【実施例】
【0044】
以下、本発明を下記実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0045】
使用した各成分は以下の通りである。
有効成分:イソプロピルメチルフェノール<大阪化成株式会社製>
有効成分:トリクロサン<BASF社製>
有効成分:塩化セチルピリジニウム(略称:CPC)<メルク社製>
有機発泡剤:アゾジカルボンアミド<大塚化学株式会社製>
蒸散助剤:酸化亜鉛
結合剤:α化デンプン
賦形剤:パーライト
【0046】
(実施例1)
表1に記載の配合処方において、各成分を混合し、造粒、乾燥し、顆粒状の加熱蒸散剤を作製した。加熱蒸散剤1粒あたりの粒径は約1.5mm、長さは約5mmである。
【0047】
【表1】
【0048】
図1に示したような、直径53mm、高さ63mmの有底円筒状の外容器2の内部に、直径38mm、深さ40mmの有底円筒状の仕切部材4を備えた自己発熱装置1を作製した。外容器2の底部の通液孔21を、通液性のある不織布シート3で塞いだ。外容器2と仕切部材4とで形成された空間に加水発熱物質8としての酸化カルシウム65gをその底部から側部にかけて全体に充填した。仕切部材4の内部に上記作製した加熱蒸散剤5.7g(有効成分量600mg)を収容し、0.8cm
2の開口部を7個有する蓋部材5を被せ、熱溶融フィルム6で蓋部材5の開口部を塞ぎ、加熱蒸散用製剤を作製した。
【0049】
<試験例1>
4.4m
3(1.6m(縦)×1.25m(横)×2.2m(高さ))の密閉空間の浴室(FRP材により形成、湿度約70%)に、加熱蒸散用製剤を1つ設置するとともに、浴室の天井部、壁部及び床面部にそれぞれ、面積400cm
2の濾紙(ADVANTEC社製「No.1定性濾紙 直径36cmの円形濾紙を20cm×20cmの正方形に裁断したもの」)を設置した。
加熱蒸散用製剤の設置場所は浴室の床面の中央部とし、22mLの水(加水発熱反応用液)Wを入れた容器に浸けることにより加熱蒸散させた。
燻煙後90分間無換気状態とし、その後、換気扇を稼働して30分間浴室内を換気し、浴室の各箇所に設置した濾紙を回収し、濾紙に付着した有効成分をガスクロマトグラフィーにより分析し、定量した。濾紙への有効成分の付着量より、天井部、壁部及び床面部の各面に付着した有効成分の付着量を下記式(1)により算出した。また、各面への有効成分の付着量より、有効成分量600mgに対する各面への有効成分の付着割合を下記式(2)により算出した。なお、床面部の面積は浴槽を除いた面積とし、壁部の面積も浴槽と接地した一部を除いた面積とする。
各面への有効成分の付着量(mg)={濾紙に付着した有効成分の付着量(mg)/濾紙の面積(0.04m
2)}×各面の面積(m
2) ・・・(1)
各面への有効成分の付着割合(%)=各面への有効成分の付着量(mg)/有効成分量(600mg)×100 ・・・(2)
【0050】
試験は、検体1を用いて2回行い、検体2を用いて1回行った。それぞれの結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果より、イソプロピルメチルフェノールを用いた検体1は、浴室の天井部及び壁部への付着量が多く、床面部への落下が少ないのに対し、トリクロサンを用いた検体2では、浴室の天井部及び壁部への付着量が少なく、床面部への落下が非常に多い結果であった。
【0053】
(実施例2)
表3に記載の配合処方において、各成分を混合し、造粒、乾燥し、顆粒状の加熱蒸散剤を作製した。加熱蒸散剤1粒あたりの粒径は約1.5mm、長さは約5mmである。
実施例1と同様の自己発熱装置を作製し、仕切部材の内部に上記作製した加熱蒸散剤4.7g(有効成分量600mg)を収容し、加熱蒸散用製剤を作製した。
【0054】
【表3】
【0055】
<試験例2>
4.4m
3(1.6m(縦)×1.25m(横)×2.2m(高さ))の密閉空間の浴室(FRP材により形成、湿度約70%)に、加熱蒸散用製剤を1つ設置するとともに、浴室の壁部上端から30cmの箇所にスポンジ(材質:ナイロン、東和産業株式会社製「ピカピカバスキンポケット」)を1つ設置した。
加熱蒸散用製剤の設置場所は浴室の床面の中央部とし、22mLの水(加水発熱反応用液)Wを入れた容器に浸けることにより加熱蒸散させた。
燻煙後90分間無換気状態とし、その後、換気扇を稼働して30分間浴室内を換気し、浴室に設置したスポンジを回収した。回収したスポンジからエタノール(99.5%)により、有効成分を含む抽出液を得た。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析し、定量した。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4の結果より、スポンジに付着した検体3のイソプロピルメチルフェノールは、2.4mgであったのに対し、スポンジ付着した検体4のトリクロサンは、1.68mgであり、イソプロピルメチルフェノールの付着量はトリクロサンに対し1.43倍であった。
以上の結果から、本発明によれば、浴室内に一般的に存在する浴室内物品及び浴室内物品等に対しても良好に付着することが分かった。
【0058】
(実施例3)
表5に記載の配合処方において、各成分を混合し、造粒、乾燥し、顆粒状の加熱蒸散剤(有効成分量300mg)を作製した。加熱蒸散剤1粒あたりの粒径は約1.5mm、長さは約5mmである。
実施例1と同様の自己発熱装置を作製し、仕切部材の内部に上記作製した加熱蒸散剤を収容し、加熱蒸散用製剤を作製した。
【0059】
【表5】
【0060】
<試験例3−1>
検体5〜9、13及び14に対して、試験室における有効成分の濾紙への付着量と煙量を測定した。
約32m
3(3.6m(縦)×3.6m(横)×2.5m(高さ))の密閉空間の試験室に加熱蒸散用製剤を1つ設置するとともに、試験室の天井部、壁部及び床面部にそれぞれ、面積400cm
2の濾紙(ADVANTEC社製「No.1定性濾紙 直径36cmの円形濾紙を20cm×20cmの正方形に裁断したもの」)を設置した。
また、試験室の床面中央部の125cmの高さに、デジタル粉塵計(柴田科学機器工業社製「P−5H2型」)を設置した。
加熱蒸散用製剤の設置場所は試験室の床面の中央部とし、22mLの水(加水発熱反応用液)Wを入れた容器に浸けることにより加熱蒸散させた。
燻煙後90分間無換気状態とし、その後、換気扇を稼働して30分間試験室内を換気し、試験室の各箇所に設置した濾紙を回収し、濾紙に付着した有効成分をガスクロマトグラフィーにより分析し、定量した。ただし、検体14については、濾紙に付着した有効成分を液体クロマトグラフィーにより分析し、定量した。各面に設置した濾紙への有効成分の付着量より、天井部、壁部及び床面部の各面に付着した有効成分の付着量を下記式(3)により算出した。
各面への有効成分の付着量(mg/m
2)=濾紙に付着した有効成分の付着量(mg)/濾紙の面積(0.04m
2) ・・・(3)
試験は2回行い、その平均値を求めた。各面への有効成分の付着量と煙量を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
表6の結果より、加熱開始10分後の煙量が1000cpm以上となるように煙を発生させた検体6〜9は、試験室の天井部だけでなく、壁部にも有効成分であるイソプロピルメチルフェノールが良好に付着することがわかった。一方、煙量が1000cpmより少ない検体5は、壁部にイソプロピルメチルフェノールを十分に付着させることができず、試験室全体に行き渡らせることができなかった。
また、検体13、14は煙量が3902cpm、3531cpmと、いずれも高い煙量であったが、検体13は有効成分であるトリクロサンが天井部や壁部に届かずに床面部に落下し、検体14は有効成分である塩化セチルピリジニウムをどの濾紙からも検出することができなかった。
【0063】
このことから、有効成分としてイソプロピルメチルフェノールを用い、1000cpm以上の煙量で燻煙することにより、該イソプロピルメチルフェノールを試験室の天井部や壁部にまで効果的に付着させることができることがわかった。
【0064】
<試験例3−2>
検体6〜9、11〜13に対して、試験室における煙量を測定した。
約32m
3(3.6m(縦)×3.6m(横)×2.5m(高さ))の密閉空間の床面中央部の125cmの高さに、デジタル粉塵計(柴田科学機器工業社製「P−5H2型」)を設置した。床面に加熱蒸散用製剤を設置し、燻煙を開始してから10分経過後に、煙量(cpm)を測定した。試験は2回行い、その平均値を求めた。結果を表7に示す。
【0065】
【表7】
【0066】
<試験例3−3>
検体6〜13に対して、浴室における有効成分の濾紙への付着量を測定した。
4.4m
3(1.6m(縦)×1.25m(横)×2.2m(高さ))の密閉空間の浴室(FRP材により形成、湿度約70%)に、加熱蒸散用製剤を1つ設置するとともに、浴室の天井部、壁部及び床面部にそれぞれ、面積400cm
2の濾紙(ADVANTEC社製「No.1定性濾紙 直径36cmの円形濾紙を20cm×20cmの正方形に裁断したもの」)を設置した。
加熱蒸散用製剤の設置場所は浴室の床面の中央部とし、22mLの水(加水発熱反応用液)Wを入れた容器に浸けることにより加熱蒸散させた。
燻煙後90分間無換気状態とし、その後、換気扇を稼働して30分間浴室内を換気し、浴室の各箇所に設置した濾紙を回収し、濾紙に付着した有効成分をガスクロマトグラフィーにより分析し、定量した。
各面への有効成分の付着量は上記試験例3−1に記載した式(3)を用いて算出した。結果を表8に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
表7及び表8の結果から、検体6〜9は有効成分であるイソプロピルメチルフェノールが浴室の天井部及び壁部に十分に付着しており、浴室内の各箇所に万遍なく付着していることが分かった。一方、有効成分がトリクロサンである検体10〜13は、煙量が1000cpm以上となるように燻煙させても、浴室内の天井部及び壁部に付着せず、床面部に大部分が落下し、浴室内全体にわたり有効成分を付着できないことが分かった。
以上から、有効成分としてイソプロピルメチルフェノールを用いた場合は、特定範囲の煙量によって、湿度を有する浴室であっても、床面部に落下することなく、天井部及び壁部により多く付着させ、良好に除菌が可能であることが分かった。
【0069】
(実施例4)
表9に記載の配合処方において、各成分を混合し、造粒、乾燥し、顆粒状の加熱蒸散剤(検体8)を作製した。加熱蒸散剤1粒あたりの粒径は約1.5mm、長さは約5mmである。
実施例1と同様の自己発熱装置を作製し、仕切部材の内部に上記作製した加熱蒸散剤4g(有効成分量300mg)を収容し、加熱蒸散用製剤を作製した。
【0070】
【表9】
【0071】
<試験例4>
1.試験板の作製
ポテトスターチ4g、デキストロース20g及び寒天15gを精製水1000mLに溶解してPDA(Potato Dextrose Agar)培地を調製した。PDA液体培地を試験管に10mLずつ分注し、シリコン栓で蓋をしてオートクレーブをかけ、斜めに静置して固め、PDA斜面培地を作製した。
クロカワカビ(C.cladosporioides NBRC 6348)をPDA斜面培地に植え継ぎ、25℃で4日間培養した。培養後、試験管に生理食塩水10mLを加え、滅菌ループで菌体を掻き取った後、ガーゼでろ過してクロカワカビ胞子液とした。
続いて、クロカワカビ胞子液100μLを試験板(FRP、5cm×5cm)の表面1cm
2あたりに4μLずつ均等に25カ所に分けて滴下し、室温で30分間乾燥固定させた。
【0072】
2.除菌試験
上記作製した加熱蒸散用製剤に対して、FRP板上のクロカワカビの除菌率を求めた。
図2に示すように、4.4m
3(1.6m(縦)×1.25m(横)×2.2m(高さ))の密閉空間の浴室15(FRP材により形成)の天井部16、壁部17及び床面部18に、上記作製した試験板(試験板TP1〜TP9)をそれぞれ3つずつ設置した。なお、天井部16においては、試験板TP2を天井部16の略中央に設置し、天井部16の対角線上に略中央から80cmの位置に試験板TP1及び試験板TP3をそれぞれ設置した。壁部17においては、試験板TP5を壁部17の略中央に設置し、壁部17の垂直方向に沿って略中央から70cmの位置に試験板TP4及び試験板TP6をそれぞれ設置した。そして、床面部18においては、試験板8を床面部18の試験板TP2と対向する位置に設置し、床面部18の縦方向に沿って試験板8の中央から40cmの位置に試験板TP7及び試験板TP9をそれぞれ設置した。
上記作製した加熱蒸散用製剤11を浴室15の床面部18の中央部に設置し、22mLの水(加水発熱反応用液)を入れた容器に浸けることにより加熱蒸散させた。
燻煙後90分間無換気状態とし、その後、換気扇を稼働して30分間、浴室15内の換気を行った。
【0073】
換気後、試験板TP1〜TP9をストマッカー袋(商品名:ストマッカー用袋(小)、サイズ:15cm×11cm、材質:ナイロン,ポリエチレン、株式会社アテクト製)に回収し、10mLのGPLP液体培地を加え、FRP板上のクロカワカビを洗い出し、菌数測定用試料液とした。なお、GPLP液体培地は、グルコース20g、酵母エキス2g、硫酸マグネシウム0.5g、カゼインペプチド5g、リン酸二水素カリウム1g、レシチン1g及びポリソルベート80の7gを精製水1000mLに溶解して調製した。
菌数測定用試料液を10倍、100倍、1000倍及び10000倍希釈し、シャーレにPDA液体培地を分注して固めたPDA平面培地に100μLずつ塗沫し、25℃で4日間培養後、コロニー数を計数し、生残菌数とした。
対照として、燻煙に供する前のFRP板を上記と同様にストマッカー袋に回収し、10mLのGPLP液体培地を加え、FRP板を洗い出したものを未処理液とし、未処理液を10倍、100倍、1000倍及び10000倍希釈し、シャーレに分注したPDA平面培地に100μLずつ塗沫し、25℃で4日間培養後、コロニー数を計数し、生残菌数とした。
【0074】
未処理液を処理したPDA平面培地上のコロニー数が100〜200コロニーとなる希釈倍率において、同じ希釈倍率の菌数測定用試料液を処理したPDA平面培地上のコロニー数を計数し、菌数測定用試料液を処理したもの(検体処理時)と未処理のもの(未処理時)の生残菌数から、クロカワカビの除菌率を下記式(4)により算出した。結果を表10に示す。
除菌率(%)=(未処理時の生残菌数−検体処理時の生残菌数)/(未処理時の生残菌数)×100 ・・・(4)
【0075】
【表10】
【0076】
表10の結果より、イソプロピルメチルフェノールを含有する検体8を用いて作製した加熱蒸散用製剤は、浴室の天井部及び壁部におけるクロカワカビの除菌率が全て100%であり、確実に除菌効果が得られることがわかった。また、天井部、壁部における除菌率は、床面部と比べても高い結果であり、本発明の除菌方法により、特に浴室の上部の壁面に対してイソプロピルメチルフェノールを付着させることができ、より高い除菌効果が得られることがわかった。
【0077】
本発明を実施するにあたり、有効な処方例は表11のとおりである。
【0078】
【表11】