【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、独立請求項によって達成される。有利な実施の形態は、従属請求項において特徴づけられる。
【0026】
第1のより好ましい実施の形態では、本発明は、分子特性及び/又は反応条件を分析する方法であって、
a)第1の表面を含む、第1のストレージを供給する工程であって、
サンプル分子の選択物が、直接的又は間接的に表面に規定の配置にて結合している、工程と、
b)少なくとも2つのトランスファーストレージを合成する工程であって、
少なくとも2つの更なる表面を供給することと、
生成物分子を形成することができ、これらの生成物分子及び/又はサンプル分子が表面に結合するような、第1のストレージのサンプル分子と、トランスファーストレージの生成物分子及び/又はサンプル分子との間に明確な空間的関連が存在するようなトランスファー反応、増幅反応及び/又は誘導体化反応の群から選択される反応工程とを、
含む、工程と、
c)第1のストレージ、トランスファーストレージ、サンプル分子、生成物分子、トランスファー反応、増幅反応及び/又は誘導体化反応の分析を含む、分析工程と、
を含む、方法に関する。
【0027】
本明細書に記載する方法において、オリジナルを、標的化された様式で選択されたサンプル分子のプールを有する第1のストレージ中に作製する。第1のストレージはそれゆえ、本発明の意味において、オリジナルと称することもできる。このストレージは、空間的に固定された配置のサンプル分子を有する。オリジナル上の各位置は1又は複数のサンプル分子に明確に関連している。次いで、少なくとも2つの、好ましくは、多数の(a plurality of)トランスファーストレージをこのオリジナルに基づいて合成する。多様な「コピー」がここで可能である。言い換えると、このように作られるトランスファーストレージは、互いに異なっていてもよい。次に、第1のストレージ並びに合成されたトランスファーストレージ及び/又はコピープロセス自体を分析することができる。本発明によるこの方法はそれゆえ、多数の適用及び問題について利用できる種々のコピー及び分析の選択肢を提供する。
【0028】
サンプル分子の選択物(ii)を標的化選択によって作ることが特に好ましい。したがって、現行の技術水準の方法にて可能なものよりも高いスループットがサンプル分子の巧みな組合せによって達成できる。サンプル分子の選択物は、種々の方法で作ることができる。第1に、サンプル分子の大きなプールから標的化選択を行うことが可能である。その一方で第2に、分子の小さなプールから出発して、変異(mutations)により作製された分子のプールを本発明による方法により調べることができるということもまた本発明の範囲内である。これはまず、個々の分子から数個の分子の変異又は並べ替え(permutations:パーミュテーション)によって達成できる。選択をマイクロアレイの前に行うことは従来技術では習慣的ではなく、それゆえ本発明による利点が、とりわけこの工程によって達成され得ることは予期せぬことであった。サンプル分子を変異ライブラリーから選択することもまた好ましい。これは好ましくは分子ライブラリーであるが、すべての分子が出発分子に由来するものである。言い換えると、ライブラリーのすべての分子が出発分子とほぼ同一であり、規定された位置にて変わっているのみである。バリエーションの総数は、変えられる位置1つあたりのバリエーションの積である。したがって100塩基の長さを有するDNA鎖を20の位置のみで変え、かつ4種類の塩基を変えられる位置のそれぞれに挿入する場合、4
20のバリアントとなる。このDNA変異ライブラリーの2つの分子はしたがって少なくとも80DNA塩基において互いに一致することになる。
【0029】
コピーはまた、本発明の意味において、サンプル分子の増幅物(amplificate)、サンプル分子の誘導体又はトランスファーされたサンプル分子であると理解される。コピーは、本発明の意味において、特に、生成物分子及び/又は生成物分子全体のことをいう。したがって、コピーとは、同一の分子だけでなく、iv)により形成され得るあらゆるタイプの生成物分子のこともいう。コピーはまたそれゆえ、増幅物又は誘導体であってもよい。したがって、DNAオリジナル分子のコピーは、例えば、DNA生成物分子又はRNA生成物分子又はタンパク質生成物分子であり得る。
【0030】
反応工程が無細胞反応系、特に好ましくは無細胞発現系にて起こることが特に好ましい。
【0031】
分子の増幅物は、好ましくはオリジナル分子の増幅によって形成される。増幅物はオリジナル分子と同一であってもよいし、又は(例えば、対応するcDNAがDNAから生成される場合)、明確な方法でオリジナル分子から誘導されるものであってもよい。
【0032】
分子の誘導体は、好ましくは、オリジナル分子が変換される際、又は増幅物若しくは分子が生成され、そしてそれらが変換された際、又は直接的若しくは間接的にオリジナル分子に由来する分子(例えば、PCRによりまず増幅され、次いでRNA又はタンパク質がそれから生成される場合のDNA)が生成される際に、形成される分子(複数の場合もあり)である。
【0033】
本発明はしたがって、選択、マイクロアレイコピー技法、スクリーニング並びに個々の分子及び/又は粒子のプロセス管理の新規な組合せとしての特有の増幅を表し、それにより、サンプル分子及び粒子のプールを高度に平行な様式で空間的に分離すること、分離パターンから分子の複数のコピーを調製すること、並びに、これらコピー及び/又はコピープロセス自体に基づいて、以下、
a)分子が純粋種として存在すること(存在し得るいずれの混入物もまた分析プロセスにおいて検出される)、
b)分子が、少なくとも1回、好ましくは繰り返して、別の表面上にコピーされ得ること、
c)分子が、オリジナル若しくはコピーの1つを分析することにより、それらの分子構造に関して分析及び同定され得ること、及び/又は、
d)分子の特性が、コピープロセス中に、又はコピー若しくはオリジナルの分析によって決定されること、
を確実にすることが可能となる。
【0034】
本発明の1つの利点は、コピー工程にある。この工程は、トランスファーストレージ、好ましくは「コピーされたマイクロアレイ」が高品質で供給されるために、特に良好な結果を与える。これは、とりわけ、予想外に高純度が達成され得ることを意味する。さらに、プロセス自体は驚くほど速い。アレイをコピーすることは、この技法は特に、非常に時間及び費用のかかるものである上に、困難性を伴うために、現行の技術水準では未だに確立されていない。本発明により初めて、これらの障壁を克服することができる方法が利用可能となり、そのためアレイをコピーすることは、このたび、多くの異なる分析方法、好ましくは、同時分析方法に利用可能となった。
【0035】
このシステムは、数桁にわたる、10
2〜10
6及びそれより多い異なるサンプル分子を検出及び分析する潜在能力を有する。本方法の更なる利点には、高純度で反応工程の後に生成物分子が得られることが含まれる。さらに、より小さい体積を使用することができ、これは、反応成分の点から節約に寄与し、したがって最終的に全費用の節約にも寄与する。本方法の信頼性が特に高く、それゆえ試験を繰り返す必要がないため、これらすべての利点が費用低減だけでなく、関与する労力の低減をももたらす。
【0036】
本方法の柔軟性及び多用途性が特に有利である。本発明による方法について多数の実施形態及び適用分野が存在し、そのため多くの異なる問題を、本方法を用いることによって処理することができる。
【0037】
本方法の中心的工程はまた、以下のように要約できる。
サンプル分子の選択、
オリジナルの作製、
コピー(複数の場合もあり)の作製、
分析(複数の場合もあり)の実施。
【0038】
本発明による方法では、核酸セグメント、例えば、ゲノムDNA等の、特に長いサンプル分子を、サンプル分子として使用することが可能であるということは、本発明の特別な利点である。これは従来技術と比較すると非常に大きな利点である。したがって、例えば、Monya Bakerによるマイクロアレイに関する論文(“Microarrays, Megasynthesis,” NatureMethods, 2011, vol. 8, pp. 457)において、オリゴヌクレオチドライブラリーの使用にもかかわらず、科学者らは常に、より低いエラー率でより長いオリゴヌクレオチドを使用又は調べるように努力している(「どのように研究者らがオリゴヌクレオチドのライブラリーを使用することを意図しているかにかかわらず、彼らは通常、より多くのオリゴヌクレオチド、より長いオリゴヌクレオチド及びより低いエラー率を望んでいる」)と記載されている。この論文にはまたJay Shendureの発言も引用されており、この科学者は可能な長さが300塩基対又は更には1000塩基対であれば、現在では実行できないであろういくつかの可能性があるであろう(「[達成可能な長さが]300塩基対又は更には1キロベースであるとしたら、現在では不可能であるが、可能になるであろう多くの事柄が存在する)ということを述べている。正確には、この問題は本発明により解決することができる。したがって、例えば、最大1500塩基対のDNA長を用いる場合、最初のストレージ及びトランスファーストレージはまた、なんら質を損なうことなく、かつ、著しくより少ない問題点をもって、作ることができる。これは、当該技術分野が満足な解決を本願の優先日の時点で見出すことができなかった問題を解決することに、本発明が寄与している点を示している。したがってこの問題に対する好適な解決を見つけることの緊急の必要性が存在した。
【0039】
多様なマイクロアレイ又はマイクロアレイに類似の表面が、「第1のストレージ」として作用することができ、それらのいくつかは異なるタイプである複数のコピーを、多様な方法によって作製及び分析することができる。次いで個々の工程の多様な実施形態を自由に組み合わせることができ、それにより、複数の適用及び/又はコピーを作ることが可能となる。この工程の異なる実施形態を以下に記載する。
【0040】
第1のストレージ(本発明の意味においてオリジナルとも称される)の作製において、分子ライブラリー、それに由来するプール又は分子の混合物を使用することが可能である。分子は、溶液中に自由に存在してもよいし、又は粒子若しくは表面に結合していてもよい。代替的には、分子種は互いに個々に分離していてもよく、次いでオリジナルに添加されてもよい。分子は、溶液中に個々に存在していてもよいし、又は2以上の分子種が互いに連結していてもよい。少なくとも2つの分子種が互いに連結している場合、分子の1種の存在及び/又は分析から分子の第2の種の存在及び構造を推測することが可能である(分子タギング)。
【0041】
分子ライブラリーは、好ましくは、例えば、コンビナトリアルケミストリーにより生成される、最大10
15又はそれ以上の異なる分子の混合物である。ほとんどの場合、ライブラリーの分子は、互いにランダムに組み合わされた類似の基本構造又は構造パターンを有する。可能な分子の数は、個々の可能なバリエーションの積として計算される。例えば、1つのDNA鎖は、1つの位置あたり4つの天然基本単位を含有し得る。これは、100塩基長のDNA鎖のコンビナトリアルライブラリーは、4
100の異なるDNA分子を既に含有しているということを意味する。
【0042】
サンプル分子が粒子に結合しているのもまた好ましい。この実施形態により、第1のストレージのより良好な、そして特に標的化された「ローディング(loading:搭載)」が可能となる。
【0043】
ここで、第1のストレージを作製するには、サンプル分子又は粒子を、好適な制限によって互いに分離し、そして空間的に分解してストレージの表面に適用する。サンプル分子を次いで、その後に容易にそれらの位置を離れることができないように付着させる。オリジナルはしたがって空間的分解を有する分子ストレージである。
【0044】
粒子ストレージの場合、ストレージを、粒子を表面に添加することによって作製する。各粒子は正確に1種又は複数種の分子を担持する。担体表面は構造化されていてもよく、粒子は多様な方法で構造体(structuring)上に位置づけられていてもよい。少なくとも2種の分子が1つの粒子上に存在する場合、分子の第2の種の存在及び構造は、分子の1種の存在及び/又は分析から推測することができる(分子タギング)。
【0045】
第1のストレージが粒子トランスファーストレージであるのもまた好ましい。かかるストレージの場合、粒子を表面に添加する。各粒子は次いで1種又は複数種の分子を担持することになる。担体表面は構造化されていてもよく、粒子は異なる方法で構造体上に位置づけられていてもよい。少なくとも1つの種の分子を粒子から遊離させるか、又は粒子の少なくとも1つの種の分子の誘導体若しくは増幅物を作製し、それらを次いでトランスファーストレージの表面にトランスファーする。したがって、トランスファーストレージは、粒子のいくつかの分子がストレージにコピーされているので、或るタイプの自己コピーを構成する。粒子に対するサンプル分子についての位置情報が保持されていること、即ち、粒子の位置とサンプル分子の位置とを互いに関連付けることができることが好ましい。粒子を任意に取り除いてもよいし、又は、引き続く分子トランスファー又は分子の増幅物若しくは誘導体の作製のために使用してもよい。
【0046】
第1のストレージが分子ストレージであることもまた好ましい。オリジナルとしての分子ストレージでは、分子を任意に、結合形態で又は混合物として個々に表面に添加する。担体表面は構造化されていてもよく、分子の付着のための好ましい位置を提供していてもよく、そして構造体への付着は異なる方法で位置づけすることができる。分子は、最初は分子ストレージ中に残る。増幅及び/又は誘導体化によって、分子ストレージに分子(複数の場合もあり)の増幅物又は誘導体をローディングすることも可能であり、これらは、最初は第1のストレージに含有されるものである。分子ストレージはしたがって、いわばオリジナル分子の自己コピーを表し、したがってシグナル獲得を可能とする。分子についての位置情報は保存されている。
【0047】
第1のストレージが特性ストレージであることもまた好ましい。オリジナルとしての特性ストレージの場合、好ましくは、同一の分子又は粒子を表面に付着させる。担体表面は構造化されていてもよく、構造体への付着は多様な方法で位置づけることができる。特性ストレージは、固有に異なる特性を有していてもよいし、又はストレージの各位置における外部の影響に基づいて異なる特性を有していてもよい。これは、含まれるマイクロフルイディクス、マイクロエレクトロニクス、表面(構造、コーティング、材料等)又は分子若しくは粒子の添加又はそれら可能性の組合せによって、異なる特性を導き得る。これら特性は、多様なタイプの(物理的、化学的、生化学的)相違を含んでいてもよく、そして、例えば、異なる体積、表面、水和性、pH、塩含有量、生化学的成分、電荷、電気的、磁気若しくは誘電特性、浸透圧又は添加物を含んでいてもよい。特性ストレージは、好ましくは、生化学又は化学反応の最適化に使用され、そして異なる反応条件を実行すべきである。通常の場合、特性ストレージのすべてのストレージ位置に、同一の分子がローディングされている。
【0048】
当業者であれば、自身の発明的貢献を行う必要なく、好適な第1のストレージを選択することが可能である。
【0049】
上記のすべての第1のストレージは、ストレージ中の1つの位置における分子を標的化された様式で遊離することを可能とする機構を含んでいてもよい。これは、化学的、電気化学的、光化学的又は純粋に電気的/磁気的、熱的機構によって分子を遊離することによって達成することができる。粒子ストレージの場合、完全な粒子又はその一部分が遊離され得る。そのようにして得られた分子はあらゆる更なる調査又は修飾の準備ができている。コピーを任意にストレージから調製してもよく、分子はコピーから標的化された様式で遊離され得る。
【0050】
ここで以下の機構が好ましい。
分子を遊離する分子の再配置をもたらす、酸又は塩基の空間的に分解された添加、
光又は電気を用いた電気分解又は光分解による酸又は塩基の空間的に分解された生成、
電気又は光を用いて局所的に電荷を生成することによる化学基の切断、
光の入力による化学基の転位、
電気又は光を用いた電界又は酸化還元電位の局所変化による、荷電した表面上の静電気的に結合した分子の遊離、
局所的加熱又は冷却による化学基の転位、
添加物又は上記の作用の組合せに基づく化学基の転位、
熱、融解、レーザー光による切断、又は、光、化学若しくは電磁気作用による崩壊プロセスのトリガーによる、粒子の分解及びしたがって分子の遊離、
電気的、磁気、電磁気若しくは誘電電界による、又は、結果として生じる膨張を介して力を生じるための粒子の近傍の液体の標的化過熱による、粒子上での物理的力の生成、
粒子をオリジナルから取り除くための、分子が適用されている表面の機械的切断又は粒子の機械的把持。
【0051】
コピーの作製において、多様な反応をオリジナルの分子コピーを作製するために使用することができる。コピーの作製のための以下に記載するすべての実施形態において、第1のストレージの好ましい実施形態は、キャビティを有するストレージの形態で表される。コピーはその他のストレージについても類似の様式で作製される。
【0052】
本発明の意味におけるコピーを作製するために、サンプル分子を、任意にストレージから遊離させ、そしてトランスファーしてもよく、又はそこに含有される分子を増幅し、そしてトランスファーしてもよく、又は増幅済、及び誘導体化済、及び或る特定の作製済の誘導体若しくは増幅物をコピーにトランスファーしてもよい。誘導体はオリジナル分子と同一であってもよいし、又は誘導体は直接的若しくは間接的形態でオリジナル分子に由来するものであってもよく、それゆえ、オリジナル分子に明瞭に割り当てることができる。例えば、まず同一のDNAをDNAから生成し、次いでその塩基を或る特定の配列位置で酵素系によって交換し、次いでこの修飾DNAを誘導体化してRNA又はタンパク質でさえ生じさせることができる。DNAのオリジナル配列は既知であるので、修飾DNAの配列もまた既知であり、それゆえ結果として得られるDNA及び/又はタンパク質の配列もまた既知である。コピーはしがたって以下の特性を有する。
オリジナルとコピーとの間に特有の空間的関連が存在し、そのため、コピー上の位置の知識に基づいて、位置をオリジナルに割り当てることが可能であり、そしてオリジナル上の位置はコピー上の位置に明確な様式で関連付けることができる。
明確な分子関連性を割り当てることができるため、コピーの1つ又はオリジナル上の分子の分析から、どの分子がコピー及びオリジナルのそれぞれに関与しているのかを確認することが可能である。
【0053】
さらに、コピーの表面は平面状であっても又は構造化されていてもよく、それ自体が今度は更なるコピーを作製することができるオリジナルであり得る。オリジナルについて以下のトランスファー技法を考えうる。
【0054】
トランスファーストレージをトランスファーコピーにより形成することが好ましい。トランスファーコピーにおいて、第1のストレージの分子をトランスファーストレージの表面に直接的にトランスファーする。これは、分子が、オリジナルの表面から遊離し、コピーへとトランスファーされ、そしてコピーに結合することを意味する。
【0055】
トランスファーストレージを誘導体化コピーにより形成することもまた好ましい。誘導体化コピーにおいて、オリジナルのサンプル分子を誘導体化し、そしてこれら誘導体を次いでコピーへとトランスファーする。誘導体は、例えば、オリジナル分子の変換を表すものであってもよく、このためにここで、すべての分子が消費されているであろうために誘導体が更に生じなくなるまで枯渇が起こる。
【0056】
トランスファーストレージを自己作製コピーにより形成することもまた好ましい。自己作製コピーにおいて、オリジナルの分子は、触媒的、酵素的及び/又は化学的活性を有しており、それにより添加された分子が増幅及び/又は誘導体化されることを確実にする。これらの自己作製分子を次いで任意に直接的に又は別の誘導体化若しくは増幅によってコピーへとトランスファーする。
【0057】
トランスファーストレージを組合せコピーにより形成することもまた好ましい。組合せコピーは、コピーを作製するための、誘導体化、増幅又は自己作製の平行又は連続的な連係である。少なくとも2つのプロセスが連係し、増幅又は誘導体化又は自己作製を任意に含んでいてもよい。好ましい場合において、オリジナル分子が同じ位置に保持されるために増幅がまず起こり、次いで増幅物の誘導体化を行うか、又は、増幅物の更なる増幅を行う。所望の分子を生成するために、これらを次いで更にその後に誘導体化及び/又は増幅してもよい。最初の誘導体化及び引き続く増幅の場合、オリジナルが徐々に消費される。しかしながら、この消費は単純な誘導体化コピーの場合よりもかなりゆっくりと起こり、前者とは異なり、オリジナルが消費される前により多くのコピーを作製することを可能とする。
【0058】
原則として、任意の数の増幅、誘導体化及び自己作製工程を、コピーの作製前に連係させることができる。
【0059】
トランスファーストレージを複数分子コピーにより形成することもまた好ましい。複数分子コピーでは、少なくとも2種の分子を1つの位置からコピーする。次いで、分子のそれぞれの種について上記コピー作製(直接的トランスファー、増幅、誘導体化、自己作製、組合せ)の少なくとも1つを使用するか、又は組み合わせる。
【0060】
トランスファーストレージを液体コピーにより形成することもまた好ましい。液体コピーは、オリジナル自体の上の好適な分子によって又はその存在下で誘導体化又は増幅される実現可能な分子として、第1のストレージに適用される。言い換えると、誘導体及び/又は増幅物の作製と基礎をなす分子との間に空間的関連が形成される。添加された分子のこれら誘導体及び増幅物はかならずしもコピーへトランスファーする必要がない。この好ましい実施形態において、オリジナルの分子が誘導体及び増幅物についての生成特性を有するという記載は、その他の分子についての生成特性を有するということである。これは、例えば、オリジナル上に異なる酵素が存在する際に起こる場合である。
【0061】
トランスファーストレージをDNAからDNAへのコピーにより形成することもまた好ましい。DNAからDNAへのコピーは増幅コピーに相当する。この場合、オリジナルにおけるDNAがDNAポリメラーゼによって再びDNAへと増幅される。結果として得られた増幅物は次いで直接的にコピーに結合させてもよいし、又は表面上での固相ポリメラーゼ反応によって更に増幅してもよい。
【0062】
第1の実験において、DNA分子をサンプル分子として選択した。タンパク質「コピー」を反応工程によって作製された。驚くべきことに、生成物分子(ここではタンパク質)は、小型化システムにおいて、予期されたよりもかなり迅速に形成されることが判明した。DAPAシステムと比較して、特に、達成された反応は3倍〜10倍速く、したがって、将来的には、タンパク質コピーは、現時点で必要とされた約90分ではなく、約15分後には終わることができる。
【0063】
DNAからDNAへのコピー(サンプル分子がDNAであり、かつ生成物分子がDNAである)では、DNAマイクロアレイを、これまでには知られていない純度のトランスファーストレージとして作製することができる。純度が非常に高いため、使用されるコピープロセスよりも多くのエラーが生じるであろうため、おそらくはシークエンシングプロセスによってさえ検出することができないであろう。
【0064】
第1のサブセクションにおいて、本方法はしたがって、より少ない労働力しか要せず、より少ない材料を使用し、かつより高純度の結果をもたらす、(トランスファーストレージの形態の)マイクロアレイを生成するより高速の方法を可能とし、これにより、劇的に費用が節約される一方、従来の方法では作ることのできなかった、又は非常に時間及び費用がかかり、かつ大きな労働力を要する、非経済的な方法でしか実現できなかったような、マイクロアレイの作製もまた可能となる。それゆえ、本方法の第2のサブセクションにおいて、現行の技術水準では行うことができなかった分析が可能である。
【0065】
さらに、DNAであっても完全な体積単位のコピーを得るために十分であることは有利である。
【0066】
トランスファーストレージをDNAからRNAへのコピーにより形成することもまた好ましい。一つの好ましい実施形態において、DNAからRNAへのコピーは増幅コピーに相当する。この場合、直接的にRNAポリメラーゼによってRNAへと増幅されるDNAがオリジナルにおいて存在する。結果として得られる増幅物を次いで、直接的にコピーに結合させてもよい。別の好ましい実施形態において、DNAからRNAへのコピーを組合せコピーとして形成してもよい。この場合、オリジナルのDNAはDNAポリメラーゼによってまずDNAとして増幅され、次いで再度RNAポリメラーゼによって増幅されて、固相反応において、表面に結合したRNAが形成される。
【0067】
トランスファーストレージをDNAからタンパク質へのコピーにより形成することもまた好ましい。一つの好ましい実施形態において、DNAからタンパク質へのコピーは、複数の反応工程が系列をなして連結される、組合せコピーに相当する。オリジナルのDNAはまずRNAポリメラーゼによってRNAへと転写(翻訳)され、そしてこのRNAが次いでリボソームによって対応するタンパク質へと翻訳(転写)される。結果として得られるタンパク質は次いで、表面に結合する。しかしながら、別の有利な実施形態において、反応を2つのサブステップに分割することも可能である。まず、オリジナルのDNAに基づいて、RNAをRNAポリメラーゼによって生成し、次いでコピー表面に結合させる。コピーは、RNAを鋳型として用いる酵素混合物が添加されるまでこの中間状態のままにすることができ、次いでRNAから対応するタンパク質が生成し、このタンパク質はRNAの直近で沈降する。
【0068】
トランスファーストレージをRNAからタンパク質のコピーにより形成することもまた好ましい。一つの好ましい実施形態において、RNAからタンパク質のコピーは、対応するタンパク質が酵素混合物によってこのRNAを用いて生成されるため、組合せコピーに相当する。結果として得られるタンパク質を次いでコピーへとトランスファーする。
【0069】
トランスファーストレージをRNAからDNAへのコピーにより形成することもまた好ましい。一つの好ましい実施形態において、RNAからDNAへのコピーは組合せコピーに相当し、対応するDNAは、逆転写酵素によってRNAから生成される。DNAを次いで任意に直接的にコピーへとトランスファーしてもよく、又はDNAポリメラーゼによって更に増幅し、その後にトランスファーしてもよい。かかる実施形態において、RNAは有利なことに結果として得られるDNAとともに分析することができる。
【0070】
トランスファーストレージをRNAからRNAへのコピーにより形成することもまた好ましい。一つの好ましい実施形態において、RNAからRNAへのコピーは、RNAが逆転写酵素により誘導体化されてDNAを形成するために、組合せコピーに相当する。次いで、DNAをRNAポリメラーゼによってRNAへと再度増幅することができ、又はまずDNAポリメラーゼによってDNAへと増幅し、次いでこのDNAをRNAポリメラーゼによってRNAへと増幅することもできる。RNAを次いでコピーへとトランスファーする。
【0071】
次に分析を行う。分子の構造の分析はそれらの特性もまた包含するものであってもよく、そして異なる時点で行ってもよい。
第1のストレージを、コピーの前に分析してもよい。
第1のストレージ、トランスファーストレージ及び/又はトランスファーストレージと第1のストレージとの間の媒介物を、コピープロセスの最中に分析してもよい。
第1のストレージ、トランスファーストレージ及び/又はトランスファーストレージと第1のストレージとの間の媒介物を、コピープロセスの後に分析してもよい。
数個の1種又は複数の種の分子を個々に、第1のストレージ又はトランスファーストレージから溶かし出して分析してもよい。
増幅、誘導体化又は自己作製等のコピープロセスのサブステップを分析する。
【0072】
分析は適用の目標に大きく依存する。慣習的な現行の技術水準の分析方法を使用してもよい。確立された方法が好ましい方法であり、光学的に検出することができる、蛍光、発光、無標識検出、染色剤の生成、又は電子工学的に検出することができる酸化還元反応種を含むものである。コピーとオリジナルとを空間的に関連付ける能力に基づいて、この関連付け(association)はまた互いにすべての分析によって達成することができ、したがって、それぞれの構造及び特性は、コピーの分析とオリジナルの分析とに基づいて、各分子、その誘導体及び増幅物と関連付けることができる。
【0073】
標的化された様式で特別なアレイを作るために以下の点をこのたび本発明を用いて組み合わせることができる。作られたトランスファーストレージは次いで或る特定のスクリーニングの目的のために使用することもできる。
【0074】
原則として、本発明による各方法は、好ましくは以下の4つの成分を必要とする。
標的化された様式で選択された多様なサンプル分子が、オリジナルとも称される第1のストレージを作製するための源として使用されること、
オリジナルの生成が記載されたような多様な方法で起こり得ること。
次いで異なるコピーがトランスファーストレージの形態でオリジナルから調製されること、
分析反応が次いで前の方法の後又は最中に起こること。
【0075】
本発明による方法は、好ましくは、ランダムライブラリー又はプールコピーに用いられる。これは、DNA若しくはRNAの群のいずれかに属するか、又はRNA若しくはDNAを担持し、かつ、人工若しくは天然起源であるか、又は選択プロセス若しくは変異プロセスに基づいて作製された、分子のあらゆる収集物(プール)をいう。これらの分子はまた、ケミカルライブラリーに由来するものであっても又はディスプレイプールに由来するものであってもよい。これらサンプル分子の標的化選択物は、本明細書に記載する方法のいずれによって導入及びコピーしてもよい。DNA、RNA又はタンパク質の形態のコピーを任意にそれらから作ることができる。次いでコピーのそれぞれは、結合、相互作用、酵素活性又は上記特性のいずれかの変化を任意に調べるために用いてもよい。
【0076】
さらに、ディスプレイコピーのための使用が好ましい。確立されたディスプレイ方法(酵母2ハイブリッド、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、SELEX等)に基づいて、まず、分子標的(結合パートナー、基質、抗体、抗原等)に関して濃縮を行う。この工程は、それぞれのディスプレイ方法における現行の技術水準に相当する。しかしながら、最初の濃縮工程の後、作製されたプールはすでに、本明細書に記載する方法に従ってオリジナルへと変換することができ、そしてこのオリジナルは次いで、DNA、RNA又はタンパク質の形態で何回もコピーすることができ、したがってディスプレイの最初の工程で濃縮された分子は、それらの全数にてマイクロアレイとしてマッピングされる。次いで測定を標的に関してこれらのコピーされたマイクロアレイに対して再度行うことができる。これは次いで従来のディスプレイと比較して調べる分子をはるかに高スループットとすることができ、特にそれはプール全体をカバーする。必要であれば濃縮をもう一度行ってもよい。
【0077】
さらに、リボソームコピーにおける使用が好ましい。この使用(
図13もまた参照されたい)はリボソームディスプレイに由来する。この目的のために、リボソームディスプレイにおけるように、所望の標的に対する結合をまず作製し、そして結合物質(binders)を濃縮する。濃縮された結合物質を次いで本明細書に記載する方法の1つに従ってオリジナルへと変換する。ここで好ましい実施形態は分子ストレージであり、それにより最初に正確に、付加したRNA鎖を有する1つのリボソーム又はRNA鎖のみ又はRNA鎖に由来するDNA若しくはcDNA鎖が、ストレージの各位置に添加される。次いで増幅を好ましくは行い、それによりストレージは好ましくはDNAにより占められる。これは、オリジナルが長期安定性を有すること、及び個々の鎖の分解にはいかなる分子情報の喪失も伴わないことを確実にする。次に、オリジナルを任意に、DNA、RNA又はタンパク質アレイへとコピーしてもよい。一つの好ましい実施形態において、タンパク質コピーを作製し、次いで再度、標的との結合に関して分析する。オリジナル又はDNAコピーを、DNA配列がタンパク質コピーとの任意の結合と明瞭に関連付けられ得るようにシークエンシングする。
【0078】
ファージコピーにおける本方法の使用もまた好ましい。この適用(
図14もまた参照されたい)は、ファージ(phage)ディスプレイに由来する。リボソームコピーと同様に、ファージプールを、所望の標的に関していったん濃縮し、次いでファージを直接的にオリジナルへとトランスファーする。次にリボソームコピーの場合のようにして工程を行う。次いで増幅を好ましくは行うことにより、ストレージは好ましくはDNAにより占められる。これは、オリジナルが長期安定性を有すること、及び個々の鎖の分解にはいかなる分子情報の喪失も伴わないことを確実にする。次に、オリジナルを任意に、DNA、RNA又はタンパク質アレイへとコピーしてもよい。一つの好ましい実施形態において、タンパク質コピーを作製し、次いで標的との結合に関して再度分析する。オリジナル又はDNAコピーを、DNA配列がタンパク質コピーとの各結合に明瞭に割り当てられ得るようにシークエンシングする。
【0079】
さらに、抗体コピー又はScFvコピーにおける本方法の使用が好ましい。ディスプレイコピーの特別な好ましい実施形態において、ファージ又はリボソームは、単純なタンパク質を担持せず、代わりに抗体又は抗体の部分又はScFv(単鎖抗体)等の人工抗体型構築物を担持する。本方法を、これらを用いてファージコピーについて行ったように進める。結果として得られるタンパク質アレイは、抗体、抗体部分及び/又はScFvを担持し、したがって標的に関する結合物質である。本方法は抗体結合の最適化に使用してもよい。
【0080】
さらに、集団コピーが好ましい。この適用において、生物(細胞、ウイルス、細菌)又は巨大分子(ベクター、プラスミド、染色体等)又は分子複合体(例えば、一方が抗体を提示し、他方が抗原を提示し、したがって1つのタンパク質複合体あたり2つのDNAタグを担持する、例えば、2つのリボソームディスプレイの混合物の相互作用)の集団を、好ましくはまた分子ストレージとしての、オリジナルへと導入する。1つのストレージあたり1又は複数の分子を標的化された様式で増幅し、DNA又はRNAの形態でストアする。ストレージの各系統はしたがって少なくとも1つの分子を含有し、その少なくとも1つの分子から遡って源へと追跡できる。次いでコピーを任意に、DNA、RNA又はタンパク質の形態で作製してもよく、そしてオリジナル又はDNAコピーのシークエンシングを行ってもよい。
【0081】
以下の適用もまた好ましい。
サンプル分子の最初のプールを、そこに含有される1又は複数の遺伝子の変異の数及びタイプについて分析する。
サンプル分子の最初のプールにB細胞又はT細胞を含有させ、B細胞及び/又はT細胞受容体の軽鎖及び重鎖のバリエーション及び組合せを分析する。
サンプル分子の最初のプールに多数体生物を含有させ、1又は複数の遺伝子セクションの遺伝子分散を分析する。
サンプル分子の最初のプールに相互作用パートナー(それぞれにDNAタグを付加する)を含有させ、結合パートナーの分子構造を、2つのDNA配列の共同解析から推測することができる(例えば、上記の抗体及び抗原ディスプレイの2つのリボソームディスプレイの混合物)。
サンプル分子の最初のプールに1つのタイプの生物を含有させ、分析により、そこに含有される1又は複数のタンパク質の酵素活性又は結合活性についての情報を提供する。
サンプル分子の最初のプールに1つのタイプの生物を含有させ、分析により、1又は複数のRNA又はDNAセクションの酵素活性又は結合特性についての情報を提供する。
【0082】
ゲノムコピーについて本方法を使用することもまた好ましい。ゲノムDNAを1又は複数の生物から得て、断片化し、次いでオリジナルへと導入する。これはまた、好ましくは分子ストレージにおいて行う。上流増幅、例えば、DNAを粒子へと増幅するエマルジョンPCRの場合、粒子ストレージを使用する。オリジナルにおけるDNAを次いでDNAコピーの作製に使用する。結果として得られるアレイはしたがって添加された生物のゲノムアレイを構成する。かかるアレイはこれまでには生物から直接的に作ることができなかった。
【0083】
転写コピーもまた好ましい。RNA、好ましくは、mRNAを、1又は複数の生物から得て、次いでオリジナルへと導入する。これはまた好ましくは、分子ストレージにおいて行う。粒子ストレージを、上流増幅、例えば、RNAをcDNAへとまず変換し、次いでcDNAを粒子上で増幅する、エマルジョンPCRの場合に用いる。RNAを好ましくはまずオリジナルにおけるcDNA中にストアする。cDNAはRNAと比べてはるかに安定性が高い。次いでコピーをRNA又はcDNAの形態で作製する。結果として得られるアレイはしたがって充填した生物の転写アレイである。かかるアレイはこれまでにはオリジナル生物から直接的に作ることができなかった。さらに、こうして作製されたcDNAアレイは発現分析の分野での使用を可能とするものであり、一方、作製されたRNAアレイはプロモーター又は転写因子の結合分析に使用される。
【0084】
プロテオームコピーもまた好ましい。この場合、RNA、好ましくは、mRNA又はDNAを1又は複数の生物から得て、次いでオリジナルへと導入する。そこにストアされた分子は好ましくは、RNAに由来するDNA又はcDNAからなる。ここで好ましい実施形態は、分子ストレージである。粒子ストレージを、上流増幅、例えば、RNAをcDNAへとまず変換するか、又はDNAをそのまま放置し、次いでそれを粒子上で増幅する、エマルジョンPCRの場合に用いる。次にコピーをタンパク質の形態で作製し、次いで、結合、相互作用又は酵素反応性の形態で活性について分析する。さらに、このアレイは、mRNAが使用されている限りはこのようにして導入された生物のプロテオームである。DNAを直接的に使用した場合、コピーはプロテオームに存在するより多くのタンパク質をマッピングする。完全なプロテオームアレイはこれまでには容易には作ることができなかった。InvitrogenからのProtoArray5.0は、例えば、100000を超えるタンパク質を有するヒトからの9000のタンパク質しか包含しない。
【0085】
タンパク質コピーもまた好ましい。タンパク質及び/又はタンパク質の変異をコードするDNAをサンプル分子のプールから得て、オリジナルへと導入する。そこにストアされる分子は好ましくはDNAからのものである。ここで好ましい実施形態は、分子ストレージである。粒子ストレージを、上流増幅、例えば、DNAを粒子上で増幅するエマルジョンPCRの場合に用いる。次いでコピーをタンパク質の形態で作製し、次いで結合、相互作用又は酵素反応性の形態で活性について分析する。したがって作製されるアレイは、オリジナルタンパク質の全般的アミノ酸スキャンである。4つのみのアミノ酸位置のたった1つの変異スキャンについて160000の変異体を作らなければならないので、かかるアレイはこれまでには作ることができなかった。これは従来利用可能であった技術を用いてはこれまでには実行できなかった。
【0086】
分子の最適化と関連して、スキャンという用語は、好ましくは個々の分子基本単位の系統的なバリエーションのことをいうと理解される。タンパク質及びペプチドについて用いられるようなアラニンスキャンにおいて、1つのアミノ酸がほぼ不活性なアラニンにより標的化された様式で置き換えられ、結果として得られる生成物が試験される。生化学的に重要なアミノ酸が置き換えられた場合、生体分子は明らかに低減した活性を示すであろう。したがって、分子の活性及び/又は特性のための重要位置及び非重要位置を、スキャンによって決定及び/又は推定することができる。例えば、アラニンではない別のアミノ酸であればオリジナル分子と比較してより高い活性又は改善された特性を有するか否かについての情報を得ることはできない。
【0087】
コンビナトリアル(combinatory)ケミストリーコピーの分野における好ましい適用は非常に特別な組合せである(
図15もまた参照されたい)。好ましくは粒子上で行われる、ケミカルライブラリーの合成の最中にも、実際の分子に加えて、別の「情報分子」をそれぞれの合成工程によりDNA又はRNAの形態で構築する。こうすることにより、DNA及び/又はRNAの配列がこうして構築された分子と明瞭に関連付けられる。このコンビナトリアルライブラリーの完成後に、粒子を、標的に関する濃縮に供する。言い換えると、標的と相互作用する粒子のプールが残存する。これらの選択された粒子を次いで好ましくは、オリジナルとしての粒子ストレージ、即ち、粒子トランスファーストレージに導入する。ここでDNA又は分子を任意に粒子トランスファーストレージへとトランスファーすることができる。粒子ストレージのこの実施形態において、最初にはトランスファーを行わず、次いで、任意にDNA及び/又は分子を担持する複数のコピーを作製する。DNAをこの目的のために増幅してもよい。通常の場合、分子は粒子から遊離する。1つの粒子は好ましくは、1つのコピーを作製するために必要なものよりも明らかに多くの分子を担持し、それにより分子の複数のコピーを作製することができる。分子マイクロアレイに基づき、標的又は標的に類似する構造への結合を再度検証することができ、一方、DNAコピーを、配列を解読するために用いる。配列と構造との相関に基づいて、分子アレイ上の各スポットについて分子構造を与えることができる。これは従来知られていたコンビナトリアル分割及び混合ライブラリーによっては不可能である。
【0088】
さらに、異なる種のサンプル分子が粒子に結合していることが好ましい。
【0089】
第1のストレージ及び/又はトランスファーストレージの表面が構造化されていることが好ましい。
【0090】
サンプル分子及び/又は生成物分子はタンパク質、酵素、アプタマー、抗体又は抗体の一部、受容体又は受容体の一部、リガンド又はリガンドの一部、核酸、核酸系誘導体、転写因子及び/又は転写因子の一部、コンビナトリアルケミストリーにより生成される分子を含む群から選択されることが好ましい。
【0091】
また、反応工程が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及び/又は無細胞反応混合物によって行われることが好ましい。
【0092】
表面の構造体が、キャビティ、隆起(elevations)、粒子を含有するキャビティ及び/又は粒子を取り囲む隆起を含む群から選択されることが好ましい。
【0093】
キャビティはおよそ生物細胞のサイズであることが好ましい。キャビティは、特に好ましくは、5μm〜250μm、最も特に好ましくは、10μm〜50μmの直径を有する。この反応工程は、この桁のキャビティにおいて特に良好に起こることが見出された。キャビティが小さいほど、収率は驚くほどよくなる。
【0094】
また、第1のストレージが、異なる領域に、異なる物理的、化学的及び/又は生化学的特性、好ましくは、異なる体積のキャビティ、pHの相違、塩含有量の相違、温度の相違、異なる表面、水和性の相違、電荷の相違、電気的、磁気及び/又は誘電特性の相違、浸透圧に関する相違、異なる添加物、異なる生化学的成分を含むことが好ましい。
【0095】
反応工程の最中に、サンプル分子の少なくとも1つの種が、粒子及び/又は表面から遊離されることが好ましい。
【0096】
さらに、分析工程e)が、無標識方法、好ましくは、RifS検出、iRIfS検出、Biacore検出、表面プラズモン共鳴検出、偏光解析法、質量分析法、質量増加の検出、屈折率変化の検出、光学的、磁気、電気的及び/又は電磁気特性の変化の検出を含むことが好ましい。
【0097】
また、分析工程e)が、標識を使用する方法、好ましくは、蛍光測定、吸収剤及び/又は分散性色素による検出、同位体標識の検出による質量分析法、表面及び/又は溶液の屈折率及び/又は光学的特性を変化させる分子による検出を含むことが好ましい。
【0098】
また、分析工程e)が、第1のストレージ及び/又はトランスファーストレージの表面の上の溶液を分析する方法、好ましくは、濁度測定、蛍光測定、吸収性色素若しくは染色剤の検出及び/又は発光測定を含むことが好ましい。
【0099】
別の好ましい実施形態において、本発明は、上述のような方法における、つまり、転写因子、転写の効率、転写の最適化、プロモーターの効率、スプライソソーム、制限基質(restriction substrates)、増幅系、コドンの最適化、タンパク質の機能性、酵素の機能性、酵素の最適化、アイソザイム、リボザイム、反応の最適化及び/又は結合の最適化を同定するスクリーニング法における、変更点に関する。
【0100】
好ましい「全ゲノム相互作用スクリーニング」は、ゲノムレベルでの相互作用の同定を可能とする。生物のゲノムコピーを作製する。今ではこの生物のすべてのDNAがマッピングされているので、あらゆる相互作用パートナー又は分子をサンプル分子としてこの第1のストレージに添加することができる。ここで以下の適用が好ましい。
密接に関連する生物又は変異体のDNAを添加する。結合を有する領域は、同一のDNAを示し、一方結合を有さない領域は、これらの種の間の明らかな相違を示す。これらの相違は次いで種の識別のためのマーカーとして使用することができる。
同じ生物からのRNA又はcDNAを添加する。個々のスポットの強度は、それが遺伝子であるか否か、またどれほど強くそれが発現しているかを示す。
cDNAを蛍光色素1と混合し、処理されたサンプルを蛍光色素2と混合し、次いでアレイに適用する。染色に基づいて、どの遺伝子が活性化されたか、またどれほど強く活性化されたかを決定することができる。
タンパク質をアレイに適用する。相互作用又は結合が存在すれば、それらをDNA配列と関連付ける。タンパク質はそれゆえDNA結合物質として同定することができる。
【0101】
ゲノムレベルでの転写因子スクリーニングのための使用もまた好ましい。本方法は、全ゲノムのレベルでの転写因子の同定を可能とする。転写因子を全ゲノムアレイに適用する。個々のスポットへの結合により、転写因子の配列依存性を決定することができる。さらに、結合速度及び結合強度等の更なるパラメーターを、例えば、動力学測定によって決定することができる。したがって、その相互作用のゲノム全域にわたるプロファイルを各転写因子について得ることができる。
1つの転写因子のみを添加する場合、そのプロファイルを決定することができる。温度、pH又は塩含有量等の条件を変動させることにより、この依存性もまたゲノム全体にわたって決定することができる。
2つの転写因子を、異なる標識、例えば、同じ割合の色素又は染色剤と混合し、次いでアレイに適用する場合、転写因子の相互作用を個々のスポット及びそれらの染色の強度に基づいて推定することができる。1つのみ若しくは両方の転写因子によって宛てられるか、又はいずれの転写因子によっても宛てられない配列を同定することができる。温度、pH、塩含有量等のバリエーションもまた可能であり、それにより転写因子を標的化された様式で強化又は低減することができる。
転写因子についての変異が既知である場合、変異分析を行うことができる。次いで異なる標識を有する野生型及び変異もまたアレイ上で使用する。結合挙動及びしたがって遺伝子活性化の相違を色の相違に基づいて分析するこができる。
【0102】
さらに、ゲノムレベルでの増幅スクリーニングのための使用もまた好ましい。本方法は、DNA及びRNAについての増幅システムのより深い理解を可能とする。個々の分子は、増幅システム(例えば、DNAポリメラーゼ、ジャイレース、ヘリカーゼ等のDNA増幅又はRNA増幅)の分子複合体であり、全ゲノムアレイにも適用することができる。これらの分子は次いで優先的に増幅に必要な位置に結合する。増幅に必要な位置としては、例えば、RNAポリメラーゼについてのTATAAボックス又はDNAポリメラーゼについての複製フォーク、及び、ヘリカーゼ、ジャイレースについての結合領域等が挙げられる。
増幅システムの個々の補因子を添加することにより、どこで(どの配列において)及びどの分子の存在下で、増幅複合体がアセンブルするのかを段階的に解読することができる。
1つの染色剤を有する補因子及び別の染色剤を有するイソ補因子(iso-cofactor)又は変異体(mutation)を添加することにより、どの遺伝子が優先的に増幅されるかを色の相違に基づいて確認することができる。このようにして遺伝子の発現に関する結論を導くことが可能である。
【0103】
さらに、ゲノムレベルでの抗生物質スクリーニングのための使用もまた好ましい。これは、新しい抗生物質を同定するため、及び、既知の抗生物質をより具体的に特徴づけるために役立つ、増幅スクリーニングの特別な形態である。これにより同定された抗生物質は、DNA又はRNA増幅阻害剤として役立ち、それゆえ静菌剤として分類される。この目的のために、ヒトゲノム又は細菌ゲノムをDNAの形態で作製する。このDNAは、好ましくは非常に長く、及び/又は、その末端で連結しており、このためDNAを「広げる」ことを達成するのが非常に困難なものである。いくつかのDNAコピーを作製する。各DNAコピーを次いで、DNA若しくはRNA増幅複合体のアセンブリー又はDNA若しくはRNAポリメラーゼのための補因子の結合を抑制又は制限する別の抗生物質と混合する。
トポイソメラーゼIIに関するジャイレース阻害剤であるナリジクス酸及びシプロフロキサシン等の既知の抗生物質を特徴づけるために、細菌トポイソメラーゼを1つの染色剤で標識し、ヒト対応物を別の染色剤で標識する。これらタンパク質を混合し、抗生物質と組み合わせて、アレイに適用する。次いで、色の相違が細菌での増幅が制限されている場合及びヒトでの増幅が制限されている場合にすぐに明らかとなる。タンパク質の増幅及び/又は引き続く発現における干渉が、これら配列に基づいて推測できる。したがって可能な限り侵襲性が低い様式でヒト系を阻害し、かつ、可能な限り効果的な方法で細菌系を阻害するために、多様な抗生物質を互いに協調させることができる。
新規又は未知の活性成分を調べるために、増幅システムのヒト成分を染色剤で標識し、細菌系の成分を別の染色剤で標識する。これらの系を次いで組み合わせる。まず、混合物を直接的にゲノムアレイに適用する。これは参照として影響を受けていない系を表す。次いで活性成分を各混合物に添加し、ヒト系が影響を受けておらず細菌系が影響を受けている場合が確認されるまで試験を続ける。この場合は新しい抗生物質が関与している可能性がある。しかしながらさらに、増幅システムの各成分を新しい活性成分を用いて個々に試験することができる。したがって活性成分によって攻撃されているサブユニットを同定することができ、次いでこのサブユニットがDNAにもはや結合していないことを示すことが可能となる。
【0104】
さらに、ゲノムレベルでのスプライソソームスクリーニングのための本方法の使用もまた好ましい。本方法によりスプライスバリアントの同定が可能となる。全ゲノムアレイをRNAとしてマッピングする。このRNAはしたがってプレ−mRNAに対応する。次いで個々の成分又は完全なスプライソソーム複合体をRNAコピーに適用する。これにより、スプライソソームによって認識される個々の配列を同定することが可能となる。さらに、そのゲノム全域にわたる相互作用を各スプライソソームに割り当てることが可能である。RNAコピーからDNAコピーをスプライソソームによる処理の後に調製する場合、更なるシークエンシングもまた可能である。オリジナルDNA及びスプライソソームによる処理後のDNAの知識から、配列依存性及びスプライスバリアントに関するより深い知識を得ることが可能である。さらに、標的化変異及び/又は補因子の添加により、或る特定のスプライスバリアントを選ぶことも可能である。この知見を、例えば、好ましいスプライスバリアントを提供する又は選ぶために、生物の培養又は幹細胞の分化において標的化された様式で用いることができる。
【0105】
さらに、「全トランスクリプトーム相互作用スクリーニング」のための本方法の使用もまた好ましい。本方法は、トランスクリプトームレベルでの相互作用の同定を可能とする。生物のトランスクリプトームコピーを次いで作製する。コピーはまた、DNA、cDNA及び更にはRNAの形態で作製する。今ではこの生物のすべてのcDNA及びRNAがマッピングされているので、あらゆる相互作用パートナー又は分子をいまではこのアレイに適用することができる。以下の適用が好ましい。
cDNA及びDNA/RNAコピー:密接に関連する生物又は変異体のDNAを添加する。結合を有する領域は同一のDNAを示し、一方、結合を有さない領域はこれらの種の間の明らかな相違を示す。これらの相違は次いで種識別のためのマーカーとして使用することができる。さらに、これによってこれらの種は同一の又は関連する遺伝子を有することが知られる。
cDNA及びDNA/RNAコピー:同じ生物のRNA及び/又はcDNAを添加する。個々のスポットの強度は、これが遺伝子であるか否か、またどれほど強くそれが発現しているかを示す。
cDNA及びDNA/RNAコピー:別の生物のRNA及び/又はcDNAを添加する。結合は、関連する遺伝子、ひいてはタンパク質を示し、一方、結合を有さないスポットは、別の生物が対応する遺伝子を有さないこと又はそれらが現在は不活性化されていることを示す。
DNA/RNAコピー:参照のcDNAを蛍光色素1と混合し、処理されたサンプルを蛍光色素2と混合し、次いでアレイに適用する。染色に基づいてどの遺伝子が活性化されているか、またどれほど強く活性化されているかを確認することが可能である。
DNAコピー:タンパク質をアレイに適用する。相互作用又は結合が存在すれば、これをDNA配列に割り当てることができる。それゆえDNA結合物質として及び潜在的に相互作用パートナーとしてのタンパク質を、タンパク質がこの遺伝子セグメントと相互作用するというシグナル伝達の形態で同定することが可能である。
RNAコピー:タンパク質をアレイに適用する。相互作用が存在すれば、タンパク質はしたがってRNA−相互作用タンパク質である。これらタンパク質は、例えば、最初は付着しており、次いで必要により遊離するRNAについてのストレージである可能性があり、又はシグナル伝達内での制御機能を想定することができる。
RNAコピー:siRNAをアレイに適用する。相互作用点はsiRNAに基づく制御機構を示す。個々のsiRNA又は刺激細胞(色1)及び非刺激細胞(色2)からのsiRNAの2つの着色標識サンプルを添加することにより、これら相違に基づく制御機構を導くことが可能である。
【0106】
さらに、「全プロテオーム相互作用スクリーニング」のための使用もまた好ましい。本方法はプロテオームレベルでの相互作用の同定を可能とする。生物のプロテオームコピーを作製する。オリジナルを作製するためにmRNAを用いた場合は、タンパク質コピーは生物のプロテオームを反映する。オリジナルを作製するためにDNAを用いなかった場合は、プロテオームに存在するよりも多くのタンパク質が反映される。今ではこの生物のすべてのタンパク質がいまやマッピングされているので、あらゆる所望の相互作用パートナー又は分子をこのアレイに適用することができる。ここで以下の適用が好ましい。
生物又は変異体のDNAを添加する。結合を有する領域はDNAと相互作用するタンパク質である。これらは、例えば、ヒストン、転写因子又はDNA修復タンパク質等であり得る。
生物のDNA、RNA又はタンパク質を或る色で添加し、別の生物又はこの生物の変異体のDNA、RNA又はタンパク質を別の色で添加する。共通性及び相違を、明瞭に色パターンに基づいて強調することができる。関連性が推定できる。相違はそれぞれの種の明らかな同定のためのマーカーの開発及び活性成分の開発を可能とし、これらは次いで種特異的様式で使用することができる。
【0107】
さらに、活性成分の添加による活性成分スクリーニングのための本方法の使用が好ましい。本方法は、結合に基づく活性成分の同定を可能とする。DNA、RNA及びタンパク質マイクロアレイの形態のゲノム、トランスクリプトーム及びプロテオームコピーをこれらの適用のために作製する。新規な活性成分又は既知の活性成分を次いでこれらのアレイに添加する。この活性成分が結合するスポットは、この活性成分の潜在的な相互作用パートナーである。したがって完全な生物を超えて、活性成分の活性プロファイルを作製することができる。iRIfS又はBiacore等の動力学測定を可能とする測定方法と組み合わせて、結合強度を推測することもまた可能である。
1つのみの活性成分を添加する場合、その活性成分の活性プロファイルを決定することができる。
染色剤等の異なるマーカーを有する2つの活性成分を添加する場合、共同作用を結果として得られる呈色から推測することができる。各場合に1つのみの活性成分を有する対照実験によって、競合を検出することができる。これにより例えば、2つの活性成分を組合せ調製物として開発することが可能となり、及び/又は、2つの活性成分が同一の標的及び結合ポケットに向けられているか、それゆえ、組み合わせて投与すべきでないかどうかを確認することが可能となる。
異なる標識の2つの活性成分を添加することにより、予期しないパートナーとの相互作用に基づく有害作用をDNA、RNA又はタンパク質レベルで同定することが可能となり、したがって、その他のパートナーとの可能性のある相互作用及びそれゆえ有害作用を最小にして、最大の可能な効果が達成されるようにそれらを組み合わせることが可能となる。
【0108】
プロモータースクリーニングのための本発明による方法の使用が最も特に好ましい。この適用は特有のものである。これまで現行の技術水準においてはプロモーターが強い又は弱い効果を有するか否かについてのみ記載することが可能であった。真の定量がこのたびはじめて本発明により可能となった。本方法は産生されるタンパク質の量に対するプロモーター配列の効果の調査を可能とする。DNAプールを作る。各DNAは、プロモーター(promoter)配列を含有し、かつタンパク質もまたコードする。プロモータースクリーニングの場合、プロモーター配列の可変性が存在する。この可変性は、人工的であるか又はランダム化されており、1又は複数の生物の天然のプロモーターに対応し得る。すべてのDNA鎖はコードされるタンパク質に関して同一の配列を有し、即ち、タンパク質コピーの作製において、同一のタンパク質が各配列によって形成される。タンパク質をコードする配列は同一であるため、これはタンパク質の生成速度がRNAポリメラーゼの開始速度にのみ依存し、リボソームに依存しないことを意味する。これは好ましくは、シークエンシングチップ又は古典的DNAマイクロアレイとして設計される分子ストレージ(molecularstorage)として起こり得る。次いでタンパク質コピーを開始し、結果として得られるタンパク質の量を直接的にリアルタイムで(例えば、iRIfS又はBiacoreによって)分析する。次いでこのリアルタイムデータから個々のプロモーターがどれほど迅速にRNAポリメラーゼの開始を可能とするかを決定することが可能である。
1つのみのRNAポリメラーゼを用いる場合、プロモーター配列の関数としての誘導速度のプロファイルを決定することができる。
別のポリメラーゼを更なるコピーに用い得る場合、例えば、これらRNAポリメラーゼの配列プロファイルを作製することができる。
さらに、補因子を添加してもよく、生成速度の変化を決定することができる。
【0109】
シークエンシングチップは、好ましくは、シークエンシングが行われる表面である。RocheからのFLX454チップの使用が、その構造に起因して、FLX454チップはコピー技法に有利なキャビティを既に有していることから、特に好ましい。
【0110】
特に、転写因子効率スクリーニングのための本方法の使用もまた特に好ましい。かかる適用は現行の技術水準の方法では不可能である。これらの方法をRNA及び/又はタンパク質の生成に対する転写因子の効果の系統的な調査のために使用する。プロモータースクリーニングの場合と同様に、DNAプールは、タンパク質をコードするDNAの領域においては異なるものではないが、プロモーターの領域及び転写因子が結合できる領域において結合することができるものである。言い換えると、同一のタンパク質が常に形成される。タンパク質をコードする配列が同一であるため、これは、タンパク質生成の速度が、RNAポリメラーゼの開始速度にのみ依存し、リボソームには依存しないことを意味する。まず、オリジナルをDNAアレイの形態で作製する。これは好ましくは、シークエンシングチップ又は古典的DNAマイクロアレイとして設計される、分子ストレージとして為され得る。次いで、タンパク質コピーを開始し、結果として得られるタンパク質の量を直接的にリアルタイムで(例えば、iRIfS又はBiacoreにより)分析する。次いでこのリアルタイムデータから個々のプロモーターがどれほど迅速にRNAポリメラーゼの開始を可能とするかを決定することができる。
まず、同一のデータがプロモータースクリーニングと同様に第1のコピーについて得られる。しかしながら次いで、更なるコピーが作製され、これは転写因子の添加により酵素系を変化させる(阻害及び活性化)。タンパク質の生成速度の変化により、プロモーター配列と転写因子の強度との間に相関が存在し得る。この構造において配列依存性が非常に明瞭に認識可能であり、正確に定量されることが想定できる。この測定は任意のその他のシステムにおいてもこれまでには不可能であった。
その他の種の転写因子もまた用いることができ、したがって個々の生化学的機構の種間互換性をin vitroで分析することができる。これは次いで、タンパク質のDNAからの無細胞生成(とりわけ、タンパク質コピー生成)に使用できる、無細胞混合系の生成について特に興味深い。
【0111】
さらに、コドン最適化のために本発明による方法を使用することが好ましい。これは従来技術では非常に大きな労力を伴ってはじめて可能であった。本発明による使用は生合成の向上のためのDNA配列の最適化に関するものである。プロモータースクリーニング及び転写因子効率スクリーニングと同様に、各DNA鎖が同一のプロモーター配列を担持するDNAプールを構築する。DNA鎖の間の相違は、タンパク質をコードする配列にある。これらは同一のアミノ酸配列をコードするが、コドンにおいて異なるものである。言い換えると、同一のタンパク質が常に産生されるが、その産生には異なるtRNAプールが使用される。RNAポリメラーゼの開始のために、同一のプロモーターが、すべてのDNA配列について、最初は同一の様式で、かつ同じ迅速な速度で常に用いられる。しかしながら、異なるtRNAプールの使用は合成速度の相違を意味する。生成速度の相違はしたがってコドン配列にのみ依存する。まずオリジナルをDNAアレイの形態で作製する。これは好ましくは、シークエンシングチップ又は古典的マイクロアレイとして設計される分子ストレージとして為され得る。次いでタンパク質コピーを開始し、結果として得られるタンパク質の量を直接的にリアルタイムで(例えば、iRIfS又はBiacoreにより)分析する。次いでかかるリアルタイムデータから、どのコドン選択が高速合成のために最適であるかを決定することができる。これらの結果は、特に、細胞における組換えタンパク質の生成において「コドン使用頻度」を最適化する際に興味深い。
【0112】
さらに、直接的阻害による包括的抗生物質スクリーニングのために本発明による方法を使用することが好ましい。本方法はまた、抗生物質の同定にも役立つ。本明細書に記載するゲノムレベルでの抗生物質スクリーニングの場合のように、抗生物質の存在下でのヒト及び細菌での増幅複合体のアセンブリーを調べるのではなく、(転写因子のための結合部位及びプロモーター配列を含む)ヒト及び細菌DNAを含有するオリジナルを使用する。同一のDNAコピーをまずこのDNAオリジナルから作製する。次いで(ヒト及び細菌の)無細胞発現系をそれぞれ1つの活性成分と混合し、DNAコピーのタンパク質コピーを作る。これを定量的に分析して、どのタンパク質がどれほど多く形成されるかを決定する。活性成分の1つがタンパク質の生成又はRNAの上流増幅になんらかの形で干渉する場合、これは対応するタンパク質スポットの出現の低減又は不能によって明らかになる。配列及び/又は発現系に依存する様式でタンパク質の生成を阻害又は抑制する活性成分は、個々のスポットの脱落若しくは減弱及び/又は完全なタンパク質コピーの脱落若しくは減弱により自明となる。細菌系を阻害するがヒト系には影響を及ぼさない活性成分はしたがって細菌におけるタンパク質生成を直接的に阻害する潜在的抗生物質である。こうして同定された活性成分は次いで詳細な活性成分スクリーニングに供することができる。
【0113】
基質阻害による包括的抗生物質スクリーニングのための本方法の使用もまた好ましい。本方法はまた、抗生物質の同定にも使用される。ゲノムレベルでの抗生物質スクリーニングの場合のように、ヒト及び細菌での増幅複合体のアセンブリーを抗生物質の存在下で分析するのではなく、(転写因子のための結合部位及びプロモーター配列を含む)ヒト及び細菌DNAを含有するオリジナルを使用する。次いで任意にDNA、RNA及びタンパク質コピーを作製する。オリジナルモノマーについて置換する分子を、それぞれのコピーの作製について、それぞれの酵素混合物に添加する。オリジナルモノマーではなくこれらの置換成分(substituents)を次いで潜在的に、DNA、RNA又はタンパク質に組み込む。RNA及び/又はDNAレベルで作ったコピーから、タンパク質コピーを再度作る。使用した置換成分の1つが阻害効果を有していれば、これは明らかに、タンパク質がほとんど又は全く生成されない、即ち、非置換酵素混合物と比較してより少ないタンパク質しか生成されないという事実に起因するであろう。個々の位置においてより少ないタンパク質が生成され得る場合、配列特異的阻害が存在すると推定することが可能である。一般的にタンパク質がほとんど又はまったく生成されない場合、タンパク質合成の系統的な阻害を想定しなければならない。次いで、このようにして同定された置換成分をin vitro及びin vivoで再度分析することによりそれらの効果を決定することができる。細菌系においてより大きい程度で阻害が起これば、これは潜在的抗生物質である。
【0114】
さらに、置換成分スクリーニングのための本方法の使用もまた特に好ましい。この適用もまた、これまでは各置換成分を個々に合成する必要があったため、従来技術と比較して特有のものである。この内容においてコピーするプロセスはこれまでには記載されていない。本方法によると、活性化剤、阻害剤及び同等の代替物(substitutes)を見出すことが可能である。この目的のために、対応する分子ドメインにDNAレベルで受容体又は結合パートナーをコードさせ、DNAアレイの形態のこれらDNA配列を第1のストレージ、好ましくは、分子ストレージとして使用する。次いでコピーをこのオリジナルからDNA、RNA又はタンパク質の形態で作る。対応する酵素系を用いて、モノマーを、好ましくは完全に置換する。結果として、オリジナルモノマーではなく、置換成分(substitution)のみが組み込まれる。それぞれ異なる置換成分を有するいくつかのコピーを作製する。次いで受容体を個々のコピーに添加し、結合とその活性化との両方を測定する。もはやいずれの結合も有さないスポットはいずれの効果も有さない。結合を有するが活性に変化のないスポットは、代替物として使用可能な分子を含有する。上昇又は低下した活性を有するスポットは、活性化剤及び/又は阻害剤として使用可能な分子を含有する。ここで置換成分の以下の適用が好ましい。
非天然DNA、RNA又はアミノ酸基本単位の組込みにより、分子の活性を向上/低減させることができ、又はこれまでの分子の代替物を見出すことができる。
置換成分を組み込むことにより、分子特性を変化させることが可能である。分子特性は、特に溶解度、毒性、pH及び熱安定性、電荷、プロテアーゼ、DNase又はRNaseに関する安定性をいう。
こうして見出された活性成分が同じ活性を有するが、遅延した分解又は代謝を有する場合、活性成分はより低用量で投与することができる。
更なる相互作用であるが有害作用の原因である相互作用についても試験すること、次いで同じ活性レベルでこれら相互作用を最小化するように置換成分を選択することによって、有害作用を低減することができる。
【0115】
さらに、増殖因子置換成分スクリーニングにおける使用もまた好ましい。本方法は置換成分スクリーニングの特別な場合である。増殖因子、特にEGF及びVEFGは、通常腫瘍細胞の場合においては高度に活性化している。それゆえEFG及び/又はVEGF受容体に結合する分子を見出すことは特に興味深い。この特別の場合において、別の酵素系がより長い期間活性であった受容体を不活性化するため、受容体は、最初は活性化されている場合さえある。受容体中又は受容体上に残っている結合物質のために活性化が更新されなければ、それは永久に不活性化されたままであろう。これは、腫瘍の増殖が遅延され、治癒の見込みが治療と組み合された場合に顕著に向上することを意味する。
【0116】
それゆえEGF、VEGF及びその他の増殖因子受容体の既知及び推定相互作用パートナーをDNAレベルでコードさせる。これら相互作用パートナーは主にタンパク質である。それゆえ、DNAアレイをまずオリジナルとして、好ましくは分子ストレージの形態で作る。次いで酵素混合物を調製してタンパク質コピーを作製し、タンパク質コピーにおいては少なくとも1つのアミノ酸が枯渇され、かつ異なる人工アミノ酸によって置き換えられているか、又は、コドンが別の人工アミノ酸によって置き換えられている。これは、タンパク質コピーが、オリジナルアミノ酸の代わりに人工アミノ酸をいたるところに有することとなることを意味する。これら分子は原則として同一又は類似の3D構造を有し、したがって受容体の潜在的相互作用パートナーである。次いで受容体をタンパク質コピーに添加し、結合が起こるか否かを確認する。これはiRIfS又はBiacore等のリアルタイム測定によって直接的に行うことができる。結合後、結合受容体の活性を測定する。EGF及び/又はVEGF受容体の場合、これはリン酸化反応によって検出することができる。この目的のために、放射性ATPを受容体が既に結合しているコピーに添加する。活性受容体はこのATPを変換し、放射活性をそれ自体に結合させる。オートラジオグラフィーによって、どれほど多くのATPが結合したか(写真フィルムを適用し、次いで現像し、そしてフィルムの陰影を分析する)、またどれほど受容体が活性であるかを定量化することが可能である。したがって結合が起こったか否か、またどのように結合が受容体の活性に影響を及ぼしたかを評価することが可能である。それぞれのタンパク質配列はDNAオリジナルに基づいて決定することができ、次いでそれぞれの人工アミノ酸はタンパク質コピーへの添加物に基づいて決定することができる。こうして、どの置換成分が活性化又は阻害効果を有し、潜在的に腫瘍薬物又は増殖剤として使用できるかが知られる。
【0117】
酵素スクリーニングのための使用もまた特別な利点を示し、それゆえ好ましい。この適用は、種々の酵素から最も有利な特性を有する酵素を選択することを可能とする。これを行うために、対象のすべての酵素をDNAレベルでコードさせ、DNAアレイをオリジナルとして、好ましくは分子ストレージとして作製する。これは上記のプールコピーに対応する。しかしながら、細胞培養物又は微生物をまた、生存するために変換されなければならない基質とともに標的化された様式で培養してもよい。この目的のためのオリジナル酵素は通常既知であり、組み合わされた変異−選択圧を生物に適用する。対象の酵素のDNA配列はしたがって変異により変化している。しかしながら、これらの変異はほとんどの場合はマイナーなものでしかなく、DNAは依然として標的化PCRに利用でき、したがってDNAオリジナルは、対象のタンパク質/酵素において変異を有する生物集団の集団コピーに従って作製することができる。タンパク質コピーによって、酵素を次いでアレイとして作製する。酵素の所望の基質を添加し、酵素活性及び/又は基質変換と関連付ける検出反応を使用することにより、各酵素の活性を検出することが可能である。ここで以下の適用が特に好ましい。
異なる基質を個々のコピーに添加し、基質の物質変換をそれぞれのスポットにて検出する。このようにして基質特異性及び活性のプロファイルが、作製された酵素のそれぞれについて得られる。
同じ酵素を特性ストレージ内のいたるところに使用する。異なる位置における異なる特性、例えば、異なるpH、塩含有量又は温度のために、どの条件下で酵素が最適に機能するかを検出することが可能である。
【0118】
酵素最適化のための使用もまた好ましい。酵素が既知である場合、これより酵素を最適化することができる。酵素最適化を行うために、酵素のコードDNAを系統的又はランダムに個々の位置で修飾し、それにより個々のアミノ酸又は複数のアミノ酸を置き換える。こうして作製したDNAプールを次いでプールコピーによってDNAオリジナルとして作製した後、酵素のすべての所望の変異を含有する対応するタンパク質マイクロアレイを、タンパク質コピーによって作製する。次いでコピーを酵素の基質とともにインキュベートする。高い活性を有する酵素バリアントはこの基質を変換することにより、活性のより低い酵素と比べてより迅速にシグナルを生成する。次いで最も活性の高い酵素を、オリジナル又はDNAコピーのシークエンシングに基づいて選択することができる。さらに、異なる条件下で多様なコピーを試験することが可能であり、それによりここで再び、各酵素のプロファイルを作製することができる。
【0119】
さらに、安定性スクリーニングのために本発明による方法を使用することが好ましい。本方法は、分子の「安定性」の向上及び/又は外部の影響並びに分解性の周囲条件及びまた酵素活性に関するより高い安定性の提供のために役立つ。4つの戦略がここで探究できる。
オリジナル分子を系統的又はランダムに個々の位置又は複数の位置で変異させ、それにより1つのモノマーを置き換える。
天然モノマーの個々のものを標的化された様式で人工モノマーにより置き換える。
モノマーの化学的成分を変化させ、それにより分子全体を安定化する。
オリジナル分子を隣接配列により、短く及び/又は長くして、それによってより大きな安定性を達成する。
【0120】
分子がDNA、RNA又はタンパク質であるかにかかわらず、本発明者らの3つの戦略を別々に又は一緒に用いることができる。安定性を結合により検出することができる場合、最大10
15又はそれ以上の異なる分子のプールを用いて結合を形成する分子を濃縮することができる。より安定な分子がそれらの結合能力をより長い期間維持することができると想定することができる。残っているプールは十分な分子を含有しているはずであり、そのため、プールコピーを作製することができる。これはまず、DNAレベルで実行する。所望の分子に応じて、次いでDNA、RNA又はタンパク質コピーを作製する。これらコピーを次いで、高/低pH、攻撃性化学物質、高温、酵素活性等の多様な分解性の影響に曝すことができる。コピーされたマイクロアレイ上の各スポットを次いで分析し、その分解をリアルタイムで測定する。安定な分子ははるかにより遅い分解により特徴づけられる。
【0121】
DNase/RNase安定化のための使用もまた好ましい。本方法はDNA及びRNAの安定性の向上に役立つ。以下の戦略をこの目的のために使用できる。
オリジナル分子を隣接配列により長くし、それによってより高い安定性を達成する。RNase及びDNaseによってもはや攻撃されることのない二次構造及び三次構造を隣接配列によって形成する。
個々の天然モノマーを人工モノマーにより標的化された様式で置き換える。4つの基本単位の1つをここで人工DNA又はRNA塩基により置き換えることができる。
モノマーの化学的成分を変化させ、それによって、分子全体を安定化する。RNA及びDNAの場合、いわゆるPNAが非常によく知られている。この場合、リン酸をアミノ酸により置き換えることができる。この置き換えはRNase及びDNaseによる分解に対して保護するが、完全な機能性を依然として可能とする。しかしながら、糖、リン酸又は塩基のその他の修飾もまた適用可能である。
【0122】
これを行うために、オリジナルDNA配列及び/又はRNA配列に隣接配列を付与する。これらを系統的又はランダムプロセスで生成する。結果として得られるバリアントを、プールコピーとしてオリジナルのDNAアレイの形態で作製する。次いで複数のコピーをDNA又はRNAマイクロアレイの形態で作製する。その他の人工モノマーをコピーの作製時にあらかじめ添加しておいてもよいし、又は化学修飾をコピーの作製後に行ってもよい。任意に、完全なDNA又はRNA鎖がインタクトであるか否かを検出する標識(例えば、フルオロフォア又はフルオロフォア−クエンチャー対)もまたそれらの作製の際にあらかじめ導入しておいてもよい。こうして作製されたコピーを次いで分解性の影響に曝す。RNase及びDNaseの場合、それらを直接的にマイクロアレイに適用する。安定性の低いDNA及び/又はRNA鎖は分解し、これは組み込まれたフルオロフォアの場合、蛍光の低下により(フルオロフォア−クエンチャー対の場合、蛍光の上昇により)、検出可能である。したがってアレイにおいて、個々の隣接配列の安定性を配列特異的様式で決定することが可能である。異なるアレイ上に同じ配列を有するスポットを互いに比較する場合、個々のモノマー又は化学修飾の安定化効果により、結論を導き出すことが可能となる。最も安定な可能なDNA及び/又はRNA鎖は配列依存性、個々のモノマーの置換及び化学修飾の組合せから導き出すことができる。
【0123】
タンパク質安定化もまた好ましい適用分野である。本方法はタンパク質の安定性の上昇に役立つ。以下の戦略を好ましくはこれを行うために用いることができる。
オリジナルタンパク質を隣接配列により長くし、それによってより高い安定性を達成する。隣接配列により形成される二次構造及び三次構造はもはやプロテアーゼによって攻撃され得ず、又は隣接配列はそれを行わなければ攻撃に供されたであろうタンパク質の領域をカバーする。
個々の天然アミノ酸を人工アミノ酸により標的化された様式で置き換えし、これら人工アミノ酸はもはやプロテアーゼにより分解され得ない。
アミノ酸の化学的成分を変化させ、それにより分子全体を安定化させる。例えば、ペプチド結合の化学修飾がここで考えられる。
【0124】
これを行うために、オリジナルタンパク質配列をコードDNAの形態で調製し、隣接配列を必要に応じて付与し、及び/又は、個々の1個又は数個のアミノ酸を置き換える。これらバリエーションを系統的又はランダムプロセスで生成する。結果として得られるバリアントを、オリジナルのDNAアレイの形態でプールコピーとして作製する。次いで、複数のコピーをタンパク質マイクロアレイの形態で作製する。人工アミノ酸をコピーの作製中に前もって添加してもよいし、又はコピーを作製した後に化学修飾を行ってもよい。任意に、標識をコピーの作製の最中にあらかじめ導入してもよく、かかる標識(例えば、フルオロフォア又はフルオロフォア−クエンチャー対)はタンパク質がインタクトであるか否かをアレイ中で検出することができる。したがって個々の隣接配列又はアミノ酸の置き換え位置の安定性を配列特異的様式で決定することが可能である。異なるアレイにおける同じ配列を有するスポットを互いに比較する場合、個々のモノマー又は化学修飾の安定化効果についての結論を導くことができる。最も安定な可能なタンパク質は、配列依存性、個々のアミノ酸の置換及び化学修飾の組合せに由来し得る。
【0125】
さらに、抗体安定化のための使用もまた好ましい。本方法は抗体の安定化を可能とする。抗体は治療及び診断分野においてますます使用されてきている。貯蔵における長期安定性はこの適用のために有利である。抗体の抗原への結合能力とは関係のない位置における抗体をコードするオリジナルDNA配列を、それゆえかかる位置にて変える。これらのバリエーションは標的化又はランダム様式で挿入することができる。結果として得られるDNAプールを次いでDNAオリジナルとして作製する。その後そのタンパク質コピーを調製する。これらのタンパク質マイクロアレイはオリジナル抗体の変異ライブラリーを形成する。コピーの1つを、使用した変異が抗体の結合能力に効果を有さないかどうかを検出するための結合分析に用いる。次いでコピーを組み込んだ後、コピーのセットを一定の間隔で結合について試験する。このようにして、抗体のどのバリアントが長い貯蔵時間の後においてさえも依然として高い活性を有しているかを決定することが可能である。これと平行して、抗体アレイを多様なプロテアーゼに曝すことにより、プロテアーゼによる分解に対して各バリアントがどれほど安定であるかを確認することもできる。長期安定性を有する最適抗体配列をこれら結果から導くことができる。
【0126】
基質スクリーニングのための本方法の使用もまた特に好ましい。この適用によって、所与の酵素について、どのタイプの基質を変換することができるかを、DNA、RNA又はタンパク質レベルで確認することが可能である。これを行うために、すべての既知の基質をまずDNAレベルでコードさせ、次いで変異をこれらの基質に導入する。結果として得られるDNAプールをDNAオリジナルとして調製する。次いで、必要とされる基質に応じて、コピーをDNA、RNA又はタンパク質アレイの形態で調製する。シグナルの生成をあらかじめここで生成に組み込むことができる。例えば、フルオロフォアをランダムに若しくは末端位置に組み込んでもよいし、又はフルオロフォア−クエンチャー対を作製してもよい。これを次いで例えば、フルオロフォアの表面への全領域適用により実行してもよい。こうして作製した分子は、表面から可能な最大距離で末端位置にクエンチャーを担持することになる。次いで酵素をこうして作製したコピーに添加することができる。酵素の分類に応じて、対応するシグナルを生成することができ、これはマイクロアレイ上のそれぞれのスポットが変化しているという事実により酵素活性を検出する。基質の分割において、例えば、フルオロフォア又はクエンチャーが分割され得る。酸化還元反応において、色素を変化させることができ、又はライゲーションにおいて、フルオロフォア若しくはクエンチャーを挿入することができ、それにより蛍光が変化する。変化するスポットはしたがってそれぞれの酵素の基質である。オリジナル又はDNAコピーに基づいて配列を確認することができるので、それぞれのDNA、RNA又はタンパク質配列を推定することが可能である。このようにして酵素についての基質の帯域幅を決定することが可能である。
【0127】
プロテアーゼスクリーニングのための本方法の使用もまた好ましい。本方法を使用すると、切断される可能性がある対応するタンパク質を異なるプロテアーゼについて見出すことができる。隣接配列の配列依存性を特に確認することができる。それゆえDNAプールを、任意に基質をコードするDNA上で作製するか、又は全ゲノム、全トランスクリプトーム若しくは全プロテオームアレイをこの目的のために使用することができる。いずれの場合においても最初はDNAレベルでオリジナルが存在する。次いで対応するコピーをこのオリジナルからタンパク質の形態でタンパク質コピー化によって作る。コピーを次いでプロテアーゼとともにインキュベートする。スポットがプロテアーゼによって分解されるタンパク質を含有していれば、そこでシグナルが生成する。これは、タンパク質変化が低下するために、例えば、クエンチャーが分割される場合は蛍光上昇により、又は組み込まれるか若しくは末端のフルオロフォアが分割される場合は蛍光低下により起こり得る。次いで、DNA配列及びそれに由来するタンパク質配列の比較に基づいて、どのタンパク質がプロテアーゼによって分解されるかを決定することが可能である。動力学の検出が可能であれば、隣接配列又は1つのアミノ酸の他のアミノ酸による置き換えがどれほど強力にプロテアーゼの触媒活性に影響を有し得るかについての情報を得ることもできる。全プロテオームコピーを用いた場合、プロテオームのどのタンパク質がこのプロテアーゼにより分解されるかについての結論を導くことができる。
【0128】
さらに、キナーゼ基質スクリーニングのための本方法の使用もまた好ましい。本方法を用いるとキナーゼについての基質プロファイルを作製することが可能である。配列依存性を特に決定することができる。これを行うために、DNAプールを、任意にタンパク質をコードするDNA上に作製するか、又は全ゲノム、全トランスクリプトーム若しくは全プロテオームアレイをこの目的のために使用することができる。それぞれの場合において、まずオリジナルがDNAレベルで存在する。次いでタンパク質コピーによって、対応するコピーをこのオリジナルからタンパク質の形態で作る。コピーを次いでキナーゼと混合し、一つの好ましい実施形態において、放射標識ATPと組み合わせる。別の好ましい実施形態において、別のシグナル生成方法もまた考えられる(例えば、蛍光標識によるか、又はリン酸化の際のpH変化の電気的検出による)。スポットが使用するキナーゼの基質として役立つ場合、放射性リン酸が直接的にタンパク質に結合する。次いで各スポットにおける放射活性をオートラジオグラフィーによって定量することができる。特によく受け入れられるキナーゼ基質は特に高い放射活性を有する。したがってこのキナーゼのすべての基質を、選択されたタンパク質のプールについて又はプロテオームにわたって検出することができる。人工アミノ酸もまたタンパク質コピーの作製において添加していた場合、かかる基質についてのキナーゼの認容性についての情報もまたここで得ることができる。したがってこのキナーゼについてのタンパク質配列及びキナーゼ活性の割り当てが可能となる。
【0129】
ホスファターゼ−基質スクリーニングのための使用もまた特に好ましい。本方法を用いると、ホスファターゼについての基質プロファイルを作製することが可能である。配列依存性を特に決定することができる。本方法はキナーゼ基質スクリーニングの逆を原則として表す。それゆえタンパク質をコードするDNAのDNAプールを任意に作製するか、又は全ゲノム、全トランスクリプトーム若しくは全プロテオームアレイをこの目的のために用いてもよい。いずれの場合においても、オリジナルをまずDNAレベルで得る。次いでタンパク質コピーによって、その対応するコピーをタンパク質の形態で作製する。一つの好ましい実施形態において、コピーを放射性リン酸で標識する。別の実施形態において、その他のシグナル生成形態がまた考えられる(例えば、蛍光標識によるか、又は脱リン酸化の際のpH変化の電気的検出による)。したがって各スポットは、最初は高い放射活性を有する。1つのスポットが使用するホスファターゼの基質として役立つ場合、放射性リン酸がタンパク質から分割される。各スポットにおける放射活性をオートラジオグラフィーによって定量することができる。特によく受け入れられるホスファターゼの基質は特に低い放射活性を有する。したがってこのホスファターゼのすべての基質を選択されたタンパク質のプールについて又はプロテオームにわたって検出することができる。人工アミノ酸をタンパク質コピーの作製に更に用いていた場合、かかる基質についてのホスファターゼの認容性に関する情報をここで再度得ることができる。したがってこのホスファターゼについてのタンパク質配列及びホスファターゼ活性の割り当てを行うことが可能である。
【0130】
制限基質スクリーニングもまた好ましい適用を構成する。本方法を用いると、制限酵素がどこで対応する分解活性を表すかを決定するためのゲノムにわたる試験を行うことが可能である。これを行うために、全ゲノムコピーをDNAオリジナルとして作製する。このオリジナルを次いでDNAマイクロアレイの形態でコピーする。したがってゲノムのすべてのDNA配列が存在する。制限酵素によって分解されるスポットは、(末端クエンチャーの分割の場合)蛍光上昇に基づいて又は(末端フルオロフォアの分割の場合)蛍光低下によって検出することができる。したがって制限酵素によりどの配列が分解されるか、全ゲノムにわたって検出することが可能である。
【0131】
さらに、アイソザイム識別のための使用もまた好ましい。1つの酵素にいくつかのアイソザイムが存在する場合、同一のマイクロアレイコピーをそれぞれ1つのアイソザイムとインキュベートする場合に基質依存性の差が存在すると考えられ、基質プロファイルが、基質スクリーニング、プロテアーゼスクリーニング、キナーゼ基質スクリーニング、ホスファターゼ基質スクリーニング及び/又は制限基質スクリーニングについて本明細書に記載する本方法によって作製される。したがってこれらのプロファイルの互いの比較によって、アイソザイムの1つによって特に良好に変換され、別のアイソザイムによっては特に少ししか変換されないスポットを標的化された様式で見出すことが可能となる。次いでこのDNA配列を再度標的化された様式で又はランダムに個々の位置で修飾する。結果として得られるDNAプールを次いでDNAオリジナルとしてストアし、対応するマイクロアレイコピーを調製する。これらそれぞれを次いで個々にアイソザイムに再度曝す。アイソザイム間で最良の差が既に与えられている基質の更新された変異に基づいて、これより、アイソザイムの1つに良好に受け入れられるが他のものにはあまり受け入れられない、更により良好な基質を見出す純粋に統計的に良好な機会が与えられる。このようにして1つだけのアイソザイムに対して特異的な基質を生成することが可能である。
【0132】
コピーの作製の際の人工モノマーの組込みによって、変換するのがほとんど不可能であり、1つのアイソザイムのみに受け入れられる基質を生成することもまた可能である。これによる高い親和性により、この変換不可能な基質はこの酵素の阻害剤を形成する。アイソザイム阻害剤のこの発見は創薬において特に非常に興味深い。
【0133】
さらに、リボザイムコピー方法もまた用いることができる。本方法はRNAの触媒活性を検出することを可能とする。リボザイムは触媒活性を有し、酵素のような特性を有するが、RNAからなるものである。まず、潜在的リボザイムをコードするDNAプールを作製する。このDNAプールを次いでDNAオリジナルへと変換し、次いでRNAコピーを調製する。次に、1つの基質をこれらのアレイのそれぞれに添加する。基質に関する触媒活性を示さない(示す)スポットは、基質の変換に基づくシグナルを生成する。これは、例えば、分子の色を変化させる化学基の分割であり得る。DNAオリジナル又はDNAコピーのシークエンシングに基づいて、RNAの配列を導くことができ、これからどの配列がどの触媒活性を有するかを決定することも可能である。
【0134】
ディスプレイスクリーニングのための本発明による方法の使用が特に最も好ましい。1つの特定の利点は、このスクリーニングをすべての慣習的なディスプレイについてのいわゆる「最終段階」として用いることができることである。本方法は、DNA、RNA又はタンパク質についてのそれぞれのディスプレイ方法、選択方法又は濃縮方法について分析される分子のスループットの拡張を構成する。通常は10
9以上の異なる分子を含有する分子のプールから開始される、それぞれの方法によって作製することができる、所望の特性を有する10
6以下の分子の濃縮されたプールを作製することが可能である。濃縮された特性を有するこの分子のプールを再形成することによりDNAプールが得られる(RNAは逆転写酵素によってDNAとされ、ディスプレイのタンパク質は常に生成するDNAとともに属し、これはPCRによってDNAプールを形成するよう配置され得る)。このDNAプールを次いで、ディスプレイコピー及び/又はDNAオリジナルとしてのそのサブバリアント(subvariants)によって、及び/又は、ディスプレイコピー及び/又はDNAオリジナルとしてのそのサブバリアントとしての、プールコピーとして作製する。次いで必要とされる分子の形態の対応するコピーをこのDNAオリジナルから作製する。これらのコピーは、DNA、RNA又はタンパク質であり得る。それぞれのコピーは次いで別の分子特性に関して調べることができる。各個々のDNAプール及び/又は最初に濃縮されたプールについて、それぞれの特性のセットを、各コピーの各点のオリジナルDNA配列へのこの割り当てから割り当てることができる。次いで所望の特性の最良の組合せを有する分子をこのセットから決定することができる。多くの異なる特性をコピーによって検出することができるため、及び1つのコピーが多くの個々の分子を担持しているため、これまでの方法で可能であったものと比較して調べる分子の明らかにより高い変換が本方法を用いることによって生成される。
【0135】
人工源からの抗体スクリーニングのための本発明による方法の使用もまた好ましい。本方法は抗体ライブラリー、特に抗体を用いるファージディスプレイのディスプレイスクリーニングを促進する。まず、抗原に関するファージの濃縮を、人工ランダム化抗体又は抗体断片を有するファージディスプレイライブラリーを用いて行うことにより、最初はしばしば最大10
15の異なる抗体から、10
6を下回る異なる抗体及びそれぞれのDNA株のみを残存させる。DNAオリジナルを次いでこの濃縮されたDNAプールから作製する。DNAオリジナルを次いでDNA、RNA及び/又はタンパク質コピーの形態でマッピングする。トランスフェクション方法によって、次いでDNA又はRNAを細胞へとトランスフェクトすることが可能となり、したがって、これらを刺激することにより抗体を生成させる。これと平行して、抗体を含有するタンパク質コピーを抗原との結合について調べることができる。特に強いシグナルを有するスポットは、特に強い抗原との結合を有する。DNAオリジナル又はDNAコピーのシークエンシングに基づいて、抗体のアミノ酸配列を推定することができる。DNA又はRNAが回収されたら、それを直接的にトランスフェクションに用いることができる。それゆえ次いで結合していることが同定された抗体を細胞において良好に直接的に再生することができる。本方法は分析される分子のスループットの向上をすべてのディスプレイ方法において達成することを可能とする。この場合は抗体が関与する。有利なことに、本方法でなくては習慣的であったファージディスプレイの3回〜4回ではなく、抗原に関する1回の濃縮のみを行えばよい。さらに、分析の最後において、通常の10
2〜10
3ではなく最大10
6の抗体についてのデータが得られる。この実施形態はしたがって抗体を用いるこれまでのファージディスプレイの改善を構成する。
【0136】
有機サンプルからの抗体サンプリングのために本方法を使用することもまた好ましい。本方法によると、抗原に対する抗体を標的化された様式で生物から同定することができる。例えば、抗原に曝された生物からB細胞を得る。各B細胞はそのなかにコードされる異なる抗体を有する。この目的のために、各細胞の軽鎖及び重鎖のmRNAの可変配列部分を互いに連結する必要がある。B細胞集団をDNAオリジナルから集団コピーとして直接作製することができる。DNAはここで抗体のmRNAに由来するcDNAである。しかしながら、細胞をまず物理的に単離して、例えば、乳液小滴に処理し、これら区画のそれぞれにおいてmRNAをcDNAへと転写させ、次いで軽鎖及び重鎖のcDNAを互いに連結してDNA鎖を形成させることもまた考えられる。このようにして作製されたDNAプールは次いでDNAオリジナルへと変換できる。好ましい実施形態において、軽鎖及び重鎖のいずれもが全長にて存在するか(設計1)、又はこうして作製された構築物がScFvに対応し(設計2)、ここで、軽鎖及び重鎖の可変領域が互いに短いスペーサーによって連結している。両方の場合において、DNAオリジナル又はDNAコピーをシークエンシングし、タンパク質コピーを調製する。結果として得られるタンパク質アレイは抗体(設計1)又はScFv抗体(設計2)を含有する。これら抗体アレイを次いで生物が曝された抗原とともにインキュベートする。この抗原に対する抗体はここで抗原に対する1つの結合を有する。このようにして、結合抗体のそれぞれの配列をこの抗原について同定することができ、またScFvライブラリーを得ることもできる。
さらに、こうして作製した抗体アレイを異なる抗原とインキュベートし、任意の更なる結合活性が存在するか否かを決定するために試験することができる。
同様に、感染性抗原又は抗体からの可溶化液を抗体アレイに加えることができ、したがって抗原に対するすべての抗体を決定することができる。
【0137】
本方法は、複数の抗体を系統的に得ること、それらを特徴づけること、及び引き続く使用のためにDNA配列を解明することを可能とするために、特に有利である。
【0138】
さらに、抗体最適化のための使用もまた好ましい。抗原に対する抗体が既知である場合、この抗体をその特性及び結合能力について更に最適化することができる。これを行うために、或る特定の位置又はランダムな位置に変異又は置換(substitutes)を含有するDNAプールをコードDNAに基づいて作製する。次いでこのDNAプールを、抗体の所望の特性(改変されたpH又は塩含有量での、より大きい溶解度、より良好な安定性等)に関してディスプレイ方法に従って濃縮することができ、次いで処理してDNAオリジナルを作り、DNAオリジナルを次いで再度タンパク質コピーによってマッピングして抗体アレイを作る。その後、こうして作製された抗体アレイを抗原とともに所望の条件(濃縮溶液、変化したpH又は塩含有量等)下でインキュベートし、検出する。最も強い結合を有するスポットは、最良の所望の特性を有する抗体を構成する。シークエンシングに基づいて、抗体のDNA配列及びひいてはアミノ酸配列を解読することができる。本方法を用いることにより、多数の抗体を直接的に互いに比較し、したがって広範な可能性から最良のものを選択することが可能となる。これまでのディスプレイ方法は特徴づけられる抗体の数において特に非常に制限されており、したがって最良の抗体が検出されないということがしばしば起こる。より高いスループットにより、最良の抗体を検出する機会が大幅に向上する。本方法は、抗体、抗体構成成分又は人工抗体の最適化を可能とする。
【0139】
ScFvの抗体最適化のための本方法の使用もまた好ましい。本方法を用いて、既存のScFv(単鎖抗体)をその連結鎖に関して最適化する。ScFvの場合、抗体の2つの可変結合領域のみが存在し、それらは非常に短い連結鎖によって互いに連結されている。この連結鎖がなければ、短い可変鎖の親和性は非常に低くなってしまい、複合体は簡単に分解してしまう。したがって連結鎖は安定化の目的のために役立つ。この程度に、抗原に対する可能な最大の親和性を達成するように、この連結鎖を最適化することが非常に興味深い。それゆえ、ScFvをコードするDNAプールを作製する。DNAは可変領域の範囲では常に同一とし、連結鎖の領域においてのみ個々の位置又は数個の位置に、変異をランダムに又は標的化された様式で挿入する。最も高い可能な親和性を有するScFvがコードされ、又は直接的に用いられるように、DNAプールを任意にディスプレイ方法によって濃縮してもよい。DNAオリジナルを作製し、タンパク質コピーをそれから生成する。次いでこうして得られたScFvアレイのすべては変異を含有する。それから抗原をこれらのアレイに添加し、結合を測定する。特に高い結合を有するスポットはまた、抗原に対する特に高い親和性を有する。DNAオリジナル又はDNAコピーのシークエンシングに基づいて、最も高い親和性を有する連結鎖のアミノ酸配列を決定することができる。同様に、親和性のランキングリストを作成することができ、これらは配列に割り当てられる。親和性をそれぞれの配列に割り当てるためのシステムは、類似性比較から導くことができる。このシステムは、その他の抗原に関するScFvの結合親和性を予測するために使用できる。概して、本方法は、複数のバリアントが調べられ、システムが導かれる点において、連結鎖の最適化を可能とする。
【0140】
ワクチンの開発のためのエピトープスクリーニングに本発明による方法を使用することもまた特に好ましい。本方法は好ましくは、すべてのペプチドワクチンを生産するために使用できる。このようにして初めて、ワクチン生成を数日間で行うことが可能となる。本方法を用いると、エピトープをDNA、RNA又はタンパク質レベルで導くことができ、エピトープは免疫原として役立ち、したがってワクチンとしての使用のために好適である。これには免疫系を有する生物が必要である。この生物を、寄生体、細菌又はウイルス(免疫原)に曝す。生物が生存している場合、免疫防御によって生成した対応する物体がその血流中に存在し、次いで免疫原に対する生物免疫を作る。次いで、組織サンプル及び血液サンプルをこの生物から採取する。次いで血液サンプルからの抗体及びB細胞を精製する。組織サンプルを細胞培養物へとトランスファーし、再度免疫原に感染させる。その後、この感染した組織サンプルを収集し、全ゲノム、全トランスクリプトーム及び全プロテオームを組織サンプルから作る。アレイはしたがってまた、この生物についての通常の分子を含有するほかに感染により形成された分子も含有する。精製した抗体を次いでこれら感染アレイに添加する。免疫原が、DNA、RNA又はタンパク質レベルで存在していれば、抗体はそれらに結合するはずである。したがって抗体が結合している各スポットは、免疫原の潜在的エピトープとなる。DNAオリジナルのシークエンシングにより、免疫原のDNA、RNA又はタンパク質配列を解明することができる。さらに、感染した免疫原又はそれらのDNAをDNAオリジナル又はコピーの1つから標的化された様式で遊離させることが可能である。それからの免疫原を次いで精製又は作製することができる。これら免疫原を次いで結果として得られるB細胞に添加してもよい。免疫原に結合するB細胞を活性化し、分裂を開始させる。したがって、免疫原に対して防御する抗体を特異的に産生する細胞培養物を作製することが可能である。したがって、ワクチンの開発のために、能動免疫のための免疫原自体と受動免疫のための受動抗体との両方が利用可能となる。この組合せは特有であり、1週間以内でのワクチンの開発を可能とする。
【0141】
エピトープスクリーニングはまた、好ましくは自己免疫状態を決定するためにも使用される。本方法を用いると、自己免疫応答をトリガーするエピトープが存在するか否かをDNA、RNA又はタンパク質レベルで明らかにすることが可能である。本方法は、大きくはワクチンのためのエピトープスクリーニングに対応する。調べるべき生物は、自己免疫反応に苦しんでいる生物自体である。いずれの場合においても、生物はその血流中に対応する抗体を有し、かかる抗体は、免疫応答によって生成したものであり、生物が自己免疫を生じることを誘導する。次いで組織サンプル及び血液サンプルをこの生物から得る。血液サンプルからの抗体及びB細胞を精製する。組織サンプルを細胞培養物に変換し、次いで、全ゲノム、全トランスクリプトーム及び全プロテオームをこの細胞培養物から作る。これらのアレイは生物が反応を起こし得るすべてのDNA、RNA及びタンパク質を含有する。次いで精製した抗体をこれらアレイに添加する。免疫原がDNA、RNA又はタンパク質レベルで存在すれば、抗体はそれらに結合するはずである。それゆえ、抗体が結合する各スポットは、自己免疫原を構成する。コピーの免疫原を得ることにより、次いでB細胞がそれらによって活性化され得るか否か、また、したがってこれら自己免疫原に対する自己免疫が存在するか否かを確認することが可能となる。これらの自己免疫原を同定したら、それにより自己免疫が低減され、遅延され又は解消されさえする、対応する治療を開発できる。しかしながら、本方法は自己免疫原を同定するために役立つのみであり、治療を確立するものではない。
【0142】
アレルギーの解明のためのエピトープスクリーニングに本発明による方法を使用することもまた好ましい。本方法を用いると、アレルギーを引き起こし得る既知のエピトープが存在するか否かをDNA、RNA又はタンパク質レベルで確認することが可能である。本方法は大きくはワクチンのためのエピトープスクリーニングに対応する。免疫系を有する生物はアレルギーに苦しんでいる調べるべき生物自体である。いずれの場合においても、生物は、免疫防御によって生成し、生物をアレルゲンに対して反応性にした、対応する抗体をその血流中に有している。血液サンプルをこの生物から採取する。この血液サンプルからの抗体及びB細胞を精製する。さらに、既知のエピトープをDNA、RNA又はタンパク質レベルでコードするDNAプールを作製する。このプールを用いてDNAオリジナルを作製し、DNA、RNA及びタンパク質の形態のそのコピーを作製する。プールはコードされた形態で既知のアレルゲンを含有するので、アレイは既知のアレルゲンからなる。次いで精製した抗体をこれらアレルゲンアレイに添加する。アレルゲンがDNA、RNA又はタンパク質レベルで存在すれば、抗体はそれらに結合するはずである。抗体が結合できる位置に基づいて、配列及びしたがってトリガー種を次いでアレルギー種に割り当てることができる。次いでアレルゲン及び種自体の両方をB細胞に添加して、B細胞が種の存在に対して反応するか否かを確認することができる。したがって本方法によると、非常に多数の分子抗原を、アレルギーが存在するか否かを決定するために試験することが可能となり、次いでB細胞によって反対の試験が行われる。しかしながら、本方法はこれまでに記載又は特徴づけされていないアレルゲンを検出するものではない。
【0143】
アレルゲン解明のためのエピトープスクリーニングのために本方法を使用することもまた好ましい。本方法を用いると、アレルギーをトリガーするエピトープが存在するか否かをDNA、RNA又はタンパク質レベルで決定することが可能である。本方法は大きくはワクチンのためのエピトープスクリーニングに対応する。これは、免疫系を有し、或る特定の種に対してアレルギーを起こしたことがあることが既知である生物を必要とする。血液サンプルを生物から採取し、抗体及びB細胞を血液サンプルから得る。サンプルをアレルギーが存在する種から採取し、これらサンプルを用いて、全ゲノムアレイ、全トランスクリプトームアレイ及び全プロテオームアレイを作製する。アレルゲンがDNA、RNA又はタンパク質レベルで存在すれば、それらは結果として得られるアレイ中に存在するはずである。精製した抗体を次いでアレイに添加する。それに対するアレルゲンが存在すれば、抗体はそれに結合するはずである。アレルゲンの配列を、位置及びシークエンシングに基づいて導き出すことができる。回収したアレルゲンを次いでB細胞に添加する。B細胞が反応を示し、したがって、アレルゲンを確認すれば、未知のアレルゲンを本方法によってDNA、RNA又はタンパク質レベルで同定することができる。
【0144】
さらに、本方法はディスプレイによって結合を最適化するためにも好ましくは用いられる。本方法は、分子とその結合物質との間の相互作用の最適化のためのシステムの最適化及び誘導を可能とする。分子上のDNA、RNA又はタンパク質結合物質が既知であれば、これをコンビナトリアルDNAライブラリーの形態で変えることができる。このDNAプールは最大10
15の異なる分子を含有し得るので、ディスプレイ方法によって、高い親和性を有する10
6より少ない結合物質に限定される。このDNAプールは次いでDNAオリジナルを作製するために使用できる。その後、DNA、RNA又はタンパク質の形態の対応するコピーを作製し、分子をこれらのアレイに添加する。特に強い結合物質を有するスポットは特に多数の分子に結合するはずであり、したがって非常に高いシグナルを生成するはずである。アレイのすべてのスポットが結合物質変異体を含有するので、非常に多数の結合物質が検出されることが予期される。DNAオリジナル又はDNAコピーのシークエンシングに基づいて、次いで配列情報を結合親和性と関連付けることができ、配列に変化がある場合に親和性の予測を可能とする配列パターンを導き出すことができる。したがって個々の結合物質を標的化された様式で開発することが可能であり、それによりそれら結合物質は正確に規定された親和性又は特性を有する。本方法はしたがって、結合特性及びこれら結合物質に対する親和性を予測するシステムの誘導の最適化を可能とする。
【0145】
さらに、スキャンによる結合最適化のために本方法を使用することが好ましい。本方法は分子とその結合物質との間の相互作用の最適化のためのシステムの最適化及び誘導を可能とする。分子に対するDNA、RNA又はタンパク質結合物質が既知であれば、系統的又はランダムに1又は複数の位置にてDNAレベルでコード形態においてDNA中でそれを変えることができる。異なる結合物質変異体の数を10
6未満に維持することにより、作製されるDNAプールのすべての変異体をセクション2.2.1に従ってDNAオリジナルに直接的にトランスファーすることができる。DNAオリジナルを次いで、結合物質に応じて、DNA、RNA又はタンパク質へとコピーし、結果として得られる結合物質変異アレイを分子とともにインキュベートする。非常に多くの結合が形成されるであろうことが想定できる。それぞれのスポットの配列を親和性に割り当て、そこからシステムを導き出す。この手順はタンパク質におけるアラニンスキャンに対応するが、この場合、それは任意の可能な置き換えにより行うことができる。したがって著しくより多数の変異がカバーされ、それゆえ導かれるシステムははるかにより大きな関連性を有する。
【0146】
タンパク質機能スクリーニングのために本方法を使用することもまた好ましい。本方法は、どのアミノ酸位置がタンパク質の機能に重要であるかを、アミノ酸の置き換えにより分子レベルで明らかにすることを可能にする。結合又は(or)活性の形態でタンパク質の機能が既知であれば、これをコードDNAの形態で変える。バリエーションを次いで系統的又はランダムにDNAレベルで1又は複数の位置に挿入する。異なる変異の数を10
6未満に維持し、作製されるDNAプールのすべての変異体を直接的にDNAオリジナルへとトランスファーできるようにする。DNAオリジナルを次いでタンパク質へとコピーする。結果として得られるタンパク質変異を結合又は活性について試験し、特徴づける。しかしながらすべての変異体がしばしば大幅に変動し得る結合又は活性を示すことが想定できる。それぞれのスポットの配列を変異体のそれぞれの活性に割り当て、システムをそれから導き出す。この手順はタンパク質におけるアラニンスキャンに対応するが、この場合それは任意の可能な置き換えによって行うことができる。したがって大幅により多数の変異がカバーされ、導き出されるシステムはそれゆえはるかにより大きな情報的価値を有する。したがってどのアミノ酸が非常に重要であって、アラニンによって置き換えてはならないかだけでなく、どの置換成分が元のアミノ酸についてタンパク質の機能を保存するために可能であるかに関して記載することが可能である。
【0147】
酵素反応の最適化のための使用もまた好ましい。本方法は、反応条件及び補因子の調整によるそれらの変換に関する酵素の最適化を目的とする。これを行うために、特性ストレージの表面を単一の酵素で完全にコーティングし、次いで基質を添加する。それぞれの位置について、作製された基質の量をストレージ全体について分析する。ストレージ中の位置に基づいて、次いで最適反応条件を決定することができる。したがって最大10
6の異なる反応条件を単一の試験で調べることが可能である。このシステムを次いで好ましくは、基質濃度並びに塩、基質、pH及び温度等の既知の補因子の最適化のために用いる。
【0148】
最適反応条件を見出したらすぐに、未知の補因子及び/又は補因子の変異を用いてスクリーニングを行うことができる。これを行うために、粒子トランスファーストレージに粒子を充填し、各粒子に補因子の変異体を含有させる。これらの補因子はコンビナトリアルケミカルライブラリーとして作製されたものである。次いで、その配列情報に基づいて補因子の分子構造の解読を可能とする、DNAコピーを作製する。その後酵素及び基質を有するストレージを最適条件下で充填する。それからどの補因子が向上した変換を導くかの測定を行う。この補因子は次いでシークエンシングに基づいて決定することができる。このシステムはしたがってまず酵素反応の最適化を可能とし、次いで1又は複数の補因子の元の変異のスクリーニングも可能とする。反応をこの点に関して更に最適化することができる。
【0149】
相互作用パートナーの添加による活性成分スクリーニングのための使用もまた好ましい。本方法は、活性成分が相互作用する所与の分子について、活性成分を見出すことを可能とする。それゆえケミカルライブラリーの粒子に分子タグを合成中にあらかじめ付与しておき、シークエンシングの後に各粒子に対してこれに基づいて合成した活性成分の分子構造の割り当てを可能とする。粒子を次いで粒子トランスファーストレージへとトランスファーし、いくつかのコピーを作る。こうして作製されたマイクロアレイは活性成分又はコードDNA及び/又はRNAのいずれかを含有する。次いでDNA配列をアレイ上の各スポットについてシークエンシングにより決定し、こうして活性成分の分子構造を算出する。ここで以下の実施形態が好ましい。
異なる相互作用パートナー、例えば、結合物質をここで個々の活性成分アレイに添加し、相互作用を測定する。特に強いシグナルを有するスポットは、特に強く相互作用し、したがって、潜在的に強い効果を有する活性成分を表す。かかる強い相互作用を同定した後、活性成分を回収又は再度合成し、相互作用を、再度古典的方法を用いて検証する。
しかしながら、相互作用パートナーを、あらかじめその天然の相互作用分子又は元の活性成分と混合してもよい。この混合物を次いで活性成分アレイに適用すると、競合が起こる。この活性成分又は天然の相互作用パートナーよりも強い結合を有する活性成分のみがシグナルを生成することができる。特に強力な活性成分をこうして同定することができる。
【0150】
DNAタグ及び/又はRNAタグの使用は、シークエンシングに基づいて分子構造を容易に同定することを可能とする。粒子上では、大きな労力なしではこれはしばしば不可能である。本方法はしたがって、大きな単純化を構成する。質量分析タグ又はNMRタグ等の代替的な標識方法もまた考え得る。次いでコピーを、質量分析又はNMRに好適なマイクロアレイの形態で作製する。粒子は、該粒子に含まれるチップ、又はフルオロフォアの形態で標識され、したがって割り当てることができる実施形態もまた好ましい。それゆえ本方法により、DNAコピーに基づいて容易に多数の活性成分バリアントを調べ、分子構造を割り当てることが可能である。
【0151】
活性成分の最適化のために本方法を使用することもまた好ましい。本方法は、原則として、相互作用パートナーの添加による活性成分スクリーニングによる上記の活性成分の発見に対応する。しかしながら、活性成分がこれらの場合において既知である場合、既に同定されている活性成分と非常に大きな程度の類似性を有する、コンビナトリアルケミカルライブラリーを作製する。ケミカルライブラリーの粒子にセクション2.2.8に従って分子タグを付与し、これにより、その上で合成された活性成分の分子構造をシークエンシングの後に各粒子に割り当てることが可能となる。粒子を次いで粒子トランスファーストレージにトランスファーし、いくつかのコピーを作る。こうして作製されたマイクロアレイは、活性成分又はコードcDNA及び/又はRNAのいずれかを担持する。次いで、シークエンシングによって、DNA配列をアレイ上の各スポットについて決定し、したがって活性成分の分子構造を計算する。ここで以下の実施形態が好ましい。
相互作用パートナー、例えば、結合物質を、活性成分アレイに添加し、相互作用を測定する。特に強いシグナルを有するスポットは特に強く相互作用するはずであり、したがって強い効果を有する活性成分を構成するはずである。
しかしながら、相互作用パートナーを、その天然の相互作用分子又は元の活性成分と混合してもよい。この混合物を活性成分アレイに添加すると、競合が起こる。この活性成分又は天然の相互作用パートナーよりも強い結合を有する活性成分のみがここでシグナルを生成することができる。特に強力な活性成分をこうして同定することができる。
【0152】
DNAタグ及び/又はRNAタグの使用は、シークエンシングに基づいて分子構造の単純化された同定を可能とする。大きな労力なしではこれはしばしば不可能である。本方法はしたがって、明確な単純化を構成する。質量分析タグ又はNMRタグ等の代替的な標識方法もまた考えうる。次いでコピーを、質量分析又はNMRに好適なマイクロアレイの形態で作製する。粒子は、該粒子に含まれるチップ又はフルオロフォアの形態で標識され、したがってこれを元に割り当てることができる実施形態もまた好ましい。それゆえ本方法により、DNAコピーに基づいて容易に多数の活性成分バリアントを調べ、分子構造を割り当てることが可能である。
【0153】
さらに、攻撃のウイルスポイント(viral points)についてのスクリーニングのために本方法を使用することが好ましい。DNA及びmRNAを種、即ち、宿主から得て、次いで全ゲノム、全トランスクリプトーム及び全プロテオームをそれから作製する。その後DNA、RNA及びタンパク質を宿主の組織サンプル及び宿主の寄生体から得て、精製する。それぞれのサンプルを次いで異なる色で標識し、組み合わせて、それぞれを個々のアレイに添加する。寄生体は宿主を分子的になんらかの形態で支配するはずであるので、DNA、RNA又はタンパク質が宿主自体の場合よりもより良好に(より高い親和性で)結合するスポットが存在するはずである。これらのスポットは、いわば、寄生体の攻撃の分子ポイントである。これは特にウイルスが関与する場合に当てはまる。DNA、RNA又はタンパク質アレイのレベルで対応するスポットは次いで、寄生体のより強力な呈色を有する。これらの寄生体と宿主との間の相互作用は、ウイルスが特に細胞に侵入し、分子機能を引き継ぐ及び/又は置き換えることにより細胞を乗っ取ることができる最初の相互作用を構成する。この攻撃ポイントが正確に知られていれば、正確にこれらの相互作用について活性成分を探索することができ、したがってこれら活性成分は、寄生体DNA、RNA又はタンパク質と宿主のDNA、RNA又はタンパク質との相互作用を抑制するか、又は少なくとも干渉する。かかる活性成分は次いで「抗寄生体」剤として利用することができる。したがって特に抗ウイルス活性成分について、相互作用対が、ゲノム、プロテオーム及びトランスクリプトームにわたって1つのバッチでこのシステムを用いることにより初めて同定できるという点で、有効性を分子相互作用に割り当てることが可能となる。
【0154】
抗生物質、抗生物質の阻害剤、抗体の最適化、抗体の安定化、抗体の単離、自己免疫疾患用のエピトープ、アレルギー用のエピトープ、アレルゲン用のエピトープ、ワクチン用のエピトープ、活性成分、活性成分の相互作用パートナー、活性成分の最適化、増殖因子、増殖因子置換成分、増殖因子の最適化及び/又はウイルス作用点(virus attack points)を同定するスクリーニング法において、本方法を使用することが好ましい。
【0155】
分子、好ましくはDNase、RNase、タンパク質、キナーゼ及び/又はホスファターゼの安定性を同定するスクリーニング法において、本方法を用いることも好ましい。
【0156】
本発明の利点は、反応工程の使用、第1のストレージの適用に応じた作製並びに1又は複数の類似の又は異なるコピーの作製並びに個々のコピー及び/又はオリジナルの分析の割り当てにより、特にそのスループットの組合せにおいて明らかである。これらの利点は、オリジナル分子並びにそれらの誘導体及び増幅物の構造の解明並びにそれらの特性の割り当てを可能とする。反応工程、好ましくはコピープロセスもまた分析に用いることができるため、可能な分析の範囲がより広くなる。本発明によると、非常に多くの分子(10
2〜10
6又はそれ以上でさえ)を標的化された様式で調べること、それらの構造を決定すること、並びに構造及び特性におけるそれらの類似性及び相違を互いに比較することが可能である。スループットの上昇により、既存のスクリーニング及びディスプレイ方法を改善するだけでなく、まったく新しい適用も可能となる。
【0157】
特別な利点には、コピーにより互いに導き出され、それにより互いに「関連性」を有する、別々のマイクロアレイ上の、分子の個々の又は複数の特性及び構造の別々の決定が含まれる。さらに、マイクロアレイコピー上での位置情報に基づくそれらの特性の相関により、それぞれの特性を、コピー上のそれぞれのオリジナル分子、その増幅物及び誘導体に割り当てることができ、特に有利な様式で互いに比較することができる。分子又は生化学的プロセスの更なる特性を検出するための、反応及びトランスファー工程の分析方法としての任意の使用は、更なる特別な利点を伴う。
【0158】
本発明により、驚くべきことに、分子特性及び/又は反応条件の分析のために用いることができる方法が利用可能となり、ここで本方法は特に迅速に進行し、かつより少ない量の反応溶液を使用するものである。したがって時間及び費用の節約が可能である。さらに、本方法は自動化プロセスの実施を可能とし、これもまた費用の節約を伴い、効率の上昇を可能とする。