特許第6355886号(P6355886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355886
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】積層鉄心の樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20180702BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20180702BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20180702BHJP
   H02K 21/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H02K1/27 501D
   H02K1/22 A
   H02K15/02 K
   H02K21/12 G
   H02K21/12 M
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-242851(P2012-242851)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-93862(P2014-93862A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月24日
【審判番号】不服2017-4601(P2017-4601/J1)
【審判請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】間普 浩敏
【合議体】
【審判長】 藤井 昇
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 中川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0189309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石挿入孔にそれぞれ永久磁石が挿入された鉄心本体を、対向配置された樹脂注入用金型と受け金型とで挟持し、前記樹脂注入用金型に形成された樹脂溜めポットからプランジャを用いて溶融した樹脂を押し出し、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に樹脂封止する積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂注入用金型は、前記樹脂溜めポット、前記磁石挿入孔に連通する注入孔、及び前記注入孔と前記樹脂溜めポットとを連結して前記樹脂の通過するランナーが形成された超硬材からなる円筒体と該円筒体を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体とを有し、
平面視して前記円筒体の外周面より内側のみに、前記注入孔が設けられ、樹脂流れによって発生する前記樹脂注入用金型の摩耗を減少したことを特徴とする積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項2】
複数の磁石挿入孔にそれぞれ永久磁石が挿入された鉄心本体を、対向配置された樹脂注入用金型と受け金型とで挟持し、前記樹脂注入用金型に形成された樹脂溜めポットからプランジャを用いて溶融した樹脂を押し出し、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に樹脂封止する積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂注入用金型は、前記樹脂溜めポットが形成された超硬材からなる円筒体と、該円筒体を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体とを有し、
前記樹脂注入用金型と前記鉄心本体の間に中間プレートが配置され、該中間プレートは、前記磁石挿入孔に連通する貫通孔、及び前記貫通孔と前記樹脂溜めポットとを連結して前記樹脂の通過するランナーを有し、
平面視して前記円筒体の外周面より内側のみに、前記貫通孔が設けられ、樹脂流れによって発生する前記樹脂注入用金型の摩耗を減少したことを特徴とする積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項3】
複数の磁石挿入孔にそれぞれ永久磁石が挿入された鉄心本体を、対向配置された樹脂注入用金型と受け金型とで挟持し、前記樹脂注入用金型に形成された樹脂溜めポットからプランジャを用いて溶融した樹脂を押し出し、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に樹脂封止する積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂注入用金型と前記鉄心本体の間に中間プレートが配置され、該中間プレートは、前記磁石挿入孔に連通する貫通孔を有し、
前記樹脂注入用金型は、前記樹脂溜めポット、及び前記貫通孔と前記樹脂溜めポットとを連結して前記樹脂の通過するランナーが形成された超硬材からなる円筒体と、該円筒体を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体とを有し、
平面視して前記円筒体の外周面より内側のみに、前記貫通孔が設けられ、樹脂流れによって発生する前記樹脂注入用金型の摩耗を減少したことを特徴とする積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の積層鉄心の樹脂封止方法において、前記円筒体における前記樹脂溜めポットと前記ランナーの連接部分には断面円弧状の面取りがなされていることを特徴とする積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項5】
請求項又は3記載の積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ランナーの断面は開放側から溝底側に向けて狭まるテーパーとなっていることを特徴とする積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項6】
請求項記載の積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ランナーの断面は、前記樹脂注入用金型に向かって開くテーパーとなっていることを特徴とする積層鉄心の樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の鉄心片をかしめ積層して形成された鉄心本体(製品が回転子積層鉄心又は固定子積層鉄心となるものを含む)の磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、樹脂注入用金型(上型又は下型)と受け金型(下型又は上型)との間に鉄心片をかしめ積層した積層鉄心(鉄心本体ということもある)を配置し、樹脂注入用金型の樹脂溜めポットからプランジャによって樹脂を吐出し、積層鉄心の磁石挿入孔に配置された永久磁石(未磁化のものを含む、以下同じ)を樹脂封止することが行われていた。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、積層鉄心と樹脂注入用金型との間に中間プレート(ダミープレート、カルプレートということもある)を配置し、樹脂注入用金型の樹脂溜めポットからランナーを介して積層鉄心の磁石挿入孔に樹脂を充填する方法もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204068号公報
【特許文献2】特開2008−54376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2記載の積層鉄心の樹脂封止方法において、樹脂注入用金型は一般に鋼製であるので、樹脂にフィラーを含む場合には樹脂溜めポットとプランジャとの間で摩耗が発生する。そこで、図8(A)、(B)に示すように、筒状の樹脂溜めポット79を形成する筒状物80及び昇降するプランジャ81を耐摩耗性を有する金属で構成することも行われている。
ところが、樹脂溜めポット79を形成する筒状物80の周囲(即ち、半径方向外側)を取り囲む樹脂注入用金型本体82は鋼(例えば、普通鋼、炭素鋼)製であるので、樹脂溜めポット79からランナー83の下流側、樹脂注入口84を介して磁石挿入孔86に注入する部分は鋼製となり、ランナー83の下流側と樹脂注入口84を形成する樹脂注入用金型本体82に異常摩耗が発生する場合がある。
【0006】
ランナー83の下流側、又は樹脂注入口84が異常摩耗を起こすと、その部分に樹脂が貼り付いて硬化し、樹脂の流れが阻害されて磁石挿入孔86に樹脂未充填が発生するという問題がある。更に貼り付いた樹脂が抵抗となり、金型を離型する場合にランナー83に形成された樹脂が破断したり、樹脂の一部又は全部が金型側に残ってしまい、離型性が低下するという問題があった。
また、樹脂溜めポット79及び樹脂注入用金型本体82の材料が異なるので、筒状物80と樹脂注入用金型本体82の固定は通常焼き嵌めによって行われる。そのため、筒状物80が高さ方向、周方向又は径方向にずれることがあり、ランナー83に段差が生じるとその部分から異常摩耗が発生するという問題があった。
そして、これらの金属の熱膨張率が異なり、樹脂注入の際に樹脂溜めポット79を形成する筒状物80と樹脂注入用金型本体82との間に隙間が形成され、その隙間に樹脂が入り込み、樹脂が硬化すると樹脂溜めポット79が樹脂注入用金型本体82に対して傾き、プランジャ81と樹脂溜めポット79を形成する筒状物80との摺動抵抗が増加し、金型装置が破損する場合もあるという問題がある。なお、図8において、88は永久磁石を、89は積層鉄心を示す。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、磁石挿入孔に充填される樹脂による樹脂注入用金型の摩耗が発生し難く、更に、熱膨張の相違による樹脂溜めポットと樹脂注入用金型との間の隙間が生じ難い積層鉄心の樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の磁石挿入孔にそれぞれ永久磁石が挿入された鉄心本体を、対向配置された樹脂注入用金型と受け金型とで挟持し、前記樹脂注入用金型に形成された樹脂溜めポットからプランジャを用いて溶融した樹脂を押し出し、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に樹脂封止する積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂注入用金型は、前記樹脂溜めポット、前記磁石挿入孔に連通する注入孔、及び前記注入孔と前記樹脂溜めポットとを連結して前記樹脂の通過するランナーが形成された超硬材からなる円筒体と該円筒体を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体とを有し、
平面視して前記円筒体の外周面より内側のみに、前記注入孔が設けられ、樹脂流れによって発生する前記樹脂注入用金型の摩耗を減少した。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の磁石挿入孔にそれぞれ永久磁石が挿入された鉄心本体を、対向配置された樹脂注入用金型と受け金型とで挟持し、前記樹脂注入用金型に形成された樹脂溜めポットからプランジャを用いて溶融した樹脂を押し出し、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に樹脂封止する積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂注入用金型は、前記樹脂溜めポットが形成された超硬材からなる円筒体と、該円筒体を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体とを有し、
前記樹脂注入用金型と前記鉄心本体の間に中間プレートが配置され、該中間プレートは、前記磁石挿入孔に連通する貫通孔、及び前記貫通孔と前記樹脂溜めポットとを連結して前記樹脂の通過するランナーを有し、
平面視して前記円筒体の外周面より内側のみに、前記貫通孔が設けられ、樹脂流れによって発生する前記樹脂注入用金型の摩耗を減少した。
【0010】
前記目的に沿う第3の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の磁石挿入孔にそれぞれ永久磁石が挿入された鉄心本体を、対向配置された樹脂注入用金型と受け金型とで挟持し、前記樹脂注入用金型に形成された樹脂溜めポットからプランジャを用いて溶融した樹脂を押し出し、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に樹脂封止する積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂注入用金型と前記鉄心本体の間に中間プレートが配置され、該中間プレートは、前記磁石挿入孔に連通する貫通孔を有し、
前記樹脂注入用金型は、前記樹脂溜めポット、及び前記貫通孔と前記樹脂溜めポットとを連結して前記樹脂の通過するランナーが形成された超硬材からなる円筒体と、該円筒体を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体とを有し、
平面視して前記円筒体の外周面より内側のみに、前記貫通孔が設けられ、樹脂流れによって発生する前記樹脂注入用金型の摩耗を減少した。
【0011】
【0012】
の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、第1〜第3の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法において、前記円筒体における前記樹脂溜めポットと前記ランナーの連接部分には断面円弧状の面取りがなされている。
【0013】
の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、第、第3の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ランナーの断面は開放側から溝底側に向けて狭まるテーパーとなっている。
【0014】
【0015】
そして、第6の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、第の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ランナーの断面は、前記樹脂注入用金型に向かって開くテーパーとなっている。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、樹脂注入用金型の樹脂溜めポットと、樹脂溜めポットから樹脂が通過する領域とを形成する材質を超硬材としているので、流動する樹脂による金型の摩耗が著しく軽減され、磁石挿入孔への注入孔(ランナーを形成した場合にはランナー)に樹脂が貼り付いて硬化し、樹脂の流れが阻害されて磁石挿入孔に樹脂の未充填が発生することを防止できる。
また、熱膨張係数の違いで樹脂溜めポットを形成する金属と樹脂注入用金型本体との間に隙間ができても、この隙間と樹脂は接しないので、隙間に樹脂が入り込む虞れがない。
また、貼り付いた樹脂が抵抗となって金型の離型性が低下するのを防止できる。
【0017】
特に、第1の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法は、樹脂注入用金型が、樹脂溜めポット及び樹脂の通過する領域が形成された超硬材を用いた円筒体を有するので機械加工が容易となり、精度の高い加工及び組み立てを行うことができる。
【0018】
の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法においては、樹脂溜めポットとランナーの連接部分に断面円弧状の面取りがなされているので、硬化した樹脂の連接部分の強度を上げ、脱着時の樹脂の破損を防止できる。
【0019】
の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法においては、ランナーの断面が開放側から溝底側に向けて狭まるテーパーとなっているので、硬化した樹脂が容易にランナーから抜けて、ランナー内に樹脂が残らない。
【0020】
の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法においては、ランナーが樹脂注入用金型と鉄心本体の間に配置された中間プレートに形成されているので、樹脂注入用金型の摩耗を減少できると共に、中間プレートを交換することで、複数種の積層鉄心の樹脂充填に対応できる。そして、仮に中間プレートが摩耗しても中間プレートを交換するのみで、摩耗部分が無くなる。
【0021】
そして、第6の発明に係る積層鉄心の樹脂封止方法においては、ランナーの断面が、樹脂注入用金型に向かって開くテーパー状となっているので、中間プレートから樹脂の取り出しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法を示す部分断面図である。
図2図1における矢視A−A’断面図である。
図3】(A)、(B)はそれぞれ同積層鉄心の樹脂封止方法の説明図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法を示す部分断面図である。
図5】(A)、(B)はそれぞれ同積層鉄心の樹脂封止方法の説明図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法を示す部分断面図である。
図7】同積層鉄心の樹脂封止方法の説明図である。
図8】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係る積層鉄心の樹脂封止方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
まず、図1図3を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法について説明する。
【0024】
樹脂封止しようとする鉄心本体11は、複数枚のプレス加工された鉄心片13をかしめ積層したもので、中央に軸孔15を有し、その周囲にそれぞれ対となる複数の磁石挿入孔16、17を有している。各磁石挿入孔16、17には永久磁石(未磁化のものを含む)18が挿入されている。なお、19は搬送トレイで中央に軸孔15に挿入される位置決め軸(図示せず)を有している。
【0025】
この鉄心本体11の磁石挿入孔16、17に挿入された永久磁石18を樹脂封止する樹脂封止装置10は、固定配置された樹脂注入用金型20(この実施の形態では上型)と昇降可能な受け金型21(この実施の形態では下型)と、受け金型21の昇降手段(図示せず)とを有し、受け金型21の所定位置に搬送トレイ19を介して配置された鉄心本体11を、対向配置された受け金型21と樹脂注入用金型20とで押圧して挟持できる構造となっている。
【0026】
図2に示すように、鉄心本体11には、2n(nは2以上の整数、この実施の形態はn=6)個の磁石挿入孔16、17が設けられ、平面視してこの磁石挿入孔16、17に対応してn個の樹脂溜めポット24が樹脂注入用金型20に形成されている(以下の実施の形態においても同じ)。即ち、一つの樹脂溜めポット24から2つの磁石挿入孔16、17に、樹脂が通過する領域の一例であるランナー26、27を有して樹脂流路が形成されている。この実施の形態では、図3(A)に示すように、樹脂溜めポット24に対して左右のランナー26、27が対称に形成され、ランナー26、27の終端部に、磁石挿入孔16、17に樹脂を注入する注入孔28、29が形成されている。
【0027】
ここで、樹脂注入用金型20は、1)樹脂溜めポット24及びこれに続くランナー26、27及び注入孔28、29が形成され、超硬材(HRA硬度80〜100又はそれ以上)を使用するのが好ましい)の一例である炭化タングステン又はこれに類似する合金を使用した円筒体30と、2)その周囲の普通鋼によって形成され、円筒体30を支持する樹脂注入用金型本体22とを有している。即ち、円筒体30の中央には貫通孔からなる樹脂溜めポット24が形成され、円筒体30の底部にはランナー26、27が円筒体30の外側円31から飛び出ないように(即ち、外側とは隙間を有して)形成されている。従って、注入孔28、29は円筒体30の外周面より内側に設けられている。
【0028】
各ランナー26、27は図3(A)、(B)に示すように、下方に断面が広くなって開放し、開放側から溝底33に向かって断面が狭まるテーパー状となっている。これによって、ランナー26、27に入って硬化した樹脂の脱着を容易にすることができる。
【0029】
また、ランナー26、27の先端部に磁石挿入孔16、17の樹脂の注入孔28、29が形成されているが、その上部のランナー26、27の側壁も下方に開くように傾斜して、溝底33とその側壁34及び先端側の側壁35との接合部の断面はアール形状となっているので、注入孔28、29に入ろうとする樹脂が円滑に流れることになる。
そして、樹脂溜めポット24からランナー26、27の連接部分に断面円弧状の面取りがなされているので、硬化した樹脂の連接部分の強度を上げ、脱着時の樹脂の破損を防止できる。
【0030】
なお、樹脂溜めポット24は図示しないシリンダーによって駆動されるプランジャ37を備え、プランジャ37によって溶融した樹脂を押し出している。また、円筒体30と樹脂注入用金型本体22との固定は周知の方法、例えば、ねじ止め、焼き嵌め等がある。また、円筒体30は上部又は下部にフランジ、取付け部材が設けられているものも含まれる。
【0031】
続いて、図4図5(A)、(B)を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法について説明する。ここで、図1図2に示す第1の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法に用いた構成要素については同一の番号を付して細かい説明を省略する。
図4に示すように、この第2の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法を適用した樹脂封止装置39は、樹脂注入用金型40と受け金型21を有し、樹脂注入用金型40と鉄心本体11との間には、中間プレート41(通称、カルプレートとも言われる)が設けられている。
【0032】
樹脂注入用金型40には、各磁石挿入孔16、17に対応して設けられた複数の樹脂溜めポット42が設けられ、図4ではそのうちの一つが記載されている。中間プレート41は、鋼製、ステンレス製又は超硬製の板からなって、厚みは例えば、2〜8mm程度となっている。この中間プレート41の上側(即ち、樹脂注入用金型40側)には、樹脂注入用金型40に形成された複数の樹脂溜めポット42に応じてその直下に有底の樹脂受け部42aを有し、各樹脂受け部42aから磁石挿入孔16、17に向かって溝状のランナー43、44が形成されている。
【0033】
ランナー43、44の端部に下方に直径が狭くなる円錐台状の貫通孔45、46が形成され、その一部が鉄心本体11の磁石挿入孔16、17にラップし、注入孔47、48を形成している。そして、ランナー43、44は溝底51と側壁52を有し、側壁52は開放側、即ち上方に向けて広がる傾斜(テーパー)となって、貫通孔45、46とランナー43、44内で硬化した樹脂が抜け易くなっている。そして、樹脂溜めポット42からランナー43、44の連接部分は断面アール状(円弧状)の面取りが形成されているので、硬化した樹脂の連接部分の強度を上げ、脱着時の樹脂の破損を防止できる。
【0034】
樹脂注入用金型40は、各樹脂溜めポット42とランナー43、44及びランナー43、44の端部に形成されている貫通孔45、46を内側に含む超硬製の円筒体54とこの円筒体54を支持する鋼製の樹脂注入用金型本体55とを有している。円筒体54と樹脂注入用金型本体55との固定はフランジ等周知の方法である。これによって、樹脂溜めポット42及びランナー43、44を通過する樹脂によって、樹脂注入用金型40が摩耗するのを防止できる。なお、中間プレート41を鋼製又は軽合金製とした場合は、摩耗が発生するが、中間プレート41は容易に交換でき消耗品と見做せる。
【0035】
次に、図6図7を参照しながら本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の樹脂封止方法について説明する。この積層鉄心の樹脂封止方法を適用した樹脂封止装置57は、搬送トレイ19に載った鉄心本体11を挟持する受け金型21及び樹脂注入用金型58と、鉄心本体11と樹脂注入用金型58の間に配置された中間プレート59とを有している。この実施の形態において、樹脂注入用金型58は固定配置され、受け金型21は昇降手段によって上下可能となっている。
【0036】
鉄心本体11には、前記した実施の形態と同様、半径方向外側領域で、円周方向に対となる磁石挿入孔16、17を複数備え、各磁石挿入孔16、17には永久磁石18がそれぞれ配置されている(図2参照)。
樹脂注入用金型58は、樹脂溜めポット60がそれぞれ中央に形成されている超硬材からなる円筒体62と、円筒体62を固定支持する鋼製の樹脂注入用金型本体63とを有している。
【0037】
円筒体62の底部には樹脂溜めポット60に基端が連通するランナー64、65が設けられ、ランナー64、65の端部位置には中間プレート59に設けられた貫通孔66、67が設けられ、貫通孔66、67の半径方向(鉄心本体11に対して)外側の一部と磁石挿入孔16、17の重複部分で注入孔68、69を形成している。
【0038】
円筒体62の底部に設けられているランナー64、65は溝底と外方向に開く側壁とを有し、ランナー64、65の断面は溝底方向に狭くなるテーパー状となっている。これによって、通過する樹脂によってランナー64、65の摩耗を防止すると共に、硬化した樹脂がランナー64、65から抜け易くなっている。そして、樹脂溜めポット60からランナー64、65の連接部分は円弧状の面取りが形成されているので、硬化した樹脂の連接部分の強度を上げ、脱着時の樹脂の破損を防止できる。また、ランナー64、65と貫通孔66、67を別々に形成しているので、中間プレート59の貫通孔66、67の形成位置を変えるだけで、大きさの異なる鉄心本体に対しても樹脂注入が可能となる。
【0039】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、前記実施の形態においては、樹脂注入用金型を上型に、受け金型を下型に配置したが、下型を樹脂注入用金型とし、上型を受け型とする場合も本発明は適用される。また、前記実施の形態においては、対となる磁石挿入孔は2つであったが、1つ又は3以上であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10:樹脂封止装置、11:鉄心本体、13:鉄心片、15:軸孔、16、17:磁石挿入孔、18:永久磁石、19:搬送トレイ、20:樹脂注入用金型、21:受け金型、22:樹脂注入用金型本体、24:樹脂溜めポット、26、27:ランナー、28、29:注入孔、30:円筒体、31:外側円、33:溝底、34、35:側壁、37:プランジャ、39:樹脂封止装置、40:樹脂注入用金型、41:中間プレート、42:樹脂溜めポット、42a:樹脂受け部、43、44:ランナー、45、46:貫通孔、47、48:注入孔、51:溝底、52:側壁、54:円筒体、55:樹脂注入用金型本体、57:樹脂封止装置、58:樹脂注入用金型、59:中間プレート、60:樹脂溜めポット、62:円筒体、63:樹脂注入用金型本体、64、65:ランナー、66、67:貫通孔、68、69:注入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8