0036】
図9および
図10は、従来のKセグメント1とBセグメント10、10との連結状態を示す略横断面図である。
【0037】
図9においては、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面とトンネル軸方向との間の角度が大きい場合が示されている。このように、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面とトンネル軸方向との間の角度が大きい場合には、軸力によるせん断力がKセグメント1に作用して、Kセグメント1が滑動しやすくなる。
【0038】
図10は、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面とトンネル軸方向との間の角度を小さくすることによって、Kセグメント1に作用する軸力によるせん断力の低減を図った場合を示しているが、この方法はあくまでも、Kセグメント1に作用する軸力によるせん断力を低減しようとするものであり、Kセグメント1が滑動するという問題点を根本的に解決しようとするものではない。
【0039】
図11は、本発明の別の好ましい実施態様にかかるKセグメントのための継手構造の略横断面図で、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面とトンネル軸方向との間の角度を小さくすることなく、Kセグメント1の滑動を根本的に防止しようとするものである。
【0040】
図11に示されるように、本実施態様においては、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面に段差20、20が形成され、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面に対向するBセグメント10、10の側面に、Kセグメント1の半径方向の側面の段差20、20と相補的な形状の段差25、25が設けられている。
【0041】
図11に示されるように、本実施態様においては、Kセグメント1の段差20、20が形成された部分に、それぞれ、リング間継手22、22が設けられ、リング間継手22、22によって、Kセグメント1がBセグメント10,10に連結される。
【0042】
本実施態様によれば、Kセグメント1に段差20、20が設けられるとともに、Bセグメント10、10に段差2、20と相補的な形状の段差25、25が設けられ、Kセグメント1に設けられた段差20、20に、リング間継手5、14と同仕様のセグメント間継手22、22が設けられ、リング間継手5、14と同仕様のセグメント間継手22、22によって、Kセグメント1がBセグメント10,10に連結されるから、KセグメントをBセグメント10,10に強固に連結することができ、したがって、軸力によるせん断力が作用しても、Kセグメント1が滑動することを確実に防止することが可能になる。
【0043】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
たとえば、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の両側面1a、1aに溝3、3が形成され、Bセグメント10、10のKセグメント1に対向する側面10a、10aにそれぞれ、溝15、15と、溝5、15内に配置されたばね部材17、17と、ばね部材17、17によってKセグメント1の側面1a、1aに向けて付勢された楔形部材18、18を備えたロック部材12、12が設けられ、ロック部材12、12の楔形部材18、18が、Kセグメント1の両側面1a、1aに形成された溝3,3に係合することによって、Kセグメント1とBセグメント10、10とを連結しているが、Kセグメント1のセグメントリングの周方向の両側面1a、1aに、溝と、当該溝内に配置されたばね部材と、当該ばね部材によって、Bセグメント10、10のKセグメント1に対向する側面10a、10aに向けて付勢された楔形部材を備えたロック部材を形成し、Bセグメント10、10のKセグメント1に対向する側面10a、10aにそれぞれ、溝を形成して、Kセグメント1に設けられたロック部材の楔形部材が、Bセグメント10、10のKセグメント1に対向する側面10a、10aに形成された溝に係合することによって、Kセグメント1とBセグメント10、10とを連結するようにしてもよい。
【0045】
また、
図11に示された実施態様においては、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面に段差20、20が形成され、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面に対向するBセグメント10、10の側面に、Kセグメント1の半径方向の側面の段差20、20と相補的な形状の段差25、25が設けられ、Kセグメント1のセグメントリングの半径方向の側面に段差20、20の部分にリング間継手が設けられているが、Bセグメント10、10の側面に形成された段差25、25の部分にリング間継手を設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 Kセグメント
2 Kセグメントのピース間ワンパス継手部
3 Kセグメントの溝
5 Kセグメントのリング間継手
10 Bセグメント
11 Bセグメントのピース間ワンパス継手部
12 ロック材部
14 Bセグメントのリング間継手
15 Bセグメントのロック材部の溝
17 Bセグメントのロック材部のばね部材
18 Bセグメントのロック材部の楔形部材
20 Kセグメントに設けられた段差
22 Kセグメントに設けられたセグメント間継手
25 Bセグメントに設けられた段差