【文献】
T.Hesjedal,etc.,Continuous roll-to-roll growth of graphene films by chemical vapor deposition,Applied Physics Letters,2011年 3月,98,133106
【文献】
Ivan Vlassiouk et al.,Role of Hydrogen in Chemical Vapor Deposition Growth of Large SingleCrystal Graphene,ACSNano,2011年,vol.5,No.7,pp6069-6076
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炭化水素ガスが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】単層または多層グラフェンの多結晶ならびに単結晶の制御された合成のための化学蒸着チャンバの概略図である。
【
図2】赤外線ランプ、プラズマアークランプ加熱器または誘導加熱器を含む化学蒸着チャンバの概略図である。
【
図3】ポリマー/誘電体基材上に直接、固体基材分解を用いて成長された連続したグラフェンシートを示す概略図である。
【
図4】水素の分圧に応じたグレイン形成を示すグラフおよび4つのSEM画像である。
【
図5】本発明の方法にしたがって形成され、SiO
2上に転写された六角形のグレインのラマンマップを含む。
【
図6】水素の2つの代表的な分圧におけるグラフェン成長を示すグラフおよび4つのSEM画像を含む。
【
図7】1気圧のアルゴン中で、19Torr(2.5331×10
3Pa)のP
H2における水素中で銅基材をアニールした後のグラフェン成長を示す3つのSEM画像を含む。
【
図8】水素の分圧に応じたグレイン形成を示すグラフおよび2つのSEM画像を含む。
【
図9】グラフェン合成に対するメタン濃度の影響を示す3つのSEM画像を含む。
【
図10】多層グラフェン合成を示す6つのSEM画像および2つの線図を含む。
【
図11A】グラフェングレインの配向が、下層の銅基材によって大きく制御されないことを示すSEM画像を含む。
【
図11B】グラフェングレインの配向が、下層の銅基材によって大きく制御されないことを示すSEM画像を含む。
【
図12】銅ドメイン上のグラフェングレイン成長を示す2つのSEM画像を含む。
【
図13A】銅箔におけるグラフェングレインの核形成部位を示すSEM画像を含む。
【
図13B】銅箔におけるグラフェングレインの核形成部位を示すSEM画像を含む。
【
図14】高純度および低純度の銅箔における異なるグラフェングレイン密度を示す2つのSEM画像を含む。
【
図15】キャリアガスとしてヘリウムを用いた六角形のグラフェングレインを示すSEM画像を含む。
【
図16】2.1Torr(2.7997×10
2Pa)の水素分圧で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【
図17】2.1Torr(2.7997×10
2Pa)の水素分圧で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【
図18】6.2Torr(8.266×10
2Pa)の水素分圧で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【
図19】6.2Torr(8.266×10
2Pa)の水素分圧で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【
図20】19Torr(2.5331×10
3Pa)の水素分圧で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【
図21】19Torr(2.5331×10
3Pa)の水素分圧で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【
図22】SiO
2/Siウエハ上に転写されたグラフェンのラマンスペクトルを示すグラフである。
【
図23】80ppmのCH
4および19Torr(2.5331×10
3Pa)の水素分圧の下で、30分間成長された多層グラフェングレインの2つのSEM画像を含む。
【
図24】ポリマー/誘電体基材上に直接、固体基材分解を用いて成長された連続したグラフェンシートを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.概説
本明細書において想定され、開示される本発明は、化学蒸着(CVD)による単層および多層グラフェンの多結晶ならびに単結晶の製造のためのシステムおよび方法を含む。後述されるように、このシステムおよび方法は、触媒基材を、加熱された化学蒸着チャンバに通す工程と、任意に常圧で、この基材を、メタンと水素との反応ガス混合物に曝露して、所望のサイズ、形状および密度を有する連続した単層および多層グラフェングレインを得る工程とを含む。
【0013】
水素は、活性な表面結合炭素種の形成の際の共触媒であり、弱い炭素−炭素結合をエッチングにより除去することによって、グラフェングレインの形状および寸法を制御する。水素および揮発性炭化水素(例えば、メタン)の分圧を制御することによって、グラフェンは、拡張性のあるプロセスで合成可能であり、a)太陽光発電、窓、LCDディスプレイ、OLEDディスプレイ、タッチスクリーン、および少なくとも1つの透明電極を必要とする任意の他のアプリケーションのための透明電極;b)トランジスタ、光検出器、および高い電荷担体移動度を必要とする任意のアプリケーションを含む電子素子;ならびにc)複合材料、分離、精製、および/または脱塩用の膜、医療機器、バイオテクノロジー、および熱管理を含む様々な他のアプリケーションの製造を含む、様々なアプリケーションに所望される核形成密度およびドメインサイズを有し得る。
【0014】
II.グラフェン合成
ここで、
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る化学蒸着チャンバの概略図が示され、全体的に表されている(10)。化学蒸着チャンバ10は、触媒基材16の連続した流入のための入口14と、内部蒸着領域18と、触媒基材16および新たに形成されたグラフェン層の連続した流出のための出口20とを有する石英ハウジング12を含む。(例えば、抵抗性、電磁および/または誘導)外部加熱体22、24は、石英ハウジング12内で、触媒基材16を所定の温度まで加熱する。基材16が銅箔を含む場合、加熱体22、24は、銅箔を、約800℃〜約1080℃、任意に約1000℃まで加熱することができる。
【0015】
上述したように、化学蒸着チャンバ10は、触媒基材16におけるグラフェンの制御された形成のための蒸着領域18を含む。蒸着領域18は、本実施形態において触媒基材16の幅にわたって横方向に延在しており、触媒基材16の移動方向に対して横断方向に配向されている。他の実施形態において、蒸着領域18は、触媒基材16の幅より狭く、任意に、触媒基材16の部分領域に合わせられている。蒸着領域18内で、反応ガス混合物が、触媒基材16の上向きの面と相互作用する。反応ガス混合物は、例えばメタンを含む炭化水素前駆体、ならびに所望の分圧の水素、および緩衝ガスを含む。メタンガスは、約30ppmの濃度で存在することができ、約20mTorr(2.6664Pa)〜約10Torr(1.3332×10
3Pa)、さらに、任意に約23mTorr(3.0664Pa)〜約100mTorr(1.3332×10Pa)の分圧を有する。他の炭化水素としては、例えば、エタン、プロパンおよびブタンが挙げられる。水素ガスは、約0Torr(0Pa)〜約25Torr(3.333×10
3Pa)、さらに、任意に約10Torr(1.3332×10
3Pa)〜約25Torr(3.333×10
3Pa)、さらになお、任意に約12Torr(1.5998×10
3Pa)〜約20Torr(2.6664×10
3Pa)、さらになお、任意に約19Torr(2.5331×10
3Pa)の分圧を有し得る。P
H2/P
CH4>400の分圧比を有する水素が、グレインの明確な六角形と、水素によるグラフェンのエッチングに起因する粒径の飽和とをもたらし得る。緩衝ガスは、化学蒸着チャンバ10内の常圧を維持するために、アルゴンまたは他の希ガス(例えば、ヘリウム)を含み得る。
【0016】
化学蒸着チャンバ10は、非蒸着領域26をさらに含む。対向する内部バッフル28、30が、非蒸着領域26を、チャンバ10の残りの部分と隔てる。対向するバッフル28、30は、端壁32から延在し、蒸着領域18において、ノズル開口部34で終端する。水素ガス(および任意選択の緩衝ガス)が、端壁32の開口部を通って非蒸着領域26中に供給され、ノズル開口部34を通って流出する。これに対応して、メタンガス(および任意選択の緩衝ガス)が、端壁32の開口部を通って蒸着チャンバ10中のバッフルの外側に供給される。メタンガスは、蒸着領域18とほぼ
同一の広がりを有するノズル開口部34で水素ガスと混合される。
【0017】
化学蒸着チャンバ10を用いたグラフェンの合成は、概して、連続した銅基材16を、化学蒸着チャンバ10に通す工程と、銅基材16を水素ガス中でアニールする工程と、アニールされた銅基材16を、ほぼ常圧で、蒸着領域18中で反応ガス混合物と反応させる工程と、連続した銅基材16および新たに形成されたグラフェン層を、化学蒸着チャンバ10から取り出す工程とを含む。銅への炭素の溶解性が低いため、グラフェン成長は、触媒16の表面に制限される。新たに形成されたグラフェンは、1原子の厚さの層、または互いに積層された複数の1原子の厚さの層を含む複数原子の厚さの層を含むことができ、蒸着領域の外側でのグラフェン成長は実質的に起こらない。
【0018】
上述したように、外部熱源が、化学蒸着チャンバ10内で銅基材をアニールする。
図1に示されるように、熱源は、化学蒸着チャンバ10の幅にわたって互いに間隔を空けた抵抗体22、24を含み得る。
図2に示されるように、他の実施形態において、1つ以上の赤外線ランプまたはプラズマアークランプ36が、化学蒸着チャンバ10の上方または対向する側に位置決めされる。赤外線ランプまたはプラズマアークランプの使用は、例えばポリマーを含む誘電体基材上で、比較的速いグラフェン成長を促進することができる。赤外線ランプまたはプラズマアークランプを用いて、基材の局部的な加熱が、非常に短い期間で行われ、それによって、処理時間が短縮され得る。誘導加熱が、赤外線ランプまたはプラズマアークランプの代わりに使用され得る。
【0019】
図3にも示されるように、グラフェン成長は、ポリマー/誘電体基材上に直接、固体基材分解によって行うことができ、これにより、銅触媒から対象の基材への湿式転写工程の必要がなくなる。また、例として、グラフェンは、金属成長基材上で合成され、次に、
図24に示されるように、ポリマー/誘電体に転写され得る。この実施形態において、ポリマーフィルムまたは誘電体フィルムは、連続プロセスまたはバッチプロセスにおいてグラフェン層に適用され、金属成長基材と、グラフェン層と、ポリマーフィルムまたは誘電体フィルムとを含む3層デバイスが得られる。その後、金属成長基材は、取り外され、グラフェン層およびポリマー/誘電体フィルムのみを含むグラフェンデバイスが得られる。
【0020】
以下のパートIIIに記載されるように、上記の方法に係るグラフェン成長は、水素に大きく依存することが示された。水素は、単層を成長させる表面結合炭素の活性剤として、ならびに得られるグラフェンドメインのサイズおよびモルホロジーを制御するエッチング剤として働く。結果として、成長速度は、水素分圧に応じた最高値を有する。これらのドメインのモルホロジーおよびサイズは、その圧力とともに変化する。非常に低い分圧では、グラフェン成長は観察されなかった。中間圧力では、ほぼ最高の成長速度で、形状は不規則であり、ほとんどが不規則なエッジを有する六角ドメイン(6-fold domain)の傾向を有するが、60度のエッジを有するものも認められた。ほぼ正六角形が、高い水素圧(30ppmのCH
4に対し、10Torr(1.3332×10
3Pa)超)で観察されたが、それらの成長は、水素圧に応じて、あるサイズで停止する。
【0021】
III.実験データ
図4〜10を参照して後述される、水素分圧に応じたグレイン成長を例示するために、本発明の実施形態に従ってグラフェンを合成した。
【0022】
図4は、10μmのスケールバー(上側の2つの画像)および3μmのスケールバー(下側の2つの画像)とともに、水素の分圧に応じて、1気圧でアルゴン混合物中の30ppmのメタンを用いた、銅箔において1000℃で30分間成長されたグラフェングレインの平均サイズを示すグラフおよび4つのSEM画像を含む。4Torr(5.3329×10
2Pa)および6Torr(7.9993×10
2Pa)のより低い水素圧で成長されたサンプルは、典型的に、グレインの中心のより小さい領域の第2の層(および多くの場合、第3の層)を有する、比較的不規則な形状のグレインを示す。
図4のグラフに示されるように、約10Torr(1.3332×10
3Pa)〜約20Torr(2.6664×10
3Pa)の水素分圧で、六角形のグレインが示された。例えば、11Torr(1.4665×10
3Pa)および19Torr(2.5331×10
3Pa)のより高い水素圧のサンプルは、十分に明確な120°角で非常に規則的な六角形を示した。グレインは、11Torr(1.4665×10
3Pa)のP
H2の場合は約10μmおよび19Torr(2.5331×10
3Pa)のP
H2の場合は約3μmの平均粒径を示した。
【0023】
図5は、上記の方法にしたがって形成され、SiO
2上に転写された六角形のグレインのラマンマップを、5μmのスケールバーとともに含む。ラマンマップは、六角形のグレイン全体にわたっておよびエッジでDバンドの非常に小さい強度を示し、ジグザグ型の端を示す。アームチェア型のエッジは、前者のより低い対称性に起因するジグザグ型のエッジより明らかに高いDバンド強度を有する。低い水素圧で成長されたグレインが、場合により、六角形の対称性を有する極大部分を示したとしても、それらのエッジは、あまり明確ではなく、ジグザグ型の端とアームチェア型の端とが入り混じったものを示す。それにもかかわらず、不規則な形状のグレイン内のグラフェンの品質は、それらが低いDバンド強度も示すため、高いままである。
【0024】
図6は、11Torr(1.4665×10
3Pa)および19Torr(2.5331×10
3Pa)という、水素の2つの代表的な分圧におけるグラフェン成長を示すグラフおよび4つのSEM画像を含む。グラフは、3μmのスケールバーとともに、1気圧でアルゴン混合物中の30ppmのメタンを用いて銅箔上に1000℃で成長させた時の、成長時間を関数としたグラフェングレインの平均サイズを示す。30分間、90分間および240分間の成長時間が例示されている。
図4中のほぼ最高成長速度に対応する11Torr(1.4665×10
3Pa)という低い分圧は、これらのサンプルのグラフェンによる高い表面被覆率のため、より少ないデータ点およびより大きいエラーバーを有し;グレイン間の分離が、最大粒径を制限する。19Torr(2.5331×10
3Pa)という高い分圧は、飽和挙動を示し、その場合、六角形のグラフェングレインが、約12μm(エッジ間)を超えて成長を停止した。
【0025】
異なる水素圧で成長されたグラフェンは、水素がグラフェン合成において果たす複雑な役割を示す。反応混合物中に水素ガスが存在しない場合、メタンが、銅表面に化学吸着して、活性炭素種、すなわち、(CH
3)
s、(CH)
sまたはC
sを形成する必要があり、これらの活性炭素種は、その後、反応して、グラフェンを形成する。実験およびDFT計算によって示されるように、このような脱水素反応は、銅基材においてさえ、熱力学的に好ましくない。例えば、以下に反応(1)として示される、化学吸着した(CH
3)
s基の形成を伴うメタン脱水素の第1の工程は、反応剤より約1eV高い、1.6eV(1000℃で約16kT)の、生成物による活性化障壁を乗り越える必要がある。低いメタン濃度におけるこの吸熱反応は、水素などの追加の触媒なしで、グラフェン成長を抑制する律速段階となるはずである。あるいは、(CH
3)
s形成の好ましくない熱力学が、メタンの過剰な供給によって弱められ、それにより、水素なしでのグラフェン形成が可能になり得るが、その経路では(in that rout)、第2の層の成長がないことが、問題になるようである。炭素を活性化する際の水素の触媒的な役割が、以下の反応(1)および(4)によって示される。水素分子は、銅においてより解離しやすく、活性な水素原子を形成する(1)。これらの水素原子は、物理吸着したメタンの活性化を促進することができ、これは、反応(4)によって表され、表面結合(CH
3)
s基の形成をもたらす。その後の脱水素工程は、より活性な表面結合種(CH
2)
sおよび(CH)
sの形成をもたらし得る。
Cu+H
2⇔2H
s (1)
Cu+CH
4→(CH
3)
s+H
s−低速 (2)
Cu+CH
4⇔(CH
4)
s (3)
(CH
4)
s+H
s⇔(CH
3)
s+H
2 (4)
(CH
3)
s+グラフェン⇔(グラフェン+C)+H
2 (5)
H
s+グラフェン⇔(グラフェン−C)+(CH
x)
s (6)
【0026】
活性炭素の核形成は、銅箔、ならびに例えばRuを含む他の金属において起こり得る。核形成は、金属箔上の溝および表面汚染などの凹凸において起こる。グラフェングレインの密度は、高純度の銅より低純度の銅においてより高くなり得る。汚染部位の近傍のグラフェングレインの密度および全被覆率が、より清浄な領域より高いため、小さい活性炭素種の脱離/エッチングが、グラフェン成長プロセス全体における重要な役割を果たし得る。より小さいグラフェングレインは、周長対面積比がより高いため、エッジのエッチングに対してより脆弱であり、グラフェングレインのサイズが、高い水素分圧で飽和するため、水素は、メタンの脱水素による炭素活性化のための触媒として働くだけでなく、反応(6)に示されるように、グラフェンのサイズの制御にも関与する可能性が高い。高い水素圧における最終的な粒径は、グラフェン成長とエッチングとの間の平衡に対応する。高い水素条件下におけるグラフェンの六角形は、ラマンマッピングが示すように、ジグザグ型の1つのみのタイプのグレイン端が好ましいことを示唆している。
【0027】
図7は、1μmのスケールバーとともに、1気圧のアルゴン中で、P
H2が19Torr(2.5331×10
3Pa)の水素中で銅基材をアニールした後のグラフェン成長を示すSEM画像を含む。画像Aは、P
H2が6Torr(7.9993×10
2Pa)で成長された単一のグラフェングレインを示す。画像Bは、蒸着の直後に30分間アニールされた単一のグラフェングレインを示し、これは、エッチングされたエッジにおける120°の角度の外観を示している。画像Cは、サンプルを周囲雰囲気に曝した後のアニールにより、塵粒子(白点)が堆積され得ることを示し、この塵粒子は、次に、グラフェンを中でエッチングするための触媒中心として働く。
【0028】
水素のエッチング効果は、成長中だけでなく、蒸着後の冷却中にも継続し得る。エッチングは、例えば1000℃を含む少なくとも850℃で、銅上のグラフェンに対して著しく起こる。低い水素圧で成長されたグラフェンは、不規則な形状のグレインを有するが、それらを19Torr(2.5331×10
3Pa)のH
2で30分間アニールすることで、
図7の画像Bに示されるように、グレインの大部分ではっきりと識別できる120°のエッジを形成する。サンプルが取られた後にアニールを行う場合、表面に制御不可能に堆積されたいくらかの塵粒子が、グラフェンエッチングの活性化中心になる。
図7の画像Cは、SEM中の白点として現れているこれらの粒子の周りのエッチングが、六角形の形状を有するグラフェン中に孔を形成することを示す。さらに、これらの孔の全ては、外縁に平行なエッジを有する。
【0029】
図8は、10μmのスケールバーとともに、水素の分圧に応じたグレイン形成を示すグラフおよび2つのSEM画像を含む。1mTorr(1.3332×10
−1Pa)のメタンと、200Torr(2.6664×10
4Pa)および350Torr(4.6663×10
4Pa)という水素の異なる分圧とを用いて、銅箔上に1000℃で、低圧化学蒸着チャンバ中でグラフェングレインを30分間合成した。低圧化学蒸着条件下では、緩衝ガスが存在しない場合、APCVD(周囲圧力CVD)の場合の23mTorr(3.0664Pa)(30ppm)およびLPCVD(低圧CVD)の場合の1mTorr(1.3332×10
−1Pa)という1桁を超える実際の圧力の差にもかかわらず、P
H2/P
CH4≒200〜300というガスの分圧の非常に類似した比率において最高成長速度が観察される。
【0030】
図9は、10μmのスケールバーとともに、グレイン成長に対するメタン濃度の影響を示す3つのSEM画像を含む。画像Aは、30ppmという比較的低いメタン濃度で、8時間成長された連続した単層を含む。画像Bは、150ppmという高いメタン濃度で、やはり30分間成長された第2の層を含む。画像Cは、合計で2.5時間(30ppmで90分間、45ppmで15分間、60ppmで15分間、120ppmで15分間および150ppmで15分間)にわたって30ppmから150ppmまでのメタン濃度の段階的増加を含み、それにより、二層をほとんど有しない主に単層のグレインが生成される。これらの例では、水素分圧は、19Torr(2.5331×10
3Pa)に保たれた。
図4において、個々のグラフェングレインのサイズが高い水素圧で飽和しても、
図9の画像Aに示されるように、グレインを結合し、表面全体を覆うのに十分な程それらの密度は最終的に増加する。この全被覆率は、比較的長い成長時間で得られる。成長速度は、メタン濃度を増加させることによって加速することができ、これにより、
図9の画像Bに示されるように、150ppmのメタンの場合、第2の層(およびさらに多くの多層)の成長も促進することができる。
【0031】
図10は、3μmのスケールバーとともに、多層グラフェンの成長を示す6つのSEM画像を含む。多層グラフェンを、60ppmのメタンおよび19Torr(2.5331×10
3Pa)の水素分圧で30分間成長させた。
図9の画像Bに示されるように、高い濃度における不規則なグレインと対照的に、全ての層が六角形の形状を有することが示される。第2の層は、第1の層と比べて誤配向されているように見え、高い頻度で30度の回転を示す一方(画像A、BおよびE)、いくつかの多層は、AB Bernal積層を示す(画像CおよびD)。しかしながら、第3および第4の層は、AB Bernal積層を一貫して示す(画像C、D、E、F)。
【0032】
繰り返し述べるが、周囲圧力または低圧CVD条件のいずれかで、メタンの供給を徐々に増加させながら、メタンの制御された供給および水素の過剰な供給(1000℃で約300倍)で、単層の単一ドメイングラフェンが銅上に成長され得る。水素は、炭素源としてメタンを用いたCVDによる銅箔上へのグラフェン成長のプロセスにおいて二重の役割を果たす。水素は、グラフェン成長に必要とされる活性な表面結合炭素種(C
yH
x)sの形成の際の共触媒として働き、「弱い」炭素−炭素結合をエッチングにより除去することによって、グレインの形状および寸法を制御する。グラフェンの核形成、成長速度およびグレインの端サイズは、これらの2つのプロセスの競合によって影響される。低い水素分圧(周囲圧力で30ppmのCH
4およびAr緩衝剤とともに、2Torr(2.6664×10
2Pa)未満、すなわち、P
H2/P
CH4<20)では、熱力学的に好ましくないメタン活性化の律速段階(2)のために、清浄な表面上へのグラフェン成長は観察されない。高い水素圧では、銅表面上に生成される水素原子は、グラフェン成長(5)に必要とされる活性炭素種の生成(4)を補助する。中間の水素分圧(P=2〜11Torr(2.6664×10
2〜1.4665×10
3Pa)、すなわち、P
H2/P
CH4=200〜400)では、グラフェングレインは、様々な形状を示し、ジグザグ型の端またはアームチェア型の端のいずれかに対する優先傾向は認められなかった。高い水素圧(P=19Torr(2.5331×10
3Pa)、すなわち、P
H2/P
CH4>400)により、グレインの明確な六角形の形状および水素によるグラフェンのエッチング(6)に起因する粒径の飽和が得られた。ラマン強度マッピングは、予測される低いエネルギーと合致して、このような六角形の優先的なジグザグ型の端を示唆している。メタン濃度が高まると、多層の形成を促進する傾向があり;そのグレインの形状は同様に水素に依存するが、その被覆率は100%未満であった。六角形の多層は、第2の層とそれより上方の層との間に同等のAB Bernal積層を有していたが、最初の2つの層の相互の配向はランダムであった。
【実施例】
【0033】
非限定的であることが意図され、
図11〜23を参照して記載される以下の方法に従ってグラフェンを合成した。
【0034】
異なる純度を有する2つの銅基材:Alfa Aesarから入手可能な「低」純度の銅箔(#13382、99.8%)および「高」純度の銅箔(#10950、99.999%)を、グラフェンの化学蒸着合成に用いた。箔を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、脱イオン(DI)水、および再度IPAで清浄した。希釈された(1%の)HNO
3によるさらなる清浄により、グラフェン成長の様子は全く変化しなかった。周囲圧力下における化学蒸着成長を、500sccm(標準立方センチメートル毎分)の全ガス流を用いて石英管中で行った。2.5%のH
2の原料ガス混合物および0.1%のCH
4の原料ガス混合物を、高純度のアルゴン中で混合することによって、H
2およびCH
4の所望の分圧を得た。箔を、水素原料混合物(Ar中2.5%のH
2)中で、10℃/分の速度で1000℃まで加熱し、1時間アニールし、メタン原料混合物(Ar中0.1%のCH
4)を、所定の時間にわたって所望の割合まで加えた後、1000℃で引き続きグラフェン成長を行った。メタン流れを用いないことを除いて同じ混合物中でサンプルを室温に急速に冷却した。LPCVD成長の場合、圧力を500mTorr(6.6661×10Pa)未満に低下させた。メタン分圧を1mTorr(1.3332×10
−1Pa)に保持し、水素分圧を系統的に変化させた。ラマン特性評価のために、スピンコーティングされたPMMA(約500nmの厚さ)を用いて、300nmのSiO
2/Siウエハ上にグラフェンを転写し、その後、それをアセトンに溶解させた。Renishaw共焦点機器を用いて、633nmのレーザー励起でラマンスペクトルを得た。
【0035】
図11〜23は、(a)グラフェングレインの相互の配向;(b)グラフェン核形成密度に対する銅の純度および表面モルホロジーの影響;(c)緩衝ガスの影響;(d)グラフェングレインの形状およびモルホロジーに対する水素分圧およびメタン分圧の影響;および(e)六角形および不規則な形状のグラフェングレインのための条件で成長された単層についてのラマンスペクトルを示す、画像およびSEM画像を含む。
【0036】
特に、
図11Aは、2つのグラフェングレインが異なる配向を有することから、グラフェングレインの配向が、下層の銅基材によって大きく制御されないことを示し、グレイン間の弱い結合を示唆するSEM画像である。
図11Bは、
図11Aと対照的に、同じ銅グレイン上の他のグラフェングレインが同様の配向を有することを示すSEM画像である。
図12は、グラフェングレインが、銅ドメイン上で成長することができることを示すSEM画像であり、このことは基材へのグレインの弱い結合を裏付ける。
図13Aは、はっきりと認識できる不純物のある領域またはより微細な部位(これは、線模様を形成する銅箔上への加工溝であると考えられる)で増加するように見えるグラフェングレインの核形成部位のSEM画像である。
図13Bは、線模様を示すためにより低い倍率である以外は
図13Aと同様のSEM画像である。
図14は、P
H2=19Torr(2.5331×10
3Pa)および30ppmのCH
4における周囲圧力で2.5時間同時に成長された、(A)「高」純度の銅および(B)「低」純度の銅上における異なるグラフェン密度を示す一対のSEM画像を含む。「低」純度の銅箔上における高い核形成密度は、不純物ならびに異なる表面粗さおよびモルホロジーに起因する可能性が高い。
図15は、キャリアガスとしてHeを用いた六角形のグラフェングレインを示すSEM画像を含む。二層の高い密度は、成長の開始時の高いCH
4流れに起因する。成長条件には、60分間にわたる2.5%のH
2/Heおよび45ppmのCH
4が含まれていた。
図16〜17は、非常に小さいグレインを示す、P
H2=2.1Torr(2.7997×10
2Pa)で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含み、
図18〜19は、ほとんどが不規則な形状の大きいグレインを示す、P
H2=6.2Torr(8.266×10
2Pa)で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含み、
図20〜21は、明確な六角形のグレイン形状を示す、P
H2=19Torr(2.5331×10
3Pa)で成長されたグラフェングレインのSEM画像を含む。
【0037】
図22は、SiO
2/Siウエハへと転写されたグラフェンのラマンスペクトルを示すグラフを含み、ここで、下側の線が、六角形のグレイン成長のためにP
H2=19Torr(2.5331×10
3Pa)で合成されたグラフェンに対応し、上側の線が、不規則な形状のグレイン成長のために合成されたグラフェンに対応する。
図23は、緩衝ガスとしてArを用いて、80ppmのCH
4および19Torr(2.5331×10
3Pa)のH
2の下で30分間成長された多層グラフェングレインの一対のSEM画像を含む。その結果、グラフェンの第1の層、第2の層および第3の層は、ほとんどが六角形の形状を有する。
【0038】
上記の説明は、本発明の本実施形態の説明である。様々な改変および変形が、均等論を含む特許法の原則にしたがって解釈されるべき、添付の特許請求の範囲において規定される本発明の趣旨およびより広い態様から逸脱せずに行われ得る。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」または「前記」を用いた、単数形の要素への言及はいずれも、要素を単数に限定するものと解釈されるべきではない。