特許第6355554号(P6355554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6355554設定データ記憶装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355554
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】設定データ記憶装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/62 20130101AFI20180702BHJP
   G06N 99/00 20100101ALI20180702BHJP
【FI】
   G06F21/62 354
   G06N99/00 153
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-264330(P2014-264330)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126390(P2016-126390A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】中村 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 龍
(72)【発明者】
【氏名】清本 晋作
(72)【発明者】
【氏名】三宅 優
【審査官】 圓道 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−141322(JP,A)
【文献】 特開平11−073323(JP,A)
【文献】 特開2002−082979(JP,A)
【文献】 特開2008−276669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0131872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
3/048− 3/0489
9/06
9/44 − 9/445
9/48 − 9/50
9/54 −11/00
11/36
12/14
13/00
15/18
21/00 −21/88
G06N 3/00 −99/00
G09C 1/00 − 5/00
H04K 1/00 − 3/00
H04L 9/00 − 9/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザのパーソナルデータに関する設定を記憶する設定データ記憶装置であって、
前記パーソナルデータを構成する要素の提供を許可するか否かを設定する複数の項目について、前記ユーザに対応付けた前記項目ごとの設定値を含む設定ファイルを記憶する設定ファイル記憶部と、
前記設定ファイルに基づいて、前記項目のうちの所定の個数の項目組み合わせである選択項目として選択されうる項目及び当該項目の既存の設定値と、前記選択項目として選択されうる項目を除いた残りの項目の既存の設定値とを学習した分類器を生成する分類器生成部であって、前記分類器が、前記選択項目の設定値から前記選択項目を除いた残りの項目のうちの一の項目の設定値を推測する、前記残りの項目ごとの分類器である、分類器生成部と、
前記選択項目として選択されうる項目の組み合わせの一つについて、前記設定ファイルに記憶された一のユーザに対応付けた前記選択項目として選択されうる項目の既存の設定値から当該選択項目として選択されうる項目を除いた残りの項目のうちの一の項目の設定値として前記分類器によって推測された値と前記設定ファイルにおける当該一のユーザに対応付けた当該一の項目の既存の設定値との誤差を算出する操作を、前記設定ファイルに記憶された全てのユーザについて実行し、前記誤差の全てのユーザについての総和を当該残りの項目の全ての項目についてそれぞれ算出し、当該残りの項目の全てについてそれぞれ算出した総和を、前記選択項目として選択されうる項目の組み合わせの一つについて総和した評価値を算出する評価値算出部と、
前記選択項目として選択されうる項目の組み合わせの全てについてそれぞれ算出された前記評価値のうちで最も評価が高いことを示す前記評価値に対応する項目の組み合わせを前記選択項目として決定するとともに、決定された選択項目の組み合わせに対応する残りの項目ごとの分類器を決定する推測モデル生成部と、
前記設定ファイルに記憶されていない新たなユーザの前記決定された選択項目の設定値を取得し、前記決定された分類器を用いて前記新たなユーザによって入力されていない前記残りの項目の設定値を推測する設定値推測部と、
を備える設定データ記憶装置。
【請求項2】
前記新たなユーザの前記残りの項目の設定値を推測するために、前記決定された選択項目の組み合わせを含む質問セットを作成する質問セット作成部をさらに備え、
前記設定値推測部は、前記質問セットに対し前記新たなユーザが設定値を入力することによって前記決定された選択項目の設定値を取得する請求項1に記載の設定データ記憶装置。
【請求項3】
請求項1に記載の設定データ記憶装置が実行する方法であって、
前記分類器生成部が、前記設定ファイルに基づいて、前記項目のうちの所定の個数の項目組み合わせである選択項目として選択されうる項目及び当該項目の既存の設定値と、前記選択項目として選択されうる項目を除いた残りの項目の既存の設定値とを学習した分類器を生成する分類器生成ステップであって、前記分類器が、前記選択項目の設定値から前記選択項目を除いた残りの項目のうちの一の項目の設定値を推測する、前記残りの項目ごとの分類器である、分類器生成ステップと、
前記評価値算出部が、前記選択項目として選択されうる項目の組み合わせの一つについて、前記設定ファイルに記憶された一のユーザに対応付けた前記選択項目として選択されうる項目の既存の設定値から当該選択項目として選択されうる項目を除いた残りの項目のうちの一の項目の設定値として前記分類器によって推測された値と前記設定ファイルにおける当該一のユーザに対応付けた当該一の項目の既存の設定値との誤差を算出する操作を、前記設定ファイルに記憶された全てのユーザについて実行し、前記誤差の全てのユーザについての総和を当該残りの項目の全ての項目についてそれぞれ算出し、当該残りの項目の全てについてそれぞれ算出した総和を、前記選択項目として選択されうる項目の組み合わせの一つについて総和した評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記推測モデル生成部が、前記選択項目として選択されうる項目の組み合わせの全てについてそれぞれ算出された前記評価値のうちで最も評価が高いことを示す前記評価値に対応する項目の組み合わせを前記選択項目として決定するとともに、決定された選択項目の組み合わせに対応する残りの項目ごとの分類器を決定する推測モデル生成ステップと、
前記設定値推測部が、前記設定ファイルに記憶されていない新たなユーザの前記決定された選択項目の設定値を取得し、前記決定された分類器を用いて前記新たなユーザによって入力されていない前記残りの項目の設定値を推測する設定値推測ステップと、
を備える方法。
【請求項4】
請求項1に記載の設定データ記憶装置に、請求項に記載の方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定データ記憶装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より有用なサービスを提供するために、ビッグデータを活用する取り組みが活発に行われている。特に、個人に関わるパーソナルデータの活用に際しては、個人のプライバシーに配慮する必要がある。例えば、OECD(Organisation for Economic Co−operation and Development)のガイドラインに従えば、収集されたパーソナルデータの利用目的は被収集者に明らかにされるべきであり、また、パーソナルデータ収集者は、収集したパーソナルデータを非収集者から同意を得ている利用目的以外の目的で利用してはならない。
【0003】
このようなパーソナルデータに関して、非特許文献1では、Webサービスに対して提供するパーソナルデータを制御する仕組みに関する規格であるP3P(Platform for Privacy Preference)が記載されている。非特許文献2では、P3Pに従って利用者がプリファレンスを設定することで、プリファレンスに違反するサービスを利用しようとした際に警告を発するようなエージェントシステムが提案されている。
【0004】
また、特許文献1では、パーソナルデータのアクセスポリシに従ってパーソナルデータの提供の可否を制御するシステムが開示されている。開示されたシステムにおけるアクセスポリシは、アクセスしようとするリソース、アプリケーション事業者、アクセス用途などの組み合わせに対する条件式として実現され、事前に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−178727号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】W3C,“The platform for privacy preferences 1.0(P3P1.0) specicati,”2002.
【非特許文献2】L.F.Cranor,et.Al.,“Use of a P3P user agent by early adapters”,In Proceedings of the 2002 ACM workshop on Privacy in the Electronic Society,WPES’02,pp.1−10,2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の技術では、パーソナルデータへのアクセスを制御したいユーザは、アクセスの条件を設定する必要がある。
しかしながら、利用されるパーソナルデータの項目と利用目的などとの組み合わせは、膨大な量になることが予想される。このような項目の利用についての可否の設定は、ユーザにとって負担が大きい作業であり、一つ一つ設定していくことは現実的ではない。
【0008】
そこで、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、設定の入力の負荷を軽減することができる装置が求められている。
【0009】
本発明は、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、設定の入力の負荷を軽減することができる設定データ記憶装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、以下のような解決手段を提供する。
(1) 複数のユーザのパーソナルデータに関する設定を記憶する設定データ記憶装置であって、前記パーソナルデータを構成する要素の提供を許可するか否かを設定する複数の項目について、当該項目ごとの設定値を含む設定ファイルを記憶する設定ファイル記憶部と、前記設定ファイルに基づいて、前記項目のうちの選択された所定の個数の項目を組み合わせた選択項目及び前記設定値と、前記選択項目を除いた残りの項目の前記設定値とを学習した分類器を生成する分類器生成部と、前記分類器の分類の精度を示す評価値を算出する評価値算出部と、前記選択項目を構成する前記所定の個数の項目の組み合わせを、前記評価値の比較により決定し、前記設定ファイルに記憶されていない新たなユーザの前記選択項目の前記設定値が入力された場合に、入力されていない前記残りの項目の前記設定値を推測する推測モデルを生成する推測モデル生成部と、前記新たなユーザの前記選択項目の前記設定値を取得し、前記推測モデルを用いて、前記残りの項目の前記設定値を推測する設定値推測部と、を備える設定データ記憶装置。
【0011】
(1)の設定データ記憶装置は、パーソナルデータを構成する項目ごとに対応付けられた、項目の利用が可能か否かを示す設定値を含む設定ファイルを記憶し、項目のうちの選択された所定の個数の項目を組み合わせた選択項目及び設定値と、選択項目を除いた残りの項目の設定値とを、設定ファイルに基づいて学習した分類器を生成する。次に、設定データ記憶装置は、分類器の精度を示す評価値を算出し、選択項目を構成する所定の個数の項目の組み合わせを、評価値の比較により決定し、設定ファイルに記憶されていない新たなユーザの選択項目の設定値が入力された場合に、入力されていない残りの項目の設定値を推測する推測モデルを生成する。そして、設定データ記憶装置は、新たなユーザの選択項目の設定値を取得し、推測モデルを用いて、残りの項目の設定値を推測する。
【0012】
すなわち、(1)の設定データ記憶装置は、設定値が全て入力されなくても、所定の個数の項目を組み合わせた選択項目の設定値から、入力されていない残りの項目の設定値を精度良く推測することができる。
したがって、(1)の設定データ記憶装置は、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、入力する項目数を減らしてユーザによる入力の負荷を軽減することができる。
【0013】
(2) 前記評価値算出部は、前記選択項目の前記設定値から、前記残りの項目のうちの一の項目の前記設定値として前記分類器によって分類された値と、前記設定ファイルにおける前記一の項目の既存の前記設定値との誤差の総和を、前記残りの項目の全てについて総和した評価値を算出し、前記推測モデル生成部は、前記選択項目を構成する組み合わせを替えて、前記所定の個数の項目からなる全ての組み合わせについて算出された前記評価値のうちで最も評価が高いことを示す前記評価値に対応する前記選択項目及び前記分類器を決定する(1)に記載の設定データ記憶装置。
【0014】
すなわち、(2)の設定データ記憶装置は、生成した分類器によって分類された値と、既存の設定値との誤差を評価して、最も評価の高い選択項目及び分類器を決定する。
したがって、(2)の設定データ記憶装置は、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、適切な選択項目を決定できる。
【0015】
(3) 前記ユーザの前記設定値を推測するために、前記推測モデルの前記選択項目を含む質問セットを作成する質問セット作成部をさらに備え、前記設定値推測部は、前記質問セットによって前記選択項目の前記設定値を取得する(1)又は(2)に記載の設定データ記憶装置。
【0016】
すなわち、(3)の設定データ記憶装置は、選択項目に基づいて質問セットを作成して選択項目の設定値を取得する。
したがって、(3)の設定データ記憶装置は、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、ユーザが容易に入力できるようにした質問セットによって、ユーザによる入力の負荷をさらに軽減することができる。
【0017】
(4) (1)に記載の設定データ記憶装置が実行する方法であって、前記分類器生成部が、前記設定ファイルに基づいて、前記項目のうちの選択された所定の個数の項目を組み合わせた選択項目及び前記設定値と、前記選択項目を除いた残りの項目の前記設定値とを学習した分類器を生成する分類器生成ステップと、前記評価値算出部が、前記分類器の分類の精度を示す評価値を算出する評価値算出ステップと、前記推測モデル生成部が、前記選択項目を構成する前記所定の個数の項目の組み合わせを、前記評価値の比較により決定し、前記設定ファイルに記憶されていない新たなユーザの前記選択項目の前記設定値が入力された場合に、入力されていない前記残りの項目の前記設定値を推測する推測モデルを生成する推測モデル生成ステップと、前記設定値推測部が、前記新たなユーザの前記選択項目の前記設定値を取得し、前記推測モデルを用いて、前記残りの項目の前記設定値を推測する設定値推測ステップと、を備える方法。
【0018】
(4)の方法は、(1)と同様に、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、ユーザによる入力の負荷を軽減することができる。
【0019】
(5) コンピュータに、(4)に記載の方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【0020】
(5)のプログラムは、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、ユーザによる入力の負荷を軽減させるように、コンピュータに機能させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パーソナルデータの利用が可能か否かの設定において、設定の入力の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置の設定ファイルの例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置による評価モデルの生成を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置の推測モデル生成処理の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置の設定値推測処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置10の構成を示すブロック図である。
設定データ記憶装置10は、設定ファイル311を記憶する設定ファイル記憶部31と、分類器生成部11と、評価値算出部12と、推測モデル生成部13と、質問セット作成部14と、設定値推測部15とを備える。
設定データ記憶装置10は、ユーザの端末50と通信可能に接続されたサーバとし、各部について詳述する。
【0024】
設定ファイル記憶部31は、パーソナルデータを構成する要素の提供を許可するか否かを設定する複数の項目について、当該項目ごとの設定値を含む設定ファイル311を記憶する。具体的には、設定ファイル311は、ユーザの識別情報と、項目の設定値とを対応付けている(後述する図2参照)。項目の設定値は、例えば、パーソナルデータの要素の利用が可能であることを示す場合に「Y」(数値1)、要素の利用が可能でないことを示す場合に「N」(数値0)である。
【0025】
分類器生成部11は、設定ファイル311に基づいて、項目のうちの選択された所定の個数の項目を組み合わせた選択項目及び選択項目の設定値と、選択項目を除いた残りの項目の設定値とを学習した分類器を生成する。具体的には、設定ファイル311の項目のうちから所定の個数(例えば、n個)の項目が選択され、分類器生成部11は、選択された項目である選択項目の設定値と、選択項目を除いた残りの項目の設定値とを、分類器に学習させ、残りの項目ごとのそれぞれの分類器を生成する。
分類器は、例えば、サポートベクターマシンなどでよい。また、分類器は、例えば、懸念度を10段階で表現するようなn値分類器でもよい。生成された分類器は、学習によって、入力値を2クラスに分類するためのパラメータがそれぞれ異なる。
所定の個数は、設定値の入力の際にユーザによる入力の負荷とならない個数として、ユーザ又は管理者などによって選択されるとしてよい。
【0026】
評価値算出部12は、分類器の精度を示す評価値を算出する。具体的には、評価値算出部12は、設定ファイル311の選択項目の既存の設定値から分類器によって分類された値であって、選択項目を除いた残りの項目のうちの一の項目の設定値として分類器によって分類された値と、設定ファイル311における一の項目の既存の設定値との誤差の総和を、残りの項目の全てについて総和した評価値を算出する。
【0027】
推測モデル生成部13は、選択項目を構成する所定の個数の項目の組み合わせを、評価値の比較により決定し、設定ファイル311に記憶されていない新たなユーザの選択項目の設定値が入力された場合に、入力されていない残りの項目の設定値を推測する推測モデルを生成する。具体的には、推測モデル生成部13は、選択項目を構成する組み合わせを替えて、所定の個数の項目からなる全ての組み合わせについて算出された評価値のうちで最も評価が高いことを示す評価値(すなわち、誤差の最小値)に対応する選択項目及び分類器を決定する。
【0028】
質問セット作成部14は、ユーザの設定値を推測するために、推測モデルの選択項目を含む質問セットを作成する。具体的には、質問セット作成部14は、推測モデル生成部によって生成された推測モデルの選択項目(例えば、「現在の位置情報をナビゲーションサービスに提供する」、「購買情報を提供する」などという項目)に基づいて、設定値を取得するためにユーザの入力を促すための、「現在の位置情報をナビゲーションサービスに提供してもよいですか?」、「購買情報を提供してもよいですか?」などを作成する。質問セット作成部14は、所定の個数の選択項目(例えば、n個の選択項目)に基づいて所定の個数(例えば、n個)の質問を作成する。
【0029】
設定値推測部15は、新たなユーザの選択項目の設定値を取得し、推測モデルを用いて、選択項目を除いた残りの項目の設定値を推測する。設定値推測部15は、質問セット作成部14によって作成された質問セットによって、新たなユーザの選択項目の設定値を取得する。具体的には、設定値推測部15は、作成された質問セットをユーザの端末50に送信し、送信された質問に対しユーザによって入力された設定値をユーザの端末50から受信することによって、新たなユーザの選択項目の設定値を取得する。次に、設定値推測部15は、受信した選択項目の設定値に基づいて、推測モデルを用いて、選択項目を除いた残りの項目の設定値を推測する。
【0030】
図2及び図3により、上述の推測モデルの生成方法についてさらに説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置10の設定ファイル311の例を示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置10による評価モデルの生成を説明するための図である。
図2のように、設定ファイル311は、ユーザのIDと、項目に対応する設定値(Y又はN)とを対応付けている。設定ファイル311の項目は、項目1、項目2、・・・、項目kとし、その項目に対応する設定値をQ、Q、・・・、Qとする。選択項目の個数である所定の個数は、n個とする。例えば、選択項目のうちの一の組み合わせの設定値は、選択項目の設定値Qa1〜Qanと表され、選択項目を除いた残りの項目の設定値は、残りの項目の設定値Ra1〜Rarと表される(r=k−n)。
【0031】
分類器生成部11は、選択項目のうちの一の組み合わせの設定値Qa1〜Qanのn次元のデータと、残りの項目の設定値Ra1〜Rarのうちの一の項目の設定値Ra1とを、分類器に学習させる。このようにして、一の組み合わせの設定値Qa1〜Qanのn次元のデータから、一の項目の設定値Ra1として分類する分類器a1が生成される。この分類器a1の精度は、設定ファイル311のユーザごとの設定値Qa1〜Qanの既存の値から分類器a1により分類された値と、設定ファイル311のユーザごとの設定値Ra1の既存の値との誤差の、全てのユーザについての総和である誤差da1として表される。
【0032】
同様にして、分類器生成部11は、全ての残りの項目の設定値Ra2〜Rarについて、分類する分類器a2〜分類器arをそれぞれ生成する。これらの分類器の精度は、誤差da2〜darとして表される。
【0033】
次に、評価値算出部12は、それぞれの分類器の誤差da1〜darの総和Hを算出する。この総和は、選択項目のうちの一の組み合わせの設定値Qa1〜Qanから分類器a1〜分類器arによって残りの項目の設定値Ra1〜Rarを推測する精度を示す評価値である。
【0034】
次に、分類器生成部11及び評価値算出部12は、選択項目として選択されうるn個の項目の全ての組み合わせについて、選択項目を除いた残りの項目ごとにそれぞれの分類器を生成し、評価値H〜Hを算出する。
【0035】
次に、推測モデル生成部13は、評価値H〜Hのうち分類器による分類の精度が最も良い(すなわち、誤差が最小である)ことを示す評価値に基づいて、選択項目の組み合わせと、残りの項目ごとの分類器とを決定し、推測モデルとする。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置10の推測モデル生成処理の例を示すフローチャートである。設定データ記憶装置10は、コンピュータ及びその周辺装置が備えるハードウェア並びに該ハードウェアを制御するソフトウェアによって構成される。以下の処理は、制御部(例えば、CPU)が、所定のソフトウェアに従い実行する処理である。推測モデル生成処理は、プログラムを管理するOSの下で、定期的に、又はユーザにより要求された場合に実行される。
【0037】
ステップS101において、CPU(推測モデル生成部13)は、選択項目の所定の個数nを取得する。より具体的には、CPUは、ユーザの端末50から入力(例えば、コンピュータ用キーボードによる入力や、所定の個数nを選択させる選択画面からマウスなどのポインティングデバイスによる選択などによる入力)された所定の個数nを取得する。なお、所定の個数nは、例えば、管理者によってサーバに入力されてもよく、固定値でもよく、項目数の一定の割合から算出されてもよい。
【0038】
ステップS102において、CPU(推測モデル生成部13)は、選択項目として、所定の個数nからなる一の組み合わせを選択する。
【0039】
ステップS103において、CPU(分類器生成部11)は、選択項目の設定値と、選択項目を除いた残りの項目のうちの一の項目の設定値とを、設定ファイル311に基づいて分類器に学習させる。より具体的には、CPUは、設定ファイル311から、ユーザIDごとに記憶されている、選択項目の設定値と、残りの項目のうちの一の項目の設定値とを、全てのユーザIDについて分類器に学習させる。
【0040】
ステップS104において、CPU(評価値算出部12)は、ステップS103において学習させた分類器により分類された値と、設定ファイル311の既存の設定値との誤差を算出する。より具体的には、CPUは、一の項目について学習させた分類器に、選択項目の既存の設定値を入力し、出力された分類結果と、一の項目の既存の設定値との誤差を、全てのユーザIDに対して求め、求めた誤差の総和を一の項目の誤差として算出する。
【0041】
ステップS105において、CPU(推測モデル生成部13)は、残りの項目の全てについて学習したか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは、処理をステップS106に移し、この判断がNOの場合、CPUは、処理をステップS103に移す。
【0042】
ステップS106において、CPU(評価値算出部12)は、評価値を算出する。より具体的には、CPUは、ステップS104において求めた項目ごとの誤差の総和を、選択項目のうちの一の組み合わせの評価値として算出する。
【0043】
ステップS107において、CPU(推測モデル生成部13)は、選択項目の全ての組み合わせについて終了か否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは、処理をステップS108に移し、この判断がNOの場合、CPUは、処理をステップS102に移す。
【0044】
ステップS108において、CPU(推測モデル生成部13)は、選択項目を決定する。より具体的には、CPUは、選択項目の組み合わせごとにステップS106において算出した評価値のうち、分類器による分類の精度が最も良い(すなわち、誤差が最小である)ことを示す評価値に対応する選択項目の組み合わせ及び分類器を、設定値を推測する推測モデルの選択項目及び分類器として決定する。その後、CPUは、推測モデル生成処理を終了する。
【0045】
図5は、本発明の一実施形態に係る設定データ記憶装置10の設定値推測処理の例を示すフローチャートである。質問処理は、プログラムを管理するOSの下で、例えば、ユーザにより要求された場合に実行される。
【0046】
ステップS201において、CPU(質問セット作成部14)は、推測モデルの選択項目に基づいて質問セットを作成する。より具体的には、CPUは、推測モデルの選択項目について設定値を取得するために、ユーザの入力を促すための質問セットを作成する。質問は、選択項目を構成する項目の個数(例えば、n個)だけ作成される。
【0047】
ステップS202において、CPU(設定値推測部15)は、ステップS201において作成した質問セットに対する設定値を取得する。具体的には、CPUは、質問セットをユーザの端末50に送信し、ユーザによって入力された設定値と共にユーザの識別情報を、ユーザの端末50から受信する。
【0048】
ステップS203において、CPU(設定値推測部15)は、選択項目と、ステップS202において取得した設定値とから、推測モデルを用いて、選択項目を除いた残りの項目の設定値を推測する。より具体的には、CPUは、選択項目の設定値(n次元データ)を、推測モデルに対し入力し、推測モデルからの出力を取得することにより、残りの項目ごとの設定値を推測する。
【0049】
ステップS204において、CPU(設定値推測部15)は、推測した設定値を設定ファイル311に記憶させる。より具体的には、CPUは、設定ファイル記憶部31に記憶されている設定ファイル311に、ステップS202において取得したユーザの識別情報に対応付けて、ステップS202において取得した選択項目の設定値と、ステップS203において推測した残りの項目の設定値とを記憶させる。その後、CPUは、設定値推測処理を終了する。
【0050】
本実施形態によれば、設定データ記憶装置10は、選択項目を構成する所定の個数の項目の組み合わせを、評価値の比較により決定し、設定ファイルに記憶されていない新たなユーザの選択項目の設定値が入力された場合に、入力されていない残りの項目の設定値を推測する推測モデルを生成する。推測モデルの生成において、設定データ記憶装置10は、選択項目を除いた残りの項目ごとに生成した分類器によって分類された値と、既存の設定値との誤差を評価して、最も評価の高い選択項目及び分類器を決定する。そして、設定データ記憶装置10は、推測モデルを用いて、設定値が全て入力されなくても、所定の個数の項目を組み合わせた選択項目の設定値から、入力されていない残りの項目の設定値を精度良く推測する。
さらに、設定データ記憶装置10は、ユーザの設定値を推測するために、推測モデルの選択項目を含む質問セットを作成し、質問セットによって、新たなユーザの選択項目の設定値を取得し、推測モデルを用いて、残りの項目の設定値を推測する。
このように、設定データ記憶装置10は、詳細なプライバシー設定を精度良く予測して、少数の質問によって自動的に設定し、ユーザによる入力の負荷を軽減する。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。
例えば、上述した実施形態では、設定データ記憶装置10は、新たなユーザによる選択項目の設定値の入力に対して、残りの項目の入力されていない設定値を設定するとしたが、既存の設定ファイル311におけるユーザの選択項目の入力に対して、残りの項目の既に入力されている設定値を、再設定するとしてもよい。設定データ記憶装置10は、選択項目の既存の設定値の変更に伴って、残りの項目の設定値の変更を行うことができる。
また、上述した実施形態では、設定データ記憶装置10は、推測モデルを生成するごとに分類器を学習させるとしたが、設定ファイル311の更新により学習が必要な分類器のみを学習させるとしてもよい。設定データ記憶装置10は、効率よく、推測モデルを更新することができる。
【0052】
また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0053】
設定データ記憶装置10による一連の処理は、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータなどにインストールされる。また、当該プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、CD−ROMのようなリムーバブルメディアなど)に記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 設定データ記憶装置
11 分類器生成部
12 評価値算出部
13 推測モデル生成部
14 質問セット作成部
15 設定値推測部
31 設定ファイル記憶部
311 設定ファイル
50 ユーザの端末
図1
図2
図3
図4
図5