(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共役ジエン系単量体が、ブタジエン、イソプレン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
前記芳香族ビニル単量体が、スチレン、及びスチレンの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
前記重合体と、前記樹脂状有機化合物とを固形状態で混合する、又は、前記重合体と、前記樹脂状有機化合物とを溶液状態で混合して前記高分子複合体を得る請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<高分子複合体>>
本発明の高分子複合体(重合体・樹脂状有機化合物複合体)は、共役ジエンを有する単量体である共役ジエン系単量体を重合して合成され、重量平均分子量が3000以上の重合体と、重量平均分子量が250以上の樹脂状有機化合物(以下、単に樹脂ともいう)とを混合して得られる。
【0022】
ゴム組成物を混練する前に予め高分子複合体を調製し、該高分子複合体をゴム組成物に添加、混練することにより、混練時にローターやロールの金属部分にゴムが密着し、加工性が悪化することがない。また、該高分子複合体をゴム組成物に配合することにより、従来の低軟化点樹脂と高軟化点樹脂を併用する手法や、ゴムとの混合性が良好なテルペン系樹脂や芳香族系樹脂を添加する手法等の樹脂を直接ゴム組成物に配合する場合に比べて、初期グリップ性能、グリップ性能の安定性及び耐摩耗性がバランス良く改善できる。これは、予め高分子複合体を調製するため、ゴムと樹脂との相溶性が向上する結果、該樹脂の分散性が大きく高まるため、樹脂を配合したことにより得られる効果が顕著に発揮されるものと推察される。より詳細に考察すると以下のように推察される。
高分子複合体により、加工性が改善するメカニズムとしては、加工性を悪化させる要因となる樹脂が、重合体の中にあらかじめ均一に混合されることでミキサーやロールの金属部への接触が低減され、密着が改善されたためだと推察される。また、グリップ性能、耐摩耗性が改善するメカニズムとしては、重合体と樹脂が均一に混合された結果、本来配合ゴムが有するはずの強度と粘着性が発現されるため、グリップ性能と耐摩耗性のバランスが改善されるものと推測される。
【0023】
(重合体)
まず、重合体について説明する。上記重合体は、共役ジエンを有する単量体である共役ジエン系単量体を重合して合成された重合体であり、その重量平均分子量は3000以上である。
【0024】
共役ジエンを有する単量体である共役ジエン系単量体としては、共役ジエンを有する単量体であれば特に限定されないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、及びこれらの誘導体である、共役している2つの炭素−炭素二重結合及び1つ以上の非共役炭素−炭素二重結合を有する化合物等が挙げられる。
【0025】
共役している2つの炭素−炭素二重結合及び1つ以上の非共役炭素−炭素二重結合を有する化合物として好ましくは、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【化1】
(R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロカルビル基、又は、下記式(1−A)で表される基を表し、R
1〜R
6のうち少なくとも1つは下記式(1−A)で表される基を表す。
【化2】
(R
7〜R
9は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロカルビル基又は下記式(1−B)で表される基を表し、R
10はアルキレン基を表す。)
【化3】
(R
11〜R
13は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、R
14はアルキレン基を表す。)
【0026】
式(1)中のR
1〜R
6のヒドロカルビル基、式(1−A)中のR
7〜R
9のヒドロカルビル基、式(1−B)中のR
11〜R
13のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アリール基などをあげることができる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などをあげることができる。アルキル基の炭素数としては、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基などをあげることができる。
【0027】
式(1)中のR
1〜R
6のヒドロカルビル基、式(1−A)中のR
7〜R
9のヒドロカルビル基、式(1−B)中のR
11〜R
13のヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましい。
【0028】
式(1)中のR
1〜R
6としては、R
1〜R
6のうち1つが式(1−A)で表される基であり、R
1〜R
6のうち残りの5つがアルキル基又は水素原子であることが好ましく、R
1〜R
6のうち1つが式(1−A)で表される基であり、R
1〜R
6のうち残りの5つが水素原子であることがより好ましい。なお、R
1〜R
6のうちR
3又はR
4が、式(1−A)で表される基であることが好ましい。
【0029】
式(1−A)中のR
7〜R
9としては、アルキル基、水素原子又は式(1−B)で表される基であることが好ましく、R
7、R
8がアルキル基、R
9が水素原子であるか、R
7、R
8の一方が式(1−B)で表される基、他方がアルキル基、R
9が水素原子であることがより好ましい。
【0030】
式(1−A)中のR
10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などをあげることができる。アルキレン基の炭素数としては、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、2が更に好ましい。
【0031】
式(1−B)中のR
11〜R
13としては、アルキル基又は水素原子であることが好ましく、R
11、R
12がアルキル基、R
13が水素原子であることがより好ましい。
【0032】
式(1−B)中のR
14のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などをあげることができる。アルキレン基の炭素数としては、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、2が更に好ましい。
【0033】
式(1)で表される化合物としては、例えば、ミルセン、ファルネセン、3−メチレン−1,5−ヘキサジエン、3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、5−メチル−3−メチレン−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、5,6−ジメチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、2−メチル−3−メチレン−1,5−ヘキサジエン、2−メチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、2,6−ジメチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、2,5−ジメチル−3−メチレン−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、2,5,6−トリメチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、3−メチレン−1,6−ヘプタジエン、3−メチレン−1,6−オクタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、6−メチル−3−メチレン−1,6−ヘプタジエン、6−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−3−メチレン−1,6−ヘプタジエン、2−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2,7−ジメチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2,6−ジメチル−3−メチレン−1,6−ヘプタジエン、2,6−ジメチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2,6,7−トリメチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、3−メチレン−1,7−オクタジエン、3−メチレン−1,7−ノナジエン、8−メチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、7−メチル−3−メチレン−1,7−オクタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、7,8−ジメチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、2−メチル−3−メチレン−1,7−オクタジエン、2−メチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、2,8−ジメチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、2,7−ジメチル−3−メチレン−1,7−オクタジエン、2,7−ジメチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、2,7,8−トリメチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、3−メチレン−1,5−ヘキサジエン、3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、5−メチル−3−メチレン−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、5,6−ジメチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、3−メチレン−1,6−ヘプタジエン、3−メチレン−1,6−オクタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、6−メチル−3−メチレン−1,6−ヘプタジエン、6−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、3−メチレン−1,7−オクタジエン、3−メチレン−1,7−ノナジエン、8−メチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、7−メチル−3−メチレン−1,7−オクタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、7,8−ジメチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン等が挙げられる。
【0034】
共役ジエン系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、1,3−ブタジエン、イソプレン、及びこれらの誘導体(共役している2つの炭素−炭素二重結合及び1つ以上の非共役炭素−炭素二重結合を有する化合物)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセン、ファルネセンがより好ましく、1,3−ブタジエン、ミルセン、ファルネセンが更に好ましい。
特に、重合体が後述する高分子量重合体(具体的には、重量平均分子量が50000以上の重合体)の場合、1,3−ブタジエン、イソプレン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが更に好ましく、重合体が後述する低分子量重合体(具体的には、重量平均分子量が50000未満の重合体)の場合、1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセン、ファルネセン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、1,3−ブタジエン、ミルセン、ファルネセンがより好ましく、ミルセン、ファルネセンが更に好ましく、ファルネセンが特に好ましい。
【0035】
本明細書において、ミルセンは、天然に存在する有機化合物で、モノテルペンに属するオレフィンの一種である。ミルセンには、α−ミルセン(2−メチル−6−メチレンオクタ−1,7−ジエン)とβ−ミルセン(7−メチル−3−メチレンオクタ−1,6−ジエン)の2種の異性体が存在するが、本発明においては、単にミルセンという場合、β−ミルセン(下記構造の化合物)を意味する。
【化4】
【0036】
ファルネセンは、イソプレンのオリゴマー化やネロリドールの脱水反応によって化学的に合成されるイソプレノイド化合物の1種であり、主に香料またはその原料として利用されている。本発明で使用可能なファルネセンは、α−ファルネセン((3E,7E)−3,7,11−トリメチル−1,3,6,10−ドデカテトラエン)や(E)−β−ファルネセン((6E)−7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン)などいずれの異性体も含むものであるが、(E)−β−ファルネセンが好ましい。本発明においては、単にファルネセンという場合、(E)−β−ファルネセン(下記構造の化合物)を意味する。
【化5】
【0037】
上記重合体において、上記共役ジエン系単量体単位の含有量は、該重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、また、該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下、最も好ましくは65質量%以下である。5質量%未満であると、耐摩耗性が低下するおそれがあり、95質量%を超えると、グリップ性能が低下するおそれがある。
【0038】
上記重合体は、構成単位として、上記共役ジエン系単量体以外のモノマーに基づく単量体単位を有していてもよく、上記重合体は、構成単位として、芳香族ビニル単量体に基づく単量体単位を有することが好ましい。すなわち、上記重合体が、上記共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体を重合して合成された重合体であることが好ましい。上記重合体が、上記構成単位に加えて、芳香族ビニル単量体(好ましくはスチレン)に基づく単量体単位を有することにより、グリップ性能をより顕著に改善できる。
【0039】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジメチル−4−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられる。なかでも、スチレン、及びスチレンの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、スチレンがより好ましい。
なお、スチレンの誘導体としては、例えば、後述するアルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレン等が挙げられ、α−メチルスチレンが好ましい。
【0040】
上記重合体において、上記芳香族ビニル単量体単位の含有量は、該重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは40質量%以上であり、また、該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。5質量%未満であると、グリップ性能が低下するおそれがあり、95質量%を超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0041】
上記重合体において、上記共役ジエン系単量体単位及び上記芳香族ビニル単量体単位の合計含有量は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、該重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0042】
なお、上記重合体において、上記共役ジエン系単量体単位、上記芳香族ビニル単量体等、各種単量体単位の含有量は、NMR(ブルガー社製)により測定できる。
【0043】
上記重合は、常法により実施することができ、例えば、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合、乳化重合、配位重合、開環重合、重縮合などにより実施することができる。
【0044】
重合方法についても特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、気相重合法、バルク重合法など従来公知のいずれをも用いることができる。また、重合形式は、バッチ式及び連続式のいずれであってもよい。
【0045】
調製された重合体は、さらに高分子反応されていてもよい。高分子反応の例としては、エステル化反応、エーテル化反応、エステル交換反応、アミド化反応、メチロール化反応、エポキシ化反応、加水分解反応、ヒドロホルミル化反応、付加反応、水素添加反応、スルホン化反応、ニトロ化反応、クロロメチル化反応、アルキル化反応、アシル化反応、ディールス-アルダー反応、フリーデル-クラフツ反応などが挙げられる。
【0046】
重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合時に仕込むモノマー量や重合開始剤量を調節することにより制御することができる。例えば、全モノマー/アニオン重合開始剤比や全モノマー/配位重合開始剤比を大きくすればMwを大きくすることができ、逆に小さくすればMwを小さくすることができる。数平均分子量(Mn)についても同様である。また、高分子反応を行う場合も当業者であれば分子量をコントロール可能である。
【0047】
上記重合体の重量平均分子量(Mw)は、3000以上である。Mwが3000未満の場合、本発明の効果が充分に得られない。
【0048】
本発明では、上記重合体は、高分子複合体をゴム組成物に配合した際に、ゴム成分として機能する高分子量重合体であっても、軟化剤として機能する低分子量重合体であってもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、高分子量重合体であることが好ましく、高分子量重合体と、低分子量重合体とを併用することがより好ましい。
い。
【0049】
低分子量重合体の重量平均分子量(Mw)は、3000以上であり、好ましくは3500以上、より好ましくは4000以上である。該Mwは、好ましくは50000未満、より好ましくは30000以下、更に好ましくは20000以下、特に好ましくは10000以下である。Mwが50000以上の場合、軟化剤としての機能が充分に得られないおそれがある。
【0050】
高分子量重合体の重量平均分子量(Mw)は、3000以上であり、好ましくは50000以上、より好ましくは100000以上、更に好ましくは150000以上である。該Mwは、好ましくは3000000以下、より好ましくは2000000以下、更に好ましくは1500000以下である。Mwが3000000を超えると、高分子量重合体の分子切断を伴う素練り工程が必要になるなど加工上の問題が発生するおそれがある。
【0051】
上記重合体の数平均分子量(Mn)に対するMwの比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。5.0を超えると、耐摩耗性が悪化するおそれがある。なお、分子量分布の下限値は特に限定されない。
なお、本明細書において、重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0052】
上記重合体は、水素添加されたものであってもよく、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、低分子量重合体は、水素添加されたものであることが好ましい。該水素添加は、公知の方法により行うことができ、例えば、金属触媒による接触水素添加、ヒドラジンを用いる方法などをいずれも好適に使用することができる(特開昭59−161415号公報など)。例えば、金属触媒による接触水素添加は、有機溶媒中、金属触媒の存在下、水素を加圧添加することにより実施することができ、該有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等をいずれも好適に使用することができる。これら有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、金属触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどをいずれも好適に使用することができる、これら金属触媒は1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加圧する際の圧力としては、例えば、1〜300kg重/cm
2であることが好ましい。
【0053】
上記重合体(特に、低分子量重合体)において、水素添加する場合、二重結合の水素添加率は、好ましくは20〜100モル%であり、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましい。当該水素添加率が20モル%未満では、グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)が充分に得られない傾向がある。
なお、本明細書において、水素添加率(水添率)は、1H−NMR(プロトンNMR)による二重結合由来ピークの各積分値から、下記式により、算出される値である。本明細書において、水素添加率(水添率)とは、二重結合の水素添加率を意味する。
(水添率〔%〕)={(A−B)/A}×100
A:水素添加前の二重結合のピークの積分値
B:水素添加後の二重結合のピークの積分値
【0054】
高分子量重合体の具体例としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からNR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。
【0055】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
【0056】
SBRのスチレン含有量は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。SBRのスチレン含有量が20質量%未満では、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRのスチレン含有量は、60質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。SBRのスチレン含有量が60質量%を超えると、耐摩耗性が低下するだけでなく、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまう傾向がある。
【0057】
低分子量重合体の具体例としては、例えば、上記ジエン系ゴムを低分子量化したものに加えて、ミルセン重合体、ミルセン−ブタジエン共重合体、ミルセン−スチレン共重合体等のミルセン系重合体や、ファルネセン重合体、ファルネセン−ブタジエン共重合体、ファルネセン−スチレン共重合体等のファルネセン系重合体が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、SBRを低分子量化したもの、ミルセン系重合体、ファルネセン系重合体が好ましく、ミルセン系重合体、ファルネセン系重合体がより好ましく、ミルセン−スチレン共重合体、ファルネセン−スチレン共重合体が更に好ましく、ファルネセン−スチレン共重合体が特に好ましい。
【0058】
ここで、ミルセン系重合体の例示において、ミルセン重合体とは、ミルセンをモノマー成分として重合して得られた重合体を、ミルセン−ブタジエン共重合体とは、ミルセン及びブタジエンをモノマー成分として重合して得られた共重合体を、ミルセン−スチレン共重合体とは、ミルセン及びスチレンをモノマー成分として重合して得られた共重合体を意味する。ファルネセン系重合体についても同様である。
【0059】
(樹脂状有機化合物)
次に、樹脂状有機化合物について説明する。
重量平均分子量が250以上の樹脂状有機化合物としては、特に制限はないが、グリップ性能の観点からは代表的な構造単位として種々の1種以上のグリップ性能の改善に寄与できる化学構造を含む樹脂、すなわち、芳香族系、テルペン系、アクリル系、ウレタン系などの樹脂が挙げられる。
【0060】
樹脂状有機化合物としては、上記以外に代表的な構造単位として種々の1種以上のグリップ性能の改善に寄与できる化学構造を含む樹脂、すなわちエチレン系、シリコーン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、アクリルアミド系、エーテル系、ピロリドン系、ロジン系、キシレン系、エステル系、プロピレン系、カーボネート系、イミド系、セロハン系、メタクリル酸系、エポキシ系、スルホン系、C5系またはC9系の石油由来系の樹脂が挙げられる。なお、樹脂状有機化合物は、共役ジエン系単量体単位を含まないことが好ましい。
【0061】
芳香族系樹脂は、芳香族化合物を主成分とする樹脂であり、市販品として、ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンSX100(スチレン樹脂)、BASF社製のKoresin(アルキルフェノール樹脂(ブチルフェノールとアセチレンの反応物))、日塗化学(株)製のエスクロンV120(クマロンインデン樹脂)などを入手可能である。
テルペン系樹脂は、テルペン化合物を主成分とする樹脂であり、市販品として、ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1250(テルペン樹脂)、YSポリスターG125(テルペンフェノール樹脂)、YSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂)等を入手可能である。
アクリル系樹脂は、アクリル化合物を主成分とする樹脂であり、市販品として、東亞合成(株)製のUH2170等を入手可能である。
ウレタン系樹脂は、ウレタン化合物を主成分とする樹脂であり、市販品として、サートマー社製のAROMATIC URETHANE ACRYLATE OLIGOMER、ALIPHATIC URETHANE ACYLATE OLIGOMER等を入手可能である。
【0062】
樹脂状有機化合物の重量平均分子量(Mw)は、250以上であり、好ましくは300以上、より好ましくは350以上である。250未満では、樹脂の性状を示さなかったり、加工中に揮発してしまう可能性があり、粘着付与剤としての機能が充分に得られず、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該Mwは、好ましくは20000以下、より好ましくは16000以下、更に好ましくは12000以下、特に好ましくは8000以下、最も好ましくは3000以下、より最も好ましくは2000以下、更に最も好ましくは1000以下である。Mwが20000を超える場合、粘着付与剤としての機能が充分に得られず、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、本明細書において、樹脂状有機化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0063】
樹脂状有機化合物のガラス転移温度(Tg)(℃/DSC)は、好ましくは−100℃以上、より好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは50℃以上である。また、該Tgは、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。−100℃未満であると、初期グリップ性能の向上効果は得られるものの、グリップ性能の安定性、耐摩耗性が良好に得られないおそれがあり、150℃を超えると、グリップ性能の安定性の向上効果は得られるものの、初期グリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがある。
なお、本明細書において、樹脂状有機化合物のガラス転移温度は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
【0064】
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、樹脂状有機化合物は、樹脂状有機化合物の二重結合を、水素添加されたものであることが好ましい。該水素添加は、上述の重合体の水素添加と同様の方法で行うことができる。
【0065】
樹脂状有機化合物において、水素添加する場合、二重結合の水素添加率は、好ましくは20〜100モル%であり、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。当該水素添加率が20モル%未満では、グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)、耐久性が充分とはならない傾向がある。
【0066】
樹脂状有機化合物のなかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、芳香族系樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、芳香族系樹脂、テルペン系樹脂がより好ましい。
【0067】
<テルペン系樹脂>
次に、テルペン系樹脂について説明する。なお、樹脂の特性については、樹脂状有機化合物について説明した特性と異なる点について主に説明する。
本明細書において、テルペン系樹脂とは、単量体の主成分としてテルペン化合物を使用し、通常用いられる方法により重合して得られる化合物である。具体的には、例えば、トルエンなどの有機溶媒中に、BF
3などの触媒存在下、各原料を任意の順序で滴下し、所定の温度で所定の時間、反応させることにより製造することができる。
【0068】
上記テルペン化合物は、(C
5H
8)
nの組成で表される炭化水素、及びその含酸素誘導体であり、モノテルペン(C
10H
16)、セスキテルペン(C
15H
24)、ジテルペン(C
20H
32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物である。当該テルペン化合物は特に限定されないが、環状不飽和炭化水素であることが好ましく、また、水酸基を持たない化合物であることが好ましい。
【0069】
上記テルペン化合物の具体例としては、α−ピネン、β−ピネン、3−カレン(δ−3−カレン)、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。なかでも、グリップ性能、耐久性をバランスよく改善できる点から、α−ピネン、β−ピネン、3−カレン(δ−3−カレン)、ジペンテン、リモネンが好ましく、α−ピネン、リモネンがより好ましい。ここでリモネンとは、d体、l体、d/l体のいずれをも含むものであってよい。
これらテルペン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
上記テルペン系樹脂は、テルペン化合物を単独で重合させたテルペン樹脂であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、テルペン化合物とともに芳香族化合物を共重合して得られるテルペン芳香族樹脂や、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる芳香族変性テルペン樹脂であることが好ましい。
なお、芳香族化合物とテルペン化合物との割合は、後述する物性を有するものとなるように適宜設定することができる。
【0071】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。これらのなかでも、テルペン芳香族樹脂の場合は、フェノールが好ましく、芳香族変性テルペン樹脂の場合は、スチレン誘導体が好ましい。すなわち、テルペン芳香族樹脂は、テルペンフェノール樹脂であることが好ましく、芳香族変性テルペン樹脂は、スチレン誘導体で変性されたテルペン樹脂であることが好ましい。
ここで、上記化合物中の、アルキル基やアルコキシ基の炭素数としては、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。また、上記化合物中の、不飽和炭化水素基の炭素数としては、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜5が更に好ましい。
なお、上記芳香族化合物は、芳香環上に置換基を1つ有していてもよいし、2つ以上有していてもよく、芳香環上の置換基が2つ以上の場合、それらの置換位置は、o位、m位、p位のいずれであってもよい。更に芳香環上に置換基を有するスチレン誘導体においては、該置換基の置換位置はスチレン由来のビニル基に対してo位であってもよいし、m位、又はp位であってもよい。
これら芳香族化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記アルキルフェノールの具体例としては、例えば、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ジノニルフェノールなどが挙げられる。これらは、o位、m位、p位のいずれが置換されたものであってもよい。なかでも、t−ブチルフェノールが好ましく、p−t−ブチルフェノールがより好ましい。
【0073】
上記アルキルナフトールの具体例としては、上記アルキルフェノールのフェノール部分をナフトールに置き換えた化合物が挙げられる。
【0074】
上記アルキルスチレンの具体例としては、上記アルキルフェノールのフェノール部分をスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
【0075】
上記アルコキシフェノールの具体例としては、上記アルキルフェノールのアルキル基を対応するアルコキシ基で置き換えた化合物が挙げられる。同様に、上記アルコキシナフトールの具体例としては、上記アルキルナフトールのアルキル基を対応するアルコキシ基で置き換えた化合物が挙げられる。また、上記アルコキシスチレンの具体例としては、上記アルキルスチレンのアルキル基を対応するアルコキシ基で置き換えた化合物が挙げられる。
【0076】
上記不飽和炭化水素基含有フェノールとしては、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシフェニル基を含み、かつフェニル基の水素原子のうちの少なくとも1個が不飽和炭化水素基で置換された化合物が挙げられる。当該不飽和炭化水素基における不飽和結合としては、二重結合、三重結合が挙げられる。
上記不飽和炭化水素基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0077】
上記不飽和炭化水素基含有フェノールの具体例としては、イソプロペニルフェノール、ブテニルフェノールなどが挙げられる。上記不飽和炭化水素基含有ナフトール、上記不飽和炭化水素基含有スチレンについても同様である。
【0078】
上記テルペン芳香族樹脂について、例えば、スチレン誘導体とリモネンとを共重合して得られる化合物としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0080】
上記式(I)中、Rは、芳香環上の置換基を表し、炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12)のアルキル基、炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12)のアルコキシ基、炭素数2〜20(好ましくは、炭素数2〜12)の不飽和炭化水素基である。なお、置換基Rの置換数は1〜5のいずれであってもよく、また、置換数が2以上の場合、置換基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それらの置換位置も特に制限されない。mは、0.2〜20である。nは、2〜10である。
【0081】
上記テルペン樹脂の具体例としては、例えば、YSレジンPX1250、YSレジンPX1150などが挙げられ、上記テルペン芳香族樹脂の具体例としては、例えば、YSポリスターU130、YSポリスターU115などが挙げられ、上記芳香族変性テルペン樹脂の具体例としては、例えば、YSレジンTO125、YSレジンTO115、YSレジンTO105、YSレジンTO85(以上、ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0082】
上記テルペン系樹脂は、上述のテルペン系樹脂の二重結合を、水素添加された水素添加テルペン系樹脂であってもよく、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、水素添加された水素添加テルペン系樹脂であることが好ましい。該水素添加は、上述の重合体の水素添加と同様の方法で行うことができる。
【0083】
上記水素添加テルペン系樹脂としては、市販されているものも用いることができ、例えば、YSクリアロンM80、YSクリアロンM105、YSクリアロンM115、YSクリアロンM125(以上、ヤスハラケミカル(株)製)などを使用することができる。
【0084】
上記水素添加テルペン系樹脂において、二重結合の水素添加率は、好ましくは20〜100モル%であり、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。当該水素添加率が20モル%未満では、グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)、耐久性が充分とはならない傾向がある。
【0085】
上記テルペン系樹脂の水酸基価(すなわち、フェノール基の含有量)は、400mgKOH/g以下が好ましく、45mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以下が更に好ましく、5mgKOH/g以下が特に好ましく、1mgKOH/g以下が最も好ましく、0.1mgKOH/g以下がより最も好ましい。とりわけ、0mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が400mgKOH/gを超えると、当該樹脂の自己凝集性が高くなり、ゴムやフィラーとの親和性が低下し、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、本明細書において、樹脂状有機化合物の水酸基価は、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070:1992)により測定した値である。
【0086】
上記テルペン系樹脂の軟化点は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、114℃以上がより更に好ましく、116℃以上が特に好ましく、120℃以上が最も好ましい。また、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、165℃以下が更に好ましく、160℃以下が特に好ましく、135℃以下が最も好ましい。軟化点が、80℃未満であると、樹脂のゴム中での分散は良いがグリップ性能が低下する傾向がある。一方、180℃を超えると、樹脂の分散が困難となるため、ゴム硬度が高くなり、路面との追従性実接触面積の減少によるグリップ性能の低下が起こったり、良好な耐久性が得られなかったりする傾向がある。
なお、本明細書において、樹脂状有機化合物の軟化点は、JIS K6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0087】
<芳香族系樹脂>
次に、芳香族系樹脂について説明する。なお、樹脂の特性については、樹脂状有機化合物について説明した特性と異なる点について主に説明する。
本明細書において、芳香族系樹脂とは、単量体の主成分として芳香族化合物を使用し、通常用いられる方法により重合して得られる化合物である。使用できる芳香族化合物は、テルペン系樹脂についての説明で挙げたものと同様である。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物が好ましく、アルキルフェノール化合物がより好ましい。すなわち、芳香族系樹脂は、アルキルフェノール樹脂であることが好ましい。
【0088】
上記アルキルフェノール樹脂としては、特に限定されず、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるアルキルフェノールアルデヒド縮合樹脂;アルキルフェノールと、アセチレンなどのアルキンとを反応させて得られるアルキルフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂を、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどの化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、本発明の効果の観点から、アルキルフェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールアセチレン縮合樹脂が特に好ましい。
【0089】
なお、上記アルキルフェノール樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t−ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t−ブチルフェノールが特に好ましい。
【0090】
上記アルキルフェノールアルキン縮合樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t−ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t−ブチルフェノールがより好ましく、p−t−ブチルフェノールが更に好ましい。
【0091】
上記アルキルフェノールアルキン縮合樹脂を構成するアルキンとしては、炭素数2〜10のアルキンが好ましく、炭素数2〜5のアルキンがより好ましく、アセチレンが特に好ましい。
【0092】
上記アルキルフェノール樹脂として、BASF社製のKoresin等が挙げられる。
【0093】
上記芳香族系樹脂の他の好適な例として、クマロンインデン樹脂が挙げられる。クマロンインデン樹脂は、クマロン及びインデンを単量体の主成分として使用したものであるが、更に、スチレンを単量体として使用したものであってもよい。クマロン、インデン及びスチレンを使用したものの例として、日塗化学(株)製のエスクロンV120、エスクロンG90等が挙げられる。
【0094】
上記芳香族系樹脂は、上述の芳香族系樹脂の二重結合を、水素添加された水素添加芳香族系樹脂であってもよく、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、水素添加された水素添加芳香族系樹脂であることが好ましい。該水素添加は、上述の重合体の水素添加と同様の方法で行うことができる。
【0095】
上記水素添加芳香族系樹脂において、二重結合の水素添加率は、好ましくは20〜100モル%であり、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。当該水素添加率が20モル%未満では、グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)、耐久性が充分とはならない傾向がある。
【0096】
上記芳香族系樹脂の軟化点は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上が更に好ましい。また、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましい。軟化点が、80℃未満であると、樹脂のゴム中での分散は良いがグリップ性能が低下する傾向がある。一方、180℃を超えると、樹脂の分散が困難となるため、ゴム硬度が高くなり、路面との追従性実接触面積の減少によるグリップ性能の低下が起こったり、良好な耐久性が得られなかったりする傾向がある。
【0097】
上記芳香族系樹脂の水酸基価(OH価)は、好ましくは5mgKOH/g、より好ましくは15mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、特に好ましくは250mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは600mgKOH/g以下、より好ましくは400mgKOH/g以下、更に好ましくは350mgKOH/g以下である。5mgKOH/g未満であると、初期グリップ及びグリップ性能の安定性を高次元で共に得られないおそれがあり、600mgKOH/gを超えると、ゴム成分との相溶性が悪くなり、十分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
また、同様の理由から、上記水素添加芳香族系樹脂の水酸基価(OH価)は、好ましくは5mgKOH/g、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは12mgKOH/g以上であり、好ましくは600mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下である。
【0098】
<アクリル系樹脂>
次に、アクリル系樹脂について説明する。なお、樹脂の特性については、樹脂状有機化合物について説明した特性と異なる点について主に説明する。
上記アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、本発明の効果が良好に得られるという点で、無溶剤型アクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0099】
無溶剤型アクリル樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0100】
上記アクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、本発明の効果の点で、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
【0101】
上述のように、上記アクリル系樹脂としては、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないもの、すなわち、純度が高いものが好ましい。上記アクリル系樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
【0102】
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0103】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
【0104】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良いが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、(メタ)アクリル成分と共にスチレンに由来する成分を構成要素とするスチレンアクリル樹脂(無溶剤型スチレンアクリル樹脂)であることが好ましい。
【0105】
また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよく、なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、水酸基、カルボキシル基を有していることが好ましく、カルボキシル基を有していることがより好ましい。
【0106】
上記アクリル系樹脂として、東亞合成(株)製のARUFONシリーズ(UH−2170、UC−3000、UC−3900、UC−3920、UF−5080、UF−5022、UG−4035、UG−4040、UG−4070)等が挙げられる。
【0107】
上記アクリル系樹脂の水酸基価(OH価)は、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは50mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、更に好ましくは120mgKOH/g以下である。15mgKOH/g未満であると、初期グリップ及びグリップ性能の安定性を高次元で共に得られないおそれがあり、250mgKOH/gを超えると、ゴム成分との相溶性が悪くなり、十分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
【0108】
<ウレタン系樹脂>
次に、ウレタン系樹脂について説明する。なお、樹脂の特性については、樹脂状有機化合物について説明した特性と異なる点について主に説明する。
本明細書において、ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する化合物を主成分とするものであり、代表的には、ポリオールとポリイソシアネートとを通常の方法で反応させることにより得られるものである。
【0109】
上記ウレタン系樹脂は、ウレタン化合物に由来する成分のみで構成される樹脂であっても、他の化合物に由来する成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良いが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、ウレタン化合物に由来する成分と共に、芳香族化合物に由来する成分を構成要素とする芳香族ウレタン樹脂や、脂肪族化合物に由来する成分を構成要素とする脂肪族ウレタン樹脂であることが好ましく、脂肪族ウレタン樹脂がより好ましい。また、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、上記芳香族ウレタン樹脂、上記脂肪族ウレタン樹脂は、更に、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体に由来する成分を構成要素とすることが好ましい。
【0110】
上記ウレタン系樹脂の水酸基価(OH価)は、400mgKOH/g以下が好ましく、45mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以下が更に好ましく、5mgKOH/g以下が特に好ましく、1mgKOH/g以下が最も好ましく、0.1mgKOH/g以下がより最も好ましい。とりわけ、0mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が400mgKOH/gを超えると、当該樹脂の自己凝集性が高くなり、ゴムやフィラーとの親和性が低下し、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。
【0111】
上記樹脂状有機化合物の中でも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、水素添加テルペン系樹脂、水素添加芳香族系樹脂が好ましく、水素添加芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、水素添加アルキルフェノール樹脂がより好ましく、水素添加アルキルフェノール樹脂が特に好ましい。
【0112】
上記重合体、上記樹脂状有機化合物の組み合わせとしては、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、上記高分子量重合体と、上記テルペン系樹脂、上記芳香族系樹脂、及び上記アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種との組み合わせが好ましく、上記高分子量重合体と、上記低分子量重合体と、上記テルペン系樹脂、上記芳香族系樹脂、及び上記アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種との組み合わせがより好ましい。
【0113】
上記重合体と、上記樹脂状有機化合物とを混合する方法としては特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサーやニーダーなどの密閉型設備、オープンロール等の混練装置を用いて、固形状態で混合する機械混合や、上記重合体と、上記樹脂状有機化合物とを溶液状態で混合する溶液混合が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、溶液混合が好ましい。なお、溶液混合の際、上記重合体及び上記樹脂状有機化合物が、完全に溶解している状態で混合することが好ましいが、一部の成分が溶解していなくてもよい。
【0114】
上記重合体、上記樹脂状有機化合物を溶解させるための溶媒としては、これらの化合物を溶解できるものであれば特に限定されず、無極性溶媒と極性溶媒のいずれも使用できる。無極性溶媒としては、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。極性溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0115】
溶液混合における溶液の混合方法としては、ブレンダーミル、超音波ホモジナイザー、攪拌翼などの公知の攪拌装置を使用する方法などが挙げられる。また、必要に応じて、例えば、油浴バス、保温チャンバーなどの公知の加熱装置を用いてもよい。
【0116】
溶液混合における混合方法としては、ブレンダーミルなどの公知の攪拌装置に重合体溶液を入れ、撹拌しながら、これに樹脂状有機化合物溶液を滴下する方法や、樹脂状有機化合物溶液を撹拌しながら、これに重合体溶液を滴下する方法などが挙げられる。また、重合体溶液に固形の樹脂状有機化合物を添加し、樹脂状有機化合物を溶解させながら混合してもよい。同様に、樹脂状有機化合物溶液に固形の重合体を添加し、重合体を溶解させながら混合してもよい。
【0117】
溶液混合において混合を行う際の温度及び時間は、均一な高分子複合体が調製できる点から、好ましくは10〜200℃で1〜12時間、より好ましくは40〜120℃で2〜8時間である。
【0118】
得られた混合溶液を公知の方法で乾燥させることにより、上記高分子複合体を得ることができる。乾燥方法としては、自然乾燥でもよいが、例えば、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー、熱風乾燥器、キルン式乾燥機等の公知の乾燥機を使用してもよい。
【0119】
一方、機械混合の場合は、上記混練装置を用いて、固形状態で上記重合体と、上記樹脂状有機化合物とを混合することにより、上記高分子複合体を得ることができる。
【0120】
上記混合においては、後述する高分子複合体の組成比となるように混合することが好ましい。なお、本発明の高分子複合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよい。
【0121】
(高分子複合体の組成)
上記高分子複合体の組成には特に制限はないが、上記高分子複合体において、該高分子複合体中の上記重合体100質量部に対して、上記樹脂状有機化合物を好ましくは1〜200質量部、より好ましくは3〜120質量部、更に好ましくは5〜50質量部含むものであることが好ましい。1質量部未満では、十分な粘着効果が得られずにグリップ性能の向上が得られないおそれがある。200質量部を超えると、十分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
【0122】
上記高分子複合体は、該高分子複合体中の上記重合体100質量%中、上記高分子量重合体の含有量が、好ましくは40〜100質量%であり、下限はより好ましくは45質量%以上である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0123】
上記高分子複合体は、該高分子複合体中の上記高分子量重合体100質量%中、SBRの含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0124】
上記高分子複合体は、該高分子複合体中の上記高分子量重合体100質量部に対して、上記低分子量重合体を好ましくは10〜150質量部、より好ましくは50〜120質量部、更に好ましくは80〜110質量部含むものであることが好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0125】
上記高分子複合体は、該高分子複合体中の上記高分子量重合体100質量部に対して、上記樹脂状有機化合物を好ましくは1〜200質量部、より好ましくは3〜120質量部、更に好ましくは5〜50質量部含むものであることが好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0126】
<<タイヤ用ゴム組成物>>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記高分子複合体を含有する。
【0127】
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、ゴム組成物100質量%中の上記高分子複合体の含有量は、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜55質量%である。
【0128】
本発明のゴム組成物には、上記高分子複合体中に含まれるゴム成分(上記高分子量重合体)の他に、必要に応じて更にゴム成分を配合してもよい。配合するゴム成分としては、例えば、上記ジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からNR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。
【0129】
なお、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分の総量100質量%中、5質量%以上を上記高分子複合体として配合することが好ましく、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、最も好ましくは80質量%以上、より最も好ましくは100質量%である。
【0130】
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分の総量100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0131】
なお、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、本発明のゴム組成物に含まれるSBRの総量100質量%中、5質量%以上を上記高分子複合体として配合することが好ましく、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、最も好ましくは80質量%以上、より最も好ましくは100質量%である。
【0132】
本発明のゴム組成物は、上記高分子複合体に含まれる上記樹脂状有機化合物に加えて、必要に応じて更に上記樹脂状有機化合物を配合してもよい。
【0133】
本発明のゴム組成物に含まれる上記樹脂状有機化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは3〜120質量部、更に好ましくは5〜50質量部である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0134】
なお、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、本発明のゴム組成物に含まれる上記樹脂状有機化合物の総量100質量%中、40質量%以上を上記高分子複合体として配合することが好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0135】
本発明のゴム組成物に含まれる上記低分子量重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10〜250質量部、より好ましくは20〜220質量部、更に好ましくは30〜220質量部である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0136】
なお、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、本発明のゴム組成物に含まれる上記低分子量重合体の総量100質量%中、40質量%以上を上記高分子複合体として配合することが好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0137】
本発明に係るゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0138】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N
2SA)は、80m
2/g以上が好ましく、100m
2/g以上がより好ましい。また、該N
2SAは、600m
2/g以下が好ましく、250m
2/g以下がより好ましく、180m
2/g以下が更に好ましい。80m
2/g未満では、グリップ性能が低下する傾向があり、600m
2/gを超えると、良好な分散が得られにくく、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001に準拠して求められる。
【0139】
カーボンブラックのオイル吸油量(OAN)は、50ml/100g以上が好ましく、70ml/100g以上がより好ましい。また、該OANは、250ml/100g以下が好ましく、200ml/100g以下がより好ましく、135ml/100g以下がさらに好ましい。50ml/100g未満では、十分な耐摩耗性が得られないおそれがあり、250ml/100gを超えると、グリップ性能が低下するおそれがある。なお、カーボンブラックのOANは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
【0140】
カーボンブラックを配合する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは100質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。50質量部未満では十分な耐摩耗性、グリップ性能が得られないおそれがあり、200質量部を超えると、グリップ性能が低下するおそれがある。
【0141】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、タイヤ工業において一般的に用いられているシリカなどの充填剤、シランカップリング剤、ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などの各種材料を適宜配合できる。
【0142】
本発明で使用される酸化亜鉛としては、特に限定されず、タイヤなどのゴム分野で使用されているものなどが挙げられる。ここで、酸化亜鉛のなかでは、本発明の効果がより好適に得られる観点から、微粒子酸化亜鉛を好適に使用できる。具体的には、平均一次粒子径200nm以下の酸化亜鉛を使用することが好ましく、より好ましくは120nm以下、更に好ましくは100nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。
【0143】
酸化亜鉛を配合する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部以下、より好ましくは1〜5質量部である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0144】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、グアニジン系加硫促進剤などが挙げられ、なかでも、本発明では、チアゾール系、チウラム系加硫促進剤を好適に使用できる。
【0145】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられ、なかでも、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)などが挙げられ、なかでも、TOT−Nが好ましい。
【0146】
加硫促進剤を配合する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。1質量部未満では、充分な加硫速度が得られず、良好なグリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向があり、15質量部を超えると、ブルーミングを起こし、グリップ性能、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0147】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッドに使用される。
【0148】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、本発明の空気入りタイヤが得られる。
【0149】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤとして好適に用いられ、なかでも高性能タイヤに好適に使用でき、特に高性能ドライタイヤとして好適に使用できる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。また、本明細書において、ドライタイヤとは、ドライグリップ性能に特に優れたタイヤを意味する。
【実施例】
【0150】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0151】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。また、各種薬品については、精製を行ったものを使用した。
ヘキサン:関東化学(株)製の無水ヘキサン
トルエン:関東化学(株)製の特級トルエン
イソプロパノール:関東化学(株)製の特級イソプロパノール
TMEDA:キシダ化学(株)製のテトラメチルエチレンジアミン
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
スチレン:和光純薬(株) 製のスチレン
ミルセン:和光純薬(株) 製のミルセン
ファルネセン:日本テルペン化学(株)製のファルネセン
テトラヒドロフラン:関東化学(株)製
パラジウムカーボン:関東化学(株)製
重合体1:後述の製造例Aで調製したスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量:40質量%、Mw:1000000、Tg:−20℃)
重合体2:後述の製造例Bで調製したスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量:20質量%、Mw:5100、Tg:−26℃)
重合体3:後述の製造例Cで調製したスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量:40質量%、Mw:5100、Tg:−8℃)
重合体4:後述の製造例Dで調製したスチレン−ミルセン共重合体(スチレン含有量:45質量%、Mw:6100、Tg:−30℃)
重合体5:後述の製造例Eで調製したスチレン−ファルネセン共重合体(スチレン含有量:50質量%、Mw:8700、Tg:−36℃)
重合体6:後述の製造例Fで調製した、重合体3の95モル%水素添加物(Mw:5200、Tg−2℃)
重合体7:後述の製造例Gで調製した、重合体4の95モル%水素添加物(Mw:6100、Tg:−15℃)
重合体8:後述の製造例Hで調製した、重合体5の95モル%水素添加物、(Mw:8700、Tg:−18℃)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9(SAF、N
2SA:142m
2/g、OAN吸油量:115ml/100g)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24(アロマ系プロセスオイル)
樹脂1:東亞合成(株)製のUH2170(アクリル系樹脂、Mw:14000、OH価:88mgKOH/g、Tg:60℃)
樹脂2:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンSX100(芳香族系樹脂(スチレン樹脂)、Mw:500、Tg:95℃、軟化点:100℃)
樹脂3:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1250(テルペン樹脂、Mw:1100、OH価:0mgKOH/g、Tg:67℃、軟化点:125℃)
樹脂4:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、Mw:700、OH価:0mgKOH/g、Tg:64℃、軟化点:125℃)
樹脂5:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターU115(テルペンフェノール樹脂、Mw:700、OH価:40mgKOH/g、Tg:67℃、軟化点:115℃)
樹脂6:BASF社製のKoresin(アルキルフェノール樹脂(p−t−ブチルフェノール及びアセチレンの縮合樹脂)、Mw:400、OH価:320mgKOH/g、Tg:98℃、)
樹脂7:サートマー社製のALIPHATIC URETHANE ACRYLATE(脂肪族ウレタン樹脂、Mw:900、OH価:0mgKOH/g、Tg:61℃)
樹脂8:日塗化学(株)製のエスクロンV120(クマロンインデン樹脂)、Mw:500、水酸基価:30mgKOH/g、Tg:70℃、軟化点:120℃)
樹脂9:ヤスハラケミカル(株)製のクリアロンP125(水添テルペン樹脂、水添率:100モル%、Mw:700、OH価:0mgKOH/g、Tg:74℃、軟化点:125℃)
樹脂10:ヤスハラケミカル(株)製のクリアロンM125(水添芳香族変性テルペン樹脂、水添率:100モル%、Mw:600、OH価:0mgKOH/g、Tg:70℃、軟化点:125℃)
樹脂11:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターUH115(水添テルペンフェノール樹脂、水添率:100モル%、Mw:600、OH価:0mgKOH/g、Tg:73℃、軟化点:115℃)
樹脂12:後述の製造例Iで調製した、樹脂6の95モル%水素添加物(水添アルキルフェノール樹脂、MW:400、OH価:15mgKOH/g、Tg:86℃、軟化点:135℃)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−1(平均1次粒子径:100nm)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:住友化学(株)製のアンチゲンRD(ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン))
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT−N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
【0152】
(製造例A)重合体1の調製
乾燥し窒素置換した3Lの耐圧ステンレス重合容器にヘキサン 1800g、ブタジエン 120g、スチレン 80gとともにTMEDA 0.22mmolを投入した。次に、重合開始剤の失活に作用する不純物をあらかじめ無毒化させるためにスカベンジャーとして少量のn−ブリルリチウム/ヘキサン溶液を重合容器に投入した。更にn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの含有量として0.2mmol)を加えた後、50℃で3時間重合反応を行った。3時間後、1Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を1mL滴下し、反応を終了させた。次に重合液を24時間室温で蒸発させ、さらに80℃で24時間減圧乾燥し、重合体1を得た。重合転化率はほぼ100%であった。得られた共重合体の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量100万(分子量分布1.01)であった。
【0153】
(製造例B)重合体2の調製
乾燥し窒素置換した撹拌翼付きの3L耐圧ステンレス容器にヘキサン 200gを投入し、ブタジエン 800g、スチレン 200gを溶解させた後、テトラヒドロフラン(THF) 10g、重合開始剤の失活に作用する不純物をあらかじめ無毒化させるためにスカベンジャーとして少量のn−ブリルリチウム/ヘキサン溶液を重合容器に投入した。次いで、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの含有量として0.2mol)を加えた後、50℃で3時間重合反応を行った。3時間後、1Mイソプロパノール/ヘキサン溶液(イソプロパノールの含有量として0.4mol)を滴下し、反応を終了させた。次に重合液を24時間室温で蒸発させ、さらに80℃で24時間減圧乾燥し、重合体2を得た。重合転化率はほぼ100%であった。得られた共重合体の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量5100(分子量分布1.01)であった。
【0154】
(製造例C)重合体3の調製
単量体をブタジエン 600g、スチレン 400gに変えた以外は製造例Bと同様に処理して重合体3を1000g得た。得られた共重合体の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量5100(分子量分布1.01)であった。
【0155】
(製造例D)重合体4の調製
単量体をミルセン 550g、スチレン 450gに変えた以外は製造例Bと同様に処理して重合体4を1000g得た。得られた共重合体の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量6100(分子量分布1.06)であった。
【0156】
(製造例E)重合体5の調製
単量体をファルネセン 500g、スチレン 500gに変えた以外は製造例Bと同様に処理して重合体5を1000g得た。得られた共重合体の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量8700(分子量分布1.10)であった。
【0157】
(製造例F)重合体6の調製
3Lの耐圧ステンレスに重合体3 1000g、テトラヒドロフラン(THF) 200g、10%パラジウムカーボン20gを加え、窒素置換した後、圧力が5.0kg/cm
2となるように水素置換して、80℃で水素の吸収がなくなるまで、水素を供給し続け、6時間反応させた。
次に上記水素添加物溶液をPTFE製メッシュサイズ1μmのフィルターで濾過して、重合体6の溶液を24時間室温で蒸発させ、さらに80℃で24時間減圧乾燥し、重合体6 1000gを得た。
四塩化炭素を溶媒として用い、15質量%の濃度で測定した100MHzのプロトンNMRの非共役不飽和結合部のスペクトルの減少から算出した結果、非共役二重結合部の水素添加率は95モル%であった。
重合体6の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量5200(分子量分布1.01)であった。
【0158】
(製造例G)重合体7の調製
重合体3を重合体4に変えた以外は製造例Fと同様に処理をして、重合体7 1000gを得た。水素添加率は95モル%であり、分子量及び分子量分布は、重量平均分子量6100(分子量分布1.01)であった。
【0159】
(製造例H)重合体8の調製
重合体3を重合体5に変えた以外は製造例Fと同様に処理をして、重合体8 1000gを得た。水素添加率は95モル%であり、分子量及び分子量分布は、重量平均分子量8700(分子量分布1.10)であった。
【0160】
(製造例I)樹脂12の調製
3Lの耐圧ステンレスに樹脂6 200g、テトラヒドロフラン(THF) 200g、10%パラジウムカーボン 20gを加え、窒素置換した後、圧力が5.0kg/cm
2となるように水素置換して、80℃で水素の吸収がなくなるまで、水素を供給し続け、8時間反応させた。
次に上記水素添加物溶液をPTFE製メッシュサイズ1μmのフィルターで濾過して、溶液を24時間室温で蒸発させ、さらに80℃で24時間減圧乾燥し、樹脂12 200gを得た。
四塩化炭素を溶媒として用い、15質量%の濃度で測定した100MHzのプロトンNMRの非共役不飽和結合部のスペクトルの減少から算出した結果、非共役二重結合部の水素添加率は95モル%であった。
樹脂12の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量400(分子量分布1.4)であった。
【0161】
(製造例J)高分子複合体1−1〜12の調製(機械混合)
神戸製鋼製1.7Lバンバリーを用いて重合体1と樹脂1〜12をそれぞれ表1の質量比になるように計量し、重合体1を単独で1分間機械撹拌した。次いで、各種樹脂を添加し、3分間機械撹拌して高分子複合体1−1〜12を得た。
【0162】
(製造例K)高分子複合体2−1の調製(溶液混合)
1Lガラス製フラスコに重合体1 100gをトルエン900gを添加し、100℃で8時間撹拌し、濃度10質量%の重合体1のトルエン溶液1000gを得た。次いで、1Lガラス製フラスコに樹脂1 100gとアセトン900gを添加し、40℃で4時間撹拌し、濃度10質量%の樹脂1のアセトン溶液1000gを得た。次いで、重合体1/樹脂1の質量比が表2の比になるよう、重合体1のトルエン溶液と樹脂1のアセトン溶液とを1Lガラス製フラスコに添加し、室温で1時間撹拌した後、重合体1/樹脂1の混合液を80℃、0.1mmHg以下で8時間以上減圧濃縮して重合体1/樹脂1の複合体(高分子複合体2−1)を得た。
【0163】
(製造例L)高分子複合体2−2〜12の調製
表2に従って使用する樹脂を変えた以外は製造例Kと同様に処理して高分子複合体2−2〜12を得た。
【0164】
(製造例M)高分子複合体3−1〜84の調製
表3に示す質量比になるように重合体2〜8のいずれかを追加した以外は製造例Jと同様に処理して高分子複合体3−1〜84を得た。
【0165】
(製造例N)高分子複合体4−1の調製
表4に示す質量比になるように重合体2を追加した以外は製造例Kと同様に処理して高分子複合体4−1を得た。
【0166】
(製造例O)高分子複合体4−2〜84の調製
表4に示す質量比になるように重合体2〜8のいずれかを追加した以外は製造例Lと同様に処理して高分子複合体4−2〜84を得た。
【0167】
<実施例及び比較例>
表5〜8に示す配合処方に従い、神戸製鋼(株)製1.7Lバンバリーミキサーを用いて硫黄及び加硫促進剤以外の配合材料を混練りした。得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃の条件下で30分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を得た。
【0168】
上記製造で得た試験用タイヤについて、以下の評価を行った。結果を表5〜8に示す。
【0169】
(加工性)
混練り時のローターやロール時の金属部分へのゴム密着具合を以下のように評価した。
×:非常に密着し、加工性が非常に悪い
△:密着し、加工性が悪い
○:やや密着するが、加工性は良い
◎:密着せず、加工性が非常に良い
【0170】
(初期グリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に2周目における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1−1を基準として指数表示をした(初期グリップ性能指数)。数値が大きいほど初期グリップ性能が高いことを示す。
【0171】
(グリップ性能の安定性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、ベストラップと最終ラップの操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが比較評価し、比較例1−1を基準として指数表示をした。数値が大きいほどドライ路面において、グリップ性能の安定性の低下が小さく、グリップ性能の安定性が良好に得られることを示す。
【0172】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時15mm)、それぞれ比較例1−1の残溝量を基準として指数表示した(耐摩耗性指数)。数値が大きいほど、耐摩耗性が高いことを示す。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3-1】
【0176】
【表3-2】
【0177】
【表3-3】
【0178】
【表3-4】
【0179】
【表3-5】
【0180】
【表3-6】
【0181】
【表3-7】
【0182】
【表4-1】
【0183】
【表4-2】
【0184】
【表4-3】
【0185】
【表4-4】
【0186】
【表4-5】
【0187】
【表4-6】
【0188】
【表4-7】
【0189】
【表5】
【0190】
【表6-1】
【0191】
【表6-2】
【0192】
【表7-1】
【0193】
【表7-2】
【0194】
【表7-3】
【0195】
【表7-4】
【0196】
【表7-5】
【0197】
【表7-6】
【0198】
【表7-7】
【0199】
【表8-1】
【0200】
【表8-2】
【0201】
【表8-3】
【0202】
【表8-4】
【0203】
【表8-5】
【0204】
【表8-6】
【0205】
【表8-7】
【0206】
表1〜8より、共役ジエンを有する単量体である共役ジエン系単量体を重合して合成され、重量平均分子量が3000以上の重合体と、重量平均分子量が250以上の樹脂状有機化合物とを混合して得られる高分子複合体を配合した実施例では、良好な加工性をゴム組成物に付与できると共に、初期グリップ性能、グリップ性能の安定性及び耐摩耗性をバランス良く改善できた。
【0207】
表6−1と表6−2との比較、表7と表8との比較により、重合体と、樹脂状有機化合物とを機械混合した場合に比べて、重合体と、樹脂状有機化合物とを溶液状態で混合(溶液混合)した場合に、本発明の効果がより好適に得られることが分かった。
また、表6−1と表7との比較、表6−2と表8との比較により、上記高分子複合体が、上記高分子量重合体と共に、上記低分子量重合体を含有する場合に、本発明の効果がより好適に得られることが分かった。