特許第6355500号(P6355500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355500
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20180702BHJP
   D06M 13/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/12
【請求項の数】2
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-195623(P2014-195623)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-65341(P2016-65341A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 典明
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−222799(JP,A)
【文献】 特開2001−336065(JP,A)
【文献】 特開2011−229894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/463
D06M 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分を1質量%以上、20質量%以下、(B)成分を0.001質量%以上、1質量%以下、及び水を含有する、30℃でのpHが2.0以上、4.0以下である、尿臭抑制のための繊維製品処理剤組成物。
<(A)成分>
下記(A−1)成分及び(A−2)成分から選ばれる成分。
(A−1)成分:下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の複数からなる成分であって、
一般式(1)中のRがアシル基であり、R及びRが水素原子である化合物(a1)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、10質量%以上、45質量%以下、
一般式(1)中のR及びRがアシル基であり、Rが水素原子である化合物(a2)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、25質量%以上、70質量%以下、
一般式(1)中のR、R及びRがアシル基である化合物(a3)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、40質量%以下、
である成分
【化1】

〔式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(アシル基という)、又は水素原子であり、R、R及びRが同時に水素原子ではなく、Rは炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Xは陰イオンである。〕
(A−2)成分:下記一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の複数からなる成分であって、
一般式(2)中のRがアシル基であり、Rが水素原子である化合物(a4)の割合が一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の全量中、1質量%以上、40質量%以下、
一般式(2)中のR及びRが前記アシル基である化合物(a5)の割合が一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の全量中、60質量%以上、99質量%以下、
である成分。
【化2】

〔式中、Rは、炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(アシル基という)であり、Rは、前記アシル基又は水素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Qはエチレン基又はプロピレン基であり、Xは陰イオンである。〕
<(B)成分>
3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、8−シクロヘキサデセン−1−オン、9−シクロヘプタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド及び10−オキサ―16−ヘキサデカノリドから選ばれる1種以上の化合物
【請求項2】
更に、(C)成分として、下記(C−1)成分、(C−2)成分及び(C−3)成分から選ばれる一種以上の4級アンモニウム塩を含有する、請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
(C−1)成分:下記一般式(C1)で表される4級アンモニウム塩
【化3】

〔式中、R1c、R2cは、それぞれ独立して、炭素数8以上、12以下のアルキル基であり、R3c、R4cは、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシル基であり、Xは陰イオンである。〕
(C−2)成分:下記一般式(C2)で表される4級アンモニウム塩
【化4】

〔式中、R5cは、炭素数5以上、19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R6c、R7cは、それぞれ独立に、炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Yは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、
【化5】

又は連結手である。R8cは、炭素数1以上、3以下のアルキレン基であり、R9cは炭素数1以上、6以下のアルキレン基又は−(O−R10c−である。ここでR10cは、エチレン基又はプロピレン基であり、nは1以上、10以下の数である。Xは陰イオンである。〕
(C−3):下記一般式(C3)で表される4級アンモニウム塩
【化6】

〔式中、R11cは、炭素数5以上、19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、Xは陰イオンである。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の衛生志向の高まりから、見た目の汚ればかりでなく汚れの存在を想起させる臭気についても、その除去が強く望まれている。その中で尿臭はヒトに与える生活環境悪臭の中でも特に問題視されている。
また一方、高齢化により介護対象者の数が増加している。介護に係る課題として、尿が下着等の衣料に付着すると、衣料から尿臭が発散することが挙げられる。また、介護対象者は皮脂や体臭の臭いも強いことが知られている。
尿臭、汗臭を抑制する組成物は種々提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、β−グルクロニダーゼ阻害剤による尿臭の生成抑制方法が開示されている。また、特許文献3には、β−グルクロニダーゼ阻害剤と、(b)界面活性剤及び溶剤から選ばれる1種以上とを含有する汗臭発生抑制組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/037861号
【特許文献2】特開2011−229894号公報
【特許文献3】特開2010−110549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2及び3には、衣料から発生する尿臭や汗臭を含む臭気をより効果的に除去する課題は記載されていない。
本発明は、尿臭や汗臭を含む臭気を抑制する効果に優れる繊維製品処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(A)成分を1質量%以上、20質量%以下、(B)成分を0.001質量%以上、1質量%以下、及び水を含有する、30℃でのpHが2.0以上、4.0以下である繊維製品処理剤組成物に関する。
<(A)成分>
下記(A−1)成分及び(A−2)成分から選ばれる成分。
(A−1)成分:下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の複数からなる成分であって、
一般式(1)中のRがアシル基であり、R及びRが水素原子である化合物(a1)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、10質量%以上、45質量%以下、
一般式(1)中のR及びRがアシル基であり、Rが水素原子である化合物(a2)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、25質量%以上、70質量%以下、
一般式(1)中のR、R及びRがアシル基である化合物(a3)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、40質量%以下、
である成分
【0006】
【化1】
【0007】
〔式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(当該残基をアシル基という場合がある)、又は水素原子であり、R、R及びRが同時に水素原子ではなく、Rは炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Xは陰イオンである。〕
(A−2)成分:下記一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の複数からなる成分であって、
一般式(2)中のRがアシル基であり、Rが水素原子である化合物(a4)の割合が一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の全量中、1質量%以上、40質量%以下、
一般式(2)中のR及びRが前記アシル基である化合物(a5)の割合が一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の全量中、60質量%以上、99質量%以下、
である成分。
【0008】
【化2】
【0009】
〔式中、Rは、炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(当該残基をアシル基という場合がある)であり、Rは、前記アシル基又は水素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Qはエチレン基又はプロピレン基であり、Xは陰イオンである。〕
<(B)成分>
3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、8−シクロヘキサデセン−1−オン、9−シクロヘプタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド及び10−オキサ―16−ヘキサデカノリドから選ばれる1種以上の化合物
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、尿臭や汗臭を含む臭気、とりわけ尿臭を含む臭気を抑制する効果に優れる繊維製品処理剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(A)成分>
(A)成分のうち、(A−1)成分は、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の複数からなる成分であって、
一般式(1)中のRがアシル基であり、R及びRが水素原子である化合物(a1)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、10質量%以上、45質量%以下、
一般式(1)中のR及びRがアシル基であり、Rが水素原子である化合物(a2)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、25質量%以上、70質量%以下、
一般式(1)中のR、R及びRがアシル基である化合物(a3)の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、40質量%以下、
である成分である。
【0012】
【化3】
【0013】
〔式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(当該残基をアシル基という場合がある)、又は水素原子であり、R、R及びRが同時に水素原子ではなく、Rは炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Xは陰イオンである。〕
【0014】
本発明の(A−1)成分中の化合物(a1)、化合物(a2)、及び化合物(a3)の割合は、繊維製品に付与される尿臭や汗臭の抑制効果のみならず(B)成分を含有する本発明の繊維製品処理剤組成物の保存安定性にもまた影響する。
【0015】
(A−1)成分中の化合物(a1)の割合は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
(A−1)成分中の化合物(a2)の割合は、より好ましくは30質量%以上、好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
(A−1)成分中の化合物(a3)の割合は、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0016】
化合物(a2)と化合物(a3)は主に尿臭や汗臭の抑制効果に有効な成分であるが、(B)成分を含有する場合に、繊維製品処理剤組成物の保存安定性に影響を与える。そのために、(A−1)成分は、化合物(a1)を適度に残した組成であることが好ましい。また、化合物(a1)は、抗菌効果に有効な成分である。更には、前記の割合を満たした上で、(A−1)成分中の化合物(a2)の含有量が化合物(a3)よりも多いこと、より好ましくは化合物(a2)の含有量(質量%)と化合物(a3)の含有量(質量%)との差が、15質量%以上(15ポイント以上)あることである。
【0017】
一般式(1)において、アシル基としては、炭素数16以上、18以下の脂肪酸からOH(水酸基)を除いた残基が好ましい。R、R、Rは、それぞれ独立して、RCO(ここでRは炭素数15以上、21以下、好ましくは17以下の炭化水素基)であってよい。一般式(1)中、R、R、Rは、少なくとも1つがアシル基である。
また、脂肪酸としての具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、パーム油脂肪酸、ひまわり油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸が挙げられる。
一般式(1)中、Rはメチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(1)中、Xは、有機又は無機の陰イオンが挙げられ、ハロゲンイオン、好ましくはクロロイオン、炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上、18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上、3以下のアルキル基が1個以上、3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオンがより好ましく、メチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンがより好ましい。
【0018】
本発明に用いる(A−1)成分は、脂肪酸とトリエタノールアミンを脱水エステル化反応させる方法(脱水エステル化法という)、又は脂肪酸低級アルキルエステル(低級アルキルはメチル基、エチル基、プロピル基)とトリエタノールアミンをエステル交換反応させる方法(エステル交換法という)により得られたエステル化反応物を、アルキル化剤で4級化反応させることで得ることができる。本発明の(A−1)成分の化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(a3)の割合を満たす混合物を得るには、例えば、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステル:トリエタノールアミンのモル比を1.3:1以上、好ましくは1.5:1以上、そして、2.0:1以下、好ましくは1.9:1以下の比率で反応させたトリエタノールアミン脂肪酸エステルの混合物を4級化反応させる。
【0019】
脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルは、牛脂、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油から選ばれる油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好適であり、尿臭や汗臭の抑制効果の点から牛脂、パーム油及びヒマワリ油から得られる脂肪酸組成のものが良好である。また、これらは炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基を多量に含有するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6−41578号公報に記載されているようにメチルエステルを減圧蒸留する方法、あるいは特開平8−99036号公報に記載の選択水素化反応を行うことで炭素−炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御する方法などにより製造することができる。例えば硬化牛脂は牛脂由来の脂肪酸を水素添加により飽和にしたものであり、一部を硬化させたものとして半硬化という表現をする場合もある。またこれら硬化の程度を調製したものと硬化処理をしていない脂肪酸とを任意に混合することで、適宜、尿臭や汗臭の抑制効果のみならず製造上低粘度等の使用勝手に優れる脂肪酸及び(A)成分を調製して用いてもよい。
【0020】
なお、選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が形成するが、本発明ではトランス/シスのモル比が、好ましくは0/100以上、より好ましくは5/95以上、そして、好ましくは75/25以下、より好ましくは50/50以下である。
【0021】
脱水エステル化法においてはエステル化反応温度を140℃以上、230℃以下で縮合水を除去しながら反応させることが好ましい。反応を促進させる目的から通常のエステル化触媒を用いても差し支えなく、例えば硫酸、燐酸などの無機酸、酸化錫、酸化亜鉛などの無機酸化物、テトラプロポキシチタンなどのアルコラートなどを選択することができる。反応の進行はJISK0070−1992に記載の方法で酸価(AV)及び鹸化価(SV)を測定することで確認を行い、好適にはAVが10mgKOH/g以下、好ましくは6mgKOH/g以下となった時、エステル化反応を終了する。得られるエステル化合物の混合物は、SVが好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
【0022】
エステル交換法においては、反応は好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、そして、好ましくは150℃以下の温度で生成する低級アルコールを除去しながら行う。反応促進のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリや、メチラート、エチラートなどのアルコキシ触媒を用いることも可能である。反応の進行はガスクロマトグラフィーなどを用いて脂肪酸低級アルキルエステルの量を直接定量することが好適であり、未反応脂肪酸低級アルキルエステルが仕込みの脂肪酸低級アルキルエステルに対してガスクロマトグラフィーチャート上で10面積%以下、特に6面積%以下で反応を終了させることが好ましい。得られるエステル化合物の混合物は、SVが好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
【0023】
次にこのようにして得られたエステル化合物の4級化を行うが、4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が好適である。アルキル化剤として、メチルクロリドを用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合は、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒を、エステル化合物に対して10質量%以上、50質量%以下程度混合した溶液をチタン製のオートクレーブなどの加圧反応器に仕込み、密封下30℃以上、120℃以下の反応温度でメチルクロリドを圧入させて反応させる。このときメチルクロリドの一部が分解し塩酸が発生する場合があるため、アルカリ剤を少量加えることで反応が効率よく進むため好適である。メチルクロリドとエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してメチルクロリドを1倍当量以上、1.5倍当量以下用いることが好適である。
【0024】
ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸とエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を好ましくは0.9倍当量以上、より好ましくは0.95倍当量以上、そして、好ましくは1.1倍当量以下、より好ましくは0.99倍当量以下用いる。
【0025】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A−1)成分の製造時に生成されるその他反応生成物を含有してもよい。例えば、4級化されなかった未反応アミンとして、具体的には脂肪酸トリエステル構造体のアミンと脂肪酸ジエステル構造体のアミンがあり、製法によっては、脂肪酸トリエステル構造体のアミンと脂肪酸ジエステル構造体のアミンとを合計して、(A−1)成分100質量部に対して5質量部以上、30質量部以下含む反応生成物が得られる。一方、脂肪酸モノエステル構造体のアミンは4級化し易いことから、通常、反応生成物中の含有量は(A−1)成分100質量部に対して0.5質量部以下である。更には脂肪酸エステル化されなかったトリエタノールアミン及びトリエタノールアミンの4級化物は合計で(A−1)成分100質量部に対して0.5質量部以上、3質量部以下含有され、このうち90質量%以上は4級化物である。また未反応脂肪酸が含まれることもある。(A−1)成分を含む反応生成物を用いる場合は、本発明の効果を損なわない限り、このような未反応成分や副反応成分が繊維製品処理剤組成物中に取り込まれてもよい。
【0026】
(A−1)成分として化合物(a1)、化合物(a2)及び化合物(a3)成分を含む混合物を用いる場合、該混合物中の化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(a3)、アミン化合物の割合等は、高速液体クロマトグラフ(HPLCと言う場合もある)を用い、検出器として荷電化粒子検出器(Charged Aerosol Detection、CADと言う場合もある)を使用して求めることができる。CADを用いた測定方法については「荷電化粒子検出器Corona CADの技術と応用」(福島ら Chromatography, Vol.32 No.3(2011))を参考にすることができる。
【0027】
(A)成分のうち、(A−2)成分は、下記一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の複数からなる成分であって、
一般式(2)中のRがアシル基であり、Rが水素原子である化合物(a4)の割合が一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の全量中、1質量%以上、40質量%以下、
一般式(2)中のR及びRが前記アシル基である化合物(a5)の割合が一般式(2)で表される4級アンモニウム塩の全量中、60質量%以上、99質量%以下、
である成分である。
【0028】
【化4】
【0029】
〔式中、Rは、炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(当該残基はアシル基という場合がある)であり、Rは、前記アシル基又は水素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Qはエチレン基又はプロピレン基であり、Xは陰イオンである。〕
【0030】
化合物(a4)は、Rが前記アシル基であり、Rが水素原子である化合物であって、(A−2)成分中に1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下含まれる。
化合物(a5)は、R及びRが前記アシル基である化合物であって、(A−2)成分中に60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、そして、99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下含まれる。
【0031】
一般式(2)におけるアシル基としては、炭素数16以上、18以下の脂肪酸からOHを除いた残基が好ましい。
前記脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、パーム油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
、Rは、炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基又はエチル基である。
Qは、好ましくはエチレン基又はイソプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
は、有機又は無機の陰イオンが挙げられ、好ましくはハロゲンイオン、より好ましくはクロロイオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンであり、これらの中ではクロロイオンが好ましい。
【0032】
(A−2)成分は脂肪酸とメチルジエタノールアミン又はメチルジプロパノールアミンとを脱水エステル化反応させる方法(脱水エステル化法という)、又は脂肪酸低級アルキルエステル(低級アルキルはメチル基、エチル基、プロピル基)とメチルジエタノールアミン又はメチルジプロパノールアミンとをエステル交換反応させる方法(エステル交換法という)により得られたエステル化物を、アルキル化剤で4級化反応させることで得ることができる。
エステル化物を得る反応におけるメチルジエタノールアミン又はメチルジプロパノールアミンに対する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルのモル比は、好ましくは1.2/1以上、より好ましくは1.3/1以上、更に好ましくは1.4/1以上であり、そして、好ましくは1.85/1以下、より好ましくは1.8/1以下、更に好ましくは1.7/1以下である。
【0033】
脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルとしては、牛脂、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、及びオリーブ油から選ばれる油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好ましく、尿臭や汗臭の抑制効果の観点から、牛脂、パーム油及びヒマワリ油から得られるものがより好ましい。
これらは炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基を多量に含有するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6−41578号公報に記載されているメチルエステルを減圧蒸留する方法、あるいは特開平8−99036号公報に記載されている選択水素化反応を行うことにより炭素−炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御する方法等により製造することができる。
なお、選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が得られるが、脂肪酸の幾何異性体のシス/トランス比(モル比)は、トランス/シスのモル比が、好ましくは0/100以上、より好ましくは5/95以上、そして、好ましくは75/25以下、より好ましくは50/50以下である。
【0034】
(A−2)成分の調製は、(A−1)成分の脱水エステル化法及びエステル交換法と同様に行うことができる。
【0035】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、8−シクロヘキサデセン−1−オン、9−シクロヘプタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド及び10−オキサ―16−ヘキサデカノリドから選ばれる15〜17員環の大環状化合物の1種以上である。これらの化合物は、β−グルクロニダーゼの活性を阻害する機能を有し、持続的にフェノール系化合物やインドール類の発生を抑制する効果を有する。本発明における「β−グルクロニダーゼ阻害剤」とは、下記に示す方法により測定したβ-グルクロニダーゼの相対活性阻害率が40%以上の化合物をいう。
【0036】
<β-グルクロニダーゼ相対活性阻害率の測定方法>
γ線滅菌済み容器中に、2mMのp−ニトロフェニル−β−D−グルクロニド水溶液100μL、0.5Mリン酸バッファー(pH6.8)40μL、イオン交換水38μL、サンプル化合物の10質量%DPG(ジプロピレングリコール)溶液2μLを混合し、続いて16units/mLに調整したβ-グルクロニダーゼ水溶液20μLを加えて、37℃恒温槽中で2時間酵素反応を行った。試験化合物の反応液中での濃度は0.1質量%であった。また、サンプル化合物の代わりにDPGを加えたものをコントロールとし、サンプル化合物及びコントロールごとに、酵素液の代わりにイオン交換水を加えたものをブランクとして、それぞれ同様に2時間反応を行った。上記反応液を0.2Mグリシンバッファー(pH10.4)を用いて希釈し、波長400nmにおける吸光度を測定した。得られた測定値より、次式に従ってβ-グルクロニダーゼの相対活性阻害率を求めた。
【0037】
【数1】
【0038】
「コントロール吸光度変化」=コントロール吸光度−コントロールのブランクの吸光度
「サンプル吸光度変化」=サンプル吸光度−サンプルのブランクの吸光度
【0039】
本発明に係わる(B)成分の化合物について、上記方法でβ-グルクロニダーゼの相対活性阻害率を求めた結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の(B)成分としては、8−シクロヘキサデセン−1−オンが好適である。
【0042】
<繊維製品処理剤組成物>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分を1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有する。さらに好ましくは、前記上位規定の範囲内で、(A−1)成分及び(A−2)成分から選ばれる1種又は2種以上を1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有する。なお各成分がより好ましい化合物に限定される場合の濃度制限は、当該成分の上位規定の濃度範囲内において行われる。
【0043】
本発明は、(A)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(A)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0044】
本発明は、(A)成分が(A−1)成分及び(A−2)成分から選ばれる成分である態様に代えて、(A)成分が(A−1)成分である態様の繊維製品処理剤組成物を開示する。この場合、本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A−1)成分を1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有する。
本発明は、(A)成分が(A−1)成分及び(A−2)成分から選ばれる成分である態様に代えて、(A)成分が(A−2)成分である態様の繊維製品処理剤組成物を開示する。この場合、本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A−2)成分を1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有する。
【0045】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物は、(B)成分を0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下含有する。さらに好ましくは、前記上位規定の範囲内で、8−シクロヘキサデセン−1−オンを0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0046】
本発明は、(B)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(B)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0047】
本発明は、(B)成分が、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、8−シクロヘキサデセン−1−オン、9−シクロヘプタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド及び10−オキサ―16−ヘキサデカノリドから選ばれる1種以上の化合物である態様に代えて、(B)成分が8−シクロヘキサデセン−1−オンである態様の繊維製品処理剤組成物を開示する。この場合、本発明の繊維製品処理剤組成物は、8−シクロヘキサデセン−1−オンを0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0048】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分/(B)成分の質量比が、より優れた抗菌性と防臭性、組成物の安定性を得るために、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、防臭効果の観点から、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下である。
本発明は、(A)成分及び/又は(B)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(A)成分/(B)成分の質量比を適用した発明を開示する。
【0049】
本発明の繊維製品処理剤組成物の残部は、水である。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水などを用いることができる。
【0050】
本発明の繊維製品処理剤組成物の30℃のpHは、2.0以上、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上であり、そして、4.0以下、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.5以下である。(A)成分の第4級アンモニウム化合物の加水分解による分解を抑制する点からこの範囲が好ましい。pHは、JIS K 3362;2008の項目8.3に従って30℃において測定する。pHは、アルカリ剤と酸剤によって調整されるが、酸剤は後述するクエン酸、コハク酸などの有機酸を用いてもよい。
【0051】
本発明の繊維製品処理剤組成物の30℃の粘度は、使用勝手の点で、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上であり、そして、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは150mPa・sである。粘度は、B型粘度計を用いて、No.1〜No.3ローターの何れかのローターを用い、60r/minで、測定開始から1分後の指示値である。繊維製品処理剤組成物は30±1℃に調温して測定する。
【0052】
[その他の成分]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、以下に示す成分を含有することができる。
<(C)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(C)成分として、下記(C−1)成分、(C−2)成分及び(C−3)成分から選ばれる一種以上の4級アンモニウム塩を含有することが好ましい。(A)成分と(C)成分を併用することは、防臭効果の点からより好ましい。
(C−1)成分:下記一般式(C1)で表される4級アンモニウム塩
【0053】
【化5】
【0054】
〔式中、R1c、R2cは、それぞれ独立して、炭素数8以上、12以下、のアルキル基であり、R3c、R4cは、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシル基であり、Xは陰イオンである。〕
(C−2)成分:下記一般式(C2)で表される4級アンモニウム塩
【0055】
【化6】
【0056】
〔式中、R5cは、炭素数5以上、19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R6c、R7cは、それぞれ独立に、炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Yは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、
【0057】
【化7】
【0058】
又は連結手である。R8cは、炭素数1以上、3以下のアルキレン基であり、R9cは炭素数1以上、6以下のアルキレン基又は−(O−R10c−である。ここでR10cは、エチレン基又はプロピレン基であり、nは1以上、10以下の数である。Xは陰イオンである。〕
(C−3):下記一般式(C3)で表される4級アンモニウム塩
【0059】
【化8】
【0060】
〔式中、R11cは、炭素数5以上、19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、Xは陰イオンである。〕
【0061】
(C−1)成分は、一般式(C1)中、R1c、R2cは、炭素数10の直鎖のアルキル基が好ましい。また、R3c、R4cは、メチル基が好ましい。また、Xは、ハロゲンイオン、好ましくはクロロイオン、炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上、18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上、3以下のアルキル基が1個以上、3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオンがより好ましく、メチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンがより好ましい。
【0062】
(C−2)成分は、一般式(C2)中、R5cは、炭素数8以上、15以下が好ましい。また、R6c、R7cは、メチル基が好ましい。また、Yは、炭素数2のアルキレン基が好ましい。また、R8cは、メチレン基が好ましい。また、R9cは、メチレン基が好ましい。また、R10cは、エチレン基が好ましい。また、nは、2以上、4以下が好ましい。また、Xの具体例及び好ましいものは一般式(C1)と同じである。
【0063】
(C−3)成分は、一般式(C3)中、R11cは、炭素数16のアルキル基が好ましい。また、Xの具体例及び好ましいものは一般式(C1)と同じである。
【0064】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(C)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下含有する。
【0065】
本発明は、(C)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(C)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0066】
<(D)無機塩>
また、本発明の繊維製品処理剤組成物には、(D)成分として、水溶性カルシウム無機塩及び水溶性マグネシウム無機塩から選ばれる1種以上の水溶性の無機塩を配合することが好ましい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、(D)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。カルシウムイオンは塩化カルシウムに、また、マグネシウムイオンは塩化マグネシウムに、それぞれ、換算して(D)成分の含有量とする。従って、本発明では、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンの濃度に対応した塩化カルシウム又は塩化マグネシウムの濃度を(D)成分の濃度とする。
(D)成分として、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる塩を配合することが、貯蔵安定性の点から好ましい。
本発明は、(D)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(D)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0067】
<(E)金属封鎖剤>
また、本発明の繊維製品処理剤組成物には、(E)成分として、金属封鎖剤を配合することが好ましい。(E)成分としては、エチレンジアミン四酢酸やヒドロキシエチリデンジホスホン酸やこれらに比較して生分解性に優れるL−アスパラギン酸二酢酸、S,S−エチレンジアミン二コハク酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、メチルグリシン二酢酸を用いることが出来る。(E)成分としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、及びそれらの塩から選ばれる化合物がより好ましい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、(E)成分を、酸型化合物の換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%超、より更に好ましくは0.0075質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下含有する。
本発明は、(E)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(E)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0068】
<(F)その他の界面活性剤>
本発明の繊維製品処理剤組成物には、(F)成分として、(A)成分及び(C)成分以外の界面活性剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0069】
(F)成分としては、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる界面活性剤が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、下記(I)が好ましい。
(I):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩、
【0070】
非イオン界面活性剤としては、下記(II)及び(III)から選ばれる1種以上が好ましい界面活性剤として挙げられる。
(II):下記一般式(F1)で表される非イオン界面活性剤
1f−O−[(CO)(CO)]−H (F1)
〔式中、R1fは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは2以上、好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは40以下の数、tは0以上、好ましくは1以上、そして、5以下、好ましくは3以下の数である。(CO)と(CO)は、ランダム型又はブロック型に結合している。〕
(III):下記一般式(F2)で表される非イオン界面活性剤
【0071】
【化9】
【0072】
〔式中、R1fは前記の意味を示す。Aは−N<又は−CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上、40以下の数であり、u+vは5以上、そして、60以下、好ましくは40以下の数である。R2f、R3fは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基である。〕
【0073】
(F)成分としては、非イオン界面活性剤が好ましく、前記一般式(F1)で表される非イオン界面活性剤がより好ましい。
【0074】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(F)成分を、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下含有する。
本発明は、(F)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(F)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0075】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分を含む全界面活性剤の含有量が、溶液安定性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
また、本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分及び(A)成分以外の界面活性剤の合計の含有量が、溶液安定性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。この含有量の下限値は1質量%以上である。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分、(C)成分及び(F)成分の含有量の合計が、溶液安定性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0076】
<(G)香料>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(G)成分として、香料を含有することができる。(G)成分の香料は、通常、繊維製品処理剤組成物の液体部分に溶解又は分散して存在する。(G)成分として、香料を内包したマイクロカプセルを含有することもできる。
【0077】
(G)成分の香料としては、繊維製品処理剤組成物や柔軟組成物に一般に使用されている種々の天然あるいは合成香料が挙げられる。例えば、
(G1)脂肪酸エーテル、芳香族エーテル(フェノールエーテルを除く)等のエーテル、
(G2)脂肪酸オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド、
(G3)アセタール、
(G4)ケタール、
(G5)フェノール、
(G6)フェノールエーテル、
(G7)脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸、
(G8)酸アマイド、ニトロムスク、ニトリル、アミン、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素化合物
等の合成香料が挙げられる。また、動物、植物からの天然香料が挙げられる。また、天然香料及び/又は合成香料を含む調合香料が挙げられる。(G)成分として、これらの1種又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0078】
(G)成分としては、例えば、1969年化学工業日報社刊印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」、1969年MONTCLAIR, N. J.刊STEFFEN ARCTANDER著‘Perfume and Flavor Chemicals’等に記載の香料成分が使用出来る。
【0079】
また、(G)成分の香料として、香りの持続性、残香性を目的として、ヒドロキシ基を有する香料成分をケイ酸エステル(例えば、特開2009−256818号記載)体として併用することが出来る。
【0080】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(G)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下含有する。
本発明は、(G)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(G)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0081】
<(H)水溶性有機溶剤>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、組成物の安定性や粘度の観点から、(H)成分として、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。(H)成分としては、繊維製品処理剤組成物や柔軟剤組成物に配合することが知られている水溶性の有機溶剤が挙げられる。(H)成分について「水溶性」とは100gの20℃の脱イオン水に対して20g以上溶解することをいう。具体的には、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、エタノール等を挙げることができる。好ましくはエチレングリコール、グリセリン及びエタノールから選ばれる水溶性有機溶剤である。繊維製品処理剤組成物の粘度が高い場合や相安定性を調整したいときは水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(H)成分を、好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下含有する。
本発明は、(H)成分が特定の成分である場合に、その成分について前記(H)成分の含有量を適用した発明を開示する。
【0082】
<(I)pH調整剤>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分の第4級アンモニウム化合物の加水分解による分解を抑制する上で、原液のpHを30℃で2.0以上、4.0以下に調整する。そのために、本発明の繊維製品処理剤組成物は、(I)成分としてpH調整剤を配合することが好ましい。pH調整剤として、酸剤及びアルカリ剤から選ばれる成分が挙げられる。
【0083】
酸剤としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。(I)成分の有機酸は(E)成分以外の有機酸である。(I)成分の有機酸の具体例としては、炭素数1以上、10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上、20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、安息香酸、サリチル酸が挙げられる。
アルカリ剤としては、無機塩基又は有機塩基が挙げられる。無機塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが使用できる。有機塩基の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0084】
酸剤やアルカリ剤の(I)成分は、組成物のpHが前記範囲になる量で配合され、安定性を損なわない程度の量に制限される。
【0085】
[更なる任意成分]
更なる任意成分としては、以下の成分が挙げられる。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、基材劣化の抑制のために、BHTなどの周知の酸化防止剤を配合してもよく、(A)成分や香料成分などには既に基材に配合されている場合もある。酸化防止剤を配合することで、他の配合成分の分解による臭気発生を抑制することができる。
【0086】
本発明の繊維製品処理剤組成物には、審美や長期保存時の着色による懸念を払拭する観点から、繊維製品処理剤組成物や柔軟剤組成物に配合されていることが知られている染料ないし顔料を配合することができる。
【0087】
また本発明の繊維製品処理剤組成物には、プロキセル、ケーソン名で市販されている防菌・防黴剤を、組成物の安定性を損なわない範囲で配合することができる。
【0088】
また本発明の繊維製品処理剤組成物には、繊維製品の風合いや感触の向上のために、通常、繊維製品処理剤組成物や柔軟剤組成物に配合する事が知られているジメチルポリシロキサンや各種変性シリコーンを配合してもよい。
【0089】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、衣料、寝具、タオルなどの繊維製品の処理に用いられる。
【0090】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、尿臭及び/又は汗臭の抑制のための繊維製品処理剤組成物として好適であり、尿臭抑制のための繊維製品処理剤組成物としてより好適である。本発明の繊維製品処理剤組成物を用いた処理は、衣料、寝具などの繊維製品の洗濯工程に取り込むことができる。洗濯工程では、洗浄後、すすぎが行われるが、最後のすすぎの際に、すすぎ水に本発明の繊維製品処理剤組成物を添加してすすぎを行うことにより、繊維製品に尿臭及び/又は汗臭の抑制効果を付与することができる。
【0091】
具体的には、衣料等の繊維製品を、水中で本発明の繊維製品処理剤組成物と接触させる。例えば、洗濯時の濯ぎの段階で、濯ぎ水中に本発明の繊維製品処理剤組成物を投入することによって実施することができる。その際の浴比は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である、また、本発明の繊維製品処理剤組成物の使用量は、繊維製品1.5kgに対して、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上、そして、好ましくは40g以下、より好ましくは30g以下である。
【0092】
本発明は、本発明の繊維製品処理剤組成物と水とを含有する処理液を繊維製品と接触させる、繊維製品の処理方法を提供する。
処理液は、本発明の繊維製品処理剤組成物を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下含有する。
また、処理液は、(A)成分を、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下含有する。
また、処理液は、(B)成分を、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.002ppm以上、好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下含有する。
この処理方法では、処理液と繊維製品との浴比は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。浴比は、繊維製品1kgあたりの処理液の体積(リットル)である。
また、この処理方法では、処理液を、処理液中の本発明の繊維製品処理剤組成物が、繊維製品1.5kgに対して、5g以上、更に10g以上、そして、40g以下、更に30g以下となるように用いることが好ましい。
【実施例】
【0093】
<合成例1> (a−1)成分の合成
パーム油を原料とした酸価206.9mgKOH/gの脂肪酸と、トリエタノールアミンとを、反応モル比1.65/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で、脱水縮合反応させて、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアミンを主成分とする縮合物を得た。
【0094】
次にこの縮合物のアミン価を測定し、該縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、4級化を行ない、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートを主成分とし、エタノールを10質量%含有する第4級アンモニウム塩混合物を得た(以下、(a−1)という)。但し、ここでいう“アルカノイル”の用語には、アルカノイルがパーム油原料の脂肪酸残基であるため、飽和脂肪酸以外に不飽和脂肪酸由来の残基、例えばアルケノイル等も含むものとする。また、前記縮合物及び(a−1)を得るための調製手順や反応条件は、特開2010-209493号公報の合成例2に従って行った。
【0095】
(a−1)が含む第4級アンモニウム塩中、(a1)成分の割合は30質量%、(a2)成分の割合は55質量%、(a3)成分の割合は15質量%であった。(a−1)は、4級化率が92質量%であり、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、エタノール以外に、ジエステル構造体及びトリエステル構造体の3級アミン化合物、微量のトリエタノールアミン及びその4級化物、並びに微量の脂肪酸を含んでいた。
【0096】
<合成例2> (a−2)成分の合成
酸価205.8mgKOH/gの脂肪酸(パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸/その他=11質量%/66質量%/20質量%/3質量%)とメチルジエタノールアミンとを、反応モル比1.7/1(脂肪酸/メチルジエタノールアミン)で、脱水縮合反応させて、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−メチルアミンを主成分とする縮合物を得た。次にこの縮合物のアミン価を測定し、該縮合物に対してメチルクロライドを0.97等量用い、4級化を行い、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライドを主成分とし、エタノールを10質量%含有する4級アンモニウム塩化合物を得た(以下、(a−2)という)。(a−2)が含む第4級アンモニウム塩中、(a4)成分の割合は21質量%、(a5)成分の割合は79質量%であった。(a−2)は、4級化率が95質量%であり、(a4)成分、(a5)成分、エタノール以外に、ジエステル構造体の3級アミン化合物、微量のジエタノールアミン及びその4級化物、並びに微量の脂肪酸を含んでいた。
【0097】
なお、(a−1)、(a−2)について、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分、(a5)成分の割合、並びにその他成分の分析はHPLCを用い、下記条件により測定した。
<HPLC条件>
カラム:Inertsil NH2 5μm(4.6×250mm) 室温(25℃)
移動相:0.05質量/容量%TFA(トリフルオロ酢酸)ヘキサン:MeOH(メタノール):THF(テトラヒドロフラン)=85:10:5(容量比)
流速:測定開始から10分までは0.8mL/min、測定開始から10分超11分までは均一に1.2mL/minまで速度を上げ、11分超55分までは1.2mL/min、測定開始から55分超60分までは0.8mL/min
注入:20μL
検出:CAD
【0098】
<合成例3> (g−1)の製造
ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体(デモールEP、固形分25質量%、花王株式会社)1.7gを塩酸で中和後、更にイオン交換水で希釈することにより、固形分3質量%、pH4.3の水溶液を得た。次に、該ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体水溶液100gに、表2の組成の香料化合物(g1−1)を36g加え、ホモミキサーを用いて乳化し、これを50℃に昇温した。次に、部分メチロール化メラミン樹脂(Cymel385、固形分80質量%、Cytec Industries Inc製)12gをイオン交換水35gに溶かした溶液を、前記水溶液に対して滴下した。これを50℃で2時間維持し、更に70℃で1時間維持し、更に80℃で3時間維持することにより、香料化合物(g1−1)をマイクロカプセル化した。その後、放冷することによって、平均粒径7μm、有効分30質量%のマイクロカプセル(g−1)をスラリーとして得た。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例及び比較例で使用した成分のうち、表中記号で示したものを以下に示す。
<(A)成分>
(a−1):上記合成例1で製造した、4級アンモニウム塩混合物を含む反応生成物。表4に示した(a−1)の数値は、(a−1)の有姿での含有濃度である。(a−1)中の(A)成分濃度は80質量%である。
(a−2):上記合成例2で製造した、4級アンモニウム塩混合物を含む反応生成物。表4に示した(a−2)の数値は、(a−2)の有姿での含有濃度である。(a−1)中の(A)成分濃度は85質量%である。
【0101】
<(A)成分の比較化合物>
(a’−1):コータミンD86P(花王株式会社製)。主成分は、ジメチルジ長鎖アルキルアンモニウムクロライド。該4級塩成分濃度は75質量%である。長鎖アルキル基の炭素数は14、16及び18の混合である。表4に示した(a’−1)の数値は、(a’−1)の有姿での含有濃度である。
【0102】
<(B)成分>
(b−1):グロバノン(Symrise社製)。主成分は、8−シクロヘキサデセン−1−オン。
(b−2):ムスクTM2(曽田香料社製)。主成分は、5−シクロヘキサデセン−1−オン。
【0103】
<(C)成分>
(c−1):アーカード210−80E(ライオン(株)製)。ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを80質量%の濃度で含有する製剤である。
(c−2):サニゾールC(花王(株)製)。アルキル基の炭素数が12〜16の直鎖アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドを50質量%の濃度で含有する製剤である。
(c−3):セチルピリジニウムクロリド(和光純薬工業(株)製)。含有濃度は100質量%である。
【0104】
<(D)成分>
(d−1):塩化カルシウム
【0105】
<(E)成分>
(e−1):トリロンMリキッド(BASFジャパン(株)製、メチルグリシン二酢酸3Na含有量40質量%)
(e−2):キレストPH−214(キレスト(株)製、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸4Na含有量27質量%)
表4に示した(e−1)、(e−2)の数値は、有効分の含有濃度である。
【0106】
<(F)成分>
(f−1):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数が30モルである)
【0107】
<(G)成分>
(g−1):前記合成例3で製造したマイクロカプセル香料。
(g−2):表3に記載の香料組成物。
【0108】
【表3】
【0109】
<(H)成分>
(h−1):エチレングリコール
(h−2):グリセリン
【0110】
<その他成分>
防菌・防カビ剤:プロキセルBDN(ロンザジャパン(株)製、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン含有量33%)
【0111】
実施例1〜15及び比較例1〜9
表4に示す組成の繊維製品処理剤組成物を以下の方法で調製した。得られた繊維製品処理剤組成物について、下記要領で尿臭の抑制効果について評価した。結果を表4に併せて示す。
【0112】
<繊維製品処理剤組成物の調製>
300mLのガラスビーカー(内径7cm、高さ11cm)に、繊維製品処理剤組成物出来上がり質量300gとなるのに必要な量の95%に相当する量のイオン交換水(65℃)と、(C)成分である4級アンモニウム化合物、(E)成分である金属封鎖剤、(F)成分である界面活性剤、(H)成分である水溶性有機溶剤と防菌・防カビ剤を入れ、ウォーターバスにて内容物温度が65℃以上となるよう加熱した。次いで、スリーワンモーター(新東科学(株)製、TYPE HEIDON 1200G)に装着した攪拌羽根(タービン型攪拌羽根、3枚翼、翼長2cm)をガラス製ビーカー底面から1cmの高さに設置し、回転数350r/minで攪拌しながら、あらかじめ65℃で溶融・混合した(A)成分である4級アンモニウム化合物又はその比較化合物を65℃加熱下10分間350r/minにて攪拌し、更に(D)成分である水溶性無機塩を加えた後、(G)成分であるマイクロカプセル香料粒子と香料組成物、および(B)成分である化合物を投入し、10分間撹拌した。次いで、氷水を入れたウォーターバス中で内容物が25℃になるまで、回転数350r/minにて攪拌冷却した。内容物温度が30℃まで下がった後、塩酸、もしくは水酸化ナトリウムを用いて所定のpHに調製し、各成分の濃度が表4記載の値となるのに必要な量のイオン交換水を添加し、30℃、回転数200r/minにて10分間攪拌し、繊維製品処理剤組成物を得た。
【0113】
<尿臭の抑制効果の評価方法>
(1)評価用布の前処理
非イオン界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物(平均付加モル数8))を用いて、市販の綿メリヤス布50cm×70cm(木綿2003、谷頭商店製)24枚を、日立自動洗濯機NW−6CYの洗濯工程を5回繰り返した(非イオン界面活性剤使用量4.5g、標準コース、水量45L、水温20℃、洗浄時間10分、ため濯ぎ2回)。その後、20℃、43%RHの条件下で乾燥した。
【0114】
(2)評価用布の繊維製品処理剤組成物による処理
National製電気バケツ式洗濯機(MiniMini、型番:NA−35)に、20℃に調温した市水を4.5L注水し、表4記載の繊維製品処理剤組成物を投入し、1分間攪拌した。攪拌後、上記(1)の方法で前処理した綿メリヤス布2枚を投入し、5分間攪拌した。この時の条件は、綿メリヤス布1.5kg当たり繊維製品処理剤組成物が10gとなる量であった。なお、綿メリヤス布2枚の質量は0.15kgであった。その後、脱水槽で3分間脱水し、20℃43%RHの条件下で乾燥した。
【0115】
(3)尿臭を有する試験布の調製
上記(2)で処理した綿メリヤス布を一辺が10cmの正方形に裁断し、その中心部に、p−クレゾール25質量%、フェノール5質量%、o−ジヒドロキシベンゼン5質量%、メトキシビニルフェノール5質量%、及びトリメチルアミン60質量%からなる尿臭によく似た臭気を有するモデル尿組成物0.5gを、直径が30mmの円状に塗布した。塗布後、試験布を25℃、43%RHの条件下で12時間放置し、乾燥させた。
【0116】
(4)尿臭の官能評価
上記(3)の方法で尿臭を付着させた試験布の臭う尿臭の臭いの強さを、尿臭の臭い評価に熟練した臭い評価パネラー10名(30代男性5人、20代女性5人)により評価した。
評価は、表4の比較例1の試験布を基準とし、評価対象となる各実施例又は比較例の試験布から臭う尿臭の臭いの強さを対比して行った。評価対象の試験布から臭う尿臭の臭いの強さが比較例1の試験布から臭う尿臭の強さよりも弱い場合は1と評価し、同等程度であり差がない場合は0と評価した。評価対象の試験布については、10人で評価し、その平均値を表4に示した。評価の数値が高いほど、尿臭の性能評価に優れることを示し、0.3以上が合格である。
【0117】
【表4】
【0118】
*1:有姿での含有量に基づく質量%を示す。
*2:実際に含まれる(A)成分の含有量に基づいて計算した質量比である。なお、一部の比較例では、(a’−1)を(A)成分として質量比を示した。
【0119】
表4の各実施例において(b−1)成分又は(b−2)成分を、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド又は10−オキサ―16−ヘキサデカノリドにそれぞれ置き換えた繊維製品処理剤組成物もまた尿臭の抑制効果を発揮する。