【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薬物送達デバイスは、ある用量の薬剤を設定および投薬するように適合さ
れ企図される。薬物送達デバイスは、投薬する薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジを収容するハウジングを備える。デバイスは、所定の用量の薬剤をカートリッジから排出するように、カートリッジと動作可能に係合するようになる電動の駆動機構をさらに備える。好ましくは、カートリッジは、その内部に摺動可能に配設され、カートリッジ本体の近位のシールとして働くピストンを備える。その場合、通常はピストン・ロッドを備える駆動機構は、カートリッジ内部の流体の圧力を高め、必要な用量の薬剤を、注射針などの穿孔要素が貫入する遠位に配置されたセプタムを介して放出するために、ピストンに遠位を向いた圧力を及ぼすように適合される。
【0008】
さらに、薬物送達デバイスは、薬剤の用量を設定および/または投薬するようにハウジングに対して変位可能に配置された、少なくとも1つの用量要素も備える。一実施形態によれば、用量要素のハウジングに対する可動性は、完全に機械的な薬物送達デバイスの操作性または機能性に似る、かつ/またはそれを模倣する役目を果たすことが可能である。少なくとも1つの用量要素はアクチュエータとして働くこともできるが、実際には、電気的に実施される駆動機構から機械的に切り離される。こうして、用量要素が、ハウジングに対して変位可能に、したがって回転可能にかつ/または並進可能に支持される、電気的に実施されるもしくは電気機械的な薬物送達を提供することができる。
【0009】
用量要素のハウジングに対する回転および/または並進または長手方向の変位は、機械的に実施されるもしくは手で駆動される薬物送達デバイスの操作性を模倣する、かつ/またはそれに似せる目的で実施される。一般的に、用量要素は、患者および使用者の順応性を高める構成要素としての役目を果たすことができる。
【0010】
用量設定は、用量要素の回転および/または並進または長手方向の変位によって行われる。用量要素は、電気的に実施される駆動機構から機械的に切り離される。用量要素の変位を駆動機構に伝えるように構成された、機械的な連結または結合は存在しない。
【0011】
用量投薬は、実際には、完全に駆動機構の電気機械的な実施によって行われる。したがって、用量投薬または薬剤注射の手順は、使用者しか起動させることができないようにする。薬剤をカートリッジから放出するプロセスは、電気機械的に実施され、所定の段取りをたどることができる。たとえばカートリッジに加えられるそれぞれの力は、電気的な駆動装置によって提供される。
【0012】
好ましい実施形態によれば、用量要素は、ハウジングに対して並進可能にかつ/または回転可能に取り付けられる。薬物送達デバイスが細長い形状のペン型注射器として実装される場合、用量要素は、患者の治療範囲から離れる方向を向いたデバイスの近位端の近くに配置することができる。用量設定手順の過程において、用量要素は、ハウジングに対して近位方向に並進可能にかつ/または回転可能に変位させ、それによって、ハウジングの近位端から突出し離れるようにすることができる。
【0013】
他の好ましい態様によれば、用量要素のハウジングに対する位置および/または向きは、デバイスによって注入される用量の大きさを示す。好ましくは、用量要素は目盛を備え、目盛は、用量要素の特定の位置または向きに応じて、その後の投薬または注射手順において投薬される薬剤のユニット数を示す。
【0014】
他の好ましい態様において、用量要素は、駆動機構の用量投薬動作を開始および/または制御するように動作することもできる。しかしながら、駆動機構は電気的に駆動されるため、用量要素の作動は、少なくとも1つのセンサ要素によって監視される。前記センサから得ることができる電気信号が駆動機構に提供され、駆動機構では、それぞれの投薬手順を実現するために、センサ信号を適切に処理することができる。
【0015】
それに応じて、また他の好ましい実施形態に従って、デバイスは、用量要素のハウジングに対する位置および/または向きを検知するために、少なくとも1つの位置センサおよび/または少なくとも1つの回転センサを備える。前記位置センサおよび/または回転センサはさらに、用量要素の移動速度を監視および定量化するように適合させることができる。用量要素の位置および/もしくは向きを決定または検知することによって、駆動機構は、その後の用量投薬手順において注入される用量の大きさを決定または計算することできる。
【0016】
位置決めセンサおよび/または回転センサは、位置または角度を、たとえばそれまでの位置に対して相対的に、またはたとえばハウジングに対して絶対的に符号化するように、光学的に、磁気的にかつ/または電気的に実施することができる。(1つまたはそれ以上の)センサ要素は、ホール素子または類似の磁気抵抗型の構成要素を含むことができ、一方、用量要素は、その自由度に従って磁気的に符号化される。
【0017】
他の好ましい実施形態において、薬物送達デバイスは、用量注射の間、用量要素に作用する力を決定するために、少なくとも1つの力センサまたは圧力センサをさらに備える。こうして、使用者によって提供および供給された遠位を向いた力を検知し、場合により記録することが可能になり、それに応じて用量投薬手順を実行することができる。したがって、加えられた力または圧力の大きさによって、電気機械的に実施される用量投薬の速度を決定することができる。たとえば、加えられた力が閾値より高い場合、薬剤は所定の割合、たとえば8ユニット/秒で送達される。
【0018】
さらなる好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、電動の駆動機構の用量投薬動作の間、用量要素を初期の位置または初期の向きまで変位および/または回転させるために、少なくとも1つのアクチュエータも備える。したがって、アクチュエータは、電気的に実施される用量投薬動作について、使用者に機械的なフィードバックを提供することができる。アクチュエータはさらに、用量要素の瞬時の位置または移動が、駆動機構によって行われる実際の用量投薬手順を反映する形で、電気的に実施される駆動機構によって制御することができる。
【0019】
通常は電気的な駆動装置を備えるアクチュエータは、完全に機械的に実施される薬物送達デバイスの操作性の少なくとも1つまたはそれ以上の態様に似せるために、またはそれを模倣するために、使用者に対して反力を発生させ提供する。好ましくは、用量要素の初期の位置または構成に向かう変位および/または回転は、駆動機構の実際の投薬動作に直接対応する。こうして、使用者または患者は、電気的に駆動される投薬手順の進行に関する直接的かつ直感的なフィードバックを受ける。
【0020】
他の好ましい態様によれば、電気的に実施される駆動機構の投薬動作はさらに、用量要素に対して、たとえば遠位方向に作用する力の大きさによって制御可能にすることができる。したがって、駆動機構は、用量投薬手順の間、所定のレベルより高い遠位を向いた力または圧力が、用量要素に常に存在しなければならない形で実施することができる。力が前記所定のレベルより低くなるとすぐに、投薬手順を中断し停止することができる。
【0021】
しかしながら、用量要素と駆動機構を機械的に切り離すことによって、用量要素に加える必要がある投薬力を効果的に低減することができる。その結果、用量投薬手順を開始または実行するための遠位を向いた力の閾値を、手で動作させる薬物送達デバイスおよび完全に機械的に動作させる薬物送達デバイスに比べて低くすることができる。位置センサ、回転センサおよび力センサの電気的に実施される駆動機構との相互作用によって、用量要素に存在する機械的な力の増幅を可能にする、ある種のサーボ機構を提供することができ
る。特定タイプのカートリッジでは元来、比較的大きい投薬力を必要とすることがあるが、このデバイスでは、最終使用者によって提供される作動力を比較的低いレベルに保つことが可能である。
【0022】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスには、少なくとも部分的に薬剤が充填されたカートリッジが容易に備え付けられる。カートリッジは、カートリッジ・ホルダとして働く薬物送達デバイスのハウジングの遠位部分に配置されることが好ましい。薬物送達デバイスは、使い捨てのデバイスまたは再使用可能なデバイスとして設計することができる。使い捨てのデバイスとして設計される場合、カートリッジの内容物を使い果たすと、薬物送達デバイス全体が廃棄される。そうではなく、再使用可能なデバイスとして設計される場合、空のカートリッジを充填済みのものに交換することができる。
【0023】
さらに他の態様によれば、本発明はまた、薬物送達デバイスの駆動機構を動作させる方法に関する。前記方法は、用量要素が薬物送達デバイスのハウジングに対して特定の構成に位置することで始まる。用量要素は、駆動機構から機械的に切り離されるが、所定の用量の薬剤を設定および/もしくは投薬する制御手段に似ている、ならびに/またはそうした制御手段を提供する。第1の工程では、用量要素のハウジングに対する位置および/または向きを検知し、前記位置または向きに基づいて投薬する用量の大きさを決定する。
【0024】
決定または計算された用量の大きさに応じて、電気的に駆動されるまたは自動化された用量投薬手順が実行および/または制御される。前記投薬は、用量要素を押し下げることによって起動することができる。用量投薬の間、用量要素を、その初期の位置に向かって、および/もしくはその初期の向きに向かって、変位ならびに/または回転させ、用量投薬動作の終了時にそれに達するようにする。用量要素の移動および/または回転は、薬物送達デバイスの電気的に実施される駆動機構または制御機構によって制御される。
【0025】
さらに、模倣する機械的なデバイスのタイプに応じて、用量投薬動作の完了後の用量要素の位置または向きを、初期の位置または構成から変えることもでき、用量要素は用量設定動作の前に備える。
【0026】
この文脈において、方法が薬物送達デバイスの使用に特に適合されることにさらに留意されたい。したがってそれに応じて、薬物送達デバイスの点から記載され主張される特徴および実施形態はすべて、前記方法にもあてはまる。
【0027】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GL
P−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0028】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0029】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタ−デカノイル)ヒトインスリンである。
【0030】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0031】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0032】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジ
ン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0033】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0034】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0035】
抗体は、基本的な構造を共有する免疫グロブリンとしても知られる、球状の血漿タンパク質(〜150kDa)である。それらは、アミノ酸残基に加えられた糖鎖を有するため、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は、(ただ1つのIg単位を含む)免疫グロブリン(Ig)・モノマーであり;分泌型抗体は、IgAのような2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳類のIgMのような5つのIg単位を有する五量体もあり得る。
【0036】
Igモノマーは、4つのポリペプチド鎖;システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖からなる「Y」字形の分子である。各重鎖は約440のアミノ酸長であり;各軽鎖は約220のアミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、それらの折り畳みを安定化する鎖内のジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインからなる。これらのドメインは、約70〜110のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に従って様々な種類(たとえば、可変部またはV、および定常部またはC)に分類される。それらは、2つのβシートが、保護されたシステインと他の帯電したアミノ酸との間の相互作用によって互いに保持される「サンドイッチ」形を生成する、特徴的な免疫グロブリン・フォールドを有する。
【0037】
哺乳類のIg重鎖には、α、δ、ε、γおよびμで示される5つのタイプが存在する。存在する重鎖のタイプが、抗体のイソタイプを決め;これらの鎖は、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体の中に見出される。
【0038】
異なる重鎖は、サイズおよび組成が異なり;αおよびγは約450のアミノ酸を、δは約500のアミノ酸を含み、一方、μおよびεは約550のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)および可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じイソタイプのすべての抗体では本質的に同一であるが、異なるイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つのタンデム型のIgドメインおよび可撓性を加えるヒンジ領域からなる定常領域を有し;重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインからなる定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって生成された抗体では異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンによって生成されたすべての抗体では同じである。各重鎖の可変領域は、約110のアミノ酸長であり、単一のIgドメインからなる。
【0039】
哺乳類では、λおよびκで示される2つのタイプの免疫グロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は2つの連続するドメイン:1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217のアミノ酸である。各抗体は2つの軽鎖を含むが、それらは常に同一であり;哺乳類では、1つの抗体について軽鎖κまたはλのうちの1つのタイプのみが存在する。
【0040】
すべての抗体の一般的な構造はきわめて類似するが、所与の抗体の特有の特性は、これまでに詳述した可変(V)領域によって決まる。より具体的には、それぞれ軽鎖(VL)に3つおよび重鎖(VH)に3つの可変ループが、抗原に対する結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインとVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するため、最終的な抗原特異性を決めるのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0041】
「抗体フラグメント」は、これまでに定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが得られる完全な抗体と本質的に同一の機能および特異性を示す。パパインによる限定タンパク質分解は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。それぞれが1つの完全なL鎖および約半分のH鎖を含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。第3のフラグメントは、サイズは同等であるが、鎖間のジスルフィド結合を有する両方の重鎖のカルボキシル末端側の半分を含む、結晶化可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、補体結合およびFcR−結合部位を含む。限定的なペプシンの消化作用によって、両方のFab片およびH−H鎖間のジスルフィド結合を含むヒンジ領域を包含する単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して2価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖お
よび軽鎖の可変領域を互いに縮合させて、1本鎖の可変フラグメント(scFv)を形成することができる。
【0042】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0043】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0044】
さらに、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えることが可能であることが、関連分野の技術者には明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲において使用される参照符号はいずれも、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではないことに留意されたい。
【0045】
以下では、図面を参照することによって、本発明の好ましい実施形態について説明する。