特許第6355842号(P6355842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6355842マルチドラッグ送達システム及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355842
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】マルチドラッグ送達システム及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20180702BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180702BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180702BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20180702BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180702BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180702BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180702BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61K47/60
   A61K47/42
   A61K47/36
   A61K9/06
   A61K47/34
   A61P9/10
   A61P35/00
   A61P35/02
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-522464(P2017-522464)
(86)(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公表番号】特表2017-522381(P2017-522381A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】US2015039943
(87)【国際公開番号】WO2016007856
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】62/022,683
(32)【優先日】2014年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】シェ、パトリック チ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ペイ−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ロフィラー、スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ビル
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0141105(US,A1)
【文献】 特表2012−505179(JP,A)
【文献】 Soft Matter,2012年,Vol.8 No.12,pp.1-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/60
A61K 9/06
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/42
A61P 9/10
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール化(PEG化)治療剤の複数回投薬を被験体の標的部位に送達するための送達システムであって、
前記PEG化治療剤を前記標的部位に送るための、抗PEG抗体;及び
前記抗PEG抗体及び/又は前記PEG化治療剤を前記標的部位で少なくとも3日間保持するための、ヒドロゲル;
を含み、
前記ヒドロゲルが、ヒアルロナン(HA)又はHAの誘導体、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルジネート、キトサン、フィブリン糊、及び合成生体適合性ポリマーからなる群より選択され、前記抗PEG抗体及び前記ヒドロゲルが前記送達システム中に独立して存在し、前記PEG化治療剤が前記ヒドロゲル上に固定化されていない、送達システム。
【請求項2】
前記合成生体適合性ポリマーが、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリウレタン(PU)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリシアノアクリレート(PCA)、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGCL)、又はポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)(PLCL)である、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記HAが、約20kDa〜2,000kDaの分子量を有する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項4】
前記HAが、約1,500kDaの分子量を有する、請求項3に記載の送達システム。
【請求項5】
前記HAの誘導体が、ヒアルロン酸の部分的エステル又は全エステル、アジピン酸ジヒドラジド修飾ヒアルロナン、ヒアルロナンのアミド、架橋ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の重金属塩、硫酸化ヒアルロン酸、N−硫酸化ヒアルロン酸、アミン修飾ヒアルロン酸、ジアミン修飾ヒアルロン酸又はヒアルロナン複合体のいずれかである、請求項3に記載の送達システム。
【請求項6】
PEG化治療剤の複数回適用を、それを必要とする被験体に投与することを可能にするアジュバントの製造における、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物の使用であって、
前記抗PEG抗体及び前記ヒドロゲルが、前記混合物中に約1:1(v/v)〜約1:100(v/v)の比で独立して存在し、前記ヒドロゲルが、ヒアルロナン(HA)又はHAの誘導体、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルジネート、キトサン、フィブリン糊、及び合成生体適合性ポリマーからなる群より選択され、前記PEG化治療剤が前記ヒドロゲル上に固定化されていない、使用。
【請求項7】
前記合成生体適合性ポリマーが、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリウレタン(PU)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリシアノアクリレート(PCA)、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGCL)、又はポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)(PLCL)である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記抗PEG抗体が、IgM、IgG、ヒト化IgM又はヒト化IgGであり、前記ヒドロゲルが、HA又はHAの誘導体であり、ここで前記HAが、約20kDa〜2,000kDaの分子量を有する、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記HAが約1,500kDaの分子量を有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記抗PEG抗体及び前記HAが、前記混合物中に約1:4(v/v)の比で存在する、請求項6に記載の使用。
【請求項11】
前記HAの誘導体が、ヒアルロン酸の部分的エステル又は全エステル、アジピン酸ジヒドラジド修飾ヒアルロナン、ヒアルロナンのアミド、架橋ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の重金属塩、硫酸化ヒアルロン酸、N−硫酸化ヒアルロン酸、アミン修飾ヒアルロン酸、ジアミン修飾ヒアルロン酸、又はヒアルロナン複合体のいずれかである、請求項6に記載の使用。
【請求項12】
前記PEG化治療剤が、がん又は虚血疾患を処置するのに適している、請求項6に記載の使用。
【請求項13】
前記虚血疾患が、脳卒中、心筋梗塞(MI)又は四肢虚血である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記四肢虚血が、重症四肢虚血、急性四肢虚血又はバージャー病のいずれかである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記がんが、乳がん、子宮頚部がん、卵巣がん、子宮内膜がん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、リンパ腫、神経上皮腫、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、結腸がん、子宮がん、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉由来腫瘍、テラトカルシノーマ、神経芽細胞腫、グリオーマ、グリオブラストーマ、ケラトアカントーマ、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮がん腫、濾胞樹状細胞がん腫、腸がん、筋肉浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮がん腫、脾臓がん、頭頸部がん、胃がん、骨がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、だ液腺がん、子宮肉腫、睾丸のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、骨髄形成異常、ワルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、食道胃がん、卵管がん、腹膜がん、乳頭状漿液性ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質性腫瘍(GIST)、リー・フラウメニ症候群又はフォンヒッペル・リンダウ症候群(VHL)のいずれかである、請求項6に記載の使用。
【請求項16】
前記リンパ系の造血器腫瘍が、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫のいずれかである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記PEG化治療剤が、3回の独立した適用で、各適用を約1週間離して、前記被験体に投与される、請求項6に記載の使用。
【請求項18】
前記PEG化治療剤及び前記混合物が、前記被験体の異なる部位に投与される、請求項6に記載の使用。
【請求項19】
各適用で投与される前記PEG化治療剤が異なる、請求項6に記載の使用。
【請求項20】
各適用で投与される前記PEG化治療剤が同一である、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 本発明の分野
【0002】
本開示は、マルチドラッグ送達システム及び疾患を処置するためのその使用に関する。具体的には、本開示は、がん及び血管疾患を含むがこれらに限定されない疾患を処置するために、被験体にPEG化薬を複数回送達させることにおける、抗ポリエチレングリコール(PEG)抗体及びヒドロゲルの新規の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
【0004】
PEG化治療剤(すなわち、ポリエチレングリコール(PEG)と、化合物、ペプチド又はタンパク質などの治療薬剤との結合体)は、薬物投与システムの新たな方法となってきており、それが提供することのできる様々な有利な特徴の中でも、それが二重特異性抗PEG抗体と共に使用された場合の、部位特異的ターゲティングが、おそらく最もユニークな特徴である。例えば、がん処置レジメンの場合、PEG化ナノ粒子(例えば、ドキソルビシンリポソーム)を二重特異性抗体(BsAb)(BsAbの一方の端部はPEG分子の骨格を認識し、BsAbのもう一方の端部は腫瘍細胞上の受容体部分を認識する)と共に注射し、BsAbの作用を介してPEG化ナノ粒子を腫瘍細胞へ送らせる。しかしながら、抗PEG抗体は投与後に迅速に血液循環から除去され、それによりPEG化治療剤が提供できたであろう治療効果が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の観点から、本技術分野において、PEG化薬をその処置部位に送り続けることができ、PEG化薬の複数回適用をそこに送達することを可能にし、それによりPEG化薬により与えられる治療効果が改善又は強化されるように、被験体中での抗PEG抗体の寿命が延長される薬剤及び送達システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、少なくとも部分的に、ヒアルロナン(HA)などのヒドロゲルが、抗PEG抗体及び/又はPEG化治療剤を被験体の標的部位で保持するのを助け、それによりPEG化治療剤の複数回投薬を、それを必要とする被検体に投与することができる、という予期せぬ発見に基づく。本研究において、マウス後肢虚血モデルシステムを使用して、がん又は血管虚血の処置のための、抗PEG抗体及び/又はPEG化治療剤の被験体中での保持におけるヒドロゲルの効果を調べた。本発明に係る結果は、ゲル様構造を形成することのできるヒドロゲル又は化合物を、抗PEG抗体と共に、PEG化治療剤(例えば、PEG化抗虚血性薬剤)に対するアジュバントとして、それを必要とする被験体を処置するために、使用することができることを示唆している。
【0007】
したがって、本開示の第一の態様は、PEG化治療剤の複数回投薬を被験体の標的部位に送達するための送達システムを提供する。この送達システムは、PEG化治療剤を標的部位に送るための抗PEG抗体、及び抗PEG抗体及び/又はPEG化治療剤を標的部位で少なくとも3日間保持するためのヒドロゲルを含み、ヒドロゲルは、ヒアルロナン(HA)又はHAの誘導体、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルジネート、キトサン、フィブリン糊、及び合成生体適合性ポリマーからなる群より選択される。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、合成生体適合性ポリマーは、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリウレタン(PU)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリシアノアクリレート(PCA)、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGCL)、又はポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)(PLCL)であってよい。
【0009】
他の実施形態によれば、ヒドロゲルはHA又はHAの誘導体であり、ここでHAは、約20kDa〜2,000kDa、好ましくは約1,500kDaの分子量を有する。
【0010】
さらなる実施形態によれば、HAの誘導体は、ヒアルロン酸の部分的エステル又は全エステル、アジピン酸ジヒドラジド修飾ヒアルロナン、ヒアルロナンのアミド、架橋ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の重金属塩、硫酸化ヒアルロン酸、N−硫酸化ヒアルロン酸、アミン修飾ヒアルロン酸、ジアミン修飾ヒアルロン酸又はヒアルロナン複合体のいずれかであってよい。
【0011】
本開示の第二の態様は、PEG化治療剤を、それを必要とする被験体の標的部位に投与する方法を提供する。この方法は、被験体に、PEG化治療剤を投与する前、投与するのと同時、又は投与した後に、十分量の抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物を投与するステップを含み、ここでヒドロゲルは、ヒアルロナン(HA)又はHAの誘導体、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルジネート、キトサン、フィブリン糊、及び合成生体適合性ポリマーからなる群より選択され、抗PEG抗体及びヒドロゲルは、混合物中に約1:1〜1:100(v/v)の比で存在し、PEG化治療剤の少なくとも2回の適用は、各適用を約1時間〜1週間離して、被験体に投与される。
【0012】
本開示の実施形態によれば、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、PEG化治療剤の部位とは異なる部位に投与される。いくつかの例において、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、意図される標的部位(例えば、腫瘍又は虚血領域)に投与され、一方でPEG化治療剤は、意図される標的部位から遠位の別の部位から、例えば四肢上の部位から、投与される。さらに、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は直接筋肉内注射により被験体に投与することができ、一方でPEG化治療剤は静脈内注射により被験体に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、PEG化治療剤の少なくとも2回の適用が、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物の投与の後に、被験体に投与される。他の実施態様において、PEG化治療剤の少なくとも3回の適用が被験体に投与される。
【0014】
抗PEG抗体は、IgG又はIgMであってよく、好ましくは、ヒト化IgG又はIgMであってよい。本開示のある実施形態によれば、抗PEG抗体はIgMであり、ヒドロゲルはHA又はHAの誘導体であり、ここでHAは、約20kDa〜2,000kDa、より好ましくは、約50kDa〜1,800kDa、最も好ましくは、約1,500kDaの分子量を有する。他の実施形態によれば、抗PEG抗体はIgGであり、ヒドロゲルはHA又はHAの誘導体であり、ここでHAは約20kDa〜2,000kDa、より好ましくは、約50kDa〜1,800kDa、最も好ましくは、約1,500kDaの分子量を有する。HAの誘導体は、ヒアルロン酸の部分的エステル又は全エステル、アジピン酸ジヒドラジド修飾ヒアルロナン、ヒアルロナンのアミド、架橋ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の重金属塩、硫酸化ヒアルロン酸、N−硫酸化ヒアルロン酸、アミン修飾ヒアルロン酸、ジアミン修飾ヒアルロン酸のいずれかであってよい。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、抗PEG抗体及びHA又はその誘導体は、混合物中に約1:3(v/v)〜約1:5(v/v)の比で存在する。いくつかの実施形態において、抗PEG抗体及びHA又はその誘導体は、混合物中に約1:3(v/v)の比で存在する。ある実施形態において、抗PEG抗体及びHA又はその誘導体は、混合物中に約1:4(v/v)の比で存在する。さらに別の実施形態において、抗PEG抗体及びHA又はその誘導体は、混合物中に約1:5(v/v)の比で存在する。
【0016】
PEG化治療剤は、任意のPEG化医薬品であってよく、好ましくはがん又は虚血疾患(これは、脳卒中、心筋梗塞(MI)又は四肢虚血を含むがこれらに限定されない)を処置するのに適したPEG化医薬品であってよい。四肢虚血は、慢性四肢虚血、急性又は慢性四肢虚血又はバージャー病(BD)のいずれかであってよい。
【0017】
したがって、本開示の第三の態様は結果として、がん又は虚血疾患を患う被験体の処置のための、PEG化治療剤に対するアジュバントを製造するための、上述の混合物(すなわち、抗PEG抗体及びヒドロゲル)の使用を提供する。
【0018】
PEG化治療剤をその処置部位に、例えば被験体中の腫瘍又は虚血性が位置する部位などに、送るのを助けるために、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物を、PEG化治療剤の投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に、被験体に投与してよい。
【0019】
本開示の実施形態によれば、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、PEG化治療剤の部位とは異なる部位に投与される。いくつかの例において、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、意図される標的部位(例えば、腫瘍又は虚血領域)に投与され、一方でPEG化治療剤は、意図される標的部位から遠位の別の部位から、例えば四肢上の部位などから投与される。さらに、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、直接筋肉内注射により被検体に投与してよく、一方でPEG化治療剤は静脈内注射により被検体に投与される。
【0020】
PEG化治療剤は好ましくは、少なくとも2回の独立した投薬、例えば2、3、4又は5回の投薬で投与され、各投薬は約1時間〜1週間離して、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間離して、又は2、3、4、5、6、又は7日間離して、投与される。いくつかの例において、PEG化治療剤は3回の独立した投薬で、各投薬を8時間離して、投与される。他の例において、PEG化治療剤は、3回の独立した投薬で、各投薬を約1週間離して投与される。いくつかの実施形態によれば、各投薬で投与されるPEG化治療剤は、同一又は異なるPEG化治療剤であってよい。
【0021】
被験体は、ほ乳類、好ましくはヒトであってよい。がんは、乳がん、子宮頚部がん、卵巣がん、子宮内膜がん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、リンパ腫、神経上皮腫、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、結腸がん、子宮がん、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉由来腫瘍、テラトカルシノーマ、神経芽細胞腫、グリオーマ、グリオブラストーマ、ケラトアカントーマ、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮がん腫、濾胞樹状細胞がん腫、腸がん、筋肉浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮がん腫、脾臓がん、頭頸部がん、胃がん、骨がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、だ液腺がん、子宮肉腫、睾丸のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、骨髄形成異常、ワルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌がん、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、食道胃、卵管がん、腹膜がん、乳頭状漿液性ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質性腫瘍(GIST)、リー・フラウメニ症候群又はフォンヒッペル・リンダウ症候群(VHL)のいずれかであってよい。
【0022】
リンパ系の造血器腫瘍は、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫のいずれかであってよい。骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病(AML)又は慢性骨髄性白血病(CML)であってよい。間葉由来腫瘍は、線維肉腫又は横紋筋肉腫である。
【0023】
虚血疾患は、脳卒中、心筋梗塞(MI)、又は四肢虚血であってよい。四肢虚血は、慢性四肢虚血、急性又は慢性四肢虚血又はバージャー病(BD)のいずれかであってよい。
【0024】
したがって、本開示の第四の態様は、がん又は虚血疾患に関連する1又は複数の症候を改善するために、被験体に、十分量の上述の抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物を、有効量のPEG化治療剤と共に投与することによる、がん又は虚血疾患を患う被験体を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、有効量のPEG化治療剤は、2回の独立した投薬で投与される。他の実施態様において、有効量のPEG化治療剤は、3回の独立した投薬で投与される。
【0025】
本発明の1又は複数の実施形態の詳細は、以下の付随の説明に記載されている。本発明の他の特徴及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本説明は、以下の詳細な説明を添付の図面に照らして読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【0027】
図1】抗PEG抗体、AGP4は、PEG化化合物に特異的に結合する。(A)AGP4抗体がコーティングされたウェルに対するPEG化化合物の結合プロファイル。(B)PEG−Qd800のIgMに対する結合、及びLipo−DOXのAGP4に対する結合と比較したときの、PEG−Qd800のAGP4に対する結合効率。(**P<0.005、***P<0.001、対正常IgM処置)
【0028】
図2】インビボマウスモデルにおけるPEG−Qd800のターゲティングプロファイル。(A)皮下及び静脈内注射が行われる位置を図示する模式図。(B)HA/AGP4の蛍光シグナル及び(C)PEG−Qd800の蛍光シグナルを定量化した。HA/AGP4及びPEG−Qd800両方の1回投与後、1日目、4日目及び7日目で、器官を取り除き、(D)蛍光強度測定に供した。(E)HA/AGP4又はHA単独のearモデルへの1回皮下投与及びPEG−Qd655の1回静脈内注射の後、1.5及び4時間で、生体内画像を記録した。(F)PEG−Qd655の蛍光強度を定量化した。(*P<0.01、**P<0.005、***P<0.001、対HA単独処置)
【0029】
図3】PEG−Qd800の複数回投与の蛍光分析。(A)筋肉内及び静脈内注射が行われる位置を示す模式図。右脚筋肉のみにHA/AGP4を注射した(AGP4_脚)ときの、両脚から単離した筋肉組織中のHA/AGP4及びPEG−Qd800の蛍光シグナル。この結果を、(B)に示されるように定量化フォーマットで表した。異なる器官におけるPEG−Qd800の定量化結果を(C)に示した。PEG−Qd800(赤)の異なる回数の注射7日後の(D)免疫蛍光染色結果及び(E)PEG−Qd800の蛍光強度の定量化。骨格筋線維をトロポミオシン(緑)によりラベルし、核をDAPI(青)で染色した。スケールバー:20μm。(***P<0.001、対1回注射又は対正常脚)
【0030】
図4】虚血性マウスモデルにおける、PEG化IGF−1(PEG−IGF−1)の再補充多回注射に関する治療的利益の分析。(A)注射する時点及び位置を示す模式図。HLI手術の後に続く、HA単独+PEG化IGF−1、HA/AGP4+PBS又はHA/AGP4+PEG化IGF−1の処置の、(B)免疫蛍光染色結果及び(C)定量化。アポトーシス細胞をTUNEL染色(赤)により染色し、膜レクチンをWGA(緑)でラベルし、及び核をDAPI(青)で染色した。(*P<0.01;**P<0.005;***P<0.001、対HA単独+PEG化IGF−1又はHA/AGP4+PBS)
【0031】
図5】虚血性マウスモデルにおける、PEG化G−CSF(PEG−G−CSF)の再補充多回注射に関する治療的利益の分析。
【0032】
(A)注射する時点及び位置を示す模式図。HLI手術の後に続く、HA/AGP4に続くPEG化G−CSF、又はHA/AGP4に続くPBS、又はHA単独に続くPEG化G−CSFの処置の、(B)免疫蛍光染色結果及び(C)定量化。リクルートメントされた細胞を抗CD34(赤)及び抗CD133(緑)でラベルし、核をDAPI(青)で染色した。(*P<0.01;**P<0.005;***P<0.001、対HA単独+PEG化G−CSF、HA/AGP4+PBS)
【0033】
図6】併用療法の治療効能の改善。(A)注射する時点及び位置を示す模式図。(B)各実験群において、0、1、3、7、14、21、及び28日目での血流を、レーザードップラー流量計により測定した。(C)後肢虚血の誘導後3〜28日目のマウスの臨床スコア。(D)HLI手術の後に続く、併用療法又はPBSの処置の免疫蛍光染色結果。毛細血管を抗イソレクチン(赤)でラベルし、骨格筋を抗トロポミオシン(緑)でラベルし、核をDAPI(青)で染色した。(E)傷害周辺領域における毛細血管密度の定量化。(*P<0.01;**P<0.005;***P<0.001、対PBS処置)
【発明を実施するための形態】
【0034】
説明
添付の図面に関連して下に提供される詳細な説明は、本例の説明として意図されており、本例を構築又は利用できる唯一の形態を表すことは意図されない。この説明は、本例の機能及び本例を構築及び動作させるための一連のステップを示している。しかしながら、同一又は同等の機能及び一連のステップを、異なる例により達成することができる。
【0035】
1. 定義
【0036】
便宜上、本開示の文脈で使用されるある特定の用語がここに集められる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0037】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示物を含むものとして用いられる。
【0038】
本明細書で用いられる用語「処置」は、所望の薬理的及び/又は生理的効果を得ること、例えば、がん増殖を抑制すること又は器官(例えば、心臓)に対する虚血性傷害を改善すること、を意味することを意図する。効果は、疾患又はその症候を完全に又は部分的に妨げるという点で予防的であってよく、及び/又は疾患及び/又は疾患に起因する有害効果の部分的又は完全な治癒という点で治療的であってよい。本明細書で用いられる「処置」は、ほ乳類、特にヒトにおける疾患の、防止的(例えば、予防的)、治癒的又は緩和的処置を含み、(1)疾患にかかりやすい可能性があるが、それにかかっているとはまだ診断されていない個人における発症からの、疾患又は状態(例えば、がん又は虚血疾患)の、防止的(例えば、予防的)、治癒的又は緩和的処置;(2)疾患を(例えば、その進行を停止することにより)抑制すること;又は(3)疾患を緩和すること(例えば、疾患に関連する症候を低減すること)を含む。
【0039】
本明細書で用いられる用語「PEG化」化合物、治療剤及び/又は薬は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーの長い鎖が取り付けられた化合物、治療剤及び/又は薬を指す。PEG化化合物、治療剤及び/又は薬は典型的には、ペプチド、タンパク質、抗体、ナノ粒子(例えば、リポソーム)などである。
【0040】
本明細書で用いられる用語「抗PEG抗体」は、ポリエチレングリコール(PEG)分子に対し作られる抗体、特にモノクローナル抗体を指し、この抗体がPEG骨格の繰り返しサブユニットに結合できて、それ故にPEG化化合物(例えば、PEG化抗がん剤又はPEG化抗虚血性薬)の定量化を助けることができることを意味する。本開示の抗PEG抗体は、IgG又はIgMであってよく、好ましくはヒト化IgG又はIgMである。本開示の抗PEG抗体は、任意の既知の方法、好ましくは、Suらにより以前に説明された手順(Bioconjugate Chemistry (2010) 21、1264−1270)により、作製してよい。
【0041】
用語「投与された(administered)」、「投与する(administering)」又は「投与(administration)」は本明細書中で互いに交換可能に使用され、経口、鼻、肺、経皮(受動的又はイオントフォレーシス送達など)、又は非経口(例えば、直腸、デポ、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、小脳内、点眼液又は軟膏)が含まれるがこれらに限定されない送達の様式を指す。本開示の一つの実施形態において、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、直接筋肉内注射により被験体に投与され、一方でPEG化薬は、直接静脈内注射により被験体に投与される。
【0042】
本明細書で用いられる用語「有効量」は、投薬時、及び必要な時間の間、疾患の処置について所望の結果を達成するのに有効な量を指す。例えば、がんの処置において、がんの任意の症候を減少させる、妨げる、遅延させる又は抑制する又は停止させる薬剤(すなわち、化合物又は組成物)が有効となるだろう。有効量の薬剤は、疾患又は状態を治癒するために必要とされるものではないが、疾患又は状態の発現を遅延させ、妨害し又は妨げる、又は疾患又は状態の症候が改善されるような、疾患又は状態の処置を提供するだろう。有効量は、1、2又はそれ以上の投薬量に適切な形で分け、指定された時間にわたり、1回、2回又はそれ以上の回数で投与してよい。
【0043】
本明細書で用いられる用語「十分量」は、それが十分な時間の間続けて存在し、処置レジメンの活性薬剤(例えば、PEG化医薬品)を、その標的部位又は被験体の処置を必要とする部位(例えば、腫瘍部位又は虚血領域)へ送るのを助けるような、投薬時、及び必要な時間の間、処置レジメンの成分(例えば、抗PEG抗体)のインビボ寿命を延長することについて所望の結果を達成するのに十分な量を指す。好ましい例において、十分量の抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、PEG化医薬品(例えば、PEG化抗がん剤又はPEG化抗虚血薬)により処置可能な疾患(例えば、がん又は虚血疾患)を患う被験体に投与され、ここで抗PEG抗体は、単回の注射の後に少なくとも3日間被験体中に存在し続けた。
【0044】
本明細書で用いられる用語「アジュバント」は、それだけでは治療効果を生じないが、治療薬剤を、被験体の、その意図される標的部位又は処置部位(例えば、虚血領域又は腫瘍)に送るのを助ける薬剤を指す。本開示の好ましい実施形態によれば、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、PEG化医薬品(例えば、PEG化抗がん剤又はPEG化抗虚血性薬)に対する、それを必要とする被験体を処置するための、アジュバントとしての役割を果たす。
【0045】
用語「被験体」又は「患者」は、本発明の方法で処置可能な、ヒト種を含む動物を指す。用語「被験体」又は「患者」は、1つの性別が具体的に示されない限り、オス及びメスの両方の性別を指すと意図される。したがって、用語「被験体」又は「患者」は、本開示の処置方法から利益を得る可能性のある任意のほ乳類を含む。
【0046】
本明細書で用いられる用語「がん」は、任意の細胞悪性腫瘍を意味すると意図される。この細胞悪性腫瘍のユニークな特質は、未制御の増殖を引き起こす正常な制御の損失、分化の欠如及び局部組織に侵入し転移する能力である。がんは、任意の器官又は組織で進行することができ、乳がん、子宮頚部がん、卵巣がん、子宮内膜がん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、リンパ腫、神経上皮腫、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、結腸がん、子宮がん、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉由来腫瘍、テラトカルシノーマ、神経芽細胞腫、グリオーマ、グリオブラストーマ、ケラトアカントーマ、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮がん腫、濾胞樹状細胞がん腫、腸がん、筋肉浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮がん腫、脾臓がん、頭頸部がん、胃がん、骨がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、だ液腺がん、子宮肉腫、睾丸のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、骨髄形成異常、ワルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌がん、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、食道胃、卵管がん、腹膜がん、乳頭状漿液性ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質性腫瘍(GIST)、リー・フラウメニ症候群又はフォンヒッペル・リンダウ症候群(VHL)のいずれかであってよい。リンパ系の造血器腫瘍は、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫のいずれかであってよい。骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病(AML)又は慢性骨髄性白血病(CML)であってよい。間葉由来腫瘍は、線維肉腫又は横紋筋肉腫である。
【0047】
本明細書で用いられる用語「虚血性疾患」は、動脈の閉塞に通常起因する、心臓、四肢又は脳などの領域の血液供給の減少により特徴づけられる状態を意味すると意図される。典型的な虚血性疾患としては、脳卒中、心筋梗塞(MI)及び四肢虚血があるがこれらに限定されない。用語「四肢虚血」は、被験体の四肢の血流に影響を及ぼす状態を指し、これには慢性四肢虚血(CLI)(これは重症四肢虚血へ進行し、遠位の四肢を切断の危険にさらす)、及び急性四肢虚血(これは組織を数時間内に損傷する血流の急速な損失を伴う)などがある。重症四肢虚血はしばしば糖尿病に関連し、血管系の障害及び組織損傷の悪化を引き起こす。別個の慢性状態、バージャー病(BD)は手足への血流を障害し、指及び足指の損失を引き起こすだろう。CLI又はBDなどの四肢虚血は一般に、非外傷性切断の結果として、罹患四肢の損失を引き起こす可能性のある、四肢及び手足における創傷治癒の悪さ、潰瘍及び組織壊死を引き起こす。
【0048】
2. 好ましい実施形態の詳細な説明
【0049】
本開示は、少なくとも部分的に、ヒドロゲルが抗ポリエチレングリコール(PEG)抗体及び/又はPEG化治療剤を被験体の標的部位に少なくとも3日間保持することができ、それによりPEG化治療剤の複数回適用を、それを必要とする被験体に投与することを可能にする、という予期せぬ発見に基づく。被験体における抗PEG抗体の継続的な存在は、PEG化治療剤の複数回投薬を被験体に適用することを可能にするだけでなく、PEG化治療剤をその標的部位(すなわち、処置を必要とする部位)に送るのを助け、結果として、従来の処置レジメンにおけるPEG化治療剤の単回の適用と比べて治療効果の改善が達成される。
【0050】
したがって、本開示の一つの態様は、PEG化治療剤をそれを必要とする被験体に投与する方法を提供する。この方法は、被験体に、PEG化治療剤を投与する前、投与するのと同時、又は投与した後に、十分量の抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物を投与するステップを含み、ここで抗PEG抗体及びヒドロゲルは、混合物中に約1:1〜1:100(v/v)の比で存在し、ヒドロゲルは、ヒアルロナン(HA)又はHAの誘導体、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルジネート、キトサン、フィブリノーゲンとトロンビンで作られているフィブリン糊、及び合成生体適合性ポリマーからなる群より選択され、PEG化治療剤の少なくとも2回の適用は、各適用を約1時間〜1週間離して被験体に投与される。
【0051】
好ましい実施形態によれば、ヒドロゲルは、HA又はHAの誘導体などの、天然起源のものである。HAはヒアルロン酸としても知られ、N−アセチルグルコサミン及びD−グルクロン酸の繰り返し二糖単位から成る、アニオン性、非硫酸化グリコサミノグリカンである。HAは細胞外マトリクスの必須成分であり、免疫中立性多糖であると考えられている。したがって、HAは数十年間、生物医学的用途において幅広く使用されてきた。様々な数の二糖類サブユニットは、20kDa〜2,000kDa、好ましくは、50kDa〜1,800kDa、より好ましくは100kDa〜1,700kDaの、様々な分子量のHAをもたらす。本開示の一つの好ましい実施形態において、HA又はその誘導体は、約1,500kDaの分子量を有する。
【0052】
ヒアルロン酸の誘導体としては、ヒアルロン酸の部分的エステル又は全エステル、アジピン酸ジヒドラジド修飾ヒアルロナン、ヒアルロナンのアミド、架橋ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の重金属塩、硫酸化ヒアルロン酸、N−硫酸化ヒアルロン酸、アミン修飾ヒアルロン酸、ジアミン修飾ヒアルロン酸、及びヒアルロナン複合体(ヒアルロナンと絹の複合体、及び他の天然又は合成材料で架橋されたヒアルロン酸など)があるがこれらに限定されない。ヒアルロン酸の誘導体は、ヒアルロン酸の1又は複数の官能基(例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基、還元末端基、N−アセチル基)を化学的に修飾することにより及び/又は本技術分野において既知の方法を使用してヒアルロナンを他の分子で架橋することにより、得ることができる。
【0053】
いくつかの例において、ヒドロゲルはフィブリン糊であり、これはフィブリノーゲンとトロンビンで作られ、ここでトロンビンは比較的短い時間で(例えば、10〜60秒間で)フィブリノーゲンをフィブリンモノマーに変換し、それにより三次元ゲル様構造を生じることが知られている。
【0054】
他の実施形態によれば、ヒドロゲルは合成生体適合性ポリマーなどの合成起源のものであり、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリウレタン(PU)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリシアノアクリレート(PCA)、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGCL)、及びポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)(PLCL)からなる群より選択してよい。
【0055】
ヒドロゲルは、抗PEG抗体が迅速に代謝されるのを妨げることにより、被験体における抗PEG抗体の循環を延長するのを助けることができ、それ故に抗PEG抗体及び次いでPEG化薬を、処置部位に、より長い期間保持することができる。本開示の実施形態によれば、抗PEG抗体は、ヒドロゲル(HAなど)のゲル様構造内に封入され、それ故に、被験体における抗PEG抗体の寿命を少なくとも3日間に、例えば3、4、5、6又は7日間に延長する。被験体における抗PEG抗体の存在の延長に起因して、PEG化薬の、単回の投薬ではなく、複数回投薬(例えば、2、3、4、5又は6回投薬)を、被験体に投与し、それにより被験体において治療効果の改善をもたらすことができる。いくつかの例において、PEG化薬の少なくとも2回の投薬が投与される。他の例において、PEG化薬の少なくとも3回の投薬が投与される。PEG化薬の各投薬は、約1時間〜1週間離して、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24時間離して、又は2、3、4、5、6、又は7日間離して、投与される。いくつかの実施形態によれば、PEG化薬の各投薬は、約4時間離して、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24時間離して、又は2、3、4、5、6、又は7日間離して、投与される。他の実施形態によれば、より好ましくは、PEG化薬の各投薬は、約8時間離して、例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24時間離して、又は2、3、4、5、6、又は7日間離して投与される。さらなる実施形態によれば、PEG化薬の各投薬は、約7日間離して、例えば7、8、9、10、11又は12日間離して投与される。
【0056】
抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、抗PEG抗体及びヒドロゲルを、約1:1〜1:100(v/v)、例えば約1:1〜1:50(v/v)、又は1:1〜1:20(v/v)の比で混合することにより調製する。好ましくは、抗PEG抗体及びヒドロゲルは、約1:3(v/v)〜約1:5(v/v)、例えば約1:3(v/v)、約1:4(v/v)、又は約1:5(v/v)の比で混合される。より好ましくは、抗PEG抗体及びヒドロゲルは、約1:4(v/v)の比で混合される。一般に、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、PEG化薬に対するアジュバントとして使用される。これは、混合物はそれだけでは疾患の処置についてなんら治療効果を生じないが、PEG化薬を被験体内のその標的部位へ保持する及び/又は送るのを助けるものである、ということを意味する。
【0057】
したがって、混合物は任意のPEG化薬と共に使用することができ、PEG化薬としては、Pegasys(慢性肝炎C又はBの処置用のPEG化インターフェロンアルファ2A)、Peginsatide(透析を受けている成人患者における、慢性腎臓疾患に関連する貧血の処置用のPEG化薬)、Pegloticase(痛風の処置用のPEG化ウリカーゼ)、Certolizumab pegol(中等度から重度のリウマチ性関節炎、クローン病、又は炎症性胃腸疾患の処置用のPEG化モノクローナル抗体)、メトキシPEG−エポエチンベータ(慢性腎臓疾患に関連する貧血の処置用のPEG化エリスロポエチン)、Pegaptanib(新生血管加齢性黄斑変性の処置用)、Pegfilgrastim又はNeulasta(重度のがん化学療法により誘発される好中球減少症の処置用のPEG化組換えメチオニルヒト顆粒球コロニー刺激因子)、Pegvisomate(先端巨大症の処置用のPEG−ヒト増殖ホルモンムテインアンタゴニスト)、ドキソルビシンリポソーム(がんの処置用のドキソルビシン含有PEG化リポソーム)、Pegasparqase(急性リンパ芽球性白血病の処置用のPEG化L−アスパラギナーゼ)、ウシPegademase(重度の複合免疫不全症(DSID)の処置用のPEG化アデノシンデアミナーゼ);及びPEG化メカノ増殖因子(PEG−MGF)及びPEG化顆粒球コロニー刺激因子(PEG−G−CSF)などのPEG化抗虚血薬剤があるがこれらに限定されない。一つの好ましい実施形態において、PEG化薬はPEG化ドキソルビシンリポソームである。別の好ましい実施形態において、PEG化薬はPEG−MGF及びPEG−G−CSFの組み合わせである。
【0058】
本開示の実施形態によれば、被験体に各適用で投与されるPEG化薬は、同一又は異なる治療剤である。さらに、PEG化薬並びに抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、異なる部位に異なる経路を介して、それぞれ投与される。一つの例において、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物は、虚血領域(例えば、心筋梗塞部位)に筋肉内注射により直接投与され、一方でPEG化薬は、四肢(すなわち、腕又は脚)上の部位から静脈内に投与される。
【0059】
具体的には、本開示は虚血疾患を患う被験体を処置する方法を提供する。この方法は、虚血疾患に関連する1又は複数の症候を改善するために、被験体に、十分量の本発明の混合物、及び少なくとも2回の独立した投薬で与えられ、各投薬が少なくとも8〜24時間離して与えられる、虚血疾患を処置するための有効量のPEG化医薬品(例えば、PEG化抗虚血薬剤)を、投与することを含む。
【0060】
被験体は、ほ乳類、好ましくはヒトであってよく、虚血疾患は、脳卒中、心筋梗塞(MI)又は四肢虚血であってよい。一つの実施形態において、処置される虚血疾患はMIである。別の実施形態において、処置される虚血疾患は四肢虚血であり、この四肢虚血は、重症四肢虚血、急性四肢虚血又はバージャー病のいずれかであってよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、PEG化抗虚血薬剤は2回の独立した適用で投与される。他の実施態様において、PEG化抗虚血薬剤は3回の独立した適用で投与される。
【0062】
本開示はまた、がんを患う被験体を処置する方法を包含する。この方法は、がんに関連する1又は複数の症候を改善するために、被験体に、十分量の本発明の混合物、及び少なくとも2回の独立した投薬で与えられ、各投薬が少なくとも1週間離して与えられる、有効量のPEG化抗がん剤を投与することを含む。
【0063】
被験体は、ほ乳類、好ましくはヒトであってよく、がんは、乳がん、子宮頚部がん、卵巣がん、子宮内膜がん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、リンパ腫、神経上皮腫、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、結腸がん、子宮がん、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉由来腫瘍、テラトカルシノーマ、神経芽細胞腫、グリオーマ、グリオブラストーマ、ケラトアカントーマ、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮がん腫、濾胞樹状細胞がん腫、腸がん、筋肉浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮がん腫、脾臓がん、頭頸部がん、胃がん、骨がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、だ液腺がん、子宮肉腫、睾丸のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、骨髄形成異常、ワルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌がん、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、食道胃、卵管がん、腹膜がん、乳頭状漿液性ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質性腫瘍(GIST)、リー・フラウメニ症候群又はフォンヒッペル・リンダウ症候群(VHL)のいずれかであってよい。
【0064】
リンパ系の造血器腫瘍は、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫のいずれかであってよい。骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病(AML)又は慢性骨髄性白血病(CML)であってよい。間葉由来腫瘍は、線維肉腫又は横紋筋肉腫である。
【0065】
いくつかの実施形態において、PEG化抗がん剤は、2回の独立した投薬で投与される。他の実施態様において、PEG化抗がん剤は3回の独立した投薬で投与される。
【0066】
本発明の混合物(すなわち、抗PEG抗体及びヒドロゲルの混合物)は、PEG化治療剤と同様に、ほ乳類、好ましくはヒトに、混合物及び/又はPEG化治療剤を適切な又は所望の作用部位に有効に輸送することのできる任意の経路により投与してよく、経路としては、経口、鼻、肺、経皮(受動的又はイオントフォレーシス送達など)、又は非経口(例えば、直腸、デポ、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、小脳内、点眼液又は軟膏)などがある。さらに、本発明の混合物は、PEG化治療剤と共に、被験体の同一又は異なる部位に投与してよく、同時に又は連続的に投与してよい。
【0067】
好ましくは、本発明の混合物は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、又は腹腔内注射により投与することのできる、滅菌溶液、又は懸濁液である、液体医薬組成物に製剤化してよい。一方で、PEG化薬は任意の剤形であってよく、この剤形としては経口、非経口、鼻又は舌下投与のための固体又は液体剤形があるがこれらに限定されない。本発明の混合物の滅菌注射可能溶液又は懸濁液を製造するために適した希釈剤又は溶媒としては、1,3−ブタンジオール、マンニトール、水、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液があるがこれらに限定されない。オリーブ油又はヒマシ油などの天然の医薬的に許容される油と同様に、オレイン酸などの脂肪酸及びそのグリセリド誘導体もまた、注射液の調製に有用である。これらの油溶液又は懸濁液は、アルコール希釈剤又はカルボキシメチルセルロース又は同様な分散剤を含有してもよい。医薬的に許容される剤形の製造において一般的に使用される、Tweens又はSpansなどの他の一般的に使用される界面活性剤又は他の同様な乳化剤又は生物学的利用能エンハンサーもまた、製剤化の目的で使用することができる。経口投与は、液体又は固体組成物のいずれの形であってもよい。
【0068】
適切な投薬は最終的には担当医師の裁量にあり、本発明の混合物の投薬は、選択された特定の抗PEG抗体又はPEG化治療剤、投与の経路、及び患者において所望の応答を誘発するPEG化治療剤の能力のためだけでなく、因子、例えば、軽減されるべき状態の重症度又は病状、患者の体重、年齢、性別、患者の状態、及び処置される病的状態の重症度、同時の薬物治療又は次いで患者により守られる特別食、及び当業者が認識するであろう他の因子のために、患者によって異なるだろうということが理解されるであろう。投薬レジメンは、所望の応答を提供するように調整してよい。好ましくは、本発明の混合物は、PEG化治療剤の少なくとも1回の投薬(例えば、2、3、4回又はさらに多くの回数の投薬、抗PEG抗体が存在してPEG化治療剤を処置部位に送る限りにおいて)が、被験体に順次投与され、治療剤応答の改善を達成することができるような、量と時間で投与される。
【0069】
本発明はここで、限定ではなく例示の目的で提供される以下の実施形態を参照し、より具体的に説明される。
【実施例】
【0070】
実施例
【0071】
材料及び方法
【0072】
蛍光−コンジュゲートAGP4及びHAヒドロゲルの調製
【0073】
以前に説明された手順(Su, Y. C. ら、 Bioconjugate Chemistry (2010) 21、 1264−1270)にしたがい、メスBALB/cマウスをPEG由来タンパク質で免疫化することにより、AGP4(PEGに対するIgM mAb)を作製した。HA粉末(1,500 kDa; Creative PEGworks、Winston−Salem、NC、USA)をリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解し、これを0.22μmフィルターを通して4℃でろ過して、2%(w/v)HAヒドロゲルを形成した。Alexa Fluor 647−(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)コンジュゲートAGP4を製造者の説明書にしたがって調製した。コンジュゲート比は40:1(w/w)であった。次いで、Alexa Fluor 647−コンジュゲートAGP4及びHA(比は1:4(v/v)であった)を混合し、4℃で穏やかに撹拌して、最終生成物、2%(w/v)HA−AGP4ヒドロゲルを形成した。
【0074】
サンドイッチELISA
【0075】
サンドイッチELISAを、以前に説明された手順(Su, Y. C. ら、 Bioconjugate Chemistry (2010) 21、1264−1270)にしたがい実施した。簡単に述べると、5μl/mL AGP4−及び正常マウスIgM−コーティング済み(Jason Lab、USA)プレートを調製し、次いで、希釈バッファー中の勾配のついた濃度のPEG−Qdot 800及びLipo−Dox(50μl/ウェル)を、コーティング済みウェルに、2時間室温で添加した。PBS−T(0.1% Tween−20を含有するPBS)で3回及びPBSで2回洗浄した後、プレートを、50μL/ウェルの検出抗体(5μg/mL 3.3−ビオチン)で1時間、次いで0.5μg/mLのHRP−コンジュゲートストレプトアビジンで1時間、室温で、連続的に被覆した。プレートをPBS−Tで6回、PBSで2回洗浄し、100μL/ウェルのABTS基質(0.4mg/mL 2,2'−アジノ−ジ(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)、0.003% H、100mM リン酸塩クエン酸塩、pH4.0)を、30分間室温で添加した。405nmでのウェルの吸光度をマイクロプレートリーダーによって測定した。
【0076】
実験動物
【0077】
動物研究を含む全ての手順は、実験動物委員会、アカデミアシニカによって承認された。成体メスFVBマウスモデル(6〜8週齢、25g)を国立実験動物センターから入手した。簡単に述べると、手術及びインビボ測定の前に、全てのマウスをZoletil(12.5mg/kg; Virbac、Carros、162 France)及びRompun(0.2ml/kg; Bayer Healthcare、Kiel、Germany)で麻酔した。
【0078】
ナビゲートテスタメント(Navigated testaments)及び定量化
【0079】
本開示の2%HA−AGP4ヒドロゲルを、マウスの前側の3つの異なる位置に皮下注射(各部位につき50μl)、又は右脚に筋肉内注射し(各部位につき50μl、全容積:200μl)、PEG−Qdot 800を静脈内注射により直ちに与えた。さらに、PEG−Qd800の3回投与を用いて、本開示の2%HA−AGP4ヒドロゲルにより達成される再補充機能性を実証した。マウスを、Xenogen IVIS スペクトル装置(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)及び対応するフィルターセットを用いてイメージングした。手動で描いた関心領域(ROI)内の光子の数を計算することにより蛍光強度を決定した。対照群の組織自己蛍光を排除するように強度を調整した。
【0080】
後肢虚血(HLI)の動物モデル及び処置
【0081】
マウスにおいて左大腿動脈及び腸骨動脈の結紮を実施し、次いで切断して後肢虚血を誘導することにより、HLIモデルを作製した(Limbourgら、Nat. Protocols(2009) 4、1737−1748)。実験マウスへの投与を、3区分:PEG−IGF−1、PEG−G−CSF、及び併用処置、に分けた。PEG−IGF−1及びPEG−G−CSFの処置は、5群:Sham、2%HA単独+治療剤の処置をしたHLI、AGP4を含むHAに続いてPBSの処置をしたHLI、AGP4を含むHAに続いて治療剤の処置をしたHLIを含んでいる。併用処置は、3群:Sham、HA/AGP4とそれに続く併用治療剤、HA/AGP4とそれに続くPBS、を含んでいる。2%ヒドロゲルを筋肉内注射した。ここで、注射を虚血領域の4部位に送達した(各部位につき50μl、全容積:200μl)。そしてPBS又は治療剤を静脈内注射によって連続的に送達した。
【0082】
血流測定
【0083】
毛細血管血流をレーザードップラーイメージャ(Moor Instrument、UK)で測定した。手術前の血流、1日後の血流、次の4週間の各週の血流を、両肢について、マウスを屠殺する前に記録した。データは、虚血肢(左)と正常肢(右)との血流比として提示される。
【0084】
免疫蛍光染色
【0085】
固定した遠位の腓腹筋及び大腿筋を、脱パラフィンし、再水和し、10mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)中で10分間煮沸し、続いてトロポミオシン(DHSB、Iowa city、Iowa、USA)、WGA及びイソレクチン(Invitrogen、Grand Island、NY、USA)に対する抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、次いでAlexa Fluor 488−又は568−コンジュゲート二次抗体(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)と共にインキュベートした。DAPI(Sigma−Aldrich、St. Louis、MO、USA)での染色後、切片を共焦点顕微鏡(LSM 700、Carl Zeiss MicroImaging、Germany)及び蛍光顕微鏡下にマウントし観察した。境界域の毛細血管及び細動脈密度を測定し、各サンプル中の8つの無作為に選択した虚血領域(200×倍率)から画像を取得し、各区画を手動で係数することにより定量化を実施し、8つの値を平均した。
【0086】
後肢虚血(HLI)後のマウスの臨床スコアづけ
【0087】
以前に説明された手順(Lai, C. Y. ら、 Biomacromolecules (2013) 15、564−573)にしたがい、異なる処置を受けた後のマウスの臨床スコアを取得した。臨床スコアを、マウスの活動及び後肢状態の毎日の観察に基いて推定した。スコアを、0(正常)、1〜3(筋萎縮)、4〜5(壊疽の発生)、6(四肢切断)の7段階に分類した。
【0088】
統計的分析
【0089】
全てのデータは、別段の指示がない限り平均±標準偏差として示される(インビトロスペクトル分析についてはn=3、インビボナビゲートテスタメント(navigated testaments)についてはn=6、後肢虚血性モデル及び処置についてはn=8)。複数比較のために、ボンフェローニ調整による分散分析(ANOVA)を実施した。P<0.05の確率値は統計的有意性を表すものとみなした。
【0090】
例1 抗PEG抗体及びHAの補助物を伴うPEG化化合物の複数回投与のための動物モデルの確立
【0091】
1.1 抗PEG抗体はPEG化化合物に特異的に結合する
【0092】
この例では、PEG化化合物(すなわち、PEG化QDot(PEG−Qd800))の抗PEG抗体(すなわち、AGP4)に対する結合プロファイル(図1A)及び効率(図1B)を、サンドイッチELISAアッセイによりそれぞれ決定した。
【0093】
図1Aに示されるように、PEG−Qd800は、非コーティングウェル(●)又は正常IgM−コーティング済みウェル(■)と反応しなかった。対照的に、AGP4−コーティング済みウェルでは投薬量に依存する吸光度読み取り値が見られた。PEG−Qd800の量が増加するにつれて、AGP4−PEG−Qd800複合体(▲)の吸光度読み取り値も増加した。市販のPEG化リポソームドキソルビシン(PEG−Lipo)でも同一の効果が見られたが、読み取り値は濃度が10nMに到達した後飽和し始めた(▼)。IgMと比較すると、AGP4抗体が、PEG−Qd800又はLipo−DOXのいずれにも、同様な結合効率で結合することが分かった(図1B)。
【0094】
さらに、AGP4(HAヒドロゲルに封入されている)及びPEG化化合物からそれぞれ生じた蛍光シグナルが、インビトロ及びインビボの両方で、互いに独立していることが示された。ここで、Alexa 647染料−ラベル化AGP4及びPEG−Qd800の励起波長をそれぞれ605nm及び465nmに設定した。
【0095】
1.2 PEG−Qd800のインビボターゲティングプロファイル
【0096】
この例では、PEG化化合物(例えば、PEG−QD)のインビボターゲティングプロファイルを調べた。ここで、HA/AGP4の単回の投薬量を、単一マウスの体の3つの異なる位置に皮下注射した。次いで、10分後に、尾静脈を介した静脈内注射によりPEG−Qd800の投薬量を投与した(図2A参照)。
【0097】
sham群及びHA−単独群と比較して、AGP4の蛍光シグナルは1日目から3日目まで見ることができたが、HA−単独群の蛍光シグナルは無視できるほど小さいままであった。対照的に、PEG−Qd800で処置したマウスについて、PEG−Qd800のシグナルは1日目から6日目まで見ることができたが、シグナルは時間の経過と共に徐々に減少した。さらに、HA−単独群とは異なり、AGP4の存在は3つの皮下注射部位全てにおいて、PEG−Qd800のリクルートメント及び保持を強化した。HA−単独群において、皮下注射部位の1つで、PEG−Qd800が陽性に検出されたが、シグナルは2日目以降は見られなかった。HA/AGP4及びPEG−Qd800の検出された蛍光シグナルを、さらに定量化し、図2B及び2Cにそれぞれまとめた。
【0098】
1日目、4日目及び7日目に単離された器官の蛍光分析により、他の器官と比べて、これら3つの日数のいずれにおいても、PEG−Qd800の大部分が肝臓に保持されることが明らかとなった(図2D)。各日間の差異が最小であっただけでなく、いずれの器官においても、HA−単独群とHA/AGP4群との間にも有意差はなかった。しかしながら、AGP4を注射した部位(AGP4_部位)で有意差が認められた。HA−単独群と比較すると、注射部位におけるHA/AGP4の存在により、有意に高いレベルのPEG−Qd800シグナルが1日目及び4日目の両方で検出される結果となった。生体内顕微鏡検査を利用することによりターゲティング能力も確認した。図2Eに示される結果は、HA/AGP4ゲル又はHAゲル単独で処置したマウスからの蛍光シグナルが、FITCチャネルを介して観察でき、静脈内注射によるPEG−Qd655の投与1.5時間後に、HA/AGP4群において、循環したPEG−Qdは血管壁を貫通し、周囲に保持されることを示した。比較すると、HA単独群においては、PEG−Qdで処置してから1.5〜4時間後でさえ、PEG−Qdは血管内にとどまった。この結果は、HA単独群と比較し、HA/AGP4処置がPEG−Qd655の蛍光強度を有意に強化することを示した(図2F)。
【0099】
1.3 抗PEG抗体及びHAの補助物を伴うPEG化化合物の複数回投与
【0100】
この例において、抗PEG抗体及びHAの補助物を伴うPEG化化合物(例えば、PEG−Qd800)の複数回適用を評価した。それ故に、抗PEG抗体及びHAを伴うPEG−Qd800の複数回注射後に、PEG−Qd800の蛍光シグナルを調べた。具体的には、0日目に、HA/AGP4の単回の筋肉内注射をマウスの右脚に行い、続いて1回目のPEG−Qd800の静脈内注射を行い、次いで2回目及び3回目のPEG−Qd800の静脈内注射を次の2日間にそれぞれ行った。結果を図3に示す。
【0101】
図3Aに示されるように、マウスの右脚へのHA/AGP4の筋肉内注射の後、注射は1回のみ行われたにもかかわらず、右脚筋肉組織におけるAGP4シグナルが3日目にも観察可能であった。同様に、PEG−Qd800の複数回注射の強い蛍光シグナルが3日目に見られたが、7日目には見られなかった。さらに、全3回の注射をするよう指定されたマウスは、他の2群と比較してより強いPEG−Qd800のシグナルを示し、このシグナルは7日目でも見ることができるままであった。検出されたPEG−Qd800シグナルを定量化することにより、3回の注射をしたマウスの群で測定された蛍光強度が、他の2群よりも有意に高いことが明らかとなった(図3B)。加えて、異なる日間での測定シグナルの差は、3回の注射をしたマウスでは有意ではなかった。この結果は、異なる日に投与された、有意な数のPEG−Qd800が、HA/AGP4注射部位の近傍に保持されることを示した。
【0102】
脚筋肉、並びに心臓、肝臓、肺、脾臓及び腎臓などの他の器官における、PEG−Qd800シグナルを評価することで、HA/AGP4の生物学的意義がさらに証明された(図3C)。左脚筋肉と比較すると、右脚筋肉はHA/AGP4について強いシグナルを呈した。これは、右脚筋肉に注射されたHA/AGP4が、注射部位に注射後少なくとも7日目まで留まったことを示唆する。注射部位における強い蛍光シグナルにより、右脚におけるPEG−Qd800の保持が証明されたが、いくらかのPEG−Qd800が、循環に起因して、左脚筋肉で検出された。肝臓及び脾臓は別として、測定されたPEG−Qd800シグナルは、右脚筋肉と比較して有意でないようである。このような結果は、PEG−Qd800で1回又は3回の注射をしたマウスから取り除かれた器官の定量分析においても見られた(図3D)。PEG−Qd800の1回又は3回の注射をしたマウスからの肝臓中で、強いシグナルが7日目に見られたが、残りの器官は、注射した右脚筋肉と比較して最小限のレベルのPEG化化合物を呈した。それ故に、この結果は、HA/AGP4の投与が、有意な量の静脈内注射PEG−Qd800を、注射した部位に保持するのを助けることを示した。さらに、1回目と3回目の注射の間に右脚筋肉に検出された有意なレベルのPEG−Qd800は、最初に注射されたHA/AGP4が、順次注射されたPEG−Qd800を、注射した部位の近傍に保持し続けることができることを示す。
【0103】
7日目の組織レベルでのPEG−Qd800の量を定量するために、免疫組織化学(IHC)分析を、HA/AGP4注射部位を包含する右脚筋肉の切片に対して実施した。3回注射したマウスとは対照的に、1回注射したマウスにおいて、より低いレベルのPEG−Qd800染色が観察された(図3D)。さらに、HA/AGP4で処置していない左脚筋肉(sham)において、PEG−Qd800の染色は観察されなかった。図3Eに示されるように、各群の各マウスの注射部位におけるPEG−Qd800の数を決定した。
【0104】
まとめると、この結果は、順次静脈内に注射されたPEG−Qd800が、他の器官に分配されるのではなく、HA/AGP4注射部位の近傍に実際に保持されるという事実を示した。
【0105】
例2 PEG化インシュリン増殖因子−1(PEG−IGF−1)の複数回注射は、HA/AGP4注射部位での細胞死を最小限にする
【0106】
HA/AGP4注射部位に投与されるPEG化抗虚血性化合物の複数回注射が、虚血領域への血流を増加させること又は虚血領域を減少させることなどによって、虚血性傷害を改善するかどうかを検証するために、例1のHLI動物を、HA/AGP4、及びPEG化化合物(例えば、PEG−IGF−1)又はビヒクルで処置した。そして、PEG化化合物の虚血性傷害に対する効果を、レーザードップラーを用いて血流を検出することにより又は虚血領域をイメージングすることにより、モニターした。図4Aは、本例のプロトコル及び処置レジメンを図示する概略図である。具体的には、後肢虚血傷害を発生させた後1日目にHA及び抗PEG抗体を投与した。そして、HA/AGP4の投薬量投与の10分後にPEG−IGF−1の1回目の投薬量(30μg)を試験動物に与え、HLIの後1日目にPEG−IGF−1の2回目の投薬量を与え、続いて、HLI後2日目にPEG−IGF−1の投薬量を与えた。PEG−IGF−1の各投薬量を、8時間の間隔で連続的に与えたことに留意されたい。虚血領域における血流をモニターし続け、動物を最終的に屠殺し、虚血領域におけるアポトーシスレベルの推定のために、損傷した脚の筋肉を染色した。結果を図4B〜4Cに示す。
【0107】
sham群と比較して、手術後に取得した血流画像は、虚血性脚をHA−単独+PEG−IGF−1又はHA/AGP4+PBSで1日目又は2日目に処置した場合に、有意な改善が見られないことを明らかにした。しかしながら、HA−単独+PEG−IGF−1及びHA/AGP4+PBS処置群において、爪変色の兆候があった。対照的に、このような現象は、PEG−IGF−1をHA/AGP4の処置の後に投与した併用処置群では明らかではなかった。このように、HA/AGP4処置はPEG−IGF−1注射後の虚血性脚での血流を改善しなかったが、虚血性損傷を最小限にした。
【0108】
IGF−1は細胞生存を強化することが知られているため、虚血性脚筋肉のHA/AGP4注射部位で示されるアポトーシス細胞の数をTUNELアッセイにより決定した(図4B及び4C)。AGP4の非存在下では、投与されたPEG−IGF−1は、HA−単独群におけるアポトーシス細胞の数を減少させることができなかった。同様に、PBSの注射は、HA/AGP4群における細胞生存を改善しなかった。対照的に、HA/AGP4の投与後にPEG−IGF−1で処置したマウスは、アポトーシス細胞の有意な減少を示した。このことは、本HA/AGP4システムが、PEG−IGF−1の治療効果を延長するのを助けることができることを示唆する。
【0109】
この例の結果は、抗PEG抗体の寿命を延長することにおけるHAの使用を肯定した。これはPEG化治療剤の複数回適用を、その処置を必要とする被験体に投与することを可能にする。
【0110】
例3 HA/AGP4注射部位に保持されるPEG化顆粒球コロニー刺激因子(PEG−G−CSF)は、細胞リクルートメントを促進する
【0111】
この例では、別のPEG化化合物としてPEG−G−CSFを使用し、HA/AGP4注射部位でのその治療効果を例1のHLIモデルを使用して評価した。虚血性傷害に対するPEG−G−CSFの効果を、レーザードップラーを使用して血流を検出することにより、又は虚血領域をイメージングすることにより、モニターした。
【0112】
図5Aは、この例のプロトコル及び処置レジメンを図示する概略図である。具体的には、後肢虚血傷害を発生させた後1日目にHA又はHA/AGP4(すなわち、抗PEG抗体)を投与した。そして、HA又はHA/AGP4の投薬量投与の10分後にPEG−G−CSFの1回目の投薬量を試験動物に与え、PEG−G−CSFの2回目の投薬量をPEG−G−CSFの1回目の投薬量投与の24時間後、2日目に与え、続いてPEG−G−CSFの2回目の投薬量投与の後3日目にPEG−G−CSFの3回目の投薬量を与えた。虚血領域における血流をモニターし続け、動物を最終的に屠殺し、虚血領域におけるリクルートメントされた細胞の密度の推定のために、損傷した脚の筋肉を染色した。結果を図5B〜5Cに示す。
【0113】
HA又はHA/AGP4単独での処置は、マウスの2日目及び4日目での虚血領域における血流の有意な増加を誘導できなかった。しかしながら、爪変色が、HA−単独+PEG−G−CSF群及びPBS投与したHA/AGP4群において見られ、PEG−G−CSF注射をしたHA/AGP4群においては見られなかった。
【0114】
HA/AGP4注射部位で造血幹細胞(HSC)及び内皮前駆細胞(EPC)をリクルートメントするPEG−G−CSFの能力も調べた(図5B及び5C)。HA−単独+PEG−G−CSF群及びHA/AGP4+PBS対照と比較して、注射したPEG−G−CSFは、HA/AGP4注射部位に存在するHSC(CD133)及びEC(CD34)の数を増加させた(白い矢印)。
【0115】
例4 PEG化薬物の併用送達は、毛細血管形成を強化する
【0116】
PEG−IGF−1及びPEG−G−CSFの治療的作用が互いに異なることを考え、両方のPEG化治療剤の、HLIマウスモデルのHA/AGP4注射部位への連続的送達の全体的な治療効果を調べることにした。
【0117】
図6Aは、本例のプロトコルを図示する概略図であり、ここでPEG−IGF−1及びPEG−G−CSFが、様々な時点で注射された。Sham群及びPBS対照群と比較すると、両方の治療剤を注射したHA/AGP4群は、早くも14日目に、血流の有意な改善を示した(図6B)。血流の有意差は、PBS対照群と併用送達した群との間で、21日目及び28日目に見られ続けている。さらに、後者の群は、28日目で、sham群と同様の血流値を示した。PBS対照群もまた28日間を通して血流の改善を示したが、マウスは早くも7日目で筋萎縮の兆候を、そして21日目で足指壊死の兆候を示した(図6C)。対照的に、併用送達したHA/APG4群の足指の物理的外観は、sham群と同様であった。
【0118】
併用送達がHA/AGP4注射部位の血流を改善したかどうかをさらに検証するために、その部位を包含する組織切片を、毛細血管の存在について染色した(図6D及び6E)。sham群と同様に、併用送達群の組織切片の蛍光染色は、虚血性組織に多数の毛細血管を示した(白い矢印)。比較すると、PBS対照群は、染色された組織に比較的少ない数の毛細血管を有した。
【0119】
上の例からの結果は、HA及び抗PEG抗体を同時に被験体の意図される標的部位へ投与することが、抗PEG抗体を処置部位により長い期間保持するのを助け、これがその後のPEG化薬の複数回適用(例えば、2〜3回適用)を被験体に送ることを可能にし、それにより治療効果を改善する、ということを確認するものである。
【0120】
実施形態の上記説明は単なる例示として与えられており、当業者によって様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。上記の明細書、実施例及びデータは、本発明の例示的な実施形態の構造及び使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態は、あるの程度の具体性をもって、又は1又は複数の個別の実施形態を参照して上に説明されているが、当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を行うことができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E