【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する高圧ポンプにより解決される。
【0011】
本発明の有利な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
内燃機関の燃料噴射システムのための高圧ポンプは、高圧ポンプの構成要素を収容するためのポンプケーシングを有している。ポンプケーシングは、シリンダ領域と、下側のケーシング領域とから成っている。さらに、高圧ポンプは、燃料に圧力を加えるためのプランジャを有している。プランジャは、特にシリンダ領域においてポンプケーシングに設けられたプランジャガイド内でガイドされている。さらに高圧ポンプは、カムシャフトに設けられたカムからプランジャへと並進運動を伝達するための、タペットスカートおよびローラを有するローラタペットを有している。この場合、ローラタペットは、特に下側のケーシング領域においてポンプケーシングに設けられたタペットガイド孔内でガイドされる。タペットスカートは、ローラとは反対に向けられた外側領域を有している。外側領域は、対称平面に関して対称的に形成されている。タペットスカートは、対称平面に関して非対称に分配されて配置された全体マスを有している。
【0013】
ローラタペットを有利に潤滑するために、ローラタペットガイド孔内には、約0.06mm〜0.1mmの遊びが設けられている。
【0014】
従来の装置とは異なり、ローラタペットのマス重心が、ローラタペットの、カムシャフト軸線に対して直交する対称平面上にできるだけ位置するように留意するのではなく、マスは、対称軸線に関して意図的に非対称に分配されて形成される。これにより、傾動モーメントに抗して作用するトルクM
Masseが生じる。したがって、予め規定された非対称性を有するマスを意図的に設けることによって、タペットガイド孔内でのローラタペットの傾動に、遊びの範囲内で意図的に影響を与えることができる。一方では、傾動モーメントを減じることができるので、タペットガイド孔に作用する横方向の力を比較的均等に伝達することができる。他方では、傾動の時点に予測可能な影響を与えることができる。
【0015】
タペットガイド孔内でのローラタペットの傾動をさらに小さく維持するために、ローラタペットの長さLの、ローラタペット外径Dに対する比が、L/D>1であるとさらに有利である。さらに、ローラタペット軸線が、相変わらずカムシャフト軸線に対して直交していると有利である。
【0016】
原理的には回動防止部を省略し得るが、特にローラタペットが回転対称に形成されている場合には、横方向の力の作用によって、タペットガイド孔内でのローラタペットの傾動の他に、回転も生じることがある。したがって、たとえば突出部により形成される回動防止部が付加的に設けられていると有利である。この場合、突出部は、タペットガイド孔またはタペットスカートの外側領域に配置されていて、タペットスカートもしくはタペットガイド孔に設けられた切欠きに係合している。
【0017】
タペットスカートは、有利には回転対称に形成されていてよい。つまり有利には、タペットスカートは、このタペットスカートの長手方向の延在方向に対して直交する横断面で円形に形成されていてよい。この場合、対称平面は、円形に形成されたタペットスカートの円中心点を通る円半径上に延びている。
【0018】
代替的に、タペットスカートは、このタペットスカートの長手方向の延在方向に対して直交する横断面で直方体状に、または矩形に形成されていてよい。この場合、対称平面は、直方体もしくは矩形の面の面二等分線上に延びている。この場合、相応してタペットスカートを通る2つの対称平面がある。
【0019】
有利には、タペットスカートが、プランジャに接触するための横方向部材と、ローラを収容するための周壁とを有している。タペットスカートの全体マスは、対称平面に関して非対称に分配されて、横方向部材および/または周壁に配置されている。
【0020】
つまり、全体マスは、有利には横方向部材のマスと周壁のマスとの組み合わせによって形成される。タペットスカートの対称平面に関して全体マスが非対称に分配されている場合、有利には横方向部材も周壁も、非対称なマス分配を有して形成されていてよい。これにより、有利にはタペットスカートの製造時に、タペットスカートの不均等なマス分配を可能にする複数の自由度を提供することができる。
【0021】
有利には、タペットスカートの全体マスが、対称平面に関して対称的に形成されたタペットスカートのベースマスと、タペットスカートの、ローラに向けられた内側領域に、対称平面に関して非対称に取り付けられているアンバランスマスとの総和によって形成されている。
【0022】
通常のように形成された、その幾何学形状およびマス重心に関して対称的なタペットスカートに、アンバランスマスの形態の付加的なマスを配置し、しかも有利には、偏心して、つまりタペットスカートの対称平面に関して非対称に配置することにより、タペットスカートを特に簡単に形成することができる。これにより、有利にはタペットスカートのマスの不均等な重量を達成することができる。
【0023】
この場合に、アンバランスマスが、横方向部材と周壁との接触領域に配置されると特に有利である。なぜならば、この接触領域には、タペットスカートの幾何学形状に基づいて、有利にはアンバランスマスを取り付けるための最も大きなスペースが提供されているからである。
【0024】
特に有利な態様では、アンバランスマスは、ローラに対して非接触にタペットスカート内に配置されている。これにより、有利には、アンバランスマスがローラの可動性を阻害するのを阻止することができる。
【0025】
タペットスカートの周壁は、タペットガイド孔に対して平行方向で、横方向部材との接触領域を起点として、該接触領域とは反対の側に位置する開放した端部にまで、所定の長さを有している。アンバランスマスが、接触領域を起点として、有利には周壁の長さの半分にわたって延びていると特に有利である。さらに有利には、アンバランスマスは、長さの3分の1にわたって、または特に長さの4分の1にわたって延びている。これによって、有利にはローラとの邪魔になる接触を回避することができる。
【0026】
非対称に分配された全体マスを有しないローラタペットでは、タペットスカートの開放した端部の領域で、プランジャの近傍のローラタペットの領域、つまり横方向部材と周壁との接触領域と比べて、タペットガイド孔に明らかに大きな力が作用する。この力に抗するためには、開放した端部よりも接触領域の近傍にアンバランスマスが配置されていると有利である。これによって、力分配が改善され、タペットガイド孔におけるローラタペットの傾動に抗して作用する。
【0027】
有利には、アンバランスマスが、タペットガイド孔に対して平行な縦断面で、三角形に形成されている。この場合に、第1の三角形の辺が横方向部材の部分領域により形成されており、第2の三角形の辺が周壁の部分領域により形成されていると有利である。アンバランスマスの三角形の構成は、簡単に製造できるので製造において有利である。この場合、三角形は、辺領域(Seitenbereich)を、横方向部材もしくは周壁のような、タペットスカートの既に存在している構成要素と分け合っている。
【0028】
しかし、アンバランスマスの三角形の構成が、この三角形の構成のためたとえば過度に強いトルクM
Masseが形成されることによって不都合となり得る場合には、横方向部材または周壁に、または横方向部材と周壁とに、単に突起が設けられていると有利であり得る。このために、たとえばピンを横方向部材もしくは周壁に配置することができる。
【0029】
有利には、アンバランスマスは、ベースマスの10%〜100%、特にベースマスの20%〜50%である。
【0030】
たとえば、タペットスカートのベースマスが約100gである場合、アンバランスマスが約20g〜50gのマスを有していると特に有利である。
【0031】
したがって、アンバランスマスは、対称平面に関して対称的に形成されたタペットスカートのベースマスと同じマスを有していてもよく、この場合有利には、開放した端部に作用する力と接触領域で作用する力との力の比が強く変化する。しかし、アンバランスマスが、ベースマスの20%〜50%の範囲であると特に有利であることが判った。なぜならば、これによってトルクM
Masseが、特に有利にはタペットガイド孔内でのローラタペットの本来のトルクに抗して作用するからである。
【0032】
有利には、アンバランスマスの重心が、タペットスカートの対称平面から約10mmだけ間隔を置いているように、アンバランスマスがタペットスカート内に配置される。
【0033】
アンバランスマスに対して付加的または代替的に、周壁が、対称平面に関して非対称に配置された少なくとも1つの切欠きを有していてもよい。この切欠きは、タペットスカートの全体マスを対称平面に関して非対称に配置する別の可能性であり、特に簡単に製造することができる。
【0034】
有利には、切欠きは、周壁の開放した端部を起点として、周壁の長さの半分にわたって、有利には長さの3分の1にわたって、特に長さの4分の1にわたって延びている。これは、開放した端部とは反対の側に位置する、横方向部材と周壁との接触領域におけるアンバランスマスの有利な配置と同じ有利な効果を有している。
【0035】
アンバランスマスもしくは切欠きに対して代替的または付加的に、周壁が、中空室を備えて形成されてもよい。この場合、中空室は、有利には周壁の、開放した端部に隣接した3分の1に配置されている。
【0036】
付加的または代替的に、ローラタペットと、特にタペットスカートとを、互いに異なる少なくとも2種の材料から製造することが可能である。これらの材料は、互いに異なる密度を有している。これらの材料は、有利には、非対称に分配されて、横方向部材および/または周壁に配置されていてよい。
【0037】
本発明の有利な態様を以下に添付の図面に基づき詳しく説明する。