(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
  以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
 
【0011】
  第1の発明は、ガス供給管に接続され、ガス流量を一定時間間隔で計測する流量計測手段と、前記流量計測手段により流量値を求める演算手段と、前記演算手段により算出された流量値を所定時間蓄積して区間平均流量を算出するとともにその間の最大流量と最小流量を求める区間演算手段と、前記区間演算手段のデータをあらかじめ設定した回数で最大最小差絶対値の昇順にN個保持することができ、そのN個の平均流量から平均を算出してガス流量の有無を判定する流量有無判定手段とを備え、前記流量有無判定手段は、区間平均流量が平均判定流量以内で、平均流量が平均判定流量以内の場合に流量なしと判定すると共に、算出した平均流量が平均判定流量以外の場合は流量ありと判定するものである。      
 
【0012】
  第2の発明は、前記区間演算手段のデータをあらかじめ設定した回数以内の期間で、最大最小差最大値が出現した以降のN個分での区間平均流量で、N個の平均流量を算出してガス流量の有無を判定する流量有無判定手段とを備え、前記流量有無判定手段は、区間平均流量が判定許容範囲以内で、平均流量が平均判定流量以内の場合に流量なしと判定すると共に、算出した平均流量が平均判定流量以外の場合は流量ありと判定するものであり、請求項1でのデータ保持領域の削減を実現したものである。
 
【0013】
  (実施の形態1)
  本発明の第1の実施の形態におけるガス遮断装置として、ガスメータを用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態のガスメータのブロック図を示すものである。
 
【0014】
  図1において、ガスメータ1は、ガス供給管aの途中に設けられ、ガス供給管aの下流側には、各顧客宅内に設置された1台以上のガス器具(図示せず)が接続されている。
 
【0015】
  図1において、ガスメータ1は、遮断手段2、流量計測手段3、表示器4、感震器5、演算手段6、区間演算手段8、流量有無判定手段9、制御手段10を有して構成される。なお、遮断装置2の下流側に流量計測手段3が設けられている。
 
【0016】
  流量計測手段3は、ガス供給管aの経路中に接続され、後述するように、超音波信号を用いてガス供給管a内のガス流により生じる伝搬時間差を求め、ガスの瞬時流量を検出するものである。
 
【0017】
  演算手段6は、流量計測手段3により検出された瞬時流量を基に、瞬時流量を積算してガス流量(流量値)を算出するものである。この流量計測手段3及び演算手段6が流量計測部の機能を実現する。
 
【0018】
  区間演算手段8は、演算手段6が算出した流量値を所定時間蓄積して区間平均流量を算出するものである。
 
【0019】
  流量有無判定手段9は、所定時間毎に区間演算手段8による区間平均流量の最大流量と最小流量と平均流量QtとからN個分を昇順に保持し、内管漏洩を判断するための流量有無判定処理を行うものである。
 
【0020】
  制御手段10は、ガスメータ1内の各部の動作制御の他、流量有無判定手段9による流量有無判定結果ならびに内管漏洩確定による警告やガスの遮断などの保安処理などを行うものである。
 
【0021】
  ここで、制御手段10、演算手段6、区間演算手段8,流量有無判定手段9は、マイクロコンピュータ(マイコン)等を構成するプロセッサ及び動作プログラムにより構成され、プロセッサにおいて所定の動作プログラムを実行して対応する処理を行うことにより、各機能を実現している。
 
【0022】
  なお、本実施の形態1における流量計測手段3は、超音波方式の計測手段を使用しているが、計測方式としては、他の流量計測方式でも、フルイディック方式などの短時間に一定サイクルで連続計測可能である他の方式を用いてもよい。
 
【0023】
  表示器4は、LED、液晶ディスプレイ等により構成され、ガス流量やガス器具の動作状態、警告などを表示するものである。感震器5は、地震などの振動を検出してその検出信号を制御手段10に出力するものである。遮断手段2は、ガス供給管aの経路中に接続され、制御手段10からの指示に基づいてガス供給管aを閉塞してガスの供給を遮断するものである。圧力センサ12は、ガスメータ1内に接続され、ガス供給管aの経路中の圧力を測定するものである。また、圧力判定手段13は、定期的に圧力センサ12により測定された圧力値を判定する手段である。
 
【0024】
  流量計測手段3及び演算手段6の動作について、以下に詳述する。
図2は、流量計測手段3の概略構成図である。
 
【0025】
  流量計測手段3は、ガス供給管aに連通する矩形断面を持つ計測流路30を有し、この計測流路30の相対向する流路壁の上流側と下流側には、一対の超音波送受信器31、32が配置されている。これらの超音波送受信器31、32は、超音波伝播経路が計測流路30を流動するガス流を斜めに横切るように設定され、交互に超音波を送受信させることによって、ガス流に対して順方向と逆方向に超音波を伝搬させている。
 
【0026】
  このとき、超音波送受信器31、32間の距離、すなわち測定距離をL、ガス流に対する超音波伝播経路の角度をφ、超音波送受信器31からその下流にある超音波送受信器32への超音波伝播時間をt1、超音波送受信器32からその上流にある超音波送受信器31への超音波伝播時間をt2、音速をCとすると、流速Vは以下の式により求められる。
 
【0027】
  V=L/2cosφ((1/t1)−(1/t2))
  この流速Vと計測流路30の断面積とからガス流の瞬時流量を算出する。瞬時流量の計測の時間間隔は、超音波の送受信が可能な範囲で設定できる。
 
【0028】
  一般的に、使用するガス器具によって起動時間や制御によりガス流量が変化する時間が異なるため、計測時間間隔を小さくすることは、器具判別を瞬時に行うためには有利となる。しかし、計測時間間隔を短くするほど、電池により駆動しているガスメータ等では、電池の消耗が大きくなる。また、計測時間間隔が従来のガスメータで使用している膜式方式と同等の2桁オーダーの秒数間隔になると、流量変化の差分を見て判断することが困難になる。
 
【0029】
  本実施の形態では、ガス器具が使われていないときは、2秒間隔の周期的な瞬時流量の計測を行い、その差分値をとってガス器具の起動を判別する。なお、計測時間間隔を更に短くすることも可能である。例えば、ガス器具起動後は、計測精度を上げるために計測時間間隔を短くするなどの制御を行ってもよい。
 
【0030】
  次に、流量有無判定手段9の動作について、以下に詳述する。
図3は、脈動時のガス流量の変化を示す特性図で、
図4は、区間平均流量Qtの判定許容範囲を示す図である。
 
【0031】
  図3は、流量計測手段3により測定されたガスの瞬時流量値を示している。ガス器具の未使用時に瞬時流量がゼロ付近で安定していれば、流量なしの判定は容易であり、また、瞬時流量が微少流量で安定していれば、内管漏洩の検出も容易である。
 
【0032】
  しかしながら、呼吸動作等の影響による流量が発生している場合には、流量なしを判定できず、所定時間継続すると、内管漏洩が発生していないにも関わらず、内管漏洩と判定してしまう課題があった。
 
【0033】
  呼吸動作によりガス流が発生している場合には、圧力変動が大きいことから、流量なし判定をおこなう際に、ガス配管内の圧力値が所定範囲以内の場合において、所定時間の間における区間平均流量Qtの最大値(最大流量)Qtmax、最小値(最小流量)Qtminおよび平均値(平均流量)を求め、これらを安定度合いの判定に用いる。
 
【0034】
  図4は、区間平均流量Qtの安定度合いを判定する閾値について示している。平均判定流量をQh(L/h)とすると、−QhからQhの範囲が判定の閾値(判定許容範囲)となる。区間平均流量Qtが−QhからQhの範囲を外れる場合は、流量ありとする。
図4中に、判定の閾値である−QhからQhの範囲内に収まった区間平均流量Qtの第1判定回数分を示している。第1判定回数分の区間平均流量Qtの平均流量が判定許容範囲を外れていれば、流量ありとする。
 
【0035】
  図5は、本実施の形態における流量有無判定9の動作手順を示すフローチャートである。流量有無判定手段9は、
図5に示すステップS1からステップS15の制御フローを実行するプログラムを格納したものである。
 
【0036】
  ステップS1において、区間演算手段8からの区間平均流量Qtおよび区間中の最大値Qtmax、最小値Qtminを更新する。
 
【0037】
  ステップS2において、区間演算手段8からの最大流量Qtmaxと最小流量Qtminとの差が許容範囲幅未満か否か判定し、許容範囲幅未満であれば、ステップS3に移行する。ステップS3においては、区間演算手段8からの区間平均流量Qtが判定許容範囲以内か否か判定し、判定許容範囲以内であれば、ステップS7に移行する。
 
【0038】
  ステップS3において、区間平均流量Qtが判定範囲許容以外であれば、流量ありと判断して、ステップS4に移行して、内管漏洩判定タイマをアップし、ステップS5において、内管漏洩判定タイマが所定値に到達したかどうか判定し、所定値に到達すると、ステップS6に移行し、内管漏洩と確定する。
 
【0039】
  ステップS3において、区間演算手段8からの区間平均流量Qtが判定許容範囲以内であれば、ステップS7において、前記最大流量Qtmaxと前記最小流量Qtminとの差の絶対値(あらかじめ設定した期間における最大最小差の絶対値)の昇順に区間平均流量値Qtを並べて、区間平均流量値Qtを最大最小差の絶対値とともに保持し、保持数がN個を超えるかどうかを判定し、超えていればS8へ進む。S8においては、N+1個目に保持している値(保持している最大最小差の絶対値の中で最も大きな値、および、その最大最小差の絶対値に対応する区間平均流量Qt)を削除する。
 
【0040】
  ステップS9において、連続回数カウンタをアップする。ステップS10においては、連続回数カウンタが連続判定回数に到達したか否か判定し、到達した場合は、ステップS11において、連続回数カウンタをクリアし、ステップS12において、ステップS7で保持したN個の区間平均流量Qtの平均流量を算出し(N個でない場合はそのときに保持している数の区間平均流量Qtの平均を算出してもよいし、区間平均流量Qtの平均流量を0としてもよい)、ステップS13において、保持しているN個の最大最小差の絶対値とN個の区間平均流量Qtとをクリアする。
 
【0041】
  ステップS14において、ステップS12にて算出したN個の区間平均流量Qtの平均流量の絶対値が平均判定流量以内か否か判定し、平均判定流量以内であれば、流量なしとしてステップS15に移行し、ステップS15において、内管漏洩判定タイマをクリアする。ステップS14において、区間平均流量Qtの平均流量の絶対値が平均判定流量以内でなければ、ステップS4に移行する。
 
【0042】
  このように、流量有無判定手段9は、区間平均流量Qtが判定許容範囲以内であった場合に区間平均流量を蓄積して平均流量を算出し、算出した平均流量が平均判定流量以内の場合に流量なしと判定すると共に、算出した平均流量が平均判定流量以外の場合は流量ありと判定するものである。
 
【0043】
  以上のように、本実施の形態においては、N個分の区間平均流量Qtを最大最小差の絶対値分の昇順に並べて平均をとることにより、呼吸動作が発生中であっても、平均に近いN個の区間平均流量Qtにて流量を判定するため、安定して流量なしを判定することができ、内管漏洩の誤警告を防止することができる。
 
【0044】
  (実施の形態2)
  本発明の第2の実施の形態におけるガス遮断装置として、ガスメータを用いて説明する。
図6は、本実施の形態における流量有無判定の動作手順を示すフローチャートである。
 
【0045】
  図6に示すフローチャートにおいて、ステップS21において、区間演算手段8からの区間平均流量Qtおよび区間中の最大値Qtmax、最小値Qtminを更新する。
 
【0046】
  ステップS22において、区間演算手段8からの最大流量Qtmaxと最小流量Qtminとの差が許容範囲幅未満か否か判定し、許容範囲幅未満であれば、ステップS23に移行する。ステップS23においては、区間演算手段8からの区間平均流量Qtが判定許容範囲以内か否か判定し、判定許容範囲以内であれば、ステップS27に移行する。
ステップS23において、区間平均流量Qtが判定範囲許容以外であれば、流量ありと判断して、ステップS24に移行して、内管漏洩判定タイマをアップし、ステップS25において、漏洩判定タイマが所定値に到達したかどうか判定し、所定値に到達すると、ステップS26に移行し、内管漏洩を確定する。
 
【0047】
  ステップS27において、区間平均流量で求めた最大流量Qtmaxと最小流量Qtminとの差(Qt最大最小差)の絶対値がQt最大最小差最大値以下(初期値:許容最大値)であればステップS28へ進み、それ以外であればステップS37へ進む。
 
【0048】
  ステップS28において、区間平均流量で求めた最大流量Qtmaxと最小流量Qtminとの差(Qt最大最小差)の絶対値をQt最大最小差最大値候補値と比較し、Qt最大最小差の絶対値がQt最大最小差最大値候補値より大きければステップS29でQt最大最小差最大値候補値を更新し、最大値候補カウンタと合計流量候補をクリアにする。
 
【0049】
  ステップS30において合計流量候補にQtを加算し、ステップS31にて最大値かカウンタがN個未満の場合はステップS32で最大値カウンタをアップして、ステップS33で合計流量にQtを加算し、ステップS37へ進む。
 
【0050】
  ステップS28でQt最大最小差の絶対値がQt最大最小差最大値候補値以下だったら、ステップS34で最大値候補カウンタをカウントし、ステップS35で最大値候補カウンタがN個以上でなかったらステップS30へすすむ。ステップS35で最大値候補カウンタがN個以上であったらステップS36に進み、Qt最大最小差最大値をQt最大最小差最大値候補値で更新し、最大値候補カウンタをNとし、合計流量の値を合計流量候補の値に更新し、Qt最大最小差最大値候補値をクリアする。
 
【0051】
  ステップS37において、連続回数カウンタをアップする。
 
【0052】
  ステップS38において、連続回数カウンタが連続判定回数に到達したか否か判定し、連続回数カウンタが連続判定回数に到達すると、ステップS39において、連続回数カウンタをクリアし、ステップS40において、区間平均流量Qtを加算した合計流量から、最大N個の区間平均流量Qtの平均流量を算出し(N個でない場合はそのときに保持している数の区間平均流量Qtの平均を算出してもよいし、区間平均流量Qtの平均流量を0としてもよい)、ステップS41において、Qt最大最小差最大値を許容範囲値にしてQt最大最小差最大値候補値と最大値候補カウンタ、最大値カウンタ、合計流量をクリアする。
 
【0053】
  ステップS42において、ステップS40にて算出した平均流量の絶対値が平均判定流量以内か否か判定し、平均判定流量以内であれば流量なしとして、ステップS43において、内管漏洩判定タイマをクリアする。
 
【0054】
  図7に合計流量の確定動作について表を示す。所定回数が始まると、合計流量をN個分の区分平均流量から加算して求めていく。N個分の区分平均流量が加算されると、合計流量として、N個の平均流量算出の対象となる。また、Qt最大最小差最大値候補値は初期値0として所定回数が始まった時の最大最小差値を最大最少差最大候補とする。例えば、回数が11回目となったQt(11)の最大最小差最大値候補値以上の最大最小差が出現しないと、最大値候補カウンタがアップし続ける。そして、最大値候補カウンタがN個加算されたとき、合計流量の値を置き換え、N個の平均流量の算出の対象となる。
 
【0055】
  図8に合計流量の保持動作について示す図を示す。Qt最大最小差最大値候補値の判定によって加算されている合計流量候補の値は、更新される毎に現在より最大最小差が小さいものが候補となっていくため、更新される毎により安定した区間平均流量を合計流量とすることができる。
 
【0056】
  以上のように、本実施の形態においては、最大最小差の値を考慮した区間平均値により呼吸動作が発生中であっても安定して流量なしを判定することができ、内管漏洩の誤警告を防止することができ、さらに区間平均流量のN個分の最大最小値差と区間平均流量Qtを保持する必要がなくなるので、実施の形態1のデータ保持領域の削減を実現したものである。