(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355684
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】主観的スペックル形成の特徴付けのためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20180702BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20180702BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20180702BHJP
【FI】
G01N21/17 A
B60K35/00 A
!G02B27/01
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-166136(P2016-166136)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-44702(P2017-44702A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】10 2015 114 376.3
(32)【優先日】2015年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505450755
【氏名又は名称】ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ヤニング ツァオ
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュリープ
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−164163(JP,A)
【文献】
特開平09−280832(JP,A)
【文献】
特開平10−023438(JP,A)
【文献】
特開2012−235443(JP,A)
【文献】
特開2008−170378(JP,A)
【文献】
特開2013−061255(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0053729(US,A1)
【文献】
特開平08−014824(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0133630(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2007−0063188(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0075506(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0181483(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0063728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01B 11/00−11/30
G01P 1/00
G03B 21/00
B60K 35/00−37/00
G02B 27/00−27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内で仮想画像として情報を表示するためのフロント防風ガラスの画像品質の客観的評価のための、方法であって、
−コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光源(10)によってフロント防風ガラス(6)の投影表面(9)上に画像を投影するステップと、
−検出ユニット(11)によって前記投影表面(9)のスペックル画像(13)を生成するステップであって、前記検出ユニット(3)の露出時間(T)が、スペックルコントラスト(Cspeckle)が最大値まで減少する最適露出時間(Topt)まで段階的なやり方で変更される、というステップと、
−前記最適露出時間(Topt)によって複数のスペックル画像(13)を生成し、平均スペックル画像(14)を形成するステップと、
−前記最適露出時間(Topt)によって、前記コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光源(10)の投影画像がない状態で前記投影表面(9)の複数の画像を生成し、平均ダーク画像(15)を形成するステップと、
−背景照明ノイズを減少させるため前記平均ダーク画像(15)を前記平均スペックル画像(14)から減算するステップと、
−画像品質の解析のために強度ヒストグラムを形成するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
絞り値(f)が、前記スペックル画像(13)内で発生するスペックルサイズ(D)及び前記検出ユニット(11)に依存するピクセルサイズ(P)に依存して調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペックル画像(13)からのデータが、データ収集及び解析ユニット(12)において処理され評価される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主観的スペックル形成の特徴付けのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スペックルパターンは、光学的に粗い投影表面が十分にコヒーレントな光、特にレーザ光、によって照明されるときに発生する、不規則で微粒状の光分布である。光学的に粗い投影表面は、光の波長の大きさのオーダの凹凸を有する。スペックルパターンは、投影表面上での光スポットの画像化において、また、投影表面の凹凸において散乱した光波の干渉によって、生じる。これは、反射用投影表面の確率的微細構造を有する、ランダムに分布した強度最大値及び強度最小値を有する空間的構造を生成する。スペックル粒のコントラストは、波長のコヒーレンス及び投影表面の粗さによって決定される。スペックルパターンは、光の波長が投影表面の平均粗さを下回って著しく減少するときに、消える。スペックル粒のサイズは、光スポットのサイズに依存する。光スポットが大きくなればなるほど、スペックルパターンの粒状が微細になる。
【0003】
レーザは、光学的画像化方法用の光源として益々使用されており、その高い光学的効率のために、レーザは、大きなカラー空間及び高いコントラストを有する明るい映像を生成するときに特に有用である。無制限の映像サイズを有する高い画像品質を達成することが可能である。レーザビームは、表示される映像を示すために投影表面にわたって走査される。このいわゆるレーザ走査投影は、コンタクトアナログヘッドアップディスプレイ等の車両アプリケーションにおいて、映像生成ユニットすなわちPGU(picture generation unit)として使用するために非常に有望な技術である。
【0004】
ヘッドアップディスプレイは、例えば、自動車のフロント防風ガラスの領域内に配置される。ヘッドアップディスプレイすなわちHUD(head−up display)によって、以下のようなディスプレイシステム、すなわち、情報が視野内に投影されることにより表示情報を観察する時にユーザが自分の頭部の姿勢または観察方向を元々の方向に維持できる、というディスプレイシステムが意味される。HUDは、一般に、画像を生成する画像化ユニット、光学モジュール、及び投影表面を有する。光学モジュールは、光透過性ミラー反射防風ガラスとして構成される投影表面上に画像を向ける。車両の運転者は、画像化ユニットの反射情報、及び同時に、防風ガラスの背後の実際の周囲物を見る。
【0005】
スペックルパターンは、レーザ又は他のコヒーレント光源を用いる投影方法中に生じ、絵素が小さいことにより、一般に、粗い粒度を持ち、観察者によって目障りなものとして知覚される。
【0006】
従来技術は、スペックルパターンの形成を防止または減少させる少数の可能性を提供する。
【0007】
1つの可能性は、画像投影ユニットにおいてスペックルパターンを低減するために、US 2012 0200832 A1に提示されている。ここでは、凸状レンズが、光源の前に配置され、光源から可変距離に設置される可能性がある。こうして調整可能なレンズの焦点距離に応じて、コヒーレント光は、スペックルパターンが減少するように変更される。
【0008】
DE 10 2010 002 161 A1において、スペックルパターンを減少させるための別の方法が提案されている。ここでは、連続的に回転する散乱用ディスクが、コヒーレント光源の前に配置される。こうして、種々の統計的位相変動が光波に課されて、種々の主観的ノイズ成分が或る露出期間中に生成され、個々のノイズ成分の当該露出期間にわたる時間平均によるノイズ減少済み強度パターンが、2つのカメラによって検出される。
【0009】
スペックル強度を客観的に定量化することの困難さは、使用される測定システムに対する測定結果の強い依存性に存在する。混乱を引き起こすスポットパターンに関して映像品質を客観的に評価することを可能にするスペックル定量化のための方法が、当該技術分野において未だ全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 2012 0200832 A1
【特許文献2】DE 10 2010 002 161 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようと目論む問題は、主観的スペックル形成の特徴付けのための、特にはスペックルコントラストの定量化のための、デバイス及び方法を提供することである。デバイスは、光源としてレーザを用いて生成される画像を定量化すべきであり、設計が簡単であるべきであり、したがって、製造し動作するのが安価であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
当該問題は、独立請求項の特徴を有するデバイス及び方法によって解決される。修正は、従属請求項において示される。
【0013】
当該問題は、主観的スペックル形成の特徴付けのための、特にはスペックルコントラストの定量化のための、本発明によるデバイスによって解決される。当該デバイスは、投影表面と、当該投影表面上に映像を投影するためのコヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光源と、前記投影表面上に投影された映像のスペックル画像を生成するための検出ユニットと、画像データを処理し評価するためのデータ収集及び解析ユニットと、を備える。
【0014】
本発明の一構成によれば、光源はレーザ投影機として設計される。
【0015】
検出ユニットは、好ましくはカメラとして構成される。
【0016】
前記問題は、主観的スペックル形成の特徴付けのための、特にはスペックルコントラストの定量化のための、本発明による方法によって更に解決される。当該方法において、スペックルコントラストは最大値まで分解される。
当該方法において、画像が、コヒーレントなまたは少なくとも部分的にコヒーレントな光源を有する投影機によって投影表面上に投影される。コヒーレント光源及び投影表面の品質のおかげで、画像は、重ね合わされたスペックルパターンと共に生成される。カメラか光学センサかまたはその種類の何かによって形成される検出ユニットによって、スペックルパターンを有する投影表面が記録される。検出ユニットによって記録される投影表面の画像は、以降では、スペックル画像と呼ばれる。光源によって放出される光の波長及び検出ユニットのピクセルサイズに応じて、最初に、スペックル画像が生成され、スペックルのサイズが計算される。スペックルサイズは、絞り値を変動させることによって、カメラのピクセルサイズに適合され得る。重ね合わされたスペックルパターンに対して画像品質の定量化における精度を高くするため、スペックルの直径は5より大きな数のピクセルを占めるべきである。この場合でないときは、絞り値が調整されるべきでる。スペックルサイズが5より大きな数のピクセルサイズである場合、最適露出時間について探索が行われる。このために、投影表面は、カメラの異なる露出時間で記録され、検出ユニットの露出時間は、スペックルコントラストが最大値まで減少する最適露出時間が達成されるまで段階的なやり方で、変更される。最大値までのスペックルコントラストの分解は、スペックルコントラストの記録済みの測定結果において、プラトーを有する最大値が検出され、スペックルコントラストの値が当該プラトーの端でもう一度低下する、というようなものであると判定される。
【0017】
最適露出時間によって、複数のスペックル画像が記録され、平均スペックル画像が形成される。同様に、最適露出時間によって、照明されないダーク投影表面が、数回記録され、平均ダーク画像が形成される。この後、平均ダーク画像は、平均スペックル画像から減算される。これは、背景照明ノイズの減少を可能にする。この後、スペックルパターンの強度ヒストグラムが計算され、その助けを借りて、レーザ投影機の画像品質が解析される。
【0018】
本発明の一修正形態によれば、絞り値は、スペックル画像内で発生するスペックルサイズ及び検出ユニットに依存するピクセルサイズに依存して調整される。
【0019】
データ収集及び解析ユニットの助けを借りて、スペックル画像からのデータ、特には強度値が、有利に処理され評価される。
【0020】
スペックル画像を特徴付けるための先に提示した方法は、測定済みスペックル結果を異なる測定レイアウトを用いてシミュレートすることを可能にする。こうして、個々のレーザ投影機が、互いに比較され得て、また、異なる画像生成ユニットの画像品質の客観的評価のための前提条件が生成される。
【0021】
本発明の実施形態の更なる詳細、特徴、及び利益が、対応する図面を参照して例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】自動車内で仮想画像として情報を表示するための光学コンポーネントの配置構成を有する、画像を生成するためのシステムの図である。
【
図2】スペックルコントラストの定量化のためのデバイスの図である。
【
図3】スペックルコントラストの定量化のための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、画像生成ユニット1、及び、自動車内で仮想画像7として情報を表示するための光学コンポーネント3の配置構成を有する、画像を生成するためのシステムを示す。仮想画像7は、フロント防風ガラス6を通して運転方向に見るとき、車両運転者2の観察方向に投影される。システムは、光学コンポーネント3、特に偏向ミラー、がダッシュボード5の内部にある状態で配置される。画像生成ユニット1によって放出される光線のビーム4は、光学コンポーネント3にわたって取得される。光線のビーム7は、グレアトラップ(図示せず)を通ってダッシュボード5から出る。グレアトラップに加えて設計される別の光トラップは、グレアトラップと共に、車両運転者2について苛立ち及び反射をもたらす場合がある光線の出現を防止する。
【0024】
光線のビーム4は、画像を提示するためフロント防風ガラス6が光学コンポーネントを持って作られる、自動車の当該フロント防風ガラス6の所定の領域上に偏向される。画像生成ユニット1及び光学コンポーネント3は、HUDとして、フロント防風ガラス6上に構成される投影領域と連携して働く。
【0025】
画像生成ユニット1は、仮想画像7を生成し、当該仮想画像7は、フロント防風ガラス6のミラー反射性で光透過性の領域上に投影される。車両運転者2は、フロント防風ガラス投影機のユーザとして、フロント防風ガラス6の背後の観察方向に、画像生成ユニット1の反射情報、また同時に、実際の周囲物を見る。
【0026】
図2は、主観的スペックルコントラストの特徴付けのための、特に、スペックルコントラストの定量化のための、デバイス8を示す。画像生成ユニット1のレーザ投影機10等のコヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光源10によって、画像が、投影表面9上に投影される。この画像は、当該画像上にスペックルパターンが重ね合わされている。カメラ11等の検出ユニット11が、当該カメラ11の飽和が達成されるまで異なる露出時間Tを用いて画像のスペックル画像13を生成して、最適露出時間T
optを見出す。最適露出時間T
optは、スペックルパターンが最大値まで分解される限界値を示す。画像データ、特に、強度値Iは、コンピュータ等のデータ収集及び解析ユニット12において処理される。
【0027】
図3は、スペックルコントラストの定量化、したがって、主観的スペックルコントラストの特徴付けのための方法をフローチャートとして示す。レーザ投影機10によって放出される光の波長λ及びカメラ11の知られているピクセルサイズPから始めて、最小絞り値fが計算される。カメラ11及び調整済みの最小絞り値fを用いて、投影表面9のスペックル画像13が生成され、こうして、スペックルサイズDが計算される。スペックルサイズDは、絞り値fを変動させることによってカメラ11のピクセルサイズPに適合される可能性がある。重ね合わされるスペックルパターンに関して画像品質の定量化の精度を高くするため、スペックルサイズDであるスペックルの直径は、5つより多い数のピクセルPを占めるべきである。この場合でない時、絞り値fは調整されるべきである。スペックルサイズDが、5つより多い数のピクセルサイズPである場合、最適露出時間T
optについて探索が行われる。このため、投影表面9は、カメラ11が飽和するまで、カメラ11の異なる露出時間Tによって記録される。露出時間の閾値または最適露出時間T
optにおいて、スペックルパターンは最大値まで分解される。
【0028】
スペックルコントラストの分解の最大値は、スペックルコントラストの測定結果の記録済み曲線が、プラトー上に存在する最大値を有し、スペックルコントラストの値が、当該プラトーの端でもう一度低下する、というように決定される。
【0029】
最適露出時間T
optによって、複数のスペックル画像13が記録され、平均スペックル画像14が形成される。同様に、最適露出時間T
optによって、照明されないダーク投影表面9が、数回記録され、平均ダーク画像15が形成される。この後、ダーク投影表面9の平均ダーク画像15は、平均スペックル画像14から減算される。これは、背景照明ノイズの減少を可能にする。この後、強度ヒストグラムIが計算され、その助けを借りて、レーザ投影機10の画像品質が、強度Iの標準偏差σを有するスペックルコントラストC
speckleを計算することによって解析される。
図3で提示する方法は、測定済みスペックル結果を異なる測定レイアウトを用いて再現(シミュレート)することを可能にする。こうして、例えば、個々のレーザ投影機が、互いに比較される可能性があり、それが、異なる画像生成ユニットの画像品質の客観的評価のための前提条件を生成する。
【符号の説明】
【0030】
1 画像生成ユニット
2 車両運転者
3 光学コンポーネント
4 光線のビーム
5 ダッシュボード
6 フロント防風ガラス
7 仮想画像
8 デバイス
9 投影表面
10 コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光源、レーザ投影機
11 検出ユニット、カメラ
12 データ収集及び解析ユニット
13 スペックル画像(スペックルパターンを有する画像)
14 平均スペックル画像
15 平均ダーク画像
λ 波長
f 絞り値
D スペックルサイズ
P ピクセルサイズ
T 露出時間
T
opt 最適露出時間
I 強度
C
speckle スペックルコントラスト
σ 強度Iの標準偏差