特許第6355550号(P6355550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6355550-咬合平面板 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355550
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】咬合平面板
(51)【国際特許分類】
   A61C 11/00 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   A61C11/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-261604(P2014-261604)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-87401(P2016-87401A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-221253(P2014-221253)
(32)【優先日】2014年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593085299
【氏名又は名称】池尻 良治
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】池尻 良治
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−327845(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/135160(WO,A1)
【文献】 実開昭58−067418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科医療において患者の咬合平面を確認するために用いる咬合平面板(1,1A)であって、
口腔外支持部(2,2A)と口腔内挿入部(3,3A)からなり、
前記口腔内挿入部(3,3A)は、前記口腔外支持部(2,2A)の前方から患者方向に伸びており、
前記口腔内挿入部(3,3A)は、不正咬合者の上顎歯の少なくとも一部を収容する長さと形状を有する貫通孔(34,34A)を有する
ことを特徴とする咬合平面板(1)。
【請求項2】
前記貫通孔(34)が不正咬合者の上顎前歯部のうち、犬歯間(K―K)の6本の少なくとも一部を収容する長さと形状を有する請求項1項記載の咬合平面板(1)。
【請求項3】
前記貫通孔(34)が不正咬合者の上顎前歯部のうち、第1小臼歯間(D−D)の8本の少なくとも一部を収容する長さと形状を有する請求項1項記載の咬合平面板(1)。
【請求項4】
前記貫通孔(34A)が左右非対称である請求項1項記載の咬合平面板(1A)。
【請求項5】
左右非対称の前記貫通孔(34A)の片側が第3大臼歯以後まで達している請求項4項記載の咬合平面板(1A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医師が患者の歯の治療に際して、患者の咬合平面を観察するために使用する咬合平面板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
咬合平面とは、「頭蓋の解剖学的に決められた仮想平面で、切歯の切縁と臼歯の咬合面頂に接する平面」あるいは「有歯顎の習慣的咬頭嵌合状態における下顎中切歯の切縁の接触点と、左右下顎第二犬臼歯遠心頬側咬頭頂の3点によって決定される平面」と定義されている仮想平面である。
【0003】
咬合平面は、カンペル平面(眼耳平面)と呼ばれる耳珠前上縁と鼻下点を結んだ左右2本の線と平行であるといわれ、有歯顎者(天然歯)の治療や無歯顎患者の咬合平面を決定する1つの基準ともなっている。
【0004】
従来の咬合平面板は、例えば特開2000−42005号公報に示すように、無歯顎者が対象であり、蝋提を作り咬合平面とカンペル平面の平行をみるためだけに使用範囲が限られていた。そのため、有歯顎者(天然歯)では使えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−4200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
咬合平面板を有歯顎者(天然歯)にも使用するにあたって問題となるのは、異常な歯並びである。異常な歯並びとは、例えば前歯部の叢生に伴う上顎前突(上顎中切歯、下顎中切歯の水平距離であるオーバージェットが5mm以上大きい状態)、過蓋咬合(歯の噛み合わせが極端に深く、下の前歯部が見えにくい状態)、前歯部の歯列不正などの状態である。以下、これらの歯の異常状態を総称して「不正咬合」と呼ぶ。不正咬合が問題となるのは、咬合平面板を使用するとき、不正咬合の前歯部が邪魔をして、左右歯列の噛み合わせのバランスが取れないことが多いからである。
【0007】
本発明は上記課題を解決することを目的とする。そのために、咬合平面板の前歯部又は前歯部片顎臼歯部に貫通孔を開けて障害となる部分を切り取り、不正咬合の有歯顎者に対しても使用可能なものとした。なおかつ、咬合平面板の位置をずらすことにより無歯顎者にも使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、歯科医療において咬合平面を観察するために用いる咬合平面板であって、口腔外支持部と口腔内挿入部からなり、前記口腔内挿入部は、口腔外支持部の前方から患者方向に伸びており、前記口腔内挿入部は、不正咬合者の上顎歯の少なくとも一部を収容する長さと形状を備えた貫通孔を有することを特徴とする(請求項1)。
【0009】
好ましくは、前記貫通孔が、不正咬合者の上顎前歯部のうち、犬歯間の6本の少なくとも一部を収容する長さを有する(請求項2)。
【0010】
前記貫通孔は、不正咬合者の上顎前歯部のうち、第1小臼歯間の8本の少なくとも一部を収容する長さを有するものとしてもよい(請求項3)。
【0011】
さらに、前記貫通孔は左右非対称とすることができる(請求項4)。左右非対称の前記貫通孔の片側は第3大臼歯以後まで達しているものとすることができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の咬合平面板は不正咬合者の上顎前歯部の少なくとも一部を収容する長さと形状を備えた貫通孔を有する。そのため、そのような患者に対して歯科医師が咬合平面板を使用するとき、有歯顎者の前歯部により邪魔されることがなく、咬合平面と眼耳平面の狂いを観察することが出来るようになった。その結果、咬合平面の狂いによると思われる、顎関節症・不定愁訴などの治療にも幅広く応用可能となった。
【0013】
前記貫通孔を左右非対称としたときは、左右歯列の咬合面のどちらが正しい咬合平面か容易に決めることができるという特別な効果がある。
【0014】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の1実施例に係る咬合平面板を使用している状態の斜視図である。
図2】同咬合平面板の、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は図(c)における断面図である。
図3】不正咬合の人が同咬合平面板を使用している状態の断面図である。
図4】不正咬合の人が同咬合平面板を使用している状態の想像平面図である。
図5】本発明の第3実施例に係る同咬合平面板の、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は図(c)における断面図である。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、この咬合平面板1は咬合平面を観察するために、患者の口腔内に挿入して用いられる。
【0017】
図1及び図2に示すように、この咬合平面板1は透明なプラスチック平板であり、口腔外支持部2と口腔内挿入部3からなる。
【0018】
口腔外支持部2は、左突出部21と右突出部22及び前方連結部23からなる。左突出部21と右突出部22は患者方向に向かって末広がりとなっている。
【0019】
口腔内挿入部3は、口腔外支持部2の前方連結部23の中央から患者方向にハート型に伸びている。ハート型部分は、左右肩部31,32の膨らみと、この左右肩部によって形成される窪み部分33の下方に形成された湾曲貫通孔34を有する。図4に示すように、貫通孔34は患者の犬歯(糸切り歯)K−Kの間の6本の少なくとも一部分を収容する長さと湾曲形状を有する。実際の長さと幅は、患者の個人差を考慮に入れて、長さ45〜55mm、幅5〜12mm程度である。
【0020】
不正咬合者がこの咬合平面板1を使用したとき、図3に示すように、前歯部がこの貫通孔34に入り込み、咬合平面板1が不正咬合の前歯部により邪魔されることがないので、咬合平面を観察することができる。なお、通常の歯並びの人に対してこの咬合平面板を使用する場合は、貫通孔は関係なくなるので全く支障はない。
【実施例2】
【0021】
図示しないが、本発明の第2実施例として、貫通孔34は患者の第1小臼歯D−D間の前歯8本の先端部分を収容する長さと湾曲形状を有するものとすることができる。
【実施例3】
【0022】
図5は、本発明の第3実施例に係る咬合平面板1Aを示している。第1実施例と異なるのは、貫通孔34Aが左右非対称であり、片側(図5(c)では右側)の貫通孔34Aが、右肩部32Aに深く進入して第3大臼歯以後まで達していることである。その他の点は第1実施例と同様であるので、同じ符号の後に「A」を付してその説明を省略する。
【0023】
このように貫通孔34Aを左右非対称とすることにより、左右歯列の咬合面のどちらが正しい咬合平面か容易に決めることができる。貫通孔34Aを除けば、残りの部分は左右対称であって、裏返して使用することもできるため、左右歯列のいずれに不正があってもこの咬合平面板1Aは1枚で事足りる。
【符号の説明】
【0024】
1,1A 咬合平面板
2,2A 口腔外支持部
21,21A 左突出部
22,22A 右突出部
23,23A 前方連結部
3,3A 口腔内挿入部
31,32;31A,32A 左右肩部
33,33A 窪み部分
34,34A 湾曲貫通孔
D 第1小臼歯
K 犬歯
S 側切歯
C 中切歯
図1
図2
図3
図4
図5