特許第6355689号(P6355689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6355689肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355689
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/068 20060101AFI20180702BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20180702BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180702BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61K36/068
   A61K36/48
   A61P1/16
   A61P43/00 121
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-177566(P2016-177566)
(22)【出願日】2016年9月12日
(62)【分割の表示】特願2012-255844(P2012-255844)の分割
【原出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2017-31171(P2017-31171A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年9月21日
(31)【優先権主張番号】101110713
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512302430
【氏名又は名称】泰宗生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】徐 煥清
(72)【発明者】
【氏名】王 雅俊
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0021426(US,A1)
【文献】 Anhui Medical and Pharmaceutical Journal,2005年,Vol.9, No.4,244-245
【文献】 南山堂 医学大辞典(豪華版),日本,1998年 1月16日,18版1刷,第389頁
【文献】 メルクマニュアル 第18版 日本語版,日本,2006年12月25日,p.226-227
【文献】 Progress in Medicine,1992年,Vol.12,pp.1172-1174
【文献】 Shaanxi Journal of Traditional Chinese Medicine,2003年,Vol.24, No.7,pp.652-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50重量%〜90重量%の冬虫夏草菌糸体と10重量%〜50重量%の黄耆とを含む、非ウィルス性の肝線維化を予防、治療するための医薬組成物。
【請求項2】
前記冬虫夏草菌糸体は、ペシロマイセスヘピアリ菌糸体(Paecilomyces hepiali Chen et Dai mycelia)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記冬虫夏草菌糸体は、乾燥粉末状である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記黄耆は、ナイモウ黄耆(Astragalus membranaceus (Fisch.)Bge. Var. mongholicus (Bge.) Hsiao)又はキバナオウギ(Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge.)の乾燥した根から作られる濃縮黄耆粉末から選ばれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物は、薬剤または保健用食品を製造するために用いられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬剤または保健用食品が、カプセル剤、錠剤又は散剤である経口製剤である、請求項5に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療する医薬組成物に関しており、当該医薬組成物は、50重量%〜90重量%の冬虫夏草(Cordyceps sinensis)菌糸体と、10重量%〜50重量%の黄耆とを含む。
【背景技術】
【0002】
アルコール、ウィルス又は化学物質により引き起こされた慢性肝損傷は、肝臓星細胞を活性化させ、大量のコラーゲン等の細胞外基質を分泌すると共に、これらの細胞外基質を過剰に蓄積し、肝線維化を引き起こす。上記発病のメカニズムに基づき、肝線維化の治療薬の開発は、主に、細胞外基質の合成を抑制すること、又は細胞外基質の分解を促進することなどをターゲットとしていた。しかしながら、現在発見されている物質のほとんどは、生物毒性を有したり、強烈な副作用を生じたりするため、未だにアニマルモデルにおいて有効な治療効果を示すものが見つかっていない。
【0003】
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease, NAFLD)とは、過剰なアルコールを摂取してない患者の肝臓の脂肪含有量が、肝臓重量の5%以上となることであり、これらの患者は、臨床で肥満症、糖尿病、高脂血症等の疾患を伴うことが多く、肝線維化及び肝硬変を引き起こす可能性がある。現在、非アルコール性脂肪性肝の治療は、体重を減らすことや、血液中の糖質及び脂質をコントロールすることによって行われているが、非アルコール性脂肪性肝を有効に治療し、更に、肝線維化及び肝硬変への進行を予防できることが検証された薬物は見つかっていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、漢方生薬で肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療する医薬組成物を提供することにある。本発明の医薬組成物は、主に、50重量%〜90重量%の冬虫夏草菌糸体と10重量%〜50重量%の黄耆とを含む。
【0005】
冬虫夏草(Cordyceps sinensis)は、伝統的な漢方薬材であり、抗菌、消炎、解熱、鎮静、血管拡張の促進、喘息の抑制、抗不整脈、新陳代謝の促進、抗老化、抗腫瘍及び免疫の活性化などの効能を有する。野生の冬虫夏草は、生産量が少なく、価格が高いため、本発明に用いられる冬虫夏草は、冬虫夏草から分離して精製した菌糸体を用いており、当該菌糸体は、ヒルステラシネンシス(Hirsutella sinensis)、ペシロマイセス・シネンシス(Paecilomyces sinensis)、クリソスポリウム・シネンシス(Chrysosporium sinensis)、スポロトリクス・インセクトルム(Sporothrix insectorum)、スタキボトリス属(Stachybotrys sp.)、トリポクラディウム・シネンシス(Tolypocladium sinensis)、ペシロマイセス・ヘピアリ(Paecilomyces hepiali)及びヒルステラ・ヘピアリ(Hirsutella hepiali)などの菌種を含む。
【0006】
本発明における好ましい実施例では、当該冬虫夏草菌糸体がペシロマイセスヘピアリ菌糸体(Paecilomyces hepiali Chen et Dai mycelia)であり、分離、培養及び発酵を経た後、得られた菌糸体を冷凍、又は熱乾燥して、粉末にし、本発明の医薬組成物中の主要成分の一つとする。
【0007】
黄耆(Astragalus membranaceus)の薬用部分は根部であり、細胞免疫を強化する機能がある。本発明は、ナイモウ黄耆(Astragalus membranaceus (Fisch.)Bge. Var. mongholicus (Bge.) Hsiao)又はキバナオウギ(Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge.)の乾燥した根から作られる濃縮黄耆粉末を、本発明の医薬組成物中のもう一つの主要成分として用いているが、他種の黄耆のいずれも本発明の範囲に含まれる。
【0008】
本発明の医薬組成物は、ナツメ(Zizyphi Sativae)の濃縮粉末を更に含んでもよく、また、薬理学的に許容できる賦形剤を更に含んでもよい。当該賦形剤は、リン酸カルシウム、グルコン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素及びでん粉のうちの1つ又は複数の組み合せから選ばれる。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療する薬剤又は保健用食品を製造するための医薬組成物を提供することにある。当該薬剤又は保健用食品は、カプセル剤、錠剤又は散剤といった経口製剤であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のペシロマイセスヘピアリ菌糸体粉末を調製するフロー図である。
図2】TAAにより誘発した肝線維化の実験で4種類の処理において測定した(A)トリグリセリド、(B)コレステロール、(C)AST及び(D)ALTの含有量であり、表中の数値は、平均値±SEM(n=12)で、異なるアルファベットは、有意な差を示す(p<0.05)。
図3】高脂肪飼料で誘発した脂肪肝の実験において、対照群及び2種類の投与量(557及び2786mg/kg)で処理した場合の群の、測定したマウス体重の変化である。
図4】高脂肪飼料で誘発した脂肪肝の実験で4種類の処理を行った場合、測定した(A)AST及び(B)ALTの含有量である。
図5】高脂肪飼料で誘発した脂肪肝の実験で4種類の処理を行った場合、測定したインスリンの含有量である。
図6】高脂肪飼料で誘発した脂肪肝の実験で4種類の処理を行った場合、測定した肝臓の湿潤重量である。
【0011】
以下、本発明のある好ましい具体例を用いて、その実施形態、及び肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療するための優れた効果を詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の医薬組成物の製造)
本発明のある好ましい具体例に用いた冬虫夏草菌糸体は、ペシロマイセスヘピアリ菌糸体粉末である。当該ペシロマイセスヘピアリ菌糸体粉末の製造は、図1のフロー図に示され、当該ペシロマイセスヘピアリ菌糸体は、培養及び発酵を経て、更に、得られた菌糸体を冷凍又は熱乾燥、磨砕及び濾過し、粉末にしたものである。また、黄耆は、ナイモウ黄耆又はキバナ黄耆から選ばれる、乾燥した根から作られた市販の黄耆濃縮粉末を用いた。また、本発明の医薬組成物は、ナツメ濃縮粉末及び薬理学的に許容できる賦形剤を更に含み、当該賦形剤は、リン酸カルシウム、グルコン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素及びでん粉のうちの1つ又は複数の組み合せから選ばれる。上記組成物は、カプセル剤型に製造されることが好ましく、その中に含まれる各成分及び含有量は、下記に示す。
【0013】
本発明の組成物のヒトにおける投与量(70kg)は、3120mg/日であり、ラットにおける経口投与量は、実験動物とヒトとの表面積比に等価する投与量換算比率で計算する。200gのラットと70kgのヒトとの表面積比率が、0.018であることから、200gのラットに換算して投与量は56.16mg/日である。以下、本発明の組成物を用いて、肝線維化又は非アルコール性脂肪性肝を予防、治療する効果を検証する。
【0014】
(チオアセトアミド(TAA)により誘発した肝線維化の保護作用)
5週齢の雄のWistarラットを4つの群に分け、下記の処理を行った。

【0015】
一週間に100mg/kgのTAAを3回注射し、ラットの肝線維化症状を誘発した。また、一週間に、各群に対して、脱イオン水、1倍又は5倍の投与量の本発明の組成物をそれぞれ6回経管投与し、8週間継続した。
【0016】
8週間後、採血し、各群のラット血清中において、肝障害に関連する生化学的指数及び血液脂質を測定し、また、肝組織の脂質含有量、サイトカイン、コラーゲン、抗酸化酵素活性及び過酸化代謝産物を測定した。その結果は下記に示す。
【0017】
1.血液の生化学的数値及び肝臓の脂質含有量に対する影響
図2A及び図2Bに示すように、TAA処理は、血液脂質(トリグリセリド(TG)及びコレステロール(TC))の低下をもたらしたが、TAAのみで処理した個体と比較して、本発明の組成物を補充した個体の血清においてTG及びTCのいずれも著しく高い値を示しており、TCは対照群の水準までに回復可能である。肝臓の脂質分析結果では、本発明の組成物を補充することにより、肝臓脂肪の蓄積を有効に低減することができると示された(表1に示す)。
【0018】
表1
表中のデータは平均値±SEM(n=12)を表し、各項目の測定平均値における異なるアルファベットは、有意差(p<0.05)を示す。
【0019】
2.肝臓の抗酸化能力に対する影響
各群の抗酸化成分及び酵素活性を測定し、その結果を表2に示す。
【0020】
表2
表中のデータは平均値±SEM(n=12)を表し、各項目の測定平均値における異なるアルファベットは、有意差(p<0.05)を示す。
【0021】
結果によれば、本発明の組成物を補充することは、脂質の過酸化生成物であるマロンジアルデヒド(melondialdehyde, MDA)を著しく低減し、総抗酸化能力(trolox equivalent antioxidant capacity, TEAC)を向上させ、且つ抗酸化酵素SOD、CAT、GPxなどの活性を向上させることが示された。
【0022】
3.肝臓損傷の場合に対する影響
アラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase,ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase,AST)は、肝臓損傷の指標として用いられ、結果では、本発明の組成物が血液中のALT及びASTを有効に低減させることができることが示され(図2C及び図2Dに示す)、また、低い投与量の組成物でも、ALT及びASTを低減させる効果を示した。
【0023】
腫瘍壊死因子-α(TNFα)及びインターロイキン-1β(IL1-β)は、損傷した肝細胞が分泌したサイトカインであり、細胞の傷害を加速し、強烈な炎症反応を引き起こす。測定結果は、表3に示すように、本発明の組成物を補充することでTNFα及びIL1-βの含有量を効果的に低減させ、肝臓障害の度合を軽減したことを示している。また、肝臓中のコラーゲンを分析した結果、本発明の組成物を補充することによって、肝臓中のコラーゲンの含有量も著しく低減されることがわかった(表3)。
【0024】
表3
表中のデータは平均値±SEM(n=12)を表し、各項目の測定平均値における異なるアルファベットは、有意差(p<0.05)を示す。
【0025】
上記より、TAAで誘導したラット肝線維化モデルにおいて、本発明の医薬組成物が、肝臓における脂質代謝を改善し、脂肪の蓄積を低減し、抗酸化能力を向上させ、TAAによる肝損傷を軽減し、且つ低投与量(正常試験群)で、所望の効果を達成可能である。
【0026】
(四塩化炭素により誘発した化学性の肝損傷)
Spraque-Dawleyラットを5つの群に分けて、それぞれ下記の処理を行った。

【0027】
経口で6週間投与し、週に3回、オリーブオイルに溶解した40%の四塩化炭素1ml/kgを経管投与した。また、毎日、各群に脱イオン水、一倍又は十倍の投与量の本発明の組成物及びシリマリンを投与した。
【0028】
1. 血液の生化学的数値及び分析
六週間後、採血して、下記表4中の肝臓機能の各項目を測定した。その結果、本発明の組成物は、AST、ALT及びビリルビンを減少させ、且つ血清アルブミンの含有量を増加させた。
【0029】
表4
正常対照群に対しては、*がp<0.05を表し、**がp<0.01を表す。
【0030】
2. 抗酸化酵素及びタンパク質の濃度
肝臓組織中の抗酸化分子であるグルタチオン(GSH)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、グルタチオンレダクターゼ(GSH-Rd)、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)及びカタラーゼ(Catalase)の活性を測定した。結果は、表5に示す。
【0031】
表5
正常対照群に対して、* p<0.05を示し、** p<0.01を示す。
【0032】
結果では、本発明の組成物を投与した後、測定したGSH及びGSH-Pxが増加し、正常対照群に近づき、Catalase 及びSODは、シリマリンを投与した正常対照群より高く、タンパク質濃度も同様な傾向であることが示された。
【0033】
3.病理切片
四塩化炭素が肝損傷を引き起こし、病理切片中で肝臓表面が荒いことが観察されたが、本発明の組成物を投与したラットの肝臓組織では、線維化した現象が軽微であり、肝小葉の変形の確率が低下した。
【0034】
Sirius red組織染色により、肝組織におけるコラーゲンの分布を観察し、四塩化炭素で処理した陰性対照群の肝組織切片では、コラーゲンの面積が増加し、肝小葉に激しい肝線維化現象が見られた。定量分析を行い、その結果は、表6に示すように、本発明の組成物の2種類の投与量のいずれも、肝臓中のコラーゲンを低減させ、肝臓保護作用を有することを示した。
表6
【0035】
上記四塩化炭素でラットの肝損傷を誘発するモデルにおいて、本発明の医薬組成物は、四塩化炭素によるラットの肝臓指数への損傷を低下させ、抗酸化酵素活性及びタンパク質濃度を増大させることが可能であり、また、病理切片及びコラーゲンの含有量においても、肝線維化現象を軽減可能であることが説明された。
【0036】
(高脂肪飼料が脂肪肝を誘発する作用の評価)
60%以上のカロリーを脂肪として含む高脂肪飼料(D12492, Research Diets, USA)で6週齢のC57BL/6のマウスを18週間飼育し、マウスの肥満を誘発した。一方、10%以上のカロリーを脂肪として含む通常の飼料(D12450B, Research Diets, USA)で、同じ週齢のC57BL/6のマウスを飼育して、対照群とした。
【0037】
各群は、週に5回、無菌水(10ml/kg)又は本発明の組成物(557mg/kg又は2786mg/kg)を経口投与し、10週間継続した。毎週、体重を測定し、10週間後、採血し、血清AST、ALT及びインスリンを測定し、肝臓を取り出し、秤量した。
【0038】
通常の飼料を投与したブランク群のマウス体重は、実験の全過程において顕著な変化を示さなかった。高脂肪飼料を投与した対照群のマウスの体重は、統計上で、ブランク群より明らかに高い。557mg/kgの本発明の組成物を投与した群は、対照群と比較して、顕著な差が見られないが、高投与量2786mg/kgで経口投与したマウスの体重は、22日目から低下が始まり、36日目から57日にかけてマウスの体重の低下が明らかであった(図3)。
【0039】
本発明の組成物を高投与量2786mg/kgで8週間経口投与した群は、対照群(174±46.7 U/L)と比較して、血清AST値(73±6.6 U/L)が約58%低下し、とりわけ、血清ALT値(9±3.7 U/L)が約84%(対照群は56±13.2 U/L, p<0.05)著しく低下しており(図4A及び図4B)、統計的有意差がみられた。
【0040】
高脂肪飼料を投与したマウスのインスリン(9.69±2.04 ng/ml)は、通常飼料を投与した場合の値(3.55±0.65 ng/ml)より2.7倍高い。一方、本発明の組成物を、557mg/kgか2786mg/kgという2種類の投与量で経口投与した場合は、対照群(9.69±2.04 ng/ml)と比較して、それぞれインスリンの含有量が24%、36%増加した(12.00±1.83 ng/dl及び13.17±2.31 ng/dl)(図5)。文献には、インスリンの分泌は、肝臓機能を保護する効果があると記載されている。
【0041】
高脂肪飼料を投与したマウスの肝臓の湿潤重量は、ブランク群の湿潤重量より高い。本発明の組成物557mg/kgを10週間経口投与した後、マウスの肝臓湿潤重量は、対照群に対して、統計的有意差が見られない。しかし、本発明の組成物2786mg/kgで8週間経口投与した場合、マウスの肝臓湿潤重量は、対照群と比較して、約29%低下した(1.16±0.1g vs. 対照群1.64±0.1g)(図6)。
【0042】
以上、好ましい具体例及び図面を参照して本発明を説明したが、具体例及び図面は、本発明を制約するものではない。この技術を熟知する技術者が上記具体例の内容に対して行った種々の修正、省略及び変更は、いずれも本発明の範囲内に属するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6