【実施例】
【0070】
実施例
【0071】
材料及び方法
【0072】
蛍光−コンジュゲートAGP4及びHAヒドロゲルの調製
【0073】
以前に説明された手順(Su, Y. C. ら、 Bioconjugate Chemistry (2010) 21、 1264−1270)にしたがい、メスBALB/cマウスをPEG由来タンパク質で免疫化することにより、AGP4(PEGに対するIgM mAb)を作製した。HA粉末(1,500 kDa; Creative PEGworks、Winston−Salem、NC、USA)をリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解し、これを0.22μmフィルターを通して4℃でろ過して、2%(w/v)HAヒドロゲルを形成した。Alexa Fluor 647−(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)コンジュゲートAGP4を製造者の説明書にしたがって調製した。コンジュゲート比は40:1(w/w)であった。次いで、Alexa Fluor 647−コンジュゲートAGP4及びHA(比は1:4(v/v)であった)を混合し、4℃で穏やかに撹拌して、最終生成物、2%(w/v)HA−AGP4ヒドロゲルを形成した。
【0074】
サンドイッチELISA
【0075】
サンドイッチELISAを、以前に説明された手順(Su, Y. C. ら、 Bioconjugate Chemistry (2010) 21、1264−1270)にしたがい実施した。簡単に述べると、5μl/mL AGP4−及び正常マウスIgM−コーティング済み(Jason Lab、USA)プレートを調製し、次いで、希釈バッファー中の勾配のついた濃度のPEG−Qdot 800及びLipo−Dox(50μl/ウェル)を、コーティング済みウェルに、2時間室温で添加した。PBS−T(0.1% Tween−20を含有するPBS)で3回及びPBSで2回洗浄した後、プレートを、50μL/ウェルの検出抗体(5μg/mL 3.3−ビオチン)で1時間、次いで0.5μg/mLのHRP−コンジュゲートストレプトアビジンで1時間、室温で、連続的に被覆した。プレートをPBS−Tで6回、PBSで2回洗浄し、100μL/ウェルのABTS基質(0.4mg/mL 2,2'−アジノ−ジ(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)、0.003% H
2O
2、100mM リン酸塩クエン酸塩、pH4.0)を、30分間室温で添加した。405nmでのウェルの吸光度をマイクロプレートリーダーによって測定した。
【0076】
実験動物
【0077】
動物研究を含む全ての手順は、実験動物委員会、アカデミアシニカによって承認された。成体メスFVBマウスモデル(6〜8週齢、25g)を国立実験動物センターから入手した。簡単に述べると、手術及びインビボ測定の前に、全てのマウスをZoletil(12.5mg/kg; Virbac、Carros、162 France)及びRompun(0.2ml/kg; Bayer Healthcare、Kiel、Germany)で麻酔した。
【0078】
ナビゲートテスタメント(Navigated testaments)及び定量化
【0079】
本開示の2%HA−AGP4ヒドロゲルを、マウスの前側の3つの異なる位置に皮下注射(各部位につき50μl)、又は右脚に筋肉内注射し(各部位につき50μl、全容積:200μl)、PEG−Qdot 800を静脈内注射により直ちに与えた。さらに、PEG−Qd800の3回投与を用いて、本開示の2%HA−AGP4ヒドロゲルにより達成される再補充機能性を実証した。マウスを、Xenogen IVIS スペクトル装置(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)及び対応するフィルターセットを用いてイメージングした。手動で描いた関心領域(ROI)内の光子の数を計算することにより蛍光強度を決定した。対照群の組織自己蛍光を排除するように強度を調整した。
【0080】
後肢虚血(HLI)の動物モデル及び処置
【0081】
マウスにおいて左大腿動脈及び腸骨動脈の結紮を実施し、次いで切断して後肢虚血を誘導することにより、HLIモデルを作製した(Limbourgら、Nat. Protocols(2009) 4、1737−1748)。実験マウスへの投与を、3区分:PEG−IGF−1、PEG−G−CSF、及び併用処置、に分けた。PEG−IGF−1及びPEG−G−CSFの処置は、5群:Sham、2%HA単独+治療剤の処置をしたHLI、AGP4を含むHAに続いてPBSの処置をしたHLI、AGP4を含むHAに続いて治療剤の処置をしたHLIを含んでいる。併用処置は、3群:Sham、HA/AGP4とそれに続く併用治療剤、HA/AGP4とそれに続くPBS、を含んでいる。2%ヒドロゲルを筋肉内注射した。ここで、注射を虚血領域の4部位に送達した(各部位につき50μl、全容積:200μl)。そしてPBS又は治療剤を静脈内注射によって連続的に送達した。
【0082】
血流測定
【0083】
毛細血管血流をレーザードップラーイメージャ(Moor Instrument、UK)で測定した。手術前の血流、1日後の血流、次の4週間の各週の血流を、両肢について、マウスを屠殺する前に記録した。データは、虚血肢(左)と正常肢(右)との血流比として提示される。
【0084】
免疫蛍光染色
【0085】
固定した遠位の腓腹筋及び大腿筋を、脱パラフィンし、再水和し、10mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)中で10分間煮沸し、続いてトロポミオシン(DHSB、Iowa city、Iowa、USA)、WGA及びイソレクチン(Invitrogen、Grand Island、NY、USA)に対する抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、次いでAlexa Fluor 488−又は568−コンジュゲート二次抗体(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)と共にインキュベートした。DAPI(Sigma−Aldrich、St. Louis、MO、USA)での染色後、切片を共焦点顕微鏡(LSM 700、Carl Zeiss MicroImaging、Germany)及び蛍光顕微鏡下にマウントし観察した。境界域の毛細血管及び細動脈密度を測定し、各サンプル中の8つの無作為に選択した虚血領域(200×倍率)から画像を取得し、各区画を手動で係数することにより定量化を実施し、8つの値を平均した。
【0086】
後肢虚血(HLI)後のマウスの臨床スコアづけ
【0087】
以前に説明された手順(Lai, C. Y. ら、 Biomacromolecules (2013) 15、564−573)にしたがい、異なる処置を受けた後のマウスの臨床スコアを取得した。臨床スコアを、マウスの活動及び後肢状態の毎日の観察に基いて推定した。スコアを、0(正常)、1〜3(筋萎縮)、4〜5(壊疽の発生)、6(四肢切断)の7段階に分類した。
【0088】
統計的分析
【0089】
全てのデータは、別段の指示がない限り平均±標準偏差として示される(インビトロスペクトル分析についてはn=3、インビボナビゲートテスタメント(navigated testaments)についてはn=6、後肢虚血性モデル及び処置についてはn=8)。複数比較のために、ボンフェローニ調整による分散分析(ANOVA)を実施した。P<0.05の確率値は統計的有意性を表すものとみなした。
【0090】
例1 抗PEG抗体及びHAの補助物を伴うPEG化化合物の複数回投与のための動物モデルの確立
【0091】
1.1 抗PEG抗体はPEG化化合物に特異的に結合する
【0092】
この例では、PEG化化合物(すなわち、PEG化QDot(PEG−Qd800))の抗PEG抗体(すなわち、AGP4)に対する結合プロファイル(
図1A)及び効率(
図1B)を、サンドイッチELISAアッセイによりそれぞれ決定した。
【0093】
図1Aに示されるように、PEG−Qd800は、非コーティングウェル(●)又は正常IgM−コーティング済みウェル(■)と反応しなかった。対照的に、AGP4−コーティング済みウェルでは投薬量に依存する吸光度読み取り値が見られた。PEG−Qd800の量が増加するにつれて、AGP4−PEG−Qd800複合体(▲)の吸光度読み取り値も増加した。市販のPEG化リポソームドキソルビシン(PEG−Lipo)でも同一の効果が見られたが、読み取り値は濃度が10nMに到達した後飽和し始めた(▼)。IgMと比較すると、AGP4抗体が、PEG−Qd800又はLipo−DOXのいずれにも、同様な結合効率で結合することが分かった(
図1B)。
【0094】
さらに、AGP4(HAヒドロゲルに封入されている)及びPEG化化合物からそれぞれ生じた蛍光シグナルが、インビトロ及びインビボの両方で、互いに独立していることが示された。ここで、Alexa 647染料−ラベル化AGP4及びPEG−Qd800の励起波長をそれぞれ605nm及び465nmに設定した。
【0095】
1.2 PEG−Qd800のインビボターゲティングプロファイル
【0096】
この例では、PEG化化合物(例えば、PEG−QD)のインビボターゲティングプロファイルを調べた。ここで、HA/AGP4の単回の投薬量を、単一マウスの体の3つの異なる位置に皮下注射した。次いで、10分後に、尾静脈を介した静脈内注射によりPEG−Qd800の投薬量を投与した(
図2A参照)。
【0097】
sham群及びHA−単独群と比較して、AGP4の蛍光シグナルは1日目から3日目まで見ることができたが、HA−単独群の蛍光シグナルは無視できるほど小さいままであった。対照的に、PEG−Qd800で処置したマウスについて、PEG−Qd800のシグナルは1日目から6日目まで見ることができたが、シグナルは時間の経過と共に徐々に減少した。さらに、HA−単独群とは異なり、AGP4の存在は3つの皮下注射部位全てにおいて、PEG−Qd800のリクルートメント及び保持を強化した。HA−単独群において、皮下注射部位の1つで、PEG−Qd800が陽性に検出されたが、シグナルは2日目以降は見られなかった。HA/AGP4及びPEG−Qd800の検出された蛍光シグナルを、さらに定量化し、
図2B及び2Cにそれぞれまとめた。
【0098】
1日目、4日目及び7日目に単離された器官の蛍光分析により、他の器官と比べて、これら3つの日数のいずれにおいても、PEG−Qd800の大部分が肝臓に保持されることが明らかとなった(
図2D)。各日間の差異が最小であっただけでなく、いずれの器官においても、HA−単独群とHA/AGP4群との間にも有意差はなかった。しかしながら、AGP4を注射した部位(AGP4_部位)で有意差が認められた。HA−単独群と比較すると、注射部位におけるHA/AGP4の存在により、有意に高いレベルのPEG−Qd800シグナルが1日目及び4日目の両方で検出される結果となった。生体内顕微鏡検査を利用することによりターゲティング能力も確認した。
図2Eに示される結果は、HA/AGP4ゲル又はHAゲル単独で処置したマウスからの蛍光シグナルが、FITCチャネルを介して観察でき、静脈内注射によるPEG−Qd655の投与1.5時間後に、HA/AGP4群において、循環したPEG−Qdは血管壁を貫通し、周囲に保持されることを示した。比較すると、HA単独群においては、PEG−Qdで処置してから1.5〜4時間後でさえ、PEG−Qdは血管内にとどまった。この結果は、HA単独群と比較し、HA/AGP4処置がPEG−Qd655の蛍光強度を有意に強化することを示した(
図2F)。
【0099】
1.3 抗PEG抗体及びHAの補助物を伴うPEG化化合物の複数回投与
【0100】
この例において、抗PEG抗体及びHAの補助物を伴うPEG化化合物(例えば、PEG−Qd800)の複数回適用を評価した。それ故に、抗PEG抗体及びHAを伴うPEG−Qd800の複数回注射後に、PEG−Qd800の蛍光シグナルを調べた。具体的には、0日目に、HA/AGP4の単回の筋肉内注射をマウスの右脚に行い、続いて1回目のPEG−Qd800の静脈内注射を行い、次いで2回目及び3回目のPEG−Qd800の静脈内注射を次の2日間にそれぞれ行った。結果を
図3に示す。
【0101】
図3Aに示されるように、マウスの右脚へのHA/AGP4の筋肉内注射の後、注射は1回のみ行われたにもかかわらず、右脚筋肉組織におけるAGP4シグナルが3日目にも観察可能であった。同様に、PEG−Qd800の複数回注射の強い蛍光シグナルが3日目に見られたが、7日目には見られなかった。さらに、全3回の注射をするよう指定されたマウスは、他の2群と比較してより強いPEG−Qd800のシグナルを示し、このシグナルは7日目でも見ることができるままであった。検出されたPEG−Qd800シグナルを定量化することにより、3回の注射をしたマウスの群で測定された蛍光強度が、他の2群よりも有意に高いことが明らかとなった(
図3B)。加えて、異なる日間での測定シグナルの差は、3回の注射をしたマウスでは有意ではなかった。この結果は、異なる日に投与された、有意な数のPEG−Qd800が、HA/AGP4注射部位の近傍に保持されることを示した。
【0102】
脚筋肉、並びに心臓、肝臓、肺、脾臓及び腎臓などの他の器官における、PEG−Qd800シグナルを評価することで、HA/AGP4の生物学的意義がさらに証明された(
図3C)。左脚筋肉と比較すると、右脚筋肉はHA/AGP4について強いシグナルを呈した。これは、右脚筋肉に注射されたHA/AGP4が、注射部位に注射後少なくとも7日目まで留まったことを示唆する。注射部位における強い蛍光シグナルにより、右脚におけるPEG−Qd800の保持が証明されたが、いくらかのPEG−Qd800が、循環に起因して、左脚筋肉で検出された。肝臓及び脾臓は別として、測定されたPEG−Qd800シグナルは、右脚筋肉と比較して有意でないようである。このような結果は、PEG−Qd800で1回又は3回の注射をしたマウスから取り除かれた器官の定量分析においても見られた(
図3D)。PEG−Qd800の1回又は3回の注射をしたマウスからの肝臓中で、強いシグナルが7日目に見られたが、残りの器官は、注射した右脚筋肉と比較して最小限のレベルのPEG化化合物を呈した。それ故に、この結果は、HA/AGP4の投与が、有意な量の静脈内注射PEG−Qd800を、注射した部位に保持するのを助けることを示した。さらに、1回目と3回目の注射の間に右脚筋肉に検出された有意なレベルのPEG−Qd800は、最初に注射されたHA/AGP4が、順次注射されたPEG−Qd800を、注射した部位の近傍に保持し続けることができることを示す。
【0103】
7日目の組織レベルでのPEG−Qd800の量を定量するために、免疫組織化学(IHC)分析を、HA/AGP4注射部位を包含する右脚筋肉の切片に対して実施した。3回注射したマウスとは対照的に、1回注射したマウスにおいて、より低いレベルのPEG−Qd800染色が観察された(
図3D)。さらに、HA/AGP4で処置していない左脚筋肉(sham)において、PEG−Qd800の染色は観察されなかった。
図3Eに示されるように、各群の各マウスの注射部位におけるPEG−Qd800の数を決定した。
【0104】
まとめると、この結果は、順次静脈内に注射されたPEG−Qd800が、他の器官に分配されるのではなく、HA/AGP4注射部位の近傍に実際に保持されるという事実を示した。
【0105】
例2 PEG化インシュリン増殖因子−1(PEG−IGF−1)の複数回注射は、HA/AGP4注射部位での細胞死を最小限にする
【0106】
HA/AGP4注射部位に投与されるPEG化抗虚血性化合物の複数回注射が、虚血領域への血流を増加させること又は虚血領域を減少させることなどによって、虚血性傷害を改善するかどうかを検証するために、例1のHLI動物を、HA/AGP4、及びPEG化化合物(例えば、PEG−IGF−1)又はビヒクルで処置した。そして、PEG化化合物の虚血性傷害に対する効果を、レーザードップラーを用いて血流を検出することにより又は虚血領域をイメージングすることにより、モニターした。
図4Aは、本例のプロトコル及び処置レジメンを図示する概略図である。具体的には、後肢虚血傷害を発生させた後1日目にHA及び抗PEG抗体を投与した。そして、HA/AGP4の投薬量投与の10分後にPEG−IGF−1の1回目の投薬量(30μg)を試験動物に与え、HLIの後1日目にPEG−IGF−1の2回目の投薬量を与え、続いて、HLI後2日目にPEG−IGF−1の投薬量を与えた。PEG−IGF−1の各投薬量を、8時間の間隔で連続的に与えたことに留意されたい。虚血領域における血流をモニターし続け、動物を最終的に屠殺し、虚血領域におけるアポトーシスレベルの推定のために、損傷した脚の筋肉を染色した。結果を
図4B〜4Cに示す。
【0107】
sham群と比較して、手術後に取得した血流画像は、虚血性脚をHA−単独+PEG−IGF−1又はHA/AGP4+PBSで1日目又は2日目に処置した場合に、有意な改善が見られないことを明らかにした。しかしながら、HA−単独+PEG−IGF−1及びHA/AGP4+PBS処置群において、爪変色の兆候があった。対照的に、このような現象は、PEG−IGF−1をHA/AGP4の処置の後に投与した併用処置群では明らかではなかった。このように、HA/AGP4処置はPEG−IGF−1注射後の虚血性脚での血流を改善しなかったが、虚血性損傷を最小限にした。
【0108】
IGF−1は細胞生存を強化することが知られているため、虚血性脚筋肉のHA/AGP4注射部位で示されるアポトーシス細胞の数をTUNELアッセイにより決定した(
図4B及び4C)。AGP4の非存在下では、投与されたPEG−IGF−1は、HA−単独群におけるアポトーシス細胞の数を減少させることができなかった。同様に、PBSの注射は、HA/AGP4群における細胞生存を改善しなかった。対照的に、HA/AGP4の投与後にPEG−IGF−1で処置したマウスは、アポトーシス細胞の有意な減少を示した。このことは、本HA/AGP4システムが、PEG−IGF−1の治療効果を延長するのを助けることができることを示唆する。
【0109】
この例の結果は、抗PEG抗体の寿命を延長することにおけるHAの使用を肯定した。これはPEG化治療剤の複数回適用を、その処置を必要とする被験体に投与することを可能にする。
【0110】
例3 HA/AGP4注射部位に保持されるPEG化顆粒球コロニー刺激因子(PEG−G−CSF)は、細胞リクルートメントを促進する
【0111】
この例では、別のPEG化化合物としてPEG−G−CSFを使用し、HA/AGP4注射部位でのその治療効果を例1のHLIモデルを使用して評価した。虚血性傷害に対するPEG−G−CSFの効果を、レーザードップラーを使用して血流を検出することにより、又は虚血領域をイメージングすることにより、モニターした。
【0112】
図5Aは、この例のプロトコル及び処置レジメンを図示する概略図である。具体的には、後肢虚血傷害を発生させた後1日目にHA又はHA/AGP4(すなわち、抗PEG抗体)を投与した。そして、HA又はHA/AGP4の投薬量投与の10分後にPEG−G−CSFの1回目の投薬量を試験動物に与え、PEG−G−CSFの2回目の投薬量をPEG−G−CSFの1回目の投薬量投与の24時間後、2日目に与え、続いてPEG−G−CSFの2回目の投薬量投与の後3日目にPEG−G−CSFの3回目の投薬量を与えた。虚血領域における血流をモニターし続け、動物を最終的に屠殺し、虚血領域におけるリクルートメントされた細胞の密度の推定のために、損傷した脚の筋肉を染色した。結果を
図5B〜5Cに示す。
【0113】
HA又はHA/AGP4単独での処置は、マウスの2日目及び4日目での虚血領域における血流の有意な増加を誘導できなかった。しかしながら、爪変色が、HA−単独+PEG−G−CSF群及びPBS投与したHA/AGP4群において見られ、PEG−G−CSF注射をしたHA/AGP4群においては見られなかった。
【0114】
HA/AGP4注射部位で造血幹細胞(HSC)及び内皮前駆細胞(EPC)をリクルートメントするPEG−G−CSFの能力も調べた(
図5B及び5C)。HA−単独+PEG−G−CSF群及びHA/AGP4+PBS対照と比較して、注射したPEG−G−CSFは、HA/AGP4注射部位に存在するHSC(CD133)及びEC(CD34)の数を増加させた(白い矢印)。
【0115】
例4 PEG化薬物の併用送達は、毛細血管形成を強化する
【0116】
PEG−IGF−1及びPEG−G−CSFの治療的作用が互いに異なることを考え、両方のPEG化治療剤の、HLIマウスモデルのHA/AGP4注射部位への連続的送達の全体的な治療効果を調べることにした。
【0117】
図6Aは、本例のプロトコルを図示する概略図であり、ここでPEG−IGF−1及びPEG−G−CSFが、様々な時点で注射された。Sham群及びPBS対照群と比較すると、両方の治療剤を注射したHA/AGP4群は、早くも14日目に、血流の有意な改善を示した(
図6B)。血流の有意差は、PBS対照群と併用送達した群との間で、21日目及び28日目に見られ続けている。さらに、後者の群は、28日目で、sham群と同様の血流値を示した。PBS対照群もまた28日間を通して血流の改善を示したが、マウスは早くも7日目で筋萎縮の兆候を、そして21日目で足指壊死の兆候を示した(
図6C)。対照的に、併用送達したHA/APG4群の足指の物理的外観は、sham群と同様であった。
【0118】
併用送達がHA/AGP4注射部位の血流を改善したかどうかをさらに検証するために、その部位を包含する組織切片を、毛細血管の存在について染色した(
図6D及び6E)。sham群と同様に、併用送達群の組織切片の蛍光染色は、虚血性組織に多数の毛細血管を示した(白い矢印)。比較すると、PBS対照群は、染色された組織に比較的少ない数の毛細血管を有した。
【0119】
上の例からの結果は、HA及び抗PEG抗体を同時に被験体の意図される標的部位へ投与することが、抗PEG抗体を処置部位により長い期間保持するのを助け、これがその後のPEG化薬の複数回適用(例えば、2〜3回適用)を被験体に送ることを可能にし、それにより治療効果を改善する、ということを確認するものである。
【0120】
実施形態の上記説明は単なる例示として与えられており、当業者によって様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。上記の明細書、実施例及びデータは、本発明の例示的な実施形態の構造及び使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態は、あるの程度の具体性をもって、又は1又は複数の個別の実施形態を参照して上に説明されているが、当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を行うことができる。