(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355585
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 5/06 20060101AFI20180702BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20180702BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
B05D5/06 101Z
B05D1/36 A
B05D7/24 303J
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-68088(P2015-68088)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-107256(P2016-107256A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-243001(P2014-243001)
(32)【優先日】2014年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遊馬 知里
(72)【発明者】
【氏名】山田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 晶子
(72)【発明者】
【氏名】三木 信寛
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−170910(JP,A)
【文献】
特開2008−237939(JP,A)
【文献】
特開平03−143575(JP,A)
【文献】
特開2003−164803(JP,A)
【文献】
特開2011−240255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に第1着色塗料(X)、第2着色塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)を順次塗装して、第1着色塗膜、第2着色塗膜、クリヤー塗膜を含む複層塗膜を形成する方法であって、
上記第1着色塗料(X)が、ビヒクル形成樹脂(A1)、鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)を含有し、鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)の合計量が、ビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部を基準として40〜120質量部であり、
上記第2着色塗料(Y)が、ビヒクル形成樹脂(A2)、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)を含有し、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量が、ビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部を基準として1〜20質量部であり、
ビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部及びビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部の合計量200質量部を基準として、鱗片状光輝性顔料(B1)、着色顔料(C1)、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量が60〜120質量部であり、
{鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)の合計量}/{鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量}が2/1〜120/1であり、
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)のそれぞれの塗料を隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜の色差ΔE*値が5以下であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
第2着色塗膜の硬化膜厚が4〜15μmであり、第1着色塗膜と第2着色塗膜との硬化膜厚の比率が3:1〜0.3:1である、請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
複層塗膜の45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*C*h*表色系におけるC*45/L*45が1.0〜6.0である、請求項1または2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
被塗物表面が、電着塗膜の上に、中塗り塗料を塗装して得られた塗膜面である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
被塗物表面の明度L*が70以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5記載の複層塗膜形成方法によって得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、彩度が高く、付着性、仕上がり性に優れた複層塗膜が得られる複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する主な目的は、素材の保護及び美観の付与である。工業製品においては、その商品力を高める点から、美観、なかでも特に「色」は重要である。消費者が求める工業製品の塗色は多様なものであるが、近年、特に自動車外板、家電製品等の分野においては、高彩度で深みのある色が人気の高いものとなっている。
【0003】
高彩度の色を呈する塗膜は、一般に塗料中の顔料濃度を高くすることによって得ることができる。しかしながら、顔料濃度の高い塗膜は、塗膜中に含有されるビヒクル形成樹脂の割合が相対的に低くなることから、被塗物やトップクリヤー塗料との付着性に劣ることが知られており、そのため、塗料中に含有させることのできる顔料濃度には上限があり、ひいては得られる塗膜の彩度にも上限があった。
【0004】
そこで特許文献1には、被塗装物表面に対して、着色顔料および光輝材を含有するメタリックベース塗料を塗布してメタリックベース塗膜を得る工程(1)、前記工程(1)で得られたメタリックベース塗膜上に着色顔料を含有し、光輝材を含有しない着色ベース塗料を塗布して着色ベース塗膜を形成する工程(2)、前記工程(2)で得られた着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成する工程(3)、および、前記工程(1)、(2)および(3)で得られたメタリックベース塗膜、着色ベース塗膜およびクリヤー塗膜を、加熱硬化して複層塗膜を形成する工程(4)を含む複層塗膜形成方法であって、前記工程(1)で得られるメタリックベース塗膜を単独膜として加熱硬化して得られる単独メタリックベース塗膜の光線反射率が、波長650〜700nmにおいて45〜50%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20%以下であり、および前記工程(2)で得られる着色ベース塗膜を単独膜として加熱硬化して得られる単独着色ベース塗膜の光線透過率が、波長400〜700nmにおいて50〜70%、波長650〜700nmにおいて88〜92%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20〜60%である、高意匠複層塗膜形成方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の方法は、工程(1)と工程(2)とで使用する塗料がそれぞれ異なっており、そのため塗装に手間がかかる。また、得られる塗膜の付着性に欠ける場合があった。
【0006】
また、特許文献2には、被塗装物の上に形成された中塗り塗膜、中塗り塗膜の上に形成された第1ベース塗膜、第1ベース塗膜の上に形成された第2ベース塗膜、第2ベース塗膜の上に形成されたクリヤー塗膜を少なくとも含む複層塗膜の形成方法であって、該方法が:中塗り塗膜の上に、光輝性顔料を含有する熱硬化性の第1水性ベース塗料を塗装して未硬化の第1ベース塗膜を形成させる、第1ベース塗膜形成工程;未硬化の第1ベース塗膜の上に、着色顔料を含有する熱硬化性の第2水性ベース塗料を塗装して未硬化の第2ベース塗膜を形成させる、第2ベース塗膜形成工程;未硬化の第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の上に、熱硬化性のクリヤー塗料を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成させる、クリヤー塗膜形成工程;未硬化の第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤー塗膜を焼付処理して各塗膜を加熱硬化させて、硬化した乾燥状態の第1ベース塗膜、第2ベース塗膜及びクリヤー塗膜を含む複層塗膜を形成させる、焼付工程;を含み、第1水性ベース塗料に含有される塗料固形分濃度が、第1水性ベース塗料の全質量に対して5〜15質量%の範囲であり、第2水性ベース塗料に含有される塗料固形分濃度が、第2水性ベース塗料の全質量に対して15〜45質量%の範囲であり、硬化した乾燥状態の第1ベース塗膜の膜厚が2〜8μmの範囲であり、硬化した乾燥状態の第1ベース塗膜と第2ベース塗膜との膜厚の比率が1:1.5〜1:6の範囲である、前記複層塗膜の形成方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に開示の方法は、第1水性ベース塗料と第2水性ベース塗料とが異なっており、塗装に手間がかかる。
【0008】
上記塗装工程の手間を省くためには、同種の塗料を塗り重ねる方法が有利であるが、高彩度の塗膜を得るためには何回も塗り重ねなければならず、かかる方法も塗装に手間がかかる。
【0009】
さらに、顔料濃度の高い塗膜は塗膜表面が凸凹になりやすいため、仕上がり性に劣る。複層塗膜形成方法においてトップクリヤーを重ねて複層塗膜を仕上げる場合であっても下地である高顔料濃度の塗膜の凹凸をカバーしきれないこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−42891号公報
【特許文献2】特開2011−147916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述の不具合を解消し、簡便な方法によって、高彩度でかつ付着性及び仕上がり性に優れた複層塗膜が得られる複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、 被塗物上に第1着色塗料(X)、第2着色塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)を順次塗装して、第1着色塗膜、第2着色塗膜、クリヤー塗膜を含む複層塗膜を形成する方法であって、
上記第1着色塗料(X)が、ビヒクル形成樹脂(A1)、鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)を含有し、鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)の合計量が、ビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部を基準として40〜120質量部であり、
上記第2着色塗料(Y)が、ビヒクル形成樹脂(A2)、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)を含有し、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量が、ビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部を基準として1〜20質量部であり、
ビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部及びビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部の合計量200質量部を基準として、鱗片状光輝性顔料(B1)、着色顔料(C1)、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量が60〜120質量部であり、
{鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)の合計量}/{鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量}が2/1〜120/1であり、
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)のそれぞれの塗料を隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜の色差ΔE*値が5以下であることを特徴とする複層塗膜形成方法、及びこの複層塗膜形成方法によって得られる塗装物品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高彩度でかつ付着性及び仕上がり性に優れた複層塗膜が形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、被塗物上に第1着色塗料(X)、第2着色塗料(Y)、及びクリヤー塗料を順次塗装して複層塗膜を形成するものである。第1着色塗料(X)を塗装して得られた塗膜は硬化されていても硬化されていなくてもよい。また、第2着色塗料(Y)を塗装して得られた塗膜は硬化されていても硬化されていなくてもよい。省工程、省エネルギー化の観点からは、第1着色塗料(X)を塗装して得られた塗膜及び第2着色塗料(Y)を塗装して得られた塗膜は硬化されることなく次工程に供されることが好ましい。
【0015】
被塗物
被塗物としては、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これらは素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。特に金属素材そのものや、金属によるメッキや蒸着が施された各種素材及びこれら素材に脱脂処理や表面処理を行ったものを被塗物とすることが好ましい。
【0016】
また上記素材等に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させて被塗物とすることができる。下塗り塗膜は、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与したりするために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、プライマー等を挙げることができる。中塗り塗膜は、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与したりするために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料の種類は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を使用できる。中塗り塗料によって形成された塗膜は硬化又は未硬化でもよい。
【0017】
上記被塗物表面の明度L*は70以下、好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下であることが好適である。高彩度の塗膜を得るために従来はL*が80以上の高明度の被塗物を使用する必要があったところ、本発明の複層塗膜形成方法では、第1着色塗料(X)の顔料濃度が比較的高く、得られる塗膜の隠蔽性に優れるため、低明度の被塗物でも高彩度の複層塗膜を得ることができる。
【0018】
ここで、明度L*は、厚さ10μmの硬化塗膜の積分球型の分光測色計(正反射光を除くモード)にて測定した反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*値である。
【0019】
上記積分球型の分光測色計の例としては、CR−400、CR−410(商品名、コニカミノルタ社製)等が挙げられる。
【0020】
L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されている表色系であり、L*は明度を表わす数値である。
【0021】
第1着色塗料(X)
第1着色塗料(X)は、上記被塗物上に塗装されるものであり、ビヒクル形成樹脂(A1)、鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)を含有し、鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)の合計量が、ビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部を基準として40〜120質量部、好ましくは50〜110質量部、さらに好ましくは55〜100質量部である。
【0022】
ビヒクル形成樹脂(A1)
第1着色塗料(X)に使用されるビヒクル形成樹脂(A1)としては、熱硬化性樹脂が好ましく、具体的には、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散させて使用することができる。
【0023】
鱗片状光輝性顔料(B1)
鱗片状光輝性顔料(B1)としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料、アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料、ガラスフレーク顔料、表面を金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料、表面を金属で被覆したガラスフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、干渉マイカ顔料を還元した還元マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆させたりした着色マイカ顔料、表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料、表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレークやアルミナフレーク顔料などの二酸化チタン被覆鱗片状顔料、板状酸化鉄顔料、ホログラム顔料、合成マイカ顔料、らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料、オキシ塩化ビスマス顔料などが挙げられる。これらは任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち特に鱗片状光輝性顔料として、アルミニウムフレーク及び/又は二酸化チタン被覆鱗片状顔料が好適である。
【0024】
上記鱗片状光輝性顔料(B1)の配合量は、塗装して得られる塗膜の隠蔽性や、明度の点からビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部を基準として1〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量部、特に好ましくは15〜60質量部の範囲内である。
【0025】
着色顔料(C1)
着色顔料(C1)としては、従来公知の着色顔料を含有することができる。具体的には、酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料やカーボンブラック顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記着色顔料(C1)の配合量は、塗装して得られる塗膜の隠蔽性や、明度・色相の点からビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部に対し10〜119質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20〜110質量部、特に好ましくは30〜100質量部の範囲内である。
【0027】
第1着色塗料(X)は、さらに必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の各種塗料用添加剤を含有することができる。
【0028】
本発明では、第1着色塗料(X)は水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、近年塗料に対するVOC低減の要望からは水性塗料であることが好ましい。
【0029】
上記第1着色塗料(X)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。
【0030】
上記第1着色塗料(X)により形成される第1着色塗膜は硬化膜厚で4〜15μm、好ましくは5〜10μm、さらに好ましくは6〜8μmであることが好適である。
【0031】
上記第1着色塗料を塗装後は、第2着色塗料(Y)を塗装する前に、加熱硬化を行ってもよいし、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行ってもよい。なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0032】
上記加熱硬化の温度は、80〜140℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
【0033】
上記プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0034】
上記プレヒート、エアブロー等を行う場合、塗膜の固形分含有率は60〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好適である。
【0035】
第2着色塗料(Y)
第2着色塗料(Y)は、上記第1着色塗料(X)による塗膜上に塗装されるものであり、ビヒクル形成樹脂(A2)、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)を含有する。第2着色塗料(Y)においては、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量が、ビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部を基準として1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜12質量部である。
【0036】
ビヒクル形成樹脂(A2)としては、前記第1着色塗料(X)の欄で記載したビヒクル形成樹脂(A1)の説明で列記した基体樹脂及び架橋剤から適宜選択して使用することができる。
【0037】
鱗片状光輝性顔料(B2)としては、前記第1着色塗料(X)の欄で記載した鱗片状光輝性顔料(B1)の説明で列記した顔料と実質的に同一のものを使用することが好ましい。該鱗片状光輝性顔料(B2)の配合量は、前記鱗片状光輝性顔料(B1)の配合量より少ない。
【0038】
鱗片状光輝性顔料(B2)の配合量はビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部を基準として0.1〜19質量部、好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは1〜12質量部の範囲内である。
【0039】
鱗片状光輝性顔料(B1)の配合量を1として、鱗片状光輝性顔料(B2)の配合量は0.01〜0.8、好ましくは0.01〜0.7、さらに好ましくは0.01〜0.5の範囲内である。
【0040】
着色顔料(C2)としては、前記第1着色塗料(X)の欄で記載した着色顔料(C1)の説明で列記した顔料と実質的に同一のものを使用することが好ましい。該着色顔料(C2)の配合量は、前記着色顔料(C1)の配合量より少ない。
【0041】
着色顔料(C2)の配合量はビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部を基準として0.1〜19質量部、好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは1〜12質量部の範囲内である。
【0042】
着色顔料(C1)の配合量を1として、着色顔料(C2)の配合量は0.01〜0.8、好ましくは0.01〜0.7、さらに好ましくは0.01〜0.5の範囲内である。
【0043】
第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の各種塗料用添加剤を含有することができる。
【0044】
本発明では、第2着色塗料(Y)は水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、近年塗料に対するVOC低減の要望からは水性塗料であることが好ましい。
【0045】
上記第2着色塗料(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。
【0046】
上記第2着色塗料(Y)により形成される第2着色塗膜は硬化膜厚で4〜15μm、好ましくは5〜10μm、さらに好ましくは6〜8μmであることが好適である。
【0047】
また、上記第1着色塗膜と上記第2着色塗膜との硬化膜厚の比率は、3:1〜0.3:1、好ましくは2:1〜0.5:1、さらに好ましくは1.5:1〜0.6:1であることが好適である。
【0048】
上記第2着色塗料の塗装後は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、加熱硬化を行ってもよいし、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行ってもよい。
【0049】
上記加熱硬化の温度は、80〜140℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
【0050】
プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0051】
上記プレヒート、エアブロー等を行う場合、塗膜の固形分濃度が通常70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好適である。
【0052】
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)に含まれる顔料の配合量と配合比
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)に含まれる顔料の配合量としては、ビヒクル形成樹脂(A1)固形分100質量部及びビヒクル形成樹脂(A2)固形分100質量部の合計量200質量部を基準として、鱗片状光輝性顔料(B1)、着色顔料(C1)、鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量が60〜120部、好ましくは65〜115部、さらに好ましくは70〜110部である。
【0053】
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)に含まれる顔料の配合比としては、{鱗片状光輝性顔料(B1)及び着色顔料(C1)の合計量}/{鱗片状光輝性顔料(B2)及び着色顔料(C2)の合計量}が2/1〜120/1、好ましくは3/1〜100/1、さらに好ましくは5/1〜60/1である。
【0054】
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)に含まれる顔料の種類は、色変動及び隠蔽性等の点から実質的に同一である。さらに、第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)に含まれる顔料の配合比も、色変動及び隠蔽性等の点から実質的に同一である。顔料の種類及び配合比が実質的に同一であることを本明細書では次のように定義する。
【0055】
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)のそれぞれの塗料を隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜の色差ΔE*値が5以下であるとき、第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)に含まれる顔料の種類及び配合比が実質的に同一であると定義する。
【0056】
ここで、本明細書において、「隠蔽膜厚」とは、JIS K5600−4−1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
【0057】
ΔE*値は、JIS K 5600−4−6(1999)に規定される値である。本発明において、隠蔽膜厚まで塗装して得られる第1着色塗膜と隠蔽膜厚まで塗装して得られる第2着色塗膜との色差ΔE*は、下記式から算出することができる。また測色計は積分球型の分光測色計、CR−400(商品名、コニカミノルタ社製、サンプル径50mm)を用いた。
ΔE={(ΔL*)
2+(Δa*)
2+(Δb*)
2}
1/2
ΔL*:隠蔽膜厚まで塗装して得られる第1着色塗膜と隠蔽膜厚まで塗装して得られる第2着色塗膜とのL*値の差、
Δa*:隠蔽膜厚まで塗装して得られる第1着色塗膜と隠蔽膜厚まで塗装して得られる第2着色塗膜とのa*値の差、
Δb*:隠蔽膜厚まで塗装して得られる第1着色塗膜と隠蔽膜厚まで塗装して得られる第2着色塗膜とのb*値の差。
【0058】
クリヤー塗料(Z)
本発明方法では、第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)を順次塗装し、その上にクリヤー塗料(Z)を塗装する。第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)によって得られる塗膜は、未硬化であっても硬化されていてもよい。しかし、近年複層塗膜形成方法に対して望まれている省工程、省エネルギー化の観点からは、第1着色塗料(X)を塗装して得られた塗膜及び第2着色塗料(Y)を塗装して得られた塗膜は硬化されていないことが好ましい。
【0059】
クリヤー塗料(Z)は、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、熱硬化性粉体塗料組成物等を挙げることができる。
【0060】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物などを挙げることができる。
【0061】
また、上記クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料、つや消し剤等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0062】
クリヤー塗料(Z)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて20〜40μmの範囲内が適当である。
【0063】
本発明においては、クリヤー塗料(Z)を塗装後、加熱硬化される。加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、行うことができ、加熱温度は、80〜140℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
【0064】
また、本発明においては、複層塗膜が同時に加熱硬化されてもよい。かかる場合の加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、行うことができ、加熱温度は、80〜140℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
【0065】
本発明においては、上記のとおり得られる複層塗膜の45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*C*h*表色系における
C*45/L*45が1.0〜6.0、好ましくは1.1〜5.0、さらに好ましくは1.2〜4.0である。
【0066】
ここでいうL*C*h表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されているL*a*b*表色系をベースに考案された表色系であって、C*45は彩度を表わし、色度図において中心からの幾何学距離を数値化したものであり、数値が大きいほど彩度が高いことを意味するものである。
【0067】
本明細書においてL*C*h表色系におけるC*45及びL*45は、具体的には、多角度分光光度計(x−rite社製、商品名、MA−68II)を使用して、得られた塗膜に45度の角度から照射した光を、正反射光に対して45度で受光した分光反射率から計算された数値としてそれぞれ定義するものとする。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
(1)被塗物の作製
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。
得られた上記鋼板の電着塗面に、中塗り塗料「TP−65グレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめることにより得られた中塗り塗板を被塗物1とした。CR−400(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて測定した該被塗物表面の明度L*値は60であった。
【0069】
また、上記鋼板の電着塗面に、中塗り塗料「TP−65ジュニアライトグレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめることにより得られた中塗り塗板を被塗物2とした。CR−400(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて測定した該被塗物表面の明度L*値は80であった。
【0070】
また、上記鋼板の電着塗面に、中塗り塗料「TP−65ダークグレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめることにより得られた中塗り塗板を被塗物3とした。CR−400(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて測定した該被塗物表面の明度L*値は20であった。
(2)塗料の製造
ビヒクル形成樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂エマルション(a−1)を得た。得られたアクリル樹脂エマルションは、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0071】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0072】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(a−2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(a−3)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)の製造
製造例4〜36
製造例1で得たアクリル樹脂エマルション(a−1)50部(固形分15部)、製造例2で得たアクリル樹脂溶液(a−2)45.5部(固形分25部)、製造例3で得たポリエステル樹脂溶液(a−3)42.8部(固形分30部)、及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」日本サイテックインダストリーズ株式会社製、固形分80%)37.5部(固形分30部)に対し、鱗片状光輝性顔料(B)及び着色顔料(C)を、下記表1及び表2に示す量で配合して攪拌混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒となるように調製して、各第1着色塗料(X−1)〜(X−19)及び各第2着色塗料(Y−1)〜(Y−14)を得た。
【0073】
なお、表1及び表2中の顔料の詳細は以下のとおりである。
鱗片状光輝性顔料(B)
(b−1)Xirallic T60−24 WNT Stellar Green:薄片状酸化アルミニウムの表面を金属酸化物で被覆した顔料、商品名、メルク社製
(b−2)Xirallic T60−25 WNT Cosmic Turquoise:薄片状酸化アルミニウムの表面を金属酸化物で被覆した顔料、商品名、メルク社製
(b−3)Xirallic T60−23 WNT Galaxy Blue:薄片状酸化アルミニウムの表面を金属酸化物で被覆した顔料、商品名、メルク社製
(b−4)TWINCLEPEARL SXD−SO:合成雲母の表面を金属酸化物で被覆した顔料、商品名、日本光研社製
(b−5)MH−8805:アルミペースト、商品名、旭化成ケミカルズ社製
(b−6)Lumina Exterior Red 4303D:薄片状天然マイカの表面を金属酸化物で被覆した顔料、商品名、BASF社製)
着色顔料(C)
(c−1)HELIOGEN GREEN L9361:緑色顔料、商品名、BASF社製
(c−2)CYANINE BLUE 5206M:青色顔料、商品名、大日本精化工業社製
(c−3)JR903:無機系チタン白顔料、商品名、テイカ社製
(c−4)Raven5000:黒色顔料、商品名、BIRLA CARBON社製
(c−5)HELIOGEN GREEN L8730:緑色顔料、商品名、BASF社製
(c−6)Irgazin Red L4010HD:赤色顔料、商品名、BASF社製
(c−7)Cinquasia Magenta L4540:赤色顔料、商品名:BASF社製
(c−8)Irgazin Rubine L4025:赤色顔料、商品名、BASF社製
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
(3)試験板の作製
以下の手順にて、上記(2)で製造した第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)ならびにクリヤー塗料を順次塗装して試験板を作成した。
実施例1〜23及び比較例1〜15
(第1着色塗料の塗装)
上記(1)で作製した被塗物上に、上記(2)で製造した第1着色塗料(X)のいずれかをミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として表3に記載の膜厚となるように塗装した。
(第2着色塗料の塗装)
第1着色塗料を塗装した後に、室温にて2分間放置し、ついで、その未硬化の第1着色塗膜上に、上記(2)で製造した第2着色塗料(Y)のいずれかをミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として表3に記載の膜厚となるように塗装した。
(クリヤー塗料の塗装)
第2着色塗料を塗装した後に、室温にて5分間放置し、80℃で3分間プレヒートを行った。ついで、その未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料「マジクロンKINO−1210」(関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂系溶剤型)を、ミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として約35μmとなるように塗装した。得られた複層塗膜を140℃で30分間焼き付け乾燥させ、試験板を得た。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
表3において、「隠蔽膜厚での色差ΔE*値」とは、第1着色塗料(X)及び第2着色塗料(Y)のそれぞれの塗料を隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜の色差ΔE*値をいう。
(4)評価試験
上記実施例及び比較例で得られた各試験板について、以下に示す各項目を評価した。評価結果を表3に示す。試験条件は以下のとおりである。
彩度の評価
前述の方法によりC*45/L*45値を測定した。値が大きいほど彩度が高いことを示す。
隠蔽性
白黒隠蔽紙に複層塗膜を形成し、白地上と黒地上の色差ΔE*が2.5以下であるとき隠蔽性が合格である。ΔE*値の測定方法は前述の方法と同じである。
色変動
第2着色塗膜の硬化膜厚を表3に記載した値を基準としてプラス2μmとしたときと、マイナス2μmとしたときの複層塗膜のΔE値が2.5以下であるとき色変動が合格である。ΔE*値は前述の方法と同じである。
鮮映性
「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWa値を用いて評価した。Wa値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示し、20以下で合格である。
平滑性
「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWd値を用いて評価した。Wd値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示し、25以下で合格である。
耐候性試験後の耐水付着性
各試験板について、JIS K 5600−7−7に準じ、「スーパーキセノンウエザーメーター」(スガ試験機社製、耐候性試験機)を用いて、試験片ぬれサイクル:18分/2時間、ブラックパネル温度:61〜65℃の条件に曝した。ランプの照射時間が2,000時間に達した時点で、試験板を耐候性試験機から取り出し、試験板を40℃の温水に24時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。○以上が合格である。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
目視
各試験板に対して斜め上から見たとき(シェード領域)の塗膜の色を観察した。評価は、色彩開発に3年以上従事するデザイナー2名と技術者3名の計5名が行なった。△以上が合格である。
○:塗色がすっきりしていて濁りがない。
△:塗色に膜がかかったような若干の白濁が見える。
×:塗色が白っぽく濁って見える
耐チッピング性
飛石試験機「JA−400型」(商品名、スガ試験機社製、耐チッピング性試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、30cmの距離から0.392MPa(4kgf/cm2)の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを試験板に45度の角度で衝突させた。その後、得られた試験板を水洗して、乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン社製)を貼着して、それを剥離した後、塗膜のキズの発生程度を点数化した。3点以上で合格である。
5:キズの大きさが極めて小さく、電着面や素地面の露出がない
4:キズの大きさが小さく、電着面や素地面の露出がない
3:キズの大きさは、やや大きいが、電着面や素地面の露出がない
2:キズの大きさは、やや小さいが、電着面や素地面が露出している
1:キズの大きさが大きく、電着面や素地面の露出が数箇所ある
0:キズの大きさは極めて大きく、電着面や素地面の露出も多数ある。