特許第6355576号(P6355576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355576
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20180702BHJP
   B65D 47/32 20060101ALI20180702BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20180702BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20180702BHJP
   B05B 1/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B65D47/06 200
   B65D47/32 310
   B65D1/02 111
   B05B1/02 101
   B05B1/12
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-38233(P2015-38233)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159919(P2016-159919A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】角田 義幸
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−133124(JP,A)
【文献】 特開2009−149327(JP,A)
【文献】 特開2008−155986(JP,A)
【文献】 実開平02−102366(JP,U)
【文献】 実開昭62−060555(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0138171(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/002204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B05B 1/12
B65D 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する減容変形自在な内層体と、口部周壁を貫通する通気口を有し該内層体との相互間に該通気口に通じる内部空間を形成する外層体と、該内層体に通じる液流出口を有するとともに該液流出口から流出した内容物を外界に注出させる注出口を有し、該通気口を取り囲んで該口部周壁に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記注出キャップは、
前記外層体への押圧に伴い前記内層体の内容液及び前記内部空間の空気を通過させて内容液を発泡させる発泡体と、
前記通気口と前記発泡体との間をつなぐとともに、該通気口と該発泡体との間に設けられる空気連通口を有する空気路と、
前記発泡体を迂回して前記液流出口と前記注出口との間をつなぐとともに、該液流出口と該注出口との間に設けられる液連通口を有する液通路と、
前記液連通口の上流側で前記液通路につながるとともに、前記発泡体を介して前記液流出口と前記注出口との間をつなぐ泡通路とを備え、
前記空気路に、前記外層体の一側面を下方に向けた一側傾斜姿勢に変位した際に前記空気連通口を閉鎖する一方、該外層体の中心軸を挟んで該一側面に対向する他側面を下方に向けた他側傾斜姿勢に変位した際に該空気連通口を開放する空気用移動弁を設け、
前記液通路に、前記一側傾斜姿勢では前記液連通口を開放する一方、前記他側傾斜姿勢では該液連通口を閉鎖する液用移動弁を設けた二重容器。
【請求項2】
前記注出キャップは、前記内層体の上部開口を覆う隔壁と、該隔壁に連結するとともに前記中心軸に沿う向きに延在し、該内層体側の端部に前記液流出口を有するとともに前記液用移動弁を移動可能に収容する筒状壁とを備え、
前記筒状壁は、該筒状壁の内周面から内側に突出してその内側に前記液連通口を形成するとともに、前記他側傾斜姿勢に変位した際に前記液用移動弁が着座して該液連通口を閉鎖する液用移動弁着座部を有する請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
前記筒状壁は、前記外層体の一側面に向かって膨出し、前記一側傾斜姿勢に変位した際に前記液用移動弁を収容する膨出部を有する請求項2に記載の二重容器。
【請求項4】
前記発泡体は、環状発泡体であって、
前記筒状壁は、前記隔壁に連結するとともに前記内層体側に位置する下部筒状壁と、前記液用移動弁着座部を有するとともに前記環状発泡体を外側に配置し、該隔壁との間に設けられる通路を通して該環状発泡体に内容液を導入する上部筒状壁とを有する請求項2又は3に記載の二重容器。
【請求項5】
前記隔壁の上方に、該隔壁との間で前記空気用移動弁を移動可能に収容する上部壁を設け、該隔壁及び該上部壁の少なくとも一方に、他方に向けて突出してその内側に前記空気連通口を形成するとともに前記一側傾斜姿勢に変位した際に該空気用移動弁が着座して該空気連通口を閉鎖する空気用移動弁着座部を有する請求項2〜4の何れか一項に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を収容する減容変形自在な内層体と、内層体を内側に収めて容器の外殻を形成する外層体とを備え、内容液の注出に伴って内層体のみを減容させる二重容器に関するものであり、特に、注出する内容液の性状を切り替えることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料や、シャンプーやリンス或いは液体石鹸、また食品調味料や薬品などを収納する容器としては、内容液を収容する減容変形自在な内層体と、内層体を内側に収めて容器の外殻を形成する外層体とを備える二重容器(デラミ容器、積層剥離容器とも言う)が知られている。このような二重容器によれば、外層体の胴部を押圧することで内容液を注出することができ、また、押圧解除後は外層体の胴部が復元して、内層体と外層体との間に外気を導入して内層体のみを減容させることができる。このような二重容器として特許文献1には、内容液を空気と混合させて泡状にして注出することができるスクイズタイプのものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−149327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内容物を泡状にして注出することができる容器であっても、使用用途によっては液状のまま直接注出させた方が好ましい場合がある。このため、注出させる内容液の性状を簡便な操作で容易に切り替えることができる、新たな二重容器が求められている。
【0005】
このような問題を解決するべく、本発明は、内容液を液状のまま直接注出することができる状態と、内容液を空気と混合させて泡状にして注出することができる状態とを簡単に切り替えることができる、新たな二重容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容液を収容する減容変形自在な内層体と、口部周壁を貫通する通気口を有し該内層体との相互間に該通気口に通じる内部空間を形成する外層体と、該内層体に通じる液流出口を有するとともに該液流出口から流出した内容物を外界に注出させる注出口を有し、該通気口を取り囲んで該口部周壁に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記注出キャップは、
前記外層体への押圧に伴い前記内層体の内容液及び前記内部空間の空気を通過させて内容液を発泡させる発泡体と、
前記通気口と前記発泡体との間をつなぐとともに、該通気口と該発泡体との間に設けられる空気連通口を有する空気路と、
前記発泡体を迂回して前記液流出口と前記注出口との間をつなぐとともに、該液流出口と該注出口との間に設けられる液連通口を有する液通路と、
前記液連通口の上流側で前記液通路につながるとともに、前記発泡体を介して前記液流出口と前記注出口との間をつなぐ泡通路とを備え、
前記空気路に、前記外層体の一側面を下方に向けた一側傾斜姿勢に変位した際に前記空気連通口を閉鎖する一方、該外層体の中心軸を挟んで該一側面に対向する他側面を下方に向けた他側傾斜姿勢に変位した際に該空気連通口を開放する空気用移動弁を設け、
前記液通路に、前記一側傾斜姿勢では前記液連通口を開放する一方、前記他側傾斜姿勢では該液連通口を閉鎖する液用移動弁を設けた二重容器である。
【0007】
前記注出キャップは、前記内層体の上部開口を覆う隔壁と、該隔壁に連結するとともに前記中心軸に沿う向きに延在し、該内層体側の端部に前記液流出口を有するとともに前記液用移動弁を移動可能に収容する筒状壁とを備え、
前記筒状壁は、該筒状壁の内周面から内側に突出してその内側に前記液連通口を形成するとともに、前記他側傾斜姿勢に変位した際に前記液用移動弁が着座して該液連通口を閉鎖する液用移動弁着座部を有することが好ましい。
【0008】
前記筒状壁は、前記外層体の一側面に向かって膨出し、前記一側傾斜姿勢に変位した際に前記液用移動弁を収容する膨出部を有することが好ましい。
【0009】
前記発泡体は、環状発泡体であって、
前記筒状壁は、前記隔壁に連結するとともに前記内層体側に位置する下部筒状壁と、前記液用移動弁着座部を有するとともに前記環状発泡体を外側に配置し、該隔壁との間に設けられる通路を通して該環状発泡体に内容液を導入する上部筒状壁とを有することが好ましい。
【0010】
前記隔壁の上方に、該隔壁との間で前記空気用移動弁を移動可能に収容する上部壁を設け、該隔壁及び該上部壁の少なくとも一方に、他方に向けて突出してその内側に前記空気連通口を形成するとともに前記一側傾斜姿勢に変位した際に該空気用移動弁が着座して該空気連通口を閉鎖する空気用移動弁着座部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外層体を一側傾斜姿勢に変位させることで、空気移動弁は、空気路の空気連通口を閉鎖して発泡体へ通じる空気の流れを遮断する一方、液用移動弁は、液通路の液連通口を開放して液流出口と注出口とを直接的に通じさせるため、内層体に収容した内容液を発泡させずに直接注出することができる。また、外層体を他側傾斜姿勢に変位させることで、空気移動弁は空気連通口を開放して発泡体へ空気を送給する一方、液用移動弁は液連通口を閉鎖するため、内容液は発泡体を経由して空気と混合し、泡状になって注出口から注出される。すなわち、外層体の傾斜姿勢を変更するだけの簡単な操作で注出する内容液の性状を切り替えることができるため、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従う二重容器の一実施形態を示す、側面視での部分拡大断面図である。
図2】外層体を一側傾斜姿勢に変位させて、内容液を液状のまま注出する状況を説明する図である。
図3】外層体を他側傾斜姿勢に変位させて、内容液を泡状にして注出する状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、及び要約書において、「上」とは、図1に示すように外層体を正立姿勢にした状態において、外層体の口部周壁に対して注出口が位置する側であり、「下」とは、その反対側である。また、「外層体の一側面」とは、図1では外層体の左側の側面(図中、符号Aで示す)であり、「外層体の他側面」とは、図1では外層体の右側の側面(図中、符号Bで示す)である。
【0014】
図1は、本発明に従う二重容器の一実施形態を示す。本実施形態の二重容器は、内容液を収容する内層体1と、内層体1を内側に収める外層体2と、外層体2に装着される注出キャップ3とを備えている。また注出キャップ3は、中栓4と、ベース5と、ノズルヘッド6を備えている。更に、中栓4、ベース5、ノズルヘッド6には、ホルダー7、発泡体8、液用移動弁9、空気用移動弁10、外気導入用移動弁11、蓋体12が設けられている。
【0015】
内層体1は、その内側に内容液を収容する収容空間Sと、この収容空間Sにつながる上部開口1aを備えている。内層体1は薄肉の合成樹脂製であって、減容変形自在となっている。
【0016】
外層体2は、円筒状の口部周壁2aに、復元自在な可撓性を有する胴部2b、及び胴部の下端を閉鎖する底部(図示省略)を連結したものである。口部周壁2aの外面には雄ねじ部2cを設けている。また、口部周壁2aには、内層体1との間に形成される内部空間Nに空気を取り込むための貫通孔(通気口)2dを設けていて、更に、通気口2dを設けた外面には、上下方向に雄ねじ部2cを切り欠く溝部2eを設けている。なお、溝部2eは、通気口2dから流出させる、或いは通気口2dへ流入させる空気の通路として機能するものであるが、必ずしも設ける必要はなく、例えば、雄ねじ部2cと後述する雌ねじ部との間に形成される隙間を利用して空気の出入りをさせることも可能である。
【0017】
本実施形態において内層体1と外層体2は、相互に相溶性が低い合成樹脂を剥離可能に積層させたものである。図示は省略するが内層体1と外層体2との間には、上下方向に延在して内層体1と外層体2とを部分的に接合する、1本或いは複数本の接着帯を設けてもよい。なお、このような内層体1と外層体2は、内層体1の合成樹脂素材と外層体2の合成樹脂素材とが積層されたパリソンを、ブロー成形することによって得ることができるが、他にも、試験管状に形成したプリフォームを2軸延伸ブロー成形することや、外層体及び内層体を個別に形成し、その後、内層体を外層体内に装着するものでもよい。
【0018】
中栓4は、内層体1の上部開口1aを覆う板状の隔壁4aを備えている。隔壁4aの中央部には、外層体2の中心軸Oに沿う向きに延在する下部筒状壁4bが設けられている。下部筒状壁4bは、全体的に円筒状に形成される一方、その一部は外層体2の一側面Aに向かって膨出し、ここに膨出部4cを形成している。また下部筒状壁4bの下端部は、下方に向けて縮径する縮径部4dとなっている。また、縮径部4dの下端は開口して内層体1に通じており、ここに液流出口4eを形成している。また隔壁4aの下面には、口部周壁2aの内面との間で内層体1を挟む円筒状のシール壁4fが設けられている。
【0019】
隔壁4aの上面には、上方を開放させた凹部4gが設けられている。更に凹部4gに対して径方向外側には、隔壁4aに対して間隔をあけて設けられる上部壁4hと、隔壁4aと上部壁4hとを連結する連結壁4iが設けられている。ここで連結壁4iは、その上下方向中央部において径方向内外方向に連結壁4iを貫く貫通孔(空気連通口)4jを備えていて、空気連通口4jを挟んで上下には、隔壁4a及び上部壁4hの一方から他方に向かって突出する形態になる突出部(空気用移動弁着座部)4kを備えている。
【0020】
ベース5は、通気口2dを取り囲み、その下端部を口部周壁2aの外面に気密に当接させる円筒状の外周壁5aを備えている。外周壁5aの内面には、雄ねじ部2cに対応する雌ねじ部5bが設けられている。なお、ねじに代えてアンダーカットで保持するようにしてもよい。外周壁5aの上部には、径方向内側に延在する天壁5cが設けられている。また天壁5cの上面には、上方を開放させた凹所5dが設けられていて、凹所5dには貫通孔(外気連通口)5eが設けられている。また天壁5cの内縁部には、下方に向けて延在する円筒状の内部周壁5f設けられている。
【0021】
ノズルヘッド6は、ベース5の外周壁5aに連なる外形形状を有し、外周壁5aに抜け止め保持される周壁6aと、周壁6aの上部に一体に連結する上壁6bと、上壁6bから上方へ向けて延在する筒状の注出ノズル6cを備えている。注出ノズル6cの上端は開口しており、ここに注出口6dを形成している。また上壁6bの下面には、凹所5dに入り込む環状のガイド壁6eが設けられていて、ガイド壁6eの内側には、上壁6bを貫く貫通孔(外気導入口)6fが設けられている。
【0022】
ベース5とノズルヘッド6との間には、ホルダー7が設けられている。ホルダー7は、下部筒状壁4bに連なる円筒状の上部筒状壁7aを備えていて、下部筒状壁4bと上部筒状壁7aとで筒状壁Pを形成している。上部筒状壁7aの内周面には、径方向内側に向けて突出する突出部(液用移動弁着座部)7bが設けられていて、液用移動弁着座部7bの径方向内側には、上下方向に開口する孔(液連通口)7cが形成されている。
【0023】
上部筒状壁7aの下端は、径方向外側に向けて延在する板状壁7dに連結していて、板状壁7dには、上下方向に板状壁7dを貫通する開口7eが設けられている。本実施形態において開口7eは、外層体2の一側面Aにおいては膨出部4cと直接連通し、外層体2の他側面Bにおいては、隔壁4aと板状壁7dとの相互間に形成される通路t1(ここでは、隔壁4aに溝を設けて通路t1を形成しているが、板状壁7dに溝を設けてもよい)を介して下部筒状壁4bと連通している。
【0024】
板状壁7dの外縁部には、環状壁7fが設けられている。環状壁7fの下端部は、凹部4gに嵌まり込んでいる。また環状壁7fの上端部は、天壁5cの下面及び内部周壁5fの外周面との間に隙間を持たせた状態で(本実施形態では、天壁5cの下面及び内部周壁5fの外周面に溝を設けて隙間を形成している)、天壁5c及び内部周壁5fに保持されている。なお、天壁5cの下面及び内部周壁5fの外周面と環状壁7fの上端部との間に形成される隙間を、以下通路t2と称する。
【0025】
更に、環状壁7fの外周面には、径方向外側に向けて延在する薄肉状の弁体7gが設けられている。弁体7gは、通常時においては上部壁4hの上面に気密に当接しているが、空気連通口4j側の圧力が高まることで上部壁4hから離反する。
【0026】
上部筒状壁7aの径方向外側には、発泡体8が配置される。発泡体8は、例えばスポンジやフェルト、焼結多孔質体のような、内側に多数の間隙を有するものである。発泡体8の形状は種々のものが適用可能であるが、本実施形態では上部に対して下部を大径にした段付きの環状発泡体を用いている。なお、大径の下部は省略して同一の外径になる環状発泡体を用いてもよい。
【0027】
下部筒状壁4b及び上部筒状壁7aの内部には、球状の液用移動弁9が配置されている。液用移動弁9は、縮径部4dと液用移動弁着座部7bとの間で移動することができ、外層体2を正立姿勢にした状態では、縮径部4dに着座して液流出口4eを閉鎖している。
【0028】
また、隔壁4aと上部壁4hとの相互間には球状の空気用移動弁10が配置されている。空気用移動弁10は、隔壁4a及び上部壁4hの延在する向きに沿って、空気用移動弁着座部4kと外周壁5aの内周面との間で移動することができる。
【0029】
また、ガイド壁6eの内部には球状の外気導入用移動弁11が配置されている。外気導入用移動弁11は、ガイド壁6eに沿って、天壁5cの上面と上壁6bの下面との間で移動することができる。
【0030】
蓋体12は、注出ノズル6cに着脱可能に装着されるものである。本実施形態の蓋体12は、注出ノズル6cの上部を取り囲む蓋体筒部12aと、蓋体筒部12aの内部に設けられて注出口6dを閉鎖する内部壁12bとを備えている。
【0031】
なお、注出キャップ3の内部には、通気口2dから溝部2e、隔壁4aと上部壁4hとの相互間の隙間、空気連通口4j、離反した弁体7gと上部壁4hとの間に形成される隙間、及び通路t2を経由して発泡体8に至る空気路が形成されている。ここで空気路は、外気導入口6f及び外気連通口5eに通じる外気導入路にもつながっている。
【0032】
また注出キャップ3の内部には、液流出口4eから液連通口7cを通って注出口6dに至る液通路と、液流出口4eから通路t1、開口7eを通り(或いは膨出部4c、開口7eを通り)、発泡体8を経由して注出口6dに至る泡通路が形成されている。
【0033】
このような構成になる二重容器から内容物を液状のまま注出させるにあたっては、図2に示すように、外層体2の一側面Aを下方に向けた一側傾斜姿勢に変位させる。これにより空気用移動弁10は、空気用移動弁着座部4kに着座して空気連通口4jを閉鎖するため、空気路は遮断された状態になって、発泡体8への空気の流れが阻止される。また外気導入用移動弁11は、上壁6bの下面に着座して外気導入口6fを閉鎖するため、外気導入路は遮断された状態になり、内部空間Nにおける空気の外界への漏れ出しが阻止される。また液用移動弁9は、膨出部4c側に移動して板状壁7dに当接した状態で保持されるため、液連通口7cは開放した状態になる。そして外層体2の胴部2bを押圧すると、内部空間Nの空気を介して収容空間Sが加圧され、収容空間S内の内容液は、発泡体8を経由することなく液流出口4eから液連通口7cを通って注出口6dに至るため、液状のまま注出することができる。
【0034】
また、内容物を泡状にして注出させるにあたっては、図3に示すように、外層体2の他側面Bを下方に向けた他側傾斜姿勢に変位させる。これにより空気用移動弁10は、空気用移動弁着座部4kから離れるため、空気連通口4jは開放した状態になる。また外気導入用移動弁11は、一側傾斜姿勢の状態と同様に上壁6bの下面に着座するため、外気導入口6fは閉鎖される。また、液用移動弁9は液用移動弁着座部7bに着座するため、液連通口7cは閉鎖された状態になる。そして外層体2の胴部2bを押圧すると、内部空間Nの空気を介して収容空間Sが加圧され、収容空間S内の内容液は、液流出口4eから通路t1、開口7eを通り(或いは膨出部4c、開口7eを通り)、発泡体8に流れ込む。この時内部空間Nの空気は、通気口2d、溝部2e、隔壁4aと上部壁4hとの相互間の隙間、空気連通口4j、離反した弁体7gと上部壁4hとの間に形成される隙間、及び通路t2を経由して発泡体8に流れ込む。これにより内容物は、発泡体8内で空気と混合して発泡するため、泡状の内容物を注出口6dから注出することができる。
【0035】
内容液を注出した後は、外層体2の胴部への押圧を解除して外層体2を元の正立姿勢に姿勢変更する(図1参照)。これにより、外気導入用移動弁11が上壁6bの下面から離れるため、外気導入口6fが開放した状態になる。そして外層体2は、それ自身の復元力により元の形状に戻ろうとし、内部空間Nは負圧状態となるため、外気は、外気導入口6fから外気連通口5e、溝部2e、及び通気口2dを経て、内部空間Nに導入される。これにより、内層体1を減容変形させたまま外層体2のみを復元させることができる。なお、弁体7gは上部壁4hに着座しているため、発泡体8に含まれる泡状の内容物が内部空間Nに向かって逆流することはない。
【0036】
本発明に従う二重容器は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態の外層体2は、外形上、一側面Aと他側面Bが同形状であるが、相互に形状を変更したり、各側面に泡の性状の区別を示す表示を設けたりすれば、使い勝手をより高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1:内層体
1a:上部開口
2:外層体
2a:口部周壁
2b:胴部
2c:雄ねじ部
2d:通気口
2e:溝部
3:注出キャップ
4:中栓
4a:隔壁
4b:下部筒状壁
4c:膨出部
4d:縮径部
4e:液流出口
4f:シール壁
4g:凹部
4h:上部壁
4i:連結壁
4j:空気連通口
4k:空気用移動弁着座部
5:ベース
5a:外周壁
5b:雌ねじ部
5c:天壁
5d:凹所
5e:外気連通口
5f:内部周壁
6:ノズルヘッド
6a:周壁
6b:上壁
6c:注出ノズル
6d:注出口
6e:ガイド壁
6f:外気導入口
7:ホルダー
7a:上部筒状壁
7b:液用移動弁着座部
7c:液連通口
7d:板状壁
7e:開口
7f:環状壁
7g:弁体
8:発泡体
9:液用移動弁
10:空気用移動弁
11:外気導入用移動弁
12:蓋体
12a:蓋体筒部
12b:内部壁
A:外層体の一側面
B:外層体の他側面
N:内部空間
O:外層体の中心軸
P:筒状壁
S:収容空間
t1:通路
t2:通路
図1
図2
図3