特許第6355570号(P6355570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355570
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】シート処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/04 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   B65H37/04 D
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-5164(P2015-5164)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-130162(P2016-130162A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−031323(JP,A)
【文献】 特開2007−076874(JP,A)
【文献】 特開2006−069747(JP,A)
【文献】 特開2013−136430(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0031675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/04
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを処理する処理ユニットを有し、所定方向に移動可能な移動部と、
前記移動部が有する第1作用部に接触することによって前記移動部を支持するとともに、上方への支持力を前記第1作用部に対して付与する第1支持部と、
前記移動部が有する第2作用部に接触することによって前記移動部を支持するとともに、下方への支持力を前記第2作用部に対して付与する第2支持部と、
を有し、
前記第1作用部と前記第2作用部とは、前記処理ユニットとともに前記所定方向に移動可能であり、
前記第1支持部が上方への支持力を前記第1作用部に対して付与する第1の位置は前記所定方向と直交する方向且つ水平方向において、前記処理ユニットの重心位置と、前記第2支持部が下方への支持力を前記第2作用部に対して付与する第2の位置と、の間に位置し、
前記所定方向と直交する方向且つ水平方向関して前記重心位置を挟んで前記第2の位置の反対側において前記移動部に接触し、前記移動部に対して上方への支持力を付与する接触部はない
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記第1支持部は、
前記第1作用部と係合する係合面で構成され、
前記第2支持部は、
前記第2作用部と係合する係合面で構成され、
前記各係合面は前記所定方向に延在していることを
特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記第1、第2支持部は、
前記処理ユニットの処理位置を境に一方は一方側に、他方は他方側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記第1作用部と、前記第2作用部と、の少なくとも一方には、転動コロが配置される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記移動部を所定ストロークで位置移動するガイド手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記ガイド手段は、
前記所定方向に延在し、
前記移動部を所定姿勢で位置移動するガイド領域と、
前記移動部の角度姿勢を変更するガイド領域と、
を有するガイド部材であることを特徴とする請求項5に記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記処理ユニットは、シート束を綴じ処理する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、製本装置などのシート処理装置における処理ユニットの支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置、製本装置などのシート処理装置において、シートあるいはシート束に処理を施す処理ユニットは、ステープラユニット、針なし綴じユニット、スタンプユニット、パンチユニット、シート折りユニットなど種々の装置が知られている。
【0003】
この種の処理ユニットは、処理位置を変更する必要が生ずる。例えばステープルユニットの場合、シートコーナ綴じ処理する場合とシート中央の複数個所(2個所綴じ、3個所綴じなど)に綴じ処理する場合には、処理ユニットを指定された処理位置に駆動する機構を備えている。
【0004】
例えば特許文献1には画像形成装置から送られたシートを処理トレイに集積し、ステープラユニットで綴じ処理する後処理装置(フィニッシャ)が開示されている。ステープラユニットはモータなどの駆動装置とドライブカム機構とヘッド機構部とアンビル機構部とステープルカートリッジで構成され、ユニット全体がガイドレールに沿ってシート幅方向に位置移動可能に構成されている。
【0005】
特許文献2にはステープラユニットをコーナ綴じ位置と複数綴じ位置(マルチ綴じ位置)に移動する機構が開示されている。トレイ上のシート幅方向にステープルユニットを移動可能に支持し、この支持フレームにガイド溝を設けてシートコーナに移動したときには、ユニットを所定角度(例えば45度)姿勢変更させ、シート中央の複数箇所の綴じ位置ではシート端縁に沿って移動させている。
【0006】
同文献には、ステープラユニットをシート幅方向に移動可能に支持するマウント機構は開示されていないが、この支持機構に沿って移動するユニットの角度姿勢を制御するカム溝と駆動機構(駆動プーリ・ワイヤー機構)は開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−159415号公報(図2
【特許文献2】特開平6−122291号公報(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように処理ユニットをシートに設定された複数の処理位置間で、或いはシートサイズに応じて位置移動する機構は、既に知られている。例えば特許文献1にはユニットの下部にシート幅方向への位置移動機構とユニット角度の偏向機構(詳細な構造は開示されていない)が開示され、特許文献2にはユニットの角度姿勢を規制するカム溝機構が開示されている。
【0009】
ところがカム溝、レールなどのガイド機構に沿ってユニットを位置移動するとき、そのガタつきが問題となる。ガタつきなく重量物を位置移動することは、その移動の円滑性、負荷トルクから困難であり、ガイド機構とユニットの間にはクリアランス(隙間)が必要となる。この場合、ユニットの角度姿勢を変更可能にガイドする機構では更に大きなクリアランスが必要となる。
【0010】
このクリアランスはユニットの支持機構としてはガタつきとなり、ユニットの重心位置が変動したり、不用意に外力が作用したりするとガイド面とユニットの係合部に偏り(食い付き現象;図8(b)の状態)が発生して円滑な運動が妨げられる。
【0012】
本発明は、処理ユニットを有する移動部の円滑な移動が可能なシート処理装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するため本発明のシート処理装置は、シートを処理する処理ユニットを有し、所定方向に移動可能な移動部と、前記移動部が有する第1作用部に接触することによって前記移動部を支持するとともに、上方への支持力を前記第1作用部に対して付与する第1支持部と、前記移動部が有する第2作用部に接触することによって前記移動部を支持するとともに、下方への支持力を前記第2作用部に対して付与する第2支持部と、を有し、前記第1作用部と前記第2作用部とは、前記処理ユニットとともに前記所定方向に移動可能であり、前記第1支持部が上方への支持力を前記第1作用部に対して付与する第1の位置は前記所定方向と直交する方向且つ水平方向において、前記処理ユニットの重心位置と、前記第2支持部が下方への支持力を前記第2作用部に対して付与する第2の位置と、の間に位置し、前記所定方向と直交する方向且つ水平方向関して前記重心位置を挟んで前記第2の位置の反対側において前記移動部に接触し、前記移動部に対して上方への支持力を付与する接触部はないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ガタつきを減少させることが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係わる処理ユニットの支持構造を備えた画像形成システムの全体構成の説明図。
図2図1の画像形成システムにおける後処理装置の外観形状を示す説明図。
図3】後処理装置の全体構成の説明図。
図4】処理ユニットの支持機構の説明図であり、ユニットの位置が図7X−X状態のときを示す。
図5】処理ユニットの支持機構の説明図であり、ユニットの位置が図7Y−Y状態のときを示す。
図6】後処理装置における処理部(処理トレイ)の平面構成を示す説明図。
図7】処理ユニットの位置移動機構を示す説明図。
図8】処理ユニットの支持機構における力の関係を示す説明図であり、(a)はバランスされた状態(正常動作状態)を、(b)はアンバランスな状態(動作不良状態)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図示の好適な実施の形態に従って本発明を詳述する。本発明はシート処理装置における処理ユニットの支持機構にかかわる。シート処理装置A1は、後処理装置(フィニッシャ)、製本装置、印刷装置などのシート(単シート又はシート束)を取り扱う装置を総称する。図1には画像形成装置Aの排紙エリア15に配置された後処理装置B1を示している。
【0021】
後処理装置B1には、処理ユニットBが内蔵されている。処理ユニットBは装置仕様に応じてシートに所定の処理を施すユニット(装置)であり、例えばシートにファイル穴を穿孔するパンチユニット、スタンプを捺印するスタンプユニット、シートを折り処理する折り処理ユニット、シートを断裁するトリミングユニットなどが知られ、単機能あるいはこれらの処理を組み合わせた複合機能を備えた装置として構成される。図示の装置は画像形成されたシートを部揃え集積してステープル綴じや針無し綴じ処理する綴じ処理ユニットを示している。以下ステープル綴じユニット26(ステープラ装置)を処理ユニットとして本発明を説明する。
【0022】
図1の画像形成装置Aについてその構成を説明する。画像形成装置Aは給紙部1と画像形成部2と排紙部3で構成され、給紙部1に準備されたシートに画像形成部2で画像を形成し排紙部3に搬出する。排紙部3には、処理ユニットB(26)を備えた後処理装置B1が準備されている。画像を形成する画像データはスキャナユニットCでシート原稿を画像読取したデータか、外部装置、例えばワードプロセッサー(コンピュータ)、サーバ装置から転送されたデータに従って画像形成する。
【0023】
図示の給紙部1は、複数の給紙カセット5a、5b、5cから給紙手段(給紙ローラ)6で給紙経路7に繰り出す。このため各カセット5a〜5cには分離爪などの分離部材が内蔵されている。図示8は給紙経路7に配置されたレジストローラであり、給紙部1から送られたシートをスキュ修正して待機させる。
【0024】
画像形成部2は、シート上に画像を形成する種々の機構が知られている。図示する静電画像形成機構について説明するとRGBなどの色成分に応じて感光体9(9a、9b、9c、9d)が設けられ、各感光体9a〜9dには発光器10と、現像器11が配置されている。そして感光体9に画像形成するデータに基づいて発光器10で静電潜像を形成し、現像器11でトナーを付着する。各感光体9a〜9dに形成されたトナー画像は転写ベルト12に転写され画像合成される。
【0025】
転写ベルト12への画像合成と同期して給紙経路7に待機されたシートは転写部13に送られ、転写部13に配置されたチャージャローラ13aで画像転写される。そして下流側の定着器14で定着され排紙部3に送られる。
【0026】
排紙部3は、画像形成部2から送られたシートを装置ハウジング4に準備された排紙口16に送る搬送経路で構成されている。なお、図示18はデュープレックス経路であり排紙口16に送られたシートを表裏反転させて、給紙部1のレジストローラ8に案内する。
【0027】
上述の給紙部1と画像形成部2と排紙部3を内蔵する装置ハウジング4には、排紙口16に連なる排紙エリア15が形成され、この排紙エリアに処理ユニットB(26)を備えた後処理装置B1が設けられている。
【0028】
なお、図示Cはスキャナユニットであり、プラテン19a上のシートを画像読取部19bで画像読取し、読取データを画像形成装置Aに伝送する。図示Dはスキャナユニットに装備したドキュメントフィーダである。
【0029】
[後処理装置]
画像形成装置Aから送られたシートを後処理する後処理装置B1について説明する。この後処理装置B1の処理部(後述する処理トレイ24)に処理ユニットB(26)が取付けられ、処理ユニットは複数処理との間で位置移動可能に支持される。
【0030】
図2に後処理装置B1の斜視構成を、図3にその断面構成を示す。図2に示すように、装置ハウジング20は、装置フレーム20aと外装ケーシング20bで構成されている。外装ケーシング20bには、スタックトレイ25と、手差セット部29(マニュアル綴じ部;以下同様)が設けられ、スタックトレイ25の上流側に処理トレイ24が配置されている。そして処理トレイ24に集積されたシート束を綴じ処理する処理ユニットB(ステープラ装置26;以下同様)がハウジング内部に位置移動可能に取り付けられている。
【0031】
図3に示すように装置ハウジング20には、シート搬入経路22が配置され、その経路搬入口21は画像形成装置Aの排紙口16に連結し、経路排紙口23の下流側に段差dを介して処理トレイ24が配置されている。
【0032】
上記シート搬入経路22にはシートを搬送する搬入ローラ31と排紙ローラ32(この両者で経路搬送手段を構成している)が配置され、各ローラには図示しない駆動モータが連結されている。またシート搬入経路22にはシートの搬入を検出する入口センサSe1と、シート搬出を検出する排紙センサSe2が配置されている。
【0033】
上記処理トレイ24には、トレイ上にシートを搬入するシート搬入手段35と搬入シートを所定位置に突き当て係止するシート規制手段40(ストッパ部材)と整合手段45が配置されている。シート搬入手段35は、経路排紙口23から送られたシートの搬送方向を反転させて処理トレイ24上に案内する搬送手段36(図示のものはパドル回転部材)と、搬入したシートを規制手段40に突き当て整合する搬送手段33(図示のものはリング状ベルト回転部材)で構成されている。
【0034】
処理トレイ24にはシート規制手段40に位置規制され集積されたシート束を綴じ処理する綴じ処理ユニット26がシート幅方向(図2紙面表裏方向)に位置移動可能に配置されている。この処理ユニット26は詳述しないが処理トレイ24上に集積されたシート束を綴じ処理するステープラ装置で構成されている。
【0035】
その機構は、ユニットフレームに駆動モータを固定し、その回転をドライブカムにチャージする。このドライブカムには、綴じ方向に上下動する作動アーム部材が連結され、この作動アーム部材でステープルヘッドを上下動する。ステープルヘッドにはステープル針をシート束に刺入するドライブプレートと、ステープル針をコの字状に折り曲げるベンディング部材が内蔵されている。またステープルヘッドにはステープル針(ブランク)を収容するカートリッジ39から針が供給される。
【0036】
またユニットフレームにはアンビル部(不図示)がドライブプレートと対向する位置に設けられ、シート束に刺入した針先を折り曲げる。
【0037】
このような構成で処理ユニットB(26)は、外部のカートリッジから供給されるブランク針をステープルヘッドの下降動作で、コ字状折曲げ(フォーミング)と、シート束に刺入し、アンビル部に突き当てて先端を折り曲げる綴じ動作を実行する。なおステープルユニットの構造については、特開平09−201780号公報、特開平10−249753号公報に開示され、本発明は、これらの構造を含めてあらゆる構造のステープラ装置が採用可能である。
【0038】
[処理ユニットの支持構造]
装置フレーム20aは、各機構部(シート搬送経路機構、トレイ機構、搬送機構など)を支持するフレーム構造で構成される。図示のものは互いに対向する左右一対の側枠フレーム(不図示)と、両側枠フレームを連結するステー部材で底部フレーム20eを構成する枠組構造を採用している。この底部フレーム20eは、処理ユニット26を支持し、処理トレイ24(処理部)のシート幅方向に位置移動可能に支持する。以下この底部フレーム20eを支持フレームと称する。
【0039】
つまり左右対向する側枠フレーム(不図示)には、装置の底部にステー状の支持フレーム20eが配置され、この支持フレーム20eには、図4に断面構成を、図7に平面構成を示すように処理ユニット26との間に第1支持部50と第2支持部55が設けられている。
【0040】
処理ユニット26は、前述の各構成を備える本体部26aと、この本体部と一体のベースフレーム26xで形成されている。そしてベースフレーム26xと支持フレーム20eとの間に第1、第2支持部50、55が以下のように設けられている。
【0041】
上記第1支持部50は、ベースフレーム26xに重力の作用する方向と反対方向の下から上に支持力Fa1を付与する。支持フレーム20eは、フラットな平面形状の載置支持面20xが形成され、この載置支持面20xは図4に示すように処理トレイ24上のシート幅方向に最大サイズシート幅より広い間隔Lで配置されている。
【0042】
図4図5において第1支持部50はベースフレーム26xに取り付けた転動コロ52(52a、52b)を支持フレーム20eの載置支持面20xに載置して支持している。図示の転動コロ52はシート幅方向に間隔を隔てて2つのコロ部材(ロール部材)で構成されている。そして載置支持面20xはこの複数のコロ部材52a、52bを同一平面で支持するフラット面に形成されている。
【0043】
上記載置支持面20xは図7に示すように処理トレイ上のシート綴じ端縁(図示のものはシート後端縁)に沿って右コーナ綴じCp1、マルチ綴じMa1、Ma2、左コーナ綴じCp2の順に位置移動するように載置支持面20xが配置されている。そして上記ベースフレーム26xの転動コロ52(1つ若しくは2つ以上)は載置支持面20xに沿って位置移動する。
【0044】
上記処理トレイ24は載置したシートが自重でシート規制手段40に倣うように所定角度傾斜して配置されている(図4図5参照)。この関係で、上記載置支持面20xもこのトレイ面と平行な平面(=傾斜した平面)に配置されている。
【0045】
なお、本発明にあって第1支持部50は載置支持面(平面)20xで形成し、ベースフレーム26xに転動コロ52を突出させて係合させている。この係合関係は図示実施形態とは逆に、第1支持部50側に転動コロ52を突出させて配置し、ベースフレーム26x側を係合平面で構成しても良い。更に第1支持部50とベースフレーム26xを共に摺動面(平面)で形成しても良い。
【0046】
上記第2支持部55は、ベースフレーム26xに重力の作用する方向と同一の方向の上から下に支持力Fb1、Fb2を付与する。図示のものは、第2支持部55を浮上防止コロ53と、押えガイド56で構成する場合を示している。ベースフレーム26xには、転動コロ54が一体にブラケット57で取り付けてあり、コロの周面は支持フレーム20eの背面に摺動するように係合している。このためベースフレーム26xに図示矢印x方向の傾き力(回転モーメント)が作用すると、転動コロ54と支持フレーム20eの係合で処理ユニットB(26)の浮き上がりが防止される。
【0047】
上記押えガイド56は、ベースフレーム26xの天板部、側壁段差部(図示のものは段差部)などにガイド部材を配置する。この押えガイド56は処理ユニットB(26)の浮き上がりを防止するように上方から下方に(重力と同一方向に)押圧する構造を採用する。これによってベースフレーム26xには重力と同一方向に支持力Fb1とFb2が作用する。
【0048】
なお、第2支持部55は、転動コロ54と押さえガイド56の2個所で支持力Fbを作用する場合を説明したが、いずれか一方であっても良いく、ベースフレーム26xと第2支持部55とは互いに係合する平面で形成しても、転動コロ54を介在させてもいずれでもよい。
【0049】
上述の処理ユニットB(26)の重量を第1、第2支持部50,55で支持する際の位置関係について説明する。設計思想上は、処理ユニットB(26)の重心Wの作用点(図8q)と、第1支持部50の支持力Faの作用点(図8j)と、第2支持部55の支持力Fb1、Fb2の作用点(図8k1、k2)との関係は、中央に位置する第1支持部50の作用点jを中心にユニット重心Wから作用するモーメントと、第2支持部55の支持力(反力)が作用するモーメントでガタつきが無くなるように配置する。この状態を図8に示すが、第1支持部50の作用点jを境に重心Wの作用点qと第2支持部55の反力の作用点k1、k2が反対方向に位置する関係を保持する。
【0050】
この支持力のバランスは、後述するガイドレール42、43と、転動コロ52、54、58の係合状態が最適となるように設定する。第1支持部の作用点jを中心にユニット重心Wが作用するモーメント[W×(q−j間距離)]と第2支持部の作用点k1、k2に作用する反力(浮き上がり力の抗力)のモーメント[Fb×(k−j間距離)]がバランスされ、処理ユニット26に偏りが発生しないときには、後述するガイドレール42、43と転動コロ52、54、58との間には円滑な位置移動がなされる。
【0051】
ところが、上記各モーメントがアンバランスとなって処理ユニットに図8(b)に示すような傾きが生ずるとガイドレール42、43と転動コロ54、58との間に食い付き現象が発生し円滑な運動が妨げられる。このガイドレール42、43と転動コロ54,58との食い付きを防止するためにクリアランス(ギャップ)gapを大きく形成すると処理ユニット26は支持フレーム20eにガタつきが大きい状態で支持され、正確な位置決めが実行されない。
【0052】
なお、本発明にあって処理ユニットB(26)の重心位置と第1、第2支持部50,55との位置関係は、上述の位置関係が必須ではなく、第1支持部50と重心Wの作用位置qとは一致する位置関係、或いは第1支持部50の作用点(図8j)から重心の作用点(q)、次いで第2支持部55の作用点(k)順に配置しても良い。この場合にはガイドレール42、43と転動コロ54、58との間に偏心モーメントを補償する力関係が生ずる関係にする必要がある。この力関係は実験によって求めることが好適である。図8(a)には重心が作用する位置を実験で求めた結果を示している。
【0053】
また、第1支持部50は、第2支持部55と同様に複数の位置で支持する構造を採用することも可能である。この場合には力の関係(抗力、反力など)は合成した力としてバランスを考慮すると良い。
【0054】
また、処理ユニット26には所定位置に処理力が作用する場合がある。ステープル綴じ、ノンステープル綴じ、スタンプ処理、パンチ処理、折り処理などの機構では処理位置に撃力(=作用力)Ptが作用する場合がある。この作用力は、第1支持部50及び第2支持部55或いはガイド機構で支持することとなる。そこで作用力Ptの作用点と第1支持部50の支持点jとユニット重心の負荷点qとは、図8(a)のように支持点を中心に左右にバランスさせることが好ましい。
【0055】
「サイド整合手段」
処理トレイ24には上述のシート規制手段40に突き当たったシートを排紙直交方向(シート幅方向)に位置決めする整合手段45(以下「サイド整合部材」という)が設けられている。
【0056】
サイド整合部材45は、処理トレイ上に異なるサイズのシートをセンター基準で整合するか、片側基準で整合するか、によってその構成は異なる。図6に示す装置は、経路排紙口23からセンター基準で異なるサイズのシートが排出され、このシートを処理トレイ上にセンター基準で整合する。そしてセンター基準で束状に整合されたシート束を綴じ処理に応じて、マルチ綴じのときには整合姿勢で綴じ位置Ma1、Ma2に、左右コーナ綴じのときには左右方向に所定量シート束をオフセットさせて綴じ位置Cp1、Cp2に、ステープラ装置26で綴じ処理する。
【0057】
このため、整合手段45は、処理トレイの紙載面24aから上方に突出し、シートの側縁と係合する規制面46xを有するサイド整合部材46(46F,46R)を、左右一対互いに対向するように配置する。そしてこの一対の左右サイド整合部材46を所定ストロークで往復動可能に処理トレイ24に配置する。このストロークは、最大サイズシートと最小サイズシートのサイズ差および整合した後のシート束を左右いずれかの方向に位置移動(オフセット搬送)するオフセット量によって設定する。
【0058】
このためサイド整合部材46は、図6に示すように、右サイド整合部材46F(装置フロント側)と左サイド整合部材46R(装置リア側)で構成され、両サイド整合部材46には、シート側端と係合する規制面46xが互いに接近方向又は離間方向に移動するようにトレイ部材に支持されている。処理トレイ24には表裏を貫通するスリット溝24xが設けられ、このスリットからトレイ上面にシート側縁と係合する規制面46xを有するサイド整合部材46が摺動可能に嵌合されている。
【0059】
各サイド整合部材46F,46Rはトレイ背面側で複数のガイドコロ49(レール部材であっても良い)で摺動可能に支持され、ラック47が一体形成されている。左右のラック47にはピニオン48を介して整合モータM6、M7が連結されている。この左右の整合モータM6,M7はステッピングモータで構成され、図示しないポジションセンサで左右のサイド整合部材46F,46Rを位置検出し、その検出値を基準に各規制部材を左右いずれの方向にも、指定された移動量で位置移動できるように構成されている。
【0060】
なお、図示のラック−ピニオン機構によることなく、各サイド整合部材46F,46Rをタイミングベルトに固定し、このベルトを左右往復動させるモータにプーリで連結する構成を採用することも可能である。
【0061】
このような構成で制御手段(不図示)は、画像形成装置Aなどから提供されるシートサイズ情報に基づいて左右のサイド整合部材46を所定の待機位置(シートの幅サイズ+α位置)に待機させる。この状態で処理トレイ上にシートを搬入し、シート端がシート規制手段40に突き当たったタイミングで整合動作を開始する。この整合動作は左右の整合モータM6、M7を同一量ずつ反対方向(接近方向)に回転する。すると処理トレイ24に搬入されたシートはシートセンタを基準に位置決めされ束状に積み重ねられる。このシートの搬入動作と整合動作の繰り返しでシートは処理トレイ上に束状に部揃え集積される。このとき異なるサイズのシートは、センター基準で位置決めされる。
【0062】
このようにセンター基準で処理トレイ上に集積されたシートは、その姿勢でシート後端縁(または先端縁)を所定間隔で複数箇所綴じ処理する(マルチ綴じ処理)ことができる。またシートコーナを綴じ処理する場合には、左右のサイド整合部材46F,46Rの片側を指定された綴じ位置にシート側端が一致する位置に移動して静止させる。
【0063】
そして反対側のサイド整合部材を、接近方向に位置移動する。この接近方向の移動量はシートサイズに応じて算出する。これによって処理トレイ24上に搬入されたシートは、右コーナ綴じのときには右側縁が綴じ位置に一致するように整合され、左コーナ綴じ位置のときには左側縁が綴じ位置に一致するように整合される。
【0064】
[処理ユニットの位置移動機構]
上述のように処理ユニット26は第1、第2支持部50、55に支持され、各支持部はシートの処理位置に応じて位置移動可能に配置されている。次に処理ユニット26の位置移動機構について説明する。支持フレーム20eには、処理ユニット26を所定姿勢で位置移動させるガイド手段と駆動手段が配置されている。
【0065】
支持フレーム20eには、走行ガイドレール42(以下単に「ガイドレール」という)とスライドカム43が配置されている。ガイドレール42には走行レール面42xが、スライドカム43には走行カム面43xが形成され、この走行レール面42xと走行カム面43xが互いに協同して処理ユニット26を所定ストロークで往復動可能に支持し、同時にその角度姿勢を制御している。
【0066】
上記走行ガイドレール42とスライドカム43は、処理ユニット26の移動範囲(シート搬入エリアと手差しエリアとエコ綴じエリア)で往復動するようにレール面42xとカム面43xが形成されている。上記走行ガイドレール42は、処理トレイ24の後端規制部材41に沿ってストロークを有するレール部材で構成され、図示のものは支持フレーム20eに形成された開口溝で構成されている。
【0067】
その開口縁に走行レール面42xが形成され、この走行レール面は処理トレイの後端規制部材41と同一直線で互いに平行な関係に配置されている。また走行レール面と間隔を隔ててスライドカム43が配置され、図示のものは支持フレーム20eに形成した溝カムで構成されている。この溝カムには走行カム面43xが形成されている。
【0068】
移動ユニット26(処理ユニット)には、駆動モータ(走行モータ)M11に連結された走行ベルト44に固定されている。この走行ベルト44は支持フレーム20eに軸支した一対のプーリに巻回され、プーリの一方に駆動モータが連結されている。従って、走行モータM11の正逆転で処理ユニット26はストロークで往復動することとなる。
【0069】
上記走行レール面と走行カム面は、互いに平行な平行間隔部(スパンG1)43a、43bと、狭い首振り間隔部(スパンG2)43c、43dと、更に狭い間隔の首振り間隔部(スパンG3)43eに間隔が形成されている。そして、スパンG1>スパンG2>スパンG3の関係に構成されている。スパンG1ではユニットはシート後端縁と平行な姿勢に、スパンG2ではユニットは左右何れかに傾斜した姿勢で、スパンG3ではユニットは更に傾斜した角度姿勢となるように首振り角度変更する。
【0070】
なお走行ガイドレール42は、開口溝構造に限らず、ガイドロッド、突起状リブ、その他種々の構造が採用可能である。またスライドカム43は溝カムに限らず、突起条リブ部材、など、所定のストローク方向に処理ユニット26を案内するカム面を備えていればその形状は種々のものが採用可能である。
【0071】
上記処理ユニット26は、上記走行ガイドレール42とスライドカム43に次のように係合している。図7に示すように、移動ユニット26には、走行レール面42xと係合する第1転動コロ58(レール嵌合部材)と、走行カム面43xと係合する第2転動コロ54(カムフォロア部材)が設けられている。これと共に処理ユニット26には支持フレーム20eのサポート(支持)面と係合する滑動コロ52(図示のものは2箇所にボール形状の滑動コロ52a、52bが形成されている)。また、処理ユニット26には底枠部フレームの底面と係合するガイドコロ53が形成してあり、底部フレームから処理ユニット26が浮上するのを防止している。
【0072】
以上の構成から処理ユニット26は支持フレーム20eに転動コロ52a、52bとガイドコロ53で移動可能に支持されている。これと共に第1転動コロ58は走行レール面42xに、第2転動コロ54は走行カム面43xに沿って回転しながらレール面42xとカム面43xに倣って走行移動する。
【符号の説明】
【0073】
20e 支持フレーム
26 処理ユニット(ステープラ装置)
26x ベースフレーム
50 第1支持部
52 転動コロ
53 浮上防止コロ
54 転動コロ
55 第2支持部
56 押えガイド
57 ブラケット
58 転動コロ
Fa 第1支持部の支持力
Fb 第2支持部の支持力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8