特許第6355883号(P6355883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355883
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 11/00 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   A47C11/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-225549(P2012-225549)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-76175(P2014-76175A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月29日
【審判番号】不服2017-8699(P2017-8699/J1)
【審判請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】松下 寛也
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 一ノ瀬 覚
【審判官】 仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−11741(JP,A)
【文献】 特開2001−1824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 11/00
A47C 1/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背凭れとからなる複数の座席を、左右方向に離間させて共通の脚体に支持してなる椅子において
互いに隣接する座席におけるいずれか一方の座を構成する座板の一の側端面が他方の座席の座を構成する座板の他の側端面と該他方の座席の座の側で近接または当接するように、他方の座側に向かって側方に延出し、この延出部を、互いに隣接する座間に形成される隙間を塞ぐ前後方向のカバー部としたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
互いに隣接する座席におけるいずれか一方の背凭れを構成する背板の一の側端面が他方の座席の背凭れを構成する背板の他の側端面と該他方の背凭れの側で近接または当接するように、他方の背凭れ側に向かって延出し、この延出部を、互いに隣接する背凭れ間に形成される隙間を塞ぐ上下方向のカバー部としたことを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座板と前記背板とを一体的に形成し、前記上下方向のカバー部を前記前後方向のカバー部に連続させたことを特徴とする請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
一体的に形成された前記座板と前記背板との表面に、クッション材を設けたものとし、前記座板及び背板のみを側方に延出させることにより前記上下方向のカバー部と前記前後方向のカバー部としたことを特徴とする請求項3に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば病院の待合室やホテルのロビー、空港等の公共施設のオープンスペースに設置され、座と背凭れとからなる複数の座席が共通の脚体により支持された椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、複数の座席が共通の脚体により支持された椅子としては、例えば特許文献1及び2に記載されているように、複数の座席を一体に連続して配置したものや、特許文献3及び4に記載されているように、互いに隣接する複数の座席を離間させて配置したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3037917号公報(第9頁、図1
【特許文献2】特開2011−83526号公報(第4頁、図1
【特許文献3】特開2001−161496号公報(第3頁、図1
【特許文献4】特開2009−77764号公報(第3頁、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されている椅子のように、複数の座席を一体に連続して配置すると、一人一人が使用する座席の境界が分かりにくくなるので、座席の数だけ着座することができなくなることがある。
【0005】
一方、特許文献3及び4に記載されている椅子は、互いに隣接する座席を離間させているので、上記のような問題が生じることはない。しかし、特許文献3に記載の椅子は、互いに隣接する座席間に隙間が形成されているので、この隙間より物を落としたり、子供の手や足が隙間に入り込んで、思わぬ怪我をする虞がある。このような問題が発生するのを防止するために、特許文献4に記載の椅子においては、互いに隣接する座席間の隙間を、スペーサにより塞いでいる。しかし、このスペーサは、椅子とは別体のものであり、しかもスペーサを、互いに隣接する座の対向部を支持するブラケットに、ねじにより固定しているので、その取付けに手間がかかるとともに、部品点数が増えてコスト高にもなる。また着座時の振動が、スペーサを介して隣接する座席に伝わる虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、隣接する座席に振動が伝わるのを防止しうるようにして、互いに隣接する座席との間の隙間を簡単に閉塞しうるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の椅子は、
座と背凭れとからなる複数の座席を、左右方向に離間させて共通の脚体に支持してなる椅子において、
互いに隣接する座席におけるいずれか一方の座を構成する座板の一の側端面が他方の座席の座を構成する座板他の側端面と該他方の座席の座の側で近接または当接するように、他方の座側に向かって側方に延出し、この延出部を、互いに隣接する座間に形成される隙間を塞ぐ前後方向のカバー部としたことを特徴としている。
この特徴によれば、互いに隣接する座席におけるいずれか一方の座を構成する座板を、他方の座席の座を構成する座板側に延出させるだけで、互いに隣接する座間の隙間を簡単に閉塞することができる。従って、別体のカバーを製作して、これを脚体や座席に取り付ける必要がなく、部品点数や取付工数が削減されることにより、コスト低減が図れる。また、カバー部は、互いに隣接する他方の座に連結されていないので、着座時の振動が、カバー部を介して他方の座席に伝わることを抑止できる。
【0008】
本発明の椅子は、
互いに隣接する座席におけるいずれか一方の背凭れを構成する背板の一の側端面が他方の座席の背凭れを構成する背板他の側端面と該他方の背凭れの側で近接または当接するように、他方の背凭れ側に向かって延出し、この延出部を、互いに隣接する背凭れ間に形成される隙間を塞ぐ上下方向のカバー部としたことを特徴としている。
この特徴によれば、互いに隣接する座席における背凭れ間の隙間も、一方の背凭れを構成する背板より延出させた上下方向のカバー部により簡単に閉塞することができる。また、背凭れ間の隙間も閉塞すると、前後方向に並べて配置された椅子の後方から、前方の椅子の着座者が見えなくなるので、プライバシー上好ましい椅子となる。
【0009】
本発明の椅子は、
前記座板と前記背板とを一体的に形成し、前記上下方向のカバー部を前記前後方向のカバー部に連続させたことを特徴としている。
この特徴によれば、互いに隣接する座間の隙間から背凭れ間の隙間まで、前後方向のカバー部と上下方向のカバー部とにより、連続的に体裁よく、かつ強固に塞ぐことができる。また、前後方向のカバー部と上下方向のカバー部とを連続させると、それらの曲げ剛性が大となるので、前後方向のカバー部と上下方向のカバー部とを利用して、これらに、例えば肘掛けや、カップまたはステッキホルダ等のオプション部材を安定よく取り付けることができる。さらに、これらカバー部の幅方向の領域を拡げることで、これらカバー部に取り付けられる肘掛けやカップまたはステッキホルダ等のオプション部材の接触面積を大きく採ることができるため、カバー部に対しオプション部材を確実に固定することができる。
【0010】
本発明の椅子は、
一体的に形成された前記座板と前記背板との表面に、クッション材を設けたものとし、前記座板及び背板のみを側方に延出させることにより前記上下方向のカバー部と前記前後方向のカバー部としたことを特徴としている。
この特徴によれば、座板及び背板のみを延出させているので、クッション材を目安として、一人一人が使用する座席の境界を容易に見分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る椅子の斜視図である。
図2】同じく、正面図である。
図3】同じく、平面図である。
図4図3のIV−IV線に沿う拡大縦断正面図である。
図5図2のV−V線に沿う拡大縦断側面図である。
図6】(a)は、本発明の第1の変形例に係るカバー部にオプション部材を取り付けた状態の斜視図であり、(b)は、本発明の第2の変形例に係るカバー部にオプション部材を設けた座席を組み付ける状態の斜視図である。
図7】本発明の実施例2に係る椅子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、以下の実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1に係る椅子につき、図1から図5を参照して説明する。本発明の実施例1に係る椅子は、正面視で左右方向を向く共通の脚体1に、左右複数(実施例では2個)の座席2,2’を、左右方向に離間させて支持したものよりなっている。
【0014】
脚体1は、前後方向に側面視山形状に拡開する前後1対の脚杆3a,3aを各々が有する左右1対の支持脚3,3と、左右両支持脚3の上端部の凹溝4に左右両端部が上方より嵌合され、図示しないねじにより固定された角管状のビーム5とを備えている。左右の支持脚3,3の上端には、側面視前向きL字状をなす支持ブラケット6,6の中央部が、ビーム5の上半部を跨ぐようにして図示しないねじにより固定されている。また、ビーム5の左右方向の中央部にも、上記と同形の左右2個の支持ブラケット6,6が、下部の固定部材7,7とにより、ビーム5を上下から挟み込むようにして、ねじにより固定されている。
【0015】
左右の座席2,2’は、それぞれ、座8と背凭れ9とからなり、この座8と背凭れ9は、互いに一体的に形成された座板10,10’及び背板11,11’と、それらの上面と前面に取り付けられたクッション材12,12とからなっている。互いに隣接する座席2,2’のいずれか一方、すなわち本実施例では正面視で左側の座席2における座板10と背板11は、クッション材12を残して、右側の座席2’における座板10’と背板11’の左側端と対向する方向に外側方に延出させてある(図4参照)。これにより、左右の座席2,2’は、左右非対称とされている。この延出部は、両座席2,2’を、後述するように、左右方向に離間させて脚体1に取り付けたとき、互いに隣接する座席2,2’間に形成される隙間を塞ぐ前後方向のカバー部13と、その後端に連続する上下方向のカバー部14となっている(図5参照)。
【0016】
座板10,10’の両側端部の下面と、背板11,11’の両側端部の後面下部とを、側端部の支持ブラケット6と中央部の支持ブラケット6とにより支持し、図示しないねじにより固定することにより、左右の座席2,2’は、左右の支持ブラケット6を介して、互いに左右方向に離間するように、脚体1により支持されている。この際、上記左側の座席2における座板10と背板11より延出する前後方向のカバー部13と、上下方向のカバー部14との側端面が、右側の座席2’における座板10’と背板11’の側端面と近接または当接するように、左右の座席2,2’を脚体1に取り付けることにより、互いに隣接する座席2,2’間に形成される隙間が閉塞される。従って、隙間より物を落下したり、子供の手や足が隙間に入り込んだりするのを防止することができる。
【0017】
以上説明したように、この実施例1の椅子においては、左側の座席2における座板10と背板11を、右側の座席2’における座板10’と背板11’の左側端と近接または当接するように外側方に延出させ、この延出部を、互いに隣接する座席2間に形成される隙間を閉塞する前後方向のカバー部13と上下方向のカバー部14としてあるので、別体のカバーを製作して、これを脚体1や座席2に取り付ける必要がなく、部品点数や取付工数が削減されることにより、コスト低減が図れる。また、カバー部13,14は、右側の座席2には連結されていないので、着座時の振動が、カバー部13,14を介して互いに隣接する座席2に伝わることを抑止できる。
【0018】
また、互いに隣接する座席2,2’における背凭れ9,9間の隙間も、背凭れ9の背板11より延出させた上下方向のカバー部14により簡単に閉塞することができる。また、背凭れ9,9間の隙間も閉塞すると、前後方向に並べて配置された椅子の後方から、前方の椅子の着座者が見えなくなるので、プライバシー上好ましい椅子となる。
【0019】
さらに、クッション材12を残して、座板10及び背板11のみを延出させているので、クッション材12を目安として、一人一人が使用する座席2の境界を容易に見分けることができる。
【0020】
一体的に形成された座板10と背板11とを側方に延出させて、前後方向のカバー部13と上下方向のカバー部14とを連続させているので、座8用と背凭れ9用の二つのカバーは必要はなく、また座8間の隙間から背凭れ9間の隙間まで、連続的に外観体裁よく、かつ強固に塞ぐことができる。
【0021】
また、前後方向のカバー部13と上下方向のカバー部14とを連続させると、それらの曲げ剛性が大となるので、例えば本発明の第1の変形例として図6(a)に示すように、前後方向のカバー部13と上下方向のカバー部14とを利用して、これらに、例えば肘掛け15や、カップまたはステッキ用のホルダ16等のオプション部材を安定よく取り付けることもできる。さらに、これらカバー部13,14の幅方向の領域を拡げることで、これらカバー部13,14に取り付けられる肘掛け15やカップまたはステッキホルダ16等のオプション部材の接触面積を大きく採ることができるため、カバー部13,14に対しオプション部材を確実に固定することができる。尚、図6(a)では、オプション部材である略L字状の肘掛け15の各端部が、前後方向のカバー部13及び上下方向のカバー部14のそれぞれに対し、図示しないボルト等の接合部材により接合されており、すなわち肘掛け15が複数個所で接合されているため、例えば、隣接する座席の間に現れるビームに対し1箇所のみで接合されている従来のオプション部材に比べて、取り付けの安定性が格段に高い。
【0022】
さらに例えば、本発明の第2の変形例として図6(b)に示すように、右側の座席2’にオプション部材である肘掛け15’を一体形成若しくは予め固定するとともに、左側の座席2の前後方向のカバー部13’及び上下方向のカバー部14’の適所に、略コ字状の切欠部17,18を形成し、これ等切欠部17,18を肘掛け15’に嵌合させるようにして、両座席2,2’を組み付けるようにしてもよく、このようにすることで、オプション部材である肘掛け15’を座席2’に対しさらに安定的に設けることができる。
【実施例2】
【0023】
図7は、本発明の実施例2に係る椅子の斜視図を示すもので、この実施例では、左側の座席2’’の座8における座板10のみを、右側の座席2’の座8における座板10’の左側端と近接または当接するように、外側方に延出させ、この延出部を前後方向のカバー部13としたものである。なお、本実施例2では、左側の座席2’’の背凭れ9における背板11’は、右側の座席2’の背凭れ9における背板11’と略同じ幅に形成されており、両背板11’,11’の間に、所定幅の間隙が形成されている。
【0024】
この実施例2の椅子のように、左側の座席2’’の座8における座板10のみを外側方に延出させ、この延出部を前後方向のカバー部13としただけでも、互いに隣接する座8間に形成される隙間が、カバー部13により塞がれるので、隙間より物を落下したり、子供の手や足が隙間に入り込んだりするのを防止することができる。また、上記実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0025】
本発明は、上記実施例に限定されるものではない。上記実施例においては、座席2における座8と背凭れ9を、座板10及び背板11の表面にクッション材12を有するものとしたが、座8と背凭れ9とを、それぞれ座板10及び背板11のみとし、それらを一体的に形成したものとしてもよい。この際は、上記実施例と同様に、左側の座席2における座板10と背板11の両方または座板10のみを、右側の座席2側に延出させればよい。このようにすると、一人一人が使用する座席2の境界が分かりにくくなることが考えられるが、互いに隣接する座席2の座板10の上面に、座者の臀部が若干入り込む凹部等を形成すれば、そのような問題が生じる虞はない。
【0026】
上記実施例の座席2は、座8と背凭れ9とを一体的に形成したものとしたが、それらを別体として脚体1に取り付けた椅子にも、本発明を適用することができる。この際には、座板10と背板11とを別々に延出させることになるが、それらの延出部の後端と下端とを当接させるようにすれば、外観体裁が損なわれることはない。
【0027】
上記実施例の椅子は、左右2席の座席2を有するものとしたが、例えば3席以上の座席2を有する椅子にも適用しうることは勿論である。この場合、3席以上の椅子に適用される座席は、側端面が他方の座側に向かって側方に延出した複数の座席2,2,・・と、このような延出部を有さず端部に配置される1席の座席2’と、から構成される。
【符号の説明】
【0028】
1 脚体
2,2’,2’’ 座席
3 支持脚
3a 脚杆
4 凹溝
5 ビーム
6 支持ブラケット
7 固定部材
8 座
9 背凭れ
10,10’ 座板
11,11’ 背板
12 クッション材
13,13’ 前後方向のカバー部
14,14’ 上下方向のカバー部
15,15’ 肘掛け
16 ホルダ
17,18 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7