(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355403
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】焼き物調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
A47J37/06 366
A47J37/06 331
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-84545(P2014-84545)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-202315(P2015-202315A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】市川 惠
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−048540(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3047524(JP,U)
【文献】
特公昭37−003519(JP,B1)
【文献】
登録実用新案第3066603(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0132085(US,A1)
【文献】
米国特許第5445066(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を保持する焼き網と、赤外線を面状に放射する面状赤外線放射バーナとを備え、当該面状赤外線放射バーナが、前記焼き網の載置部に載置された食材を加熱調理するように構成されている焼き物調理器であって、
前記面状赤外線放射バーナが、前記焼き網の下方から退避した位置に設置され、かつ、斜め上方を向くように傾斜した状態で設置可能に構成されており、
前記面状赤外線放射バーナから放射される赤外線を反射するくの字状の反射板を備え、
前記焼き網の載置部は水平状態から傾斜するように傾斜角度を変更可能に取り付けられており、
前記焼き網を水平状態から傾斜させた場合に、前記反射板は、前記焼き網を挟んで前記面状赤外線放射バーナと反対側に配置され、
前記反射板のくの字状の内面が、前記焼き網の載置部及び前記面状赤外線放射バーナの配置されている側に面しており、かつ、前記焼き網の載置部は、前記反射板のくの字状の屈曲部よりも上方に位置している焼き物調理器。
【請求項2】
前記焼き網が、その上面に食材を載置保持する焼き網で、前記面状赤外線放射バーナが、当該焼き網の斜め下方に設置され、かつ、当該焼き網の方を向くように設置可能に構成されている請求項1に記載の焼き物調理器。
【請求項3】
前記焼き網が、前記面状赤外線放射バーナと同じ向きに傾斜した状態で配置可能に構成されている請求項2に記載の焼き物調理器。
【請求項4】
前記反射板が、その傾斜角度を変更可能な状態で設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼き物調理器。
【請求項5】
前記面状赤外線放射バーナが、その傾斜角度を変更可能な状態で設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼き物調理器。
【請求項6】
前記面状赤外線放射バーナが、調理器の天板の下方に設置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の焼き物調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を保持する焼き網と、赤外線を面状に放射する面状赤外線放射バーナとを備え、当該面状赤外線放射バーナが、前記焼き網に保持された食材を加熱調理するように構成されている焼き物調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を加熱調理する焼き物調理器では、食材を保持する焼き網の下方から加熱する、いわゆる、下火式の焼き物調理器が一般的である。下火式の焼き物調理器の加熱源としては、例えば、パイプ式のブンゼンバーナや面状赤外線放射バーナなどが知られているが、面状赤外線放射バーナは、バーナ自体が広い加熱面積を備え、かつ、赤外線も放射することから、特に焼き物調理器の加熱源として好適である。
ところが、面状赤外線放射バーナを焼き網の下方に設置すると、焼き網に保持された食材からの汁など、例えば、食材が焼き鳥の場合であれば、肉汁やタレなどが、下方の面状赤外線放射バーナ上に落下して、面状赤外線放射バーナを汚すばかりか、場合によっては、加熱不良や故障の原因ともなる。
そこで、従来、面状赤外線放射バーナを焼き網の下方に設置し、当該面状赤外線放射バーナの上方を赤外線透過の耐熱ガラスにより覆った構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−25086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の焼き物調理器では、面状赤外線放射バーナの上方が耐熱ガラスにより覆われているので、耐熱ガラスによって面状赤外線放射バーナの火力が抑制されて加熱効率が悪くなるという問題があり、更に、耐熱ガラスの上に肉汁やタレなどが落ちると、耐熱ガラスが高温であるため、肉汁やタレなどが燃えて煙を発生するという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、面状赤外線放射バーナの火力抑制を回避しながら、焼き網に保持された食材から汁などが落下しても、煙を発生することのない焼き物調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明による焼き物調理器は、食材を保持する焼き網と、赤外線を面状に放射する面状赤外線放射バーナとを備え、当該面状赤外線放射バーナが、前記焼き網
の載置部に載置された食材を加熱調理するように構成されている焼き物調理器であって、
その特徴構成は、前記面状赤外線放射バーナが、前記焼き網の下方から退避した位置に設置され、かつ、斜め上方を向くように傾斜した状態で設置可能に構成されて
おり、
前記面状赤外線放射バーナから放射される赤外線を反射するくの字状の反射板を備え、
前記焼き網の載置部は水平状態から傾斜するように傾斜角度を変更可能に取り付けられており、
前記焼き網を水平状態から傾斜させた場合に、前記反射板は、前記焼き網を挟んで前記面状赤外線放射バーナと反対側に配置され、
前記反射板のくの字状の内面が、前記焼き網の載置部及び前記面状赤外線放射バーナの配置されている側に面しており、かつ、前記焼き網の載置部は、前記反射板のくの字状の屈曲部よりも上方に位置している点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、面状赤外線放射バーナが、焼き網の下方から退避した位置に設置されているので、面状赤外線放射バーナの上方を耐熱ガラスなどで覆う必要はなく、また、食材の汁などが下方へ落下しても、燃えて煙を発生することもない。
そして、面状赤外線放射バーナは、斜め上方を向くように、つまり、食材を保持する焼き網の方を向くように傾斜した状態で設置可能であるから、焼き網の下方から退避した位置に設置されているにもかかわらず、食材を効率よく加熱調理することができる。
その結果、面状赤外線放射バーナの火力抑制を回避しながら、焼き網に保持された食材から汁などが落下しても、煙を発生することのない焼き物調理器を提供することが可能となった。
上記特徴構成によれば、面状赤外線放射バーナからの赤外線を反射する反射板が、焼き網を挟んで面状赤外線放射バーナの反対側に配設され、焼き網に向けて赤外線を反射させるので、焼き網上の食材は、焼き網の斜め下方から面状赤外線放射バーナにより加熱されるとともに、面状赤外線放射バーナに対向する斜め下方から反射板による反射赤外線により加熱されることになり、焼き網上に載置された食材を更に効率よく加熱調理することができる。
【0008】
本発明による焼き物調理器の更なる特徴構成は、前記焼き網が、その上面に食材を載置保持する焼き網で、前記面状赤外線放射バーナが、当該焼き網の斜め下方に設置され、かつ、当該焼き網の方を向くように設置可能に構成されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、焼き網の上面に各種の食材を載置して加熱調理することができ、当該焼き網の斜め下方に設置された面状赤外線放射バーナが、焼き網の方を向くように設置可能であるから、焼き網上に載置された食材を効率よく加熱調理することができる。
【0010】
本発明による焼き物調理器の更なる特徴構成は、前記焼き網が、前記面状赤外線放射バーナと同じ向きに傾斜した状態で配置可能に構成されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、焼き網が、面状赤外線放射バーナと同じ向きに傾斜した状態で配置可能であるから、焼き網上に載置された食材をより一層効率よく加熱調理することができる。
【0014】
本発明による焼き物調理器の更なる特徴構成は、前記反射板が、その傾斜角度を変更可能な状態で設けられている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、例えば、食材の形状や種類、あるいは、焼き網に対する食材の載置位置などに応じて、反射板の傾斜角度を加熱調理に最適な角度に変更することができるので、食材の形状や種類などに影響されることなく、常に効率よく加熱調理することができる。
【0018】
本発明による焼き物調理器の更なる特徴構成は、前記面状赤外線放射バーナが、その傾斜角度を変更可能な状態で設けられている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、例えば、食材の形状や種類、あるいは、焼き網に対する食材の載置位置、更に、反射板が設けられている場合には、反射板の位置や傾斜角度などに応じて、面状赤外線放射バーナの傾斜角度を加熱調理に最適な角度に変更して、食材を効率よく良好に加熱調理することができる。
【0020】
本発明による焼き物調理器の更なる特徴構成は、前記面状赤外線放射バーナが、調理器の天板の下方に設置されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、調理器の天板が、面状赤外線放射バーナの上方を覆うカバーとして機能することになり、面状赤外線放射バーナへの他物の落下を防止するとともに、塵埃などの付着抑制にも寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】第1実施形態による焼き物調理器の縦断正面図
【
図3】第2実施形態による焼き物調理器の縦断正面図
【
図5】第3実施形態による焼き物調理器の縦断正面図
【
図6】第3実施形態による焼き物調理器の開閉式焼き網の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による焼き物調理器の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態による焼き物調理器は、
図1および
図2に示すように、例えば、中空の直方形で上面開口の調理器本体1を備え、調理器本体1の上面開口部は、焼き網用開口部2を有する状態で、調理器の2枚の調理用の天板3と1枚の作業用の天板4により覆われ、調理器本体1内には、面状赤外線放射バーナ5が収納設置されている。
面状赤外線放射バーナ5は、例えば、都市ガスなどを燃料として赤外線を面状に放射する赤外線バーナやメタルニットバーナなどで、2枚の調理用の天板3のうちの一方の天板3の下方に位置する状態で設置され、調理器本体1の底部には、水を張った汁受け皿6が調理器本体1から取り外し自在に配置されている。
【0024】
焼き網用開口部2は、面状赤外線放射バーナ5によって、焼き網7に載置保持された食材としての焼き鳥10を加熱調理するための開口部で、2枚の調理用の天板3間にわたって焼き網7を載置することにより、後述するように、焼き鳥10が焼き網用開口部2上または焼き網用開口部2内に位置するように設定されている。
焼き網7は、焼き鳥10を載置する載置部7aと載置部7aから延出する把持部7bを備え、把持部7bの反対側には、把持部7b側に向けて斜め上方に延出する一対の引掛け部7cが連設され、各引掛け部7cの先端には、引掛け片7dが設けられている。
当該焼き網7は、
図2に仮想線で示すように、2枚の調理用の天板3間にわたって載置することで、載置部7aが水平となって焼き網用開口部2上に位置する水平姿勢と、
図2に実線で示すように、引掛け部7cの先端の引掛け片7dを一方の天板3の端部に引掛けることで、載置部7aが傾斜して焼き網用開口部2内に位置する傾斜姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。
【0025】
この姿勢変更可能な焼き網7に対して、面状赤外線放射バーナ5は、焼き網7の下方から斜め下方、つまり、調理者(作業用の天板4側)から見て左側に退避した位置で、左側に位置する調理用の天板3の下方に設置されている。
面状赤外線放射バーナ5は、その傾斜角度が変更可能に構成され、例えば、焼き網7が水平姿勢にあるとき、その載置部7aに向けて斜め上方を向くように傾斜した状態に設置したり、焼き網7が傾斜姿勢にあるとき、載置部7aと同じ向きに傾斜して、焼き網7の載置部7aとほぼ平行になるように設置するなど、焼き網7の姿勢や焼き鳥10に対する加熱具合などに応じて、その傾斜角度を自由に設定することが可能である。
図示する例では、この傾斜角度の調整は面状赤外線バーナ5に設けられた水平揺動軸5a周りの揺動と、所定揺動位置での位置固定により面状赤外線バーナ5の傾斜角度を確定できる。
【0026】
調理者から見て右側に位置する調理用の天板3の下方には、面状赤外線放射バーナ5から放射される赤外線を反射する反射板11が、焼き網7を挟んで面状赤外線放射バーナ5の反対側に位置する状態で配設され、面状赤外線放射バーナ5からの赤外線を焼き網7の載置部7aに向けて反射させるように構成されている。
当該反射板11は、面状赤外線放射バーナ5からの赤外線が焼き網7の載置部7aに向けて効率よく反射されるように、例えば、くの字状に折り曲げられた形状を有し、
図2中に矢印で示すように、その上端部を中心として傾斜角度が変更可能に構成され、更に、清掃を容易にするために取り外し可能に構成されている。
ただし、反射板11の形状は、特にくの字状に限るものではなく、焼き網用開口部2の位置や焼き網7の形状などに応じて種々の形状を採用することができる。
【0027】
(第2実施形態)
第2実施形態による焼き物調理器は、
図3に示すように、第1実施形態と同じような調理器本体1、調理用の天板3、作業用の天板4(図外)、および、汁受け皿6などを備え、焼き網用開口部2が、第1実施形態のものに比べて左右方向に広い幅で開口している。
2枚の調理用の天板3間にわたって載置する焼き網8は、広い幅の焼き網用開口部2に対応するように、その全面が食材としての焼き鳥10を載置保持する載置部8aとして構成されたもの、あるいは、載置部8aと載置部8aの端部から延出する把持部8bとを備えたものが使用される。
調理器本体1内には、2つの面状赤外線放射バーナ5が、調理者から見て焼き網8の左右に退避した位置で、調理用の天板3の下方にそれぞれ位置するように収納設置され、これら2つの面状赤外線放射バーナ5も、例えば、焼き網8の載置部8aに載置された焼き鳥10に向けて斜め上方を向くように傾斜した状態に設置するなど、その傾斜角度が自由に設定できるように構成されている。
【0028】
(第3実施形態)
第3実施形態による焼き物調理器は、
図4および
図5に示すように、第1および第2実施形態と同じような調理器本体1、調理用の天板3、作業用の天板4、および、汁受け皿6などを備え、焼き網用開口部2が、これまでの実施形態のものに比べて左右方向に比較的狭い幅で開口している。
焼き網9は、
図6に示すように、食材としての焼き鳥10などを挟持保持する開閉自在な一対の焼き網片9aを備えた開閉式焼き網9で、各焼き網片9aには、それぞれ把持部9bが連設されている。
調理器本体1内には、焼き網9を載置保持する焼き網保持部材12が、調理者から見て焼き網用開口部2の前後方向にそれぞれ設けられている。
【0029】
各焼き網保持部材12は、上下方向に配設された一対の長尺部材12aと長尺部材12aの下端部に配設されたストッパ12bで構成され、把持部9bを上にして開閉式焼き網9を上方から挿入することにより、一対の長尺部材12aによりガイドされ、ストッパ12bへの接当によって、開閉式焼き網9が、
図5に示すように、上下方向に垂下した状態で載置保持されるように構成されている。
そして、調理器本体1内には、第2実施形態と同様に、2つの面状赤外線放射バーナ5が、調理者から見て開閉式焼き網9の左右に退避した位置で、調理用の天板3の下方にそれぞれ位置するように収納設置され、その傾斜角度が自由に設定できるように構成されている。
【0030】
〔別実施形態〕
(1)第1〜第3実施形態では、面状赤外線放射バーナ5の傾斜角度を変更可能に構成した例を示したが、面状赤外線放射バーナ5は、必ずしもその傾斜角度を変更可能にする必要はなく、例えば、上方に位置する焼き網7、8、あるいは、横方向において垂下された開閉式焼き網9に向けて斜め上方を向くように、その傾斜角度を固定した状態で設置することもできる。
同様に、第1実施形態で示した反射板11に関しても、その傾斜角度を固定した状態で設置することも可能である。
【0031】
(2)第1実施形態では、面状赤外線放射バーナ5をひとつだけ設けた例を示したが、反射板11に代えて別の面状赤外線放射バーナ5を配設し、2つの面状赤外線放射バーナ5により加熱調理するように構成することもできる。
逆に、第2と第3実施形態では、2つの面状赤外線放射バーナ5を設けた例を示したが、これらの実施形態において、いずれか一方の面状赤外線放射バーナ5を無くすか、あるいは、面状赤外線放射バーナ5に代えて第1実施形態で示したような反射板11を配設し、ひとつの面状赤外線放射バーナ5により加熱調理するように構成することもできる。
【0032】
(3)これまでの実施形態では、面状赤外線放射バーナ5を調理用の天板3の下方に設置した例を示したが、面状赤外線放射バーナ5は、焼き網7、8、9の下方から退避した位置であればよく、必ずしも調理用の天板3の下方に設置する必要はない。
そして、本願の焼き物調理器は、業務用、一般家庭用を問わず適用可能であり、また、食材10の一例として焼き鳥を示したが、各種の肉類をはじめとして、魚などの魚介類、茄子などの野菜類など、各種の食材10を調理対象として使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
3 調理用の天板
5 面状赤外線放射バーナ
7、8 焼き網
9 開閉式焼き網
9a 焼き網片
10 食材
11 反射板