(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355524
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】開閉器の端子カバー
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
H01H73/20 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-219857(P2014-219857)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-85936(P2016-85936A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】納所 大輔
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−354003(JP,A)
【文献】
特開2009−266480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H69/00−69/01
H01H71/00−83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異極間で高さが異なり、電源側と負荷側が極毎に同じ高さとなる段差構造の電源側と負荷側の各端子部を被覆する開閉器の端子カバーであって、
端子カバー本体が開閉器に取付けたとき開閉器よりも開閉器の長手方向に突出する長さを備え、端子カバー本体の長さ方向の中心の両側に、開閉器への取付部をそれぞれ設けたことを特徴とする開閉器の端子カバー。
【請求項2】
端子カバー本体は、開閉器の端子部の左右を覆う側面部を備え、前記取付部は側面部を挟んで対称位置に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の開閉器の端子カバー。
【請求項3】
端子カバー本体は、開閉器の端子部の左右を覆う側面部を備え、開閉器の端子間に形成された隔壁に当接させるガイド部を前記側面部間に形成したものである請求項1または請求項2に記載の開閉器の端子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉器の端子部に取付けられる開閉器の端子カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉器の端子部には、感電事故等を防止するための合成樹脂製の端子カバーが取付けられている。開閉器の端子部の左右各極が同一高さの場合には、電源側の端子カバーを180度回転させて負荷側にも取付けることができる。
【0003】
しかし特許文献1に示されるように、開閉器の端子部が左右で段差を持たせた段違い構造である場合には、それに合わせて形成された端子カバーを180度回転させても反対側に取付けることができない。何故ならば開閉器の同一極は電源側でも負荷側でも同じ高さとなっているため、電源側から見て左側が高い場合には、負荷側から見ると右側が高くなる。これに対して電源側から見て左側が高い端子カバーは、180度回転させて負荷側から見ても左側が高いままであり、負荷側に取付け不能となるからである。
【0004】
なお
図1に示すように、開閉器の端子部が左右で段差を持たせた段違い構造である場合であっても、電源側と負荷側との間で端子カバーを平行移動させて取付け可能なこともある。しかし感電防止効果を高めるために、端子カバーを長くしてその端面を開閉器の端子部の端面よりも突出させた場合には、平行移動させると突出部分が反対側では邪魔になるため、やはり取付け不能となる。このため開閉器の端子部が段違い構造である場合には、電源側の端子カバーと負荷側の端子カバーを別個に製造しなければならず、金型代を含む製造コストが高くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−324472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、段違い構造の開閉器の電源側と負荷側にも取付け可能であり、しかも端面を開閉器の端子部の端面よりも突出させて感電防止効果を高めた端子カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、異極間で高さが異なり、電源側と負荷側が極毎に同じ高さとなる段差構造の電源側と負荷側の各端子部を被覆する開閉器の端子カバーであって、端子カバー本体が開閉器に取付けたとき開閉器よりも開閉器の長手方向に突出する長さを備え、端子カバー本体の長さ方向の中心の両側に、開閉器への取付部をそれぞれ設けたことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、端子カバー本体は、開閉器の端子部の左右を覆う側面部を備え、前記取付部は側面部を挟んで対称位置に形成された構造とすることができる。また請求項3のように、端子カバー本体は、開閉器の端子部の左右を覆う側面部を備え、開閉器の端子間に形成された隔壁に当接させるガイド部を前記側面部間に形成した構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の端子カバーは、端子カバー本体が開閉器に取付けたとき開閉器よりも開閉器の長手方向に突出する長さを備え、端子カバー本体の長さ方向の中心の両側に開閉器への取付部をそれぞれ設けたものであるから、開閉器の端子部の接触保護が可能となるうえ、端子カバーの方向性をなくし、電源側端子と負荷側端子の両側に取付けが可能となる。このため部品の共通化を図ることができ、製造コストを引き下げることができる。また請求項3のようにガイド部を形成すれば、取付け位置まで端子カバーをガイドさせることができ、取付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の端子カバーの一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の端子カバーが取付けられる開閉器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。
先ず
図2に、本発明の端子カバーが取付けられる開閉器1を示す。この開閉器1は配線用遮断器であり、電源側と負荷側にそれぞれ端子部2を備えている。各端子部2は異極間で高さが異なり、かつ電源側と負荷側が極毎に同じ高さとなる段差構造となっている。100V使用の場合には上側を感電のおそれのないN極とし、下側をL1またはL2極とするのが一般的である。この場合、N極は電源側でも負荷側でも高い移置にある。
【0012】
図3と
図4に開閉器1の端子部2に端子カバーを取付けた状態を示す。これらの図に示されるように、端子カバー本体3は開閉器1の端子部2に取付けたとき、端子部2の端面4よりも開閉器1の長手方向に突出する長さを備えている。これによって
図1に示した従来構造よりも感電防止効果を高めている。
【0013】
端子カバー本体3は
図5、
図6に示すように上面部5と、その左右端縁から垂直下方に垂下する側面部6、7を備えている。上面部5の左右幅は端子部2の幅と同一であり、開閉器1の長手方向の長さは端子部2の端面4よりも突出する長さである。側面部6は
図3に示すように端子部2の上側極の側面をカバーする略T字形状となっており、他方の側面部7は
図4に示すように端子部2の下側極の側面をカバーする四角形状となっている。側面部7は上面部5の端縁の長さに等しい。開閉器1の端子部2の左右を覆う側面部6、7は、隣接して接続される導電部である電線の圧着端子16の側方向を覆う位置まで形成することが好ましい。また左右の側面部6、7の中央部には、端子部2の極間隔壁8の開閉器1の長手方向端部に位置させる中央面部9が形成されている。
【0014】
図5、
図6に示されるように、側面部6と中央面部9との間には、4枚の垂下片10が形成されており、その下端部には開閉器1への取付部11が突設されている。これらの取付部11は突起であり、
図2に示した端子部2の上側極の隔壁12及び極間隔壁8に形成された凹部13に嵌合されることにより、端子カバーを端子部2に保持させるものである。従って垂下片10、10の左右方向の幅は、上側極の隔壁12及び極間隔壁8の間に密着させて挿入できる幅としておく。
【0015】
また端子カバー本体3は、
図5に示す中心線A−Aを挟んで対称形状であり、垂下片10、10も開閉器1の長手方向の対称位置に配置されている。換言すれば垂下片10、10及びその先端の取付部11は側面部6を挟んで対称位置に形成されている。このため開閉器1の長手方向の片側の左右一対の取付部11、11を利用して、
図3あるいは
図4に示すように、電源側の端子部2にも、負荷側の端子部2にも取付けることができる。
【0016】
図6、
図7に示すように、中央面部9の両側(開閉器1の長手方向の両側)には、ガイド部14が形成されている。ガイド部14は端子カバー本体3を端子部2に取付けるときに端子部2の極間隔壁8に当接して端子カバー本体3の姿勢を安定させ、取付けを容易にする役割を持つ。
【0017】
このように構成された本発明の端子カバーは、開閉器1の端子部2に上方から差し込むようにして取付けられるものであり、
図7に示すように垂下片10の取付部11が上側極の隔壁12及び極間隔壁8に形成された凹部13に嵌合され、安定に保持される。ガイド部14は極間隔壁8の凹部13に対して反対側の側面に沿った状態で、端子カバーをガイドする。
【0018】
取付完了状態においては、側面部6が端子部2の上側極の側面をカバーし、他方の側面部7は端子部2の下側極の側面をカバーする。しかも端子カバー本体3の上面部5やその左右端縁から垂直下方に垂下する側面部6は端子部の端面4よりも開閉器1の長手方向に大きく突出しているため、端子部2への接触が防止され安全性に優れる。また、中央面部9が、端子部2の極間隔壁8の開閉器1の長手方向端部に形成されているので、端子部間で導電部が短絡するのを防ぐことができる。
【0019】
しかも本発明の端子カバーは前記した中心線A−Aに関して対称形状であり、両側に取付部11を形成したものであるから、端子部2が段違い構造である場合にも、平行移動させることによって電源側の端子部2と負荷側の端子部2の両方に取付けが可能となる。このため部品の共通化を図ることができる。
【0020】
上記した実施形態では側面部6を上側極の隔壁12、側面部7を下側極の隔壁15と同一平面上に位置させたが、同一平面上に位置させなくてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 開閉器
2 端子部
3 端子カバー本体
4 端面
5 上面部
6 側面部
7 側面部
8 極間隔壁
9 中央面部
10 垂下片
11 取付部
12 上側極の隔壁
13 凹部
14 ガイド部
15 下側極の隔壁
16 圧着端子