【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例の形態を示す図である。
【0013】
医療診断用
99mTc回収装置100は、新たに形成された高濃度Mo(
99Mo)溶液を、活性炭を内蔵する吸着カラムへ通液して該活性炭に高濃度Mo(
99Mo)溶液中の
99mTcを選択的に吸着させ、
99mTcを吸着させた後の高濃度Mo(
99Mo)を再循環させ、再循環された高濃度Mo(
99Mo)溶液について放射平衡状態を形成して
99mTcを形成して、
99mTcを含む高濃度Mo(
99Mo)溶液を形成し、形成した
99mTcを含む高濃度Mo(
99Mo)溶液を、活性炭を内蔵する吸着カラムへ通液して該活性炭に当該高濃度Mo(
99Mo)溶液中の
99mTcを選択的に吸着することで
99mTcを回収する装置として構成される。
【0014】
図1において、医療診断用
99mTc回収装置100は、一体箱状形態に構成され、外側に配置された外側遮蔽壁1および内側に配置された内側遮蔽壁2を備える。外側遮蔽壁1によって、内部にメンテナンスエリア3が形成される。メンテナンスエリア3は、その中央部に設けられた上下室分離用の分離体6によって上下室に分けられる。ここでは、外方遮蔽壁1と内方遮蔽壁2で形成された上方のメンテナンセエリアを上部外側
の外方空間部4Aと呼び、下方のメンテナンスエリアを下部外側
の外方空間部4Bと呼ぶ。内方遮蔽壁2で形成された
内方空間部5の上方の室を下部外側の内方空間部5Aと呼び、下方の室を下部内側
の内方空間部
5Bと呼ぶ。内側遮蔽壁2の下側には、外部開放の下部室7が形成され、電源制御系8が配置される。
【0015】
上部外側
の外方空間部4Aおよび下部外側
の外方空間部4Bには、換気系9が接続され、排気がなされる。
【0016】
上部外側
の外方空間部4Aおよび下部外側
の外方空間部4Bには、レール10が施設される。本例の場合、2組のレール配置としてある。
【0017】
上部外側
の外方空間部4Aの上方の外側遮蔽壁1には扉11、上下室分離用の分離体6には外側に扉12、内側に扉13が設けられ、下部外側
の外方空間部4Bの側方の外側遮蔽壁1にはPbガラスが配設され、その外側にマニピュレータ15が敷設される。下部外側空間部4Bの下方の外側遮蔽壁1には一対の
99mTc溶液回収ポート16が形成されている。
【0018】
下部内側
の内方空間部5Bの内部に、Mo(
99Mo)溶液内蔵タンクであるところの調整タンク21および2つのMo(
99Mo)溶液タンク22,23が設置される。下部外側
の外方空間部4Bに
99mTcを製造セル24,25が設置される。両者は、接続される。
99mTc
の製造セル24,25は、活性炭内蔵吸着カラムを備える。
【0019】
99mTc
の製造セル24,25には、それぞれ製造された
99mTc溶液を排出する一対の排出路26が設けられ、
99mTc溶液回収ポート16に接続される。
【0020】
99mTc
の製造セル24,25は、それぞれレール10上を上部外側
の外方空間部4Aに引き出されて定期面メンテナンス27による維持管理がなされる。
【0021】
以上のようにして、内部にメンテナンスエリアを形成するように形成された外部遮蔽壁1と、メンテナンスエリア3内に内方
空間部を形成するように、メンテナンスエリア3内に形成された内部遮蔽壁2と、を備えて、メンテナンスエリア3内であって、外部遮蔽壁1と内部遮蔽壁2との間に上部外側
の外方空間部4Aおよび下部外側
の外方空間部4Bからなる外方空間部
4が形成される。
【0022】
また、内方
空間部5内にMo(
99Mo)溶液内蔵タンクを形成する調整タンク21、Mo(
99Mo)溶液タンク22,23が収納され、外方
空間部4内に活性炭内蔵吸着カラムを備えた
99mTc
の製造セル24,25が収納される。
【0023】
また、Mo(
99Mo)溶液内蔵タンク
22,23と
99mTc
の製造セル
24、25とが接続され、該活性炭内蔵吸着カラムで回収された
99mTcが
99mTc溶液回収ポート16から外部に取り出される。
【0024】
図2は、内方
空間部5内にMo(
99Mo)溶液内蔵タンクを形成する調整タンク21、Mo(
99Mo)溶液タンク22,23、外方
空間部4内に活性炭内蔵吸着カラムを備えた
99mTc
の製造セル24,25の機能を示す。
図1と
図2の対比において、調整タンク21が制御タンク54に該当し、Mo(
99Mo)溶液タンク22,23がMo容器52,53に該当する。
99mTc
の製造セル24,25は、Tc濃縮精製回収系66を包含する。以下、
図2の構成について説明する。
【0025】
図2は、
99mTc抽出装置26を構成する
99mTc抽出製造装置51の例を示す図である。
図3は、高純度
99mTc溶液の抽出による製造ステップをS1〜S7のステップで示す図である。
【0026】
図2、
図3において、
99mTc抽出製造装置51は
99Mo及び
99mTcから放出される放射線を遮蔽するホットセル内に設置される。
99mTc抽出製造装置51は、Mo容器(1)52、Mo容器(2)53および制御タンク54を備える。複数のMo容器を備えるようにしてもよい。Mo容器(1)52およびMo容器(2)55には中性子照射されて
99Moが生成し含まれるMoO
3をアルカリ(NaOH)溶液で溶解して生成されるNa
299MoO
4溶液が供給される。すなわち、放射性医薬品原料としての放射性核種
99Moを含んだMo溶液がMo容器(1)52およびMo容器(2)53に供給される。
99MoO
3がアルカリ溶液で溶解されると、図に示すようにpH中性のNa
299MoO
4溶液が形成される。
【0027】
生成に際して、放射性
99Moを含むMo溶液は例えば2L中に500gのMoを含む高い濃度のMo溶液とされる。以下、この溶液を高濃度Mo溶液という。ここで、高濃度とは、例えば1回500Ci程度の必要量の
99mTcを得るために、前述の2L中に500gのMoを含む高濃度Mo溶液が必要となるための濃度ということである。
【0028】
Mo容器(1)52およびMo容器(2)53の底部には、それぞれ三方弁55、56を備えた配管57、58が設けてあり、Mo容器(1)52およびMo容器(2)53は3方弁55、56および配管57、58更に他の配管59、60を介して制御タンク54の底部に接続されている。配管57、58の終端に3方弁63が備えられる。制御タンク54は液面調整機構としての機能を備える。制御タンク54の底部は、さらに配管64、配管64に設けた3方弁65を介してTc濃縮精製回収系66の一端(図では上面)に接続される。このTc濃縮精製回収系66は後述するように、活性炭を内蔵した吸着カラムを備える。
【0029】
Tc濃縮精製回収系66の他端(図では下端)には、配管67およびこれに設けられた3方弁68が設けられ、配管57および配管58の終端に設けた3方弁63に接続される。Mo容器(1)52およびMo容器(2)53で、高濃度Mo溶液中で
99Moの娘核種である
99mTcが生成されて、放射性核種
99Moおよび
99mTcを含む高濃度Mo溶液が形成される。
99Moを含む新しい高濃度Mo溶液は交互に、例えば隔週毎にいずれかのMo容器(1)52およびMo容器(2)53に入れ替え供給される。
【0030】
弱いエネルギーのγ線(放射線)を放出するテクネチウム99(
99mTc)はSPECTのような医学診断に使用されるが、半減期が6時間であるため1日で16分の1にまでその放射能量は減少してしまう。これを補うために
99mTcの親核種である
99Moを保有して、そのベータ・マイナス崩壊を起こして生まれる
99mTcを分離・利用する。このように親核種と娘核種の放射平衡関係を利用して娘核種を得る方法がミルキングと呼ばれる。
【0031】
ここでは、このように親核種と娘核種の放射平衡関係を利用して娘核種を得る方法をミルキングと称する。また、このミルキングを行うことをミルキング処理と称し、娘核種を含む溶液をミルキング溶液と称する。従って、ここで
99Moを含む高濃度Mo溶液とは、上述のように、放射平衡関係を利用して必要量の
99mTcを得るための
99Moを含む溶液ということである。
【0032】
高濃度
99Mo溶液は、配管57ならびに配管58、三方弁63、配管67を介してTc濃縮精製回収系66の下部から活性炭カラムを内蔵するTc濃縮精製回収系66へ導入される。Tc濃縮精製回収系66は、吸着カラムを備え、吸着カラムに活性炭が内蔵されているので、この活性炭に必要量の
99mTcを含む高濃度
99Mo溶液を通液することによって、
99mTcを選択的に吸着させることができる。この工程で
99mTcの精製、濃縮がなされる。ここで、高濃度Mo溶液中のMo量(ここでは、500g)に対する
99Mo量と
99mTc量との関係を示せば次のようである。
【0033】
99Moの半減期:65.94h,
99mTcの半減期:6.01h
500Ci
99Mo量=1.04mg(500gMoに対し1/50万)
500Ci
99mTc量=0.095mg(500gMoに対し1/500万)
99Mo 5×10
4Bq以下の場合、500gMoに対し6×10
−15以下
99mTc 6×10
4Bq以下の場合、500gMoに対し6×10
−16以下
このように、高濃度Mo溶液に極わずかに
99mTcが存在する場合にあっても活性炭によって吸着させることができる。
【0034】
Tc濃縮精製回収系66で吸着されない
99Moを含む大量のMoは、三方弁65および配管64を介して、制御タンク54に、更にはMo容器(1)52あるいはMo容器(2)53のいずれかに戻される。毎日
99mTc吸着工程が実施され、
99mTcが回収されたMo溶液は元のMo容器(52あるいは53のいずれか)に戻される。この工程の後、Tc濃縮精製回収系66に吸着回収された
99mTcは脱着工程へと移行される。
【0035】
このように、放射性核種
99Moを含む高濃度Mo溶液を、中性子照射したMo化合物(MoO
3)を直接的にアルカリ溶液で溶解することで
99Moを含む高濃度Mo溶液を形成し、複数のMo容器に供給し、これらの複数のMo容器に貯められた高濃度
99Mo溶液を交互に前記活性炭を収納する吸着カラムに通液してTcを吸着濃縮し、しかる後に溶出精製回収することを行う。
【0036】
三方弁68には配管70、三方弁71を介して外部の供給系22が接続され、この供給系72からはTc濃縮精製回収系66(活性炭カラム)に残存する
99Moの脱着のための洗浄液およびTc溶出液他が供給され、これらの溶液はTc濃縮精製回収系66に導入される。
【0037】
まず、脱着工程において
99Mo脱着剤が供給系72から導入され、
99Moが脱着され、この溶液は洗浄廃液82に導入される。次いで、
99Mo脱着工程が止められ、Tc脱着剤が供給系72から導入され、活性炭に吸着されたTcが脱着されるTc脱着工程へと移行する。
【0038】
Tc濃縮精製回収系66は、三方弁65を介して、配管73、これに設けた3方弁74を介して液性調整系75に接続されている。脱着したTcは脱着剤と共に液性調整系75に導入される。この液性調整系で液性調整用試薬84が加えられ、液性調整され、更に配管76を介して2次精製系77に、更に配管78を介してTc回収装置79に接続され、
99mTc溶出液として回収される。
【0039】
このシステムには、
図2に示すように、
99Mo使用後廃液系80、81および洗浄廃液系82が設けられ、各系統は制御系83によって適宜制御されるようになっている。
【0040】
以上のようにして、放射性医薬品原料としての放射性核種
99Moを含む高濃度Mo溶液を形成し、
99Moの娘核種である
99mTcを生成して放射性核種
99Moおよび
99mTcを含む高濃度
99Mo溶液を形成し、
形成した当該高濃度
9Mo溶液を、活性炭を内蔵する吸着カラムへ通液して該活性炭に当該高濃度
99Mo溶液中の
99mTcを選択的に吸着させ、
99mTcを選択的に吸着させた後の高濃度
99Moを再循環系に導出させ、活性炭に残留する
99MoをMo脱着剤によって脱着除去を行い、活性炭に残留した微量の
99mTcを活性炭から脱着剤による
99mTcの脱着処理を行って、
99mTcを回収し、
回収した
99mTc中に僅かに残留する
99Moをアルミナカラム法によって除去する二次精製を行い、
99mTcが吸着処理され、再循環系に導出され、回収された前記高濃度
99Mo溶液から、
再び放射平衡状態まで
99mTcを生成して、放射性核種
99Moおよび
99mTcを含む高濃度
99Mo溶液を再び形成し、形成した当該高濃度
99Mo溶液を、再循環して活性炭を内蔵する吸着カラムへ通液して該活性炭に当該高濃度
99Mo溶液中の
99mTcを選択的に吸着させることを特徴とする放射性医薬品原料としての
99mTcの高濃縮および溶出精製回収方法が形成される。
【0041】
本実施例によれば、内方
空間部内にMo(
99Mo)溶液内蔵タンクが収納され、外方
空間部内に活性炭内蔵吸着カラムを備えた
99mTc
の製造セルが収納され、Mo(
99Mo)溶液内蔵タンクと
99mTc
の製造セルとが接続され、該活性炭内蔵吸着カラムで回収された
99mTcが外部に取り出されるようにされた。Mo(
99Mo)溶液内蔵タンク内のMo(
99Mo)溶液は新たに形成されたものであるので比較的に放射能が強く、このため内方
空間部内に収納されて十分に放射能の影響が遮断され、
99mTc
の製造セル内の製造
99mTcは、比較的に放射能が弱く、外方
空間部内に収納することで十分に放射能の影響が遮断され、しかもこの外方
空間部内に、活性炭内蔵吸着カラムに接続されて配置されるものであるので
99mTcの外部への取り出しに便利であり、操業効率、操業簡便性が考慮された医療診断用
99mTc回収装置とすることができる。