【実施例1】
【0026】
図1は、実施例1に係る高周波電子銃を模式的に示す概略構成図である。
図2は、加速空洞内の電界強度を等高線によって表したグラフである。
図3は、加速空洞内の軸上の最大電界強度を示すグラフである。
図4は、初期加速位相及び最大電界強度に応じて変化する出口運動エネルギーを等高線によって表したグラフである。
図5は、初期加速位相及び最大電界強度に応じて変化するエネルギー広がりを等高線によって表したグラフである。
図6は、初期加速位相及び最大電界強度に応じて変化するエミッタンスを等高線によって表したグラフである。
図7は、加速空洞の設計方法に関するフローチャートである。
図8は、形状パラメータの選定に関する一例のグラフである。
図9は、形状パラメータの選定に関する一例のグラフである。
【0027】
図1に示す高周波電子銃1は、加速空洞5内において高周波により電子を加速させて、加速空洞5の出口から電子ビームを放出する。この高周波電子銃1の加速空洞5は、所定の軸Iを中心とした回転体形状となっており、電子は、加速空洞5内の軸I上に沿って、軸Iの軸方向の一方側(
図1の左側)から他方側(
図1の右側)に向かって進行する。また、高周波電子銃1の加速空洞5は、第1空洞11及び第2空洞12を有しており、第1空洞11及び第2空洞12は、軸I上に並んで形成されている。なお、実施例1において、加速空洞5は、第1空洞11及び第2空洞12を有する構成としたが、形成する空洞の数は、特に限定されない。
【0028】
高周波電子銃1は、カソード21と、カソードプレート22と、ハーフセル23と、フルセル24と、ビームパイプ25とを備えている。カソード21は、加速空洞5の軸方向の一方側に配置され、電子を放出している。カソード21は、例えば、光を受けて電子を放出するフォトカソードが用いられる。このカソード21は、カソードロッドの先端に取り付けられる。
【0029】
カソードプレート22は、軸Iを中心として円錐形状(漏斗形状)に形成されており、第1空洞11の一部を構成する部材となっている。カソードプレート22は、第1空洞11を構成する面がカソード面(空洞内面)22aとなっている。カソードプレート22には、カソード面22aの反対側に、軸I中心にカソードロッド挿入ポート31が接続されている。カソードロッド挿入ポート31は、軸Iを中心軸とする円筒形状に形成され、その内部にカソードロッドが挿通される。
【0030】
カソード面22aは、カソードロット挿入ポート31から、軸方向の他方側(後述するハーフセル23側)に向かって広がるテーパ面となっている。このカソード面22aは、軸Iとの間の角度となるテーパ角θ1が、後述する設計方法の形状パラメータの一つとなっている。また、カソード面22aは、径方向の外側が湾曲する楕円曲面となっており、この楕円曲面の赤道上における曲率半径(長径)rが、後述する設計方法の形状パラメータの一つとなっている。
【0031】
ハーフセル23は、軸I上において、カソードプレート22に隣接して設けられている。ハーフセル23は、軸Iを中心として円錐形状(漏斗形状)に形成されており、第1空洞11の一部を構成する部材となっている。ハーフセル23は、径方向外側の周縁が、カソードプレート22の径方向外側の周縁と接して設けられることで、カソードプレート22とハーフセル23との間の内部に第1空洞11が形成される。ハーフセル23は、カソードプレート22のカソード面22aと対向する面が、第1空洞面23aとなっている。また、ハーフセル23には、第2空洞12に連通する連通口23bが形成されている。このとき、連通口23b側における第1空洞面23aの内周面の直径は、カソードプレート22側における第1空洞面23aの内周面の直径に比して小さいものとなっている。
【0032】
第1空洞面23aは、カソードプレート22から、軸方向の他方側(後述するフルセル24側)に向かって先細りとなるテーパ面となっている。この第1空洞面23aは、カソード面22aと同様に、軸Iとの間の角度となるテーパ角θ2が、後述する設計方法の形状パラメータの一つとなっている。また、第1空洞面23aは、径方向の外側が湾曲する楕円曲面となっており、この楕円曲面の赤道上における曲率半径(長径)R1が、後述する設計方法の形状パラメータの一つとなっている。
【0033】
フルセル24は、軸I上において、ハーフセル23に隣接して設けられている。フルセル24は、ハーフセル23と同様の形状となる2つのハーフセル34を、軸Iに直交する対称軸を中心に左右対称に配置し接合することで形成されている。具体的に、各ハーフセル34は、ハーフセル23と同様に、軸Iを中心として円錐形状(漏斗形状)に形成されている。
【0034】
また、2つのハーフセル34は、相互に対向する面が、第2空洞面34aとなっている。2つのハーフセル34のうち、一方のハーフセル34には、第1空洞11に連通する連通口34bが形成され、他方のハーフセル34には、加速空洞5の出口34cが形成される。そして、2つのハーフセル34が接合されるフルセル24は、一方のハーフセル34の径方向外側の周縁が、他方のハーフセル34の径方向外側の周縁と接して設けられることで、2つのハーフセル34の間の内部に第2空洞12が形成される。よって、フルセル24は、軸方向の一方側の端部に連通口34bが形成され、軸方向の他方側の端部に出口34cが形成される。ここで、フルセル24の出口34cは、加速空洞5内における電磁場の影響がほぼ無視できるような領域(空間)となっている。つまり、加速空洞5の出口34cとは、加速された電子に対して、加速空洞5内の電磁場による影響がほぼ与えらない領域となっている。なお、この出口34cには、後述するビームパイプ25が接続される。
【0035】
このフルセル24は、軸方向の両側(連通口34b及び出口34c側)の内周面における直径が、軸方向の中央の内周面における直径に比して小さいものとなっている。ここで、ハーフセル23の連通口23bの直径は、フルセル24の連通口34bの直径と同径となっている。このため、ハーフセル23とフルセル24との間は、径の小さい加速空洞5のチョーク部(アイリス部または絞り部ともいう)となっている。
【0036】
ハーフセル23に接続される一方のハーフセル34の第2空洞面34aは、連通口34b側から、他方のハーフセル34側に向かって広がるテーパ面となっている。また、一方のハーフセル34に接続される他方のハーフセル34の第2空洞面34aは、一方のハーフセル34側から、出口34cに向かって先細りとなるテーパ面となっている。そして、一方のハーフセル34の第2空洞面34aと、他方のハーフセル34の第2空洞面34aとは、連なった連続面となっている。この第2空洞面34aは、カソード面22a及びハーフセル23と同様に、軸Iとの間の角度となるテーパ角θ3が、後述する設計方法の形状パラメータの一つとなっている。また、各第2空洞面34aは、径方向の外側が湾曲する楕円曲面となっており、この楕円曲面の赤道上における曲率半径(長径)R2が、後述する設計方法の形状パラメータの一つとなっている。
【0037】
ここで、ハーフセル23と、フルセル24を形成する2つのハーフセル34とは、同じ形状となっている。例えば、ハーフセル23の第1空洞面23aにおけるテーパ角θ2と、フルセル24の第2空洞面34aにおけるテーパ角θ3とは、同じ角度となっている。また、ハーフセル23の第1空洞面23aにおける曲率半径R1と、フルセル24の第2空洞面34aにおける曲率半径R2とは、同じ半径となっている。
【0038】
ビームパイプ25は、軸I上において、フルセル24に隣接して設けられている。ビームパイプ25は、軸Iを中心として円筒形状に形成されており、加速空洞5の出口34cに接続されている。このビームパイプ25には、少なくとも1つの高周波入力ポート37と、高周波モニタポート38とが接続されている。高周波入力ポート37は、加速空洞5内に電磁場を形成するために高周波を導入するポートとなっている。高周波モニタポート38は、加速空洞5内に電磁場を監視するためのポートとなっている。そして、この高周波入力ポート37及び高周波モニタポート38は、軸Iに直交する方向に延びて形成されている。
【0039】
このように構成される高周波電子銃1は、図示しない真空引き装置によって加速空洞5内が真空状態となっている。この状態において、高周波電子銃1は、図示しない光照射装置によってカソード21に対して光が照射されると、カソード21から電子が放出される。このとき、加速空洞5内は、高周波入力ポート37から導入された高周波によって、電磁場が形成される。この加速空洞5は、導入される高周波と共振する共振構造となっている。カソード21から放出された電子は、加速空洞5内の電磁場によって加速し、加速空洞5の出口34cから電子ビームとなって放出される。
【0040】
ここで、実施例1の高周波電子銃1では、放出される電子ビームを高品質とすべく、加速空洞5を下記のように設計している。以下、
図7を参照して、高周波電子銃1の加速空洞5の設計方法について説明する。先ず、高周波電子銃1には、予め要求される要求性能があり、要求性能としては、例えば、加速空洞5内における共振周波数、加速空洞5の出口34cにおける出口運動エネルギー、エミッタンス、軸I上のエネルギー広がり等がある。
【0041】
先ず、高周波電子銃1の加速空洞5の設計方法では、予め設定(要求)される加速空洞5内の共振周波数となるように、電磁場解析を行って、加速空洞5の形状寸法に関する初期の形状パラメータを導出する(ステップS1:空洞形状導出工程)。形状パラメータの種目としては、上記のカソード面22aのテーパ角θ1、ハーフセル23のテーパ角θ2、フルセル24のテーパ角θ3、カソード面22aの曲率半径r、第1空洞面23aの曲率半径R1、及び第2空洞面34aの曲率半径R2の他、第1空洞11の軸I上における長さS1、及び第2空洞12の軸I上における長さS2を含んでいる。なお、形状パラメータの各種目については、個別に設定してもよいし、それぞれの種目が連動して設定されるような構成にしてもよい。
【0042】
ステップS1において電磁場解析が実行されると、電磁場解析の解析結果として、
図2に示すような初期の形状パラメータに基づく加速空洞5内の電界分布が導出される。
図2に示す電界分布のグラフは、その横軸が軸I上における位置(軸方向における位置)となっており、その縦軸が軸Iに直交する径方向における位置となっている。このグラフでは、加速空洞5内における電界強度が同じ強度となる等高線が図示されている。
【0043】
また、ステップS1における電磁場解析の解析結果として、初期の形状パラメータとなる加速空洞5内における、所定の初期加速位相(初期位相)に対応する軸I上の電界強度の分布である軸上電界強度分布が導出される(ステップS2:軸上電界強度分布導出工程)。軸上電界強度分布は、例えば、
図3に示すグラフで表される。
図3に示す軸上電界強度分布のグラフは、その横軸が軸I上における位置となっており、その縦軸が最大電界強度となっている。なお、
図3に示すグラフでは、加速空洞5内に導入される高周波の初期加速位相が90°となっており、この初期加速位相において、軸I上の電界強度が最大電界強度となっている。なお、加速空洞5内は高周波により電磁場が形成されることから、時間に応じて電界強度が変位する。
【0044】
続いて、加速空洞5の設計方法では、導出した軸上電界強度分布に基づいて、荷電粒子解析を行って、初期の形状パラメータとなる加速空洞5内における電子の挙動を解析する(ステップS3:荷電粒子解析工程)。ステップS3において荷電粒子解析が実行されると、荷電粒子解析の解析結果として、初期加速位相に応じた電子ビーム特性が導出される(ステップS4:電子ビーム特性導出工程)。電子ビーム特性としては、加速空洞5の出口34cにおける出口運動エネルギー(出口エネルギー)KE、軸I上のエネルギー広がりΔKE、エミッタンスε、及び最大表面電界強度Espがある。なお、エネルギー広がりΔKEとは、軸I上における(電子の進行方向における)電子の運動エネルギーの分散を示す値である。また、エミッタンスεとは、軸Iに直交する径方向における電子ビームのエネルギー広がり(分散)を示す値である。よって、エネルギー広がりΔKEが小さければ小さいほど、また、エミッタンスεが小さければ小さいほど、高品質な電子ビームとなる。
【0045】
ステップS4において電子ビーム特性が導出されると、導出される電子ビーム特性に関する各種マップが生成される(ステップS5)。具体的に、ステップS4において電子ビーム特性が導出されると、導出される出口運動エネルギーKEに基づいて、
図4に示す出口運動エネルギーの等高線マップM1が生成される。等高線マップM1は、その横軸が軸I上の最大電界強度Eoとなっており、その縦軸が初期加速位相φとなっている。この等高線マップM1において、最大電界強度Eo及び初期加速位相φには、出口運動エネルギーKEが関連付けられている。そして、等高線マップM1において、出口運動エネルギーKEが同じ値となる点を結ぶことで、値が異なる複数のエネルギー等高線が生成される。なお、出口運動エネルギーKEは、
図4に示す矢印の方向に向かって大きくなる。
【0046】
また、ステップS4において電子ビーム特性が導出されると、導出されるエネルギー広がりΔKEに基づいて、
図5に示すエネルギー広がりの等高線マップM2が生成される。等高線マップM2は、等高線マップM1と同様に、その横軸が軸I上の最大電界強度Eoとなっており、その縦軸が初期加速位相φとなっている。この等高線マップM2において、最大電界強度Eo及び初期加速位相φには、エネルギー広がりΔKEが関連付けられている。そして、等高線マップM2において、エネルギー広がりΔKEが同じ値となる点を結ぶことで、値が異なる複数のエネルギー広がり等高線が生成される。なお、エネルギー広がりΔKEは、
図5に示す矢印の方向に向かって大きくなる。
【0047】
同様に、ステップS4において電子ビーム特性が導出されると、導出されるエミッタンスεに基づいて、
図6に示すエミッタンスの等高線マップM3が生成される。等高線マップM3は、等高線マップM1と同様に、その横軸が軸I上の最大電界強度Eoとなっており、その縦軸が初期加速位相φとなっている。この等高線マップM3において、最大電界強度Eo及び初期加速位相φには、エミッタンスεが関連付けられている。そして、等高線マップM3において、エミッタンスεが同じ値となる点を結ぶことで、値が異なる複数のエミッタンス等高線が生成される。なお、エミッタンスεは、
図6に示す矢印の方向に向かって小さくなる。
【0048】
続いて、等高線マップM1、M2、M3が生成されると、高周波電子銃1に要求される性能として予め設定される要求出口運動エネルギーに基づいて、等高線マップM1における所定のエネルギー等高線L1を選定する(ステップS6:出口エネルギー導出工程)。また、等高線マップM2におけるエネルギー広がりΔKEに対し、エネルギー広がりΔKEが最小値となる点を結ぶことで、最小エネルギー広がり線L2を導出する(ステップS7:エネルギー広がり導出工程)。このエネルギー等高線L1と最小エネルギー広がり線L2とは、ある1つの交点Pにおいて交わる。この交点Pは、所定の最大電界強度Eo及び初期加速位相φに関連付けられている。そして、等高線マップM3において、交点Pにおける最大電界強度Eo及び初期加速位相φに基づいて、エミッタンスεを導出する(ステップS8:エミッタンス導出工程)。
【0049】
このように、ステップS1からステップS8までを実行することで、形状パラメータと、形状パラメータに対応する最小エネルギー広がりΔKEと、形状パラメータに対応するエミッタンスεとが導出される。より具体的には、形状パラメータと、出口運動エネルギーKEと、最小のエネルギー広がりΔKEと、エミッタンスεと、最大表面電界強度Espと、軸I上の最大電界強度Eoと、初期加速位相φとがそれぞれ関連付けられて導出される。そして、導出された形状パラメータ、出口運動エネルギーKE、最小エネルギー広がりΔKE、エミッタンスε、軸I上の最大電界強度Eo、及び初期加速位相φを含む各種データを、1つの形状パラメータに対応する1組のデータセットとする。
【0050】
続いて、ステップS1からステップS8までを、初期の形状パラメータから一部を変位させながら、複数回繰り返して行うことで、複数組のデータセットを導出する。そして、導出したデータセットが、所定の条件を満たすセット数だけ導出したか否かを判定し(ステップS9)、導出したと判定する(ステップS9:Yes)と、後述するステップS10に移行する一方で、導出していないと判定する(ステップS9:No)と、再びステップS1に進む。
【0051】
ここで、高周波電子銃1に要求される性能としては、第1要求値としての要求エネルギー広がりが予め設定され、また、第2要求値としての要求エミッタンスが予め設定され、さらに、第3要求値としての要求最大表面電界強度が予め設定されている。複数組のデータセットが導出されると、複数組のデータセットの中から、第1要求値と第2要求値と第3要求値とを満たす形状パラメータを選定する(ステップS10:第1形状パラメータ選定工程及び第2形状パラメータ選定工程)。
【0052】
具体的に、要求エネルギー広がりは、第1要求値以下となるように設定され、ステップS10では、データセットに含まれる最小エネルギー広がりΔKEが、第1要求値以下となる形状パラメータを選定する。また、要求エミッタンスは、第2要求値以下となるように設定され、ステップS10では、データセットに含まれるエミッタンスεが、第2要求値以下となる形状パラメータを選定する。さらに、要求最大表面電界強度は、第3要求値以下となるように設定され、ステップS10では、データセットに含まれる最大表面電界強度Espが、第3要求値以下となる形状パラメータを選定する。
【0053】
ここで、
図8を参照して、ステップS10の形状パラメータの選定について説明する。
図8は、その縦軸が加速空洞5の軸方向長さ(つまり、第1空洞11の長さS1と第2空洞12の長さS2とを加算した長さ)であり、その横軸がカソード面22aの赤道部の曲率半径rである。つまり、
図8の縦軸および横軸は、形状パラメータの大きさを示している。また、
図8には、第1領域E1、第2領域E2及び第3領域E3が図示されている。
【0054】
第1領域E1は、最小エネルギー広がりΔKEが、第1要求値以下となる領域である。また、第2領域E2は、エミッタンスεが、第2要求値以下となる領域である。さらに、第3領域E3は、最大表面電界強度Espが、第3要求値以下となる領域である。そして、第1領域E1、第2領域E2及び第3領域E3の重なり合う領域が、高周波電子銃1に要求される性能を満たす重複領域E4となる。そして、この重複領域E4に関連付けられる形状パラメータ、すなわち、加速空洞5の軸方向長さ(S1+S2)及びカソード面22aの赤道部の曲率半径rが、高周波電子銃1に要求される性能を満たす形状パラメータとなる。
【0055】
一方で、
図9に示すように、第1領域E1、第2領域E2及び第3領域E3が重なり合わない場合がある。この場合、第1要求値、第2要求値及び第3要求値を適宜引き上げることで、第1領域E1、第2領域E2及び第3領域E3を拡大し、第1領域E1、第2領域E2及び第3領域E3を重なり合わせることで、重複領域E4を形成してもよい。
【0056】
このように設計される加速空洞5は、選定された形状パラメータに基づいて、カソードプレート22、ハーフセル23及びフルセル24が加工され、これらを組み合わせることで形成される。ここで、カソードプレート22は、切削加工等によって形成される。一方で、ハーフセル23及びフルセル24を構成する2つのハーフセル34は、同じ形状となっていることから、共通の金型を用いて絞り加工される。加工後のカソードプレート22、ハーフセル23及び2つのハーフセル34は、溶接等によって接合されることで、選定された形状パラメータとなる加速空洞5が形成される。
【0057】
以上のように、実施例1によれば、形状パラメータを変化させながら、形状パラメータと最小のエネルギー広がりΔKEとエミッタンスεとを含むデータセットを複数組取得することができる。このため、エネルギー広がりΔKE及びエミッタンスεを考慮した形状パラメータを選定することが可能になることから、高品質な電子ビームを照射可能な高周波電子銃1となる形状パラメータを選定することができる。
【0058】
また、実施例1によれば、高周波電子銃1に要求される電子ビーム特性を満たすように、エネルギー広がりΔKEとエミッタンスεとを適宜選定することで、最適な形状パラメータを選定することができる。そして、選定した形状パラメータに基づいて加速空洞5を形成することにより、エネルギー広がりΔKE及びエミッタンスεを考慮した形状となる加速空洞5とすることができ、要求される電子ビーム特性を満たす高品質な電子ビームを照射可能な高周波電子銃1を提供することができる。
【0059】
また、実施例1によれば、加速空洞5内の内面における最大表面電界強度Espを第3要求値以下とすることができる。このため、最大表面電界強度Espが大きくなることにより、加速空洞5内に発生する放電(マルチパクタ放電)を抑制することができる。
【0060】
また、実施例1によれば、形状パラメータとして、第1空洞11の軸方向における長さS1、第2空洞12の軸方向における長さS2、カソード面22aのテーパ角θ1、第1空洞面23aのテーパ角θ2、第2空洞面34aのテーパ角θ3、カソード面22aの曲率半径r、第1空洞面23aの曲率半径R1、第2空洞面34aの曲率半径R2を含む。この形状パラメータは、電子ビーム特性に対する感度が高いものとなっていることから、この形状パラメータを変化させることで、様々なエネルギー広がりΔKE及びエミッタンスεを導出することが可能となる。
【0061】
また、実施例1によれば、ハーフセル23と、フルセル24を構成する2つのハーフセル34との形状を共通化することができるため、テーパ角θ2とテーパ角θ3とを同じ角度にしたり、曲率半径R1と曲率半径R2とを同じ曲率半径にしたりできる。このため、変化させる形状パラメータの種類を少なくできることから、パラメータスタディを容易に行うことができ、加速空洞5の設計を簡単に行うことが可能となる。
【0062】
また、実施例1によれば、3つのハーフセル23、34を同じ形状にできることから、共通の金型を用いて各ハーフセル23、34を加工することができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
なお、実施例1では、最大電界強度Eo及び初期加速位相φに、電子ビーム特性を関連付けた等高線マップM1、M2、M3を生成したが、この構成に限定されない。最大電界強度Eo及び初期加速位相φに、電子ビーム特性が関連付けられていればよく、例えば、表(テーブル)を用いて関連付けてもよいし、算出式を用いて関連付けてもよい。