(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355511
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】シームフェルトの接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
D21F 7/10 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
D21F7/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-203351(P2014-203351)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-69776(P2016-69776A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229852
【氏名又は名称】日本フエルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小川 勝也
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−062994(JP,A)
【文献】
特開2005−264402(JP,A)
【文献】
特開2001−055682(JP,A)
【文献】
特開2010−275671(JP,A)
【文献】
特開昭62−250294(JP,A)
【文献】
特開平01−239188(JP,A)
【文献】
実開平02−118798(JP,U)
【文献】
実開平02−010499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00〜D21J7/00
Japio−GPG/FX
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シームフェルトの接合構造であって、
丈方向の両端部のそれぞれの厚さ方向の一側に設けられた第1ループ列及びその他側に設けられた第2ループ列を備えるシームフェルトと、
前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記一側に取り付けられる一対の第1接合用治具本体を備えた第1接合用治具と、
前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記他側に取り付けられる一対の係合部材及び前記一対の係合部材に係合する係合手段を備えた第2接合用治具とを備え、
前記第1接合用治具は、前記係合手段が前記一対の係合部材に係合していない状態において前記一対の接合用治具本体を互いに係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記他側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記一側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持できるように構成され、
前記第2接合用治具は、前記一対の接合用治具本体が互いに係合していない状態において前記係合手段を前記一対の係合部材に係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記一側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記他側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持できるように構成されたことを特徴とするシームフェルトの接合構造。
【請求項2】
前記係合手段は紐を備え、
前記一対の係合部材は、前記紐をスライド可能に係合させる複数の係合部を備え、
前記複数の係合部は、前記紐が前記一対の係合部材間を千鳥掛けに連結可能に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のシームフェルトの接合構造。
【請求項3】
前記一対の第1接合用治具本体は、一対のファスナー部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のシームフェルトの接合構造。
【請求項4】
シームフェルトの丈方向の両端部のそれぞれの厚さ方向の一側に設けられた第1ループ列及びその他側に設けられた第2ループ列のそれぞれについて、対応するループ孔同士を整合させた状態で、芯線を通すことにより、前記シームフェルトを接合する方法であって、
前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記一側には、一対の第1接合用治具本体を備えた第1接合用治具が取り付けられ、前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記他側には、一対の係合部材及び前記一対の係合部材に係合する係合手段を備えた第2接合用治具が取り付けられており、
(a)前記一対の接合用治具本体を互いに係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記他側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記一側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持し、前記両端部の前記第1ループ列同士を互いに整合させるステップと、
(b)前記第1ループ列に第1芯線を通すステップと、
(c)前記一対の接合用治具本体の互いの係合を解除するステップと、
(d)前記係合手段を前記一対の係合部材に係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記一側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記他側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持し、前記両端部の前記第2ループ列同士を互いに整合させるステップと、
(e)前記第2ループ列に第2芯線を通すステップと、
(f)前記第2接合用治具の締結を解除するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記係合手段は紐を備え、
前記一対の係合部材は、前記紐をスライド可能に係合させる複数の係合部を備え、
前記ステップ(d)は、
前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記他側に取付けられた前記一対の係合部材間を千鳥掛けに連結させるように、前記紐を前記複数の係合部にスライド可能に係合させるステップと、
前記紐に引張力を加えることによって、前記両端部の近傍が前記一側に向かって山形をなすように前記両端部の近傍を近接保持するステップとを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ方向に2列のループが形成されたシームフェルトの両端部を接合するための接合構造、接合方法及び接合用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルトを製紙機に取り付ける際の作業性を向上させるため、フェルトの走行経路、いわゆるフェルトランに有端のフェルトを引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシームフェルトが広く普及している。この種のシームフェルトでは、基布を構成する経糸の折り返しにより丈方向の端部に形成されたループを、互いのループ孔が整合するように交互にかみ合わせ、これにより形成された共通孔に芯線を通して両端部を接合する構成が一般的である。
【0003】
このようなシームフェルトの接合は緻密な手作業となるため、フェルトの端部を安定させて作業を行うことが望まれる。また、ループのかみ合い状態や芯線の挿通状態を目視で確認し易くするため、フェルトの端部を山形状に突き合わせることが望まれる。そこで、スライド式のファスナーを備えた仮接合布を予めフェルトの端部に縫い付けておき、フェルトの引き込みが終了したところで、ファスナーを掛けることで、フェルトの両端部を仮止めするとともに、フェルトの両端が山形状に突き合わせた状態に保持されるようにした技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−264402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ループが厚さ方向の上下に2列に形成されたシームフェルトにおいては、フェルトの両端が上側に向かって突き出るように山形に突き合わせて下列側のループを掛け合わせた後、フェルトの両端を下側に向かって突き出るように山形に突き合わせて上列側のループを掛け合わせることが望ましい。ここで、下列側のループを掛け合わせた後、上列側のループを特許文献1に記載の技術等で掛け合わせようとすると、上列側のループの上方はファスナーで覆われることになるため、両端部を上方から下方に押し込むことができず、両端部のループを整合させた状態にすることが困難である。また、上列側のループの上方はファスナーで覆われており、その下方は既に下列側のループが掛け合わされているため、フェルトの上下のどちらからも、ループが整合しているか否かを目視で確認することができない。
【0006】
本発明は、このような問題を鑑み、ループが厚さ方向に2列に形成されたシームフェルトの両端部の接合を容易かつ確実に行えるシームフェルトの接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面は、シームフェルト(2)の接合構造であって、丈方向の両端部のそれぞれの厚さ方向の一側に設けられた第1ループ列(14)及びその他側に設けられた第2ループ列(20)を備えるシームフェルトと、前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記一側に取り付けられる一対の第1接合用治具本体(30)を備え
た第1接合用治具(26)と、前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記他側に取り付けられる一対の係合部材(38)及び前記一対の係合部材に係合する係合手段(40)を備え
た第2接合用治具(28)とを備え、
前記第1接合用治具は、前記係合手段が前記一対の係合部材に係合していない状態において前記一対の接合用治具本体を互いに係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記他側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記一側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持できるように構成され、前記第2接合用治具は、前記一対の接合用治具本体が互いに係合していない状態において前記係合手段を前記一対の係合部材に係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記一側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記他側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持できるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1ループ列に芯線を通した後、第2ループ列同士を互いに整合させるために、第2接合用治具によりシームフェルトを他側から締結してシームフェルトの両端の他側を互いに付き合わせたときに、第2ループ列同士の整合状態を厚さ方向の他側から目視で確認できるとともに、整合していない場所があれば、手等によりシームフェルトの両端部近傍又は第2ループを押し込んでその場所の第2ループ列同士を整合させることができる。そのため、シームフェルトの両端部の接合を容易かつ確実に行える。
【0009】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記係合手段は、紐(40)を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1ループ列に芯線を通した後、第2接合用治具によりシームフェルトを他側から締結したとき、一対の係合部材間に掛け渡された紐の間の空間を介して、第2ループ列の整合状態を目視で確認できるとともに、整合していない場所があれば、手等によりその場所の第2ループ列を整合させることができる。
【0011】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記一対の係合部材は、前記紐をスライド可能に係合させる複数の係合部(44,48)を備え、前記複数の係合部は、前記紐が前記一対の係合部材間を千鳥掛けに連結可能に配置されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、紐を一対の係合部材間に千鳥掛けに掛け渡したときに、紐に引張力を加えるだけで、一対の係合部材を接近させることができ、それにより、両端に設けられた第2ループ列を互いにかみ合わせることができる。
【0013】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記一対の第1接合用治具本体は、一対のファスナー部材を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1ループ列の整合を簡易な作業で行うことができる。
【0015】
本発明のある側面は、シームフェルト(2)の丈方向の両端部のそれぞれの厚さ方向の一側に設けられた第1ループ列(14)及びその他側に設けられた第2ループ列(20)のそれぞれについて、対応するループ孔同士を整合させた状態で、芯線を通すことにより、前記シームフェルトを接合する方法であって、
前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記一側には、一対の第1接合用治具本体(30)を備えた第1接合用治具(26)が取り付けられ、前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記他側には、一対の係合部材(38)及び前記一対の係合部材に係合する係合手段(40)を備えた第2接合用治具(28)が取り付けられており、(a)
前記一対の接合用治具本体を互いに係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記他側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記一側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持し、前記両端部の前記第1ループ列同士を互いに整合させるステップと、(b)前記第1ループ列に第1芯線(22)を通すステップと、(c)
前記一対の接合用治具本体の互いの係合を解除するステップと、(d)
前記係合手段を前記一対の係合部材に係合させることにより、前記シームフェルトの前記両端部の近傍が前記一側に向かって山形形状をなし、かつ前記両端部の前記他側が互いに突き合うように、前記両端部の近傍を互いに近接させて保持し、前記両端部の前記第2ループ列同士を互いに整合させるステップと、(e)前記第2ループ列に第2芯線(24)を通すステップと、(f)前記第2接合用治具の締結を解除するステップとを含
むことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2ループ列同士を互いに整合させるために、シームフェルトの両端を互いに付き合わせたときに、第2ループ列同士の整合状態を厚さ方向の他側から目視で確認できるとともに、整合していない場所があれば、手等によりシームフェルトの両端部近傍又は第2ループ列を押し込んでその場所の第2ループ列を整合させることができる。そのため、シームフェルトの両端部の接合を容易かつ確実に行える。
【0017】
本発明の他の側面は、上記構成において、
前記係合手段は紐を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、一対の係合部材間に掛け渡された紐の間の空間を介して、第2ループ列同士の整合状態を目視で確認でき、その空間から手等を差し込み、第2ループ列同士を整合させることができる。
【0019】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記一対の係合部材は、前記紐をスライド可能に係合させる複数の係合部(44,48)を備え、前記ステップ(d)は、前記シームフェルトの前記両端部の近傍の前記他側に取付けられた前記一対の係合部材間を千鳥掛けに連結させるように、前記紐を前記複数の係合部にスライド可能に係合させるステップと、前記紐に引張力を加えることによって、前記両端部の近傍が前記一側に向かって山形をなすように前記両端部の近傍を近接保持するステップとを含むことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、紐に引張力を加えるだけで、一対の係合部材を接近させることができ、それにより、両端に設けられた第2ループ列同士を互いにかみ合わせることができる。
【0021】
本発明のある側面は、シームフェルト(2)の丈方向の両端部に設けられた一対のループ列(20)のそれぞれに形成されたループ孔(18)同士を互いに整合させるための接合用治具(28)であって、前記両端部の近傍の前記シームフェルトの一方の表面に取り付けられる一対の係合部材(38)と、前記一対の係合部材に係合する紐(40)とを備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ループ列同士を互いに整合させるために、シームフェルトの両端を付き合わせたときに、一対の係合部材間に掛け渡された紐の間の空間を介して、ループ列同士の整合状態を目視で確認でき、また、その空間から手等を差し込み、ループ列同士を整合させることができる。そのため、シームフェルトの両端部の接合を容易かつ確実に行える。特に、ループが厚さ方向に2列に形成されたシームフェルトにおいて、一方の列の両端部のループ同士を整合させて芯線を通した後に、他方の列の両端部のループ同士を整合させるために使用するのに適している。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ループが厚さ方向に2列に形成されたシームフェルトの両端部の接合を容易かつ確実に行えるシームフェルトの接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るシームフェルトの模式的な断面図
【
図3】実施形態に係るシームフェルト及び接合用治具の、下列側ループ同士を互いに整合させた状態における斜視図
【
図4】実施形態に係るシームフェルト及び接合用治具の、上列側ループ同士を互いに整合させた状態における斜視図
【
図5】実施形態に係るシームフェルト及び接合用治具の、下列側ループ同士を互いに整合させた状態における模式的断面図
【
図6】実施形態に係るシームフェルト及び接合用治具の、下列側ループ同士を互いに整合させた後、下列側の接合用治具の締結を解除した状態における模式的断面図
【
図8】実施形態に係るシームフェルト及び接合用治具の、上列側ループ同士を互いに整合させた状態における模式的断面図
【
図10】上列側の接合用治具の他の変形形態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、シームフェルト2は、第1及び第2基布4a,4bにバット繊維層6をニードリングにより積層一体化したものである。シームフェルト2は、
図2に示すように有端であるが、その両端部が結合されることによって、
図1に示すように無端環状の形態となる。シームフェルト2は、製紙機に取付けられ、プレス脱水工程における紙原料の運搬ベルトとして使用される。
【0027】
シームフェルト2は、下側の第1基布4a(無端環状の形態では内側の基布)と、上側の第2基布4b(無端環状の形態では外側の基布)とを重ねた構造となっており、両者はバット又は糸により結合している。第1基布4aと第2基布4bとは、丈方向にわずかにずれ、端部に段差が生じていてもよく(
図1及び
図2)、揃っていてもよい(
図3〜
図7)。第1及び第2基布4a,4bは、それぞれ、丈方向に延在する複数の経糸8と幅方向に延在する複数の緯糸(図示せず)とを互いに織り合わせた織布として形成されている。
【0028】
第1基布4aの丈方向の両端のそれぞれには、経糸8を折り返して形成された第1ループ10が複数配置され、複数の第1ループ10は、そのループ形状の内部に形成された第1ループ孔12が幅方向に整合するように配置されて第1ループ列14を形成している。同様に、第2基布4bの丈方向の両端のそれぞれには、経糸8を折り返して形成された第2ループ16が複数配置され、複数の第2ループ16は、そのループ形状の内部に形成された第2ループ孔18が幅方向に整合するように配置されて第2ループ列20を形成している。
【0029】
シームフェルト2を
図1に示す無端環状の形態にするため、両端に形成された一対の第1ループ列14の互いの第1ループ10を交互に重ね合わせ、かつ互いの第1ループ孔12を整合させるように、両端を互いに突き合わせ、第1芯線22(
図6参照)を、整合させた第1ループ孔12に通す。さらに、両端に形成された一対の第2ループ列20の互いの第2ループ16を交互に重ね合わせ、かつ互いの第2ループ孔18を整合させるように、両端を互いに突き合わせ、第2芯線24(
図7参照)を、整合させた第2ループ孔18に通す。第1芯線22及び第2芯線24は、互いに、同一の芯線でもよく、異なる芯線でもよい。
【0030】
シームフェルト2は、図示しない製紙機のフェルト走行経路に引き込んだ状態で両端部が互いに接合される。このとき、両端の第1ループ孔12を互いに整合させるために、第1接合用治具26が用いられ、その後、両端の第2ループ孔18を互いに整合させるために、第2接合用治具28が用いられる。第1接合用治具26及び第2接合用治具28は、あらかじめシームフェルト2の両端部近傍に縫い付けられている。
【0031】
図3(第1及び第2ループ10,16は図示を省略)に示すように、第1接合用治具26は、その本体となる一対のファスナー部材30を備える。一対のファスナー部材30は、各々、シームフェルト2の下側に固定される布地部32と、布地部32に取り付けられたファスナーエレメント部34とを備える。また、一対のファスナー部材30のいずれか一方には、一対のファスナーエレメント部34を互いにかみ合わせるための、また、そのかみ合わせを解除するためのスライダー36がスライド可能に取り付けられている。
【0032】
布地部32は、略長方形の布地からなり、その長辺の一方にファスナーエレメント部34が取り付けられている。布地部32は、ファスナーエレメント部34がシームフェルト2の端部側を向き、かつ端部と平行になるように、シームフェルト2の下側に配置される。布地部32のファスナーエレメント部34が取り付けられた側と反対側の長辺の近傍が、シームフェルト2の端部から12cm〜20cmの位置に縫い付けられ、縫い目は、シームフェルト2の端部と平行にされる。布地部32の長辺の長さはシームフェルト2の幅より大きく、縫い付けられた状態で、布地部32の長辺方向の両端がシームフェルト2の幅方向の側辺から突出している。ファスナーエレメント部34は、シームフェルト2の端部からわずかに、例えば1cm〜3cm程度、内側にずれた位置に配置される。
【0033】
図3及び
図4に示すように、第2接合用治具28は、シームフェルト2の上側に固定される一対の係合部材38と、一対の係合部材38にスライド可能に係合して、一対の係合部材38を互いに近接保持するための係合手段となる紐40とを備える。一対の係合部材38の各々は、シームフェルト2の上側に取り付けられる取付片42と、係合孔44を形成するように取付片42に取り付けられた複数の係合片46とを備える。
【0034】
取付片42は、略長方形又はテープ形状の布地からなり、その長辺側の一方に複数の係合片46が略等間隔、例えば10cm〜30cm間隔、で取り付けられている。取付片42は、係合片46が取り付けられた側がシームフェルト2の端部側を向き、かつその長辺が端部と略平行になるように、シームフェルト2の上側に配置される。取付片42は、シームフェルト2の端部の近傍に縫い付けられる。第1接合用治具26による掛け入れ作業を妨げないように、取付片42は、第1接合用治具26の布地部32の縫い付け位置と同じか、それよりもシームフェルト2の端部から離間した位置に縫い付けられていることが好ましい。例えば、縫い付け位置は、シームフェルト2の端部から12cm〜25cmであり、シームフェルト2の端部と平行である。シームフェルト2の端部が蛇行している場合には、取付片42は、その蛇行している端部が延在している方向に沿って直線的に縫い付けられる。取付片42の長辺の長さは、シームフェルト2の幅と略等しく、取付片42の長辺方向の端部と、シームフェルト2の幅方向の側辺が整合するように、取付片42は、シームフェルト2の上側から縫い付けられている。
【0035】
係合片46は、略長方形又はテープ形状の布地からなり、その両端部が取付片42に縫い付け等により固定され、紐40が通される係合部として機能する係合孔44を形成している。なお、係合片46は、樹脂又は金属から形成してもよく、この場合、係合孔44をフック形状に変形させても良い。また、係合片46によって形成される係合孔44に代えて、取付片42に複数の貫通孔48を設けて、紐40を係合させてもよく、この場合、貫通孔48を環状の樹脂又は金属からなる部材で補強してもよい(
図9参照)。
【0036】
次に、
図5〜
図8を参照して、シームフェルト2の接合手順について説明する。
図5〜
図8は、模式図であり、バット繊維層6等は省略している。
【0037】
出荷前の段階で、シームフェルト2の両端部に第1接合用治具26の一対のファスナー部材30及び第2接合用治具28の一対の係合部材38が縫い付けられている。シームフェルト2の両端部を接合する現場においては、まず、シームフェルト2を製紙機の走行経路に引き込み、シームフェルト2の両端部を、第2接合用治具28の一対の係合部材38を取り付けた側が上側になるように近接対向させる。
【0038】
次に、第1接合用治具26において、スライダー36を2つのファスナーエレメント部34に係合させた状態でスライド移動させて、ファスナーエレメント部34を互いにかみ合わせる。第1接合用治具26がシームフェルト2の両端部の近傍に締結されるため、シームフェルト2の両端部を付き合せるように、シームフェルト2の両端部の近傍を近接保持できる。第1接合用治具26の一対のファスナー部材30の縫い付けられた位置からファスナーエレメント部34までの長さが、シームフェルト2の第1接合用治具26が縫い付けられた位置から端部までの長さよりも短いため、シームフェルト2の両端部の近傍は、第1接合用治具26から離間する方向、すなわち上方に向かって山形形状を形成する。従って、シームフェルト2の両端面は、厚さ方向の下側において突き合わされて両端部に形成された下側の第1ループ列14同士が互いにかみ合っており、厚さ方向の上側はわずかに離間している。このとき、上側の第2ループ列20は互いにわずかに丈方向に離間した状態となる。このため、第1ループ列14の複数の第1ループ10の各々が、第1ループ孔12が整合するように正しく配置されているか否かを幅方向からだけでなく、上方からも目視で確認できる。正しく配置されていない第1ループ10があれば、手等により、第1ループ孔12が整合する正しい位置に配置する。次に、第1芯線22を、整合させた第1ループ孔12に通す(
図5)。なお、第1ループ10をかみ合わせながら第1芯線22を通してもよい。
【0039】
その後、スライダー36を逆方向にスライド移動させ、ファスナーエレメント部34のかみ合わせを解除する。シームフェルト2の両端部の近傍を略平らな状態にする(
図6)。
図7に示すように、第1接合用治具26の締結を解除すると、シームフェルト2には、その両端部が離反する方向(
図7の双方向矢印の方向)に張力がかかる。両端部の第1ループ列14同士は、第1ループ孔12に第1芯線22が通されているため、かみ合わせが維持される。一方、両端部の第2ループ列20同士は、かみ合わせが浅くなって、第2ループ孔18の整合している部分が狭くなる。よって、この状態で第2ループ孔18に第2芯線24を通すことは困難であるため、両端部の第2ループ列20同士を深くかみ合わせるために寄せる必要がある。
【0040】
そこで、次の手順に従って第2接合用治具28を使い、両端部の第2ループ列同士を寄せる。紐40を一対の係合部材38の一端側の最初の係合孔44に結び付ける。その後、紐40が千鳥掛けに配置されるように、紐40を、一対の係合部材38のそれぞれの係合孔44を交互に、かつ幅方向の一端側から他端側に向かって順に、通して行く。次に、紐40を結び付けた側から少しずつ一対の係合部材38の間が狭まるように、紐40と係合孔44とを互いにスライドさせ、一対の係合部材38を互いに接近させる。このとき、シームフェルト2の突き合わされた両端部は、紐40が存在するため上方へは移動できず、下方に移動する。よって、シームフェルト2の両端部近傍は、下方に向かって山形形状を形成する。従って、シームフェルト2の両端面は、上側が突き合わされた状態になる。そのため、両端部に形成された厚さ方向の上側の第2ループ列20が互いに重なり合い、厚さ方向の下側の第1ループ列14も、第1ループ孔12に第1芯線22が通されているため、重なり合った状態に保持される。第2ループ列20の複数の第2ループ16の各々が、第2ループ孔18が整合するように正しく配置されているか否かは、下側からは、第1接合用治具26の締結が解除されていても第1ループ列14が重なっているため目視で確認することはできないが、幅方向からは目視でき、また、上方からも、千鳥に配置された紐40の間の空間50を通して目視で確認できる。特に、上方から目視で確認できるため、どの第2ループ16が正しく配置されていないかが明瞭にわかる。正しく配置されていない第2ループ16があれば、手等によって、千鳥に配置された紐40の間の空間50を通して該当する部分を押し込み、又は可能であれば開放されている下側から押し上げて、第2ループ孔18が整合する正しい位置に配置する。次に、第2芯線24を、整合させた第2ループ孔18に通す(
図8)。
【0041】
その後、紐40を緩め、シームフェルト2の両端部の近傍を略平らな状態にする。また、一対のファスナー部材30及び一対の係合部材38のシームフェルト2への縫い付けをほどいて、第1接合用治具26及び第2接合用治具28をシームフェルト2から取り外す。
【0042】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、シームフェルトの下側と上側との両方で第2接合用治具を用いて、ループ孔を整合させてもよい。また、第2接合用治具の紐の掛け方や係合孔の配置は適宜変更してもよい。例えば、一対の係合部材間で紐が丈方向に平行になるように配置したり(紐がコ字形状及び左右反転したコ字形状の繰り返しパターンをたどる配置、又は複数の紐の各々が一対の係合部材間を結ぶ配置(
図10参照))、平行と斜めが繰り返されるように配置してもよい(紐がZ字形状の繰り返しパターンをたどる配置)。また、第2接合用治具は、シームフェルトに締結したときに、一対の係合部材間に厚み方向(上下方向)に開いた空間50を形成して、その空間50から第2ループを目視でき、かつ、手等でシームフェルトを押し込んで第2ループ孔を整合させることができる形状であればよい。例えば、紐に代えて、棒とその棒に選択的に固定できるスライダーとを用い、棒の一端を一対の係合部材の一方に固定し、スライダーを一対の係合部材の他方に固定してもよい。また、第1接合用治具及び第2接合用治具のシームフェルトへの縫い付け及び取り外し順序は、適宜変更可能である。例えば、第1接合用治具の取り外しは、第1芯線を第1ループ孔に通した後、かつ第2接合用治具によってシームフェルトの両端の上側を突き合わせる前であってもよく(
図4参照)、第2接合用治具の縫い付けは、第1接合用治具によって、第1ループ孔に第1芯線を通した後であってもよい。また、第1接合用治具及び第2接合用治具によるシームフェルトの両端部の近傍の締結の解除は、ファスナーのかみ合わせの解除や紐の緩めによらず、第1接合用治具及び第2接合用治具のシームフェルトへの縫い付けをほどくことによって行ってもよい。また、本実施形態のシームフェルトの両端部は丈方向に直交しているが、両端部を丈方向に対して傾斜させてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2...シームフェルト、10...第1ループ、12...第1ループ孔、14...第1ループ列、16...第2ループ、18...第2ループ孔、20...第2ループ列、22...第1芯線、24...第2芯線、26...第1接合用治具、28...第2接合用治具、30...一対のファスナー部材、32...布地部、34...ファスナーエレメント部、38...一対の係合部材、40...紐、42...取付片、44...係合孔、46...係合片