(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6355812
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】乗馬鞍
(51)【国際特許分類】
B68C 1/10 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
B68C1/10
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-238697(P2017-238697)
(22)【出願日】2017年12月13日
【審査請求日】2017年12月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596053426
【氏名又は名称】中野 要一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 要一郎
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−202178(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0175403(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102015007910(DE,A1)
【文献】
実公昭13−006427(JP,Y1)
【文献】
仏国特許出願公開第00321256(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68C 1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬の背に設置して騎乗者が騎乗時に跨る乗馬鞍であって、
骨格をなす鞍骨と、
該鞍骨を覆って騎乗者の騎乗部を形成するシートと、
前記鞍骨又は前記シートに取り付けられて騎乗者の騎乗時の足を保持する鐙と、
を有しており、
前記鞍骨と前記シートの間に、前記シートを弾性力をもって支持する弾性部材を有しており、
騎乗時における騎乗者に対する衝撃を、前記弾性部材で吸収して緩和するように構成されており、
前記鞍骨に対して前記シートの前後方向へのスライド移動を許容するスライド機構を有していることを特徴とする乗馬鞍。
【請求項2】
馬の背に設置して騎乗者が騎乗時に跨る乗馬鞍であって、
骨格をなす鞍骨と、
該鞍骨を覆って騎乗者の騎乗部を形成するシートと、
前記鞍骨又は前記シートに取り付けられて騎乗者の騎乗時の足を保持する鐙と、
を有しており、
前記鞍骨は、馬の背の左右両側を前後方向に延びる一対の側骨部と、該側骨部の前後方向の中間位置で前記側骨部同士を繋ぐ中間骨部とを有しており、
該中間骨部の位置における前記鞍骨と前記シートの間に、前記シートを弾性力をもって支持する弾性部材を有しており、
騎乗時における騎乗者に対する衝撃を、前記弾性部材で吸収して緩和するように構成されていることを特徴とする乗馬鞍。
【請求項3】
前記鞍骨に対して前記シートの前後方向へのスライド移動を許容するスライド機構を有していることを特徴とする請求項2に記載の乗馬鞍。
【請求項4】
前記鞍骨に対して前記シートの左右方向へのスイング移動を許容すると共にスライド移動を規制するスイング機構を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の乗馬鞍。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗馬の際に使用する乗馬鞍
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗馬の際には馬の背に乗馬鞍を設置し、騎乗者はこの乗馬鞍を介して、馬に跨って乗馬を行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−182912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に初心者やまだ慣れていない者等が乗馬を行う際に、従来の乗馬鞍を設置した馬では、馬体の揺れ等により騎乗者が衝撃を受けたときに、上手く対処できずにバランスを崩して正常な騎乗状態を保てなくなることが多く、最悪の場合、落馬して怪我を負う虞もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、初心者やまだ慣れていない者等が乗馬を行う際に、騎乗者が受ける衝撃を緩和してバランス良く正常な騎乗状態を保つことができ、その結果、安全に乗馬を行うことができる乗馬鞍
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、馬の背に設置して騎乗者が騎乗時に跨る乗馬鞍であって、骨格をなす鞍骨と、該鞍骨を覆って騎乗者の騎乗部を形成するシートと、前記鞍骨又は前記シートに取り付けられて騎乗者の騎乗時の足を保持する鐙と、を有しており、前記鞍骨と前記シートの間に、前記シートを弾性力をもって支持する弾性部材を有しており、騎乗時における騎乗者に対する衝撃を、前記弾性部材で吸収して緩和するように構成されて
おり、前記鞍骨に対して前記シートの前後方向へのスライド移動を許容するスライド機構を有している乗馬鞍としたことを特徴する。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、
馬の背に設置して騎乗者が騎乗時に跨る乗馬鞍であって、骨格をなす鞍骨と、該鞍骨を覆って騎乗者の騎乗部を形成するシートと、前記鞍骨又は前記シートに取り付けられて騎乗者の騎乗時の足を保持する鐙と、を有しており、前記鞍骨は、馬の背の左右両側を前後方向に延びる一対の側骨部
と、該側骨部の前後方向の中間位置で前記側骨部同士を繋ぐ中間骨部とを有しており、
該中間骨部の位置における前記鞍骨と前記シートの間に、前記シートを弾性力をもって支持する弾性部材を有しており、騎乗時における騎乗者に対する衝撃を、前記弾性部材で吸収して緩和するように構成されている乗馬鞍としたことを特徴する。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項
2に記載の構成に加え、前記鞍骨に対して前記シートの前後方向へのスライド移動を許容するスライド機構を有している乗馬鞍としたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の構成に加え、前記鞍骨に対して前記シートの左右方向へのスイング移動を許容すると共にスライド移動を規制するスイング機構を有している乗馬鞍としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、鞍骨とシートの間に当該シートを弾性力をもって支持する弾性部材を有しているため、初心者やまだ慣れていない者等が乗馬を行う際に、騎乗時における騎乗者に対する衝撃を弾性部材で吸収して緩和して、バランス良く正常な騎乗状態を保つことができる。その結果、初心者やまだ慣れていない者等であっても、安全に乗馬を行うことができる。
【0012】
また、
この発明によれば、鞍骨における馬の背の左右両側を前後方向に延びる一対の側骨部のそれぞれに弾性部材が複数設けられている
場合には、強い衝撃や複雑な衝撃に対しても対応して衝撃を吸収して緩和することができる。
【0013】
また、
この発明によれば、鞍骨に対してシートの前後方向へのスライド移動を許容するスライド機構を有しているため、特に前後方向の動きに対して、より衝撃を吸収して緩和することができる。
【0014】
また、
この発明によれば、鞍骨に対してシートの左右方向へのスイング移動を許容すると共にスライド移動を規制するスイング機構を有しているため、特に左右方向の動きに対して、より衝撃を吸収して緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係る乗馬鞍を設置した馬に騎乗者が乗馬した状態を示す側面図である。
【
図2】馬の背に同実施の形態に係る乗馬鞍を設置した状態を示す側面図である。
【
図3】同実施の形態に係る乗馬鞍の鞍骨と弾性部材を示す斜視図である。
【
図4】同実施の形態に係る乗馬鞍の鞍骨と弾性部材の変形例を示す斜視図である。
【
図5】同実施の形態に係る乗馬鞍のスライド機構とスイング機構を示す正面図である。
【
図6】同実施の形態に係る乗馬鞍のスライド機構とスイング機構を示す正面図でスイング機構の動きを示す図である。
【
図7】同実施の形態に係る乗馬鞍のスライド機構とスイング機構を示す正面図でスイング機構の
図6とは反対方向への動きを示す図である。
【
図8】同実施の形態に係る乗馬鞍のスライド機構を示す斜視図である。
【
図9】同実施の形態に係る乗馬鞍のスライド機構とスイング機構を示す側面図である。
【
図10】同実施の形態に係る乗馬鞍のシートとスライド機構とスイング機構を示す平面図である。
【
図11】同実施の形態に係る乗馬鞍のスライド機構とスイング機構の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1〜
図10には、この発明の実施の形態を示す。
【0019】
まず、本実施の形態の乗馬鞍10について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0020】
図2に示すように、馬1の背に乗馬鞍10を設置し、当該状態の馬1に騎乗者2が騎乗する。
【0021】
この乗馬鞍10は、
図2及び
図3に示すように、鞍骨20とシート30と鐙40と弾性部材50とを有して構成されている。
【0022】
このうち、鞍骨20は、木、プラスチック、グラスファイバー等の固く、かつ、多少のしなりを生じさせることが可能な材質で構成され、馬の背に沿った形状に形成されている。本実施の形態の鞍骨20は、馬の背の左右両側を前後方向に延びる一対の側骨部21,21と、側骨部21,21同士を前側で馬の背に沿って繋ぐように形成された前骨部22と、側骨部21,21同士を後側で馬の背に沿って繋ぐように形成された後骨部23とを有している。また、本実施の形態では、側骨部21,21同士を前後方向の中間位置で繋ぐ中間骨部24を有している。
【0023】
このような構成の鞍骨20には、乗馬鞍10を馬1に取り付ける腹帯托革80が取り付けられる。この腹帯托革80は、鞍骨20の取付部材25に取り付けられるようになっている。
【0024】
また、鞍骨20には、
図3に示すように、弾性部材50が設置されている。この弾性部材50は、例えばコイルスプリング等で構成されており、この実施の形態では、左右の側骨部21,21にそれぞれ左右対位置に設けられている。また、この実施の形態では、左右の側骨部21,21にそれぞれ2個ずつ配置されている。この弾性部材50は、所定の弾性力を有しており、弾性力によるシート30への付勢でシート30を支持するように構成されている。
【0025】
なお、
図4に示すように、弾性部材50が1つで構成される場合もある。また、弾性部材50の配置位置についても、側骨部21ではなく、他の部位(ここでは中間骨部24)に配置されるようになっていても良い。
【0026】
また、シート30は、
図2に示すように、鞍骨20の上に被せて騎乗者2の騎乗部3を形成するものであり、表面は革等で構成されている。また、内部や裏面にはクッション性を有する部材、例えばウレタン樹脂等を有する構成となっていても良い。また、このシート30の裏面には、弾性部材50が当接して支持可能な剛性を有する部位が設けられている。これにより、シート30に座った騎乗者の重みで、シート30を介して弾性部材50が押圧され、押圧力に抗して下方に縮むようになっている。そして、当該状態の弾性部材50は、馬2等から衝撃が生じたときに、上下方向に力を吸収して逃がし、騎乗者2が衝撃を受けない又は衝撃を緩和した状態にするように構成されている。なお、シート30の前後には、スカート部31が設けており、シート30とl鞍骨20の間の隙間で手を挟まないように当該隙間を埋めるように構成されている。
【0027】
また、シート30には、革や金属等で構成された鐙40が取り付けられている。この鐙40は、騎乗者2の足4を掛けるものである。なお、この実施の形態では、シート30の側方から下方に垂れ下がるように設けられているが、これに限るものではなく、鞍骨20の一部から下方に垂れ下がるように設けられていても良い。
【0028】
また、この実施の形態では、
図5〜
図10に示すように、中間骨部24にスイング機構60とスライド機構70とが配置されるようになっている。
【0029】
このうち、スイング機構60は、馬1に対して騎乗者2が左右方向にスライド移動することを防止しつつ左右にスイングして力を逃がし、安定して騎乗できるようにするものである。このスイング機構60は、
図5に示すように、中間骨部24に2枚の板部材62が上下方向に配置され、その板部材62,62同士の間に所定厚さのシリコン等の弾性体61が配置されている。そして、
図6及び
図7に示すように、馬1が左右方向に移動又は傾いて騎乗者2に左右方向への力が加わったときには、弾性体61の弾性力で左右に傾いてスイングし、力を逃がすように構成されている。
【0030】
また、スライド機構70は、馬1に対して騎乗者2が前後方向にスライド移動して力を逃がし、安定して騎乗できるようにするものである。このスライド機構70は、
図5〜
図10に示すように、スイング機構60の上に配置されており、支柱71の上部の左右にローラ72が配置されており、ローラ72を覆うように前後方向に細長い形状の箱体73が設けられている。そして、
図8に示すように、馬1が前後方向に移動又は傾いて騎乗者2に前後方向への力が加わったときには、ローラ72が箱体73の中で転がって移動し、力を逃がすように構成されている。
【0031】
なお、スイング機構60は、
図11に示す変形例のスイング機構160のように、異なる構成からなっていても良い。
図11のスイング機構160では、弾性体61の代わりに前後方向が軸となる円筒形状の凹部161の内部に円柱部材162が左右に回転可能に配設され、その上にスライド機構70が配置されるようになっている。
【0032】
このような構成の乗馬鞍10によれば、馬1の動きや路面状況によって、騎乗者2が上下方向に衝撃を受けそうなときには、弾性部材50の弾性力によって衝撃を吸収し、左右方向に移動する力が加わったときには、スイング機構60,160によって左右に滑り落ちずにスイングして力を逃がし、前後方向に移動する力が加わったときには、スライド機構70によってシート30がスライドして力を逃がすようになっている。これにより、初心者やまだ慣れていない者が騎乗者2のときでも安定して乗馬を行うことができるものである。
【0033】
以上のように、本実施の形態の乗馬鞍10によれば、鞍骨20とシート30の間に当該シート30を弾性力をもって支持する弾性部材50を有しているため、初心者やまだ慣れていない者等が乗馬を行う際に、騎乗時における騎乗者2に対する衝撃を弾性部材50で吸収して緩和して、バランス良く正常な騎乗状態を保つことができる。その結果、初心者やまだ慣れていない者等であっても、安全に乗馬を行うことができる。
【0034】
また、本実施の形態では、鞍骨20における馬の背の左右両側を前後方向に延びる一対の側骨部21のそれぞれに弾性部材50が複数設けられているため、強い衝撃や複雑な衝撃に対しても対応して衝撃を吸収して緩和することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、鞍骨20に対してシート30の前後方向へのスライド移動を許容するスライド機構70を有しているため、特に前後方向の動きに対して、より衝撃を吸収して緩和することができる。
【0036】
また、本実施の形態では、鞍骨20に対してシート30の左右方向へのスイング移動を許容すると共にスライド移動を規制するスイング機構60を有しているため、特に左右方向の動きに対して、より衝撃を吸収して緩和することができる。
【0037】
なお、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。
【0038】
例えば、前記した実施の形態では、乗馬鞍10自体が弾性部材50を有する構成を例に説明したが、これに限るものではなく、例えば従来の乗馬鞍に被せる乗馬鞍用シート(図示省略)に対して、鞍骨20に弾性力をもって当接する弾性部材50を有する構成を有していても良い。またさらに、この乗馬鞍用シートにスイング機構60,160やスライド機構70を備えていて、下方の乗馬鞍に当接するように構成されていても良い。
【0039】
このような乗馬鞍用シートによれば、乗馬鞍に被せる乗馬鞍用シートが、鞍骨に対して弾性力をもって当接する弾性部材50を有しているため、初心者やまだ慣れていない者等が乗馬を行う際に、騎乗時における騎乗者に対する衝撃を弾性部材で吸収して緩和して、バランス良く正常な騎乗状態を保つことができる。その結果、初心者やまだ慣れていない者等であっても、安全に乗馬を行うことができる。さらに、乗馬鞍に被せるシートであるため、既存の乗馬鞍に被せることで、簡単かつ低コストで騎乗者に対する衝撃を吸収して緩和させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 馬
2 騎乗者
3 騎乗部
4 足
10 乗馬鞍
20 鞍骨
21 側骨部
22 前骨部
23 後骨部
24 中間骨部
25 取付部材
30 シート
40 鐙
50 弾性部材
60,160 スイング機構
61 弾性体
62 板部材
70 スライド機構
71 支柱
72 ローラ
73 箱体
80 腹帯托革
110 乗馬鞍用シート
161 支持部
162 円柱体
【要約】 (修正有)
【課題】初心者やまだ慣れていない者等が乗馬を行う際に、騎乗者が受ける衝撃を緩和してバランス良く正常な騎乗状態を保つことができ、安全に乗馬を行うことができる乗馬鞍及び乗馬鞍に被せて使用する乗馬鞍用シートを提供する。
【解決手段】馬1の背に設置して騎乗者2が騎乗時に跨る乗馬鞍10であって、骨格をなす鞍骨と、鞍骨を覆って騎乗者2の騎乗部3を形成するシート30と、鞍骨又はシート30に取り付けられて騎乗者2の騎乗時の足4を保持する鐙40と、を有しており、鞍骨とシート30の間に、シート30を弾性力をもって支持する弾性部材を有しており、騎乗時における騎乗者2に対する衝撃を、弾性部材で吸収して緩和するように構成されている乗馬鞍10とした。
【選択図】
図1