特許第6355879号(P6355879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナカンテクノ株式会社の特許一覧

特許6355879フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造
<>
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000002
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000003
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000004
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000005
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000006
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000007
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000008
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000009
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000010
  • 特許6355879-フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6355879
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷版および版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20180702BHJP
   B41N 1/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B41F27/12 B
   B41N1/12
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-516586(P2018-516586)
(86)(22)【出願日】2017年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2017031945
【審査請求日】2018年3月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311006881
【氏名又は名称】ナカンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良久
(72)【発明者】
【氏名】金子 朝光
(72)【発明者】
【氏名】新井 健二
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−31934(JP,A)
【文献】 米国特許第5088408(US,A)
【文献】 特開2013−223992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41N 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
フレキソ印刷版を、版胴に取付可能な一対の版バイスで挟持する版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造であって、
前記フレキソ印刷版の両端部には、前記版バイスによって挟持される挟持部が設けられており、
前記各挟持部には、複数のハトメ取付孔が所定間隔を隔てて形成されており、
前記各ハトメ取付孔には、孔縁を覆うハトメ部材がそれぞれ取り付けられており、
前記フレキソ印刷版の版胴側或いは印刷面側の少なくとも一方において、前記フレキソ印刷版から前記ハトメ部材が突出しており、
前記版バイスには、当該ハトメ部材の突出部が嵌まりこむ嵌合凹部が形成されており、
前記ハトメ部材の前記突出部が前記版バイスの前記嵌合凹部に嵌合された状態で前記フレキソ印刷版が前記版バイスによって挟持されていることを特徴とするフレキソ印刷版の挟持構造。
【請求項3】
前記ハトメ部材の全体の高さが前記フレキソ印刷版の厚みよりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のフレキソ印刷版の挟持構造。
【請求項4】
前記ハトメ部材には、その上面から下面に至る挿通孔が形成されており、該挿通孔に前記版バイス締結用の締結部材が挿通されていることを特徴とする請求項2または3に記載のフレキソ印刷版の挟持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版ならびに版バイスによってフレキソ印刷版を挟持する挟持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今や映像表示機器の標準となっている液晶ディスプレイは、小型から大型のものまであらゆる大きさのものが提供されている。液晶ディスプレイの表示の基本原理は、液晶分子を配向膜に接触させて一定の規則性をもって配向させる点にあり、このような配向膜を、液晶パネル用基板上(特に大型の液晶パネル用基板上)に、ピンホール等なく薄く均一な厚みで形成するための技術として、フレキソ印刷と呼ばれる印刷技術が利用されている。
【0003】
ここで、フレキソ印刷を用いた配向膜の形成方法について、図8図9を参照しつつ簡単に説明すると、円筒状の版胴1の外周面には、フレキソ印刷版2が巻き付けられている。このフレキソ印刷版2は、樹脂製のシート状部材で、その周方向の両外端部2a,2bが版バイス3(3A,3B)によってそれぞれ挟持されている。各版バイス3(3A,3B)は、版胴1に取り付けられるバイス本体4aと、このバイス本体4aにボルト4cを介して一体固定されるブラケット4bとを有する。フレキソ印刷版2の周方向一方(上流側)を挟持している版バイス3Aは、版胴1に設けられた第1の取付凹所1aに固定され、フレキソ印刷版2の周方向他方(下流側)を挟持している版バイス3Bは、版胴1に設けられた第2の取付凹所1bにその周方向に移動可能に取り付けられる。下流側の版バイス3Bのバイス本体4aには、シリンダ5が接続されており、このシリンダ5がバイス本体4aを下流側に引き寄せることによってフレキソ印刷版2に張力が付与される。
【0004】
ディスペンサー6から液溜まり6aに印刷液(一般的には、ポリイミド)が滴下貯留されると共にアニロックスロール7が回転作動し、その表面に印刷液が均一に塗布される。そして、フレキソ印刷版2が装着された版胴1がアニロックスロール7と同期回転し、アニロックスロール7の表面の印刷液がフレキソ印刷版2に塗布(一次転写)される。
【0005】
同時に、液晶パネル用基板8を所定位置に設置した定盤9が同期して所定高さまで上昇して待機しており、その上を版胴1が図8中、右方向に向かって転動する。これにより、液晶パネル用基板8にフレキソ印刷版2を接触させて回転移動させ、液晶パネル用基板8に配向膜が印刷(二次転写)され、目的とする配向膜Xが液晶パネル用基板8上に形成される。
【0006】
フレキソ印刷による配向膜Xの形成は以上のようにして行われるのであるが、上述したように、フレキソ印刷版2にはシリンダ5による張力が常時付与されている。したがって、ボルト4cの締め付けが甘く、版バイス3(3A,3B)によるフレキソ印刷版2の挟持力が不十分であると、フレキソ印刷版2の版バイス3(3A,3B)からの引き抜けが生じるおそれがある。
【0007】
このような引き抜けが生じるのを防止する技術として、図10に示すように、版バイス3(3A,3B)のブラケット4bに凸部4dを設けるとともに、フレキソ印刷版2における凸部4dと対応する位置に凹部2cを設け、この凸部4dと凹部2cとの嵌合によってフレキソ印刷版2の引き抜き抵抗を高め、版バイス3(3A,3B)からのフレキソ印刷版2の引き抜けが生じるのを防止する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
従来の方法では、フレキソ印刷版2を版バイス3(3A,3B)で強く挟持することによって凸部4dを押圧し、これを変形させることによって凹部2cに隙間なく嵌合させるようにしている。しかしながら、フレキソ印刷版2を強く挟持しすぎるとフレキソ印刷版2が損傷する可能性があるため、版バイス3によるフレキソ印刷版2の挟持力を適正な範囲に調整するのは、大変な注意力と労力とを要する難しい作業であった。
【0009】
また、従来技術では、版バイス3(3A,3B)に対するフレキソ印刷版2の位置決めを行うためにバイス本体4aに位置決めピン4eを立設し、この位置決めピン4eをフレキソ印刷版2の挿通孔2dに挿通するようにしている。しかしながら、フレキソ印刷版2には上述したように張力が常時加わっており、フレキソ印刷版2の挿通孔2dと位置決めピン4eとの当接部分には過大な応力が加わることとなるので、フレキソ印刷版2が樹脂製であり変形しやすいこととも相俟って挿通孔2dが次第に広がり、版ズレを生じさせるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−223992号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、引き抜け防止機能と位置合わせ機能を併有するにもかかわらず挟持作業が簡単で、しかも、版ズレが生じにくいフレキソ印刷版ならびに版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載した発明は、「版バイス12によって挟持される挟持部34が両端部に設けられており、
各挟持部34には、複数のハトメ取付孔36が所定間隔を隔てて形成されており、
各ハトメ取付孔36には、孔縁を覆うハトメ部材16がそれぞれ取り付けられており、
各ハトメ部材16は、版胴側或いは印刷面側の少なくとも一方において突出する突出部16aを有する」ことを特徴とするフレキソ印刷版14である。
【0013】
請求項2に記載した発明は、「フレキソ印刷版14を、版胴1に取付可能な一対の版バイス12で挟持する版バイス12によるフレキソ印刷版14の挟持構造10であって、
フレキソ印刷版14の両端部には、版バイス12によって挟持される挟持部34が設けられており、
各挟持部34には、複数のハトメ取付孔36が所定間隔を隔てて形成されており、
各ハトメ取付孔36には、孔縁を覆うハトメ部材16がそれぞれ取り付けられており、
フレキソ印刷版14の版胴側或いは印刷面側の少なくとも一方において、フレキソ印刷版14からハトメ部材16が突出しており、
版バイス12には、当該ハトメ部材16の突出部16aが嵌まりこむ嵌合凹部24が形成されており、
ハトメ部材16の突出部16aが版バイス12の嵌合凹部24に嵌合された状態でフレキソ印刷版14が版バイス12によって挟持されている」ことを特徴とするフレキソ印刷版の挟持構造10である。
【0014】
請求項3に記載した発明は、「ハトメ部材16の全体の高さHがフレキソ印刷版14の厚みTよりも大きく設定されている」ことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載した発明は、「ハトメ部材16には、その上面から下面に至る挿通孔40cが形成されており、この挿通孔40cに版バイス12締結用の締結部材22が挿通されている」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、フレキソ印刷版の版胴側に突出している突出部を版バイスの嵌合凹部に嵌合するだけで、或いは、版バイス締結用の締結部材をハトメ部材の挿通孔に挿通するだけでフレキソ印刷版の版バイスに対する位置決めを精度良く行うことができる。
【0017】
また、ハトメ部材全体の高さがフレキソ印刷版の厚みよりも大きく設定されているので、フレキソ印刷版を版バイスで挟持する際には、挟持部のハトメ取付孔に取り付けられているハトメ部材を直接挟持することになる。つまり、フレキソ印刷版を版バイスで挟持する際にその挟持力が直接作用するのはハトメ部材であり、ハトメ部材がストッパとして機能することになるので、フレキソ印刷版に過剰な締め付け力が作用することはなく、フレキソ印刷版が損傷を受けることはない。したがって、版バイスの挟持作業に際してフレキソ印刷版の損傷を気にする必要はなく、その挟持作業を簡単に行うことができる。
【0018】
また、上述したように、フレキソ印刷版が版バイスによる過剰な締め付け力を受けて圧縮されることはなく(換言すれば、本発明では、フレキソ印刷版は挟持により薄肉化していない)、ハトメ取付孔の孔縁がハトメ部材によって補強されていることとも相俟って、フレキソ印刷版に対して張力が付与されたとしてもハトメ取付孔が広がるようなことはなく、版ズレが生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の一実施例の挟持構造を示す分解斜視図である。
図2】挟持構造を示す断面図である。
図3】フレキソ印刷版にハトメ部材が取り付けられている状態を示す断面図である。
図4】フレキソ印刷版へのハトメ部材の取り付け方法を示す図である。
図5】挟持構造の他の例を示す断面図である。
図6】ハトメ部材の変形例を示す例である。
図7】挟持構造のさらに他の例を示す断面図である。
図8】フレキソ印刷の概略を示す図である。
図9】版バイスを版胴に取り付けた状態を示す図である。
図10】従来の挟持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に従って説明する。図1は、本発明にかかる版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造10(以下、単に「挟持構造10」という。)を示す分解斜視図であり、図2はその断面図である。
【0021】
これらの図が示すように、本発明の挟持構造10は、版バイス12、フレキソ印刷版14およびハトメ部材16により大略構成されている。
【0022】
版バイス12は、フレキソ印刷版14の両端部をそれぞれ挟持するためのもので、バイス本体18、ブラケット20および締結部材22により構成されている。
【0023】
バイス本体18は、金属などの剛性材料からなる長尺の板状部材で、その上面には、平面視円形の嵌合凹部24が複数、所定間隔を隔てて穿設されている。また、各嵌合凹部24の中心には、ナット取付孔26が形成されている。
【0024】
ナット取付孔26は、後述する締結部材22のナット30を取り付けるためのもので、底面側の拡径部26aと、拡径部26aの上面側に連接され拡径部26aよりも細径の細径部26bとを有する段付き孔として形成されている(図2参照)。そして、このナット取付孔26に、後述する締結部材22のナット30が取り付けられている。
【0025】
なお、本実施例では、ナット取付孔26と嵌合凹部24とが同軸的に形成されているが(つまり、ナット取付孔26は、嵌合凹部24の孔底からバイス本体18の底面に至るように形成されている)、ナット取付孔26と嵌合凹部24とを必ずしも同軸的に形成する必要はなく、たとえば図5に示すように、ナット取付孔26を嵌合凹部24とは異なる位置に形成してもよい。この場合、ナット取付孔26は、バイス本体18の上面から底面に至るように形成される。つまり、ナット取付孔26は、バイス本体18をその上下方向に貫通するように形成されることになる。
【0026】
ブラケット20は、バイス本体18と同様、金属などの剛性材料からなる長尺の板状部材で、その長さはバイス本体18と略等しく設定されている。ブラケット20の上面は、その長手方向両端部端縁が斜めに切り欠かれており、バイス本体18の嵌合凹部24と対応する位置には、上面から下面に至るボルト挿通孔28が形成されている。ボルト挿通孔28の内側面には、ボルト当接鍔28aが形成されている。
【0027】
締結部材22は、バイス本体18とブラケット20との間に介在させたフレキソ印刷版14をその締め付け力によって挟持するもので、ナット30とボルト32とを有する。
【0028】
ナット30は、ナット取付孔26の拡径部26aに嵌まりこむ基台部30aおよび、基台部30aの上端に連接され、ナット取付孔26の細径部26bに嵌まりこむナット部30bとを有し、ナット部30bの中心には雌ネジ30cが刻設されている。
【0029】
ボルト32は、ボルト挿通孔28に嵌まりこむ頭部32aと、頭部32aから垂設された足部32bとを有する。足部32bは、ボルト当接鍔28aによって囲まれた隙間を通過でき、かつ、ナット30の雌ネジ30cに捩じ込むことができるよう、その大きさが適宜設定されている。
【0030】
締結部材22を設ける位置や個数は特に限定されるものではなく、フレキソ印刷版14の挟持力を十分に確保できる範囲内において適宜設定することが可能である。本実施例では、4つの締結部材22を使用することによってフレキソ印刷版14が挟持されている。
【0031】
フレキソ印刷版14は、シート状部材であり、その大きさは、版胴1の大きさに合わせて適宜設定されている。本実施例においてフレキソ印刷版14は三層構造となっており、版胴側がPET(ポリエチレンテレフタラート)製の薄膜層であるベースフィルム14aであり、中央部分が中間層14bであり、印刷面側が感光ゴム層14cである(図1の円内参照)。なお、簡略化のため、図2以降はフレキソ印刷版14が1枚のシート状部材として描かれている。
【0032】
フレキソ印刷版14の両外端部は、版バイス12によって挟持される挟持部34であり、各挟持部34には、ハトメ取付孔36がバイス本体18の嵌合凹部24と対応する位置に形成されている。ハトメ取付孔36は、印刷面側が大径部36aで、反対の版胴側が小径部36bとなっている段付き孔であり、このハトメ取付孔36に後述するハトメ部材16が取り付けられている(図3図4参照)。ハトメ取付孔36は、レーザー加工によって位置精度よく形成されている。
【0033】
ハトメ部材16は、版バイス12でフレキソ印刷版14を挟持固定する際にフレキソ印刷版14が不所望に圧縮されないようにするための「ストッパ」、ハトメ取付孔36の孔縁を補強するための「補強部材」ならびに版バイス12に対するフレキソ印刷版14の「位置決め部材」として機能するもので、下側ハトメ部材38と上側ハトメ部材40とで構成されている。
【0034】
下側ハトメ部材38は、金属などの剛性材料からなる部材で、外側筒状部38aと、外側筒状部38aの下端部において外方に延びる外側筒状部38aよりも大径の版胴側鍔部38bとを有し、側面から見たときに略凸字型(逆T字型)にて形成されている。外側筒状部38aは、その外径がハトメ取付孔36の小径部36bの内径と略等しく設定されており、その軸方向の長さa1は、ハトメ取付孔36の小径部36bの軸方向長さt1と略等しく設定されている(図3図4参照)。外側筒状部38aの中心に設けられている孔は上側ハトメ部材装着孔38cである。版胴側鍔部38bは、フレキソ印刷版14の版胴側の面から下方に突出しており(この突出部分がハトメ部材16の突出部16aである。この点については後述する。)、その高さa2は、嵌合凹部24の掘り込み深さと大略等しく設定されている。また、版胴側鍔部38bの外径は、バイス本体18の嵌合凹部24の内径と大略等しく設定されている。
【0035】
上側ハトメ部材40は、下側ハトメ部材38と同様、金属などの剛性材料からなる部材で、内側筒状部40aと、内側筒状部40aの上端部において外方に延びる内側筒状部40aよりも大径の印刷面側鍔部40bとを有し、側面から見たときに略逆凸字型(T字型)にて形成されている。内側筒状部40aは、その外径が下側ハトメ部材38の外側筒状部38aの内径と略等しく設定されており、印刷面側鍔部40bは、フレキソ印刷版14に形成されているハトメ取付孔36の大径部36aと大略等しく設定されている。
【0036】
内側筒状部40aの軸方向の長さb1は、下側ハトメ部材38全体の高さ(a1+a2)と大略等しく設定されている。また、印刷面側鍔部40bの高さb2は、ハトメ取付孔36の大径部36aの掘り込み深さt2と大略等しく設定されている。
【0037】
フレキソ印刷版14のハトメ取付孔36にハトメ部材16が取り付けられている状態において、ハトメ部材16全体の高さHは、フレキソ印刷版14の厚みTよりも大きく設定されている。また、下側ハトメ部材38がフレキソ印刷版14を挟持している領域(版胴側鍔部38bがフレキソ印刷版14と接触する幅a3)と、上側ハトメ部材40がフレキソ印刷版14を挟持している領域(印刷面側鍔部40bがフレキソ印刷版14と接触する幅b3)とは、大略等しく設定されている。
【0038】
フレキソ印刷版14のハトメ取付孔36へのハトメ部材16の取り付けは、別途用意した取付治具42(図4参照)を使用して行われる。ここで、取付治具42について簡単に説明しておくと、取付治具42は、金属などの剛性材料からなる平板状の板状部材であり、その上面には、ハトメ装着穴42aが形成されている。
【0039】
ハトメ装着穴42aは、下側ハトメ部材38の版胴側鍔部38bと大略等しく形成されており、その中央部分には支柱42bが立設されている。支柱42bの外径は、上側ハトメ部材40の内側筒状部40aの中心に設けられている挿通孔40cと大略等しくあるいは若干小さめに設定されている。
【0040】
以上のように構成されている取付治具42を用いてハトメ取付孔36にハトメ部材16を装着する方法について説明すると、まず、取付治具42のハトメ装着穴42aに下側ハトメ部材38の版胴側鍔部38bを嵌め込み、その上からフレキソ印刷版14を載置する。このとき、下側ハトメ部材38の外側筒状部38aがフレキソ印刷版14のハトメ取付孔36内に挿入されるようフレキソ印刷版14を載置することになる。
【0041】
フレキソ印刷版14の載置が済むと、フレキソ印刷版14の印刷面側(図4における上面側)から上側ハトメ部材40を宛がい、図示しないプレス機などを用いて内側筒状部40aを外側筒状部38aの上側ハトメ部材装着孔38c内に圧入する。これにより、上側ハトメ部材40と下側ハトメ部材38とが一体化され、フレキソ印刷版14のハトメ取付孔36にハトメ部材16が取り付けられることになる。ハトメ取付孔36にハトメ部材16が取り付けられた状態では、ハトメ取付孔36の孔縁全体がハトメ部材16によって補強されることになる。そして、以上の操作を全てのハトメ取付孔36に対して行うことにより、フレキソ印刷版14へのハトメ部材16の取り付けが完了する。
【0042】
全てのハトメ取付孔36にハトメ部材16が取り付けられたフレキソ印刷版14を版バイス12で挟持する際には、まず、バイス本体18のナット取付孔26に予め締結部材22のナット30を装着する。本実施例では、上述したように、4つのナット取付孔26にナット30を取り付けるようにしたが、全てのナット取付孔26にナット30を取り付けるようにしてもよい。
【0043】
そして、ハトメ部材16が取り付けられているフレキソ印刷版14の挟持部34を、ナット30が取り付けられたバイス本体18の上に載置する。このとき、ハトメ部材16の突出部16a(より具体的に言うと、下側ハトメ部材38の版胴側鍔部38b)をバイス本体18の嵌合凹部24に嵌め込むと、版胴側鍔部38bの外径と嵌合凹部24の内径とが大略等しく設定されていることから、版胴側鍔部38bと嵌合凹部24との間にガタツキが生じることはない。つまり、ハトメ部材16と嵌合凹部24とを嵌合させることにより、版バイス12に対するフレキソ印刷版14の「位置決め」が自動的に行われることとなる。
【0044】
バイス本体18に対するフレキソ印刷版14の位置決めが完了すると、ブラケット20のボルト挿通孔28とハトメ部材16(より詳しくは上側ハトメ部材40の挿通孔40c)とが一致するようにブラケット20を位置調整しつつ、ブラケット20をフレキソ印刷版14上に載置する。そして、ボルト32の足部32bをボルト挿通孔28に挿入し、その先端をナット30の雌ネジ30cにねじ込む。すると、ボルト32の頭部32aがボルト当接鍔28aと当接してブラケット20をバイス本体18側へ押圧するとともに、ナット30の基台部30aが拡径部26aと当接してバイス本体18をブラケット20側へ押圧することにより挟持力が発生し、フレキソ印刷版14が版バイス12によって挟持固定される。
【0045】
なお、版バイス12に対するフレキソ印刷版14の「位置決め」は、ハトメ部材16の挿通孔40cに対する締結部材22の挿通によっても行われる。
【0046】
本実施例によれば、フレキソ印刷版14の版胴側に突出している突出部16aを版バイス12の嵌合凹部24に嵌合することにより、フレキソ印刷版14の版バイス12に対する位置決めが自動的に行われることとなるし、ハトメ部材16の突出部16aがフレキソ印刷版14の嵌合凹部24に嵌合されることにより、版バイス12に対するフレキソ印刷版14の引き抜け方向への移動が規制される。
【0047】
また、ハトメ部材16全体の高さHがフレキソ印刷版14の厚みTよりも大きく設定されているので、バイス本体18とブラケット20とでフレキソ印刷版14を挟持すると(すなわち、版バイス12でフレキソ印刷版14を挟持すると)、ハトメ部材16が「ストッパ」として機能することとなり、フレキソ印刷版14に過剰な挟持力が作用することがない。したがって、版バイス12をどれだけきつく挟持したとしてもフレキソ印刷版14に過剰な挟持力が作用することはなく(不所望な損傷を受けることはなく)、その挟持作業を簡単に行うことができる。
【0048】
さらに、フレキソ印刷版14のハトメ取付孔36は、その孔縁全体が金属などの剛性材料からなるハトメ部材16によって補強されている。したがって、フレキソ印刷版14に対して張力が付与されると、締結部材22がハトメ部材16の挿通孔40cと接触するが、上述したようにハトメ部材16は全体が金属などの剛性材料によって形成されているので変形しない。また、ハトメ取付孔36の孔縁は、下側ハトメ部材38の版胴側鍔部38bと、上側ハトメ部材40の印刷面側鍔部40bとで挟まれているので、印刷時においてフレキソ印刷版14に張力が付与されても形が崩れない。そして、ボルト32の細い足部32bは、ハトメ取付孔36の内側面と直接当接してフレキソ印刷版14と直接触れることがないので、ハトメ部材16が大径であることとも相俟ってハトメ取付孔36部分で伸びが発生することはなく、版ズレが生じることもない。
【0049】
上述した実施例では、「ハトメ部材16と嵌合凹部24との嵌合」および「ハトメ部材16の挿通孔40cに対する締結部材22の挿通」により、版バイス12に対するフレキソ印刷版14の「位置決め」が行われるが、このような「位置決め」は、「ハトメ部材16と嵌合凹部24との嵌合」又は「ハトメ部材16の挿通孔40cに対する締結部材22の挿通」の何れか一方の構成があれば機能する。
【0050】
例えば、「ハトメ部材16と嵌合凹部24との嵌合」のみによって上記位置決めを行う場合には、上述した図5実施例のように、ナット取付孔26と嵌合凹部24とを異なる位置に形成することができる。一方、「ハトメ部材16の挿通孔40cに対する締結部材22の挿通」のみによって上記位置決めを行う場合には、図7に示すように、嵌合凹部24の内径をハトメ部材16の突出部16a(版胴側鍔部38b)の外径よりも大径とすることができる。
【0051】
また、上述した実施例では、ハトメ部材16の突出部16aをフレキソ印刷版14の版胴側に形成するようにしたが、印刷面側に形成するようにしてもよいし、図6に示すように、版胴側と印刷面側の両方に形成するようにしてもよい。フレキソ印刷版14の印刷面側に突出部16aを形成する場合は、この突出部16aが嵌まりこむ嵌合凹部24が版バイス12のブラケット20の底面に形成される。
【符号の説明】
【0052】
1:版胴、1a:第1の取付凹所、1b:第2の取付凹所、2:フレキソ印刷版、2a・2b:(フレキソ印刷版の)外端部、2c:凹部、2d:挿通孔、3(3A,3B):版バイス、4a:バイス本体、4b:ブラケット、4c:ボルト、4d:凸部、4e:位置決めピン、5:シリンダ、6:ディスペンサー、6a:液溜まり、7:アニロックスロール、8:液晶パネル用基板、9:定盤、10:フレキソ印刷版の挟持構造、12:版バイス、14:フレキソ印刷版、16:ハトメ部材、16a:突出部、18:バイス本体、20:ブラケット、22:締結部材、24:嵌合凹部、26:ナット取付孔、26a:拡径部、26b:細径部、28:ボルト挿通孔、28a:ボルト当接鍔、30:ナット、30a:基台部、30b:ナット部、30c:雌ネジ、32:ボルト、32a:頭部、32b:足部、34:挟持部、36:ハトメ取付孔、36a:大径部、36b:小径部、38:下側ハトメ部材、38a:外側筒状部、38b:版胴側鍔部、38c:上側ハトメ部材装着孔、40:上側ハトメ部材、40a:内側筒状部、40b:印刷面側鍔部、40c:挿通孔、42:取付治具、42a:ハトメ装着穴、42b:支柱、a1:外側筒状部の軸方向の長さ、a2:版胴側鍔部の高さ、a3:版胴側鍔部がフレキソ印刷版と接触する幅、b1:内側筒状部の軸方向の長さ、b2:印刷面側鍔部の高さ、b3:印刷面側鍔部がフレキソ印刷版と接触する幅、H:ハトメ部材全体の高さ、t1:ハトメ取付孔の小径部の軸方向長さ、t2:ハトメ取付孔の大径部の深さ、T:フレキソ印刷版の厚み、X:配向膜
【要約】
挟持力の調整が簡単で、印刷時におけるフレキソ印刷版の引き抜けを生じさせることなく、しかも、版伸びが起こりにくい版バイスによるフレキソ印刷版の挟持構造を提供する。
フレキソ印刷版14の版胴側或いは印刷面側の少なくとも一方において、フレキソ印刷版14からハトメ部材16が突出しており、版バイス12には、当該ハトメ部材16の突出部16aが嵌まりこむ嵌合凹部24が形成されており、ハトメ部材16の突出部16aが版バイス12の嵌合凹部24に嵌合された状態でフレキソ印刷版14が版バイス12によって挟持されていることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10