(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パワートランジスタを導通状態へ切り替える制御信号を受けると、前記パワートランジスタのゲート電圧を制御する駆動信号を、第1のレベルから第2のレベルへ切り替え、前記駆動信号を、第1の期間経過後に前記第1のレベルへ切り替え、さらに第2の期間経過後に前記第2のレベルへ切り替えるように制御し、前記パワートランジスタを遮断状態へ切り替える制御信号を受けると、前記駆動信号を前記第2のレベルから前記第1のレベルへ切り替え、前記駆動信号を、第3の期間経過後に前記第2のレベルへ切り替え、さらに第4の期間経過後に前記第1のレベルへ切り替えるように制御する駆動制御部と、
前記駆動信号を増幅して出力するゲート駆動部と、
前記第1及び第2の期間が経過したときに、前記パワートランジスタのゲート電圧とゲート電流とを検出し、前記第1及び第2の期間の調整をし、前記第3及び第4の期間が経過したときに、前記パワートランジスタのゲート電圧とゲート電流とを検出し、前記第3及び第4の期間の調整をするキャリブレーション部と、
を備えるゲートドライバ。
前記第1の期間及び前記第2の期間は、前記第1の期間に電源から電流を供給し、前記第2の期間に前記電源からの電流の供給を停止することによって、前記第2の期間経過後に前記パワートランジスタのゲート電圧が所望の電圧レベルに到達するように調整され、
前記第3の期間及び前記第4の期間は、前記第3の期間にグランドへ電流を放出し、前記第4の期間に前記電源へ電流を回生させることによって、前記第4の期間経過後に前記ゲート電圧がグランドレベルに到達するように、調整される請求項1記載のゲートドライバ。
前記キャリブレーション部は、前記第1及び第2の期間が経過したときに、前記パワートランジスタのゲート電圧とゲート電流とを検出し、検出した値を所望の値と比較して前記第1及び第2の期間の調整の要否を判定し、前記第3及び第4の期間が経過したときに、前記パワートランジスタのゲート電圧とゲート電流とを検出し、検出した値を所望の値と比較して前記第3及び第4の期間の調整の要否を判定し、判定結果に応じて、前記第1乃至第4の期間を調整する請求項1記載のゲートドライバ。
前記キャリブレーション部は、前記第1及び第2の期間が経過したときに、前記ゲート電圧が所望の値より小さい場合には、前記第1の期間を広げ、前記ゲート電流が所望の値より小さい場合には、前記第2の期間を縮め、前記ゲート電圧が所望の値より大きい場合には、前記第1の期間を縮め、前記ゲート電流が所望の値より大きい場合には、前記第2の期間を広げるように制御する請求項6記載のゲートドライバ。
前記駆動制御部は、前記第1及び第2の期間、または前記第3及び第4の期間経過後、さらに前記駆動信号を前記第1のレベルと前記第2のレベルとの切り替えるように制御する請求項1記載のゲートドライバ。
前記駆動制御部は、前記駆動信号を前記第1のレベルと前記第2のレベルとの切り替えを繰り返し、前記第1のレベルと前記第2のレベルとの切り替えを前半と後半とで長さを変化させる請求項8記載のゲートドライバ。
前記第1の期間及び前記第2の期間は、前記第1の期間に電源から電流を供給し、前記第2の期間に前記電流の供給を停止することによって、前記第2の期間後に前記パワートランジスタのゲート電圧が所望の電圧レベルより低い任意の範囲に到達するように調整され、
前記第3の期間及び前記第4の期間は、前記第3の期間にグランドへ電流を放出し、前記第4の期間に前記電源への電流の回生させることによって、前記第4の期間後に前記ゲート電圧がグランドレベルより高い任意の範囲に到達するように、調整され、
前記駆動制御部は、前記第2の期間経過後、前記第1のレベルのパルスの挿入を複数回繰り返し、前記第4の期間経過後、前記第2のレベルのパルスの挿入を複数回繰り返す請求項1記載のゲートドライバ。
パワートランジスタを導通状態へ切り替える制御信号を受けると、前記パワートランジスタのゲート電圧を制御する駆動信号を、第1のレベルから第2のレベルへ切り替え、前記駆動信号を、第1の期間経過後に前記第1のレベルへ切り替え、さらに第2の期間経過後に前記第2のレベルへ切り替えるように制御する駆動制御部と、
前記駆動信号を増幅して出力するゲート駆動部と、
前記第1及び第2の期間が経過したときに、前記パワートランジスタのゲート電圧とゲート電流とを検出し、前記第1及び第2の期間の調整をするキャリブレーション部と、
を備えるゲートドライバ。
前記駆動制御部は、前記パワートランジスタを遮断状態へ切り替える制御信号を受けると、前記駆動信号を前記第2のレベルから前記第1のレベルへ切り替え、前記駆動信号を、第3の期間経過後に前記第2のレベルへ切り替え、さらに第4の期間経過後に前記第1のレベルへ切り替えるように制御し、
前記キャリブレーション部は、前記第3及び第4の期間が経過したときに、前記パワートランジスタのゲート電圧とゲート電流とを検出し、前記第3及び第4の期間の調整をする請求項14記載のゲートドライバ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0011】
一実施形態のゲートドライバは、パワートランジスタをON状態(導通状態)またはOFF状態(遮断状態、非導通状態)への切り替える制御信号を受けると、所定の期間の経過後に信号レベルを切り替えて所定の幅のパルスを形成した駆動信号(ゲート駆動信号)をパワートランジスタに出力する。
図1にゲートドライバの構成例を表す概略図を示す。ゲートドライバ1は、駆動制御部10とゲート駆動部40とを備える。駆動信号は、パワートランジスタをON状態またはOFF状態への切り替えるように、ゲート電圧を制御する信号である。
【0012】
駆動制御部10は、入力端子2から制御信号を受け、ON状態またはOFF状態を制御する信号レベルに対して、所定の期間、信号レベルを切り替えた逆極性のパルスを形成した駆動信号を生成するように制御する。具体的には、駆動制御部10は、パワートランジスタをON状態へ切り替える制御信号を受けると、駆動信号を第1のレベルから第2のレベルへ切り替え、駆動信号を、第1の期間経過後に第1のレベルへ切り替え、さらに第2の期間経過後に第2のレベルへ切り替えるように制御する。一方、駆動制御部10は、パワートランジスタをOFF状態へ切り替える制御信号を受けると、駆動信号を第2のレベルから第1のレベルへ切り替え、駆動信号を、第3の期間経過後に第2のレベルへ切り替え、さらに第4の期間経過後に第1のレベルへ切り替える。例えば、第1のレベルは、ハイレベルであり、第2のレベルはロウレベルである。
【0013】
例えば、駆動制御部10は、タイミング制御部20と論理部30とにより実現する。
タイミング制御部20は、第1乃至第4の期間が経過したタイミングを検出し、検出したタイミングで駆動信号の信号レベルの切り替えを論理部30へ指示する。
論理部30は、タイミング制御部20が出力する信号に応じて、駆動信号を第1のレベルと第2のレベルとの間で切り替える。
第1乃至第4の期間は、あらかじめ定めた一定期間である。第1乃至第4の期間は、その期間経過後に駆動信号の信号レベルを切り替えることからパルス幅を決定するパラメータとして用いる。
【0014】
ゲート駆動部40は、駆動制御部10が出力する駆動信号を増幅し、増幅した駆動信号を出力端子3からパワートランジスタへ出力する。
例えば、ゲート駆動部40は、第1スイッチ部41と第2スイッチ部42とにより実現する。ゲート駆動部40は、第1及び第2スイッチ部41、42とのいずれかをON状態にして駆動信号を増幅して出力する。
図1において、ゲートドライバ1の左側の波形は、制御信号の一例を示し、右側の波形は、駆動信号の一例を示す。
【0015】
駆動制御部10及びゲート駆動部40については、各実施形態で具体的な構成を参照して説明する。
一実施形態を説明するにあたって、まず、従来の技術の問題点を図面を参照して説明し、その後、一実施形態について具体的な構成を示して説明する。
【0016】
まず、
図2を参照して、ゲート抵抗を備える電力制御回路について説明する。電力制御回路93は、ゲートドライバ91、パワートランジスタ90、及びゲート抵抗R
Gを備える構成例を示す。
図2に示すように、インバータやコンバータなどの電力制御回路93では、IGBTやパワーMOSなどのパワートランジスタ90のゲート端子と、ゲートドライバ91の出力端子との間に、ゲート抵抗R
Gを設ける。ゲート抵抗R
Gの役割は、上述したように、寄生インダクタンスL
Gの影響によるゲート電圧V
GEのオーバーシュート・アンダーシュートおよびリンギングを抑えること、及び、パワートランジスタ90のエミッタ−コレクタ間(またはドレイン−ソース間)に印加される電圧または電流のスルーレートを適正な値に抑えることである。
【0017】
図2に示す電力制御回路93では、主に3つの問題点があることを説明した。以下に、これらの問題点について詳述する。
まず、第一の問題点、IGBTまたはパワーMOSなどのパワートランジスタのスイッチング損失が発生することについて説明する。パワートランジスタ90は通常、ON状態またはOFF状態で使用される。ON状態では、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の抵抗は、数mΩ〜数十mΩである。ON状態では電流が流れるが、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEがほぼゼロになる。そのため、パワートランジスタの電力損失P
LOSS=V
CE×I
CEはそれほど大きくない。また、OFF状態ではコレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電流I
CEがゼロなので電力損失が発生しない。一方、パワートランジスタ90がOFF状態からON状態に遷移する時、またはON状態からOFF状態に遷移する時に、途中でハーフON状態になる。ハーフON状態とは、ON状態とOFF状態との間の状態である。このハーフON状態では、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEと電流I
CEとの両方が印加されている状態になる。このため、パワートランジスタ電力損失P
LOSS=V
CE×I
CEが瞬間的に大きくなる。
【0018】
図3に、パワートランジスタ90の一例であるIGBTがON状態とOFF状態との間を遷移するときの電圧・電流の変動と電力損失とを表すタイミングチャートを示す。パワートランジスタ90のゲート電圧V
GEは、ゲートドライバ出力電圧V
OUTに応じて変動する。パワートランジスタ90がON状態に遷移するハーフON状態の期間TR及びOFF状態に遷移するハーフON状態の期間TFでは、電力損失が生じる。従って、パワートランジスタ90の電力損失は、ハーフON状態の期間の長さと、スイッチングの頻度に比例する。スイッチングの頻度はインバータの変調周波数で決まるため変更できない。ハーフON状態の期間の長さは、パワートランジスタ90のゲート電圧V
GEを充放電する時間で決まる。このため、ゲート抵抗R
Gの大きさに依存する。つまり、ゲート抵抗R
Gが大きければ、パワートランジスタ90のスイッチング時に生じる電力損失(スイッチング損失)が大きくなる。別の言い方をすれば、ゲート電圧V
GEの立ち上がりが遅いと、ハーフON状態の期間TRまたはTFが長くなり、電力損失が大きくなる。このように、スイッチングにおけるパワートランジスタ90の電力損失が大きいことが問題である。
【0019】
次に、第二の問題点、ゲート抵抗R
Gによるジュール損失(ゲート駆動損失)が発生することについて説明する。パワートランジスタ90のゲートの充放電の度に、例えば2A〜4Aのゲート電流I
Gが流れ、ゲート抵抗R
Gによるジュール損失が発生する。一例としてゲート電圧V
GE=15[V]、ゲート電荷Q
G=6000[nQ]を有するIGBTを駆動するゲートドライバでは、1回の充電・放電でゲート抵抗が発生するジュール損失はそれぞれ、C
GEV
G2/2=Q
GV
G/2=45[uJ]、充放電1サイクルでは90[uJ]となる。PWM変調周波数が20kHzのインバータでは、ゲート抵抗R
Gによる損失が90[uJ]×20kHz=1.8Wとなり、無視できない電力損失になる。そのため、放熱対策、電源回路を用意する必要があるので、コストの観点からはゲート抵抗R
Gのジュール損失を抑えることが望ましい。
【0020】
最後に、第三の問題点、ゲート抵抗R
Gを外付け部品として用意しなければならないことについて説明する。前述の計算のように、ゲート抵抗R
Gでは0.5W〜2W程度の電力を損失する。このため、ゲート抵抗は通常IC(Integrated Circuit)には内蔵せず(IC内臓の抵抗素子にとっては損失が大きすぎる)、独立した外付け部品として実装される。また、適切なゲート抵抗R
Gの値は、接続するIGBTや、ゲート配線の長さなどに応じて調整が必要であることからも、ゲート抵抗R
Gは通常ICには内蔵しない。このため、ゲート抵抗R
Gの部品コスト、基板の実装面積、インバータ製造者の設計コストがかかることになる。
【0021】
一方、電力制御回路93からゲート抵抗R
Gを除いた場合には、上述した第一から第三の問題点が改善するように思われるが、別の課題が発生することは上述した通りである。新たに発生する課題について以下に説明する。
図4にゲート抵抗を備えない電力制御回路の構成例を示す。
まず、電力制御回路95では、ゲート配線の寄生インダクタンスL
Gによって、ゲート電圧のオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングが発生する(第一の課題)。パワートランジスタ90のON状態でのオーバーシュートは、定格電圧超えてしまうとゲート破壊を招く。これに対して、OFF状態でのリンギングは、意図しないON状態を発生させてしまう。
図2の電力制御回路93ではゲート抵抗R
Gがダンピング要素として働き、オーバーシュート、アンダーシュートを抑えている。
図5にゲート抵抗が無い電力制御回路95のパワートランジスタ90のゲート電圧の変動例を表すタイミングチャートを示す。ゲートドライバ出力電圧V
OUTが上昇すると、パワートランジスタ90のゲート電圧V
GEがオーバーシュートを起こし、ゲート電圧V
GEに定格外の電圧が印加され破壊の恐れがある。また、ゲートドライバ出力電圧V
OUTが降下すると、パワートランジスタ90のゲート電圧V
GEが降下し、アンダーシュートやリンギングが発生する。このような場合、閾値VTH付近で電圧が変動すると、パワートランジスタ90に意図しないON状態/OFF状態の切り替えが発生する。
図5に示すように、パワートランジスタの立ち上がり、立ち下がりは早くなり、
図3に示す期間TR,TFは短くなるが、定格外の電圧による破壊や意図しないON/OFFの切り替えが発生するという問題がある。
【0022】
次に、電力制御回路95では、パワートランジスタ90に流れる電流スルーレート(dI
CE/dt)が制限されないために発生する第二の課題について説明する。
まず、
図2、4のように負荷R
Lがモーターやコイルなどの誘導性負荷(V=LdI/dt)の場合には、大きな電流スルーレートdI
CE/dtによって、パワートランジスタ90のコレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEに大きなサージ電圧が現れる。その結果、電流スルーレート(dI
CE/dt)が大きくなる。これは、電力制御回路93、95において、ゲート抵抗R
Gが小さいもしくはゲート抵抗R
Gがないとゲート電圧V
GEの変化が急峻になるからである。この時の電圧の変化を
図6に示す。
図6では、パワートランジスタのゲート電圧V
GE(一点破線)、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電流I
CE(破線)及び電圧V
CE(実線)、及び電流スルーレート(dI
CE/dt)(点線)を示す。コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEは矢印で示すサージ電圧が生じた場合であり、点線で理想的な電圧V
CEを示している。
このサージ電圧が定格電圧を超えると、パワートランジスタ90が破壊される場合がある。
負荷R
Lの誘導性負荷の影響でコレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEのオーバーシュートが大きくなる。このとき、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEが定格電圧を超えると、パワートランジスタ90が正常に動作しなくなる。
【0023】
加えて、パワートランジスタ90に流れる電流スルーレート(dI
CE/dt)が制限されないと、インバータなどの電力制御回路が発生する放射ノイズ(EMI)が大きくなる(第三の課題)。
上述した課題が発生するため、ゲート抵抗R
Gの抵抗値の低減には限界がある。適正なゲート抵抗R
GはIGBTの電気特性や負荷に依存する。
【0024】
上述した問題点や新たな課題に対して、一実施形態では、ゲート抵抗R
Gを備えない電力制御回路であり、かつ、ゲート抵抗R
Gを備えないときに発生する課題を解消するとともに、消費電力の削減するパワートランジスタを提供する。パワートランジスタの構成例の概略は
図1に示す通りである。
図1のゲートドライバ1を用いる電力制御回路は、ゲート抵抗R
Gを削除することにより、スイッチング損失及びジュール損失を削減する。加えて、ゲート抵抗R
Gを備えることで生じるコストを削減できる。さらに加えて、駆動信号に逆極性のパルスを挿入する構成を有することにより、ゲート電圧のオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングの発生を抑制するとともに、パワートランジスタに流れる電流のスルーレートを制御することを実現する。以下に具体的な構成を参照して詳細を説明する。
【0025】
実施形態1.
図7は実施形態1のゲートドライバを備える電力制御回路の構成例を示す図である。
電力制御回路101は、パワートランジスタ90とゲートドライバ(スイッチング回路)100とを備える。パワートランジスタ90とゲートドライバ100との間には、ゲート抵抗を備えない。入力端子INからは、外部からゲートドライバ100へ制御信号が入力され、出力端子OUTから駆動信号が出力される。
パワートランジスタ90は、例えば、IGBTやパワーMOSなどにより構成される。本実施形態では、パワートランジスタ90がIGBTから構成されることを前提として説明する。以降の説明で参照する図面において、説明を容易にするため、パワートランジスタ90についてゲートドライバ100と関連する構成要素を示し、例えば負荷R
Lなどの構成要素を適宜省略して示すことがある。
ゲートドライバ100は、タイミング回路(タイミング制御部)121及び論理回路(論理部)131、132を有する駆動制御部110と、第1トランジスタ(第1スイッチ部)141及び第2トランジスタ(第2スイッチ部)142を有するゲート駆動部140とを備える。
駆動制御部110とゲート駆動部140とは、
図1の駆動制御部10とゲート駆動部40とを実現する一構成例である。
【0026】
タイミング回路121は、パワートランジスタ90をON状態への切り替える制御信号を受ける場合、制御信号を受けたときから第1の期間が経過すると、論理回路131、132へ通知し、その後さらに第2の期間が経過すると、再度論理回路131、132へ通知する。また、タイミング回路121は、パワートランジスタ90をOFF状態への切り替える制御信号を受ける場合、制御信号を受けたときから第3の期間が経過すると、論理回路131、132へ通知し、その後さらに第4の期間が経過すると、再度論理回路131、132へ通知する。
論理回路131は、出力が第1トランジスタ141のゲートへ接続される。また、論理回路132は、出力が第2トランジスタ142のゲートへ接続される。論理回路131、132は、入力した制御信号を、第1トランジスタ141のゲートへ出力する。加えて、論理回路131、132は、制御信号のレベルを、タイミング回路121から通知される第1乃至第4の期間の経過に応じて切り替える。
【0027】
第1及び第2トランジスタ141、142は、論理回路131、132が出力する制御信号に応じて、ON状態とOFF状態とが切り替わるように構成される。第1トランジスタ141はソース端子が電源VCCに接続し、ドレイン端子が第2トランジスタ142に接続し、ゲート端子が論理回路131に接続するPMOSトランジスタから構成される。第2トランジスタ142は、ソース端子がグランドGNDに接続し、ドレイン端子が第1トランジスタに接続し、ゲート端子が論理回路132に接続するNMOSトランジスタから構成される。第1及び第2トランジスタのON状態に応じて、ゲートドライバ出力電圧VOUTの電圧が決定される。
電力制御回路101は、ゲート抵抗を用いない構成例を示すが、これに限られることはない。一実施形態(本実施形態及び以降で説明する各実施形態を含む)のゲートドライバは、ゲート抵抗が従来の電力制御回路に比べて非常に小さい抵抗値を有するゲート抵抗を用いる電力制御回路にも適用可能である。非常に小さい抵抗値とは、例えば、上述したゲート抵抗がない場合の第一乃至第三の課題が発生するような値である。
【0028】
図8に実施形態1の電力制御回路の電圧、電流の変動を表すタイミングチャートを示す。
図8では、第1乃至第4の期間をそれぞれ、期間Ta、Tb、Tc、Tdとして示す。
パワートランジスタ90をON状態に遷移させる際(ターンオン)に、ゲートドライバ100は、駆動信号を第1のレベルから第2のレベルに変化させ、その後期間Taが経過したときに一旦第1のレベルに戻す。さらに期間Tbが経過したときに再び第2のレベルに戻す。また、パワートランジスタをOFF状態に遷移させる際(ターンオフ)に、ゲートドライバ100は、駆動信号を第2のレベルから第1のレベルに変化さえ、その後期間Tcが経過したときに一旦第2のレベルに戻す。さらに期間Tdが経過したときに再び第1のレベルに戻す。
【0029】
例えば、期間Taにゲートドライバ出力電圧V
OUTがハイレベルだとゲート電流(ゲートドライブ電流)I
Gが増加する。寄生インダクタンスL
Gの影響で、一度増加したゲート電流I
Gはゲートドライバ出力電圧V
OUTの電圧レベルをゲート電圧V
GEよりも低くしなければ減少しない。従って、ゲート電流I
Gが大きいままゲート電圧V
GEが所望の電圧に到達すると、ゲートに電荷が供給されつづけるため、その後ゲート電圧V
GEがオーバーシュートを起こす。これを避けるため、ゲート電圧V
GEが所望の電圧レベルに到達するタイミングに合わせてゲート電流I
Gがゼロになるように、ゲートドライバ出力電圧V
OUTの電圧レベルをTbの期間ロウレベルにする。これにより、ゲート電流I
Gが徐々に減少し、期間Tbが終了する頃にゲート電流I
Gがゼロになり、ゲート電圧V
GEが所望の電圧レベルに到達する。ゲート電流I
Gを減衰させる期間Tb、Tdを設けない場合には、ゲート電圧V
GEは、
図5に示したような、オーバーシュート、アンダーシュートを繰り返す波形になる。
図8に示すように、期間Ta〜Tdそれぞれの時間(長さ)は、パルス幅を決定するパラメータになる。
【0030】
加えて、
図8にはゲート駆動部140を構成する第1及び第2スイッチ部、具体的には第1及び第2トランジスタ141、142のON/OFF状態を示す。
図8ではON状態をハイレベル、OFF状態をロウレベルとして示す。
図8に示すように、第1及び第2スイッチ部は、駆動制御部110からの信号を受けて、いずれか一方がON状態に他方がOFF状態になるように構成される。第1及び第2スイッチ部のいずれかがON状態になるように構成することにより、駆動信号が第1及び第2のレベルのいずれの場合にも、ゲートドライバ100とパワートランジスタ90との間で電流の流れを確保することになる。言い換えると、駆動信号が第1及び第2のレベルのいずれの場合にも、寄生インダクタンスL
Gの電流の流れを確保することが可能になる。これにより、一度高めたゲート電流を積極的に減少させることが可能になる。その結果、ゲート電流のピーク値を高くすることができるため、スイッチング時間の短縮が図れる。
【0031】
図9に実施形態1の他の回路構成のゲートドライバを備える電力制御回路の構成例を示す。
電力制御回路201は、パワートランジスタ90とゲートドライバ200とを備える。ゲートドライバ200以外の構成は
図7と同様であるため、説明を省略する。
ゲートドライバ200は、タイミング回路221〜224、論理回路231〜233を有する駆動制御部210と、第1トランジスタ241、第2トランジスタ242、及びNOT回路243、244を有するゲート駆動部240とを備える。
駆動制御部110とゲート駆動部140とは、
図1の駆動制御部10とゲート駆動部40とを実現する一構成例である。
タイミング回路221は、入力端子INから入力された制御信号を受け、制御信号を期間Taの時間遅延させた第1遅延信号を出力する遅延素子から構成される。タイミング回路223は、タイミング回路221と同様であり、制御信号を期間Tcの時間遅延させた第3遅延信号を出力する点が異なる。
タイミング回路222は、第1遅延信号を受け、第1遅延信号を期間Tbの時間遅延させた第2遅延信号を出力する遅延素子から構成される。タイミング回路224は、第3遅延信号を受け、第3遅延信号を期間Tdの時間遅延させた第4遅延信号を出力する遅延素子から構成される。
【0032】
論理回路231は、制御信号、第1遅延信号、及び第2遅延信号を受け、排他的論理和(XOR)演算を行った第1演算結果を出力するXOR回路から構成される。
論理回路232は、制御信号、第3遅延信号、及び第4遅延信号を受け、排他的論理和演算を行った第2演算結果を出力するXOR回路から構成される。
論理回路233は、制御信号に応じて、第1演算結果と第2演算結果との一方をPREOUTとして出力するセレクタ回路から構成される。
【0033】
NOT回路243、244は、論理回路233から出力されるPREOUTの論理否定を第1及び第2トランジスタ241、242のゲート端子へ出力する。
第1及び第2トランジスタ241、242は、論理回路233が出力する制御信号に応じて、ON状態とOFF状態とが切り替わるように構成される。
第1トランジスタ241はソース端子が電源VCCに接続し、ドレイン端子が第2トランジスタ242に接続し、ゲート端子がNOT回路243に接続するPMOSトランジスタから構成される。第2トランジスタ142は、ソース端子がグランドGNDに接続し、ドレイン端子が第1トランジスタに接続し、ゲート端子がNOT回路244に接続するNMOSトランジスタから構成される。第1及び第2トランジスタのON状態に応じて、ゲートドライバ出力電圧V
OUTの電圧が決定される。
【0034】
図9は、
図1、7に示したゲートドライバ、10、100の動作を実現する具体的な回路の一例を示したものであり、これに限るものではない。
図9において、タイミング回路221〜224は
図1のタイミング制御部を、論理回路231〜233は
図1の論理部30を実現する回路例である。また、第1トランジスタ241及びNOT回路243は、
図1の第1スイッチ部41、第2トランジスタ242及びNOT回路244は、
図1の第2スイッチ部42を実現する回路例である。
【0035】
図9の電力制御回路201の動作例を説明する。電力制御回路201も
図8に示す波形と同様に動作してパワートランジスタ90のON/OFF状態を遷移させる。
入力端子INから入力される制御信号がロウレベル(L)からハイレベル(H)に変わると、論理回路233は論理回路231の出力(第1演算結果)を選択する。タイミング回路221は、制御信号がロウレベルからハイレベルに変わった直後から期間Taが経過するまで、出力をロウレベルに維持する。期間Taが経過するまでの間、論理回路231の入力は、
図9の上からLLHとなる。従って、論理回路231の出力及び論理回路233の出力PREOUTはハイレベルを出力する。期間Taが経過すると、論理回路231の入力はHLHになるので、出力PREOUTは、ロウレベルとなる。さらに期間Tbが経過すると、タイミング回路222の出力もハイレベルになる。従って、論理回路231の入力はHHHになるので、出力PREOUTはハイレベルになる。
図8に示すように、期間Taではハイレベル、期間Tbではロウレベル、その後ハイレベルに遷移する。
【0036】
一方、入力端子INから入力される制御信号がハイレベルからロウレベルに変わると、論理回路233は論理回路232の出力(第2演算結果)を選択する。タイミング回路223は、制御信号がハイレベルからロウレベルに変わった直後から期間Tcが経過するまで、出力をハイレベルに維持する。期間Tcが経過するまでの間、論理回路232の入力は、
図9の上からLHHなる。従って、論理回路232の出力及び論理回路233の出力PREOUTはロウレベルを出力する。期間Tcが経過すると、論理回路232の入力がLHLになるので、出力PREOUTはハイレベルとなる。さらに期間Tdが経過すると、タイミング回路224の出力もロウレベルになる。従って、論理回路232の入力はLLLになるので、出力PREOUTはロウレベルになる。
図8に示すように、期間Tcではロウレベル、期間Tdではハイレベル、その後ロウレベルに遷移する。
上述したように動作するため、期間Ta〜Tdの時間は、駆動信号に形成するパルス幅を決定することになる。
【0037】
次に、
図10、11を参照して、電力制御回路201の電圧・電流の変動を説明する。
図10及び
図11は、
図9に示したゲートドライバ200のゲートドライブ方式を用いてパワートランジスタ90をON状態またはOFF状態に遷移させた場合のSpice(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)シミュレーション波形の例である。
図10及び
図11は、実施形態1の電力制御回路201の波形に加え、ゲート抵抗を有する電力制御回路(例えば、
図2の電力制御回路93)の波形、及び、ゲート抵抗を備えない電力制御回路(例えば、
図4の電力制御回路95)の波形を示す。
図10は、パワートランジスタ90をON状態に遷移させたときの波形例であり、
図11は、パワートランジスタ90をOFF状態に遷移させたときの波形例である。
図10、11には、ゲートドライバ出力電圧V
OUT[V]、IGBTゲート電圧V
GE[V]、ゲート電流I
G[A]の波形を示す。図中、実線は、
図9の電力制御回路201の波形例であり、一点破線は、
図2のゲート抵抗有の電力制御回路93の波形例、点線は、
図4のゲート抵抗無の電力制御回路95の波形例である。なお、各線が重なる領域あるため、実線に対して、点線全体を少し上にずらし、一点破線全体を下にずらし、実際の値とは少しずれた位置に示している。実際の値としては、例えば、時間‐0.5から0μsecまでは、三つの線が重なった状態で示される。
図10では、期間Taを400ns、期間Tbを75ns、
図11では、期間Taを215ns、期間Tbを170nsに設定した場合を示す。
【0038】
図10のターンオンの波形でパワートランジスタ90のゲート電圧V
GEの充電にかかる時間は、ゲート抵抗有の電力制御回路93を用いたゲートドライブ方式では1100ns以上の時間が必要である。これはゲート抵抗でダンピングしながら電荷を充電するからである。
ゲート抵抗無の電力制御回路95ゲートドライブ方式では、ゲート抵抗を省略することで330ns程度に削減できるが、ゲート電圧V
GEのオーバーシュートが起こる。その結果、20V程度(定格外)の電圧がかかってしまうので素子の破壊が起こり得る。
本実施形態の電力制御回路201のゲートドライブ方式では、ゲート抵抗が無い場合と同等の立ち上がり時間(従来方式に比べて1/3)を実現しながら、ゲート電圧V
GEのオーバーシュートを無くしている。本実施形態ではターンオンに要する時間を、電力制御回路93を用いる場合の1100nsから330nsに短縮し、30%の時間削減を実現している。加えて、電力制御回路95のようにリンキングを発生させることがない。
【0039】
図11のターンオフの波形でパワートランジスタ90のゲート電圧V
GEの放電にかかる時間は、ゲート抵抗有の電力制御回路93のゲートドライブ方式では800ns以上の時間が必要である。
ゲート無の電力制御回路95ゲートドライブ方式では、ゲート抵抗を省略することで300ns程度に削減できるが、ゲート電圧V
GEのアンダーシュートが起こる。その結果、−30V程度(定格外)の電圧がかかってしまうので素子の破壊が起こり得る。加えて、リンギングの発生により、意図しないターンオンが起こり得る。
本実施形態の駆動方式では、ゲート抵抗が無い場合と同等の立ち下がり時間(350ns従来方式に比べて1/2)を実現しながら、ゲート電圧V
GEのアンダーシュートを無くしている。本実施形態ではターンオンに要する時間を、電力制御回路93を用いる場合の800nsから350nsに短縮し、44%の時間削減を実現している。加えて、電力制御回路95のようにリンキングを発生させることがない。
【0040】
このように、ゲート抵抗を無くすことでゲートの充放電を高速化し、パワートランジスタ90のスイッチング損失を最小化しながら、寄生インダクタンスL
Gによる波形のオーバーシュート、アンダーシュートが発生する課題を解決するために、ゲートドライバの出力電圧で信号のイコライズを行う。イコライズを行うゲートドライバの出力はハイレベルとロウレベルの2レベル以上あれば良く、イコライズのために挿入するパルスの幅を調整することで、寄生インダクタンスL
Gを経由した先にあるパワートランジスタのゲート電圧V
GEを所望の電圧に制御する。
【0041】
上述した実施形態1のスイッチング方式の特徴を、ゲート抵抗を有する電力制御回路、例えば、
図2の電力制御回路93と比較して説明する。
図12Aは、ゲート抵抗を用いた電力制御回路が実施するスイッチング方式の特徴を説明する図である。
図12Bは、一実施形態の電力制御回路が実施するスイッチング方式の特徴を説明する図である。
図12Bでは、一例として電力制御回路101が備えるゲートドライバ100をゲートドライバとして用いる場合を示している。
【0042】
まず、
図12Aに示すように、ゲート抵抗を用いた電力制御回路では、次の特徴がある。
(1−a)パワートランジスタ90のゲート電圧の立ち上がり、立ち下がりが遅く、ハーフON状態の期間TR及びOFF状態に遷移するハーフON状態の期間TFが長くなるため、パワートランジスタ90の電力損失が大きい。
(2−a)コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEのオーバーシュートが発生しないように、ゲート抵抗の抵抗値を調整する。
(3−a)ゲート抵抗の熱損失が発生するため、ゲートドライバの消費電力が大きくなる。
(4−a)電力制御回路を利用する利用者に対して、外付けするゲート抵抗のコスト、面積、設計工数が発生する。
(5−a)複数のゲートドライブ方法(通常ON/OFF、ソフトターンオフ、クランプ)に対してそれぞれのドライバ回路が必要となる。
【0043】
これに対して、
図12Bに示すように、一実施形態の電力制御回路では次の特徴がある。
(1−b)パワートランジスタ90のゲート電圧の立ち上がり、立ち下がりが速く、ハーフON状態の期間TR及びOFF状態に遷移するハーフON状態の期間TFが短くなるため、パワートランジスタ90の電力損失が小さい。
(2−b)高速でゲートをチャージしながらも、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEのオーバーシュートが発生しないように、部分的にゲートのチャージ速度を制限する。チャージ速度の制限は、駆動信号に挿入するパルス幅で調整するとともに、寄生インダクタンスL
Gの影響を駆動信号の出力波形で補償する。加えて、ゲート抵抗を使用しないで実現する構成である。
(3−b)ゲートドライバの消費電力が小さい。加えて、パワートランジスタ90のゲート電荷の回生が可能である。これについては
図15を参照して説明する。
(4−b)電力制御回路を利用する利用者に対して、外付けするゲート抵抗のコスト、面積、設計工数が発生しない。
(5−b)複数のゲートドライブ方法を1つのドライバ回路で実現可能である。
【0044】
図13は、一実施形態のスイッチング時間を説明する図である。
図13には、パワートランジスタ90に関する、ゲート電圧V
GE、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CE及び電流I
CE、並びに電力損失P
LOSS=V
CE×I
CEを示す。電力損失は、斜線で示す面積領域で表し、スイッチング時間を矢印で表している。
一実施形態のゲートドライバを用いることにより、パワートランジスタ90のゲート電圧のチャージ時間が短縮される。その結果、
図13に示す電流I
CEの立ち上がり及び立ち下がりの時間、及びゲート電圧の立ち下がり及び立ち上がりの時間が、
図3に比べて短縮される。言い換えると、スイッチング時間TR及びTFが短縮されることになり、パワートランジスタ90の電力損失が削減できる。このように、一実施形態のゲートドライバによれば、ゲート抵抗を用いるときに発生する第1の問題点である電力損失を抑制することができる。
【0045】
図14は一実施形態の電力制御回路と他の電力制御回路との電圧・電流の変動を比較して説明する図である。ゲート抵抗有の電力制御回路(例えば、
図2の電力制御回路93)、ゲート抵抗無の電力制御回路(例えば、
図4の電力制御回路95)、及び一実施形態の電力制御回路の電圧及び電流の変動を示す。ゲート抵抗無の電力制御回路は実際に使用するのは困難な方式となっているが説明のために波形例を示す。
図14には、ゲートドライバ出力電圧V
OUT、ゲート電流I
G及びゲート電圧V
GEの波形を示す。
図14に示すように、一実施形態では、
図13を参照して説明した通り、電力損失を抑制することができることに加え、ゲート抵抗を備えない場合に電力制御回路に発生する課題も解決することが可能である。具体的には、ゲート抵抗無の電力制御回路のゲート電流I
G及びゲート電圧V
GEの波形に示されるゲート電圧V
GEのオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングを回避することができる。
【0046】
図15は、一実施形態の電力制御回路がジュール損失を発生させず、消費電力を削減する仕組みを説明する図である。
一実施形態の電力制御回路は、ゲート抵抗を使用しないことから、ジュール損失が生じない。その結果、ゲートドライブに要する電力が減少する。加えて、パワートランジスタのゲートに充電された電荷は、ジュール熱ではなく、再び電力として電源へ回生される。その結果消費電力を削減することができる。
図15を参照してゲートドライバが電力wo回生させるように構成されていることを説明する。
図15には、上段に、ゲートドライバ出力電圧V
OUTと、パワートランジスタのゲート電流I
G及びゲート電圧V
GEの波形を示す。また、下段に、期間Ta〜Tdについて、電力制御回路内のパワートランジスタ90のゲートへの電荷の充電元と放電先とを説明する図を示す。
図15では、電力制御回路の構成を、説明に関係する素子を中心に簡略化して示す。具体的には、パワートランジスタ90とゲートドライバとを示し、ゲートドライバに関して、第1スイッチ部として働くPMOSトランジスタSW1、第2スイッチ部として働くNMOSトランジスタSW2を示す。PMOSトランジスタSW1及びNMOSトランジスタSW2は、
図8に示す第1及び第2スイッチ部の状態遷移と同様に、いずれか一方がON状態に他方がOFF状態になる。また、太い実線の矢印は電流の流れを示し、点線の矢印はリターン電流の流れを示す。
【0047】
期間Taにおいて、ゲートドライバにおいて、PMOSトランジスタSW1がON状態であり、PMOSトランジスタSW1を介して電源VCCからパワートランジスタ90に電流が流れる。そのため、パワートランジスタ90のゲートは、電源VCCから電荷がチャージされる。このとき、リターン電流は、パワートランジスタ90からグランドGNDを介してゲートドライバに流れる。
期間Tbにおいて、ゲートドライバにおいて、NMOSトランジスタSW2がON状態であり、寄生インダクタンスL
Gのエネルギーによって、NMOSトランジスタSW2を介してグランドGNDからパワートランジスタ90に電流が流れる。そのため、パワートランジスタ90のゲートは、グランドGNDから電荷がチャージされる。このとき、リターン電流は、パワートランジスタ90からグランドGNDに流れる。
【0048】
期間Tcにおいて、ゲートドライバにおいて、NMOSトランジスタSW2がON状態であり、NMOSトランジスタSW2を介してパワートランジスタ90からグランドGNDに電流が流れる。そのため、パワートランジスタ90のゲートは、電荷がグランドGNDへディスチャージされる。このとき、リターン電流は、グランドGNDからパワートランジスタ90に流れる。
期間Tdにおいて、ゲートドライバにおいて、PMOSトランジスタSW1がON状態であり、寄生インダクタンスL
Gのエネルギーによって、PMOSトランジスタSW1を介してパワートランジスタ90から電源VCCに電流(回生電流)が流れる。そのため、パワートランジスタ90のゲートは、電荷が電源VCCへディスチャージされる。ディスチャージされた電荷は電源VCCで利用される回生電力となる。このとき、リターン電流は、グランドGNDからパワートランジスタ90に流れる。
【0049】
本実施形態のゲートドライバは、
図15で説明したようなゲート電荷の充電と放電とを実現できるように構成されている。これにより、ゲート抵抗R
Gを配置しないことによりジュール損失の発生を回避できることに加え、消費電力を削減するという有利な効果を奏することができる。具体的には、寄生インダクタンスL
Gを活用することによって、電源VCCからパワートランジスタ90に供給する電力を削減することができる。さらに、回生電流によって、パワートランジスタ90のゲート容量C
Gにチャージした電荷をゲートドライバの電源VCCで再利用することができる。
【0050】
次に、一実施形態では、回路面積等を削減できることを説明する。
まず、ゲート抵抗R
Gがなくなることにより、外付け抵抗が不要になる。これにより、部品コスト、実装面積、設計工数の削減ができる。
加えて、一実施形態では、ゲートドライバの回路面積を削減することもできる。
図16A及び
図16Bを参照して説明する。
図16Aは、アクティブミラークランプを有する、ゲート抵抗R
Gを用いるゲートドライバの構成例を示す図である。ゲート抵抗R
Gを用いるゲートドライバでは、パワートランジスタ90のゲートを低抵抗でグランドGNDにクランプしなければ、寄生カップリングによるセルフターンONが発生する。パワートランジスタ90をOFFするときにセルフターンONを防ぐため、ゲートドライバは、アクティブミラークランプを備える。アクティブミラークランプは、制御ロジック96からの指令がパワートランジスタ90をOFF状態に遷移させ、且つゲート電圧が1.5V以下の場合に低抵抗でゲートをグランドGNDにクランプする。
【0051】
図16Aの構成例では、第1及び第2スイッチ部として機能する、PMOSトランジスタSW1、NMOSトランジスタSW2に加え、アクティブミラークランプとして機能するNMOSトランジスタSW3を備える。このように、
図16Aのゲートドライバ97では、2系統の回路を備える。例えば、ゲートドライバに、10Ωまたは0.5Ωのトランジスタを用いる場合、ロジックなどのトランジスタと違って、ゲートドライバのトランジスタの面積が大きくなる。言い換えると面積ペナルティが大きくなる。
図16Bは、一実施形態のゲートドライバのアクティブミラークランプの機能を説明する図である。一実施形態のゲートドライバでは、ゲート抵抗R
Gを備えない構成であるため、ゲートドライバ本体のローサイドトランジスタで十分にグランドGNDにクランプできる。言い換えると、ゲートドライブ方式は1系統の回路で全てのゲート抵抗に対応できる。このため、アクティブミラークランプ専用のトランジスタが不要になる。従って、アクティブミラークランプとして機能するNMOSトランジスタSW3の面積を削減することが可能になる。
【0052】
一般にゲートドライバのドライブトランジスタは電流容量が大きく、通常2A〜4A程度であり、加えて、ON状態にした時の抵抗も低く、1Ω程度である。そのため、チップ内で占める占有面積が大きくなる。トランジスタを省略できることにより、チップサイズを小さくすることが可能になる。
本実施形態の説明、例えば、
図12B,
図13乃至
図16Bの説明において、一実施形態のゲートドライバには、
図1、7、9のゲートドライバ1、100、200に加え、以降の各実施形態で説明するゲートドライバ、または、これらのゲートドライバに基づいて適宜変更した構成を含む。同様に、一実施形態の電力制御回路には、
図7,9の電力制御回路101、201に加え、以降の各実施形態で説明する電力制御回路、または、これらの電力制御回路に基づいて適宜変更した構成を含む。
【0053】
実施形態2.
実施形態2では、駆動信号のパルス幅の調整について説明する。
図7,9に示したゲートドライバ100、200が実施するスイッチング方式の制御では、駆動信号に形成するパルス幅は、期間Ta〜Tdの時間に応じて決まる。本実施形態では、パルス幅を決定する期間Ta、Tb、Tc、Tdの決定方法を説明する。
図17は駆動信号のパルス幅を決定する方法の一例を示している。本実施形態のスイッチング方式では、期間Ta、Tbが終了した後の時点t2で、パワートランジスタのゲート電圧V
GEが所望の電圧に収束し、ゲート電流I
Gがゼロに収束することが望ましい。そのため、期間Ta、Tbが終了した後の時点t2での、ゲート電圧V
GEとゲート電流I
Gを測定し、測定した値を所望の値と比較する。比較結果に基づいて、パルス幅が広すぎるのか狭すぎるのか、言い換えると、期間Ta、Tbが長いのか短いのかを判別する。判別した結果に基づいて、期間Ta、Tbの長さを決定する。
図18に駆動信号のパルス幅を調整する手順の一例を示す。
図18では、パワートランジスタのゲート電圧V
GEの所望の電圧が15Vである場合を一例として示す。例えば、ゲート電圧V
GEが15Vより小さく(V
GE<15V)、かつ、ゲート電流I
Gがゼロより小さい(I
G<0)場合には、期間Taを広げ、期間Tbを狭める。言い換えると期間Taを長くし、期間Tbを短くする。他の値をとるゲート電圧V
GE及びゲート電流I
Gの場合ついても
図18に示す手順によって期間Ta、Tbを調整する。期間Ta、Tbを調整することによって、ゲート電圧V
GEが15Vに、ゲート電流I
Gがゼロに収束するように調整する。
【0054】
例えば、ゲートドライバ100、200の出力端子の電圧・電流を測定し、自動でパルス幅をキャリブレーションする手法をとる。期間Tc、Tdについても、期間Ta、Tbと同様の方法でパルス幅を決定することができる。加えて、時点t2のゲート電圧V
GE及びゲート電流I
Gだけでなく、t0〜t2の間に過渡的にオーバーシュート・アンダーシュートが発生したか否かの情報(測定値)も用いると、キャリブレーションの収束を高速化・高精度化できる。
【0055】
図19は、駆動信号のパルス幅を調整する手順の一例を説明する別の図である。
図19では、
図18と同様に9種類の場合分けをし、ぞれぞれの場合において、ゲートドライバ出力電圧V
OUT、ゲート電流I
G、ゲート電圧V
GEの波形を示す。縦の列は、左から、ゲート電流I
Gがゼロより小さい場合(I
G<0)、ゼロと一致する場合(I
G=0)、ゼロより大きい場合(I
G>0)を示す。横の行は、ゲート電圧V
GEが15Vより小さい場合(V
GE<15V)、ゲート電圧V
GEが15Vと一致する場合(V
GE=15V)、ゲート電圧V
GEが15Vより大きい場合(V
GE>15V)を示す。そして、期間Ta、Tbを調整することにより、中央のゲート電圧V
GEが15V、かつ、ゲート電流I
Gがゼロ(V
GE=15V、I
G=0)に収束させる。期間Tc、Tdについても、期間Ta、Tbと同様に調整が可能である。
図17乃至19を用いて説明した方法により、期間Ta〜Tdを調整することによって、駆動信号の信号レベルを変更する。これにより、駆動信号に形成するパルス幅を適切な長さに調整することができる。
【0056】
図20に、
図17乃至19を用いて説明した期間Ta〜Tdを調整する機能を備える電力制御回路301の一例を示す。
図20の電力制御回路301は、
図9のゲートドライバ200にキャリブレーション機能を追加したゲートドライバ300を備える構成例を示す。
図20のキャリブレーション機能は、期間Ta〜Tdを調整して、駆動信号に形成するパルス幅がゲート電流I
Gをゼロに、ゲート電圧V
GEを所望の電圧に収束させるように機能する。キャリブレーション機能を実現する構成(キャリブレーション部)として、ゲート電圧センサ351、ゲート電流センサ352、及びキャリブレーションブロック353を有する。
ゲート電圧センサ351は、ゲート電圧V
GEを測定するセンサである。
ゲート電流センサ352は、ゲート電流I
Gを測定するセンサである。
キャリブレーションブロック353は、センサが測定したゲート電圧V
GEとゲート電流I
Gとに基づいて、期間Ta〜Tdを調整するブロックである。キャリブレーションブロック353は、
図18,19に示す手法に従って、期間Ta〜Tdを調整する。
タイミング回路221〜224は、遅延が可変の遅延素子から構成され、遅延素子の遅延がキャリブレーションブロック353によって調整される。
【0057】
ゲート電圧V
GEは、パワートランジスタ90のゲート直近からケルビン測定を行うことが好ましい。ゲート電流I
Gは、ゲートドライバ300の出力付近でトランジスタ241またはトランジスタ242のIRドロップの電圧の極性(トランジスタのオン抵抗Rと、トランジスタに流れる電流Iの積で表される電圧の降下または浮き上がり)を測定することで、電流I
Gの向きを知ることができる。例えばトランジスタ241がオン状態でI
Gが正の方向(IGBTのゲートを充電する方向)では、トランジスタ241のIRドロップによってゲートドライバ300の出力V
OUTの電圧は15Vよりも低くなる。逆にトランジスタ241がオン状態でI
Gが負の方向(IGBTのゲートを放電する方向)では、ゲートドライバ300の出力V
OUTの電圧は15Vよりも高くなる。また、ゲート電流I
Gの方向を測定する別の方法として、ゲートドライバ300の出力付近でゲートドライバ300のトランジスタをオフにした直後の電圧の極性を測定することで、電流の向きを知ることができる。ゲートドライバ300のトランジスタをオフにした直後には、寄生インダクタンスによって電流が流れようとするため起電力が発生する。そのため、I
Gが正の方向の場合、出力V
OUTの電圧は−VF(VFはトランジスタ242の寄生ダイオードの順方向降下電圧)、I
Gが負の方向の場合、出力V
OUTの電圧はVCC+VF(VFはトランジスタ241の寄生ダイオードの順方向降下電圧)になる。
キャリブレーション機能を有することにより、ゲートドライバ300は、測定したゲート電圧V
GEとゲート電流I
Gとに基づいて、期間Ta〜Td、言い換えるとパルス幅を適切な値に調整することが可能になる。
【0058】
実施形態3.
ゲート抵抗が無い電力制御回路の場合に発生する、電流スルーレートの制御に関連する第二及び第三の課題を解決するためには、パワートランジスタのゲート電圧のスルーレートを調整する必要がある。
例えば、
図2に示す電力制御回路93では、ゲート抵抗の値を変えることでスルーレートを調整する。一方、一実施形態の電力制御回路では、ゲート抵抗を用いない、または非常に小さい抵抗値のゲート抵抗を用いることを想定している。このため、一実施形態の電力制御回路は、スルーレートを調整するため、ゲート抵抗以外の手段を必要とする。
図21に、一実施形態のゲートドライバの駆動信号とパワートランジスタのゲート電圧のスルーレートとの関係を説明する図を示す。
図21は、ゲート電圧のスルーレートを調整するためのゲートドライバの出力波形を示している一実施形態では、ゲート電圧V
GEを第1のレベルから第2のレベルに遷移させる過程で、所々に第1のレベルのパルスを挿入する。これにより、ゲート電圧のスルーレートの調整が可能となる。ゲート電圧V
GEが所望の第2のレベルに到達した後は、ゲートドライバ出力電圧V
OUTを第2のレベルで固定する。
図21に示すように、駆動信号に挿入するパルス幅及びパルスの数によってゲート電圧のスルーレートを調整する。駆動信号に挿入するパルスの数を増やすことにより、ゲート電圧の立ち上がりを遅くし、スルーレートを小さくする、言い換えるとスルーレートを寝かせる。加えて、第1のレベル(逆極性)のパルス幅を大きくすることによりゲート電圧の立ち上がりを遅くすることもできる。
図21は、パワートランジスタをOFF状態からON状態に切り替えるときの、ゲートドライバ出力電圧V
OUTとパワートランジスタのゲート電圧V
GEとを示す。パワートランジスタをON状態からOFF状態に切り替える場合も
図21と同様に調整することができる。
【0059】
次に、スルーレートの短縮とオーバーシュート防止との関係を、
図22を参照して説明する。
スルーレートを寝かせることで、
図6に示したようなサージ電圧の抑制は可能となる。一方で、スイッチング時間が長くなるためパワートランジスタのスイッチング損失が増えてしまう。そこで、
図22に示すように、サージ電圧が現れる領域の手前まではゲート電圧を高速に充放電し(ゲート電圧のスルーレートを大きくし、大電流とする)、サージ電圧が現れる領域では、ゲート電圧をゆっくりと充放電する(スルーレートを寝かせ、ゲート電流I
Gを抑制する)制御を行う。言い換えると、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEのオーバーシュートと関係ない領域はゲート電圧V
GEのスルーレートを上げてゲート電荷を素早く充放電する。一方、コレクタ−エミッタ間またはドレイン−ソース間の電圧V
CEのオーバーシュートに関わる部分はゲート電圧V
GEのスルーレートを下げる。このように、領域によってゲート電流I
G(dV
GE/dt)の電流スルーレートを制御することで、次の二つの有利な効果を両立させることができる。
(1)スイッチング時間を短くしてスイッチング損失を低減すること、及び、
(2)サージ電圧を抑制してオーバーシュートを小さくし、パワートランジスタへの影響を回避すること。
【0060】
図22には、比較のため、一実施形態の駆動方法に加え、ゲート抵抗が低い場合の駆動方法、及びゲート抵抗が高い場合の駆動方法を示す。一実施形態の駆動方法が領域に応じてゲート電圧のスルーレートを調整可能に働き、スイッチング期間の開始直後から大容量の電流をことに対し、ゲート抵抗が低い場合の駆動方法及びゲート抵抗が高い場合の駆動方法では、ゲート電圧のスルーレートは、ゲート電圧とゲート抵抗との商(V
GE/R
G)にほぼ比例する。その結果、ゲート抵抗が低い場合の駆動方法では、スイッチング時間が短くなり、スイッチング損失が低くなる。一方、オーバーシュートが大きくなり、パワートランジスタへの影響が懸念される。また、ゲート抵抗が高い場合の駆動方法では、スイッチング時間が長くなり、スイッチング損失が大きくなる。一方、オーバーシュートが小さいため、パワートランジスタへの影響がなくなる。
このように、一実施形態のように、ゲート抵抗を用いることなく、スルーレートを領域に応じて調整できないゲートドライバでは、動作の途中でゲート抵抗の値を変えることができない。このため、一実施形態のように、領域によって能動的にゲート電流I
Gを制御するという機能を実現することができない。なお、可変電流制御を行えば実現する可能性があるが、ゲートドライバへの分圧比が大きくなるので熱的な問題から好ましくない。
【0061】
実施形態3で説明した一実施形態の電力制御回路またはゲートドライバの構成例としては、上述した各実施形態の構成、例えば、
図1、7,9に示すゲートドライバを備える電力制御回路が含まれる。これらのいずれかのゲートドライバによって、本実施形態で説明した機能を実現することが可能である。
【0062】
実施形態4.
実施形態4では、実施形態2で説明したパルス幅の調整を容易にする態様を説明する。
実施形態2では、
図17に示すように、駆動信号へ逆極性のパルス(逆パルス)を一つ挿入ことによって、時点t2でゲート電圧V
GEとゲート電流I
Gの両方が同時に所望の値になることを想定している。この手法では、時点t2でゲート電圧V
GEとゲート電流I
Gの両方が同時に所望の値にする合わせ込みに、パルス幅を決定するパラメータを厳密に調整する必要がある。
そこで、本実施形態では、最初の逆極性のパルス挿入が終了する頃までにゲート電圧V
GEとゲート電流I
Gが所望の値に近似するように粗く合わせ込んでおき、残りの期間で小さなゲート電流I
Gによってゲート電圧の収束を図るものである。
【0063】
図23は、より簡易な方法でゲート電圧V
GE、ゲート電流I
Gの収束を図る方法を説明する図である。
図23において、時点t0からの経過時間を示す時間軸を中央に示し、時間軸の上段に実施形態2のパルス幅の調整の手法を、下段に本実施形態のパルス幅の調整の手法を示す。
上段に示す実施形態2のパルス幅の調整では、時点t2で電流をゼロに、ゲート電圧を所望の値(例えば15V)に一致するように、時点t0からt1(第1の期間)及び時点t1からt2(第2の期間)のパルス幅を調整する。パルス幅の調整が適切に実施されない場合には、スイッチング時間の増大、及びゲート電圧のオーバーシュートが発生し、その結果、スイッチング損失の増大とパワートランジスタ90へのストレスの増大につながっていた。
下段に示す本実施形態では、最初の逆極性のパルスの挿入によって、所望の値の近傍まで合わせこみ、その後逆極性のパルスを一つ以上挿入することによって、所望の値に合わせこむ。
図23では、時点t12で電流がゼロ付近、ゲート電圧が15V付近になるように、時点t0からt11(第1の期間)及び時点t11からt12(第2の期間)のパルス幅を調整する。その後、時点t12からt16では、デューティ比が大きいパルスを細かく挿入し、電流がゼロ、ゲート電圧が15Vに収束させる。
【0064】
パワートランジスタ90をON状態からOFF状態に遷移する場合にも、ON状態へ遷移させる同様に駆動信号へ複数のパルスを挿入して電流と電圧とを所望の値に収束させる。ただし、OFF状態へ遷移させる場合には、多少アンダーシュートが発生してもパワートランジスタへの影響は少ない。このため、ON状態へ遷移させる場合に比べて精度が要求されない。
本実施形態は、例えば、
図9、20において、駆動制御部210が有するタイミング回路221〜224の数を増やし、各タイミング回路を構成する遅延素子の遅延量を調整して適切なパルス幅のパルスを駆動回路に形成させる構成により実現することが可能である。
本実施形態のように駆動信号に挿入するパルスの数を調整することで、パルス幅を決定するパラメータのキャリブレーションに要求される精度を緩和することができる。
【0065】
実施形態5.
実施形態5では、ゲート電圧のスルーレートを調整する場合のゲートドライバの構成例を、ゲート抵抗R
Gを用いるゲートドライバと比較して説明する。
図24は、ゲート抵抗R
Gを用いるゲートドライバであって、スルーレートの調整機能を備える構成例を示す図である。ゲートドライバ98は、一実施形態のゲート駆動部40に相当する構成として、PMOSトランジスタSW1、及びNMOSトランジスタSW2〜SW4を備える。
図25は、一実施形態のゲートドライバであって、スルーレートの調整機能を備える構成例を示す図である。ゲートドライバ400は、駆動制御部410とゲート駆動部440とを備える。駆動制御部410は、ゲート電圧のスルーレートを制御する機能として第1乃至第3スルーレート制御部411〜412を少なくとも備える。例えば、第1乃至第3スルーレート制御部411〜412は、駆動信号に形成するパルスの数に応じて遅延素子を備える。ゲート駆動部440は、PMOSトランジスタSW1、及びNMOSトランジスタSW2を備える。
図24、25において、制御信号(ゲート制御信号)はパワートランジスタ90の通常のターンオン、ターンオフを制御する信号である。また、異常検出信号は、異常を検出したことを通知する信号である。制御信号及び異常検出信号は入力端子からゲートドライバ98、400へ入力される。
【0066】
ゲート抵抗R
Gを用いるゲートドライバでは、スルーレート等を変更するために複数のゲート抵抗R
Gを用いる。
図24のゲートドライバ98では、ゲート抵抗R
Gの異なる2〜4系統の回路(トランジスタ)を搭載する。具体的には、5Ωのメインの系統の他に、1Ωより小さい(<1Ω)ゲート抵抗と47Ωのゲート抵抗との2系統を備え、合計3種類の回路を必要とする。メインの系統の回路は、PMOSトランジスタSW1、NMOSトランジスタSW2から構成される。他の二つの系統は、アクティブミラークランプとソフトターンオフとの二つである。アクティブミラークランプは、パワートランジスタ90をオフする時にゲートを0Ωに近いインピーダンスでグランドGNDにクランプして、セルフターンオンを防止するように働く回路であり、NMOSトランジスタSW3から構成される。ソフトターンオフは、高抵抗でdI
CE/dtを抑制し、サージ電圧の発生による破壊を抑えるように働く。ソフトターンオフは、NMOSトランジスタSW4から構成される。コンパレータ99は、パワートランジスタ90がOFF状態に遷移したことを検出する。
【0067】
これに対して、一実施形態のゲートドライバ400は、第1乃至第3スルーレート制御部411〜412によりゲート電圧のスルーレートを制御する構成である。第1乃至第3スルーレート制御部411〜412は、異なるスルーレートを制御するため、挿入するパルス幅、パルスの数が異なる駆動信号を生成するように構成される。例えば、第1乃至第3スルーレート制御部411〜412が有する遅延素子の数、遅延の長さを異なるものにする。駆動信号の第1及び第2のレベルのパルス幅の比(デューティ比)によってゲート電圧が所望の電圧となるように、第1乃至第3スルーレート制御部411〜412は、遅延素子の数が増やされ、各遅延素子の遅延量が調整される。ゲート電圧を所望の電圧に制御できれば、ゲート電圧のスルーレートも調整できる。これにより、所望のパルスが駆動信号に挿入されるように構成する。ゲート電圧のスルーレートの制御については、実施形態3、4で説明した手法を用いることができる。
【0068】
駆動制御部410では、第1スルーレート制御部411は、パワートランジスタ90の通常のターンオンを制御する。そのため、第1スルーレート制御部411は、パワートランジスタ90をON状態への切り替える制御信号を受けると、駆動信号を生成するように構成される。
第2スルーレート制御部412は、パワートランジスタ90の通常のターンオフを制御する。そのため、第2スルーレート制御部412は、パワートランジスタ90をOFF状態への切り替える制御信号を受けると、駆動信号を生成するように構成される。
第3スルーレート制御部413は、異常検出時のソフトターンオフを制御する。そのため、第3スルーレート制御部413は、異常検出信号を受けると、駆動信号を生成するように構成される。
コンパレータ414は、パワートランジスタ90がOFF状態に遷移したことを検出する。
図24、25を参照して説明したように、一実施形態では、ゲート電圧/ゲート電流のスルーレートを制御するような機能を有する場合にも、ゲート抵抗を用いる構成に比べて、トランジスタの数を削減することが可能である。そのため、回路規模を抑制することができる。
【0069】
実施形態6.
実施形態2でパルス幅を調整するキャリブレーションブロックを備えるゲートドライバの一例を説明した。実施形態6では、パルス幅を調整する機能を備えるゲートドライバの他の構成例を説明する。
図26A乃至26Cは、パルス幅を調整する機能を有するゲートドライバから構成される電力制御回路の一例を示す図である。
図26A乃至26Cでは、
図7の電力制御回路101の駆動制御部110の構成を変更した例を示す。そのため、
図7と同じ符号の構成は同様であるため説明を省略する。また、
図26A乃至26Cに示す駆動制御部の構成例は、
図7の電力制御回路101に組み込むだけでなく、
図1、
図9に示すような他の電力制御回路に組み込むことも可能であることは言うまでもない。
【0070】
図26Aでは、ゲートドライバ500Aの駆動制御部510Aは、論理回路511(論理部)とレジスタファイル512(タイミング制御部)とを備える。論理回路511は、制御信号を受け、レジスタファイル512に格納される情報に基づいて、駆動信号に逆極性のパルスを挿入する機能を実現する。例えば、論理回路511は、レジスタファイル512が保持する情報に応じて、期間Ta〜Tdそれぞれの時間の長さを変更できる遅延素子を備える。レジスタファイルは、外部からのプログラム信号によってパルス幅を決定する情報、言い換えると期間Ta〜Tdの時間を決定する情報(例えば、期間Ta〜Tdそれぞれの時間や時間を特定する情報)が書き込まれる。
図26Aでは論理回路511内にレジスタファイル512を有する構成例を示しているが、レジスタファイルの配置場所はこれに限られることなく、レジスタが保持する情報を論理回路511が参照できる配置場所であればよい。
駆動制御部510Aは、レジスタファイル512が保持する情報を書き換えることにより、バルス幅を調整することが可能になる。そのため、ゲートドライバ500Aを利用する外部の装置からバルス幅を適切な長さに調整することが可能になる。
【0071】
図26Bに、ゲートドライバ500Bの駆動制御部510Bは、
図26Aの論理回路511及びレジスタファイル512に加え、ゲート電圧V
GEおよびゲート電流I
Gを測定するセンサ機能と、キャリブレーション回路513とを備える構成例を示す。
センサ機能は、パワートランジスタ90のゲートの近くのゲート電圧V
GEおよびゲート電流I
Gを検出し、ゲート電圧センス信号とゲート電流センス信号をキャリブレーション回路513へ出力する。電圧センサ機能を追加した場合であっても、電圧センサに流れる電流Iまたはその時間微分dI/dtの値が小さいため、寄生抵抗514と寄生インダクタンス515の影響は小さい。
キャリブレーション回路513は、ゲート電圧センス信号とゲート電流センス信号に基づいてパルス幅を調整する。パルス幅の調整は、例えば
図18,19に示す手法を用いてもよい。キャリブレーション回路513は、調整した結果をレジスタファイル512へ書き込む。
論理回路511の動作は
図26Aと同様である。
駆動制御部510Bは、キャリブレーション回路513及びセンサ機能によって、レジスタファイル512が保持する情報を書き換えることにより、バルス幅を調整することが可能になる。そのため、パワートランジスタ90の稼働状況に応じて、パルス幅を調整することができる。この場合には、ゲートドライバ500Bを利用する装置がパルス幅を調整する必要がなくなる。
【0072】
図26Cに、ゲートドライバ500Cの駆動制御部510Cは、
図26Aの論理回路511及びレジスタファイル512に加え、アイソレータ516、コマンドデータ517を有する構成例を示す。駆動制御部510Cは、外部から入力されるコマンド信号に応じてパルス幅を調整する構成例である。駆動制御部510Cは、アイソレータ516を介してコマンド信号を受け、コマンドデータ517に保持する。コマンド信号は、レジスタファイルにパルス幅を決定する情報を設定するレジスタ設定信号とゲートを制御する制御信号とから構成される。コマンド信号は、コマンドや時分割多重などによって、レジスタ設定信号が制御信号に重畳される。
コマンドデータ517は、レジスタ設定信号の情報をレジスタファイルに設定し、制御信号を論理回路511へ出力するように構成される。
論理回路511の動作は
図26Aと同様である。
駆動制御部510Cは、コマンド信号を受け、コマンドデータ517に保持することにより、レジスタファイル512にパルス幅を調整する情報を設定することが可能になる。そのため、ゲートドライバ500Cとは異なる電源ドメインで動作する外部の装置(マイコン等)から入力されるコマンド信号によって、バルス幅を適切な長さに調整することが可能になる。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。