特許第6355774号(P6355774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6355774電気機械的な駆動機構を有する薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355774
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】電気機械的な駆動機構を有する薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20180702BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61M5/315 550P
   A61M5/24 502
   A61M5/315 550E
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-22712(P2017-22712)
(22)【出願日】2017年2月10日
(62)【分割の表示】特願2014-519548(P2014-519548)の分割
【原出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2017-104589(P2017-104589A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】11174125.2
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/570,307
(32)【優先日】2011年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ジョン・ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・アンドリュー・ホールト
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ルイス・シャープ
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−531143(JP,A)
【文献】 特表2003−511157(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0040716(US,A1)
【文献】 特表2011−507668(JP,A)
【文献】 特表2004−535590(JP,A)
【文献】 特開2002−272839(JP,A)
【文献】 特開2011−050791(JP,A)
【文献】 特表2007−506470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が充填されたカートリッジ(28)を収容するように構成されたハウジング(18)と、
所定の用量の薬剤をカートリッジ(28)から排出するように構成され、カートリッジ(28)と動作可能に係合する電動の駆動機構(32、34)と、
薬剤の用量を設定または投薬するように構成され、ハウジング(18)に対して変位可能に配置された少なくとも1つの用量要素(15、24)と、
用量注射中、用量要素(15、24)に作用する力を決定するための少なくとも1つの力センサ(42)と
を備え、用量要素(15、24)および駆動機構(32、34)は、互いに機械的に切り離される、薬剤の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイス。
【請求項2】
用量要素(15、24)は、ハウジング(18)に対して並進可能にかつ/または回転可能に取り付けられる請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
用量要素(15、24)のハウジング(18)に対する位置および/または向きは、デバイスによって注入される用量の大きさを示す請求項1又は2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
用量要素(15、24)は、駆動機構(32、34)の用量投薬動作を開始および/または制御するように動作可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
用量要素(15、24)のハウジング(18)に対する位置および/または向きを検知するために、少なくとも1つの位置センサ(38)および少なくとも1つの回転センサ(38)をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
電動の駆動機構(32、34)の用量投薬動作中、用量要素(15、24)を初期の位置または初期の向きまで変位および/または回転させるために、アクチュエータ(40)
をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
アクチュエータ(40)は、用量要素(15、24)の瞬時の位置または移動が、駆動機構(32、34)によって行われる実際の用量投薬手順を反映するように、電気的に実施される駆動機構(32、34)によって制御される請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
用量要素(15、24)の変位および/または回転は、駆動機構(32、34)の投薬動作に直接対応する請求項6または7に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
駆動機構(32、34)の投薬動作は、用量要素(15、24)に作用する力(46)の大きさによって制御可能である請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
少なくとも部分的に薬剤が充填され、ハウジング(18)の中に配置されるカートリッジ(28)をさらに備える請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
用量要素(15、24)に作用する、加えられた力の大きさによって、電気機械的に実施される用量投薬の速度が決定される請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
用量投薬の間、所定のレベルより高い遠位を向いた力が、用量要素(15、24)に要求され、力が前記所定のレベルより低くなるとすぐに、用量投薬が中断される請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
アクチュエータは、手動の薬物送達デバイスの操作性に似せるために、またはそれを模倣するために、使用者に対して反力を発生させ提供するように構成される請求項6〜12のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械的な駆動機構を有する、所定の用量の薬剤をカートリッジから投薬するための薬物送達デバイスに関する。電気機械的な薬物送達デバイスは特に、完全に機械的に動作させるもしくは手で動作させる薬物送達デバイスの機械的な特性を模倣するか、またはそれに似るように適合される。
【背景技術】
【0002】
使用者が動作させる薬物送達デバイス自体は、当技術分野において知られている。それらは通常、正式な医療の訓練を受けていない人、すなわち患者が、正確な所定の用量の、ヘパリンまたはインスリンなどの薬剤を投与する必要がある状況で適用することができる。特に、そうしたデバイスには、薬剤を短期または長期にわたって規則的にまたは不規則に投与する用途がある。
【0003】
これらの要求に対応するために、そうしたデバイスはいくつかの要件を満たさなければならない。第一に、デバイスは構造的に頑丈であり、さらに使用者が、その動作および必要な用量または薬剤の送達を処理ならびに理解する点において、使用が容易でなければならない。用量の設定は、簡単かつ明瞭でなければならない。デバイスが再使用可能ではなく使い捨てである場合、デバイスは、製造に費用がかからず廃棄しやすいものにすべきである。
【0004】
手で動作させるまたは純粋に機械的に動作させる薬物送達デバイスの他に、用量の選択および適切な用量の薬剤の投与が、電子回路、たとえばコントローラ、マイクロプロセッサなどによって制御される電気機械的な薬物送達デバイスも存在する。そうした電子的または電気機械的なデバイスは、高い投与の精度を提供し、またデバイスによって投薬された用量の長期の監視を支援することができる。したがって、投与および投薬の方式をデバイスに記憶させ、用量投薬の履歴を読み出せるようにすることも可能である。
【0005】
しかしながら、電子的または電気機械的なデバイスの場合、用量の設定および投薬は、完全に機械的に実施されるデバイスに比べて直感的でないことがある。特に、機械的に実施されるデバイスの場合、使用者はある一定の注入の力を加えなければならず、それによって力のフィードバックを得る。電気機械的なデバイスを導入し、完全に機械的なデバイスを替えることによって、患者または使用者は、不慣れなまたは不便な操作方式に直面する可能性がある。したがって、誤用および最適以下の治療の危険性がある程度生じる恐れがある。また、使用者がそうした電気機械的なデバイスを受け入れる可能性は、かなり低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、特に使用者が機械的に実施されるデバイスに慣れている場合に、より高いレベルで使用者に受け入れられる電気機械的な薬物送達デバイスを提供することである。したがって、本発明は、電気機械的に実施されるデバイスに対する使用者の順応性を高めることを目的とする。本発明により、機械的な薬物送達デバイスの機能性に慣れた使用者が、電気的に駆動されるデバイスにより簡単に慣れるようになるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薬物送達デバイスは、ある用量の薬剤を設定および投薬するように適合さ
れ企図される。薬物送達デバイスは、投薬する薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジを収容するハウジングを備える。デバイスは、所定の用量の薬剤をカートリッジから排出するように、カートリッジと動作可能に係合するようになる電動の駆動機構をさらに備える。好ましくは、カートリッジは、その内部に摺動可能に配設され、カートリッジ本体の近位のシールとして働くピストンを備える。その場合、通常はピストン・ロッドを備える駆動機構は、カートリッジ内部の流体の圧力を高め、必要な用量の薬剤を、注射針などの穿孔要素が貫入する遠位に配置されたセプタムを介して放出するために、ピストンに遠位を向いた圧力を及ぼすように適合される。
【0008】
さらに、薬物送達デバイスは、薬剤の用量を設定および/または投薬するようにハウジングに対して変位可能に配置された、少なくとも1つの用量要素も備える。一実施形態によれば、用量要素のハウジングに対する可動性は、完全に機械的な薬物送達デバイスの操作性または機能性に似る、かつ/またはそれを模倣する役目を果たすことが可能である。少なくとも1つの用量要素はアクチュエータとして働くこともできるが、実際には、電気的に実施される駆動機構から機械的に切り離される。こうして、用量要素が、ハウジングに対して変位可能に、したがって回転可能にかつ/または並進可能に支持される、電気的に実施されるもしくは電気機械的な薬物送達を提供することができる。
【0009】
用量要素のハウジングに対する回転および/または並進または長手方向の変位は、機械的に実施されるもしくは手で駆動される薬物送達デバイスの操作性を模倣する、かつ/またはそれに似せる目的で実施される。一般的に、用量要素は、患者および使用者の順応性を高める構成要素としての役目を果たすことができる。
【0010】
用量設定は、用量要素の回転および/または並進または長手方向の変位によって行われる。用量要素は、電気的に実施される駆動機構から機械的に切り離される。用量要素の変位を駆動機構に伝えるように構成された、機械的な連結または結合は存在しない。
【0011】
用量投薬は、実際には、完全に駆動機構の電気機械的な実施によって行われる。したがって、用量投薬または薬剤注射の手順は、使用者しか起動させることができないようにする。薬剤をカートリッジから放出するプロセスは、電気機械的に実施され、所定の段取りをたどることができる。たとえばカートリッジに加えられるそれぞれの力は、電気的な駆動装置によって提供される。
【0012】
好ましい実施形態によれば、用量要素は、ハウジングに対して並進可能にかつ/または回転可能に取り付けられる。薬物送達デバイスが細長い形状のペン型注射器として実装される場合、用量要素は、患者の治療範囲から離れる方向を向いたデバイスの近位端の近くに配置することができる。用量設定手順の過程において、用量要素は、ハウジングに対して近位方向に並進可能にかつ/または回転可能に変位させ、それによって、ハウジングの近位端から突出し離れるようにすることができる。
【0013】
他の好ましい態様によれば、用量要素のハウジングに対する位置および/または向きは、デバイスによって注入される用量の大きさを示す。好ましくは、用量要素は目盛を備え、目盛は、用量要素の特定の位置または向きに応じて、その後の投薬または注射手順において投薬される薬剤のユニット数を示す。
【0014】
他の好ましい態様において、用量要素は、駆動機構の用量投薬動作を開始および/または制御するように動作することもできる。しかしながら、駆動機構は電気的に駆動されるため、用量要素の作動は、少なくとも1つのセンサ要素によって監視される。前記センサから得ることができる電気信号が駆動機構に提供され、駆動機構では、それぞれの投薬手順を実現するために、センサ信号を適切に処理することができる。
【0015】
それに応じて、また他の好ましい実施形態に従って、デバイスは、用量要素のハウジングに対する位置および/または向きを検知するために、少なくとも1つの位置センサおよび/または少なくとも1つの回転センサを備える。前記位置センサおよび/または回転センサはさらに、用量要素の移動速度を監視および定量化するように適合させることができる。用量要素の位置および/もしくは向きを決定または検知することによって、駆動機構は、その後の用量投薬手順において注入される用量の大きさを決定または計算することできる。
【0016】
位置決めセンサおよび/または回転センサは、位置または角度を、たとえばそれまでの位置に対して相対的に、またはたとえばハウジングに対して絶対的に符号化するように、光学的に、磁気的にかつ/または電気的に実施することができる。(1つまたはそれ以上の)センサ要素は、ホール素子または類似の磁気抵抗型の構成要素を含むことができ、一方、用量要素は、その自由度に従って磁気的に符号化される。
【0017】
他の好ましい実施形態において、薬物送達デバイスは、用量注射の間、用量要素に作用する力を決定するために、少なくとも1つの力センサまたは圧力センサをさらに備える。こうして、使用者によって提供および供給された遠位を向いた力を検知し、場合により記録することが可能になり、それに応じて用量投薬手順を実行することができる。したがって、加えられた力または圧力の大きさによって、電気機械的に実施される用量投薬の速度を決定することができる。たとえば、加えられた力が閾値より高い場合、薬剤は所定の割合、たとえば8ユニット/秒で送達される。
【0018】
さらなる好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、電動の駆動機構の用量投薬動作の間、用量要素を初期の位置または初期の向きまで変位および/または回転させるために、少なくとも1つのアクチュエータも備える。したがって、アクチュエータは、電気的に実施される用量投薬動作について、使用者に機械的なフィードバックを提供することができる。アクチュエータはさらに、用量要素の瞬時の位置または移動が、駆動機構によって行われる実際の用量投薬手順を反映する形で、電気的に実施される駆動機構によって制御することができる。
【0019】
通常は電気的な駆動装置を備えるアクチュエータは、完全に機械的に実施される薬物送達デバイスの操作性の少なくとも1つまたはそれ以上の態様に似せるために、またはそれを模倣するために、使用者に対して反力を発生させ提供する。好ましくは、用量要素の初期の位置または構成に向かう変位および/または回転は、駆動機構の実際の投薬動作に直接対応する。こうして、使用者または患者は、電気的に駆動される投薬手順の進行に関する直接的かつ直感的なフィードバックを受ける。
【0020】
他の好ましい態様によれば、電気的に実施される駆動機構の投薬動作はさらに、用量要素に対して、たとえば遠位方向に作用する力の大きさによって制御可能にすることができる。したがって、駆動機構は、用量投薬手順の間、所定のレベルより高い遠位を向いた力または圧力が、用量要素に常に存在しなければならない形で実施することができる。力が前記所定のレベルより低くなるとすぐに、投薬手順を中断し停止することができる。
【0021】
しかしながら、用量要素と駆動機構を機械的に切り離すことによって、用量要素に加える必要がある投薬力を効果的に低減することができる。その結果、用量投薬手順を開始または実行するための遠位を向いた力の閾値を、手で動作させる薬物送達デバイスおよび完全に機械的に動作させる薬物送達デバイスに比べて低くすることができる。位置センサ、回転センサおよび力センサの電気的に実施される駆動機構との相互作用によって、用量要素に存在する機械的な力の増幅を可能にする、ある種のサーボ機構を提供することができ
る。特定タイプのカートリッジでは元来、比較的大きい投薬力を必要とすることがあるが、このデバイスでは、最終使用者によって提供される作動力を比較的低いレベルに保つことが可能である。
【0022】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスには、少なくとも部分的に薬剤が充填されたカートリッジが容易に備え付けられる。カートリッジは、カートリッジ・ホルダとして働く薬物送達デバイスのハウジングの遠位部分に配置されることが好ましい。薬物送達デバイスは、使い捨てのデバイスまたは再使用可能なデバイスとして設計することができる。使い捨てのデバイスとして設計される場合、カートリッジの内容物を使い果たすと、薬物送達デバイス全体が廃棄される。そうではなく、再使用可能なデバイスとして設計される場合、空のカートリッジを充填済みのものに交換することができる。
【0023】
さらに他の態様によれば、本発明はまた、薬物送達デバイスの駆動機構を動作させる方法に関する。前記方法は、用量要素が薬物送達デバイスのハウジングに対して特定の構成に位置することで始まる。用量要素は、駆動機構から機械的に切り離されるが、所定の用量の薬剤を設定および/もしくは投薬する制御手段に似ている、ならびに/またはそうした制御手段を提供する。第1の工程では、用量要素のハウジングに対する位置および/または向きを検知し、前記位置または向きに基づいて投薬する用量の大きさを決定する。
【0024】
決定または計算された用量の大きさに応じて、電気的に駆動されるまたは自動化された用量投薬手順が実行および/または制御される。前記投薬は、用量要素を押し下げることによって起動することができる。用量投薬の間、用量要素を、その初期の位置に向かって、および/もしくはその初期の向きに向かって、変位ならびに/または回転させ、用量投薬動作の終了時にそれに達するようにする。用量要素の移動および/または回転は、薬物送達デバイスの電気的に実施される駆動機構または制御機構によって制御される。
【0025】
さらに、模倣する機械的なデバイスのタイプに応じて、用量投薬動作の完了後の用量要素の位置または向きを、初期の位置または構成から変えることもでき、用量要素は用量設定動作の前に備える。
【0026】
この文脈において、方法が薬物送達デバイスの使用に特に適合されることにさらに留意されたい。したがってそれに応じて、薬物送達デバイスの点から記載され主張される特徴および実施形態はすべて、前記方法にもあてはまる。
【0027】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GL
P−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0028】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0029】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタ−デカノイル)ヒトインスリンである。
【0030】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0031】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0032】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジ
ン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0033】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0034】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0035】
抗体は、基本的な構造を共有する免疫グロブリンとしても知られる、球状の血漿タンパク質(〜150kDa)である。それらは、アミノ酸残基に加えられた糖鎖を有するため、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は、(ただ1つのIg単位を含む)免疫グロブリン(Ig)・モノマーであり;分泌型抗体は、IgAのような2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳類のIgMのような5つのIg単位を有する五量体もあり得る。
【0036】
Igモノマーは、4つのポリペプチド鎖;システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖からなる「Y」字形の分子である。各重鎖は約440のアミノ酸長であり;各軽鎖は約220のアミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、それらの折り畳みを安定化する鎖内のジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインからなる。これらのドメインは、約70〜110のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に従って様々な種類(たとえば、可変部またはV、および定常部またはC)に分類される。それらは、2つのβシートが、保護されたシステインと他の帯電したアミノ酸との間の相互作用によって互いに保持される「サンドイッチ」形を生成する、特徴的な免疫グロブリン・フォールドを有する。
【0037】
哺乳類のIg重鎖には、α、δ、ε、γおよびμで示される5つのタイプが存在する。存在する重鎖のタイプが、抗体のイソタイプを決め;これらの鎖は、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体の中に見出される。
【0038】
異なる重鎖は、サイズおよび組成が異なり;αおよびγは約450のアミノ酸を、δは約500のアミノ酸を含み、一方、μおよびεは約550のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)および可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じイソタイプのすべての抗体では本質的に同一であるが、異なるイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つのタンデム型のIgドメインおよび可撓性を加えるヒンジ領域からなる定常領域を有し;重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインからなる定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって生成された抗体では異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンによって生成されたすべての抗体では同じである。各重鎖の可変領域は、約110のアミノ酸長であり、単一のIgドメインからなる。
【0039】
哺乳類では、λおよびκで示される2つのタイプの免疫グロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は2つの連続するドメイン:1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217のアミノ酸である。各抗体は2つの軽鎖を含むが、それらは常に同一であり;哺乳類では、1つの抗体について軽鎖κまたはλのうちの1つのタイプのみが存在する。
【0040】
すべての抗体の一般的な構造はきわめて類似するが、所与の抗体の特有の特性は、これまでに詳述した可変(V)領域によって決まる。より具体的には、それぞれ軽鎖(VL)に3つおよび重鎖(VH)に3つの可変ループが、抗原に対する結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインとVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するため、最終的な抗原特異性を決めるのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0041】
「抗体フラグメント」は、これまでに定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが得られる完全な抗体と本質的に同一の機能および特異性を示す。パパインによる限定タンパク質分解は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。それぞれが1つの完全なL鎖および約半分のH鎖を含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。第3のフラグメントは、サイズは同等であるが、鎖間のジスルフィド結合を有する両方の重鎖のカルボキシル末端側の半分を含む、結晶化可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、補体結合およびFcR−結合部位を含む。限定的なペプシンの消化作用によって、両方のFab片およびH−H鎖間のジスルフィド結合を含むヒンジ領域を包含する単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して2価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖お
よび軽鎖の可変領域を互いに縮合させて、1本鎖の可変フラグメント(scFv)を形成することができる。
【0042】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0043】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0044】
さらに、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えることが可能であることが、関連分野の技術者には明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲において使用される参照符号はいずれも、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではないことに留意されたい。
【0045】
以下では、図面を参照することによって、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】初期の構成における薬物送達デバイスの斜視図である。
図2】用量要素が引き出された構成の図1によるデバイスを示す図である。
図3】薬物送達デバイスの手動で相互作用する各構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1および2は、ペン型注射器として設計された薬物送達デバイス10を示す。かなり細長い管形のハウジング18は、2つのハウジング構成要素、すなわち、近位の本体12および遠位に配置されたカートリッジ・ホルダ14を備える。本体12およびカートリッジ・ホルダ14は、手で相互に連結される。
【0048】
カートリッジ・ホルダ14は点検窓16を備え、また通常はガラス体を有し、液体薬剤が充填された管形のカートリッジ28を収容する働きをする。図3に示すカートリッジ28は、通常は穿孔可能なセプタムで密閉されたボトルネック型の遠位部分を有する。カートリッジ28の遠位の出口は、通常はカートリッジ・ホルダ14のねじ付きソケット20の遠位端面の近くに位置する。このソケット20は、注射針を有し、前記ソケット20に螺着するように適合された針ハブ26に対する取り付け部を提供する。
【0049】
たとえば図3に示す二重先端(double−tipped)ニードル・アセンブリ26は、カートリッジ28の遠位のセプタムに貫入し、液体薬剤を生体組織の中に投薬および注入することを可能にする。
【0050】
近位のハウジング構成要素12は、駆動機構を受け、収容するように適合され、それが図3にかなり単純化した形で示してある。駆動機構は、カートリッジ28の近位に配置さ
れたピストン30と動作可能に係合するようになる、少なくとも1つのピストン・ロッド32を備える。ピストン30を遠位方向に、したがって図3の左側に変位させると、カートリッジ28の中に提供された薬剤の投薬が行われる。
【0051】
ピストン30のそうした遠位を向いた動きは、電気機械的な駆動装置34によって駆動される、対応して変位可能なピストン・ロッド32によって引き起こされる。このデバイス10は、電力をピストン・ロッド32の遠位を向いた動きに変える、電気機械的に実施される駆動機構32、34を備える。駆動装置34および/またはここには明示的に示されていないそれぞれの制御要素は、投薬に関連する情報を使用者または医療スタッフに提供する表示要素36と連結されることが好ましい。
【0052】
薬物送達デバイス10は、用量要素15、24をさらに備え、それによって、投薬する用量の大きさを要求に応じて設定および/または変更することができる。用量要素15、24は、用量投薬手順を開始するために、たとえば遠位方向46に押し下げられる用量ボタン15を備える。さらに、用量要素は用量ダイヤル24を備え、それによって、用量要素15、24全体を、図1に示す初期の構成から図2に示す引き出された構成15’、24’に変えることができる。用量要素15、24は、近位方向45における長手方向を向いた滑り移動によって、または螺旋状の動き44によって引き出すことができる。
【0053】
示されていない他の実施形態において、用量要素はハウジングに回転支持される。こうして、用量設定および/または用量投薬は、もっぱら用量ダイヤルのハウジングに対する回転によって制御される。用量要素は軸方向には移動せず、螺旋状の動きを受けない。
【0054】
さらに、示されていないさらなる代替形態において、用量要素は、用量要素24に似た回転可能なノブのみを備えてもよく、その近位の自由端に用量要素15は含まれない。その場合、用量設定の目的で、用量要素を本体12からねじって外す、かつ/または引き出すことができる。用量投薬動作は、様々な方法、たとえば本体12から半径方向外側に延びる、ここには示されていない他のボタンを押すことによって起動することができる。
【0055】
用量ダイヤル24および押しボタン15は、外周上の目盛23を特色とする円筒形のロッド22に支持される。したがって、用量要素15、24を引き出すことによって、ロッド22上に提供された目盛23が見えるようになり、したがって、設定された用量の大きさを示すことができる。この構成では、用量要素15、24のハウジング18および/または本体12に対する軸方向または長手方向の変位が、前記用量の大きさを直接的に示すことが特に有益である。しかしながら、目盛23は、任意選択の機能として提供することができる。一般的に、設定された投与量の大きさを視覚的にどのように示すかについては、多くの異なる方法が存在する。ハウジング12は、たとえばここには明示的に示されていない電子的に実施される表示要素を備えることができる。
【0056】
図3にさらに示すように、用量要素24、15は、駆動装置34およびピストン・ロッド32から機械的に切り離される。長手方向の近位を向いたロッド22を引き出す動き45が、センサ要素38によって検知され測定される。測定された距離に応じて、ロッド22が遠位方向45に引き出されており、注入される用量の大きさが設定される。したがって、用量の大きさを決定するために、センサによって生成された信号が、制御要素または駆動装置34によって処理される。
【0057】
用量ボタン15’を遠位方向に押し下げ、前記ボタン15’にそれぞれの遠位を向いた力46を加えることは、力センサ42によって検知される。所定の閾値より高い力が検知されると、駆動装置34によってそれぞれの用量投薬動作が起動される。さらに、用量投薬手順の間に、ロッド22と機械的に係合されたアクチュエータ要素40が、ロッド22
および用量要素15、24を、たとえば図1に示すそれらの初期位置に戻すことができる。アクチュエータは別個のアクチュエータとして設計され、電気的に実施される用量注射手順の間、もっぱらロッド22を遠位方向に移動させるように適合される。
【0058】
こうして、電気機械的に実施される駆動機構32、34は、従来の手で動作させる薬物送達デバイスの全般的な挙動を再現し模倣する。
【0059】
このデバイス10およびその機能性により、手で動作させる薬物送達デバイスに慣れた使用者も、電気機械的に動作させる薬物送達デバイス10により容易に慣れることができる。さらに、用量ボタン15に加える力46を、従来のまたは手で動作させるデバイスに比べて比較的低いレベルに保つことができる。一般的に、力のレベルは、手で実施される薬物送達デバイスに比べて比較的低いレベルに保つことができる。こうして、電気機械的な駆動機構32、34は、サーボ駆動装置をシミュレートすることができる。
【0060】
また、自動化された注射手順を力センサ32によって制御することができるため、たとえば投薬動作の間に、用量ボタン15に加えられる圧力が所定の閾値より低くなったとき、投薬動作を中断することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 薬物送達デバイス
12 本体
14 カートリッジ・ホルダ
15 用量ボタン
16 点検窓
18 ハウジング
20 ソケット
22 ロッド
23 目盛
24 用量ダイヤル
26 ニードル・アセンブリ
28 カートリッジ
30 ピストン
32 ピストン・ロッド
34 駆動装置
36 表示装置
38 センサ
40 アクチュエータ
42 力センサ
44 回転
45 遠位方向
46 投薬力
図1
図2
図3