(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記残存溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドからなる群より選択されるいずれかである、請求項1に記載の布帛の製造方法。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維を形成するメタ型全芳香族ポリアミドが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドである、請求項1に記載の布帛の製造方法。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、着色した有機繊維であって濃色かつ難燃性に優れた有機繊維および該有機繊維を用いてなる布帛および衣料、および布帛の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、キャリア剤を用いて染色した有機繊維において、有機繊維に残留するキャリア剤の量を低減することにより濃色でありかつ難燃性に優れた有機繊維が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば「着色した有機繊維であって、キャリア剤の含有率が繊維質量対比1.8質量%以下であることを特徴とする着色した有機繊維。」が提供される。
【0009】
その際、前記キャリア剤の含有率が繊維質量対比0.1〜1.8質量%の範囲内であることが好ましい。また、前記キャリア剤が、DL−β−エチルフェネチルアルコール、2−エトキシベンジルアルコール、3−クロロベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、2−ニトロベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、2−メチルフェネチルアルコール、3−メチルフェネチルアルコール、4−メチルフェネチルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、3−ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコール、ベンズヒドロール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、およびN−メチルホルムアニリドからなる群より選択されるいずれか1種以上であることが好ましい。また、前記有機繊維が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維からなる群より選択されるいずれか1種であることが好ましい。
【0010】
また、前記有機繊維が、結晶化度が15〜25%のメタ型全芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。また、前記有機繊維が、残存溶媒量が1.0質量%以下のメタ型全芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。また、前記有機繊維が、残存溶媒量が0.1質量%以下のメタ型全芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。その際、前記残存溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドからなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。
【0011】
また、前記有機繊維がメタ型全芳香族ポリアミド繊維であり、かつ該メタ型全芳香族ポリアミド繊維を形成するメタ型全芳香族ポリアミドが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドであることが好ましい。
【0012】
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0013】
その際、第3成分となる芳香族ジアミンが式(2)、(3)、または芳香族ジカルボン酸ハライドが、式(4)、(5)であることが好ましい。
【0014】
H
2N−Ar2−NH
2 ・・・式(2)
H
2N−Ar2−Y−Ar2−NH
2 ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0015】
また、本発明によれば、前記の着色した有機繊維を含む布帛が提供される。その際、布帛が、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、獣毛繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、およびポリカーボネート繊維からなる群より選択されるいずれか1種以上を含むことが好ましい。また、布帛を構成するいずれかの繊維が難燃剤を含むことが好ましい。また、布帛を構成するいずれかの繊維が紫外線吸収剤または紫外線反射剤を含むことが好ましい。また、布帛の目付けが300g/m
2以下であることが好ましい。また、LOIが26以上であることが好ましい。また、垂直燃焼試験(JIS L1091A−4法3s接炎)で残炎時間1秒以下であることが好ましい。また、明度指数L値が80以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる衣料が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、前記の着色した有機繊維を含む布帛の製造方法であって、有機繊維を含む布帛を、キャリア剤を用いて染色した後、該布帛を温度90〜140℃の熱水で10〜30分間洗浄することにより前記有機繊維に含まれるキャリア剤の含有率を繊維質量対比1.8質量%以下とする布帛の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、着色した有機繊維であって濃色かつ難燃性に優れた有機繊維および該有機繊維を用いてなる布帛および衣料、および布帛の製造方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明は着色した有機繊維を対象とする。かかる有機繊維において、キャリア剤の含有率が繊維質量対比1.8質量%以下である。
【0020】
ここで、前記キャリア剤は染色助剤であり、膨潤剤とも称される。かかるキャリア剤の種類は特に限定されない。具体的には、L−β−エチルフェネチルアルコール、2−エトキシベンジルアルコール、3−クロロベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、2−ニトロベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、2−メチルフェネチルアルコール、3−メチルフェネチルアルコール、4−メチルフェネチルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、3−ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコール、ベンズヒドロール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、N−メチルホルムアニリドなどが例示される。
【0021】
本発明の着色した有機繊維において、有機繊維の種類は特に限定されないが、優れた難燃性を得る上で、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維などが好ましい。
【0022】
なかでも、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。メタ型全芳香族ポリアミド繊維とは、その繰返し単位の85モル%以上がm−フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ型全芳香族ポリアミドは、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であっても差しつかえない。
【0023】
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、従来から公知の界面重合法により製造することができる。そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN−メチル−2−ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3〜1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
【0024】
上記メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、又はドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
【0025】
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上、好ましくは3.0〜7.0モル%の範囲にあるものが好ましい。
【0026】
また、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ−m−フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられそのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
【0027】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等目的で、下記の式(2)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させることも可能である。
【0028】
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0029】
また、第3成分として共重合させることも可能であり、式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、5−クロルイソフタル酸クロライド、5−メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0030】
H
2N−Ar2−NH
2 ・・・式(2)
H
2N−Ar2−Y−Ar2−NH
2 ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0031】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で、5〜35%であることが好ましい。更には、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15〜25%であることがより好ましい。
【0032】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点および染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点で1.0質量%以下(より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01〜0.09質量%)であることが好ましい。
【0033】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
【0034】
メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定されない。例えば特公昭35−14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47−10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
【0035】
紡糸溶液としては、とくに限定されない。上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いても良いし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いても良い。
【0036】
ここで、前記アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0037】
得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全重量に対して1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0038】
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
【0039】
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に限定されない。例えば、孔数が1000〜30000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
【0040】
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が好ましい。
【0041】
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜50℃の範囲で用いることが好ましい。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が好ましい。
【0042】
次いで、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45〜60質量%の水溶液であり、浴液の温度を10〜50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3〜4倍の延伸倍率で延伸を行うことが好ましい。延伸後、10〜30℃のNMPの濃度が20〜40質量%の水溶液、続いて50〜70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行うことが好ましい。
【0043】
洗浄後の繊維は、温度270〜290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族アラミド繊維を得ることができる。
【0044】
本発明の着色した有機繊維において、繊維は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25〜200mmの短繊維が好ましい。また、有機繊維の単繊維繊度としては1〜5dtexの範囲が好ましい。
【0045】
本発明の着色した有機繊維において、着色方法としてはキャリア剤を用いた染色方法が好ましい。特に、優れた濃色性を得る上でカチオン染料を用いて染色する方法が好ましい。染色工程の条件は特に限定されない。
【0046】
かかる着色した有機繊維において、キャリア剤の含有率が繊維質量対比1.8質量%以下(好ましくは0.1〜1.8質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%、さらに好ましくは0.3〜0.9質量%)であることが肝要である。該含有率が1.8質量%よりも大きいと難燃性が損なわれるおそれがある。逆に、該含有率が0.1重量%よりも小さいと、優れた濃色性が得られなくなったり、後記の熱水洗浄工程が複雑になるおそれがある。
【0047】
キャリア剤の含有率を低くする方法としては、例えば、染色した布帛を、必要に応じて還元洗浄した後、温度90〜140℃(より好ましくは110〜140℃)の熱水で、10〜30分間、熱水洗浄する方法が例示される。
【0048】
次に、本発明の布帛は前記の着色した有機繊維を含む布帛である。かかる布帛は前記の着色した有機繊維だけで構成されていてもよいが、さらに、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、獣毛繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリカーボネート繊維などの他の繊維が含まれていてもよい。
【0049】
その際、布帛に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛質量に対して50質量%以上であると優れた難燃性が得られ好ましい。用途や使用のニーズに応じて、上記の難燃繊維、合成繊維、再生繊維、天然繊維を任意に混合できる。より具体的な例としては、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が50〜98質量%、ポリエステル繊維が2〜50質量%、セルロース系質量繊維が0〜50%の混率として染色性と快適性を併せ持つようにすることもできる。重視する性能に応じて比率を調整してもよい。
【0050】
また、布帛を構成するいずれかの繊維に難燃剤を含ませたり、紫外線吸収剤や紫外線反射剤を含ませることも好ましい。その際、前記紫外線吸収剤において、水への溶解度が0.04mg/L以下であることが好ましい。水への溶解度が0.04mg/Lよりも大きいとキャリア剤を用いて染色する際に紫外線吸収剤が溶出してしまい、染色後の耐光性が低下するおそれがある。
【0051】
前記の布帛を製造する方法は、特に限定されない。例えば、前記の有機繊維(または前記の有機繊維と他の繊維)を用いて紡績糸を得た後、単糸または双糸にて製織または製編した後、キャリア剤を用いて染色し、前記の方法で熱水洗浄するとよい。
【0052】
その際、布帛の組織としては、平織、綾織、サテン、二重織などの織物が好ましいが、編物や不織布でもよい。布帛の製造方法は特に限定されない。例えば、レピア織機やグリッパー織機など公知の織編機を用いることができる。
【0053】
得られた布帛は、前記の有機繊維を用いているので濃色性と難燃性とに優れる。その際、濃色性としては明度指数L値で80以下(より好ましくは52.5以下、さらに好ましくは10〜52.3)であることが好ましい。また、難燃性としてはLOIが26以上(より好ましくは26〜40)であることが好ましい。また、垂直燃焼試験(JIS L1091 A−4法 3秒接炎)で、残炎時間が25秒以下(より好ましくは1秒以下)であることが好ましい。
【0054】
また、前記の布帛において、目付けが300g/m
2以下(好ましくは50〜250g/m
2)であることが好ましい。かかる目付けが300g/m
2よりも大きいと布帛の軽量性が損なわれるおそれがある。
【0055】
次に、本発明の衣料は前記の布帛を用いてなる衣料である。かかる衣料には、防護服、消防服、防火服、救助服、活動服、執務服、モータースポーツ用レーシングスーツ、作業服、手袋、帽子、ベストなどが含まれる。また、前記作業服には、製鉄所や鉄鋼工場で作業する際に着用される作業服、溶接作業用作業服、防爆エリアにおける作業服などが含まれる。また、前記手袋には、精密部品を取り扱う航空機産業、情報機器産業、精密機器産業などで使用される作業手袋などが含まれる。
【0056】
また、前記の布帛は、カーテン、カーシート、かばんなどの繊維製品に用いてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明する。本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。また、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)布帛の難燃性(垂直燃焼試験)
JIS L1091 A−4法(3秒接炎)に基づき、残炎時間(秒)を評価した。
(2)残存溶媒量
繊維を約8.0g採取し、105℃で120分間乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M1)を秤量した。続いて、この繊維について、メタノール中で1.5時間、ソックスレー抽出器を用いて還流抽出を行い、繊維中に含まれるアミド系溶媒の抽出を行った。抽出を終えた繊維を取り出して、150℃で60分間真空乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M2)を秤量した。繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)は、得られるM1およびM2を用いて、下記式により算出した。
残存溶媒量(%)=[(M1−M2)/M1]×100
(3)結晶化度
X線回折測定装置(リガク社製 RINT TTRIII)を用い、原繊維を約1mm径の繊維束に引きそろえて繊維試料台に装着して回折プロファイルを測定した。測定条件は、Cu−Kα線源(50kV、300mA)、走査角度範囲10〜35°、連続測定0.1°幅計測、1°/分走査でおこなった。実測した回折プロファイルから空気散乱、非干渉性散乱を直線近似で補正して全散乱プロファイルを得た。次に、全散乱プロファイルから非晶質散乱プロファイルを差し引いて結晶散乱プロファイルを得た。結晶化度は、結晶散乱プロファイルの面積強度(結晶散乱強度)と全散乱プロファイルの面積強度(全散乱強度)から、次式により求めた。
結晶化度(%)=[結晶散乱強度/全散乱強度]×100
(4)残存キャリア剤量
測定法:繊維試料からなるGC/MSサンプルをサンプルチューブに詰めATDで測定した。定性分析でキャリア剤を確認した後、以下の条件で定量分析した。
検量線 タ゛ワノールPPH 10.180mg/ml(n-ヘキサン) 0.50・0.75・1.00μl
Column:DB-5ms 0.25mm×28m
Carrier:He
Inject:ATD 350℃×20min(試料加熱) 300℃×10min(追い出し)
ColdTrap:10℃
インターフェース・ハ゛ルフ゛・トランスファー:250℃ Mass Range 94 108 152
Detecter:GCMS-QP2010
イオン源:200℃
電圧:1.35KV(-0.48KV)
Oven:110℃×2min 110〜190℃(10℃/min)
カ゛ス流量1次=10:90 2次=1:4 2.0%
(5)濃色性(L値)
マクベス分光光度計Color−Eye3100にて測色した。
(6)目付け
JIS L1096により目付け(g/m
2)を測定した。
【0058】
[実施例1]
以下の方法でメタ型全芳香族アラミド繊維を作製した。
【0059】
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した、固有粘度(I.V.)が1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末20.0質量部を、−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)80.0質量部中に懸濁させ、スラリー状にした。引き続き、懸濁液を60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。該ポリマー溶液に、ポリマー対比3.0質量%の2−[2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール粉末(水への溶解度:0.01mg/L)からなる紫外線吸収剤を混合溶解させ、減圧脱法して紡糸液(紡糸ドープ)とした。
[紡糸・凝固工程]
上記紡糸ドープを、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/NMP=45/55(質量部)である。凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
[可塑延伸浴延伸工程]
引き続き、温度40℃の水/NMP=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸した。
[洗浄工程]
延伸後、20℃の水/NMP=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
[乾熱処理工程]
洗浄後の繊維について、表面温度280℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、メタ型全芳香族アラミド繊維を得た。
[カット工程]
該メタ型全芳香族アラミド繊維を用いて、捲縮加工、カットを行い、長さ51mmのステープルファイバー(原綿)を得た。
[原綿の物性]
得られたメタ型全芳香族アラミド繊維の物性は、単繊維繊度1.7dtex、残存溶媒量0.08質量%、結晶化度は19%であった。
【0060】
一方、他の繊維原綿として、パラ型アラミド繊維;テイジンアラミド社製「トワロン(登録商標)」と導電糸(ナイロン):ソルシア社製「NO SHOCK(登録商標)」(導電性カーボン微粒子を練り込みナイロン導電糸)を用意した。
【0061】
次いで、メタ型全芳香族アラミド繊維(MA)(長さ51mm)、パラ型全芳香族ポリアミド(PA)(長さ50mm)、ナイロン導電糸(AS)(長さ51mm)の各ステープルファイバーを、MA/PA/AS=93/5/2の比率で混紡した紡績糸40番手/双糸とし、織密度 経65本/25.4mm、緯55本/25.4mmで製織し、目付け170g/m
2の平組織織物を得た。
【0062】
次いで、下記の染色処方および熱水洗浄処方で布帛を処理した。
(染色処方)
まず、以下の処方で染色した。
・カチオン染料:日本化薬社製、商品名:Kayacryl Red GL-ED 6.0%owf
・キャリア剤:プロピレングリコールフェニルエーテル(ダウケミカル製ダワノールPPH)40g/L
なお「40g/L」とは「水1リットルに対して40グラム含まれる。」という意味である。
・酢酸0.3cc/L
・分散剤0.5cc/L
・硝酸ナトリウム25g/L
・浴比;1:20
・温度×時間;135℃×60分間
次いで、得られた着色した布帛を下記の還元浴中で洗浄した。
・浴比;1:20
・温度×時間;90℃×20分間
・還元浴;ハイドロサルファイト 1g/L、ソーダ灰1g/L
(熱水洗浄処方)
次いで、該布帛を温度130℃の熱水で20分間、熱水洗浄した。次いで、該布帛に温度180℃、2分間の乾熱セットを施した。
【0063】
得られた布帛の評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
上記熱水洗浄処方の130℃×20分 1回を130℃×20分を2回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
上記熱水洗浄処方の130℃×20分 1回を120℃×20分を2回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
上記染色処方のダワノールPPH40g/Lをベンジルアルコール60g/Lに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例5]
上記染色処方のダワノールPPH40g/Lをベンジルアルコール60g/Lに変更し、上記熱水洗浄処方の130℃×20分を120℃×20分を2回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
上記染色処方のダワノールPPH40g/Lをベンジルアルコール60g/Lに変更し、上記熱水洗浄処方の130℃×20分を120℃×20分を2回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例7]
上記染色処方のダワノールPPH40g/Lをベンジルアルコール60g/Lに変更し、上記熱水洗浄処方の130℃×20分を120℃×20分を2回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0070】
[比較例1]
上記熱水洗浄処方の130℃×20分を90℃×20分を1回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例8]
上記熱水洗浄処方の130℃×20分を90℃×20分を5回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例9]
上記熱水洗浄処方の130℃×20分を90℃×20分を10回に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例10]
上記染色処方のダワノールPPHを30g/Lに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例11]
上記染色処方のダワノールPPHを20g/Lに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例12]
上記染色処方のダワノールPPHを10g/Lに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】